JP4147651B2 - ドームルーフタンクの放爆構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドームルーフタンクの放爆構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
油等の危険物を貯蔵する危険物屋外貯蔵タンクにおいては、危険物の爆発等によりタンク内の圧力が異常に上昇した場合に、危険物が底部からタンク周囲へ漏洩し周囲に被害を与えないように、内部のガス又は蒸気を上部に放出することができる構造、いわゆる放爆構造であることが要求されている(消防法)。
【0003】
この放爆構造を説明すると、図4、5に示す如く危険物屋外貯蔵タンクは、タンク基礎1上に底板2を敷設すると共に、該底板2の外周部に側板3を立設し、この側板3の上端部に、トップアングル4を介して例えば円錐状の屋根板(コーンルーフ)5aを、サイズの小さい隅肉溶接6により接合して構成されている。
上記危険物屋外貯蔵タンクにおいて、爆発等によりタンク内の圧力が異常に上昇すると、タンクの球状化にともない屋根板5aと側板3は膨出し、底板2はその周縁部が基礎1から浮き上がろうとする(アップリフト)。このアップリフトによって生じる側板3と底板2間の破壊が既述の周囲への漏洩をもたらす。
【0004】
しかし、屋根板5aの膨張では、側板3頂部は周方向の圧縮力を受け、この圧縮力を負担する部分のコンプレッションリングが座屈変形を起こす。よって、この方の破壊を確実に先行させることにより、その破壊部より内圧が前記した側板3と底板2との接合部が破断されるより前に、上方へ一気に放出されるとした上記の危険物の漏洩の事態を阻止する仕組みのことである。
【0005】
危険物屋外貯蔵タンクにおいて、屋根板が上記のようにコーンルーフ5aの場合には、側板3頂部での屋根板5aの取付角度θが小さいため(例えば1/16の時はθ=3〜4°、1/10の時はθ=5〜6°)、タンク球状化に際しての屋根板5aからトップアングル4に作用する内方への圧縮力が大きく、その結果、トップアングル4の座屈による隅肉溶接6の破断が発生し易いので、放爆は達成され易すいとされている。
【0006】
一方、前記したコーンルーフタイプの屋根板5aの他に、ドーム状の屋根板が採用されることがある。ドーム形状の利点としては、以下の通りである。
a.屋根形状の見晴えが良い(人の好みにもよるが屋根部が丸いので)。
b.積雪しにくい(コーンルーフに比べて、急勾配なので)。
c.コーンルーフに比べて、急勾配なので雨水の排水が良い。コーンルーフの場合(勾配1/16の時)屋根外周部の水勾配がとれなくて(施工時の不良・溶接歪等)腐食が進行することもある。
d.タンク内部支柱なしで大きい直径のものができる。コーンルーフで支柱なしとすると、トラス構造となり、構造上複雑である。費用もかさむ。大型タンクの場合で支柱なしの場合は、ドームが殆んど。
e.タンク内の許容内圧がコーンルーフに比べて大きくとれる。屋根が球形である程、内圧は大きくとれる。従って、内容物により許容内圧の高いド−ムル−フの方が有利となる。蒸気圧の高い油程有利…ガソリン等、つまり大気への蒸発量を少なくできる。
【0007】
しかし、図6、図7に示すように屋根板が球面状の屋根板(ドームルーフ)5bの場合には、側板3頂部での屋根板5bの取付角度θが大きいため(例えばθ=30°)、内圧異常上昇時に屋根板5bからトップアングル4に作用する内方への圧縮力が小さく、トップアングル4の座屈変形が発生し難いので、底板2の周縁部が浮き上がって底板2と側板3との接合部が破断されてしまう前に、隅肉溶接6破断の放爆作用を奏することが困難であると言う欠点を有している。
【0008】
かかるドームルーフタンクにおける放爆構成の提案としては、特開平8−217190号、特開平8−324687号がある。前者は、図8に示され、「タンクの屋根12の周囲の一部分にステンレス薄板13を溶接し、このステンレス薄板13をタンク側板14の上端のフランジ部15に形成した肉盛り溶接によるステンレス層16に溶接してシールする。これにより、ステンレス薄板部分の強度を小さくして放爆させる一方、ステンレス鋼を用いて腐蝕を防止できるようにしている。また、屋根12の放爆部分と反対側に屋根12と側板14とを連結するワイヤ17を取付け、放爆によって屋根12が飛ぶような場合の屋根12の動きを規制するようにしている。こうすることによってタンク全体や底板と側板の溶接部などの破壊による貯蔵液の流出が防止され、二次災害の発生が未然に防止される。」としている。また、後者は、図9に示され、「基礎上に立設された側板18によって筒状に形成されたタンク本体と、タンク本体の上端部からタンク中心に向かう所定範囲を覆う外屋根板19と、外屋根板19のタンク中心側端部に、外屋根板19の全周に亘って立設された筒状部材20と、筒状部材20の上端部に接合されて、タンク本体部の開口部を覆う内屋根板21とを備え、タンク本体部の内部圧力が所定の値を越えたときに、筒状部材20と屋根板21との接合部が破断して放爆する。」としている。その作用は、「タンク内部で爆発が起こり、タンクの内部圧力が上昇すると、屋根板には膜力(方向性がなく全ての面方向へ向かう力)である引張力Tが発生する。このとき、筒状部材20はその全周に亘って、内屋根板21から上向の引張力Tを受ける。この引張力Tにより筒状部材20は周方向の圧縮力が作用することになる。そして、この圧縮力が所定値以上になると、筒状部材20は座屈して、内屋根板21との接合部が破断して放爆することになる。なお、このときトップアングル22を含む頂部リングは断面積が大きいため座屈しない。」とされている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記放爆構成提案のうち前者にあっては、構造があまりにも複雑で溶接作業も困難となることが予想される。ステンレス薄板13の採用でコンプレッションリングの断面積は結果として小さくなる(座屈し易すくなる)と考えられるが、取付角度は大きい(ドームル−フの場合取付角度は変らない)ので、必ずしもこの部で破壊するとは限らない。すなわち、大きな取付角度のもとでは、タンクの球状化によって溶接部に作用する力はせん断力から引張力の方に変化することが考えられるが、こうなってはもはや破壊は生じ難いからである。また、連結ワイヤの取付は屋根板が飛ぶという事態を想定しているが、かかる事態の発生は生じ難いうえに、たとえ生じたとしても側板部の局部(取付部)の破損、しいては漏洩となり、なんのためのものか判らなくなる。
【0010】
また、後者にあっては、外屋根板19、内屋根板21は互いの傾斜角度を違えているために施工は極めて困難となることが予想される。さらには、筒状部材20が座屈するとしているが、これはタンク径に比して小寸法であるために屋根全体からみると変化量(不連続性の程度)が小さいので、屋根板(内屋根21)に膜力が作用すると筒状部材20は変形して内屋根21の一部(基部)として膜力を負担するものとなることが考えられ、破壊を生じないと考えられる。つまり、段状ドームなるも、段部に破壊が期し難く、ドームにおける難点解消は未完である。
【0011】
本発明は叙上の事情に監みなされたもので、その目的とするところはドームルーフの利点を損なわずに一気に、かつ、円周上の位置を特定することなく放爆作用を合理的に期し得る施工容易なドームルーフタンクの放爆構造を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のドームルーフタンクの放爆構造は、円筒状の側板の上端に固定したトップアングルの上面と、該側板の内径より小さい外径に形成したドームルーフの外周端縁下面との間に、所定幅の内方へ所定微小角度の上り勾配のコーン型の調整板を隅肉溶接により接合して介在させて、上記トップアングルの上面と調整板とで構成のコンプレッションリングの座屈破壊時の強度を減少化したものである。
【0013】
【作用】
調整板は、トップアングル上面とドームルーフの外周端縁下面との間に小さな取付角度をもって設置され通常の水平面に対するドームルーフ外周部の角度よりも小さい。
【0014】
従って、タンクの内圧異常上昇時に、ドームルーフから調整板を介してトップアングルに作用する力は大きくなり、トップアングルの座屈変形によることなくしてトップアングルと調整板との間の隅肉溶接の破断が発生し易くなる(トップアングルを含めたコンプレッションリング部が座屈変形することにより、その結果として隅肉溶接が破断する)ので、放爆作用が確実に達成されることになる。
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を、図1〜3を参照しながら説明する。
【0015】
ドームルーフタンクは、タンク基礎1上に底板2を敷設すると共に、該底板2の外周部に側板3を立設し、この側板3の上端に固定したトップアングル4とドームルーフ5bとの間に、内方へ微小角度の上り勾配のリング板状(コーン状)の調整板7を介在させて構成されている。
【0016】
該調整板7は、側板3の内周面に固定された多数のラフタークリップ8上に所定の取付角度で支持され、その外周端縁がトップアングル4の上面に隅肉溶接10で接合されている。
【0017】
また、ドームルーフ5bは、上記ラフタークリップ8に連結された多数のラフター9上に支持され、その外周端縁が調整板7の内周縁上面に隅肉溶接11で接合されている。
【0018】
上記調整板7の取付角度θは、約3〜6°、特には勾配1/16〜1/10である3.576°〜5.71°が好適で、調整板7の板厚は、ドームルーフ5bの厚さと略同じ4.5mm程度がよく、また板幅は、約20〜30cmが上記の本発明の放爆性を発揮する上で好適であるとの結果を得た。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
【0020】
トップアングル上面とドームルーフの外周端縁下面との間に、水平面に対する取付角度がドームルーフ外周部の角度よりもはるかに小さい勾配の調整板を介在させたので、タンクの内圧異常上昇時に、ドームルーフから調整板を介してトップアングルに作用する力は大きくなり、この部分が座屈変形する為トップアングルと調整板との間の隅肉溶接の破断が発生し易くなるため、トップアングルの座屈変形が容易になり放爆作用が確実に達成されることになり、もってドームの利点を損なうことなく合理的にドームルーフタンクにおける放爆構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のドームルーフタンクの一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1におけるA部の拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施例の要部平面図である。
【図4】従来のコーンルーフタンクの概略縦断面図である。
【図5】図4におけるB部の拡大断面図である。
【図6】従来のドームルーフタンクの概略縦断面図である。
【図7】図6におけるC部の拡大断面図である。
【図8】従事例の説明図である。
【図9】従事例の説明図である。
【符号の説明】
1 タンク基礎
2 底板
3 側板
4 トップアングル
5a コーンルーフ
5b ドームルーフ
6 隅肉溶接
7 調整板
8 ラフタークリップ
9 ラフター
10、11 隅肉溶接
12 屋根
13 薄板
14 側板
15 フランジ部
16 ステンレス層
17 ワイヤ
18 側板
19 外屋根板
20 筒状部材
21 内屋根板
22 トップアングル
Claims (3)
- 円筒状の側板の上端に固定したトップアングルの上面と、該側板の内径より小さい外径に形成したドームルーフの外周端縁下面との間に、所定幅の内方へ、水平面に対するドームルーフ外周部角度より小さい角度で上り勾配のコーン型の調整板を隅肉溶接により接合して介在させて、放爆作用がより容易かつ確実に達成される構造を持つことを特徴とするドームルーフタンクの放爆構造。
- 該調整板を接合する勾配を1/10〜1/16とする、請求項1の放爆構造。
- 該調整板の板厚がルーフドームと略同程度であり、該調整板の板幅が20〜30cmである、請求項2の放爆構造。
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JP32663798A JP4147651B2 (ja) | 1998-11-17 | 1998-11-17 | ドームルーフタンクの放爆構造 |
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-
1998
- 1998-11-17 JP JP32663798A patent/JP4147651B2/ja not_active Expired - Lifetime
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