JP4148692B2 - ヘリコプタのロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための方法及び制御装置 - Google Patents

ヘリコプタのロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための方法及び制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコプタのロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための方法であって、測定機構によって前記フラップのポジション調節量を検出し、検出したポジション調節量を電気信号である測定信号の形で制御装置へ供給し、それによって制御出力値を発生させ、該制御出力値が、駆動力伝達手段を介して前記フラップに連結した圧電アクチュエータを制御するようにし、前記駆動力伝達手段が、ポジション調節のための駆動力をもって前記フラップのポジション調節を実行するようにした方法に関する。
ここで、フラップのポジション調節とは、フラップ角度だけでなくフラップの所定移動経路の調節を含む。
本発明は更に、上述のポジション調節を行うための制御装置であって、該制御装置に接続された少なくとも1つの測定機構が配設されており、制御可能な圧電アクチュエータが駆動力伝達手段を介して前記フラップに連結されている制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヘリコプタのロータ系は、キャビン内の騒音及び振動の発生原因である。更にロータ系は、特に着陸進入時などには、高レベルの騒音を周囲にまき散らす騒音発生源にもなる。キャビン内の騒音及び振動は、ヘリコプタの乗員の快適性を著しく損なうものであり、また、騒音を発生することが、環境にとっても望ましくないことは周知の通りである。従って、ヘリコプタの構造を更に改良して、騒音発生及び振動を大幅に低減することが重要である。
【0003】
これを目的とした改良の過程において、浮揚力を発生させるブレードにフラップを装備して、そのフラップを駆動するということが行われるようになった。この場合、そのフラップは、揺動軸を中心として揺動可能に取付けておく。また、このような揺動可能なフラップは、ブレードの前縁部分に装備することもあれば後縁部分に装備することもあり、更には、前縁部分と後縁部分との両方に装備することもある。
【0004】
回転翼型航空機において、回転するロータブレードにフラップを装備することと、回転翼型以外の航空機において、固定翼にフラップを装備することとでは、大いに事情が異なる。両者のフラップ装備部分の構造は、ごく大雑把に見ても、比較にならないほど相違している。
【0005】
回転するロータブレードに装備するフラップには、幾つもの過酷な条件が課せられる。フラップに課せられるそれら過酷な条件は、以下の要因によるものである。
−回転するロータブレードが発する振動。
−回転するロータブレードに作用する遠心力に起因する動的荷重。
−空気力学的に作用する様々な力に起因する動的荷重。
【0006】
以上の所見は、ロータブレードに連結している、基本的に全ての構成部品ないしアセンブリについて言えることである。
【0007】
ヨーロッパ特許公報EP1035015A2号の段落0036及び0037には、フラップに連結したフラップ駆動機構と、そのフラップ駆動機構を制御するための電気的な制御装置とが記載されており、フラップ及びフラップ駆動機構はロータブレードに一体に組込まれている。また、そのフラップ駆動機構は、圧電アクチュエータと、この圧電アクチュエータに結合したリンク機構とで構成されている。更に、そのリンク機構は、駆動力伝達手段を介して、揺動可能に支持されたフラップに連結されている。圧電アクチュエータは、その一方の側が、ブレードの内部の構造体部分に固定されており、またフラップも、ブレードの構造体部分に揺動可能に支持されている。フラップ駆動機構及びフラップは、ロータブレードを製作する際に、そのロータブレードに一体に組込まねばならない。圧電アクチュエータの中核的要素である圧電素子が、ポジション調節部材として機能することにより、フラップを基準ポジションから所定の移動経路に沿って変位させ、また換言すれば、基準ポジションから所望の角度だけ揺動させるようにしてあり、それによってポジション調節が実行される。圧電アクチュエータは、電気的な制御装置から制御信号(制御量Y)を受取っている。また、その制御装置には、複数の測定機構が接続されている。それら測定機構のうちの1つは、ポジション調節がなされるフラップの角度を検出している。この角度は、制御出力値に対応した大きさを持ち、この角度の検出値が、フィードバック値として、制御装置へフィードバックされている。この公知の方式によれば、リンク機構の枢動連結部に遊びが存在している場合であっても、その遊びによって不都合が生じないという利点が得られるが、しかしながら、圧電素子が、駆動力の大きさや変位量の大きさに影響されるのを防止することができず、即ち、それらに対する補償を行うことができない。
【0008】
更に、この公知の方式に関しては、上述した過酷な条件により発生する種々の外乱量に対して、制御装置がどのように反応すればよいかが示されていない。従って、外乱量に対する補償を十分に施すことも、不可能である。
【0009】
圧電アクチュエータをポジション調節部材として使用することに関しては、圧電アクチュエータに印加する電圧の大きさと、それによって発生する圧電アクチュエータの伸張量との間に、高精度の比例関係が存在することが知られている。この一定した比例関係があるため、周知の如く、圧電アクチュエータに印加する電圧を制御することにより、必要とされるフラップの角度調節を行うことができる。そして、制御装置は、これを行うためのものである。尚、圧電アクチュエータを用いて構成したフラップ駆動機構については、後に詳述する。
【0010】
実際には、フラップの角度を制御するだけでは、満足な結果が得られないことが明らかとなっている。その原因は、フラップのポジション調節動作に対して外乱量として作用し、悪影響を及ぼす、数多くの影響要因が存在することにある。
【0011】
かかる影響要因としては、先ず、空気力学的に作用する様々な力があり、それらの力は、例えば、ロータブレードの周囲を循環する循環流、ロータブレードに突き当たる空気流の変動、様々に作用する空気の渦、それに、ブレード渦の相互干渉(BVI−Blade Vortex Interaction)によって引き起こされる後流渦などによる力である。また、かかる影響要因としては、更に、機械的に作用する様々な力があり、これに該当するのは、例えば、ベアリングに作用する摩擦力などであって、より具体的には、フラップを支持しているベアリングの摩擦力や、フラップ駆動機構の内部の摩擦力などが、時間的に変化することによって生じるものである。以上の如き影響要因(以下、外乱量と呼ぶ)のうちには、フラップに対する作用の程度が激しく変動するものがある。
【0012】
このように激しく変動する外乱量は、その大きさを予測することができず、また、定量的な検出が困難である。更に、外乱量の変動が激しい場合には、フラップに対して、その外乱量の影響を補償するためのポジション調節を施すのに必要な制御動作を、高い反復速度(約50〜100Hz)で反復実行しなければならない。かかる事情から、従来、フラップの制御に関しては、変動の激しい外乱量は考慮の対象とされていなかった。
【0013】
以上の技術的困難が存在することから、高精度の動作を可能にするような制御を実行することは容易でなかった。制御量の最適化を反復するという方法では、好適な結果が得られておらず、また、これまでのものとは異なる動作特性を備えたアクチュエータ(ポジション調節部材)を使用する試みも、良好な結果をもたらしていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ヘリコプタの飛行中に必要とされる、ヘリコプタのロータブレードに取付けたフラップの、あらゆる種類の角度調節動作を、高精度で確実に実行することができる、制御方法及び制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、方法に関しては、前記圧電アクチュエータと前記フラップとの間の前記駆動力伝達手段に配設した測定機構によって、ポジション調節のための前記駆動力を検出し、検出した駆動力を測定信号の形で、前記制御装置にカスケード接続した後置制御部へ供給し、該後置制御部が、前記制御装置の制御出力値を指定値として受取って、制御出力値を発生するようにし、該後置制御部の該制御出力値が、前記圧電アクチュエータへ供給されるようにし、前記制御装置の角度目標値設定部が、外部制御装置から、目標値として指定された値を受取るようにすることによって達成されるものである。
また、上記目的は、装置に関しては、測定機構が前記駆動力伝達手段に配設されており、該測定機構は、該制御装置にカスケード接続された制御部に接続されており、該制御装置が目標値設定部を介して外部制御装置に接続されているようにすることで達成されるものである。
【0016】
具体的な1つの実施の形態においては、力を測定するための前記測定機構を、歪みゲージとしている。そして、この測定機構が、測定した力の大きさに応じた電気信号である測定信号を、前記制御装置の後置制御部として機能し、駆動力の測定値を対象とした制御を行っている制御部へ、フィードバックするようにしている。
【0017】
本発明によれば、変動の激しい、空気力学的に作用する様々な力に対しても、また、フラップへ駆動力を伝達する駆動力伝達機構の機械部分に作用する摩擦力や、フラップを支持しているベアリングに作用する摩擦力に対しても、効果的な補償を施すことができる。更に、それら外乱量に対する補償はリアルタイムで行われる。本発明においてこれが可能であるのは、角度制御を行っている制御装置の制御偏差によって、当初意図したポジション調節動作が補正されるのを待つのではなく、後置制御部において付加的に高速の駆動力制御を実行することで、指定値に従って実行されている角度制御におけるポジション調節量を、一定に維持できるようにしているからである。
【0018】
【発明の実施の形態】
これより実施の形態に即して、また添付図面を参照しつつ、本発明について更に詳細に説明して行く。
【0019】
尚、フラップ駆動機構は、ブレードの構造体に直接取付けるようにしてもよいし、また、フラップ駆動機構をハウジングの中に収容したユニットを構成した上で、そのユニットをブレードの構造体に組込むようにしてもよく、これらの構成形態のいずれを採用した場合も、本発明の機能に関して差違はない。
【0020】
図1に、ヘリコプタのロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための装置を示した。この図は模式的なものであり、ヘリコプタ及びロータブレードは示さず、制御対象のフラップと、このフラップを駆動するためのフラップ駆動機構とだけを示した。
【0021】
フラップは、揺動軸を備えている。この揺動軸は、ブレードに装備したベアリングによって支持されており、所定の角度範囲内での揺動が可能となっている。また、この角度範囲内において、任意の大きさの角度に調節することができ、従って、連続的な角度調節が可能となっている。フラップの翼板部は、ブレードの前縁または後縁へ向かって延出するようにし、特に図示例では、フラップの翼板部71が、ブレードの後縁へ向かって延出している。尚、フラップは、図示例のようにブレードの後縁側に装備するばかりでなく、ブレードの前縁側に装備することもある。
【0022】
フラップ駆動機構は、圧電アクチュエータ10を用いて構成した駆動機構である。
【0023】
図示例は、簡明な構成とすることを旨とした実施の形態であって、圧電アクチュエータ10は、リンク機構101に組込まれた圧電素子100と、駆動力伝達手段11である軸力ロッド110とを備えている。図中のもう1本の軸力ロッド111は、ブレード構造体に取付けたバネ手段(不図示)に接続されている。ただし、バネ手段の代わりに、第2の圧電アクチュエータを用いる実施の形態とすることも可能であり、そのような実施の形態もまた、好適な実施の形態であるといえる。第2の圧電アクチュエータを装備するようにしても、本発明それ自体に何ら影響の及ぶものではない。
【0024】
圧電アクチュエータ10は、ブレードの内部に収容されており、ブレードによって支持されている。この圧電アクチュエータ10から、ロッド110を介してフラップ7へ、ポジション調節のための駆動力が伝達される。ロッド110は、曲げ剛性の大きなものとすることが好ましい。ロッド110は、みずからの軸心方向に押したり引いたりするように機能するものであるため、以下の説明では、このロッドを「軸力ロッド」と呼ぶことにする。
【0025】
具体的な実施の形態として、これより1つの構成例について詳細に説明して行く。この構成例は、従来の構造と比べて、現実の動作において優れており、2本の軸力ロッド110、111を備えたものである。
揺動軸70の中心点を通る、仮想中心線を基準として説明すると、2本の軸力ロッド110、111は、フラップ7の揺動軸70の中心を通る中心線に対しては、夫々に偏心している。また、それら2本の軸力ロッド110、111は、互いに180°の位相差を持つようにしてある。上述のバネ手段と圧電アクチュエータ10とは、互いに逆方向の力を及ぼすことで、予荷重の存在下でそれらの力がバランスした状態が得られるようにしている。そしてこれによって、フラップが、予荷重が作用した状態で、変位ないし角度に関する基準ポジションに位置付けられるようにしている。
【0026】
この状態から、圧電アクチュエータ10が伸張すると、リンク機構101が作動して、圧電アクチュエータ10に装備した軸力ロッド110が、フラップ7から離れる方向へ引っ張られる。そのため、フラップ7は、基準ポジションから所望の作動ポジションへ移動するように、ポジション調節がなされる。この作動ポジションから基準ポジションの方へ戻すには、その分、圧電アクチュエータ10を収縮させればよく、それによって、圧電アクチュエータ10に装備した軸力ロッド110が押し出すように作動して、バネ手段に装備した軸力ロッド111が引き込まれるように作動するため、フラップ7は基準ポジションへ復帰することができる。
【0027】
以上のポジション調節動作は、様々な外乱量の影響を受けるものであり、それら外乱量の影響については後述する。
【0028】
フラップのポジション調節に関しては、実際にフラップが取っている角度である実角度を検出して、その検出した実角度を、電気信号である測定信号の形で制御装置に供給することが重要である。また、この実角度の検出は、連続的に行うようにする。また、以上の説明において、実角度を実変位と言い換えてもよい。あるフラップの角度と、その角度に対応したポジション調節量との間には、三角関数で表される関係が成り立つため、いかなるフラップの角度も、所定の移動経路に沿った変位量を測定することで測定可能であり、また、角度を変位量で表すことが可能である。従って、フラップの角度を扱う実施の形態と、フラップの実変位を扱う実施の形態とは、均等関係にあるといえる。以下の説明では、簡明を旨として、角度を測定するようにし、また、角度そのものを表すようにした実施の形態について述べて行く。
【0029】
変位量や角度の測定は、別の物理的原理を利用した測定方法で行うようにしてもよいが、ただし、角度の変化を検出するための測定機構2は、フラップに対して無接触で機能し得るものとすることが好ましい。
【0030】
図2は、ポジション調節によってフラップが基準ポジションから揺動した角度を検出するための具体的な構造例を示した図である。金属板で形成した揺動金属片20が、フラップ7の構造体部分72に固定連結されている。揺動金属片20は、フラップを所定の角度位置に位置付けておいて連結するようにする。この所定の角度位置は、例えば、フラップの基準ポジション(0°)としてもよい。フラップの翼板部は、ブレードの後縁の輪郭内にある。揺動金属片20の上方及び下方に、この揺動金属片20と接触しないように間隙をあけて、1個ずつの電気コイル部材21、22が配設されている。それらコイル部材21、22は、ブレードの構造体部分に設けたホルダ200に取付けられており、それらコイル部材21、22の間には、測定間隙201が画成されている。そして、それらコイル部材21、22に交流電圧を印加することによって、それらコイル部材の間に交番磁界を発生させるようにしている。また、コイル部材21、22は、電気スイッチ(不図示)を介して、復調回路(不図示)に接続できるようにしてある。この復調回路は、コイル部材21、22の間の揺動金属片20の角度に応じた大きさの直流電圧を発生する。ここで、コイル部材を2個使用しているのは、それによって、この測定機構2の動作特性曲線を直線的なものとし得るからであるが、ただし、構成が簡明な測定機構としたければ、コイル部材を1個だけ使用した実施の形態としてもよい。
【0031】
角度を検出するための測定機構2としては、上述した実施の形態の他に、フラップの揺動軸に機械的に連結した絶対番地回転エンコーダ(絶対番地パルス・エンコーダ)を使用することも考えられる。絶対番地回転エンコーダは回転円板を備えており、その回転円板上に、ディジタル情報の形で角度位置が保持されている。そのため、スイッチを入れたならば直ぐに、揺動軸の正確な角度位置がディジタル・ビット・パターンの形で得られる。絶対番地回転エンコーダの回転円板には、複数本のトラック・パターンが形成されていて、それらトラック・パターンの各々に適当な接触子が接触しており、検出結果は、制御装置がそのまま利用することのできる、電気信号である測定信号の形で得られる。
【0032】
また更に、ポジション調節によって揺動した角度に比例する、変位量を検出するような構成とすることも可能である。この場合、検出する変位量は、例えば、圧電アクチュエータ10に装備した軸力ロッド110の移動量とすると好都合である。この場合にも、ブレードに固設したホルダに、2個のコイル部材を所定の間隔をあけて取付けることによって、それらコイル部材の間に測定間隙が画成されるようにし、また、それらコイル部材が、軸力ロッド110からは分離しているようにする。軸力ロッド110には、測定間隙に合わせた大きさの金属片を連結して、この金属片が、測定間隙の中に位置しているようにしておく。この構成によれば、軸力ロッド110の移動に伴って、それに連結した金属片が、一方の移動限度位置と他方の移動限度位置との間で連続的に移動する。更に、2個のコイル部材には、交流電圧を印加して、交番磁界を発生させる。そして、例えば復調回路を使用して、測定間隙の中の金属片の位置に応じた大きさの直流電圧を、その復調回路から発生させるようにする。
【0033】
図3に、ロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための制御システム1を示した。フラップの翼板部は、揺動軸を中心として揺動するようにしてある。
【0034】
変位量ないし角度を測定するための測定機構の、幾つかの具体的な構成例を上で説明したが、それら具体例の測定機構は、制御システム1が、フラップのポジション調節を行うために使用するものである。尚、以下の説明では、角度を測定する測定機構2を使用した場合について述べて行く。角度測定機構2から得られる測定信号は、制御部3を含んでいる制御装置13の入力部に供給される。制御部3は、角度目標値設定部4から設定値w2を受取っている。制御部3は、与えられた設定値w2と、フィードバックされた測定信号r2とに基づいて、制御出力値YR2を発生させている。
【0035】
角度目標値設定部4は、いわゆる外部制御装置5から、目標値として指定された値を受取るようにしてある。この外部制御装置5は、以下の機能を提供するための制御アルゴリズムを備えている。
−BVIの低減。
−ヘリコプタのキャビンの振動の低減。
−飛行中にヘリコプタに作用する流体抵抗の低減。
【0036】
これらの機能を提供するために、外部制御装置5には、1つまたは複数の測定機構6が接続される。接続される測定機構は、BVIに起因する騒音、或いは、キャビンを構成している構造体部分の振動、或いは、流体抵抗を検出するためのものである。
【0037】
また、ロータブレードに装備した制御可能なフラップ7は、BVIの低減、及び/または、キャビンの振動の低減、及び/または、飛行中にロータブレードに作用する流体抵抗の低減を行えるように構成されている。
【0038】
パイロットが外部制御装置5に対して設定操作を行ったならば、その設定に応じた指定値w0が、目標値として、角度目標値設定部4へ供給されるようにしてある。このように、外部制御装置5を介して目標値を設定できるということは、非常に好都合なことであり、なぜならば、例えばBVIの低減などは、特に着陸進入時に必要となることだからである。着陸進入時には、ロータブレードのフラップを連続的に制御して、回転しているロータブレードが後流渦(BVI)を発生させるのを短時間だけ防止できるようにすることが望まれている。そのため、BVIを発生させるような飛行状態になったならば、それに応じて、外部制御装置5が、適切に目標値を設定するようにしておくとよいのである。
【0039】
フラップに対して空気力学的に作用する様々な力や、駆動力伝達手段に作用する摩擦力、それに、フラップを支持しているベアリングに作用する摩擦力は、いずれも、制御対象であるフラップ7の角度に悪影響を及ぼす外乱量である。これら外乱量が作用すると、ポジション調節動作を実行したときに、フラップ7の角度制御に大きな誤差が生じる。制御装置を1つしか使用しておらず、角度制御しか行っていない場合には、この制御誤差を補償するためにはポジション調節動作を反復して実行する以外にない。
【0040】
これは不都合なことであり、特に、例えば種々の空気の渦による力や、BVIに起因する後流渦などによる力などのように、空気力学的に作用する様々な力は変動が激しいため、このような方法では好適に対応できない。これに対して、本発明においては、制御装置13を、それら力の激しい変動に適合させている。即ち、本発明によれば、フラップに作用する力が激しく変動する場合であっても、そのような激しく変動する外乱量zが作用した時点から、フラップ7の角度がその外乱量の影響を補償するために必要とされる調節角度に到達するまでの時間遅れ(無駄時間)を、効果的に短縮することができる。本発明においてこれが可能であるのは、制御装置13の制御偏差によって、当初意図したポジション調節動作が補正されるのを待つのではなく、付加的に高速の駆動力制御を実行することで、角度制御におけるポジション調節量を、一定値に維持できるようにしているからである。
【0041】
この駆動力制御を行うために、制御装置13の制御出力値YR2を、第2の制御部である駆動力制御部9へ供給している。この駆動力制御部9は、測定機構8を備えており、この測定機構8は、ポジション調節動作(角度調節動作)に対する外乱量として作用する力を検出するものである。
【0042】
既述のごとく、フラップのポジション調節動作に対して大きな影響を及ぼす、種々の外乱量z(空気力学的に作用する様々な力、並びに様々な摩擦力)は、その大きさがまちまちであり、変動が激しく、更には、それら力が作用する位置も様々に異なっている。しかるに本発明においては、ポジション調節機構14の適当な箇所に測定位置を定め、その測定位置に適当な測定機構を配設することにより、大きな影響を及ぼす種々の外乱量zを、一括して、ただ1つの測定機構によって、高い測定精度をもって測定することに成功している。
【0043】
この測定機構8は、フラップ7に対して抵抗力として働く、空気力学的に作用する様々な力と、圧電アクチュエータ10からフラップ7へ至る駆動力伝達経路に作用する摩擦力と、フラップ7を支持しているベアリングの摩擦力とを、一括して検出するものである。力を検出するためのこの測定機構8は、駆動力伝達手段11上に配設するようにしており、また特に、圧電アクチュエータ10に装備した軸力ロッド110(図1)上に配設することが好ましい。力を検出するためのこの測定機構8としては、例えば、歪みゲージを使用して、それを軸力ロッド110の表面に貼着すればよい。軸力ロッド110の移動量は、フラップ7の調節角度に対応するものである。また、この軸力ロッド110に作用する軸心方向の引張力または圧縮力の大きさは、フラップ7が実際に到達し得る角度に対応する。更に、歪みゲージによって測定される、その引張力ないし圧縮力は、外乱力(空気力学的に作用する様々な力、並びに様々な摩擦力)による抵抗力を差し引いた後の、フラップ7のポジション調節動作に実際に寄与している制御駆動力の大きさを表している。そして、かかる引張力ないし圧縮力が、測定機構8である歪みゲージによって、検出されて、電気信号である測定信号に変換されるようにしているのである。
【0044】
この電気信号である測定信号は、制御工学でいうところの、フィードバック値r1であり、駆動力制御部9へフィードバックされている。
【0045】
駆動力制御部9へは、更に、制御装置13の制御出力値YR2も供給されている。制御出力値YR2は、駆動力制御部9にとっての、指定値に相当するものである。従って、駆動力制御部9は、カスケード型制御システムの中の後置制御部12に相当するものである。
【0046】
駆動力制御部9は、フィードバック値r1と、指定値としての役割を果たしている制御出力値YR2とに基づいて、制御出力値YR1を発生させている。この制御出力値YR1は、ポジション調節機構14の圧電アクチュエータ10へ供給されている。この制御出力値YR1は、圧電素子100に静電圧として印加される電圧である。圧電素子100には更に、公知の方式で予めバイアス電圧が印加されている。そのバイアス電圧に更に静電圧が加わることにより、圧電素子100はその静電圧の分だけ、例えば伸張する。圧電素子100は、圧電アクチュエータ10の駆動力発生手段そのものである。圧電素子100の伸張量は、駆動力伝達手段11に作用するポジション調節量Yとの間に対応関係を有する。また、ここでいう駆動力伝達手段11に相当するのは、2本の軸力ロッドのうち、圧電アクチュエータ10とフラップ7との間を連結している方の軸力ロッド110である。圧電アクチュエータ10は、前述の公知構造を備えたものであるため、圧電素子100が伸張したならば、それによって軸力ロッド110に引張力が作用して、フラップ7のポジション調節が行われる。そして更に、その引張力が、測定機構8によって制御量x1として検出され、フィードバック値r1として、駆動力制御部9へフィードバックされている。一方、測定機構2は、フラップ7の角度センサ15により検出されたフラップ7の角度を、制御量x2として入力し、即ち、その角度を電気信号である測定信号に変換し、その測定信号を、フィードバック値r2として、制御部3へフィードバックしている。この制御部3の他方の入力には、角度目標値設定部4が接続されており、この角度目標値設定部4は、外部制御装置5から指定値w0を受取ることで、外部制御装置5によって角度目標値が指定されるようにしてある。制御装置13は、この制御装置13の後段に接続されている後置制御部12にとっての指定値制御部として機能している。
【0047】
この指定値制御部(制御装置13)が制御出力値YR2を、後置制御部12にとっての指定値として出力しているため、後置制御部12が発生するポジション調節量Y(ポジション調節信号)は、この制御出力値YR2の影響を受けたものとなる。このポジション調節量Yは、発生させるべき制御駆動力の大きさとの間に間接的な対応関係を有する量であり、また、静的条件だけ考慮すればよい状況では、制御すべきフラップ7の角度との間に対応関係を有する量である。しかしながら実際には、上述した種々の外乱量zが、フラップ7の角度制御に影響を及ぼすため、最初の1回の制御動作だけで、フラップ7を所望の角度に位置付けることは不可能である。この不都合を回避するために装備されているのが、上述の後置制御部12である。後置制御部12の測定機構8は、種々の外乱力を差し引いた後の、ポジション調節動作に実際に寄与している制御駆動力の大きさを検出しており、そして、この制御駆動力の大きさを表す測定信号と、そのとき存在している指定値とが、後置制御部12へリアルタイムで供給されることによって、ポジション調節動作の実行中に、ポジション調節のための制御駆動力に対して、種々の外乱力の大きさに応じた補償が施されるようになっているのである。
【0048】
従って、従来は、ポジション調節のための制御駆動力が(種々の外乱力に影響されて)低下したときには、最初のポジション調節動作では、その制御駆動力の低下分に応じた角度だけ小さな角度位置にフラップ7が位置付けられてしまい、その後に、ポジション調節動作を再度実行して、外乱力の影響による誤差分を補償しなければならなかったのに対して、本発明によれば、そのような事態が回避される。後置制御部12は、フラップ7に作用する激しく変動する外乱力に対して、高度の追随性を持って反応することができ、更に、上で説明した種々の外乱量を、一括して検出することができる。そして、これはリアルタイム制御によって行われる。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ヘリコプタの飛行中に必要とされる、ヘリコプタのロータブレードに取付けたフラップの、あらゆる種類の角度調節動作を、高精度で確実に実行することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための装置の模式図である。
【図2】ポジション調節によってフラップが揺動した角度を検出するための構造を示した図である。
【図3】ロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための制御装置を示した図である。
【符号の説明】
1 制御システム
2 測定機構
3 制御部
4 目標値設定部
5 外部制御装置
7 フラップ
8 測定機構
9 駆動力制御部
10 圧電アクチュエータ
11 駆動力伝達手段
12 後置制御部
13 制御装置

Claims (5)

  1. ヘリコプタのロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための方法であって、駆動力伝達手段を介して前記フラップに連結した圧電アクチュエータを制御するようにし、それによって、前記駆動力伝達手段が、ポジション調節のための駆動力をもって前記フラップのポジション調節を実行するようにした方法において、
    第1測定機構(2)によって、前記フラップのポジション調節量を検出し、検出したポジション調節量を電気信号である測定信号の形で制御装置(13)へ供給し、
    制御装置(13)によって、前記測定信号と、外部制御装置(5)からの目標値として指定された値とを受取り、制御出力値(YR2)を出力し、
    第2測定機構(8)によって、前記圧電アクチュエータ(10)と前記フラップ(7)との間の駆動力伝達手段(11)のポジション調節のための前記駆動力を検出し、検出した駆動力を測定信号の形で、前記制御装置(13)にカスケード接続した後置制御部(12)へ供給し、
    該後置制御部(12)によって、前記検出した駆動力の測定信号と、前記制御装置(13)の制御出力値(YR2)を指定値として受取って、制御出力値(YR1)を出力し、
    前記圧電アクチュエータ(10)を該後置制御部(12)の該制御出力値(YR1)を用いて制御することを特徴とする方法。
  2. 前記ポジション調節のための前記駆動力を検出する前記第2測定機構(8)として、力を測定するための測定機構を用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. ヘリコプタのロータブレードに揺動可能に支持されたフラップのポジション調節を行うための制御装置であって、駆動力伝達手段を介して前記フラップに連結した圧電アクチュエータを制御するようにし、それによって、前記駆動力伝達手段が、ポジション調節のための駆動力をもって前記フラップのポジション調節を実行するようにした制御装置において、
    前記フラップのポジション調節量を検出し、検出したポジション調節量を電気信号である測定信号の形で出力する第1測定機構(2)と、
    前記測定信号と、外部制御装置(5)からの目標値として指定された値とを受取り、制御出力値(YR2)を出力する制御装置(13)と、
    前記圧電アクチュエータ(10)と前記フラップ(7)との間の駆動力伝達手段(11)のポジション調節のための前記駆動力を検出し、検出した駆動力を測定信号の形で出力する第2測定機構(8)と、
    前記制御装置(13)にカスケード接続され、前記検出した駆動力の測定信号と、前記制御装置(13)の制御出力値(YR2)を指定値として受取って、制御出力値(YR1)を出力する後置制御部(12)と、
    を備え、前記圧電アクチュエータ(10)を該後置制御部(12)の該制御出力値(YR1)を用いて制御することを特徴とする制御装置。
  4. 前記ポジション調節のための前記駆動力を検出する前記第2測定機構(8)が、前記圧電アクチュエータ(10)と前記フラップ(7)との間の駆動力伝達手段(11)に配設されることを特徴とする請求項3記載の制御装置。
  5. 前記ポジション調節のための前記駆動力を検出する前記第2測定機構(8)が、歪みゲージであることを特徴とする請求項4記載の制御装置。
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