JP4149323B2 - 基板処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンインゴットから切り出されたシリコンウエハに対してアルカリ溶液により洗浄処理を行う基板処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイスの製造に用いられる例えばシリコンインゴットからスライスして切り出されたシリコンウエハは、例えば周縁の面取りがなされる面取り工程、厚みが整えられるラッピング工程、エッチング液によりウエットエッチングがなされるエッチング工程、表面を研磨して鏡面化するポリッシング工程およびシリコンウエハに付着した不純物を洗浄液で取り除く洗浄工程などの種々の処理が施されて製造される。
【0003】
前記エッチング液あるいは洗浄液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを含むアルカリ溶液をなす処理液が用いられることが一般的に知られており、例えば各処理に応じてアルカリ成分、濃度が選択されたアルカリ溶液が満たされた処理浴中にシリコンウエハを浸漬することにより所定の処理がなされる。
【0004】
ところでアルカリ溶液を用いてシリコンウエハにエッチング又は洗浄などの所定の処理を行う場合、このアルカリ溶液中に不純物が含まれていると被処理物であるシリコンウエハの表面に当該不純物が付着してシリコンウエハを汚染するといった問題点が従来から指摘されている。不純物とはパーティクルの他、例えばニッケル、銅、クロム、鉄などの金属不純物であるが、特にシリコンウエハの表面に物理的に付着するパーティクルと異なり、シリコンウエハの表層部のシリコンの分子構造内に潜り込むようにして化学的に表面に付着する金属不純物が問題となる。
【0005】
アルカリ溶液中に金属不純物が含まれていたとしてもシリコンウエハへ付着するのを抑えることのできる手法の一つとして、キレート剤例えばEDTA、HBED、DTPAなどを含むアルカリ溶液を用いて処理する手法が知られている。この場合、キレート反応により金属不純物を金属錯化合物とすることにより金属不純物がシリコンウエハに付着するのが抑えられるが、例えば10重量%以上の高濃度アルカリ溶液中ではキレート反応が充分に促進されない場合がある。そのためキレート反応が促進される低濃度なアルカリ溶液を選択しなければならず、例えばエッチング処理をするには長時間を要するか、あるいは予定とするエッチングができない懸念がある。またキレート剤である有機物は高濃度なアルカリ溶液に溶解し難いため、溶解作業に手間がかかる場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで処理液中の金属不純物濃度と、処理液中に浸漬されたシリコンウエハの表面に付着する金属不純物との間には化学的に平衡関係が成立することから、上述の金属不純物の付着を抑えるためには、処理液中の不純物濃度を極めて低くしておくことが得策である。しかしながら処理液の精製技術には限界があり、また前段の工程にてシリコンウエハに付着して処理液中に持ち込まれるものもある。そのため金属不純物の濃度が高くなるとシリコンウエハに付着する金属不純物量が多くなり、結果として電気的特性が異なるデバイスが形成されてしまい製品として用いることができない場合がある。
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は少なくとも表面部がシリコンからなる基板に対して、アルカリ溶液により洗浄処理を行う際に、基板の不純物汚染が少ない基板処理方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリコンインゴットから切り出されたシリコンウエハである基板に対して、処理液により洗浄処理を行う基板処理方法において、
水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液である処理液が満たされた処理浴に、洗浄処理の対象となる一方の電極をなす前記基板と他方の電極とを互いに離間しかつ対向した状態で浸漬する工程と、
一方の電極をなす前記基板を陰極とし、他方の電極を陽極としてこれらの間に直流電圧を印加する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の基板処理方法によれば、基板に所定の電圧を印加することにより、例えば負の電圧が印加された基板においては斥力の作用により金属不純物が付着することが抑えられ、また正の電圧が印加された基板においては引力により引き寄せた金属不純物を酸化することで例えば純水などのリンス液で簡単に取り除ける金属酸化物にすることができる。このため処理後の金属不純物の量を極めて少なくすることができるので、結果として高精度な電気特性を有する半導体デバイスを形成することができる。
【0010】
更にまた、前記所定の電圧は、負の電圧が印加された基板の表面に当該基板の電極反応により生成した水素ガスが付着しない電圧であってもよい。
【0011】
更に処理浴中の処理液の温度を温度検知部が検知する工程と、この工程で得た温度の検知結果に基づいて基板に印加する電圧を調整する工程と、を含むようにしてもよく、あるいは処理後の基板のエッチング速度の結果に基づいて次に処理する基板に印加する電圧を調整するようにしてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に用いられる基板処理装置1の概念について図1を参照しながら説明する。図中10は、エッチング、洗浄などの各処理に応じて選択されたアルカリ溶液をなす処理液が満たされた処理浴であり、この処理浴10内の処理液中に少なくとも表面部がシリコン又はシリコン酸化物からなる基板例えばシリコンウエハWが例えば2枚浸漬されて所定の処理が行われる。このときシリコンウエハW同士が接触しないように例えばシリコンウエハWのミラー面であるデバイス形成面が互いに対向するように配置され、これら対向するシリコンウエハWの表面の離間距離L(極間距離)は例えば10〜20mmに設定される。なお離間距離Lは狭すぎると処理が進むにつれて、この隙間内のアルカリ濃度が希薄になって処理速度が低下してしまい、また広すぎるとシリコンウエハW間に電流が流れ難くなるので前記した離間距離Lに設定するのが好ましい。
【0014】
また図中11はシリコンウエハWの周縁であって例えばデバイス形成領域の外側を保持するための保持体であるクリップである。このクリップ11は図示しない駆動機構と接続されており、シリコンウエハWを保持した状態で昇降および進退可能なように構成されている。なお、クリップ11は例えばシリコン又はシリコン酸化物あるいはこれらよりも電気抵抗の大きい材質が選択される。
【0015】
更に各クリップ11は、各々のクリップ11に保持されて処理液中に浸漬される例えば2枚のシリコンウエハWに対して、所定の電圧あるいは所定の電流を印加するための直流電源部12の正極側および負極側に例えば配線を介して夫々接続されており、前記2枚のシリコンウエハWのうちの直流電源部12の正極側に接続されて陽極に見立てられたシリコンウエハWには正の電圧が印加され、直流電源部12の負極側に接続されて陰極に見立てられた他方のシリコンウエハWには負の電圧が印加されるように構成されている。
【0016】
また処理浴10の例えば底面側には、処理液の温度を調整するための温度調整手段13例えばヒータが設けられている。更に処理浴10には処理液の温度を検知するための温度検知部14が設けられている。更にまた、図中15は制御部であり、この制御部15は直流電源部12、温度調整手段13および、クリップ11を昇降および進退させるための図示しない駆動機構の動作を制御する機能を有している。
【0017】
前記処理液としては、その液中に水酸化物イオン(OH−)を発生するアルカリ溶液であれば特にアルカリ成分が限定されるものではないが、例えば少なくとも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムのうちのいずれか一つを含む溶液が選択される。また必要ならばシリコンを酸化させてシリコンウエハWの表面にシリコン酸化膜を形成させるための酸化剤例えば過酸化水素を含むようにしてもよい。どのようなアルカリ濃度(複数のアルカリ成分を選択した場合は各アルカリ成分の濃度の和)の処理液を選択するかは、シリコンウエハWに対してなされる所定の処理毎に決められる。具体的には、その処理が例えばエッチングの場合にはエッチングを盛んに行わせるために例えば45重量%〜55重量%の高濃度のものが選択され、処理がシリコンウエハWからパーティクルなどの不純物を取り除くための洗浄を主たる目的とする場合には例えば10重量%程度の低濃度のものが選択される。なお、処理液中の金属不純物濃度は特に限定されることはないが、処理液中に含まれる各々の金属不純物の濃度が例えば夫々0.5ppb以下であることが好ましく、シリコンウエハWを繰り返し処理することで当該濃度レベルを越えた場合には処理液を取り替えるようにするのが望ましい。
【0018】
続いて上述の基板処理装置1を用いてシリコンウエハWに対して例えばエッチング、洗浄などの所定の処理を行う手法について説明するが、ここでは水酸化ナトリウム溶液を用いてエッチングする場合を一例に挙げて説明する。先ず、例えばラッピングなどの前処理が施された2枚のシリコンウエハWは、直流電源部12の正極側および負極側に夫々接続されたクリップ11にその周縁が夫々保持された状態で処理浴10の上方に案内され、例えば液温が40℃〜70℃に設定された例えば45重量%〜55重量%の水酸化ナトリウム溶液である処理液が満たされた処理浴10に互いに接触しないようにして浸漬される。この浸漬するタイミングと併せて、あるいは浸漬するタイミングに前後して直流電源部12から所定の電圧例えば金属不純物とシリコンウエハとの間に生じるファンデルワールス力と呼ばれる引力よりも大きく、かつ陰極に見立てられたシリコンウエハWの表面からその電極反応により発生する水素ガスの気泡が当該シリコンウエハWの表面に付着しない電圧例えば5V〜21Vの電圧が印加される。
【0019】
ここで処理液にシリコンウエハWが浸漬されると、処理液中の水酸化物イオン(OH−)がエッチャントとして作用して、シリコンウエハWの表面がエッチングされる。より詳しくは陰極に見立てられたシリコンウエハWは水酸化物イオンによりシリコンが直接エッチングされ、陽極に見立てられたシリコンウエハWにおいては、陽極反応(電極反応)である酸化反応により当該シリコンウエハWの表面に薄膜状のシリコン酸化膜が形成され、このシリコン酸化膜が水酸化物イオンによりエッチングされる。一方、前段の工程や移送時にシリコンウエハWに付着し、当該シリコンウエハWがエッチングされることで液中に分散した例えばニッケル、銅、クロム、鉄などの金属不純物および、精製の限界から処理液中に初めから存在する金属不純物は、強アルカリ溶液である処理液中においてその殆どは金属水酸化物又は金属水酸化物イオンとして存在する。例えばニッケルの場合にはHNiO2 −、NiO4 2−などが一例として挙げられ、また銅の場合にはHCuO2 −、CuO4 2−などが一例として挙げられる。そのためシリコンウエハWに所定の電圧が印加されて当該シリコンウエハWの周囲に電場が形成されると、この電場のベクトルに基づいて金属水酸化物および金属水酸化物イオンは処理液中を泳動する。つまり陰極に見立てられたシリコンウエハWにおいては斥力の作用により金属不純物が当該シリコンウエハWから遠ざけられる一方で、陽極に見立てられたシリコンウエハWにおいては引力の作用により金属不純物が引き寄せられることとなる。この陽極に見立てられたシリコンウエハWに引き寄せられた金属不純物がどのような作用を示すかは実際には把握されていないが、本発明者らは次のように推察している。正の電圧が印加されたシリコンウエハWに引き寄せられて接触した金属不純物は、陽極反応である酸化反応により酸化されて金属酸化物となり、この金属酸化物は溶液中に拡散するか、あるいはシリコンウエハWの表面に付着するものもある。しかし金属酸化物となったことによりシリコンの分子構造内にはもぐり込むことはできず、例えばパーティクルなどと同様にシリコンウエハWの表面に物理的に付着する。
【0020】
しかる後、例えば所定の時間が経過するとシリコンウエハWへの電圧の印加を停止する。次いでシリコンウエハWを処理浴10から引き上げて、例えば純水、超純水などのリンス液をシリコンウエハWに供給して、アルカリ成分および特に正極側のシリコンウエハWにあってはその表面に付着した金属酸化物が洗い流されてエッチング処理が終了する。
【0021】
上述の実施の形態においては、陽極および陰極に見立てたシリコンウエハWに所定の電圧を印加して当該シリコンウエハWの周囲に電場を形成することにより、例えば負の電圧が印加されたシリコンウエハWにおいては斥力の作用により金属不純物が付着することが抑えられる。また正の電圧が印加されたシリコンウエハWにおいては引力の作用により金属不純物が引き寄せられるが酸化されて金属酸化物なることでシリコンの分子構造内に潜り込んで化学的に付着することが抑えられ、そのため純水などのリンス液で簡単に取り除くことができる。即ち、陽極および陰極のいずれに見立てられたシリコンウエハWにおいても処理後のシリコンウエハWの金属不純物を極めて少なくすることができ、その結果として高精度な電気特性を有する半導体デバイスを形成することができる。またこの例では電気抵抗の大きい半導体であるシリコンウエハWを電極としていることから、処理液を介して2枚のシリコンウエハW間を電流が流れても例えば0.01Aと僅かであり、そのため電極反応である水電解反応が進行することによる処理液の濃度変化は小さいので、電圧を印加することのエッチングに及ぼす影響は少ない。
【0022】
更に上述の実施の形態においては、陽極に見立てたシリコンウエハWでは既述のように先ず陽極反応によりその表面が酸化されてシリコン酸化物の薄膜が形成され、この薄膜が処理液によりエッチングされるので、直接シリコンをエッチングする場合に比してその表面をマイルドにエッチングすることができる。従って処理液に例えば過酸化水素などの酸化剤を添加しなくてもよいか、酸化剤を添加する場合にはその添加量を少なくすることができ、結果として運転コストの低減を図ることができる。
【0023】
更に上述の実施の形態においては、シリコンウエハWに所定の電圧が印加されることで当該シリコンウエハWは正又は負の電荷を帯びていることから、エッチャントである水酸化物イオンの接触角(進入角)がシリコンウエハの面内で揃えられるので、面内均一なエッチングをすることができる。
【0024】
上述の例では2枚のシリコンウエハWを処理する例を説明したが、実際の現場ではより多数枚のシリコンウエハWを一度に処理して高いスループットを確保するのが得策である。多数枚のシリコンウエハWを処理する他の例としては、陽極および陰極に対応する1対のシリコンウエハWを処理浴に複数組浸漬して処理するように構成することが挙げられる。
【0025】
本発明においては、被処理基板であるシリコンウエハWを陽極および陰極に見立てて処理する構成に限られず、いずれか一方を他の部材からなる電極としてもよい。この場合例えば当該電極を陽極として用いる場合にはニッケル、又は陰極として用いる場合にはカーボンなどの材質が選択される。このような構成であっても上述の場合と同様の効果を得ることができる。更にこの場合には他の部材で構成した一方の電極を処理浴内に常設しておくことができるので、装置構成およびシリコンウエハWの搬入出が簡単にすることができる点で有利である。
【0026】
更に本発明においては、陽極および陰極の両方を前記した他の部材からなる電極とし、この電極に所定の電圧を印加すると共に、処理浴10にシリコンウエハWを浸漬して処理を行う構成としてもよい。このような構成であっても前記電極に所定の電圧が印加させて電場が形成されるので、例えば陰極の近傍にシリコンウエハWを浸漬されるなど電場のベクトルに基づいてシリコンウエハWを配置することにより、金属不純物が遠ざけられて付着するのが抑えられる。
【0027】
更に本発明においては、被処理基板はシリコンウエハWに限られず、例えば少なくともシリコン酸化物からなる基板に適用することができる。具体的には、例えばマスク基板であるガラス基板などに適用することが一例として挙げられる。
【0028】
更に本発明においては、シリコンウエハWに供給するのは直流電流に限られず、例えば交流電流であってもよい。このような構成であっても上述の場合と同様の効果を得ることができる。更にまた本発明においては、シリコンウエハWに高電圧を印加してそのジュール熱により処理浴中の処理液を加温するようにしてもよく、この場合には温度検知部14の検知結果に基づいて印加する電圧を調整するようにしてもよい。更に本発明においては、処理時に陽極と陰極との間に流れる電流は一定でなくともよく、例えば一時的に浴電圧に達する以上の電流例えば10Aの電流が流れるようにして化学的にエッチング速度を制御するようにしてもよい。
【0029】
更に本発明においては、既述のように処理液中の金属不純物は陽極に引き寄せられ、酸化されて金属酸化物なることから、例えばシリコンウエハWを処理液中に浸漬する前に、前記した他の部材からなる電極を用いて予め処理液中の金属不純物を酸化して金属酸化物にして例えばイオン状の金属不純物の量を低減させておくといった前処理を行うようにしてもよい。この場合、金属酸化物が付着した陽極を処理液から取り出して処理液中の金属不純物の量を低減させることもできる。
【0030】
【実施例】
続いて本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
本例は、上述の基板洗浄装置を用いて2インチサイズのシリコンウエハWのエッチングを行った実施例である。詳しい処理条件については以下に列記するとおりである。処理後のシリコンウエハWは純水でリンスしてから乾燥させた後、全反射蛍光X線分析計で表面のニッケル原子個数を測定し、計算により単位面積あたりの個数を求めた。この分析計の測定限界は0.7×1010atoms/cm2である。
・電圧;21V
・処理時間;60min
・離間距離L;15mm
・処理液;47重量%水酸化ナトリウム水溶液(ニッケル濃度0.5ppb)
・処理温度;40〜70℃
【0031】
(比較例1)
本例は、電圧を印加しなかったことを除いて実施例1と同じ処理を行った比較例である。
【0032】
(実施例1、比較例1の結果と考察)
実施例1においては、負極側のシリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は0.7×1010atoms/cm2未満(分析計の測定限界以下)であり、正極側のシリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数も0.7×1010atoms/cm2未満であり、ニッケルの付着量は極めて少なかった。一方、電圧を印加しない比較例1においては、シリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は、9.1×1010atoms/cm2であった。以上の結果から分かるように、シリコンウエハWに正又は負の電圧を印加することにより、金属不純物の付着量を極めて少なくできることが確認された。
【0033】
(実施例2)
本例は、ニッケル濃度を100ppbに調整した処理液を用いたことを除いて実施例1と同じ処理を行った実施例である。
【0034】
(比較例2)
本例は、電圧を印加しなかったことを除いて実施例2と同じ処理を行った比較例である。
【0035】
(実施例3)
本例は、10重量%の水酸化ナトリウム溶液を用いたことを除いて実施例2と同じ処理を行った実施例である。
【0036】
(比較例3)
本例は、電圧を印加しなかったことを除いて実施例3と同じ処理を行った比較例である。
【0037】
(実施例2、3及び比較例2、3の結果と考察)
実施例2においては、負極側のシリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は162.8×1010atoms/cm2であり、正極側のシリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は230.2×1010atoms/cm2であった。また電圧を印加しなかった比較例2においては、シリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は624.1×1010atoms/cm2であった。
実施例3においては、負極側のシリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は36.8×1010atoms/cm2であり、正極側のシリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は173.6×1010atoms/cm2であった。また電圧を印加しなかった比較例3においては、シリコンウエハWの単位面積あたりのニッケル原子の個数は152.9×1010atoms/cm2であった。
以上の結果から分かるように、金属不純物であるニッケルが高濃度であってもシリコンウエハWに所定の電圧を印加することにより、金属不純物の付着量を少なくできることが確認された。更に例えばエッチングあるいは洗浄など処理の種類に応じて種々の濃度のアルカリ溶液を選択しても、金属不純物の付着量を少なくできることが確認された。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、例えば陽極および陰極に見立てた基板に所定の電圧を印加すると当該基板の周囲に電場を形成され、例えば負の電圧が印加された基板においては斥力の作用により金属不純物が付着することが抑えられ、また正の電圧が印加された基板においては引力により引き寄せた金属不純物を酸化して金属酸化物とすることにより純水で簡単に取り除くことができる。その結果、処理後の基板の金属不純物を極めて少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の概念を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 処理浴
11 クリップ
12 直流電源部
13 温度制御手段
14 温度検知部
15 制御部
Claims (3)
- シリコンインゴットから切り出されたシリコンウエハである基板に対して、処理液により洗浄処理を行う基板処理方法において、
水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液である処理液が満たされた処理浴に、洗浄処理の対象となる一方の電極をなす前記基板と他方の電極とを互いに離間しかつ対向した状態で浸漬する工程と、
一方の電極をなす前記基板を陰極とし、他方の電極を陽極としてこれらの間に直流電圧を印加する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。 - 前記所定の電圧は、負の電圧が印加された基板の表面に当該基板の電極反応により生成した水素ガスが付着しない電圧であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
- 処理浴中の処理液の温度を温度検知部が検知する工程と、
この工程で得た温度の検知結果に基づいて基板に印加する電圧を調整する工程と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理方法。
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