JP4145548B2 - スルホン化ビスホスフィン、その製造方法およびその用途 - Google Patents

スルホン化ビスホスフィン、その製造方法およびその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なスルホン化ビスホスフィン、その製造方法および該スルホン化ビスホスフィンの用途に関する。本発明より提供されるスルホン化ビスホスフィンは、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素および水素によりヒドロホルミル化して相当するアルデヒドを製造する際のヒドロホルミル化触媒の構成成分として有用である。したがって、上記の用途には、ヒドロホルミル化触媒として作用する本発明により提供されるスルホン化ビスホスフィンとVIII族金属化合物が錯形成してなるVIII族金属錯体が含まれ、また該VIII族金属錯体をヒドロホルミル化触媒として使用するアルデヒドの製造方法が含まれ、さらにヒドロホルミル化反応混合物から触媒成分を回収する方法が含まれる。
【0002】
【従来の技術】
エチレン性不飽和化合物を、VIII族金属化合物またはVIII族金属化合物とリン化合物が錯形成してなる金属錯体の存在下に一酸化炭素および水素と反応させてアルデヒドに変換する反応は、ヒドロホルミル化反応またはオキソ反応と称されており、この反応を利用したアルデヒドの製造は、工業的に極めて価値が高い。
【0003】
ヒドロホルミル化反応にはロジウム化合物とリン化合物が錯形成してなるロジウム錯体が触媒として工業的に使用されている。この触媒は極めて高価であり、工業的使用においてその高収率での回収が必須となる。従来、低級アルデヒドをヒドロホルミル化反応により得、その反応混合物を蒸留することによりアルデヒドと未反応のエチレン性不飽和化合物を分離取得し、蒸発残分として触媒を回収する方法(蒸発分離法)が行われている。しかしながら、高級アルデヒドまたは官能基を有するアルデヒドを取得する場合には、蒸発分離法は適用されていない。これは、それらのアルデヒドは沸点が高く、蒸留温度を高める必要が生じ、一方、アルデヒドは熱に敏感であることから、蒸留時にアルデヒドの一部が触媒と分離し難い高沸点副生物に変化し、アルデヒドの収率が低下すること、またロジウム錯体触媒が熱的に不安定であり、蒸留中に分解し易く、触媒を回収再使用できないことなどに原因している。
【0004】
そこで、高級アルデヒドまたは官能基を有するアルデヒドを製造する方法として、原料のエチレン性不飽和化合物をロジウム化合物とスルホン化ホスフィンから成る水溶性触媒を用いてヒドロホルミル化する方法が提案された。
【0005】
例えば、(1)ロジウム化合物、スルホン化ホスフィンおよびポリアルキレングリコール誘導体の存在下に、7−オクテン−1−アールをヒドロホルミル化し、反応混合液に水を加えて触媒成分を抽出分離し、分離された水層の水を除去して得られる触媒成分を含むポリアルキレングリコール誘導体を反応器へ循環して再使用すると共に、抽残層(有機層)より1,9−ノナンジアールを取得する方法(特開平7−267890号公報参照)、(2)パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩配位子と錯形成したVIII族貴金属−配位子錯体触媒を用いるヒドロホルミル化方法(特表平8−506110号公報参照)、(3)ロジウム化合物およびスルホン化された2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−1,1’−ビフェニルのナトリウム塩の存在下、触媒成分を含む水層と基質を含む有機層から形成される二層系でヒドロホルミル化を行う方法[ジャーナル オブ モレキュラー キャタリシス(Journal of Molecular Catalysis)、73巻、191〜201頁(1992年)参照]、(4)ロジウム化合物およびスルホン化された4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチル−9H−キサンテンのナトリウム塩の存在下、触媒成分を含む水層と基質を含む有機層から形成される二層系でヒドロホルミル化を行う方法[ジャーナル オブ モレキュラー キャタリシス(Journal of Molecular Catalysis)、134巻、243〜249頁(1998年)参照]、(5)ロジウム化合物、スルホン化された2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−1,1’−ビナフチルのナトリウム塩および可溶化剤としての第四級アンモニウム塩の存在下、触媒成分を含む水層と基質を含む有機層から形成される二層系でヒドロホルミル化を行う方法(特開平10−17519号公報参照)が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法(1)では、その実施例において、スルホン化ホスフィンとしてメタ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩が使用され、分子量400のポリエチレングリコールの存在下、均一系で7−オクテン−1−アールのヒドロホルミル化反応が行われている。本方法では、触媒反応速度の指標であるTOF(これは、[モル数(n−アルデヒド+iso−アルデヒド)]/[1グラム原子(ロジウム)×時間(h)]を表す)が90℃において35000であり、0.04mmol/L以下という低いロジウム濃度で実用的な生産性が得られる。さらに、本方法では、反応混合物は未反応原料と反応生成物の他には約10体積%のポリエチレングリコールを含むだけであり、容積効率が高く、しかも、前記のとおり、触媒成分の回収再使用が可能である点で経済的である。しかしながら、本方法には、n−アルデヒドとiso−アルデヒドの選択率の比(以後、これをn/iso比という)が高くても2.5までに留まるという問題がある。
【0007】
方法(2)では、その実施例において、スルホン化ホスフィンとしてパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩が使用され、ラウリン酸を溶解した炭酸水素ナトリウム水溶液および補助溶剤であるイソプロピルアルコールの存在下、1−デセンのヒドロホルミル化反応が行われている。本方法では、n/iso比が約13と高いが、反応混合物は未反応原料と反応生成物の他に約50体積%の水および補助溶剤などを含んでおり、容積効率が低く、しかも、80℃におけるTOFは約200であり、触媒反応速度が低く、約1.6mmol/Lという高いロジウム濃度を要するという問題がある。
【0008】
方法(3)では、その実施例において、スルホン化ホスフィンとしてスルホン化された2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−1,1’−ビフェニルのナトリウム塩が使用され、水の存在下、二層系で1−ヘキセンのヒドロホルミル化反応が行われている。本方法では、n−アルデヒドへの選択率が約95%と高いが、123℃におけるTOFは42であり、触媒反応速度が極めて低いという問題がある。同様に、方法(4)では、その実施例において、スルホン化ホスフィンとしてスルホン化された4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチル−9H−キサンテンのナトリウム塩が使用され、水の存在下、二層系で1−ヘキセンのヒドロホルミル化が行われている。本方法では、n/iso比が35と高いが、120℃におけるTOFは24であり、触媒反応速度が極めて低いという問題がある。
【0009】
方法(5)では、上記の方法(3)および方法(4)において問題である触媒活性を改善するために、水に対する高級オレフィンの溶解性を向上させる可溶化剤の使用が提案されている。その実施例において、スルホン化ホスフィンとしてスルホン化された2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−1,1’−ビナフチルのナトリウム塩が使用され、可溶化剤であるテトラデシルトリメチルアンモニウムメトカーボネートおよび水の存在下、二層系で1−ヘキセンのヒドロホルミル化反応が行われている。本方法では、n/iso比は99/1と高い。しかしながら、本方法では、122℃におけるTOFは2400であり、触媒反応速度が低く、ロジウム濃度が50ppmと高いうえ、有機層の原料である1−ヘキセン36.7gに対して触媒を含む水層を110gも存在させており、容積効率が悪いという問題がある。
【0010】
本発明者らは、前記の方法(3)〜(5)で使用されるスルホン化ホスフィンを前記の方法(1)で用いることを検討した結果、上記のスルホン化ホスフィンは方法(1)の反応基質にほとんど溶けず、方法(1)には適用できないことを知った。さらに、本発明者らは、上記の方法(3)および(5)で使用されるスルホン化ホスフィンに関し、原料ホスフィンのスルホン化条件を変更してスルホン酸基の導入数を減らすことにより溶解性の改善を試みた。しかしながら、適切な溶解性を有するスルホン化ホスフィンは得られないか、得られたとしても該スルホン化ホスフィンの収率は極めて低いものであった。
【0011】
本発明の目的は、エチレン性不飽和化合物のヒドロホルミル化反応を行う際、低ロジウム濃度で反応を行うことができ、容積効率が高く、触媒回収効率が良く経済性に優れ、かつ、高選択的にn−アルデヒドを製造し得るヒドロホルミル化触媒の構成成分であるスルホン化ビスホスフィンおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ヒドロホルミル化触媒として作用する上記のスルホン化ビスホスフィンとVIII族金属化合物が錯形成してなるVIII族金属錯体を提供することにある。
本発明の更なる目的は、上記のVIII族金属錯体を用いてエチレン性不飽和化合物を一酸化炭素および水素によりヒドロホルミル化して相当するアルデヒドを製造する方法を提供することにある。
本発明の更なる他の目的は、上記のアルデヒドの製造方法により得られる反応混合物から触媒成分を効率良く回収する方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式(I)
【0013】
【化3】
Figure 0004145548
【0014】
(式中、Ar およびAr は置換基を有していてもよいアリレン基を表し、R およびR は置換基を有していてもよいアルキル基もしくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、またはそれらが結合するリン原子と一緒になって環を形成してもよく、R およびR は水素原子またはアルキル基を表す。ただし、R およびR を有する炭素原子はAr およびAr にそれらが結合する酸素原子に対してオルト位に結合する。)
で示されるビスホスフィン[以下、これをビスホスフィン(I)と略称する]の、該一般式中のAr およびAr が表す基上に少なくとも1つのスルホン酸基またはその塩が導入されてなるスルホン化ビスホスフィン[以下、これをスルホン化ビスホスフィン(I’)と略称する]である。
【0015】
本発明は、ビスホスフィン(I)を、硫酸中、三酸化硫黄を用いてスルホン化することを特徴とするスルホン化ビスホスフィン(I’)の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、VIII族金属化合物とスルホン化ビスホスフィン(I’)が錯形成してなるVIII族金属錯体[以下、これをVIII族金属錯体(I’)と略称する]である。
【0017】
さらに、本発明は、エチレン性不飽和化合物を触媒の存在下に一酸化炭素および水素によりヒドロホルミル化することにより相当するアルデヒドを製造するに際し、触媒としてVIII族金属錯体(I’)を使用することを特徴とするアルデヒドの製造方法である。
【0018】
さらにまた、本発明は、上記のアルデヒドの製造方法により得られる反応混合物から触媒成分を回収するに際し、該反応混合物を水と接触させて該触媒成分を水層に抽出し、次いで該水層から水を除去することを特徴とする上記の触媒成分の回収方法である。
ここで、触媒成分とは、VIII族金属錯体(I’)、VIII族金属化合物および該VIII族金属化合物に対して通常過剰に用いられるスルホン化ビスホスフィン(I’)を意味する。
【0019】
【発明の実施の形態】
上記一般式中、Ar およびAr がそれぞれ表すアリレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、1,1’−ビフェニレン基、1,1’−ビナフチレン基などが挙げられる。これらのアリレン基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1−フルオロプロピル基などのフルオロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基などのアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;カルボン酸基(ヒドロキシカルボニル基)またはその塩などが挙げられる。
【0020】
およびR がそれぞれ表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基などのアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;カルボン酸基またはその塩;スルホン酸基(ヒドロキシスルホニル基)またはその塩などが挙げられる。
【0021】
およびR がそれぞれ表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。これらのアリール基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1−フルオロプロピル基などのフルオロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基などのアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;カルボン酸基またはその塩;スルホン酸基またはその塩などが挙げられる。
【0022】
およびR はそれらが結合するリン原子と一緒になって環を形成してもよく、そのリン含有複素環としては、例えば2,5−ジメチルホスフォラン、2,5−ジエチルホスフォラン、2,5−ジプロピルホスフォラン、2,5−ジイソプロピルホスフォラン、5H−ジベンゾホスホール、9,10−ジヒドロ−9−ホスフィントラセン、10H−フェノキサホスフィン、10H−9−チア−10−ホスフィントラセンなどが挙げられる。R およびR がそれぞれ表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
【0023】
一般式(I)中のAr およびAr が表す基上に導入されるスルホン酸基の塩において、スルホン化ビスホスフィン(I’)が水溶性を示す限り、スルホン酸基と塩を形成する陽イオンは特に制限されるものではない。陽イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオンなどの第一アンモニウムイオン;ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオンなどの第二アンモニウムイオン;トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、エチルジイソプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオンなどの第三アンモニウムイオン;テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトライソプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどの第四アンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0024】
スルホン化ビスホスフィン(I’)は文献未載の新規化合物であり、後述するように、スルホン化ビスホスフィン(I’)を構成成分とするVIII族金属錯体(I’)はヒドロホルミル化触媒として優れた反応成績を与える。すなわち、ヒドロホルミル化触媒としてVIII族金属錯体(I’)を使用することにより、VIII族金属化合物は低濃度でヒドロホルミル化触媒機能を発現し、容積効率が高くなり、触媒回収率が向上することから経済性に優れ、かつ高選択的にn−アルデヒドを与えることができる。
【0025】
スルホン化ビスホスフィン(I’)の代表例として、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジリチウム塩、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジナトリウム塩、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジカリウム塩、2,2’− ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−6−メトキシ−ジフェニルエーテルジリチウム塩、2,2’− ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−6−メトキシ−ジフェニルエーテルジナトリウム塩、2,2’− ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−6−メトキシ−ジフェニルエーテルジカリウム塩などが挙げられる。
【0026】
次に、スルホン化ビスホスフィン(I’)の製造方法について説明する。
ビスホスフィン(I)を硫酸中、三酸化硫黄を用いてスルホン化する反応は、ビスホスフィン(I)を濃硫酸に溶解し、得られた溶液に発煙硫酸を滴下する方法、または発煙硫酸に固体状態のビスホスフィン(I)を加える方法などにより行う。反応は必要に応じてホウ酸などのルイス酸の存在下に行うことができる。
【0027】
ビスホスフィン(I)に2個のスルホン酸基を導入する場合には、ビスホスフィン(I)を濃硫酸に溶解し、得られた溶液に発煙硫酸を滴下する方法を採用するのが好ましい。ビスホスフィン(I)を溶解する濃硫酸の使用量は、ビスホスフィン(I)に対して2〜40倍重量の範囲であるのが好ましく、2〜10倍重量の範囲であるのがより好ましい。上記の範囲を超える場合には、スルホン化の容積効率が低くなり、また後処理時に副生するアルカリ金属の硫酸塩とスルホン化ビスホスフィン(I’)との濾過分離が困難となり、好ましくない。一方、上記の範囲を下回る場合には、溶液粘度が高くて攪拌が困難となるか、ビスホスフィン(I)が完全に溶解しない傾向にあり、好ましくない。
【0028】
三酸化硫黄は、濃硫酸に三酸化硫黄が溶解した発煙硫酸の形態で反応に使用される。発煙硫酸中の三酸化硫黄の濃度は、濃硫酸に対して1〜60重量%の範囲であるのが好ましく、5〜50重量%の範囲であるのがより好ましい。三酸化硫黄の濃度が高過ぎる場合には、発煙硫酸の取り扱いが困難となり、一方、三酸化硫黄の濃度が低過ぎる場合には、容積効率の点で不利となり、いずれの場合も好ましくない。
【0029】
三酸化硫黄としての使用量は、ビスホスフィン(I)1モルに対して2〜20モルの範囲であるのが好ましく、2〜5モルの範囲であるのがより好ましい。三酸化硫黄の使用量が上記の範囲を超える場合、3個以上のスルホン酸基が導入される可能性が高くなり、一方、上記の範囲を下回る場合、1個のスルホン酸基が導入される可能性が高くなる傾向になり、所望とする2個のスルホン酸基が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)の収率が低下する。
【0030】
反応時間は2〜20時間の範囲であるのが好ましく、5〜14時間の範囲であるのがより好ましい。反応時間が上記の範囲を超える場合、3個以上のスルホン酸基が導入される可能性が高くなり、一方、上記の範囲を下回る場合、1個のスルホン酸基が導入される可能性が高くなる傾向になり、所望とする2個のスルホン酸基が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)の収率が低下する。
【0031】
反応温度は、0〜25℃の範囲であるのが好ましく、1〜15℃の範囲であるのが所望とするスルホン化ビスホスフィン(I’)が高収率で得られる点からより好ましい。25℃を超える温度である場合、過剰にスルホン酸基が導入されるか、スルホン化反応よりもリン原子の酸化反応が本質的に促進される傾向にあり、また0℃より低い温度である場合、スルホン化反応が遅いか、またはスルホン酸基の導入数が少くなる傾向にあり、いずれの場合も所望とするスルホン化ビスホスフィン(I’)の収率が低下する。
【0032】
上記の操作により得られる反応混合液は、氷または水を用いて、0〜30℃の範囲の温度、好ましくは0〜25℃の範囲の温度で処理される。水の使用量は特に制限されないが、反応混合液に対して5〜100倍重量であるのが好ましい。上記の操作により、スルホン酸基が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)が得られる。
【0033】
スルホン酸基のアルカリ金属塩が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)は、上記のスルホン酸基が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)に水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を反応させることにより得られる。上記のスルホン酸基が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)の反応混合液にアルカリ金属の水酸化物を加えて反応させる場合、副生するアルカリ金属の硫酸塩は低温での溶解性が低く、その大部分は冷却した溶液を濾過することにより除かれる。濾液をロータリーエバポレーターなどを用いて濃縮し、濃縮液にスルホン化ビスホスフィン(I’)のみを溶解し得る溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコールを加え、再度、濾過することにより残存するアルカリ金属の硫酸塩は除かれる。濾液を乾固することにより、スルホン酸基のアルカリ金属塩が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)を得ることができる。
【0034】
スルホン酸基のアルカリ金属塩が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)の水溶液を陽イオン交換体で処理することにより、スルホン酸基が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)とし、これをアルカリ金属水酸化物、アミン水酸化物などと反応させることにより、スルホナト(−SO )とイオン対を形成し得る各種の陽イオンとの塩が導入されたスルホン化ビスホスフィン(I’)を得ることができる。
【0035】
次に、ビスホスフィン(I)の製造方法について説明する。
ビスホスフィン(I)は、一般式(II)
【0036】
【化4】
Figure 0004145548
【0037】
(式中、Ar 、Ar 、R およびR は前記定義のとおりであり、Xはアリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基またはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物[以下、これを化合物(II)と略称する]を一般式(III)
【0038】
【化5】
Figure 0004145548
【0039】
(式中、R およびR は前記定義のとおりであり、Mはリチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子を表す。)
で示されるアルカリ金属ホスフィド[以下、これをアルカリ金属ホスフィド(III)と略称する]によりホスフォリル化することにより製造される。
【0040】
化合物(II)をアルカリ金属ホスフィド(III)によりホスフォリル化する反応は、溶媒の存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、例えば1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などが好ましい。これらの中でも、テトラヒドロフランおよびジブチルエーテルからなる混合溶媒を使用することが、アルカリ金属ホスフィド(III)を調製する際に使用する溶媒として適しており、しかもアルカリ金属ホスフィド(III)とビスホスフィン(I)の分離が容易であることから特に好ましい。溶媒の使用量は、特に制限されないが、アルカリ金属ホスフィド(III)に対して1〜1000倍重量の範囲であるのが好ましく、10〜100倍重量の範囲であるのがビスホスフィン(I)を反応混合液から分離する際に容積効率が高い点からより好ましい。
【0041】
上記の反応は、化合物(II)を含む溶液にアルカリ金属ホスフィド(III)を滴下するか、またはアルカリ金属ホスフィド(III)を含む溶液に化合物(II)を滴下することにより行われる。
【0042】
アルカリ金属ホスフィド(III)の使用量は、化合物(II)1モルに対して2〜4モルの範囲であるのが好ましく、2〜2.2モルの範囲であるのが未反応のアルカリ金属ホスフィド(III)とビスホスフィン(I)の分離が容易であることからより好ましい。反応温度は、−75℃〜溶媒の還流温度の範囲であるのが好ましく、−75℃〜室温の範囲であるのが副生成物の生成を抑制できることからより好ましい。反応時間は、0.5〜10時間の範囲であるのが好ましく、0.5〜3時間の範囲であるのが副生成物の生成を抑制できることからより好ましい。
【0043】
反応終了後、ビスホスフィン(I)を含む反応混合液または該反応混合液を濃縮後、濃縮液にトルエン、ペンタン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどの水抽出に適した溶媒を加え、水で洗浄し、得られる有機層からビスホスフィン(I)を再結晶などの操作により単離精製することができる。
【0044】
化合物(II)は、一般式(II)においてXがアリールスルホニルオキシ基またはアルキルスルホニルオキシ基であるスルホン酸エステル[以下、これをスルホン酸エステル(II−a)と略称する]と一般式(II)においてXがハロゲン原子であるハロゲン化物[以下、これをハロゲン化物(II−b)と略称する]とに大別される。
【0045】
スルホン酸エステル(II−a)は公知の方法により製造することができる。例えば、スルホン酸エステル(II−a)に含まれる2,2’−ビス(p−トリルスルホニルオキシメチル)−ジ(置換)フェニルエーテル[以下、これをスルホン酸エステル(II−a’)と略称する]は、下記の方法により製造することができる。
【0046】
【化6】
Figure 0004145548
【0047】
上記式中、R およびR は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1−フルオロプロピル基などのフルオロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基などのアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;カルボン酸基などのベンゼン環上の置換基を表し、Halは塩素原子または臭素原子を表し、Tos−Clはp−トリルスルホニルクロライドを表す。
【0048】
(反応II−a−1について)
ヒドロキシアレーンカリウム塩(IV)1モルに対して1モル以上のハロゲン化アレーン(V)を活性銅粉末の存在下に反応させることによりジアレーンエーテル(VI)を得る。反応はハロゲン化アレーン(V)の還流温度で行うのが好ましい。反応後、反応混合液にエーテルなどの有機溶剤および水を加えて抽出操作を行い、有機層から減圧蒸留などの操作によりジアレーンエーテル(VI)を単離精製する。[オーガニック シンセシーズ(Organic Syntheses)、2巻、446頁(1943年)参照]
【0049】
(反応II−a−2について)
ジアレーンエーテル(VI)1モルに対して2モルのリチオ化剤を溶媒の存在下に反応させることによりジリチオ化ジアレーンエーテル(VII)を得る。リチオ化剤としては、例えばメチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどが使用される。溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが使用される。反応温度は室温以下の温度から選ばれる。[ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、23巻10号、1476〜1479頁(1958年)参照]
【0050】
(反応II−a−3について)
反応II−a−2で調製したジリチオ化ジアレーンエーテル(VII)を含む反応混合液に、ジリチオ化ジアレーンエーテル(VII)1モルに対して2モル以上の二酸化炭素を反応させることによりジカルボキシジアレーンエーテル(VIII)を得る。反応温度は室温以下の温度から選ばれる。反応後、反応混合液を濃縮し、濃縮液に酢酸エチルなどの有機溶剤および水を加えて抽出操作を行い、有機層から再結晶などの操作によりジカルボキシジアレーンエーテル(VIII)を単離精製する。[ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、55巻2号、438〜441頁(1990年)参照]
【0051】
(反応II−a−4について)
ソックスレー抽出器に固体状態のジカルボキシジアレーンエーテル(VIII)を存在せしめ、溶媒抽出を断続的に行いながら、ジカルボキシジアレーンエーテル(VIII)1モルに対して1モル以上の水素化アルミニウムリチウムを反応させることによりジヒドロキシアルキルジアレーンエーテル(IX)を得る。溶媒としては、例えばジエチルエーテルなどが使用される。反応は、抽出効率が高い点から、溶媒の還流温度で行うのが好ましい。反応後、反応混合液を濃縮し、濃縮液に水を加え、抽出操作を行い、有機層から再結晶などの操作によりジヒドロキシアルキルジアレーンエーテル(IX)を単離精製する。[ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、34巻4号、1165〜1168頁(1969年)参照]
【0052】
(反応II−a−5について)
ジヒドロキシアルキルジアレーンエーテル(IX)1モルに対して2モルのp−トルエンスルホニルクロリドを2モル以上のアミン類の存在下に反応させることによりスルホン酸エステル(II−a’)を得る。アミン類としては、例えばピリジンなどが使用される。反応温度は室温以下の温度から選ばれる。反応後、反応混合液を濃縮し、濃縮液から再結晶などの操作によりスルホン酸エステル(II−a’)を単離精製する。[ザ ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティー(The Journal of the American Chemical Society)、74巻2号、425〜428頁(1952年)など参照]
【0053】
ハロゲン化物(II−b)は公知の方法により製造することができる。例えば、ハロゲン化物(II−b)に含まれる2,2’−ビス(ブロモメチル)−ジ(置換)フェニルエーテル[以下、これをハロゲン化物(II−b’)と略称する]および2,2’−ビス(フルオロメチル)−ジ(置換)フェニルエーテル[以下、これをハロゲン化物(II−b’’)と略称する]は、下記の方法により製造することができる。
【0054】
【化7】
Figure 0004145548
【0055】
上記式中、R およびR は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1−フルオロプロピル基などのフルオロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基などのアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;カルボン酸基などのベンゼン環上の置換基を表し、NBSはN−ブロモ琥珀酸イミドを表し、Halは塩素原子または臭素原子を表し、Tos−Clはp−トリルスルホニルクロライドを表す。
【0056】
(反応II−b−1について)
ヒドロキシアレーンカリウム塩(X)1モルに対して1モル以上のハロゲン化アレーン(XI)を反応させることによりジアレーンエーテル(XII)を得る。反応はハロゲン化アレーン(XI)の還流温度で行うのが好ましい。反応後、反応混合液を濃縮し、濃縮液にヘキサンなどの有機溶剤および水を加えて抽出操作を行い、有機層から減圧蒸留などの操作によりジアレーンエーテル(XII)を単離精製する。[ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、34巻4号、1165〜1168頁(1969年)参照]
【0057】
(反応II−b−2について)
ジアレーンエーテル(XII)1モルに対して2モル以上のN−ブロモ琥珀酸イミドを溶媒の存在下に反応させることによりハロゲン化物(II−b’)を得る。ラジカル反応開始剤として、例えば過酸化ベンソイルなどが使用される。溶媒としては、例えば四塩化炭素などが使用される。反応は溶媒の還流温度で行うのが好ましい。反応後、反応混合液を濾過し、濾液を濃縮後、濃縮液から再結晶などの操作によりハロゲン化物(II−b’)を単離精製する。[ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、34巻4号、1165〜1168頁(1969年)参照]
【0058】
(反応II−b−3について)
ジヒドロキシアルキルジアレーンエーテル(XIII)1モルに対して2モル以上の臭化水素を溶媒の存在下に反応させることによりハロゲン化物(II−b’)を得る。溶媒としては、例えばベンゼンなどが使用される。反応温度は室温以下の温度から選ばれる。反応後、反応混合液を濃縮し、濃縮液から再結晶などの操作によりハロゲン化物(II−b’)を単離精製する。[ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、34巻4号、1165〜1168頁(1969年)参照]
【0059】
(反応II−b−4について)
スルホン酸エステル(XIV)1モルに対して2モル以上のフッ化カリウムを溶媒の存在下に反応させることによりハロゲン化物(II−b’’)を得る。溶媒としては、例えばジエチレングリコールなどが使用される。反応温度は130℃以下の温度から選ばれる。反応後、反応混合液から減圧蒸留などの操作によりハロゲン化物(II−b’’)を単離精製する。[ケミストリー レターズ(Chemistry Letters)、3号、265〜268頁(1982年)参照]
【0060】
アルカリ金属ホスフィド(III)は公知の方法により製造することができる。例えば、一般式(III)においてMがリチウム原子であるアルカリ金属ホスフィドは、対応するホスフィンとリチオ化剤を反応させることにより製造される。一般式(III)においてMがナトリウム原子またはカリウム原子であるアルカリ金属ホスフィドは、対応するハロゲン化ホスフィンと金属ナトリウムまたは金属カリウムとを反応させることにより製造される[ケミッシェ ベリヒテ(Chemische Berichte)、92巻、1118〜1126頁(1959年)参照]。
【0061】
スルホン化ビスホスフィン(I’)とVIII族金属化合物が錯形成してなるVIII族金属錯体(I’)は、文献未載の新規化合物であり、ヒドロホルミル化触媒として優れた反応成績を与える。すなわち、ヒドロホルミル化触媒としてVIII族金属錯体(I’)を使用することにより、VIII族金属化合物は低濃度でヒドロホルミル化触媒機能を発現し、容積効率が高くなり、触媒回収率が向上することから経済性に優れ、かつ高選択的にn−アルデヒドを与えることができる。また、ヒドロホルミル化反応混合物から触媒成分を回収するに際し、該反応混合物を水と接触させ、該触媒成分を水層に抽出し、該水層から水を除去することにより触媒成分を容易に回収することができる。
【0062】
VIII族金属化合物としては、エチレン性不飽和化合物のヒドロホルミル化反応を促進させる触媒能を当初から有するか、またはヒドロホルミル化反応条件下で該触媒能を獲得する化合物であり、従来からヒドロホルミル化反応において触媒として使用されているロジウム化合物、コバルト化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物などが挙げられる。ロジウム化合物としては、例えば、RhO、RhO 、Rh O、Rh などの酸化ロジウム;硝酸ロジウム、硫酸ロジウム、塩化ロジウム、ヨウ化ロジウム、酢酸ロジウムなどのロジウム塩;Rh(acac)(CO) 、RhCl(CO)(PPh 、RhCl(CO)(AsPh 、RhCl(PPh 、RhBr(CO)(PPh 、Rh (CO)12、Rh (CO)16などのロジウム錯化合物などが挙げられる。
【0063】
コバルト化合物としては、例えばHCo(CO) 、HCo(CO) 、Co (CO) 、HCo (CO) などのコバルト錯化合物などが挙げられる。ルテニウム化合物としては、例えばRu(CO) (PPh 、RuCl (PPh、RuCl (PPh 、Ru (CO)12などのルテニウム錯化合物などが挙げられる。また、鉄化合物としては、例えばFe(CO) 、Fe(CO) PPh 、Fe(CO) (PPh などの鉄錯化合物などが挙げられる。これらの化合物の中でも、ヒドロホルミル化反応において温和な反応条件を選択できる点から、ロジウム化合物を使用するのが好ましく、Rh(acac)(CO) を使用するのが特に好ましい。
【0064】
スルホン化ビスホスフィン(I’)は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、他のリン化合物と組み合わせて用いることもできる。他のリン化合物として、例えば、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、2−フリルジフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、4−ピリジルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、o−トルイルジフェニルホスフィン、ジフェニル(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、m−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸またはその金属塩、p−ジフェニルホスフィノ安息香酸またはその金属塩、p−ジフェニルホスフィノフェニルホスホン酸またはその金属塩、p−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸またはその金属塩、
【0065】
ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルホスフィン、トリス(p−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリ−o−トルイルホスフィン、トリ−m−トルイルホスフィン、トリ−p−トルイルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)ホスフィンなどのホスフィン;トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(p−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスファイト、トリス(p−メトキシフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのホスファイトなどが挙げられる。
【0066】
スルホン化ビスホスフィン(I’)の使用量は、VIII族金属原子換算でVIII族金属化合物1モルに対して、リン原子換算で2〜10000モルの範囲であるのが好ましく、2〜1000モルの範囲であるのがより好ましい。スルホン化ビスホスフィン(I’)の使用量が上記の範囲を下回る場合には、触媒の安定性が損なわれ、また、上記の範囲を超える場合には、触媒コストが増大して好ましくない。
【0067】
VIII族金属錯体の調製方法に特に制限はないが、例えばヒドロホルミル化反応に影響を及ぼさない溶媒を用いて別途調製された、VIII族金属化合物溶液およびスルホン化ビスホスフィン(I’)溶液をヒドロホルミル化反応系に別個に導入し、その系中で両者を反応させて錯体化することにより調製することができる。また、上記のVIII族金属化合物溶液にスルホン化ビスホスフィン(I’)を入れ、次いでヒドロホルミル化反応に影響を及ぼさない溶媒を添加して均一な溶液とすることにより調製することもできる。
【0068】
次に、エチレン性不飽和化合物をVIII族金属錯体(I’)の存在下に一酸化炭素および水素によりヒドロホルミル化することにより相当するアルデヒドを製造する方法について説明する。
【0069】
エチレン性不飽和化合物は、直鎖状、分岐鎖状または環状の末端オレフィンまたは内部オレフィンのいずれでもよい。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、2−ブテン、イソブテン、2−オクテン、1,7−オクタジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、ブタジエン重合物、イソプレン重合物などの不飽和脂肪族炭化水素類;スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、アルキル基核置換スチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン類;シクロペンテン、シクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、リモネンなどの脂環式オレフィン系炭化水素類;アリルアルコール、クロチルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、2,7−オクタジエノール、ビニルアセテート、アリルアセテート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、5−ヘキセンアミド、アクリロニトリル、7−オクテン−1−アールなどの官能基を含有するオレフィン類などが挙げられる。
【0070】
VIII族金属錯体(I’)の使用量は、反応混合液1リットル当たり、VIII族金属原子換算で0.0001〜1000ミリグラム原子の範囲となるような量を選択するのが好ましく、0.005〜10ミリグラム原子の範囲となるような量を選択するのがより好ましい。VIII族金属錯体(I’)の使用量が上記の範囲を下回る場合には、反応速度が遅すぎ、また上記の範囲を超える場合には、触媒コストが増大して好ましくない。
【0071】
ヒドロホルミル化反応は溶媒の存在下または不存在下に行われる。溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフランのような非プロトン性極性溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコール誘導体;
【0072】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどのポリアルキレングリコール誘導体などを挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリアルキレングリコール誘導体を用いるのが、触媒抽出時の触媒成分の析出を防ぎ、触媒成分の回収効率を向上させる観点から好ましい。特に、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが好ましく使用される。これらの溶媒の使用量は、ヒドロホルミル化反応混合液中2〜50容量%の範囲となるような量を選択するのが好ましく、5〜20容量%の範囲となるような量を選択するのがより好ましい。
【0073】
ヒドロホルミル化反応に使用される水素と一酸化炭素との混合ガスは、H /COモル比が入りガス組成として、0.1〜10の範囲であるのが好ましく、0.5〜2の範囲であるのが混合ガス組成の維持が容易である観点からより好ましい。反応圧力は、0.1〜10MPaの範囲であるのが好ましく、0.5〜5MPaの範囲であるのが反応速度の観点から好ましい。反応温度は、使用するエチレン性不飽和化合物の種類および反応に要する時間により適宜選択されるが、40〜150℃の範囲であるのが、反応速度が高く、触媒の失活を抑制できる点で好ましく、60〜100℃の範囲であるのが、ヒドロホルミル化反応中の高沸点副生成物の形成が遅いためにアルデヒドの収率低下を抑制できる点でより好ましい。反応は、攪拌型反応槽、液循環型反応槽、ガス循環型反応槽、気泡塔型反応槽などを用いて行うことができる。また、反応は、連続方式またはバッチ方式で行うことができる。
【0074】
原料の仕込み方法に特に制限はないが、エチレン性不飽和化合物、別途調製されたVIII族金属錯体(I’)溶液および必要に応じて溶媒を仕込み、次いで、水素と一酸化炭素との混合ガスを所定圧力で導入し、所定温度で撹拌して反応を行うのが好ましい。
【0075】
上記の方法により得られたアルデヒドは、通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、後述する触媒成分の回収工程を経て得られた有機層から蒸留、再結晶、カラムクトマトグラフィーなどにより単離・精製する。
【0076】
次に、上記のアルデヒドの製造方法により得られる反応混合物から触媒成分を回収する方法について説明する。
ヒドロホルミル化反応混合物から触媒成分を回収するに際し、まずヒドロホルミル化反応後の反応混合物を水と接触させる。反応混合物に対する水の使用量は特に制限されないが、操作性や触媒成分の水への溶解性などを考慮すれば、反応混合物に対して1〜200容量%の範囲となるような量を選択するのが好ましく、5〜50容量%の範囲となるような量を選択するのがより好ましい。
【0077】
反応混合物と水を撹拌することにより充分接触させ、触媒成分を水で抽出する。この際、温度は20〜90℃の範囲とするのが好ましく、操作は窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスまたは水素と一酸化炭素からなる混合ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。
【0078】
次に、ヒドロホルミル化反応生成物を含有する有機層と、触媒成分を含有する水層を分離する。抽出操作において、静置により有機層と水層が十分に層分離しない場合には、層分離を促進させるために遠心分離操作などを併用することができる。また、ヘキサン、シクロヘキサンのような比重が水よりも小さい炭化水素類を添加することにより層分離を促進させることもできる。
【0079】
有機層には反応生成物の他に未反応のエチレン性不飽和化合物と少量の触媒成分が含まれており、触媒成分の回収率を高めるために、有機層を水で洗浄し、その洗浄液を水層に合せることが好ましい。
【0080】
得られた水層から水を除去することにより、触媒成分を回収することができる。水の除去は減圧留去などの常法により行う。減圧留去を行う場合、VIII族金属錯体(I’)の熱劣化などを未然に防ぐために、低い温度で実施することが好ましく、30〜100℃の温度で10〜300mmHgの圧力条件下に行うのが好ましい。水の留去の程度は、触媒成分を含有する濃縮物をヒドロホルミル化反応に再使用した場合に、反応系に分離した水が存在しないような程度とするのが好ましい。得られた触媒成分はヒドロホルミル化反応に再使用できる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り、リン化合物の合成操作は窒素またはアルゴン雰囲気下で行い、ヒドロホルミル化反応および水抽出操作は、すべて一酸化炭素と水素からなり、H/COモル比が1の混合ガス雰囲気下で行った。
【0082】
ビスホスフィン(I)、スルホン化ビスホスフィン(I’)およびその前駆体は、H−NMR分光装置(日本電子株式会社製 ラムダ270型)および/または31P−NMR分光装置(日本電子株式会社製 ラムダ500型)を用いて同定した。実施例に記載した31P−NMRのケミカルシフトは、リン酸を20重量%含む重水を予め測定し、リン酸のケミカルシフトを0ppmとした場合の値である。抽出操作によるスルホン化ビスホスフィン(I’)の水層への回収は、同31P−NMR分光装置を用いて定量した。抽出操作によるスルホン化ビスホスフィン(I’)の水層への回収は、CIDプラズマ発光分光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ株式会社製 IRIS/AP)を用いて定量した。抽出操作によるロジウム化合物の水層への回収は、偏光ゼーマン原子吸光分光光度計(株式会社日立製作所製 Z−5300型)を用いて定量した。
【0083】
参考例1
2,2’−ジメチルジフェニルエーテルの合成
還流管、ディーンスターク装置、滴下ロート、温度計およびメカ攪拌器を備えた内容積1Lの3ツ口フラスコに、水酸化カリウム40g(0.71mol)、o−クレゾール77g(0.71mol)、2−クロロトルエン100g(0.79mol)および2−ブロモトルエン400g(2.34mol)を入れ、150℃で3ツ口フラスコを加温しながらディーンスターク装置を用いて生じた水を連続的に反応液から除去した。活性銅粉末3gを加え、ディーンスターク装置を用いて活性銅に含まれた水および2−クロロトルエンを連続的に反応液から除去しながら、液温が190℃になるまで加温し、10時間、同温度で攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで放冷した後、ジエチルエーテル400mlを加え、得られた溶液をセライトを用いて濾過した。濾液を5重量%の水酸化カリウム水溶液200mlで5回洗浄し、得られた有機層を0.3mmHgで減圧蒸留し、93℃の溜分84gを得た。この留分は無色の油状物であり、下記の物性を有する2,2’−ジメチルジフェニルエーテルであった。収率はo−クレゾール基準で60%であった。
【0084】
H−NMR(270MHz、重ベンゼン、TMS、ppm)δ:2.18(s,6H,Ar−C )、6.67(d,2H)、6.80〜7.00(m,4H)、7.05(d,2H)
【0085】
参考例2
2,2’−ビス(ブロモメチル)ジフェニルエーテルの合成
還流管、温度計およびメカ攪拌器を備えた内容積500mLの3ツ口フラスコに、四塩化炭素250 ml、N−ブロモ琥珀酸イミド58g(0.33mol)および参考例1で合成した2,2’−ジメチルジフェニルエーテル32g(0.16mol)を入れ、液温70℃として還流させた。過酸化ベンゾイル1gを3回に分けて30分を要して加え、さらに30分攪拌した。得られた反応混合液を濾過し、濾液を濃縮乾固後、ヘキサンを溶媒として再結晶することにより、無色の結晶として下記の物性を有する2,2’− ビス(ブロモメチル)ジフェニルエーテル20gを得た。収率は2,2’−ジメチルジフェニルエーテル基準で35%であった。
【0086】
H−NMR(270MHz、重ベンゼン、TMS、ppm)δ:4.30(s,4H,Ar−C −Br)、6.58(d,2H)、6.73(t,2H)、6.83(t,2H)、7.04(d,2H)
【0087】
参考例3
2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ジフェニルエーテルの合成
還流管、滴下ロート、温度計および磁気回転子を備えた内容積500mlの3ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン250 mlを入れ、さらにジフェニルホスフィン20g(0.11mol)を加えた後、液温を−75℃に冷却した。次いで、ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.56mol/L)69ml(0.11mol)を、液温を−75〜−65℃に維持するような速度で2時間を要して滴下した後、さらに1時間、同液温で攪拌し、リチウムジフェニルホスフィドを得た。次いで、参考例3で合成した2,2’−ビス(ブロモメチル)ジフェニルエーテル19g(0.054mol)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液を、液温を−75〜−65℃に維持するような速度で2時間を要して先の溶液に滴下した後、室温に戻し、1時間攪拌した。反応終了後、得られた反応混合物からテトラヒドロフラン250mlを留去し、ジエチルエーテル200mlを加えた。得られた溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液150mlで3回、水150mlで3回、抽出操作を行い洗浄した。これより得られる有機層を、無水硫酸マグネシウムを用いて脱水後、濾過し、濾液を濃縮し、油状とした。濃縮液にメチルアルコール200mlを加え、10分間溶媒還流温度で煮沸することにより、白色粉末として下記の物性を有する2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ジフェニルエーテル26gを得た。収率は2,2’−ビス(ブロモメチル)ジフェニルエーテル基準で85%であった。
【0088】
H−NMR(270MHz、重ベンゼン、TMS、ppm)δ:3.60(s,4H,Ar−C −P)、6.67〜6.78(m,4H)、6.85(t,2H)、6.95〜7.10(m,14H,うち12HはP(C )、7.36〜7.50(m,8H,P(C
31P−NMR(500MHz、重ベンゼン、リン酸重水溶液、ppm)δ:−11.2(s)
【0089】
実施例1
2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジカリウム塩の合成
温度計および磁気回転子を備えた内容積100mlの3ツ口フラスコに、硫酸50mlおよび三酸化硫黄含量30%の発煙硫酸10mlを入れ、さらに液温が25℃以下となるように、固体の2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ジフェニルエーテル18g(0.032mol)を2時間を要して加えた。次いで、15時間室温で攪拌した。氷100gを含む水100mlに反応液を加え、水酸化カリウムで中和した。得られた水溶液をロータリーエバポレータを用いて乾固した後、エタノール50mlを加えて濾過した。濾液を乾固し、エタノール50mlを加え、濾過する操作を行った。濾液を乾固することにより、白色粉末として下記の物性を有する2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジカリウム塩24gを得た。収率は2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ジフェニルエーテル基準で93%であった。
【0090】
2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ジフェニルエーテルに対するスルホン酸基の導入数が1または3以上の化合物と推測されるものは H−NMRおよび31P−NMRでは観測できなかった。
【0091】
H−NMR(270MHz、重水、TSP、ppm)δ:3.24(s,4H,Ar−C −P)、6.51(d,2H)、6.82〜7.02(m,12H,P(C )、7.02〜7.18(m,8H,P(C )、7.28(s,2H)、7.39(d,2H)
31P−NMR(500MHz、重ベンゼン、リン酸重水溶液、ppm)δ:−10.9(s)
【0092】
実施例2
2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジカリウム塩−ロジウム錯体触媒を用いたヒドロホルミル化反応
テフロン(登録商標)製磁気回転子を備えた内容積100mlの3ツ口フラスコに、Rh(acac)(CO)3.9mg(0.015mmol)および実施例1で合成した2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジカリウム塩30.1mg(0.0375mmol)(ロジウム化合物に対してリン原子として5モル倍)を入れ、さらにポリエチレングリコールジメチルエーテル4.5mlおよびブチルアルコール4.5mlを加えた後、50℃で30分間攪拌して均一な触媒溶液を調製した。テフロン(登録商標)製磁気回転子を備えた内容積50mlの3つ口フラスコに、上記の触媒溶液6mlおよび7−オクテン−1−アール34ml(0.21mol、純度93%)を入れ、得られた混合液をガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積100mlのオートクレーブに仕込んだ。全圧を1.0MPaにし、攪拌しながら内温を85℃に昇温した後、15時間反応を行い、1,9−ノナンジアール27.6g(0.176mol、収率84%)および2−メチルオクタナール4.2g(0.014mol、収率6%)を得た。7−オクテン−1−アールの転化率は95%であり、n−アルデヒドへの選択率は88%であり、iso−アルデヒドへの選択率は7%であった。水素化および異性化への選択率は5%であった。
【0093】
上記で得られた反応混合液を、該オートクレーブから予め水素/一酸化炭素の混合ガスで充分に置換した50mlの3ツ口フラスコに空気に触れないように圧送することにより取得した。 内容積50mlのシュレンクに反応混合液20ml、水20gおよびヘキサン6mlを加え、内温を20℃に保ちながら上記組成の混合ガス雰囲気下で20分間撹拌した。撹拌を停止した後に、12時間、同温度で静置し、水層19.0gを得た。高周波誘導結合プラズマ発光分光分析の結果、水層へのスルホン化ビスホスフィン(I’)の回収率は71.2%であった。原子吸光分析の結果、ロジウムの回収率は66.7%であった。該有機層に再び水20gを加えて同様の操作を行い、水層21.2gを得た。高周波誘導結合プラズマ発光分光分析の結果、水層へのスルホン化ビスホスフィン(I’)の回収率は26.5%であった。原子吸光分析の結果、水層へのロジウムの回収率は32.3%であった。これより、2回の水抽出操作を繰り返すことにより、水層へのスルホン化ビスホスフィン(I’)の回収率は97.7%であり、ロジウムの回収率は99.0%であった。
【0094】
比較例1
メタ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩−ロジウム錯体触媒を用いたヒドロホルミル化反応
実施例2において、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−4,4’−ビス(スルホニックアシッド)−ジフェニルエーテルジカリウム塩30.1mg(0.0375mmol)の代わりにメタ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩440mg(1.2mmol)(ロジウム化合物に対してリン原子として80モル倍)を用い、かつ反応時間を8時間とした以外は同様の操作を行い、1,9−ノナンジアール20.1g(0.129mol、収率73%)および2−メチルオクタナール7.0g(0.045mol、収率27%)を得た。7−オクテン−1−アールの転化率は100%であり、n−アルデヒドへの選択率は73%であり、iso−アルデヒドへの選択率は27%であった。水素化および異性化は観測されなかった。
【0095】
次いで、反応混合液を、該オートクレーブから予め水素/一酸化炭素の混合ガスで充分に置換した内容積50mlの3ツ口フラスコに空気に触れないように圧送することにより取得した。内容積50mlのシュレンクに反応混合液20ml、水20gおよびヘキサン6mlを加え、内温を20℃に保ちながら上記組成の混合ガス雰囲気下で20分間撹拌した。撹拌を停止した後に、12時間、同温度で静置し、水層18.5gを得た。高周波誘導結合プラズマ発光分光分析の結果、水層へのスルホン化モノホスフィンの回収率は70.3%であった。原子吸光分析の結果、ロジウムの回収率は70.0%であった。該有機層に再び水20gを加えて同様の操作を行い、水層21.2gを得た。高周波誘導結合プラズマ発光分光分析の結果、水層へのスルホン化モノホスフィンの回収率は22.5%であった。原子吸光分析の結果、水層へのロジウムの回収率は24.2%であった。これより、2回の水抽出操作を繰り返すことにより、水層へのスルホン化モノホスフィンの回収率は92.8%であり、ロジウムの回収率は94.2%であった。
【0096】
上記の実施例2と比較例1を比較すれば、スルホン化ビスホスフィン(I’)を用いる場合、従来のスルホン化モノホスフィンを用いる場合に比べ、VIII族金属錯体(I’)に対するリン原子換算での使用量が少ない条件でも、ヒドロホルミル化反応によりn−アルデヒドへの高い選択率が達成できる。また、反応混合液に水を加えて触媒回収を行う際、スルホン化ビスホスフィン(I’)を用いる場合、従来のスルホン化モノホスフィンを用いる場合に比べ、高い回収率でスルホン化ホスフィン化合物およびロジウム化合物が得られる。
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、エチレン性不飽和化合物のヒドロホルミル化反応を行う際、低ロジウム濃度で反応を行うことができ、容積効率が高く、触媒回収効率が良く経済性に優れ、かつ、高選択的にn−アルデヒドを製造し得るヒドロホルミル化触媒であるVIII族金属錯体(I’)が提供され、その錯体の構成成分であるスルホン化ビスホスフィン(I’)およびその製造方法が提供される。かかるVIII族金属錯体(I’)を用いて、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素および水素によりヒドロホルミル化することにより、低ロジウム濃度で反応を行うことができ、容積効率が高く、触媒回収効率が良く経済性に優れ、かつ、高選択的にn−アルデヒドを得ることができる。さらに、上記のアルデヒドの製造方法により得られる反応混合物から触媒成分を効率良く回収することができる。

Claims (5)

  1. 一般式(I)
    Figure 0004145548
    (式中、Ar およびAr は置換基を有していてもよいアリレン基を表し、R およびR は置換基を有していてもよいアルキル基もしくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、またはそれらが結合するリン原子と一緒になって環を形成してもよく、R およびR は水素原子またはアルキル基を表す。ただし、R およびR を有する炭素原子はAr およびAr にそれらが結合する酸素原子に対してオルト位に結合する。)
    で示されるビスホスフィンの、該一般式中のAr およびAr が表す基上に少なくとも1つのスルホン酸基またはその塩が導入されてなるスルホン化ビスホスフィン。
  2. 一般式(I)
    Figure 0004145548
    (式中、Ar およびAr は置換基を有していてもよいアリレン基を表し、R およびR は置換基を有していてもよいアルキル基もしくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、またはそれらが結合するリン原子と一緒になって環を形成してもよく、R およびR は水素原子またはアルキル基を表す。ただし、R およびR を有する炭素原子はAr およびAr にそれらが結合する酸素原子に対してオルト位に結合する。)
    で示されるビスホスフィンを、硫酸中、三酸化硫黄を用いてスルホン化することを特徴とする請求項1記載のスルホン化ビスホスフィンの製造方法。
  3. VIII族金属化合物と請求項1記載のスルホン化ビスホスフィンが錯形成してなるVIII族金属錯体。
  4. エチレン性不飽和化合物を触媒の存在下に一酸化炭素および水素によりヒドロホルミル化することにより相当するアルデヒドを製造するに際し、触媒として請求項3記載のVIII族金属錯体を使用することを特徴とするアルデヒドの製造方法。
  5. 請求項4記載のアルデヒドの製造方法により得られる反応混合物から触媒成分を回収するに際し、該反応混合物を水と接触させて該触媒成分を水層に抽出し、次いで該水層から水を除去することを特徴とする上記の触媒成分の回収方法。
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