JP4149570B2 - テンショナーを備えたアームシュー - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は駆動軸と従動軸のスプロケットに巻き掛けられたチェーンに、常時適当な緊張力を与える為のテンショナー装置におけるアームシューに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
図６は一般的なチェーン駆動装置を表してるが、チェーン(イ) は駆動軸(ロ) と従動軸(ハ) に取着しているスプロケット（ニ)、(ホ) に巻き掛けられており、該チェーン(イ) はテンショナーアームシュー(ヘ) によって押圧されて適当な緊張力が常時作用している。従って、両スプロケット（ニ)、(ホ) の回転と共に走行するチェーン(イ) の振動を抑制し、従動軸(ホ) へ時間の遅れを生じることなく伝達される。又、振動を抑制することでチェーン(イ) に作用する衝撃力はなくなり、チェーン寿命を向上することが出来る。
【０００３】
ところで、テンショナーアームシュー(ヘ) はテンショナー(ト) によって押圧されてチェーン(イ) に作用している。上記テンショナー(ト) はコイルバネを内蔵し、このコイルバネの復元力によってボス(チ) を突出し、テンショナーアームシュー(ヘ) を押圧している。ところでテンショナー(ト) はエンジン側に取り付けされるが、テンショナーアームシュー(ヘ) とエンジンとの間のスペースが小さい場合にはこのテンショナー(ト) を取り付けすることが出来なくなる。
【０００４】
【本発明が解決しようとする課題】
このように従来のテンショナー装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、従来のようなテンショナーを備えることなく、エンジンとの間のスペースが小さくても取り付けすることが出来るように、テンショナーアームシュー自体にテンショナー機能を備えたアームシューを提供する。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明のテンショナー装置におけるアームシューは、それ自体にテンショナー機能を備えたものであり、該アームシュー本体にはカムを取り付けしている。カムは回転することが出来るように軸支され、しかもバネを有している。該バネのバネ力はカムに付勢されてカムの外周がエンジン側に当接し、その反力にてアームシューをチェーン側へ揺動させるように作用する。又、アームシュー本体には逆転防止ツメが取着され、該ツメはカムの一部外周に形成した歯に噛み合っており、チェーンから作用する力によりカムが逆転しない構造と成っている。一方、カムをスライドさせることによりアームシューを揺動させる構造とすることも出来る。
【０００６】
【発明の実施の形態】
アームシューはアームシュー本体とシューから成り、アームシュー本体は金属製とし軸に取り付けされて揺動することが出来、アームシュー本体の外周には滑らかに湾曲した耐摩耗性の高い樹脂製又は弾性体から成るシューを備えている。シューの両側にはチェーンが外れないようにガイドを突出して形成することもある。アームシュー本体は概略コ型状断面を成し、カムは両側片に跨がって取着した軸に取り付けし、同じく逆転防止ツメも両側片間に設けたピンに軸支される。勿論、アームシューの全長に渡って側片を設けることなく、カム及び逆転防止ツメを設ける箇所に限定して形成することも出来る。又アームシュー本体をＴ型断面とし、カムをアームシュー本体の両側に対を成して設ける場合もあり得る。
【０００７】
ところでカムは所定の厚さを有す板カムが用いられ、中心軸部はゼンマイバネを収容する為に空洞化しており、該バネのバネ力はカムを回転する方向へ付勢されている。カムを回転させるバネは上記ゼンマイバネに限定するものではなく、カムの回転軸から離れた位置を引っ張ったり押圧するコイルバネや板バネを用いることもある。そしてこのカムは偏心カムであって、中心軸から外周までの距離は位置により変化し、バネ力によって偏心カムが回転することでカム外周が当接する当たり面からの距離が拡大し、その結果アームシューは揺動してチェーンが緊張するように作用する。
【０００８】
そして、カム外周の一部には複数の歯が形成され、逆転防止ツメは該歯に噛み合い、カムが逆転してチェーンに弛みを与えることを防止している。又、逆転防止ツメがカムの歯から外れないように、バネにて押圧されている。又、カムの外周に沿ってガイド溝を形成し、このガイド溝にエンジン側に設けた固定ピンを嵌め、固定ピンがガイド溝に沿って移動することでアームシューを揺動させ得る。一方、カムは一般に回転可能に取り付けされるが、スライドカムを使用することも可能である。この場合にはスライドすることでアームシューを前進させてチェーンに緊張を与え得る。以下、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【０００９】
【実施例】
図１はチェーン駆動装置にテンショナー装置を装着した場合を示し、前記図６に相当する。チェーン１は駆動スプロケット２と従動スプロケット３に巻き掛けられ、チェーン１の弛みを防止する為にアームシュー４によって押圧されて緊張状態にある。アームシュー４は軸５に軸支されて揺動可能であるが、アームシュー４に取り付けされているカム６の外周がエンジンの一部に設けている当たり面７（エンジン側に設けられた壁、又はピン外周、ピンを内設したローラ外周）に当接し、カム６が回転することでアームシュー４の位置は変化することが出来る。
【００１０】
図２はアームシュー４の拡大図であり、一部断面を示しているが、アームシュー４はアームシュー本体８とシュー９から成り、アームシュー本体８は金属製で外周を滑らかな湾曲面とし、この滑らかな湾曲面には耐摩耗性に優れた樹脂製又は弾性体から成るシュー９を有している。チェーン１はこのシュー９に当接して押圧されることで緊張し、その緊張状態を保ちながらスライドする。
【００１１】
アームシュー本体８にはカム６が軸１０に取り付けされ、図３に示しているＡ−Ａ断面から明らかなように、アームシュー本体８は概略コ型状断面をなし、軸１０は両側片１１、１１に跨がって取着され、カム６は該軸１０に取り付けした円板１２、１２を介して揺動出来るように軸支されている。すなわちカム６の中央には穴１３が形成され、この穴１３に２枚の円板１２、１２が嵌ってカム６を軸支しているが、両円板１２、１２の間にはゼンマイバネ１４が設けられ、該ゼンマイバネ１４の一端は軸１０に、他端はカム６に止着されている。
【００１２】
そして、このゼンマイバネ１４のバネ力はカム６に、図２において時計回りに回転させる力を付勢している。カム６は偏心カムであって、軸１０から外周までの距離はｒ₁ ＜ｒ₂ ＜ｒ₃ と成っており、該カム６が時計方向に回転するならば、アームシュー４は前進してチェーン１を緊張させる。カム６の外周はエンジンの当たり面７に当接している為に、回転と共にアームシュー４を揺動させる。
【００１３】
又該カム６の隣には逆転防止ツメ１６が取り付けされ、この逆転防止ツメ１６の先端１５はカム６の一部外周に形成している歯１７、１７…に噛み合っている。逆転防止ツメ１６は軸１８に軸支されて揺動することが出来るが、板バネ１９によってカム６に押し当てられ、先端１５は歯１７から外れないようになっている。そこで、カム６はチェーン１が伸びることでゼンマイバネ１４のバネ力が作用して時計方向に回転し、その結果アームシュー４は揺動・前進し、チェーン１に常になじむことになる。そしてチェーン１から作用する力によってアームシュー４が後退しないように、すなわちカム６が逆転（反時計方向への回転）しないように逆転防止ツメ１６にて阻止される。
【００１４】
図３は図２のＡ−Ａ断面を表しているが、上記カム６はアームシュー本体８の両側片１１、１１の間に形成されている空間に収まっている。アームシュー４はカム６によってチェーン１に接し、該チェーン１が弛まないように緊張状態を保っている。図４はアームシュー４の長手方向の断面図を表しているが、同図の２０はカム６の回転防止ピンであり、アームシュー４を取り付けする際にカム６がゼンマイバネ１４のバネ力の作用で回転しようとするが、この回転を防止する為に回転防止ピン２０を穴２１に差し込んでいる。勿論、取り付けした後では抜き取られる。又同図の２４はカム６と側片１１、１１の間に介在する横揺れ防止材であり、弾性体、皿バネ、板バネ等が使用される。ただし、この横揺れ防止材２４は使用状況によっては無くすことも出来る。
【００１５】
図５は本発明のアームシューを表している他の実施例であり、基本的な構造は前記図２と同じである。この実施例ではカム６に湾曲したガイド溝２２を形成し、このガイド溝にはエンジン側に設けた固定ピン２３が嵌っている。従ってカム６の回転に伴い、外周がエンジンの当たり面に当接することなく、固定ピン２３に沿ってガイド溝２２が移動することでアームシュー４を前進させることが出来る。その他の点は前記実施例と同じである為に説明を省略する。以上述べたように、本発明のテンショナーのアームシューはアームシュー本体にカムを取り付けしたものであり、次のような効果を得ることが出来る。
【００１６】
【発明の効果】
本発明に係るテンショナーのアームシューはバネを備えたカムを取り付けしており、該カムが回転又はスライドすることでアームシューは揺動・前進してチェーンに適度な緊張を与え、騒音を抑制し、チェーンの歯飛び現象を防止することが出来る。そしてテンショナーがアームシューに備わっている為に、テンショナー装置の取り付け作業は簡単であり、しかも装置全体がコンパクト化する為に狭いスペースであっても取り付け可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のアームシューを備えたチェーン駆動装置。
【図２】本発明のアームシューの実施例。
【図３】図２のＡ−Ａ断面図。
【図４】アームシューの長手方向の断面図。
【図５】アームシューの他の実施例。
【図６】従来のテンショナー装置を備えたチェーン駆動装置。
【符号の説明】
１ チェーン
２ 駆動スプロケット
３ 従動スプロケット
４ アームシュー
５ 軸
６ カム
７ 当たり面
８ アームシュー本体
９ シュー
10 軸
11 側片
12 円板
13 穴
14 ゼンマイバネ
15 先端
16 逆転防止ツメ
17 歯
18 軸
19 板バネ
20 回転防止ピン
21 穴
22 ガイド溝
23 固定ピン
24 横揺れ防止材

Claims (2)

1. 両スプロケットに巻き掛けられたチェーンを押圧して適度な緊張を常時与える為のテンショナー装置におけるアームシューにおいて、アームシュー本体には板カムを回転可能に備え、アームシュー本体は概略コ型状断面を成して軸が両側片に跨って取着され、板カムはその中心に穴を形成し、上記軸に取付けた両円板を介して板カムは揺動出来るように軸支され、そして両円板の間にはゼンマイバネが設けられて、その一端は軸に止着されると共に他端は板カムに止着されて該板カムには回転する方向へバネ力を付勢し、板カムの外周をエンジン側に設けた当り面に接触させて板カムの回転と共にアームシューを揺動・前進させ、又板カムの一部に形成した歯には逆転防止ツメを噛み合わせたことを特徴とするテンショナーを備えたアームシュー。
2. 両スプロケットに巻き掛けられたチェーンを押圧して適度な緊張を常時与える為のテンショナー装置におけるアームシューにおいて、アームシュー本体には板カムを回転可能に備え、アームシュー本体は概略コ型状断面を成して軸が両側片に跨って取着され、板カムはその中心に穴を形成し、上記軸に取付けた両円板を介して板カムは揺動出来るように軸支され、そして両円板の間にはゼンマイバネが設けられて、その一端は軸に止着されると共に他端は板カムに止着されて該板カムには回転する方向へバネ力を付勢し、板カムの外周に沿って細長いガイド溝を形成し、該ガイド溝にはエンジン側に設けた固定ピンを嵌めて板カムの回転と共にアームシューを揺動・前進させ、又板カムの一部に形成した歯には逆転防止ツメを噛み合わせたことを特徴とするテンショナーを備えたアームシュー。

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