JP4149228B2 - クランクシャフトのスラスト・ベアリングのためのベアリング・スリーブ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、その内部がクランクシャフトのラジアル・ベアリングを形成する横断円筒面又は部分的な横断円筒面の形状のシェルを持ち、そして、シェルの両端で始まり径方向外側に向けられたフランジを持ち、フランジの外面がクランクシャフトのスラスト・ベアリングを形成し、少なくとも一つの油路が、シェルの内側を周方向に延びる、クランクシャフト・スラスト・ベアリングのためのベアリング・スリーブに関する。
【０００２】
【従来の技術】
上記の形式のベアリング・スリーブは、特許文献１に開示されている。公知のベアリング・スリーブは、２つの分割部分からなり、それぞれが、半円筒状の横断面の形態のシェルを、それの端部で始まり外側に向けられたフランジと共に、持つ。２つの半円筒状ベアリング・スリーブは、クランクシャフトをエンジン・ブロックに対して取り付けるために、クランクシャフトの回りに配置される。この場合において、取り付けは、（ベアリング・スリーブのシェルの内側を介して）径方向と（フランジの軸方向外側に向けられた外面を介して）軸方向と、の両方で行なわれる。クランクシャフトにおいては、軸方向力は、エンジンと変速機とによって生じ得る。
【０００３】
ベアリング・スリーブとクランクシャフトとの間の摩擦を低減するために、対応するベアリング面は、油膜により潤滑される。特許文献１によるベアリング・スリーブにおいて、潤滑油は、通路を介して、エンジン・ブロックからベアリング・スリーブのシェルの内側に導かれ、潤滑油の分配用の油路は、そのシェルの内側において循環方向に設けられている。更に、フランジとシェルとの間の境になる角が面取りされ、それによってベアリング・スリーブとクランクシャフトとの間に、断面三角形状の間隙が形成され、そこを介して潤滑油が分配され得る様になっている。この場合において、この潤滑油は、間隙に到達するために、クランクシャフトのラジアルベアリングの横断面の中央の油路からシェルの端部まで圧送されなければならない。特許文献１によれば、スラストベアリングの表面を介して、潤滑油を更に分配するために、フランジの外面に、適切なリセスを設けることが出来る。
【０００４】
【特許文献１】
米国特許明細書 第5,363,557号
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
現実には、公知のクランクシャフトのスラスト・ベアリングにおいて、ある種の条件又は、ある種の車種において、大きな磨耗が生じ得て、この大きな磨耗が、ベアリングの急激な摩滅につながる、ことが判った。
【０００６】
この背景に対して、本発明の目的は、磨耗しにくいクランクシャフトのスラスト・ベアリングを提供することである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
この目的は、請求項１の特徴をもつクランクシャフトのスラスト・ベアリングのためにベアリング・スリーブにより、達成される。
【０００８】
本発明によるクランクシャフトのスラスト・ベアリングのためのベアリング・スリーブは、（完全な）円筒面形状の又は部分的に円筒面形状の、好ましくは半分が円筒面形状のシェルを持ち、このシェルの内部がクランクシャフトのラジアル・ベアリングを形成する。シェルの両端に設けられるのは、径方向外側に向けられ、その外面が、軸方向から見た場合に、クランクシャフトのスラスト・ベアリングを形成するフランジである。側面の内側を周方向に延びるのは、少なくとも一本の油路である。ラジアル・ベアリングを潤滑するために、当該油路を介して、潤滑油が、クランクシャフトの回転中に、クランクシャフトの周りに分配される。組付状態で、油路は、エンジン・ブロックからの潤滑油供給部へシェルを貫通する穴を介して接続される。更に、上記の油路は、シェルの外側を軸方向に延びる溝を介して二つのフランジの少なくとも一つに接続される。
【０００９】
油路とフランジの一方との接続は、このフランジに形成されたスラスト・ベアリングの潤滑が良好なものとなる様に、このフランジに好ましい形で潤滑油が供給されるという作用を得る。よって、ある構成のエンジンや変速機における摩滅という不具合を、回避することが出来る。上記の溝は、フランジの一つだけにつながっていても、両方のフランジにつながっていても良い。これらの溝が両方のフランジにつながる場合には、潤滑油の供給量は全体として増大され、それで、非常に良好な潤滑がなされる。しかしながら、溝がベアリングの一つだけに繋がっている場合であっても、それが大きな荷重を受ける方であれば、ベアリングの耐荷能力を顕著に改善することができる。これは、上記の磨耗現象は、２つのスラスト・ベアリングの一方でのみ観察されるからであり、これは、荷重がある一方の軸方向に加わることが理由になっている。この一方側への荷重は、ある場合には、通常のクランクシャフトのスラスト・ベアリングの早期の磨耗に繋がるほどの大きなものになり得る。本発明によるベアリング・スリーブは、より大きな荷重がかかるスラスト・ベアリングへの潤滑油の供給を促進するので、シェルの一方側の溝によるだけで、上記の様な磨耗に対抗することが出来る。更に、フランジの一つのみに溝が連通しているという事実は、システム全体での潤滑油損失及び潤滑油圧損失が、狭い限界値内に留まるという利点を持つ。
【００１０】
溝がシェルの外側に配置され、シェルの内側の油路に少なくとも一つのシェルを貫通する通路を介して接続される。この通路は、油路に潤滑油を供給するためのシェルを貫通する穴とは別に設けられている。シェルの外側への溝の配置は、溝を通る潤滑油の流れが、ラジアル・ベアリングから流れ出る潤滑油により抵抗を受けないということを確実なものとする。というのは、溝が、シェルの外側とエンジン・ブロックとの間に、つまり互いに相対的に静止している二部品間に、油路を形成するからである。溝が一つだけの場合には、溝を配置する際に、クランクシャフトの回転方向が、考慮されなければならない。
【００１１】
シェルの外側の溝の最後に述べた配置において、この溝が、フランジを貫通する開口により、フランジの外側に接続されると有利である。この開口を介して、潤滑油は、溝からスラスト・ベアリングの表面へ導かれ、クランクシャフトの回転により、そこで受けられ分配され得る。
【００１２】
空隙が、フランジの部位に形成されるのが好ましく、そこを介して、スラスト・ベアリングの表面上での更なる潤滑油の分配が有効なものとなる。この場合、これらの空隙は、溝を介して輸送された潤滑油を直接受けるために、上述の溝に接続されるのが好ましい。
【００１３】
【発明の実施の形態】
図１に示されるのが、半円筒状ベアリング・スリーブであり、これは、エンジン・ブロックに対してクランクシャフトを取り付けるために、もう一つの同じベアリング・スリーブと共に、クランクシャフトの周りに取り付けることが出来るものである。この場合において、クランクシャフトは、複数のその様なクランクシャフト・スラスト・ベアリングを介して、エンジン・ブロックに接続されるのが一般的である。
【００１４】
図示のベアリング・スリーブ1は、軸方向に延びる半円筒面形状を持つシェル6を有する。径方向外側に延びるフランジ5と8が、シェル6の2つの軸方向端部に配置される。クランクシャフト・スラスト・ベアリングの組付状態において、シェル6の内側は、クランクシャフトのラジアル・ベアリングを形成し、一方で、フランジ5及び8の外面は、クランクシャフトのスラスト・ベアリングを形成する。
【００１５】
油路4が、シェル6の内側の全周に形成されている。図１から判る様に、油路4は、シェル6を貫通する二つの穴3に連通する態様で、接続される。それにより、潤滑油が、エンジン・ブロックに形成された潤滑油供給部（不図示）からこれらの穴3を介して油路4へ供給されるのが可能となる。
【００１６】
図１から判る様に、シェル6にまた別の開口若しくは穴2が形成され、この開口若しくは穴2は、シェル6を貫通し、油路4と連通する。シェル6の外側に置かれた溝7により、穴2が、フランジ8（図１の下側のフランジ、図２では左側のフランジ）へ連続する。次に、フランジ8自体へ設けられるのが、開口9であり、そこを介して、潤滑油が、フランジの前側へ連通することが出来る。溝7と穴2と9を介して、そこに形成されたスラスト・ベアリングを潤滑するために、潤滑油が油路4からフランジ8の方向に供給され得る。その過程において、クランクシャフトの表面粗さゆえに、クランクシャフトの回転中に、潤滑油がスラスト・ベアリングに導かれ、それにより、クランクシャフトは、流体力学的にベアリングに対して浮上する。記載された油路は、図１において網掛けで強調して示されている。
【００１７】
図２において、文字TとMは、変速機（T）、他方で、エンジン（M）の位置を、ベアリング・スリーブ1に対して相対的に示している。更に、曲線矢印は、クランクシャフト又はエンジンの回転方向を表している。結果として、シェル6の外側に形成された溝7は、変速機TからエンジンMへの方向に生じる軸方向の力（ブロック矢印）を、改善された油潤滑によって摩耗を最小限に抑えて吸収するために、変速機Tに近い方に配置されたフランジ8に連通する。
【００１８】
【発明の効果】
以上述べた様に、本発明によれば、クランクシャフトのベアリング・スリーブのスラスト・ベアリングの耐磨耗性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図１】半円筒状ベアリング・スリーブの下面図である。
【図２】図１のベアリング・スリーブの斜視図である。
【符号の説明】
1 ベアリング・スリーブ
2 穴
4 油路
5, 8 フランジ
6 シェル
7 溝
9 開口

Claims (3)

1. クランクシャフトのスラスト・ベアリングのためのベアリング・スリーブであって、その内側が上記クランクシャフトのラジアル・ベアリングを形成する円筒面形状又は部分的に円筒面形状のシェルを持ち、そして、該シェルの両端で始まり径方向外側に向けられたフランジを持ち、該フランジの外面が上記クランクシャフトのスラスト・ベアリングを形成し、
   上記シェルの内側を周方向に延びる少なくとも一つの油路と、
   上記シェルの外側を軸方向に延び上記両フランジのうちの少なくとも一方に接続されている溝と、
   上記油路に潤滑油を供給するために設けられた、上記シェルを貫通する穴と、
   上記油路から上記溝に潤滑油を供給するために上記穴とは別に設けられ、上記シェル内側の油路と上記シェル外側の溝とを接続するように上記シェルを貫通する通路とを備えている、ベアリング・スリーブ。
2. 上記溝が、上記フランジを通り抜ける開口を介して上記フランジの外側に接続される、請求項１記載のベアリング・スリーブ。
3. 油の分配のための空隙が、上記フランジに形成されている、請求項１又は請求項２に記載のベアリング・スリーブ。

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