JP4148800B2 - 防振具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クリーンルーム環境での使用は勿論、機械設備或いはスタジオやスポーツジムの浮き床構造などの防振・除振に用いられる防振具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の防振具は空気バネ(密閉式/開放式)やコイルばねを使用したものなどが広く知られている。後者のコイルばね(102)を使用した従来の防振具(B)の例として、コイルばね(102)を収納する上カップ(105)と下カップ(106)との組み合わせ(図7参照)が一般的であった。
【0003】
このような構造の防振具(B)にあっては、その圧縮方向は防振具(B)に対して常に垂直方向であるとは限らず、圧縮比の大きいコイルばね(102)を使用した場合は、上カップ(105)が傾いたり水平方向にずれたりしやすく、このような状態において水平方向に力が加わったり偏心して上カップ(105)に力が加わった場合、小さい力であっても下カップ(106)に対して上カップ(105)が水平方向に移動したり傾いたりする。水平移動量や傾き量が大きいと上カップ(105)と下カップ(106)のオーバラップ部分が互いに接触して摩擦を生じ、発塵してしまう。しかもそれは同時に、防振具(B)自体のバネ剛性が引き上げられ、防振具(B)の固有振動数が高くなり所期の防振性能が低下する問題があった。
【0004】
その為、防振性能の劣化要因である擦れを回避し、基本性能を保証するためには、上・下カップ(105)(106)のオーバラップ部分の内・外径差(Δb)を出来るだけ大きくする必要がある。処が、現実にはこの内・外径部分に、上カップ(105)の内周面の一部から対称に内鍔を突設し、この内鍔に係合するように外鍔を下カップ(106)の外周面から突設した組立用の係合構造を配していることが一般的であるため、その係合部分を大きな寸法差(Δb)で構成することは困難であった。
【0005】
また、使用されるコイルばね(102)は一般的にヤング率の高いバネ鋼が使用され、めっきや塗装などの表面処理がなされているが、コイルばね(102)の伸縮により表面処理材の弱点部分から次第に微小部分が剥がれてパーテクルを生じ、これが周囲に散乱する発塵現象を生じる。従来のカップを用いた防振具(B)は、上・下カップ(105)(106)のオーバラップ部分に隙間があり、密閉構造となっていないため、前述のカップ擦れによって発生する発塵の他、コイルばね(102)からの発塵に対して無防備であった。
【0006】
一方、クリーンルーム内で使用される機器類の高度化に伴ってこれらの機器に対する防振の要請は非常に高い。しかしながらクリーンルーム内での機材の使用はクリーン度に応じた制限がある。そのため、より高いクリーン度を求められる環境下で使用する防振具の場合は、カップの無い裸状態で用いるなどは勿論、カップ式でコイルばね利用の防振具(B)を使用した場合でも、前述のようにその構造からクリーンルーム環境を汚染する問題があり適用環境に制約があった。
【0007】
また、前記カップ式の防振具(B)の場合、内・外鍔を係合させ、内部のコイルばね(102)を圧縮させた状態で持ち運びすることになるが、移送中に係合が外れるとばらばらになってしまうという問題があり、取り扱いに慎重を要した。特に、クリーンルームのような場合は勿論、一般の施工現場でも取り扱いのよさは施工能率にも関係し、防振具選定の非常に重要なファクタである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、[1]取り扱いが非常に簡便な一体となった防振具であること、[2]発塵性を排しクリーンルームでも使用可能であること、[3]その為にはばね定数に影響を与えない美観一体構造であること、など諸条件を同時に満足させることができるような防振具を開発することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
「請求項1」に記載の防振具(A)は「基台(20)に設置される下底(6)と、負荷(21)に取り付けられる上底(5)と、下底(6)と上底(5)との間に配設された負荷担持用のバネ(2)と、下底(6)と上底(5)との間にて前記バネ(2)を取り囲むように配設され、外に向かって基部 (7a) から湾曲状に膨出した突条(7)が側面全周に形成されている密閉状の軟質筒体(1)とで構成された防振具(A)であって、前記突条(7)の全周に凹溝(8) が単条または複数条にて形成され、前記基部 (7a) から前記凹溝 (8) に至る部分が前記凹溝 (8) 部分より厚肉に形成され」ている事を特徴とする。
【0010】
「請求項1」に記載の防振具(A)は、前述のように成形された軟質筒体(1)の上下両開口に上・下底(5)(6)を全周にわたり、嵌合接合することにより、軟質筒体(1)内を密閉状態にしたものである。これにより防振具(A)は「密閉式空気ばね」と同等の状態となる。従って、防振具(A)に変動負荷を伴う負荷が加わった場合、負荷変動に合わせて内部の空気が軟質筒体(1)から出入りすることがない。このことは防振具(A)内のバネ(2)のバネ定数に、負荷変動に合わせて伸縮し、これにより急変する軟質筒体(1)のバネ定数が加算され、防振具(A)全体の固有バネ定数が急変して防振具(A)のバネ特性を劣化させる(=入力した外部振動を所期の振幅まで減少させる事が出来ない)事を意味する。
【0011】
しかしながら、「請求項1」に記載の防振具(A)には、軟質筒体(1)の突条(7)の全周に凹溝(8) が単条または複数条形成されているので、その圧縮時には軟質筒体(1)が縮んで凹溝(8)部分が押され、凹溝(8)の溝底を中心にして凹溝(8)の上下の壁が互いに離間して凹溝(8)が口を開くように変形し、逆に伸張時には凹溝(8)の溝底を中心にして凹溝(8)の上下の壁が互いに接近して凹溝(8)が口を閉じるように変形することで凹溝(8)部分が集中的に変形し、これにより軟質筒体(1)の張力作用が最小限に抑制され、担持される負荷(21)の負荷変動が小さい場合には軟質筒体(1)の伸縮によるばね定数の加算を排除(軟質筒体(1)に収納されているバネ(2)のバネ定数に軟質筒体(1)の張力に起因するバネ定数[この場合、殆どゼロ]が加算されないようにすること)出来るのである。
【0012】
加えて凹溝(8)の場合は、圧縮時には軟質筒体(1)の容積が減少するが、凹溝(8)の口が前述のように開くので、凹溝(8)の溝底全体が内圧に従って外に押し出されるように移動して容積を拡大する。その結果、軟質筒体(1)の容積減少が凹溝(8)部分の容積増大にてある程度相殺される。このことは軟質筒体(1)の伸長時、逆の現象、即ち、伸長時には軟質筒体(1)の容積が増大するが、凹溝(8)の口が前述のように閉じるので、凹溝(8)の溝底全体が内圧に従って内側に引き込まれるように移動する。その結果、軟質筒体(1)の容積増大が凹溝(8)部分の容積減少にてある程度相殺される。その結果、軟質筒体(1)が密閉状態であったとしても空気圧縮によるばね性が大幅に緩和される。
【0013】
また、「請求項1」の防振具(A)は軟質筒体(1)内を密閉状態にしたもので、「密閉式空気ばね」と同等の状態となっているが、静定時の所定高さ(一定の負荷(21)が担持され、この負荷(21)に合わせて所定量だけバネ(2)が圧縮されて静止している状態)に対して大きな力が上底(5)に入力すると、この大きな力が防振具(A)を鉛直方向に圧縮しようし、これに合わせて防振具(A)の内部の容積が小さくなり内部圧力が増すことになる。
【0014】
この作用は、空気ばねのばね定数式がそのまま成り立ち、内部に収納されたバネ(2)の反力に前記密閉状態の軟質筒体(1)のばね反力が加算されることにより、大きな変位入力に対応して防振具(A)のばね定数が大きくなる方向(バネが硬くなる方向)に大きく変化する。その結果、大きな変位入力に対して防振具(A)の上底(5)が一時的に大きく沈み込む方向或いは大きく傾こうとするような挙動変位を抑えたいと意図する場合には極めて有効である。このような用途としては、スポーツジムの浮き床があげられる。スポーツジムの浮き床の上では大勢の人が音楽にあわせて一斉に飛び跳ねたり前後左右に移動するので、垂直方向および水平方向の大きな変位入力が常時浮き床を通して防振具(A)に加わることになる。このような用途に対しては、密閉状態にすることにより大きな変位入力に対応することができる。
【0015】
この軟質筒体(1)を用いた一体型の防振具(A)では、およそ考え得る、傾き、水平方向の変形に対しても従来例で説明したようなカップ型の防振具(B)のような摩擦は起こらない。また、内部に収納されたバネ(2)から発生した塵埃(パーテクル)も密閉状態の軟質筒体(1)内から外部に漏れることがなく、従来例で問題となっていたような発塵は全くなくなり、クリーンルーム環境への持ち込みが可能となった。
【0016】
次に「請求項2」は、「基台 (20) に設置される下底 (6) と、負荷 (21) に取り付けられる上底 (5) と、前記下底 (6) と前記上底 (5) との間に配設された負荷担持用のバネ (2) と、前記下底 (6) と前記上底 (5) との間にて前記バネ (2) を取り囲むように配設され、外に向かって基部 (7a) から湾曲状に膨出した突条 (7) が側面全周に形成されている軟質筒体 (1) とで構成された防振具 (A) であって、前記突条 (7) の全周に凹溝 (8) が単条または複数条にて形成され、前記基部 (7a) から前記凹溝 (8) に至る部分が前記凹溝 (8) 部分より厚肉に形成され、前記凹溝 (8) に内部空気の圧力開放用の通気口(9)が形成された」事を特徴とするもので、「請求項1」の防振具(A)が密閉状態であったものに対して、「請求項2」は軟質筒体(1)に内部空気の圧力開放用の通気口(9)を形成した事を特徴とするものである。
【0017】
つまり、「請求項2」は防振具(A)にどんなに大きな変位入力があっても、防振具(A)のばね定数に対して変動影響を発生させたくない場合(例えば、振動発生機器自身が大きな変位を伴っても支障がなく、振動絶縁性能を優先させたい場合)である。前述の請求項1の防振具(A)にあっては、外力入力に応じて密閉状の軟質筒体(1)が伸縮して軟質筒体(1)自体のバネ定数が内部のバネ(2)のばね定数に加算されるため、外力入力時にバネ定数が急上昇して外力入力による大きく圧縮されるような応答変位を抑えること(換言すれば、大きな外力が入力しても防振具(A)自体は大きく圧縮されないこと)には有効であるが、その瞬間は固有振動数も高くなることを示している。
【0018】
「請求項2」の防振具(A)では通気口(9)を設けることにより、防振具(A)の固有振動数に変化を与えたくない場合に対処することができる。この場合、通気口(9)を設けることにより軟質筒体(1)の内外が通気口(9)を介して連通することになるが、通気口(9)の開口面積は小さいものであるから、外部に噴き出される内部の塵埃は従来型のようなカップ型の防振具(B)と比べて少ないものであり、クリーンルーム内での使用も可能である。なお、「請求項2」の防振具(A)は後述する減衰機構(3)との組み合わせにより、減衰比を調整し応答変位を抑えることも可能である。この点は後述する。
【0019】
「請求項3」は、「請求項2」の防振具(A)の通気口(9)の通気口面積に制限を与えて、通気口(9)に空気の流出入の抵抗を利用したオリフィス減衰機能を与えようとするもので、「開放用通気口面積制限部材(9a)が通気口(9)に設置されている」事を特徴としたものである。
【0020】
つまり、通気口(9)の開口面積を予想される外力入力に対して適正な値とすることで適正減衰能を得ることが出来る。勿論、様々な開口面積を持つ開放用通気口面積制限部材(9a)を多数用意しておき、これらを交換することで或いは適切なものを選択することで予想される外力入力に対して適切な減衰能を得ることも出来る。またこの開放用通気口面積制限部材(9a)は、後述する減衰機構(3)との併用も可能であり、相互補完による特性の向上を可能とした。
【0022】
「請求項4」は、「少なくとも軟質筒体(1)から、アウトガスの発生しない材料で構成されている」ことを特徴とするものであり、これにより、スーパークリーンルーム内での使用にも適切なものとなった。アウトガスの出ない材料としては樹脂系エラストマで構成することが考えられる。なお、上・下底(5)(6)もアウトガスの出ない材料で構成することが好ましい。即ち、金属部分であるバネ(2)以外の部材をアウトガスの出ない材料で構成することが好ましい。
【0023】
「請求項5」は、前述した防振具(A)の内部に減衰機構として働く減衰材(3)を組み込むもので、「圧縮時に上・下底(5)(6)に接触するように、軟質筒体(1)の内部に減衰材(3)を配した」ことを特徴とするものである。このように、減衰材(3)を用いることで減衰比を調整することが出来、また「請求項3」によるオリフィス減衰効果と併用することもできる。
【0024】
「請求項6」は、「請求項5」の減衰材(3)の形状に関し「減衰材(3)の外周面に長手方向に沿って複数のフィン(3b)が形成されている」ことを特徴とするものである(図2の2点鎖線)。これにより、この減衰材(3)を仮にバネ(2)の内側に配置した場合、減衰材(3)をバネ(2)の中心部に簡単に配設することが出来、しかもその場合、減衰材(3)が圧縮された場合の膨らみに対しても、バネ(2)の内周面に接触しているフィン(3b)に剛性がほとんど無いためバネ(2)に圧縮変形による影響を与えない。更に、バネ(2)の内周面に減衰材(3)のフィン(3b)が接触しているので、バネ(2)に発生したサージングも効果的に減衰材(3)に吸収されてしまう。
【発明の実施の形態】
本発明の防振具(A)を実施例に従って説明する。図1〜3に示す防振具(A)は基台(20)に設置される下底(6)と、負荷(21)に取り付けられる上底(5)と、下底(6)と上底(5)との間に配設された負荷担持用のバネ(2)と、下底(6)と上底(5)との間にて前記バネ(2)を取り囲むように配設された軟質筒体(1)とで構成されている。そして、本実施例図では中央に減衰材(3)が配設されている。この減衰材(3)は必要に応じて設けられるもので、減衰材(3)が設置されない場合も存在する。勿論、ばね(3)は、コイルスプリングを用いてもいいし、皿ばねや板ばねを用いても良い。ここではコイルスプリングを使用する場合を代表例として説明する。
【0025】
軟質筒体(1)は上下両面が開口した円形筒状のもので、その中央に1乃至複数の突条(7)[図1〜3の実施例では1本である]が形成されており、その中央に突条(7)の全周にわたって1乃至複数の凹溝(8)[図1〜3の実施例では1本である]が形成されている。突条(7)および凹溝(8)の断面形状は略半円状(勿論、これに限られず断面略三角形状のようなものでもよい)で、後述するように、凹溝(8)を中心に伸縮するようになっている。従って、凹溝(8)部分の肉厚が凹溝(8)部分以外の部分の肉厚より薄く形成されていることが好ましい。そして、軟質筒体(1)の上下両面の開口(1a)(1b)には上底(5)および下底(6)の外周が嵌り込む嵌合溝(1c)(1d)が形成されている。
【0026】
軟質筒体(1)は、基本的にはバネ定数が非常に小さな軟らかで、変形してもそして温度変化があってもバネ定数の変化が小さいエラストマが好ましく、例えば、樹脂系エラストマなどが好適である。また、樹脂系エラストマはアウトガスの発生もなく、クリーンルーム内で使用する上において非常に好ましい。
【0027】
また、本実施例では軟質筒体(1)の側面には開放型の通気口(9)が形成されているが、凹溝(8)部分に形成され(勿論この部分に限られないが)、外部から目立たないようになっている。この通気口(9)は必要に応じて設けられるもので、当然、通気口(9)のない密閉型の軟質筒体(1)が使用される場合もある。
【0028】
前記通気口(9)は複数箇所形成されているが、いずれかの通気口(9)を閉塞して(或いは開口面積を変化させて)開口度を変更することも可能である。開口度調整部材である開放用通気口面積制限部材(9a)は例えば鍔付きの筒体で(図3(d)参照)、軟質筒体(1)と同じ材料が用いられ、盲又は通気口(9)より小さな孔(9b)が形成された小さなシート状のもの或いは鍔付きの盲栓又は通気口(9)より小さな孔が形成された栓で、通気口(9)に接着或いは差し込みによって取り付けられるようになっている。
【0029】
また、開口面積の異なる開放用通気口面積制限部材(9a)を多数用意しておき、予想される外力入力に合わせて最適の開口面積を有する開放用通気口面積制限部材(9a)を選定し、通気口(9)に装着するようにしてもよい。
【0030】
上底(5)及び下底(6)は軟質筒体(1)の嵌合溝(1c)(1d)に嵌まり込む樹脂製で円板状の上底本体(5a)及び下底本体(6a)と、上底本体(5a)及び下底本体(6a)にそれぞれ取り付けられる座プレート(5b)(6b)とで構成され接着固定されるようになっている。上底本体(5a)及び下底本体(6a)は軟質筒体(1)に比べて硬い樹脂にて構成されており、その外周全体に前記軟質筒体(1)の嵌合溝(1c)(1d)に嵌合する嵌合突条(5c)(6c)がそれぞれ形成されている。また、上底(5)及び下底(6)の中央には通孔(5d)(6d)が穿設されており、その内面の周囲にはリング状の突台(5e)(6e)が複数箇所[本実施例では6箇所]形成されている。そして、リング状の突台(5e)(6e)の間において通孔(5d)(6d)の周囲にはバネガイド突起(5f)(6f)が突設されている。
【0031】
上底(5)および下底(6)の外面には前記座プレート(5b)(6b)が嵌め込まれて接着される円形の掘り込み部(5g)(6g)が形成されており、その掘り込み部(5g)(6g)に前記通孔(5d)(6d)を中心に対称にて二つの位置決め突起(5h)(6h)が形成されており、更に前記位置決め突起(5h)(6h)を結ぶ線に対して直角に通穴(5i)(6i)が穿設されている。なお、上底本体(5a)及び下底本体(6a)に適用される樹脂の種類は特に限定されるものではないが、クリーンルーム内で使用する目的を有する場合にはアウトガスを放出しないような材質(例えば前述の樹脂系エラストマ)を使用することが好ましい。
【0032】
座プレート(5b)(6b)は円形の掘り込み部(5g)(6g)に嵌まり込むように形成された円形の金属板(用途によっては樹脂製でもよく、クリーンルーム仕様の場合は前述のアウトガスを放出しないものが使われる)で表面処理がなされている。表面処理方法は特に限定されるものではないが、クリーンルーム内で使用する目的を有する場合には塵埃を放出しないようなされ鍍金(例えば、クロメート処理)を施すことや或いはステンレスのような材質のものを使用することが好ましい。また、前記位置決め突起(5h)(6h)に合わせて位置決め通孔(5h1)(6h1)や通穴(5i1)(6i1)に合わせてネジ穴(5j)(6j)が穿設されている。
【0033】
バネ(2)は、表面処理がなされた圧縮コイルバネで形成されている。勿論、バネ(2)は圧縮コイルばねに限定されず、例えば板バネや皿バネのようなものでもよく、表面処理がなされている。
【0034】
必要に応じて用いられる粘弾性体(3)は棒状のもので、その材質は前述のように温度依存性が小さく、且つ圧縮してもバネ定数の変化が小さいものが好ましい。(例えば、前述の樹脂系エラストマ)。粘弾性体(3)の直径は最大が前記通孔(5d)(6d)に一致する大きさで、必要に応じて、その直径が減じられる。また、追加的に圧縮コイルバネ(2)内に配設される場合もあり、その場合の粘弾性体(3a)は圧縮コイルバネ(2)の内径より細く、その周囲に圧縮コイルバネ(2)の内周面に接するフィン(3b)が長手方向に平行に複数枚突設されている。
【0035】
軟質筒体(1)の嵌合溝(1c)(1d)には上底(5)及び下底(6)の嵌合突条(5c)(6c)が嵌合され軟質筒体(1)の開口(1a)(1b)をそれぞれ閉塞している。そして、リング状の突台(5e)(6e)間にはバネ(2)が配設されている。バネ(2)の配設数は要求されるバネ定数に応じて決定される。また、必要に応じて粘弾性体(3)が上底(5)及び下底(6)の通孔(5d)(6d)間に配設され、その下面が下底(6)側の座プレート(6b)に接着固定される。粘弾性体(3)の上面は上底(5)の座プレート(5b)に接触していてもよいが、図のように上底(5)の座プレート(5b) に接触せず、隙間が設けられている場合には、少なくとも負荷(21)が加わってバネ(2)が撓んだ時に座プレート(5b)に接触するようになっている必要がある。更に、減衰効果が不足する場合、追加的に粘弾性体(3a)を必要個数だけバネ(2)内に設置する。
【0036】
つぎに、本実施例の使用例について説明する。例えば、基台(20)である床スラブからの振動の伝達を遮断したい精密機器[=負荷(21)]や負荷(21)である浮き床のように負荷(21)からの振動を基台(20)である床スラブへの伝達を遮断したい場合に用いられるもので、基台(20)上に本実施例の防振具(A)を設置し、下底(6)のネジ穴(6j)を用いて防振具(A)を必要個数だけ基台(20)上の所定位置に固定する。続いて防振具(A)上に設備機器や浮き床などの負荷(21)を設置し、上底(5)のネジ穴(5j)を利用し防振具(A)に負荷(21)を固定する。これにより、防振具(A)は負荷(21)の重量に合わせて所定量だけ撓む。
【0037】
この状態で負荷(21)である設備機器が作動したり浮き床の上で人が跳んだり撥ねたり活発な運動を行うと振動が発生するが(或いは基台(20)である床スラブから振動が伝わってくるが)、当該振動に合わせて防振具(A)のバネ(2)が伸縮し、前記振動の基台(20)側への伝達(或いは基台(20)である床スラブから精密機器への振動伝達)を遮断する。一方、軟質筒体(1)もバネ(2)が伸縮に合わせて伸縮する。
【0038】
ここで、防振具(A)が「密閉型」の場合(図8(イ)参照)には軟質筒体(1)の伸縮があっても内部の空気は外部と遮断されていて流出・入することがない。そこで、防振具(A)に入力する負荷変動が小さい場合、圧縮時には軟質筒体(1)が縮んで凹溝(8)部分が押されることになるが、軟質筒体(1)の側面の突条(7)の基部(7a)が凹溝(8)より内側に位置しており、少なくとも前記基部(7a)から凹溝(8)に至る部分(7b)が凹溝(8)部分より肉厚に形成されており、このとき変形しないので、凹溝(8)は凹溝(8)の溝底を中心にして凹溝(8)の上下の壁が互いに離間して凹溝(8)が口を開くように変形する。逆に伸張時には凹溝(8)の溝底を中心にして凹溝(8)の上下の壁が互いに接近して凹溝(8)が口を閉じるように変形する。このときの変形抵抗はほとんどゼロである。
【0039】
そして、前記圧縮時には軟質筒体(1)の容積が減少するが、凹溝(8)の口が前述のように開くので、凹溝(8)の溝底全体が内圧に従って外に押し出されるように移動して容積を拡大し、軟質筒体(1)の容積減少が凹溝(8)部分の容積増大にてある程度相殺される。このことは軟質筒体(1)の伸長時でも同様で、逆の現象、即ち、伸長時には軟質筒体(1)の容積が増大するが、凹溝(8)の口が前述のように閉じるので、凹溝(8)の溝底全体が内圧に従って内側に引き込まれるように移動し、軟質筒体(1)の容積増大が凹溝(8)部分の容積減少にてある程度相殺される。その結果、軟質筒体(1)が密閉状態であったとしても空気圧縮によるばね性が大幅に緩和される。
【0040】
なお、負荷変動が大きい場合には前述のように軟質筒体(1)内の内圧が外力の入力と同時に急上昇して防振具(A)の大きな圧縮変形あるいは大きな傾きが抑制され、負荷(21)の大きな変位発生が防止される。
【0041】
これに対して防振具(A)に通気口(9)が形成されている場合(図8(ロ)参照)、軟質筒体(1)内の空気がある抵抗を持って通気口(9)から出入りし、これにより減衰性能を発揮する。従って、軟質筒体(1)の伸縮に伴う通気口(9)からの一定の抵抗を以って行われる空気の出入りにより振動が急速に減衰し、負荷(21)が短時間で揺れの小さい安定状態になる(図9(イ)参照)。
【0042】
また、軟質筒体(1)の伸縮は前述のように主として凹溝(8)を中心に図3(b)(c)に示すように行われる。即ち、軟質筒体(1)が圧縮された時、凹溝(8)が口を閉じるように撓み、伸長した時、凹溝(8)が口を開くように撓む。これにより軟質筒体(1)のバネ定数は非常に小さくなり、バネ(2)のバネ定数に対する影響はきわめて小さくすることができ、防振具(A)の固有振動数の上昇が抑制され、バネ(2)の防振性能を十分に発揮させることができる。
【0043】
通気口(9)による減衰能力が不足する場合には、通気口(9)に適切な開口度を持つ開放用通気口面積制限部材(9a)を装着する。適切な通気口(9)とすることにより高い減衰能を発揮させることができる(図9(ロ)参照)。
【0044】
また、開口面積の異なる開放用通気口面積制限部材(9a)を多数用意しておき、予想される外力入力に合わせて最適の開口面積を有する開放用通気口面積制限部材(9a)を選定し、通気口(9)に装着するようにしてもよい。
【0045】
更に減衰能力が不足する場合(図10(イ)参照)には、前述のように上・下底(5)(6)の通孔(5d)(6d)間に棒状の粘弾性体(3)が取り付けられ、圧縮状態において上底(5)に粘弾性体(3)が接触・圧縮されるようにする。この粘弾性体(3)は圧縮状態において適宜変形してその状態を保つことになるので圧縮状態においてもバネ定数が変化せず、バネ(2)のバネ定数に影響を与えることがない。特に、樹脂系エラストマのような温度依存性が小さい材料を使用すれば、使用環境の温度変化が大きかったとしても前記バネ定数がほとんど変化せず、防振具(A)の固有振動数の上昇が抑制され、バネ(2)のバネ定数に影響を与えることがない(図10(ロ)参照)。
【0046】
また、前記棒状の粘弾性体(3)の追加でも減衰能力が不足する場合、前述のように側面にフィン(3b)が形成されている補助粘弾性体(3a)をスプリングコイル(2)内に適数だけ挿入することで減衰能力の強化を図ることができる。前記補助粘弾性体(3a)は棒状の粘弾性体(3)と同様、防振具(A)が少なくとも圧縮されたときに上底(5)に接触して減衰機能を発揮することになる。
【0048】
また、座プレート(5b)(6b)の形状も円板状のものに限られず、一方を円板状、他方を矩形あるいは菱形とすることも可能である。上底や下底が矩形あるいは菱形の場合、そのコーナー部分にボルト用の取付孔が形成されることになる。
【0049】
また、図6に示すように、粘弾性体(3)を複数個併設し、その周囲にバネ(2)を配設するようにしてもよい。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、基台に設置される下底と、負荷に取り付けられる上底と、下底と上底との間に配設された負荷担持用のバネと、下底と上底との間にて前記バネを取り囲むように配設された軟質筒体とで構成された防振具であるから、従来例のように上・下カップが互いに接触して発塵するような部位が機構上存在せず、しかも気密性を保持しつつ発塵の一原因となるバネ全体が軟質筒体内に収納されているので、内部の塵埃が外部に漏れ出すことがなくそれ故、クリーンルーム環境に於いても優れた適応性を示すことになる。
【0051】
しかも、軟質筒体の側面に設けられた突条全周に凹溝が形成されているので、入力した負荷変動が小さい場合には、軟質筒体の変形は変形抵抗がほとんどない凹溝が主として担持し、これによって軟質筒体のばね剛性が内部に収納されたバネのバネ定数に加算されず、防振具自体の固有振動数を変化させることがなく、防振具の除振能を損なわず、所期の除振能を発揮させることができる。その他、大きい外力が加わった場合でも、当該外力に対抗して内圧を急上昇させることができ、防振具の大幅な圧縮変形を防止することができる。特に、凹溝部分を他の部分より薄肉とすることで凹溝部分がより変形しやすくなり、変形時のバネ定数の加算が抑制され、防振具の固有振動数の変化が防止される。
【0052】
また、通気口を設けた場合、簡単に減衰能付加することができるので、負荷から伝わった振動は前記バネで吸振され、この振動に合わせて伸縮を繰り返すと共に軟質筒体内の空気が通気口を通って出入りため、その時の抵抗により減衰機能が働き、短時間で負荷の揺れが収まる。なお、この場合においても、通気口は小さいため内部の塵埃が通気口を通って外部にほとんど流出しないので、クリーンルーム内での使用も可能となる。
【0053】
なお、ばね以外のすべての部材(特に、軟質筒体)をアウトガスのでない粘弾性体で形成すれば、スーパークリーンルーム内での使用も可能となる。
【0054】
以上のように、本発明にかかる防振具はスーパークリーンルーム内での機械設備への適用からスタジオやスポーツジムの浮き床構造まで幅広く適用することができ、特に、スタジオやスポーツジムの浮き床の防振用に使用した場合、利用者に不快感を与えることがなく好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防振具の正面図
【図2】図1の平断面図
【図3】図1の縦断面図
【図4】突条に凹溝の代わりに凸畝が形成されている参考例に係る防振具の縦断面図
【図5】突条が蛇腹状に形成されている参考例に係る防振具の縦断面図
【図6】本発明に係るツインタイプの防振具の平断面図
【図7】従来例の断面図
【図8】本発明の防振具における「密閉時」と「開放時」の伝達特性曲線図
【図9】本発明の防振具の通気口に開放用通気口面積制限部材を装着した場合と装着しなかった場合との減衰能の比較図
【図10】本発明の防振具に減衰材を適用した場合と適用しなかった場合の比較図
【符号の説明】
(A)…防振具
(1)…軟質筒体
(2)…バネ
(5)…上底
(6)…下底
(7)…突条
(8)…凹溝
(8a)…凸畝
(9)…通気口
(20)…基台
(21)…負荷
Claims (6)
- 基台に設置される下底と、負荷に取り付けられる上底と、前記下底と前記上底との間に配設された負荷担持用のバネと、前記下底と前記上底との間にて前記バネを取り囲むように配設され、外に向かって基部から湾曲状に膨出した突条が側面全周に形成されている密閉状の軟質筒体とで構成された防振具であって、
前記突条の全周に凹溝が単条または複数条にて形成され、
前記基部から前記凹溝に至る部分が前記凹溝部分より厚肉に形成されている事を特徴とする防振具。 - 基台に設置される下底と、負荷に取り付けられる上底と、前記下底と前記上底との間に配設された負荷担持用のバネと、前記下底と前記上底との間にて前記バネを取り囲むように配設され、外に向かって基部から湾曲状に膨出した突条が側面全周に形成されている軟質筒体とで構成された防振具であって、
前記突条の全周に凹溝が単条または複数条にて形成され、
前記基部から前記凹溝に至る部分が前記凹溝部分より厚肉に形成され、
前記凹溝に内部空気の圧力開放用の通気口が形成された事を特徴とする防振具。 - 請求項2に記載の防振具であって、開放用通気口面積制限部材が前記通気口に設置されている事を特徴とする防振具。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の防振具であって、少なくとも前記軟質筒体が、アウトガスの発生しない材料で構成されていることを特徴とする防振具。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の防振具であって、圧縮時に前記上・下底に接触するように、前記軟質筒体の内部に減衰材を配したことを特徴とした防振具。
- 前記減衰材の外周面に長手方向に沿って複数のフィンが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の防振具。
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