JP4148847B2 - バーナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はバーナーに係り、より詳細には、可燃物であるものの、分子構造や混合物などの問題で燃料として利用が困難な、可燃性粉体や可燃性液体を単体でも燃料として完全燃焼できる、小型化が可能で且つ簡単な構成の新規なバーナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、動植物油・樹脂・木・紙・石炭等は以下のように処理されている。
(1)動植物油
・そのまま焼却処理する。
・ゴミや不純物の除去後、灯油・重油・軽油等に10%以下程度混ぜて、ガス等と混合燃焼されている。しかし、不完全燃焼しているので利用量に限界がある。
・精製(グリセリン除去・水除去・ゴミ除去)とエステル交換を行って燃料化して利用している。しかし、コストが高いとともに、副生成物の発生や臭気問題がある。
(2)樹脂
・そのまま焼却処理する。
・樹脂を油化して燃料としている。しかし、設備が大掛かりになるとともに、コストがたいへんかかる。
・高炉に炭素として吹き込んでいる。高炉でしか利用できない
・セメント製造時の助燃材として利用している。セメントしか利用できない
(3)木・紙
・そのまま焼却炉で焼却処理し、その熱エネルギーを利用している
(4)石炭
・火炉で燃焼させ、その熱エネルギーを利用している
・微粉化して微粉炭バーナーで燃焼する。しかし、設備規模が大型でバーナー構造がたいへん複雑である。
・微粉化し油と混ぜる(COM)後に微粉炭バーナーで燃焼する。しかし、設備規模が大型でバーナー構造がたいへん複雑である。
・微粉化し水と混ぜる(CWM)後に微粉炭バーナーで燃焼する。しかし、設備規模が大型でバーナー構造がたいへん複雑である。
【0003】
上記のように処理しているのは、以下の理由による。
動植物油・廃油・樹脂・木・紙・石炭等のチャー分の多い可燃物を単独の燃料として利用して燃焼すると、煤塵・煤・一酸化炭素・未燃物質(チャーを含む)等が生じて、公害問題を起こす。また、既成のバーナーを利用すると、未燃物質がバーナータイルの内壁やバーナータイルに接続されたボイラー等の内壁にも衝突し付着してしまう。付着した未燃物質中揮発分は可燃性気体として蒸発するが、チャーは酸素と拡散反応できずに堆積してしまう。チャーの堆積が進行すると、点火不能・火炎不安定性・煤塵発生・振動発生等の不都合が生じ、燃焼装置自体の操業が不可能となる。
【0004】
ところで、本出願人は、特許文献1において実用的な動植物油燃焼装置を既に提案しているが、この装置では、バーナータイル内の全体で、動植物油の噴霧粒に強い遠心力を作用させて1つの塊として旋回気流(サイクロン現象)を作り出している。従って、燃料となる可燃物の質量に、バラツキが有ると大きい噴霧粒が、バーナータイルの内壁に衝突し付着してしまうし不完全燃焼する可能性がある。樹脂・木炭・石炭・廃油などを、既成のバーナーで噴霧できるまでの一定の大きさにすることは困難である。
【0005】
【特許文献1】
特願2002−368297号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
動植物油・樹脂・木・紙・石炭等のチャー分の多い可燃物では、燃焼終了までに、「加熱→粒子温度の上昇→揮発分の放出→揮発分の着火→揮発分燃焼の終了→チャーの着火→チャーの燃焼」からなる多くの工程が必要となる。このために、特に燃焼を行うには、通常の燃料に比べて、十分な燃料の滞留時間・十分な燃焼空気中への拡散による酸化機会の増大・十分な燃料への加熱を可能にする点火エネルギーが必要になる。
従って、上記課題を解決するために、本発明は、動植物油・樹脂・木・紙・石炭等のチャー分の多い可燃物を、十分な燃料の滞留時間・十分な燃焼空気中への拡散による酸化機会の増大・十分な燃料への加熱を可能にする点火エネルギーを得ることができる新規な構成のバーナーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、以下の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
噴霧燃料を直進気流によって燃焼筒内に導入し、且つ燃焼筒内でその直進気流の回りに螺旋状態の旋回気流を作りだすと、噴霧された燃料は、螺旋状態の旋回気流に吸い寄せられて、燃焼筒内で拡散する。その結果として、燃焼筒内での燃料の滞留時間が長くなる。また、十分な燃焼空気中への拡散による酸化機会の増大が図れる。また、大容量のガス点火バーナーを用いることで、燃料の十分な加熱を可能とする。
【0008】
請求項1の発明は、先端側が開口した円形燃焼筒と、霧化燃料ノズルとしての燃料導入口を前記燃焼筒の基端側の中心に設けた燃料供給手段と、前記燃料導入口の周囲から前記燃焼筒の先端側の開口に向かって直進する気流を導入する直進気流導入手段と、前記燃料に連続した燃焼伝播を可能にする熱エネルギーを提供できる点火バーナーと、前記燃焼筒と連通して前記燃焼筒内で前記直進気流を囲みながら螺旋状に進行する旋回気流を導入する空気導入パイプを備え、供給された霧化燃料が前記燃焼筒内で拡散し、質量の比較的大きいものは旋回気流に吸い寄せられてその気流に乗りながらその軌道上で燃焼し、ガス化すると途中で直進気流に乗り移り、前記燃焼筒の開口まで運ばれ更に外に噴出されて燃焼することを特徴とするバーナーである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したバーナーにおいて、空気導入パイプが、燃焼筒の基端側の内面に対して91〜100°の角度で傾斜した状態で先端の出口が前記燃焼筒と連通していることを特徴とするバーナーである。
空気導入パイプを傾斜させることで、螺旋状態の旋回気流を安定した層状にできる。気流が安定した層状になると、旋回気流に乗った燃料の燃料筒内での滞留時間が長くなるだけでなく、仮に未燃部分が残ったとしても燃焼筒の開口まで安定的に運ばれることになる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載したバーナーにおいて、更に、旋回気流と直進気流との相対的な風量及び風圧を調整することで、旋回気流を相対的に高速の状態にする気流調整手段を備えることを特徴とするバーナーである。
旋回気流を高速で導入するには、ボイルの法則(PV=一定)に従い調整すればよい。例えば、旋回気流導入パイプの直径を著しく細くしたり、高速空気供給源としてのブロアの圧力を上げたりすることが想定される。実操業に当っては当業者が燃料の種類に応じて適宜最適なバーナーの設計条件及び運転条件を決定することになる。
ベルヌーイの定理によれば、高速になるほど気流の圧力は小さくなるので、燃焼筒内では、周囲の燃料は螺旋状態の旋回気流により吸い寄せられる傾向になる。従って、上記したように風量及び風圧を調整することで、質量の大きい燃料が螺旋状態の旋回気流に容易に吸い寄せられるようになる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載したバーナーにおいて、気流調整手段として、空気導入パイプの入口に接続した高速空気供給源を有することを特徴とするバーナーである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載したバーナーにおいて、空気導入パイプの出口内径が燃焼筒の内径の1/4以下に設定されていることを特徴とするバーナーである。この設定も気流調整手段の一態様である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載したバーナーにおいて、動植物油、重質油、廃油、再生油、または、汚水と油の混合物等の可燃性液体を燃料として利用できることを特徴とするバーナーである。
請求項7の発明は、請求項1から5のいずれかに記載したバーナーにおいて、微粉炭、木材、樹脂、草、紙等の可燃性粉体を、燃料として利用できることを特徴とするバーナーである。
本発明のバーナーは、上記のように、従来は燃料として単独で活用できなかったものを燃料として利用できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1から図3に従って説明する。
以下に、実施の形態に係るバーナーの構成を説明する。このバーナーは廃食用油用のバーナーである。
1はバーナーを示し、このバーナー1は断面が円形の燃焼筒3を備える。燃焼筒3は、セラミック、耐熱鋼等の保温性の良い材料で構成されている。燃焼筒3の先端側の開口はボイラー4に接続され、基端側には風箱5が取り付けられている。
【0015】
7は直進気流導入路を示し、この直進空気導入路7は燃焼筒3の後壁9を貫通して形成されている。直進気流導入路7は燃焼筒3の軸線方向中心部に位置している。直進気流導入路7の基端側は風箱5と接続されている。11は直進気流導入管を示し、この直進気流導入管11の先端側は風箱5と接続され、基端側はブロア13と接続されている。
直進気流導入路7から燃焼筒3内に導入された空気は、燃焼筒3の先端側の開口に向かって直進する気流となる。従って、直進気流導入路7と、風箱5と、直進気流導入管11と、ブロア13とによって直進気流導入手段が構成されている。
【0016】
15は燃料配管を示し、この燃料配管15の先端には燃料噴出口としての霧化燃料ノズル17が設けられている。燃料配管15は、燃料(F)、即ち廃食用油の供給源および加圧された噴霧用空気(A1)(所謂、一次空気)の供給源とそれぞれ接続されている。燃料(F)は、噴霧用空気の高速気流によってせん断された上で燃料導入口としての霧化燃料ノズル17から霧粒化した霧化燃料(S)として噴出される。
燃料配管15の一部及び霧化燃料ノズル17は、直進気流導入路7の中心を通るように設けられている。従って、霧化燃料(S)は直進気流中に取り込まれた状態で燃焼筒3内に噴出される。
この実施の形態では、燃料配管15と霧化燃料ノズル17によって、燃料供給手段が構成されている。
【0017】
19は旋回気流導入パイプを示し、この旋回気流導入パイプ19は燃焼筒3の側壁21を貫通して形成されている。旋回気流導入パイプ19は直線状に延びており、先端側の出口26(噴出口)は、燃焼筒3の側壁21の内面23に対して傾斜した状態で燃焼筒3と連通している。なお、傾斜した状態とは、燃焼筒3の内面23と旋回気流導入パイプ19の中心軸線(点線)とで定義される傾斜角度(θ)が、91°<θ<100°の場合である。なお、旋回気流導入パイプ19は内面23に向かうに従って縮径している。
旋回気流導入パイプ19の基端側は旋回気流導入管25を介してブロア27に接続されている。
【0018】
この実施の形態では、バーナー1の具体的な設計態様は以下の通りである。
【0019】
このバーナー1では、ブロア27の出力能力をブロア13の出力能力に比べて大きくし、更に、燃焼筒3の直径Dに対する旋回気流導入パイプ19の出口の直径d2を約1/10と非常に小さく設定することで、旋回気流を直進気流に対して高速状態で噴出することに成功している。
旋回気流導入パイプ19から燃焼筒3内に導入された空気は、燃焼筒3の円形の内面23に衝突することで旋回気流となる。このとき、該空気は内面23に対して傾斜した状態で導入されるので、旋回気流は、直進気流の周囲で安定的に層状、即ち螺旋状となる。即ち、燃焼筒3の基端側から開口までには、中心部分を直進する第1の通気経路と、内面23に沿って旋回しながら進む第2の通気経路が互いに安定的に形成されることになる。
【0020】
29は点火バーナーを示し、この点火バーナー29には図示しない燃料ガス(ブタンガス)供給源と空気供給源がそれぞれ接続されている。点火バーナー29は、廃食用油の連続した燃焼伝播を可能にする程度の熱エネルギー(約5〜10万キロカロリー)を提供できるものである。
【0021】
図3は燃焼筒3内の燃焼状態を示す。
霧化燃料ノズル17を囲んで、燃焼筒3の先端側の開口に向かって直進する直進気流(A2)が生成されている。また、矢印に示すように、直進気流(A2)の周囲に、燃焼筒3の先端側の開口に向かって旋回しながら進行する層状の旋回気流(A3)が生成されている。
霧化燃料(S)は霧化燃焼ノズル17から噴出されると、先ず直進気流中(A2)に取り込まれる。そして、質量の比較的小さいものは、直進気流(A2)に乗った状態で燃焼して更に小さくなりながら、燃焼筒3の開口まで運ばれる。また、質量の比較的大きいものは、層状の旋回気流(A3)に吸い寄せられて、その気流に乗りながら、その軌道上で燃焼し、ガス化すると途中で直進気流(A2)に乗り移る。
【0022】
層状の旋回気流(A3)に乗ると、直進気流(A2)に乗った場合に比べて、燃焼筒3の開口までの距離が長くなるので、質量の比較的大きい霧化燃料(S)の燃焼筒3内の滞留時間は長くなる。従って、質量の大きいチャー分が多く熱分解が遅れても、チャー分は層状の旋回気流(A3)に乗るので、燃焼筒3内で比較的長時間燃焼を持続できる。また、気流が層状となっているので、質量が比較的大きくとも、霧化燃料(S)が燃焼筒3内で衝突し付着してしまう危険性は低い。
【0023】
霧化燃料(S)が空気によって完全燃焼(酸化)されると、遠心力を受けない燃焼ガスに変わり、中央部に集まり、続いて直進気流導入路7より導入された直進気流によって、ボイラー4の方向に向かって噴出される。
また、旋回気流(A3)により保炎されて安定した状態で燃焼が進行する。また、旋回気流中に燃料が滞留するので、長炎にはならない。従って、燃焼筒3は比較的コンパクトに設計できる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的構成はこの実施の形態に限定されるものでは無く、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
燃料として、動植物油、重質油、動植物油等の廃油や再生油、汚水と油との混合物、破砕した木材、樹脂、草、紙等の種々の可燃性粒体を含む可燃物を利用できる。微粉炭やCOM等を利用する場合には、燃料導入手段として従来の燃焼装置のノズル等の構成をそのまま適用できる。
また、予め超音波発振器(例えば、本出願人の特開2002−195536号公報に開示のもの)を使用して微細化した燃料を使用してもよい。
【0025】
【実施例】
本発明の実施の形態に係るバーナー1を、以下の条件で24時間連続運転した。
(1)使用廃食用油の成分
廃植物油(菜種油) 約75重量%
水分 約15重量%
100μm以下の大きさを含む雑居物
(動物油脂、食物滓、炭化物等) 約10重量%
(但し、雑居物の大きさは超音波発振器により処理された後のものである。)(2)使用廃食用油の温度: 40〜50℃
【0026】
【表1】
【0027】
ボイラー4の出口から検出された排気ガス成分は以下の通りであった。
【表2】
【0028】
また、運転終了後、燃焼筒3の内部を観察したところ、チャーの蓄積の付着は見られなかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明のバーナーを使用すれば、可燃物であるものの、分子構造や混合物などの問題で燃料として利用が困難な、可燃性粉体や可燃性液体を単体でも燃料として完全燃焼できる。また、本発明のバーナーは小型化が可能で且つ簡単な構成とでできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るバーナーの斜視図である。
【図2】図1のバーナーの模式的断面図である。
【図3】図1の燃焼筒内の燃焼状態を説明する図である。
【符号の説明】
1‥‥バーナー 3‥‥燃焼筒
4‥‥ボイラー 5‥‥風箱
7‥‥直進気流導入路 9‥‥後壁
11‥‥直進気流導入管 13‥‥ブロア
15‥‥燃料配管 17‥‥霧化燃料ノズル
19‥‥旋回気流導入パイプ 21‥‥側壁
23‥‥内面 25‥‥旋回気流導入管
26‥‥出口 27‥‥ブロア
29‥‥点火バーナー
F‥‥燃料 S‥‥霧化燃料
A1‥‥噴霧用空気
A2‥‥直進気流 A3‥‥層状の旋回気流
Claims (7)
- 先端側が開口した円形燃焼筒と、霧化燃料ノズルとしての燃料導入口を前記燃焼筒の基端側の中心に設けた燃料供給手段と、前記燃料導入口の周囲から前記燃焼筒の先端側の開口に向かって直進する気流を導入する直進気流導入手段と、前記燃料に連続した燃焼伝播を可能にする熱エネルギーを提供できる点火バーナーと、前記燃焼筒と連通して前記燃焼筒内で前記直進気流を囲みながら螺旋状に進行する旋回気流を導入する空気導入パイプを備え、供給された霧化燃料が前記燃焼筒内で拡散し、質量の比較的大きいものは旋回気流に吸い寄せられてその気流に乗りながらその軌道上で燃焼し、ガス化すると途中で直進気流に乗り移り、前記燃焼筒の開口まで運ばれ更に外に噴出されて燃焼することを特徴とするバーナー。
- 請求項1に記載したバーナーにおいて、空気導入パイプが、燃焼筒の基端側の内面に対して91〜100°の角度で傾斜した状態で先端の出口が前記燃焼筒と連通していることを特徴とするバーナー。
- 請求項1または2に記載したバーナーにおいて、更に、旋回気流と直進気流との相対的な風量及び風圧を調整することで、旋回気流を相対的に高速の状態にする気流調整手段を備えることを特徴とするバーナー。
- 請求項3に記載したバーナーにおいて、気流調整手段として、空気導入パイプの入口に接続した高速空気供給源を有することを特徴とするバーナー。
- 請求項3または4に記載したバーナーにおいて、空気導入パイプの出口内径が燃焼筒の内径の1/4以下に設定されていることを特徴とするバーナー。
- 請求項1から5のいずれかに記載したバーナーにおいて、動植物油、重質油、廃油、再生油、または、汚水と油の混合物等の可燃性液体を燃料として利用できることを特徴とするバーナー。
- 請求項1から5のいずれかに記載したバーナーにおいて、微粉炭、木材、樹脂、草、紙等の可燃性粉体を、燃料として利用できることを特徴とするバーナー。
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