JP4146132B2 - ギヤ段検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はギヤ段検出装置に係り、特に車両の変速機のギヤ段ないしギヤ位置をギヤポジションセンサによらずに間接的に検出する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、エンジンと変速機との間にロックアップ可能な流体継手(トルクコンバータを含む)と摩擦型変速クラッチとを直列に設け、変速時に変速クラッチを自動的に断接する車両の動力伝達装置を新たに開発した。この場合、変速時にあって、ギヤ抜き開始と同時にクラッチが自動断され、ギヤインと同時にクラッチが自動接される。
【0003】
このように、変速機のギヤ段位置に応じてクラッチの制御が行われるため、変速機にはそのギヤ段を検出するギヤポジションセンサが設けられる。しかし、ギヤポジションセンサのみでギヤ段を検出すると、このセンサの故障時にクラッチ制御が不可能となるなどの不具合があり、フェールセーフ上問題となる。そこでこのバックアップとして、特開平4−171353号公報に示されるように、車速センサとインプットシャフト回転センサとの出力を利用して現在のギヤ段を割り出す方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、当該公報の技術だと、各々のセンサの出力を単位時間当たりの回転数即ち回転速度に換算して所定の演算を行うため、比較的高い車速のときは問題ないものの、比較的低い車速のときは実際値と計算値との誤差が大きくなるため、ギヤ段の誤判定を起こす虞がある。
【0005】
そこで、以上の問題に鑑みて本発明は創案され、その目的は、低車速時のギヤ段判定をより正確に行い得るギヤ段検出装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明に係るギヤ段検出装置は、変速機の出力軸にメータギヤを介して回転駆動され、その出力軸の回転位相に応じた数の車速パルスを発生する車速センサと、上記変速機の入力軸の回転位相に応じた数の変速機パルスを発生する変速機回転センサと、これら車速パルス及び変速機パルスをそれぞれ入力すると共に、上記変速機の各ギヤ段のギヤ比と、上記メータギヤのギヤ比と、上記変速機の入力主ギヤの歯数とを予め記憶しており、上記車速センサが所定の単位数の上記車速パルスを発生する間に上記変速機回転センサから発生された変速機パルス数をカウントし、少なくともこのカウントされた変速機パルス数と、予め記憶してある上記各ギヤ段のギヤ比と、上記メータギヤのギヤ比と、上記入力主ギヤの歯数とに基づき、現在のギヤ段を決定するギヤ段決定手段とを備え、上記ギヤ段決定手段がパルス整合器を介して上記車速パルスを入力し、該パルス整合器は、上記車速センサから入力される車速パルスの時間間隔を所定の補正係数を用いて調整した後上記ギヤ段決定手段に出力するものであり、上記ギヤ段決定手段は、上記補正係数にも基づき現在のギヤ段を決定するものである。
【0010】
また本発明に係るギヤ段検出装置は、変速機の出力軸にメータギヤを介して回転駆動され、その出力軸の回転位相に応じた数の車速パルスを発生する車速センサと、上記変速機の入力軸の回転位相に応じた数の変速機パルスを発生する変速機回転センサと、これら車速パルス及び変速機パルスをそれぞれ入力すると共に、上記変速機の各ギヤ段のギヤ比と、上記メータギヤのギヤ比に上記変速機の入力主ギヤの歯数を乗じて得られる所定値とを予め記憶しており、上記車速センサが所定の単位数の上記車速パルスを発生する間に上記変速機回転センサから発生された変速機パルス数をカウントし、少なくともこのカウントされた変速機パルス数と、上記各ギヤ段のギヤ比及び上記所定値とに基づき現在のギヤ段を決定するギヤ段決定手段とを備え、上記ギヤ段決定手段がパルス整合器を介して上記車速パルスを入力し、該パルス整合器は、上記車速センサから入力される車速パルスの時間間隔を所定の補正係数を用いて調整した後上記ギヤ段決定手段に出力するものであり、上記ギヤ段決定手段は、上記補正係数にも基づき現在のギヤ段を決定するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施形態を添付図面に基いて説明する。
【0016】
図1は本発明が適用される車両の動力伝達装置を示す。図示するように、エンジンEと変速機T/Mとの間にクラッチ機構1が設けられ、クラッチ機構1は動力伝達方向上流側に設けられた流体継手(フルードカップリング)2と、その下流側に直列に設けられた摩擦型クラッチ、本実施形態では湿式多板クラッチからなる変速クラッチ3とからなっている。なおここでいう流体継手とはトルクコンバータを含む広い概念であり、現に本実施形態においてもトルクコンバータを用いている。本装置が適用される車両はトラック等の比較的大型の車両である。エンジンEはディーゼルエンジンである。
【0017】
流体継手2は、エンジンの出力軸(クランク軸)に接続されたポンプ4と、ポンプ4に対向されクラッチ3の入力側に接続されたタービン5と、タービン5とポンプ4との間に介設されたステータ6とを有する。そして流体継手2と並列してロックアップクラッチ7が設けられ、これはポンプ4とタービン5との断接を行って流体継手2をロックアップ可能とする。変速クラッチ3は、その入力側が入力軸3aを介してタービン5に接続され、出力側が変速機T/Mのインプットシャフト8に接続され、流体継手2と変速機T/Mとの間を断接する。
【0018】
変速機T/Mは、インプットシャフト(入力軸)8と、これと同軸に配置されたアウトプットシャフト(出力軸)9と、これらに平行に配置されたカウンタシャフト(副軸)10とを有する。インプットシャフト8には、入力主ギヤ11が設けられている。アウトプットシャフト9には、1速主ギヤM1と、2速主ギヤM2と、3速主ギヤM3と、4速主ギヤM4と、リバース主ギヤMRとが夫々軸支されていると共に、6速主ギヤM6が固設されている。カウンタシャフト10には、入力主ギヤ11に噛合する入力副ギヤ12と、1速主ギヤM1に噛合する1速副ギヤC1と、2速主ギヤM2に噛合する2速副ギヤC2と、3速主ギヤM3に噛合する3速副ギヤC3と、4速主ギヤM4に噛合する4速副ギヤC4と、リバース主ギヤMRにアイドルギヤIRを介して噛合するリバース副ギヤCRとが固設されていると共に、6速主ギヤM6に噛合する6速副ギヤC6が軸支されている。
【0019】
この変速機T/Mによれば、アウトプットシャフト9に固定されたハブH/R1にスプライン噛合されたスリーブS/R1を、リバース主ギヤMRのドグDRにスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9がリバース回転し、上記スリーブS/R1を1速主ギヤM1のドグD1にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が1速相当で回転する。そして、アウトプットシャフト9に固定されたハブH/23にスプライン噛合されたスリーブS/23を、2速主ギヤM2のドグD2にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が2速相当で回転し、上記スリーブS/23を3速主ギヤM3のドグD3にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が3速相当で回転する。
【0020】
そして、アウトプットシャフト9に固定されたハブH/45にスプライン噛合されたスリーブS/45を、4速主ギヤM4のドグD4にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が4速相当で回転し、上記スリーブS/45を入力主ギヤ11のドグD5にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が5速相当(直結)で回転する。そして、カウンタシャフト10に固定されたハブH6にスプライン噛合されたスリーブS6を、6速副ギヤC6のドグD6にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が6速相当で回転する。上記各スリーブは、図示しないシフトフォークおよびシフトロッドを介して、運転室内のシフトレバーによってドライバによりマニュアル操作される。つまり変速機T/Mはマニュアル式である。
【0021】
変速クラッチ3は通常の湿式多板クラッチの構成である。即ち、図示省略するが、オイルが満たされたクラッチケーシング内で、入力側と出力側とにそれぞれ複数枚ずつ互い違いにクラッチプレートがスプライン噛合され、これらクラッチプレート同士をクラッチピストンにより押し付け合い、或いは解放して、クラッチの接続・分断を行うものである。図2を参照して、クラッチピストン27はクラッチスプリング28により常に断側に付勢されると共に、これを上回る油圧がクラッチピストン27に付加されたときクラッチ3が締結される。クラッチ締結力ないしクラッチのトルク容量は与えられる油圧に応じて増大される。
【0022】
次に、変速クラッチ3に作動油圧を供給するための油圧供給装置について説明する。図2に示すように、オイルタンク13のオイルがろ過器14を介して油圧ポンプOPにより吸引吐出されると共に、その吐出圧がリリーフバルブ15により調整され、一定のライン圧PLが作られる。このライン圧PLのオイルを圧力制御ないし減圧制御してクラッチ3に送り込むわけだが、このためクラッチコントロールバルブCCVとクラッチソレノイドバルブCSVという二つのバルブを用いている。即ち、メインの油圧ラインに接続されたクラッチコントロールバルブCCVを、クラッチソレノイドバルブCSVから送られてくるパイロット油圧Ppに応じて開閉させるという、パイロット操作型油圧制御方式を採用している。そしてパイロット油圧Ppの大きさが、電子コントロールユニット(以下ECUという)16から出力されるディーティパルスに応じて変化される。
【0023】
即ち、クラッチソレノイドバルブCSVは電磁ソレノイドを有した電磁弁であり、ECU16から出力されるディーティパルス信号のON/OFFに応じて開閉すると共に、常にライン圧PLが供給されている。そしてディーティパルスのデューティ(デューティ比)Dに応じたパイロット油圧Ppを出力する。
【0024】
クラッチコントロールバルブCCVは、パイロット油圧Ppに基づき無段階で制御されるスプール弁であり、これ自体は電子制御されない。即ちパイロット油圧Ppの大きさに応じて内蔵スプールを開放側にストロークさせ、これによりライン圧PLを適宜調整しクラッチ圧Pcとしてクラッチ3に送り込む。こうして、結果的に、クラッチ3に供給される油圧がECU16によりデューティ制御されることとなる。
【0025】
なお、クラッチソレノイドバルブCSVとクラッチコントロールバルブCCVとを結ぶ経路の途中にアキュムレータ17が設けられる。
【0026】
図3に油圧供給装置の特性線図を示す。横軸は、ECU16から出力されるディーティパルスのデューティDであり、より詳しくは基本の制御周期(本実施形態では20msec)におけるソレノイドON時間の割合を示すONデューティである。本実施形態では、デューティDが0()のときクラッチが完接されるようにしてある。これは電気系統の故障等でクラッチソレノイドバルブCSVに何等通電されなくなったようなとき(所謂OFFスタックの状態)にも、クラッチを接続状態として、なんとか車両の走行を維持できるようにするためである。
【0027】
図示するように、デューティDが大ほど断、小ほど接である。デューティDの値が小さくなるにつれ、クラッチコントロールバルブCCVから出力されるパイロット油圧Ppの値が比例的に増加し、これに伴ってクラッチに供給される油圧即ちクラッチ圧Pcと、クラッチ3のトルク容量Tcとが比例的に増加する傾向を示す。なおクラッチコントロールバルブCCVのバルブ開度Vは図示上は3ポジションであるが、実際上は全開、全閉以外の中間開度(図示上のバルブ開度0mm)でスプール弁が微小ストロークし、クラッチ圧Pcを連続的に変更できるものである。
【0028】
本実施形態にはロックアップクラッチ7の制御系も存在するが、ここでは本発明に直接関係ないため説明を省略する。その油圧制御系の構成は変速クラッチ3の油圧制御系と大略同様である。
【0029】
次に、動力伝達装置を電子制御するための電子制御装置を図4を用いて説明する。前述のECU16にはクラッチソレノイドバルブCSVの他、本装置を電子制御するために様々なスイッチやセンサが接続されている。これにはエンジン回転速度(具体的には回転数、以下同様)を検出するためのエンジン回転センサ18、クラッチ3の入力側の回転速度即ちタービン5の回転速度を検出するためのタービン回転センサ19、変速機T/Mの回転速度、代表的には入力副ギヤ12の回転速度を検出するための変速機回転センサ20、及び車速を検出するための車速センサ21が含まれる。これらのセンサは図1にも示される。特にECU16は変速機回転センサ20の出力と、入力主ギヤ11及び入力副ギヤ12のギヤ比とから、インプットシャフト8の回転速度を計算し、これをクラッチ3の出力側回転速度及び変速機T/Mの入力軸側回転速度とする。
【0030】
また、ECU16には、パーキングブレーキが作動中か否かを検出するためのパーキングブレーキスイッチ22、フットブレーキが作動中か否かを検出するためのフットブレーキスイッチ23、及び変速機のギヤポジションを検出するためのギヤポジションセンサ24も接続される。
【0031】
そしてECU16にはノブスイッチ25も接続されている。即ち、本実施形態ではドライバーによる変速操作の開始時期を検出するため、或いはクラッチ断を開始するタイミングを決定するため、運転室のシフトレバーにおいて、レバーに対しシフトノブが僅かにシフト方向に揺動可能に取り付けられており、これらレバーとシフトノブとの間にノブスイッチ25が設けられている。そしてドライバーによる変速操作時、レバーの動作に先立ってシフトノブが揺動すると、ノブスイッチ25がONとなり、これを合図にクラッチ断を開始するようになっている。具体的構成は特開平11−236931号公報に示されたものと同様である。
【0032】
また、本実施形態の動力伝達装置には、同公報に示されたような坂道発進補助装置(HSA;Hill Start Aid)が設けられており、その装置の手動ON/OFFを行うため運転室にHSAスイッチ26が設けられ、HSAスイッチ26がECU16に接続されている。
【0033】
次に、本実施形態に係る動力伝達装置の作動及び制御方法を説明する。
【0034】
この動力伝達装置では、エンジンEの動力を流体継手2、変速クラッチ3、変速機T/Mという順で伝達する。ロックアップクラッチ7は原則として発進後は常にON(接)され、停車時及び発進時にOFF(断)される。従って発進時はAT車のように流体継手2のクリープを利用でき、摩擦クラッチを電子的に発進制御するものに比べ制御が簡単になると共に、走行中は流体継手2がロックアップされるのでスリップによるロスを防止できる。変速クラッチ3は変速の度毎に自動で断接される。これは通常のMT車と同様である。
【0035】
ここでロックアップクラッチ7の断接制御について詳しく述べると、ロックアップクラッチ7は比較的低車速である所定速度(本実施形態では約10km/h)以上で接とされる。正確には、ロックアップクラッチ接は、各ギヤ段においてインプットシャフト回転数が所定回転数(本実施形態では一律900rpm)以上に達すると接とされる。発進段(例えば多用される発進段である2速)で発進し、インプットシャフト回転数がその所定回転数(900rpm)に達すると、ロックアップクラッチが接とされ、このときの車速が低車速(約10km/h)である。
【0036】
まず、車両発進時の作動、即ちガレージシフトの場合を説明する。車両がギヤニュートラル且つブレーキ(フットブレーキ及びパーキングブレーキのいずれをも含む)作動状態で停止中、ドライバーが発進しようとしてシフトレバーを発進段に操作しようとしたとする。するとシフトレバーにおいて、レバーの動作に先立ってシフトノブが揺動することによりノブスイッチ25がONされ、これを合図にクラッチ3が自動で分断される。そして引き続きシフトレバーが操作されることによって変速機T/Mが発進段にギヤインされ、これがギヤポジションセンサ24によって検出されるとクラッチ3が自動で接続される。この接続によってタービン5が駆動輪側から止められるので、タービン5に対しポンプ4が滑動し、クリープ力が発生するようになる。従って後はブレーキを離したりアクセルを踏み込んだりすれば車両が動き出すのである。
【0037】
次に、車両走行中の変速時の作動、即ちシフトアップ又はダウンの場合を説明する。車両が所定ギヤ段で走行中、ドライバーが変速しようとしてシフトレバーを次の変速段に操作しようとしたとする。するとレバーの動作に先立ってシフトノブが揺動し、ノブスイッチ25がONされ、これを合図にクラッチ3が自動で分断される。そして引き続きシフトレバーが操作されることによって変速機T/Mが次の変速段にギヤインされ、これがギヤポジションセンサ24によって検出されるとクラッチ3が自動で接続される。これによって変速が完了する。この変速中ロックアップクラッチ7はONのままで、エンジン動力がそのままクラッチ3に伝達される。
【0038】
この走行中のクラッチ制御方法を図5及び図6を用いて詳述する。図5はシフトアップの場合、図6はシフトダウンの場合である。まずシフトアップの場合について説明する。
【0039】
図5に示すように、ノブスイッチON(t1)によりクラッチが完断され、シフトレバー操作により次の変速段にギヤインされるとクラッチ接続が開始される(t2)。
【0040】
まず最初は一発接制御が実行される。即ち、クラッチ3がトルク点を越えて完接位置まで大きく接されるような開始デューティ(一発接デューティ)Dstが、短時間である待ち時間Δtstの間、ECU16から出力される。ここでの開始デューティDst=0(%)、待ち時間Δtst=0.1secである。
【0041】
なお従来の一発接制御は開始デューティDst=約60(%)、待ち時間Δtst=0.5secであった。開始デューティDstを約60(%)とするのは、後述するトルク点デューティが50%程度であり、クラッチをトルク点手前に確実に止める必要があるためであり、待ち時間Δtstを0.5secとするのは、上記開始デューティ=約60(%)でクラッチの初期無効ストロークとクラッチ圧上昇とを終えるためにはこの程度の時間が必要だからである。
【0042】
一方、ここでの一発接制御は従来より接側の開始デューティを従来より短時間出力する。こうするとデューティの値が接側なので、クラッチに与える油量が増大しクラッチをより速く接続側に作動させることができる。一方、クラッチ自体は従来同様にトルク点手前で止める必要があるため、そうなるような待ち時間Δtstが実機試験により設定される。これにより、従来と同じ一発接の態様を従来より短時間で実現でき、クラッチ接ショックを防止しつつ、クラッチ接続時間を一層短縮できるようになる。
【0043】
特に本実施形態のように、開始デューティDstを最も接側の値(完接相当値)=0(%)とするのが好ましい。最高速のクラッチ接続速度を得られるからである。同様に、その付近の値(例えば10(%))とするのも好ましい。ただし、従来より接側の値であれば開始デューティDstの値は任意に選択できる。車両運転状態に基づき開始デューティDstの値をマップ等から決定するようにしても良い。待ち時間Δtstも機種に応じて設定されるため0.1secに限らない。この値も任意の値をとることが可能である。
【0044】
なお、一発接制御についてはオープンループ制御となる。クラッチのトルク点は学習値であり、デューティの値をもってECU16に記憶される。例えば、図3に示すように、トルク容量Tcm=約200(Nm)を示すデューティD=50()がトルク点学習値である。クラッチ等のバラツキにより破線の如くトルク容量線図がずれると、これに応じてトルク点学習値も変化する。
【0045】
さて、クラッチ一発接制御の後はクラッチ緩接制御に移行する(t3)。即ち、クラッチ3が緩接されるような緩接デューティDkを所定時間毎にECU16から出力する。ここでいう所定時間は本実施形態では制御周期Δt=20msecと等しい。但し、複数回分の制御周期nΔtと等しくしても良い。以下この所定時間を緩接周期という。
【0046】
この緩接制御では、緩接周期毎の各回の緩接デューティの値が、クラッチの入出力側の回転差に基づいて決定される。クラッチ入力側回転数としてはエンジン回転センサ18で検出されるエンジン回転数の値Neを用いる。これは走行中はロックアップクラッチ接であり、クラッチ入力側回転数=エンジン回転数とみなせるからである。クラッチ出力側回転数としては、上述のように変速機回転センサ20の出力とギヤ比とから計算されたインプットシャフト回転数の値Niを用いる。
【0047】
ここではシフトアップなので、図5(d)に示すようにエンジン回転数Neの方がインプットシャフト回転数Niより高い。よって回転差ΔNはエンジン回転数Neからインプットシャフト回転数Niを減じて計算される(ΔN=Ne−Ni)。
【0048】
図8に示すように、変速機の各ギヤ段毎に、回転差ΔNに対するステップデューティDsの値がマップ形式で設定されている。このステップデューティ算出マップはECU16に予め記憶される。
【0049】
具体的なクラッチ緩接制御の内容は以下の通りである。まず、時刻t3の緩接周期で、初期値としての緩接デューティDk3を出力する。この緩接デューティDk3の値はトルク点学習値より僅かに接側の値である。そしてこのときの回転差ΔN3を計算し、現在のギヤ段とΔN3の値とから図8のマップに従ってステップデューティDs3を決定する。そして次の制御回である時刻t4の緩接周期では、前回の緩接デューティDk3からステップデューティDs3を減じた値を今回の緩接デューティDk4とし、これをECU16から出力する。以下、同様に、時刻tn(n=4,5,6...)の緩接周期で回転差ΔNnを計算し、図8のマップに従ってステップデューティDsnを決定し、次の制御回である時刻tn+1の緩接周期では、前回の緩接デューティDknからステップデューティDsnを減じて今回の緩接デューティDkn+1とし、これをECU16から出力する。このような制御を繰り返すことで少しずつクラッチが接続され、回転差ΔNが徐々に少なくなっていく。
【0050】
なお、ステップデューティDsの計算周期と制御周期Δtとは必ずしも等しくしなくてよい。このときはステップデューティDsが計算される毎に緩接デューティDkを更新し、この更新周期が緩接周期となる。
【0051】
こうして、所定の緩接終了条件が整ったら緩接制御を終了し、クラッチ急接制御に移行する。本実施形態の緩接終了条件は、回転差ΔNが少ない値である150rpm以下になるか、ECU16から出力されるデューティがクラッチが十分接続されたとみなすことのできる緩接終了デューティDeに達することである。クラッチ急接制御では、急接デューティ=0を所定時間=0.3sec出力する。そしてこの後クラッチ完接制御を行ってクラッチ接制御を終了する。クラッチ完接制御も同様に完接デューティ=0を所定時間=1sec出力するものである。
【0052】
次に、図6及び図9によりシフトダウンの場合を説明する。シフトダウンのときもシフトアップのときと大略同様である。異なるのは、シフトダウンのときは図6(d)に示すようにインプットシャフト回転数Niの方がエンジン回転数Neより高くなるので、回転差ΔNの計算も逆となり、回転差ΔNがインプットシャフト回転数Niからエンジン回転数Neを減じて計算される(ΔN=Ni−Ne)点である。また、ステップデューティDsの値がシフトアップの場合とは別個に設定され、具体的には図9に示すようなシフトダウン用のステップデューティ算出マップが別個に用意されている点である。このマップにおいてはマップ中の値がシフトダウンにより適したものとなっている。その他のクラッチ接制御の内容は前記同様であり、一発接制御も前記同様、開始デューティDst=0(%)を待ち時間Δtst=0.1sec出力する。
【0053】
次に、図7及び図10によりガレージシフトの場合を説明する。図7において、時刻t1前は発進前の停車状態であり、ギヤニュートラル、ブレーキ作動状態、エンジンアイドリング、変速クラッチ3は接、ロックアップクラッチ7は断で、エンジンの出力が流体継手2、変速クラッチ3を介して変速機T/Mのカウンタシャフト10及び主ギヤM1・・・まで伝達されている。これは、各副ギヤ12・・・の回転により変速機T/M内に貯留されたミッションオイルを攪拌し、昇温させるためである。このときエンジン回転数Ne、タービン回転数Nt、インプットシャフト回転数Niは全て等しい。
【0054】
この状態から運転手により変速操作がなされると、最初にノブスイッチがONとなってクラッチが完断され(t1)、これによりインプットシャフト回転数Niが落ち込み、発進段にギヤインされるとクラッチ接続が開始される(t2)。ギヤインと同時にインプットシャフト8は駆動輪側からブレーキで止められるのでその回転数はゼロとなる。
【0055】
最初の一発接制御は前記同様である。即ち、開始デューティDst=0(%)を一定の待ち時間Δtst=0.1sec出力する。次いで前記同様の緩接制御を実行する。緩接制御では図10に示すガレージシフト専用のマップからステップデューティDsを読み込む。この緩接制御において、クラッチ接続に従い、タービン5が駆動輪側から徐々に制動されていくので、タービン回転数Ntが徐々に落ち込んでいく。
【0056】
そこで、エンジン回転数Neとタービン回転数Ntとの回転差ΔNet(=Ne−Nt)が所定値Nm(本実施形態では300rpm)以上に達したら、クラッチが実質的にほぼ接続されたとみなし、緩接制御を終了し、この後前記同様のクラッチ急接制御、クラッチ完接制御を行って接続制御を終了する。
【0057】
次に、このような車両の動力伝達装置に適用された、本発明に関わるギヤ段検出装置を説明する。
【0058】
上記動力伝達装置では、ギヤインと同時にクラッチ接を開始したり、シフトアップ・シフトダウンの判別を行ったりするので、変速機のギヤ段ないしギヤ位置を常時検出するようになっている。そしてこの検出は原則として上記ギヤポジションセンサ24(図4参照)によって行われる。
【0059】
図17にギヤポジションセンサ24の詳細を示す。R,1,2・・・はリバース、1速、2速・・・を意味し、シフトレバーが図示の如きHパターンに沿って移動される。ギヤポジションセンサ24は、シフトレバーに連動する部材のシフト方向のストロークを検出するシフトストロークセンサ31と、当該部材のセレクト方向の位置を検出する二つのセレクトスイッチSW1,SW2とから構成される。一方のセレクトスイッチSW1はリバース及び1速相当のセレクト位置に設けられ、その位置でONとなる。他方のセレクトスイッチSW2は4速及び5速相当のセレクト位置に設けられ、その位置でONとなるが、この他6速相当のセレクト位置でもONとなる。例えば、シフトストロークセンサ31がシフト方向最前列の位置(リバース、2速、4速又は6速相当の位置)を示す場合において、セレクトスイッチSW1がOFF、セレクトスイッチSW2がOFFなら現在のギヤ段は2速であると判定できる。なお4速か6速かどうかはセレクトスイッチSW2によって判別できないので、後述のギヤ段検出装置により判別することになる。なお、ギヤポジションセンサ24の形態は上記以外にも様々なものが可能である。
【0060】
ところで、ギヤポジションセンサ24に断線やショート等の故障が発生すると、ギヤが現在どの位置に入っているかが判別できなくなり、クラッチ制御等に支障をきたしてしまう。
【0061】
そこで、このバックアップとして、本実施形態ではギヤポジションセンサ24によらずとも変速機のギヤ段を間接的に検出ないし推定する装置が設けられている。以下これについて詳細に説明する。
【0062】
かかるギヤ段検出装置は、変速機の回転作動中に、車速センサ21と変速機回転センサ22とからそれぞれ発生する回転パルスを利用して現在のギヤ段を判別するものである。本発明の前提となる参考形態の構成を図11に示し、前記と同一の要素については同一の符号を付す。
【0063】
図示するように、本装置は、前記変速機T/M、車速センサ21、変速機回転センサ22及びギヤ段決定手段としてのECU16から主に構成される。車速センサ21は、その回転軸31が、メータギヤ32を介してアウトプットシャフト9により回転駆動される。メータギヤ32は、図1では簡略化されているが、詳細には図11に示される如くアウトプットシャフト9に固定されたメータドライブギヤ33と、これに噛合され回転軸31に固定されるメータドリブンギヤ34とからなる。車速センサ21は、回転軸31の等位相間隔毎にパルス信号を発生し、回転軸31の1回転当たりに所定数(参考形態では25個)のパルス信号を発生する。このパルス信号はECU16に直接入力される。回転軸31がアウトプットシャフト9に連動するので、結局車速センサ21は、アウトプットシャフト(出力軸)9の回転位相に応じた数のパルス信号を発生させる出力軸側パルス発生手段を構成する。
【0064】
一方、変速機回転センサ22は、これに対向する入力副ギヤ12の歯が通過する毎にパルス信号を発生し、このパルス信号をECU16に直接入力する。入力副ギヤ12がインプットシャフト8に連動するので、結局変速機回転センサ22は、インプットシャフト(入力軸)8の回転位相に応じた数のパルス信号を発生させる入力軸側パルス発生手段を構成する。
【0065】
ところで図16に示すように、変速機がいずれかのギヤ段に入っている場合、理論上、車速と変速機回転速度(即ちインプットシャフト回転速度)との関係は各ギヤ段のギヤ比に応じて定まる比例関係となる。なおグラフでは1速(1st)、2速(2nd)及び3速(3rd)のみを例示する。従って、ある車速のときの変速機回転速度が分かれば、現在のギヤ段が何速であるかを判別できる。この原理を利用したのが特開平4−171353号公報に示される従来技術である。
【0066】
しかし、実際には、比較的高い車速V2のときは各ギヤ段間における変速機回転速度の差ΔNが大きいため問題ないものの、比較的低い車速V1のときはその差ΔNが小さくなるため、実際値と計算値との間の誤差が大きくなりギヤ段の誤判定を起こす虞がある。
【0067】
即ち、ECU内部においては、予め決められた所定時間の間に車速センサ及び変速機回転センサから発生するパルス(それぞれ車速パルス及び変速機パルスという)の数をカウントし、それらカウントされたパルス数を上記所定時間で割って車速及び変速機回転速度を計算するという処理が実行される。しかし、低車速のときはパルスの発生間隔が長いため、所定時間の間に十分なパルス数を含んでいるという保証はなく、従ってこれを時間要素で割って得られる計算値も、必ずしも正確な値とは言い得ない。従ってこのような計算値に基づきギヤ段判定する方法だと誤判定を引き起こす可能性が大きいのである。なお、ノイズ等の影響を考慮するとさらに計算値が正確な値からズレてしまって誤判定を引き起こす可能性が大きくなる。
【0068】
そこで、本発明においては、このような時間要素で割った計算値を用いるのではなく、センサから出力されるパルス自体を用いてギヤ段判定を行うこととした。
【0069】
本発明の原理は以下の通りである。即ち、変速機がいずれかのギヤ段に入っていれば、アウトプットシャフトがある位相回転する間にインプットシャフトもある位相回転する。そして一定のアウトプットシャフト回転位相に対しインプットシャフトがどのくらいの位相回転するかは、そのときに入っているギヤ段のギヤ比に応じて定まる。
【0070】
従って、ある単位数のアウトプットシャフト側回転パルスが発生する間に、インプットシャフト側回転パルスが何個発生したかを検出すれば、現在のギヤ段を特定することが可能になる。分かり易い例で説明すると、例えば車速センサ21が単位数である10個のパルスを発生する間に、変速機回転センサ22が1速のとき50個、2速のとき40個、3速のとき30個のパルスを発生するとする。そしてこの1速50個、2速40個、3速30個という値をECU16に予め記憶しておき、車両走行中実際に変速機が回転しているときに、車速センサ21が10個のパルスを発生する間の変速機回転センサ22のパルス数をカウントする。そしてそのカウントされたパルス数が50個なら1速、40個なら2速、30個なら3速という具合に、現在のギヤ段を決定することができる。本装置は原理的にこのようなものである。
【0071】
なお、この例はアウトプットシャフト側を基準とするものであるが、インプットシャフト側を基準とすることも可能である。
【0072】
さて、図11に示される参考形態はこの原理を踏襲したものである。図中、最初にZが付される符号は各ギヤの歯数を表す。車速センサ21は回転軸31
の1回転(1rev)当たりに25個の車速パルス(25pls)を発生する。ECU16に入力される車速パルスは、車速が60km/hのとき637rpmに相当するものでなければならないという要請があり、そのような車速パルスが車速センサ21から発生するように、メータギヤ32のギヤ比、具体的にはメータドライブギヤ33の歯数Zd1とメータドリブンギヤ34の歯数Zd2とが定められている。なお車型に応じてタイヤ動半径やファイナルギヤ比等が異なる場合はメータドリブンギヤ34が適宜組み替えられる。
【0073】
ここでは変速機が4速に入っている場合を例にとって説明する。車速センサ21の回転軸31が1回転するときのインプットシャフト回転数Niは次式(1)により求められる。
【0074】
【数1】
Figure 0004146132
【0075】
なおメータギヤ32のギヤ比GR(m)を
【0076】
【数2】
Figure 0004146132
【0077】
とし、4速のギヤ比即ち減速比GR(4)を
【0078】
【数3】
Figure 0004146132
【0079】
とする。(1)式の両辺に入力主ギヤ11の歯数ZM5を乗じると、車速センサ21の回転軸31が1回転する間即ち車速センサ21が25パルス発生する間に、変速機回転センサ20から発生する変速機パルス数PTMが算出できる(入力主ギヤ11の通過歯数=入力副ギヤ12の通過歯数なので)。即ち、
【0080】
【数4】
Figure 0004146132
【0081】
基本的にはこの(2)式に従えば上記原理に基づく本発明のギヤ段検出装置及び方法を実現できる。即ち、(2)式における各ギヤ段のギヤ比GR(1),GR(2),GR(3),・・・と、メータギヤ32のギヤ比GR(m)と、入力主ギヤ11の歯数ZM5とを予めECU16に記憶しておき、ECU16において、車速センサ21からの25個のパルスをカウントすると共に、その間に変速機回転センサから発生された変速機パルス数PTMをカウントする。そしてこのカウントされた変速機パルス数PTMと、上記メータギヤのギヤ比GR(m)及び入力主ギヤ11の歯数ZM5とを(2)式に代入し、その上で(2)式に各ギヤ段のギヤ比GR(1),GR(2),GR(3),・・・を順次代入していく。そして(2)式がほぼ成立したギヤ段を現在のギヤ段として決定する。以上を第一の方法とする。
【0082】
しかしながら、参考形態ではECU16における内部処理を簡単化するため、以下のような処理を行っている。(2)式の両辺をギヤ比GR(4)で割ると、
【0083】
【数5】
Figure 0004146132
【0084】
となる。つまり、変速機パルス数PTMをギヤ比で割った値はギヤ段に拘わらず一定値Ndとなるのである。そこで、ECU16にはこの一定値Ndと、各ギヤ段のギヤ比GR(1),GR(2),GR(3),・・・のみを予め記憶しておく。そしてギヤ段の検出に際しては、ECU16において、車速センサ21からの25個のパルスをカウントする間の変速機回転センサ20からの変速機パルス数PTMをカウントし、このカウントされた変速機パルス数PTMと上記一定値Ndとを(3)式に代入し、その上で(3)式に各ギヤ段のギヤ比GR(1),GR(2),GR(3),・・・を順次代入していき、(3)式がほぼ成立したギヤ段を現在のギヤ段として決定する。これを第二の方法とする。
【0085】
なお、実測値としての変速機パルス数PTMを現在のギヤ段のギヤ比で割っても理論上の一定値Ndには正確に一致しないことがある。よってその除算によって得られた値が一定値Ndに略一致したとき、例えば一定値Ndに対しその数%以内に入っているとき(3)式成立とする。これが「ほぼ成立」の意味である。
【0086】
また、(3)式に基づく別の方法としては、カウントされた変速機パルス数PTMを一定値Ndで割ってギヤ比を算出し、このギヤ比に対応したギヤ段を現在のギヤ段として決定してもよい。この計算でも前記同様に除算によって得られた値が現在のギヤ段のギヤ比に正確に一致しないことがあるので、そのギヤ比に略一致、例えばそのギヤ比に対し数%以内に入っているとき、そのギヤ比に対応したギヤ段を現在のギヤ段としてもよい。これを第三の方法とする。
【0087】
ここで、上記第二の方法を具体値を挙げて説明する。図12に示すように、例えばメータドライブギヤ33の歯数Zd1=4、メータドリブンギヤ34の歯数Zd2=10、入力主ギヤ11の歯数ZM5=28とする。このとき(3)式の左辺=10/4×28=70となる。そこでこの70という値を一定値NdとしてECU16に記憶しておく。
【0088】
また、図13(a)に示すような各ギヤ段のギヤ比GRをECU16に記憶しておく。なおここでは便宜上5速の変速機の例を取り扱う。図1に示した変速機は基本となる5速変速機に6速部分(6速主ギヤM6等からなる)をエキストラギヤとして追加したものであり、この6速部分を省略すれば5速変速機となる。
【0089】
図13(b)に示すのは、実際に変速機が各々のギヤ段に入っているとき、車速パルスが25個発生したならば発生するであろう変速機パルス数PTMである。従っていま仮に車速パルスが25個発生する間に実際の変速機パルスが203個発生し、これがECU16でカウントされたとする。するとECU16は、203を各ギヤ段のギヤ比GR(R)=5.068,GR(1)=5.315,GR(2)=2.908・・・で割った値を順次算出し、先の一定値Nd=70に最も近いものを探し出す。ここでは2速のときが203/2.908=69.8と70に最も近い(つまり70の数%以内に入っている)ため、現在のギヤ段を2速と判定する。
【0090】
図13(a)の(Nd)は、各ギヤ段の変速機パルス数PTMを各ギヤ段のギヤ比GRで割って小数点以下を切り捨てた値を参考までに示したものである。先の2速の例でいえば、69.8の小数点以下を切り捨てた69.0が(Nd)の値である。
【0091】
なお、第三の方法に従えば、実際の変速機パルス数PTM=203を一定値Nd=70で割って得られる値2.9に最も近いギヤ比を探し出し、GR(2)=2.908が最も近いので、2速と判定することになる。
【0092】
さて、本実施形態では、図14に示すように、車種によって車速センサ21とECU16との間にパルス整合器35が介在され、ECU16がパルス整合器35を介して車速パルスを入力する。即ち、タイヤ動半径やファイナルギヤ比等のバリエーションが比較的多い車型については、工場出荷時のメータドリブンギヤ34の組み替えが大変なことがあるので、この組み替えを行わない代わりにパルス整合器35を調整し、これにより車速パルスの時間間隔を調整し、ECU16には車速60km/hのとき637rpmに相当する車速パルスが入力されるようにすることがある。
【0093】
この場合、メータギヤ比はほぼ60km/h=637rpm相当となるようなギヤ比に固定されると共に、パルス整合器35にはその調整時に補正係数αが設定される。補正係数αは通常0.8〜1.2の範囲で可変であるが、パルス整合器35が調整された後は一定値に固定される。パルス整合器35への1の入力に対しその出力はαとなり、入力が25パルスだとするとその出力は25αパルスとなる。設定後のαの値はECU16に送られて記憶される。
【0094】
この場合(2)式は以下のように変形できる。
【0095】
【数6】
Figure 0004146132
【0096】
従って、両辺をギヤ比GR(4)で割った値も一定値となり、この一定値をNdとすると(3)式は以下のように改められる。
【0097】
【数7】
Figure 0004146132
【0098】
従って、前記同様、(2)’式を用いて第一の方法によりギヤ段を決定でき、(3)’式を用いて第二及び第三の方法によりギヤ段を決定できる。
【0099】
図15にはこの場合の車速と変速機回転速度との関係を示している。補正係数αのとり得る範囲(αmin=0.8〜αmax=1.2)に対応して、各ギヤ段における比例直線にもハッチングで示すようなある程度の範囲が生じる。ここで仮に図示の如く各ギヤ段の範囲が重ならないようであれば、計算値がいずれかの範囲に入ったときその入ったギヤ段を現在のギヤ段として特定することが可能である。
【0100】
即ち、(3)’式によれば、補正係数αが最小値αminのときNdは最大値Ndmaxとなり、補正係数αが最大値αmaxのときNdは最小値Ndminとなる。そこで、実際にカウントされた変速機パルス数PTMをギヤ比GRで割った値PTM/GRを各ギヤ段毎に計算し、Ndmin≦PTM/GR≦Ndmaxを満たすようなギヤ段を現在のギヤ段として決定することができる。
【0101】
このように、本発明によれば、センサの出力を時間要素で割って速度換算した値を用いるのではなく、センサから出力されるパルスの数自体(所謂パルスの生値)を用いて現在のギヤ段を決定するので、低車速時にも正確なギヤ段検出を行え、検出精度を上げることができ、ギヤ段の誤判定を未然に防止できる。
【0102】
特に本実施形態ではかかるギヤ段検出装置があるので、ギヤポジションセンサ24の故障時にもギヤ段を検出でき、クラッチ制御(特に低車速時のクラッチ制御)が支障無く行える。また図17に示すように4速又は6速のいずれに入っているかが1個のセレクトスイッチSW2では判別できない場合であっても、このセレクトスイッチSW2との併用により、或いはかかるギヤ段検出装置単独により、4速又は6速のいずれに入っているかを判別できる。そしてより積極的にはセンサやスイッチの数をさらに減少し、或いは全て省略することも可能であり、これにより一層のコスト低減が可能となる。
【0103】
なお、低車速時には一定数のパルスが溜まるまでに時間がかかるので、ギヤ段検出に従来より時間が掛かるかもしれないが、それでも従来より遙かに正確なギヤ段検出が可能なのでそのメリットは大である。一方高車速時にはパルスが一瞬で溜まるのでギヤ段検出も即行える。
【0104】
以上の説明から分かるように、本実施形態ではECU16がギヤ段決定手段を構成する。
【0105】
なお、本発明の実施形態は上述のものに限られない。上記実施形態では自動クラッチとマニュアル変速機の組合せであったが、クラッチはマニュアルでも構わないし、変速機も自動であっても構わない。要は、変速機のギヤ段検出を要するあらゆる装置に本発明は適用できる。また車両の動力伝達装置以外にも適用できるものである。
【0106】
上記実施形態では車速パルスの単位数を1回転(360°位相)相当の25パルスに設定したが、これは例えば2回転(720°位相)相当、半回転(180°位相)相当のように適宜変更できるものである。これを一般的にN回転相当とすると、式(1)〜(3)、(2)’、(3)’の両辺にNを掛けるのと同じこととなり、実質的には上記方法が変更されるわけではなく、カウントされる変速機パルス数の値(図13(b))が変わるだけである。
【0107】
上記実施形態では変速機の出力軸側パルス(車速パルス)を基準とし、出力軸側パルスが単位数(25パルス)をカウントしたときの入力軸側パルス数によりギヤ段を特定したが、これは逆でも良く、入力軸側パルス(変速機パルス)を基準としてもよい。
【0108】
上記実施形態では入力軸側パルス発生手段を副軸側に設けた変速機回転センサ20とし、入力副ギヤ12の通過歯数をカウントしているが、これは入力軸側に設けたセンサで構成しても良く、入力主ギヤ11の通過歯数をカウントするようにしてもよい。
【0109】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、低車速時のギヤ段検出精度を向上でき、ギヤ段の誤判定を未然に防止できるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る車両の動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図2】本実施形態に係る油圧供給装置を示す油圧回路図である。
【図3】本実施形態に係る油圧供給装置の特性線図である。
【図4】本実施形態に係る電子制御装置を示す構成図である。
【図5】本実施形態に係るクラッチ接続制御の内容を示すタイムチャートで、シフトアップの場合である。
【図6】本実施形態に係るクラッチ接続制御の内容を示すタイムチャートで、シフトダウンの場合である。
【図7】本実施形態に係るクラッチ接続制御の内容を示すタイムチャートで、ガレージシフトの場合である。
【図8】本実施形態に係るシフトアップ時のステップデューティ算出マップである。
【図9】本実施形態に係るシフトダウン時のステップデューティ算出マップである。
【図10】本実施形態に係るガレージシフト時のステップデューティ算出マップである。
【図11】ギヤ段検出装置の参考形態を示す構成図である。
【図12】図11のギヤ段検出装置を簡略化して示した図である。
【図13】ギヤ段検出に用いる各ギヤ段のギヤ比等の具体値を示す。
【図14】ギヤ段検出装置の実施形態を示す構成図である。
【図15】補正係数の範囲を考慮した車速と変速機回転速度との関係を示すグラフである。
【図16】一般的な車速と変速機回転速度との関係を示すグラフである。
【図17】本実施形態に係るギヤポジションセンサの構成を示す図である。
【符号の説明】
8 インプットシャフト
9 アウトプットシャフト
11 入力主ギヤ
16 電子コントロールユニット(ECU)
20 変速機回転センサ
21 車速センサ
32 メータギヤ
35 パルス整合器
GR ギヤ段のギヤ比
GR(m) メータギヤのギヤ比
Nd 一定値
PTM 車速パルス数
T/M 変速機
ZM5 入力主ギヤの歯数
α 補正係数

Claims (2)

  1. 変速機の出力軸にメータギヤを介して回転駆動され、その出力軸の回転位相に応じた数の車速パルスを発生する車速センサと、
    上記変速機の入力軸の回転位相に応じた数の変速機パルスを発生する変速機回転センサと、
    これら車速パルス及び変速機パルスをそれぞれ入力すると共に、上記変速機の各ギヤ段のギヤ比と、上記メータギヤのギヤ比と、上記変速機の入力主ギヤの歯数とを予め記憶しており、上記車速センサが所定の単位数の上記車速パルスを発生する間に上記変速機回転センサから発生された変速機パルス数をカウントし、少なくともこのカウントされた変速機パルス数と、予め記憶してある上記各ギヤ段のギヤ比と、上記メータギヤのギヤ比と、上記入力主ギヤの歯数とに基づき、現在のギヤ段を決定するギヤ段決定手段とを備え、
    上記ギヤ段決定手段がパルス整合器を介して上記車速パルスを入力し、該パルス整合器は、上記車速センサから入力される車速パルスの時間間隔を所定の補正係数を用いて調整した後上記ギヤ段決定手段に出力するものであり、上記ギヤ段決定手段は、上記補正係数にも基づき現在のギヤ段を決定することを特徴とするギヤ段検出装置。
  2. 変速機の出力軸にメータギヤを介して回転駆動され、その出力軸の回転位相に応じた数の車速パルスを発生する車速センサと、
    上記変速機の入力軸の回転位相に応じた数の変速機パルスを発生する変速機回転センサと、
    これら車速パルス及び変速機パルスをそれぞれ入力すると共に、上記変速機の各ギヤ段のギヤ比と、上記メータギヤのギヤ比に上記変速機の入力主ギヤの歯数を乗じて得られる所定値とを予め記憶しており、上記車速センサが所定の単位数の上記車速パルスを発生する間に上記変速機回転センサから発生された変速機パルス数をカウントし、少なくともこのカウントされた変速機パルス数と、上記各ギヤ段のギヤ比と、上記所定値とに基づき現在のギヤ段を決定するギヤ段決定手段とを備え、
    上記ギヤ段決定手段がパルス整合器を介して上記車速パルスを入力し、該パルス整合器は、上記車速センサから入力される車速パルスの時間間隔を所定の補正係数を用いて調整した後上記ギヤ段決定手段に出力するものであり、上記ギヤ段決定手段は、上記補正係数にも基づき現在のギヤ段を決定することを特徴とするギヤ段検出装置。
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