JP4148697B2 - 来待石の焼成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、来待石原石や原石加工品などの石材に燻し状の模様を施すことができる焼成方法に関する。また本発明は、焼成した板状来待石の石板焼き用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然石材製の壁面飾りや置物などに着色を施して変化を与えて商品価値を付加することは以前から行われている。例えば、特開平6−144954公報や特開平8−253379号公報などに示されるように、石材に紬薬を塗布して焼成する方法が一般的である。一方、特開2000−143366号公報に示されている技術は、凝灰質砂岩(来待石)について、紬薬など着色用剤を塗布することなく、単に焼成温度を選択することで、赤乃至赤茶色(1000〜1100℃)、赤茶色乃至こげ茶色(1100〜1200度)、こげ茶色乃至黒色(1200〜1300℃)のいずれかの色を選択的に着色することができると言う技術が開示されている。
【0003】
しかし、石に塗装することは平面的で変化に乏しく、また紬薬での呈色は陶器ような外観になり、石独自の面白さには乏しい。これに対し、焼成温度の違いで様々な色を施す技術は、凝灰質砂岩に限定されているとはいえ、石独特の呈色方法として画期的なものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した焼成温度の違いによる呈色方法は、自然の風合いを持った色彩でも赤色から茶色、さらに黒色へと変化する一系統の着色であった。また、石全体が同じ色に着色され、変化に乏しい嫌いがある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は、着色に変化を与えるため種々研究した結果、燻しに着目し、本発明を完成させたものである。燻しとは、焼き物の表面に炭素を付着、吸着させて黒色系統の色に呈色させるもので、燻し瓦や備前焼が有名である。
【0006】
即ち本発明者は、来待石原石や原石加工品などの石材を焼成するに際し、炭、タドン、豆炭、わら等の炭素含有物を該石材に密着するかその近傍に載置して、焼成してみた。すると驚くべきことに、焼成物全体は赤色から茶色に呈色するが(焼成温度は800〜1180℃)、炭素含有物に接した近傍は灰色や黒色に呈色した。この黒色は、石材の内部まで達していた。
【0007】
これは、後述するように、来待石を焼成すると減量が激しくまた吸水量が増大することから、内部に連続した空隙が生じ、この空隙を伝って炭素(煤)が石材内部まで移動することによると思われる。このことは、碗状の石材加工品の内部に別の加工品を収容し、碗状石材加工品の外側に炭素含有物を載置して焼成した場合に、内部に収容した別の加工品にまで炭素が付着(吸着)していることからもうなづかれる。
【0008】
しかもこの炭素は、焼成窯内部の空気の流れによって移動し、また、空気の流れ自体が変動するので、赤〜茶系統の色のなかで、全く予期しない黒〜灰色の付着模様を表出する。
【0009】
もっとも、この黒系統の着色は、炭素付着による以外に、炭素含有物の燃焼による部分的な温度上昇に起因することも考えられる。即ち、炉内温度は設定温度(例えば1120℃や1150℃)に設定されていても、炭素含有物の燃焼による酸化焔が部分的に1180℃や1200℃になっていれば、その部分の石材表面は焦げ茶色や黒色に呈色する可能性がある。尚、炭素含有物の燃焼による還元焔が当たる部分、例えば炭に覆われた石材の部分は、還元燃焼により赤〜茶系統の色が薄くて色あせた状態に呈色される。
【0010】
従って、本発明によれば、焼成温度による赤〜茶系統の着色の他に、炭素の付着、吸着による鈍い銀色光沢を発する灰黒色から黒色の着色、部分的な昇温焼成による焦げ茶色や黒色の呈色、及び還元燃焼による色あせた赤〜茶系統の着色と言った様々な色が、石材表面に表出できる。
【0011】
更に、石材表面に釉薬を塗布して焼成すると、釉薬の種類や施釉量、施釉箇所などによって、更には前記着色との組み合わせによって、実に様々な色や模様を現出することができる。
【0012】
ところで、本発明が対象とする来待石は、島根県に存在する宍道湖の南岸に広く分布する新第三紀中新世出雲層群下位層来待層を構成する凝灰質砂岩のことを言い、良質のものは、塊状凝灰質粗粒砂岩のうち特に淘汰の良い岩相の所に集中し、八束郡玉湯町から宍道町にかけての東西約10km、幅1〜2kmの範囲に存在する。この来待石は、石質が柔らかく採掘、加工が容易で、出雲石灯ろうは伝統工芸品に指定されている。
【0013】
この来待石は、多種多様な岩石片や結晶片、それらを埋める基質から構成されている。岩石片のサイズは径0.5mm〜1.0mmが多く、最大でも1.5mm程度である。岩石片や結晶片の占める割合が80%と多い。岩石片としては、安山岩、石英安山岩、流紋岩、花崩岩、多種類の凝灰岩などが確認されている。結晶片としては、斜長石、輝石、角閃石、黒雲母、不透明鉱物、火山ガラス、変質鉱物が確認されている。また、基質としては、変質によってできた沸石、緑泥石、炭酸塩鉱物が確認されている。
【0014】
来待石には、来待錆石、来待白石とがあり、前記説明は来待錆石についてのものである。一方、来待白石は年代が古く、流紋岩系でモンモリロナイトに変質した部分が多い。そのため、焼成するとバラバラになって石の形を留めないので、本発明には使用できないものである。表1に、両者の分析値を示す(島根県発行「島根の地質」)が、焼成して赤や茶色に呈色するのは中に含まれる鉄のためである。尚、表中数値は重量パーセントを示す。
【表1】
Figure 0004148697
【0015】
次に、焼成温度について説明する。本発明における焼成温度は、800℃〜1180℃である。800℃以下だと、鉱物のガラス化ができずもろくなる。また、1200℃を越えると、来待錆石は1200℃では融解(溶融)してボロボロになってしまう。1180℃が、石の形を保つ限界である。1120℃〜1150℃が強度的には好ましい。焼成温度が低いほど石材の変形が少ないのことからみて、保形性からは1120℃前後、強度からは1150℃前後が最適な焼成温度ということができる。これらの温度は、本発明が電気炉を使用して慎重に測定したものである。従って、800〜900℃(〜1000℃)の温度は、釉薬を塗布する場合の下焼(素焼き)として好ましく使用され、1100〜1180℃の温度は、釉薬を塗布した場合の本焼き或いは釉薬を使用しない場合の焼成に好ましく使用される。尚、1180℃以下の焼成では、焼成前の形状に対して焼成物の形状変化はほとんど認められない。
【0016】
そして、800℃で黄土色と言うか薄赤や薄茶色を呈する。900〜1100℃位で次第に強い赤色となり、1150℃まででこげ茶色となり、1180℃を越えると黒色を帯びてくる。尚、ここに言う温度は最高温度を意味する。即ち、図1は本発明における焼成温度パターンの一例を示すが、常温から徐々に昇温して1120℃に至り、しばらく1120℃(最高温度)に維持した後降温する。この場合の焼成温度を、1120℃と言う。この昇温は、常温から2時間かけて100℃、次の2時間(累積4時間)で200℃、次の4時間(累積8時間)で500℃、次の4時間(累積12時間)で800℃、次の3.5時間(累積15.5時間)で1120℃にする。そして、そののち0.5時間の間1120℃を保ち、その時点で電源を切る。ここまでの累積時間は16時間である。その後自然放冷で約2日(48時間)後に常温まで冷却する(累積時間約64時間)。尚、この焼成温度パターンは一例であるが、最高温度が1150℃や1180℃の場合も、ほぼ同様のパターンで焼成する。
【0017】
次に、来待石(来待錆石)を各温度で焼成した場合の減量の程度と吸水率を表2に示す。吸水率は、ほぼ空隙率に等しい。まず、供試体を準備する。供試体は、縦・横・高さ(厚み)が5cm・10cm・3cmの来待石ブロックで、原石のままと、800℃、1120℃、1150℃、1200℃の各温度で焼成するもの5種類を、各種類6個ずつの計30個を作成した(重量は、平均で約332g)。
【表2】
Figure 0004148697
【0018】
そして、浸漬時間0分の欄に示すように、800℃焼成で重量の減量割合は4.82%(対原石)、1120℃で10.52%、1150℃で11.00%、それぞれ減少する。尚、1200℃では溶融して部分的にではあるが石の形を留めなかった(原石、各焼成温度分とも、各々6個の平均)。尚、焼成時間は、図1に従った。即ち、1100〜1180℃の焼成で、原石重量の約10%が減少する。これは、来待石には焼失する物質が多く含まれ、またガラス化に伴う岩片、鉱物等の粒子結合による空隙の拡大によるものと思われる。この空隙は連続空隙であると思われる。また焼成物の表面は目視、触感でも焼成温度を上げるにつれてザラザラ感を増し焼成による多孔質組織に変化していた。
【0019】
次に、この原石と各焼成物を、20分、40分及び60分の間水に浸漬し、引き揚げてその重量を測定した(1200℃焼成品を除く)。浸漬時間により吸水率は増えるが、60分で略平衡となる。その結果、原石では2.59%の吸水率を示したが、この吸水率は略空隙率と等しいと見て差し支えない。吸水率は、800℃焼成で3.17%となるが、原石とあまり変わらない。これに比べて、1120℃焼成や1150℃焼成では、10.68%、11.84%と吸水率即ち空隙率が急激に増大する。そして、この空隙(連続空隙)を伝って、炭素原子が移動し、石材に燻し模様を表出することになる。
【0020】
上述した各焼成温度は、電気窯により測定したものであるが、本発明は電気窯に限らず、石油やガス、薪などの燃料を使用する窯も当然に用いられる。また、単独窯のほか登り窯や連続窯でも焼成可能である。
【0021】
炭素含有物は、炭のほか、タドン、豆炭、木材、松根、松葉、わら、籾殻等、貧酸素状態(還元状態)で炭素原子を放出する物質が使用される。これらの炭素含有物は、石材の燻し模様を表出したいと思う箇所に密着させるか、或いはその近傍に載置する。或いはプロパンなどの炭化水素ガスを吹き付けて、部分的に貧酸素雰囲にして焼成するようにしてもよい。
【0022】
次に、施釉焼成について説明する。来待石に釉薬を塗布して焼成した場合には、施釉しない場合と同様に、来待石の内部に連続空隙ができる。そのため、通常の施釉焼き物とは異なって、施釉面に細かな小孔が生じるし焼成物自体も多孔質となる。そこで、施釉焼成については、二つの方向が考えるれる。一つは、下焼と言うか素焼きと言うか施釉焼成の前に1100〜1180℃の高温で一度焼成して内部のガス化を完全に行わせた後、その表面に施釉して再度同様の高温で焼成するものである。この場合には、釉薬面には細かな小孔は生ぜず、通常の焼き物と同様に水が漏れるようなこともない。但し、その表面は釉薬に覆われており、表面にはザラ感というか細かい凹凸は感じられるが通常の陶磁器と同じような外観を与える。
【0023】
もう一つは、素焼きをしないかせいぜい800〜900℃程度の低温で素焼きを行い、その後に施釉して焼成する方法である。この場合、施釉しない場合と同様に施釉面にも連続孔が生じるので、炭素含有物を置いて燻しを行うと、炭素(煤)が釉薬面にも付着し、えもいわれない複雑な色調模様の表出が可能となる。勿論、炭素含有物の配置の仕方によって、炭素の影響のない釉薬面も得ることができる。但し、この場合石材の全面を釉薬で覆ったとしても、水漏れするので、そのままでは花器などには使用できない。素焼きを行わずに施釉して焼成することも当然にできる。
【0024】
ところで、本発明で使用する釉薬は、一般に使用される陶器容の釉薬とは異り、低温溶融することが必要になる。一般の陶器での本焼温度は1200〜1300℃であるが、本発明での石材の焼成温度が1120℃〜1180℃である(素焼きは除く)ところから、その程度の温度で溶融してガラス状表面を作る釉薬であることが必要である。
【0025】
そこで、本発明者は、来待石(来待錆石と来待白石)の粉末に硼砂を加えたものを使用してみたところ、来待石との相性も抜群で、黒褐色の光沢も優れた釉薬が得られた。ここで、来待白石は透明釉として作用する。釉薬としては、その他、長石やカオリンに硼砂を加えたものに呈色用の各種金属酸化物を添加した種々なものが使用できる。
【0026】
次に、酸処理について説明する。来待錆石は、表1に示すように5〜6%のCaOを含んでいる。実際はCaCO3 の形で存在しているが、石材中に均一に分布しているのではなく、粒状或いは層状となって偏在している。そして、水分を含むとCa(OH)2 となって膨張し、石材や石材加工品を破損することがある。しかも、CaCO3 は1200℃以下の温度では他の鉱物等と結合したりせず、CaOの形で残るので、水分を含むとCa(OH)2 となって膨張する。
【0027】
従って、石材製品の破損防止として、石材を酢酸などの有機酸で処理してCaCO3 を除去することが望ましい。CaCO3 は多くの酸に溶けるが、無機酸では焼成時に濃度が濃くなって悪影響を及ぼすので、焼成で分解する有機酸を使用する。酢酸の代わりに木酢液や竹酢液も使用できる。来待錆石は焼成しなくても多孔質であるので、酢酸液に浸漬したり刷毛塗りすると石内部まで浸透してCaCO3 を融解し、水洗により除去できる。その後、乾燥して焼成、或いは施釉・焼成すると、割れの無い製品が得られる。
【0028】
本発明の実施対象は、適宜大きさに切り出した来待石原石の他、灯籠や手水鉢、その他庭の置物なども含まれるが、余りに大きいものは焼成に時間がかかる焼成時に温度歪みが生じて破損する恐れもある。最も好ましいのは、植木鉢や寄せ植え皿、小型の置物、飾り物、花瓶等の花器など、一辺が20〜40cm以下程度の大きさのものである。更に、タイルや敷石など建築材料も含まれる。尚、本発明の焼成来待石は原則として多孔であるので、水を入れる花器や置物の場合、漏れ止めを行ったり水を入れる別容器を内蔵するようにしたり、或いは高温焼成のあと施釉して同様に高温焼成をするなどをする必要がある。
【0029】
そして、これらの置物や植木鉢、飾り物、花器等は、1120℃〜1180℃の焼成による赤〜焦げ茶色に、燻しによる部分的な鈍い銀色光沢を有する灰黒色〜黒色の呈色、還元焔による退色した赤〜焦げ茶色などが組合わさって、非常に趣のあるものが得られる。これに釉薬を加えると変化は更に大きくなる。
【0030】
尚、燻しとは無関係であるが、同様に焼成した板状の来待錆石は、鉄板焼に使う鉄板の代わりに使用できる。この石板焼き用具は、板状にした加工品を1120〜1180℃の高温で焼成するか、或いは石材を高温で焼成した後板状に加工して得られる。この石板焼き用具は、素材が鉱物であるので、遠赤外線放射して、内部まで熱が浸透する。遠赤外線放射の点では陶板も同様であるが、陶板は鉄板と同様に孔がないので、焼肉など脂身の多いものを調理する場合、脂が除去されずに脂が多い料理となり、栄養上好ましくなし食味も悪くなる。これにら対し、本発明の石板焼き用具は、連続多孔質であるので、脂が除去できる利点がある。しかも、網や孔開鉄板のように火が直接当たって肉が焦げることもない。尚、石板焼き用具の場合も、施釉したり燻しを施して変化を付けることも当然に行える。
【0031】
【実施例】
(実施例 1)
次に、図面に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。図2は、本発明方法により得られた壺型置物の一例を示す。この壺型置物1は、来待錆石の壺型加工品1Aを図3に示すように電気炉2に収納し、その根元に炭3を密着積み上げて焼成したものである。電気炉2は、内法寸法が60×60×63cm、最高焼成温度1300℃のもので、断熱材21の内側にヒーター22を配置している。符号23は蓋、24は通気孔である。壺型加工品1Aは、他の複数の加工品(図示略)とともにセラミック製台25やセラミック製板上に載せられて積み込み収納されている。
【0032】
この状態で電気炉2内部を図1に示す焼成温度パターンで加熱すると、炭3が貧酸素状態で還元燃焼して遊離炭素が発生する。と同時に或いは前後して、壺型加工品Aは減量を始めて内部に空隙が生じはじめる。そして、発生した炭素は空気の流れに従って壺型加工品1Aの一部に突き当たり、表面のみならず空隙を伝って内部にも浸透して付着する。その結果、図2の壺型置物1には、積み上げた炭3よりも上側の位置に、燻し模様11が表出される。また、積み上げた炭3の位置近傍には、還元焔による退色した薄褐色(還元色)模様12が現れる。尚、還元色模様12の中には、一部炭素が付着した薄灰色も見られる。壺型置物1の他の部分は、来待錆石が焼成により発色する赤〜茶系統の色(焼成色)となる。尚、なぜか理由は不明であるか、壺型置物1の下半分の焼成色13に比べて、上半分の焼成色14の方が色が濃く表れていた。
【0033】
(実施例 2)
図4は、部分的に施釉して焼成した角型花瓶4を示す。この角型花瓶4は、4面の内相対する2面に釉薬を塗布し、他の2面は石材の生地そのままにして、前記例と同様にして根元に炭をおいて焼成したものである。釉薬は、来待錆石65%と硼砂35%の割合で混ぜて粉砕したもので、これを薄く釉掛けした。その結果、釉薬を塗布した面は艶のない黒褐色の釉色41を呈し、生地そのままの面は、前記例同様に焼成色42に発色した。そして、その下方には前記例同様に燻し模様43、44、還元色模様45、46が表れたが、燻し模様43、還元色模様45は釉色41と重なって更に異なった色となった。そのため、この角形花瓶4では全部で6種類の色、しかもそれぞれの中も微妙に異なる複雑な色を表出することとなった。
【0034】
(実施例 3)
図5は、前記各例とは異なり、燻しは使用せず、全体に施釉して焼成した丸型花瓶5を示す。この丸型花瓶5は、釉薬として来待錆石42%、来待白石23%、硼砂35%の割合で混ぜて粉砕したもので、前記例の釉薬と比較して艶がある点が異なる。この艶は来待白石に起因する。また、焼成温度は1150℃で、焼成温度パターンは、図1に従った。尚、図中符号51は釉薬色、52は釉薬に金属酸化物を加えて青に呈色する釉薬を試しに塗布した跡、53は釉薬を厚塗りしたための釉薬とび跡、54は、石材中の鉄分と釉薬が化合して黒色に呈色した斑点である。
【0035】
(実施例 4)
次に、石板焼き用具について説明する。図6(a)に示す石板焼き用具6は、まな板状に加工した来待錆石を図1の焼成温度パターンに従って焼成したもので、全体が赤褐色に呈色している。符号61は把手用の透孔である。この石板焼き用具6は、図6(b)に示すように、細かな連続空隙62が全体的に開いており、肉や野菜を調理した場合に脂や水分が連続空隙62を通って下部に落ちるので、脂の少ない焼肉や良く焼けた野菜ができる。また、遠赤外線を放射するので肉や野菜が内部から加熱される上、火に直接当たらないので焦げることもないなど多くの利点を有する。
【0036】
(実施例 5)
図7は、前記例と同じく石板焼き用具を示すが、この石板焼き用具7は図7(a)に示すように中高の円盤状で、中心から周縁にかけて螺旋溝71を刻設した点が異なる。螺旋溝71は、深さ巾とも約2mmである。また最外側には脂受け溝72を設けている。符号73は連続空隙である。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は凝灰質砂岩の一種である来待錆石の原石や加工品などの石材を焼成するに際し、炭やわら、籾殻等の炭素含有物を石材に密着させたり近傍に載置して部分的に貧酸素雰囲気にして焼成するものである。
【0038】
従って、焼成品は焼成による赤〜茶系統の呈色に加えて、燻しによる部分的な鈍い銀色光沢を有する灰黒色〜黒色の呈色、還元焔による退色した赤〜焦げ茶色などが加わって、様々な色彩に仕上がることとなる。しかも、燻しや還元焔による退色の程度や規模は、炭素含有物の量や置き方、近傍の空気の流れ、石材の形状によって様々に変化し、2つとして同じ模様は得られない。また、焼成色や燻し色は石材の表面のみならず内部まで到達し、万一石材表面が少々破損しても目立たないものである。
【0039】
更に、石材表面に施釉を施した上で燻しを掛けると、上記に加えて釉色、燻し釉色が加わり、変化は更に大きくなる。また、施釉焼成は燻しをかけずに行うこともできる。この場合、素焼きの温度によって、施釉箇所が微細空隙を持ったり微細空隙がないものが得られる。
【0040】
また、石材を焼成する前に有機酸で処理すると、経時破損の原因となる水酸化カルシウムが除去でき、より安定性の高い製品が得られる。
【0041】
本発明の石板焼き用具は、来待錆石の板状加工品を1200℃以下の温度で焼成するか、或いは来待石原石や原石加工品などの石材を1200℃以下の温度で焼成した後板状に加工したものである。そのため、微細な連続空隙が多数でき、肉や野菜を調理した場合に脂や水分がこの連続空隙を通って除去できるので、脂の少ない焼肉や良く焼けた野菜ができる。また、直接火が当たらず、遠赤外線放射ができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼成温度パターンを示すグラフである。
【図2】本発明方法により得られた、壺型置物の一例を示す正面図である。
【図3】電気炉の一例を示す断面図である。
【図4】本発明方法により得られた、他の例を示す角型花瓶の斜視図である。
【図5】本発明方法により得られた、更に異なる他の例を示す丸型花瓶の斜視図である。
【図6】本発明の石板焼き用具の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は同図(a)に於けるX−X線断面図である。
【図7】本発明の石板焼き用具の他の例を示すもので、(a)は平面図、(b)は同図(a)に於けるY−Y線断面図である。
【符号の説明】
1 壺型置物
11 燻し模様
12 還元色模様
13 焼成色
14 焼成色
1A 壺型加工品
2 電気炉
21 断熱材
22 ヒーター
23 蓋
24 通気孔
25 セラミック製台
3 炭
4 角型花瓶
41 釉色
42 焼成色
43 燻し模様
44 燻し模様
45 還元色模様
46 還元色模様
5 丸型花瓶
51 釉薬色
52 釉薬跡
53 釉薬とび跡
54 斑点
6 石板焼き用具
61 把手用透孔
62 連続空隙
7 石板焼き用具
71 螺旋溝
72 脂受け溝
73 連続空隙

Claims (5)

  1. 来待石原石や来待原石加工品を800℃〜1180℃の温度で焼成するに際し、炭、タドン、豆炭、木材、松根、松葉、わら、籾殻の内一種以上の炭素含有物を該来待石原石や来待原石加工品に密着乃至はその近傍に載置することにより部分的に貧酸素雰囲気にして焼成することにより、焼成温度の違いによる黄土色〜赤色〜焦げ茶色の呈色と、炭素含有物に接した部分或いは近傍の還元炎による色あせた赤〜茶系統色及び酸化炎による焦げ茶〜黒色の呈色とともに、炭素含有物から生じた炭素(煤)が、焼成により来待石に生じた連続空隙内部まで浸透付着して燻模様となる部分的な灰色〜黒色の呈色を生じさせることを特徴とする、来待石の焼成方法。
  2. 来待石原石や来待原石加工品そのもの、或いはこれらを800℃〜900℃で素焼きしたものの一部或いは全面に、1120℃〜1180℃で溶融してガラス化する釉薬を塗布した後1120℃〜1180℃の温度で焼成するものである、請求項1記載の来待石の焼成方法。
  3. 来待石原石や来待原石加工品を1100℃〜1180℃で焼成した後、その一部或いは全面に、1120℃〜1180℃で溶融してガラス化する釉薬を塗布した後1120℃〜1180℃の温度で焼成することを特徴とする来待石の焼成方法。
  4. 釉薬は、来待石(来待錆石と来待白石)の粉末に硼砂を加えたものを用いるものである、請求項2又は請求項3記載の来待石の焼成方法。
  5. 来待石原石や来待原石加工品に有機酸を塗布したり有機酸に浸漬した後水洗し、次いで焼成するものである、請求項1、請求項2、又は請求項4記載の来待石の焼成方法。
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