JP4145281B2 - 床−天井構造 - Google Patents

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Description

本発明は、住宅などの建築構造物の床および天井構造に関するものである。
金属形材製の骨組みの床構造や木材の骨組みの床構造を有する2階建て以上の建築物において、上階床上での歩行や飛び跳ね、物の落下などによって、下階で発生する衝撃音が問題となることがある。
この衝撃音は、床衝撃音と呼ばれ、JIS規格で測定方法および評価方法が定められている。なお、床衝撃音には、子供の飛び跳ねなどの重量物の落下に起因する重量床衝撃音と、スプーンなどの軽量物の落下に起因する軽量床衝撃音とがある。一般に、前者は63Hzバンド(1/1オクターブバンド)など低周波数域の音が、後者は250〜500Hzバンド(1/1オクターブバンド)など中〜高周波数域の音が主成分であり、これらの帯域の成分がL等級(JIS規格で規定されている床衝撃音遮断性能等級の呼称)を決定する。
床構造の開発において、この床衝撃音を低減することは大きな課題となっている。床衝撃音は、(a)上階床に加わった衝撃力により上階床が振動し、(b)その床振動が下階の天井、壁に伝搬し、(c)その天井、壁の振動から下階室内に音が放射される、というメカニズムで発生する。また、(b)の振動の伝搬経路は大別して、固体伝搬と空気伝搬との2つがある。軽量床衝撃音は、床仕上げ材の工夫などで容易に床振動(a)を低減できるので、対策は比較的容易である。一方、重量床衝撃音は、床、天井、壁の構造変更など、大掛かりな対策を必要とし、大きな技術課題となっている。
上述した重量床衝撃音を低減するためには、床を防振支持し、さらには天井を床から吊らないという対策をとることがある。上述のメカニズムの伝搬経路(b)において、固体伝搬が空気伝搬より著しく大きい場合には、この対策によって大きな効果が得られる。
特公平8−1082号公報 特公平8−16368号公報
しかしながら、対策前の構造において、空気伝搬が固体伝搬より著しく大きい場合には、この対策では効果は得られず、空気伝搬成分を低減する対策が必要になる。また、対策前の構造において、固体伝搬が空気伝搬より著しく大きい場合であっても、本対策により床振動が対策前より増大、そのため、空気伝搬成分が増大し、十分な対策効果が得られなかったり、あるいは、本対策により固体伝搬成分は低減するので、さらに性能を向上させたい場合にも、空気伝搬成分を低減する対策が必要になる。
そこで、本発明の目的は、空気伝搬成分が支配的な重量床衝撃音を低減させることである。
課題を解決するための手段および発明の効果
本発明者らは、上記目的を達成するために、C型形鋼の大梁(端根太、側根太)、小梁(床根太)及び構造用合板の床板から構成される床構造を有する住宅において、重量床衝撃音をJIS規格にしたがって測定した。その結果、図8に示されるように、低周波数領域(図8では、63Hzオクターブバンド)の衝撃音レベルがL等級を決定していることを確認した。そして、この低周波数領域について、上階床構造及び下階天井構造の振動変形を実験により詳細に調査した。
調査の結果、衝撃力が作用したときの床構造及び天井構造の変形は、例えば、図9(a)及び図9(b)に示すように曲げ変形しており、それらの曲げ変形は床構造の弱軸方向が主体であった。ここで、弱軸方向とは、矩形の床構造の各辺と平行な直交2方向のうち、曲げ剛性の小さい方向のことである。すなわち、より低い周波数でより高次の共振モードが発生する方向である。このような床−天井構造では、床板−天井板間の空気圧も床構造の弱軸方向を主体とした分布になっている。従って、天井構造は弱軸方向に分布を持った空気圧による力を受け、床構造と同様に、弱軸方向に曲げ変形する。この調査結果から、発明者らは、床構造の弱軸方向に曲げ変形し難いような天井構造にすれば、重量床衝撃音を低減できるということを見出した。
そこで、本発明の床−天井構造は、床構造から天井構造への振動伝搬において空気伝搬成分が支配的な床−天井構造であって、互いにほぼ平行に配置された複数の第1梁材と、前記第1梁材の上方に配置された第1板材とを有する床構造と、互いにほぼ平行に配置された複数の第2梁材と、前記第2梁材の下方に配置された第2板材とを有する天井構造とを備え、前記第1梁材の下端部と前記第2梁材の上端部とが離隔し且つそれらの間に空間が設けられた状態で、前記第2梁材が壁のみに支持されており、前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が小さい方向とが一致していないことを特徴としている。
この構成によると、床構造の曲げ剛性が小さい方向と天井構造の曲げ剛性が小さい方向とが一致していないので、第1板材と第2板材との間の空気の振動によって第2板材の振動が励起されにくい。従って、重量床衝撃音を低減することができる。また、元来必要な部材の配置方向を変更するだけで重量床衝撃音を低減することができるので、材料および施工コストが増加しない。
本発明の床−天井構造は、床構造から天井構造への振動伝搬において空気伝搬成分が支配的な床−天井構造であって、互いにほぼ平行に配置された複数のパネル構造と、前記パネル構造の上方に配置された第1板材とを有する床構造と、互いにほぼ平行に配置された複数の第2梁材と、前記第2梁材の下方に配置された第2板材とを有する天井構造とを備え、前記パネル構造の下端部と前記第2梁材の上端部とが離隔し且つそれらの間に空間が設けられた状態で、前記第2梁材が壁のみに支持されており、前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が小さい方向とが一致していないことを特徴としている。
この構成によると、床構造の曲げ剛性が小さい方向と天井構造の曲げ剛性が小さい方向とが一致していないので、第1板材と第2板材との間の空気の振動によって第2板材の振動が励起されにくい。従って、重量床衝撃音を低減することができる。また、元来必要な部材の配置方向を変更するだけで重量床衝撃音を低減することができるので、材料および施工コストが増加しない。
本発明の床−天井構造において、前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が大きい方向とがほぼ一致していてもよい。
この構成によると、確実に、重量床衝撃音を低減することができる。
本発明の床−天井構造において、前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が小さい方向とがほぼ直交していてもよい。
この構成によると、確実に、重量床衝撃音を低減することができる。
本発明の床−天井構造において、前記床構造と前記天井構造との間には防振機構が設けられていてもよい。
この構成によると、確実に、重量床衝撃音を低減することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る床−天井構造を有する戸建て住宅の外観斜視図を示す図である。図2は、床構造の上面図であり、図3は、天井構造の上面図である。図4は、床構造および天井構造の配置方向を示す図である。図5は、床構造および天井構造の積層状態を示す図である。
戸建て住宅1は、2階建て構造であって、下階の部屋2(以下、「下階2」と称する)と、上階の部屋3(以下、「上階3」と称する)とを有している。ここで、下階2及び上階3の下端部には、その全面にわたる床構造10が設けられており、その上端部には、その全面にわたる天井構造20が設けられている。従って、下階2と上階3との間には、上階3の床構造10と下階2の天井構造20とが積層された床−天井構造50が設けられる。
床構造10は、図2に示すように、金属形材製の大梁11を矩形状に組み込んだ枠体12と、枠体12を構成する大梁11のうち対向する大梁間を結合するように平行配置された金属形材製の4本の小梁13と、大梁11及び小梁13の上面に接合された床板14とを有している。ここで、床構造10の曲げ剛性は、小梁13の長手方向(図2では左右方向)に強く、小梁13の長手方向と垂直な方向(図2では上下方向)に弱くなる。
床板14は、所定厚さを有する矩形状の板状部材であって、例えばパーティクルボード、構造用合板などの木質板である。大梁11及び小梁13は、図5に示すように、約1mm程度の鋼製の薄肉形材であって、略C型の断面を有するように折り曲げられている。なお、大梁11及び小梁13の断面は、略コ型であってもよいし、中空形材であってもよい。また、大梁11及び小梁13は、木角材であってもよい。そして、大梁11及び小梁13の両端面(図5では、上端面及び下端面)は平面になっており、その一端面(図5では上端面)が床板14の下面に接合されている。
天井構造20は、図3に示すように、平行配置された5本の梁21と、梁21の下面に接合された天井板22とを有している。ここで、天井構造20の曲げ剛性は、梁21の長手方向(図3では上下方向)に強く、梁21の長手方向と垂直な方向(図3では左右方向)に弱くなる。
天井板22は、所定厚さを有する矩形状の板状部材であって、例えば石膏ボードである。梁21は、床構造10の大梁11及び小梁13と同様に、約1mm程度の鋼製の薄肉形材であって、略C型の断面を有するように折り曲げられている。なお、梁21の断面は、略コ型であってもよいし、中空形材であってもよい。また、梁21は、木角材であってもよい。そして、梁21の両端面(図5では、上端面及び下端面)は平面になっており、その一端面(図5では下端面)が天井板22の上面に接合されている。
図5(a)は、天井構造20の梁21に沿った方向の断面図であり、図5(b)は、床構造10の梁11に沿った方向の断面図である。そして、床構造10の大梁11は、図5(a)に示すように、その下端部が下階2の下階壁25の上面に配置される。ここで、床構造10の大梁11と下階2の下階壁25の上面との間には、防振材30が設けられる。ここで、防振材30は、例えば、金属製や樹脂製のばね、ゴムやウレタンなどの樹脂を板状やブロック状などに成形したものである。また、天井構造20の梁21は、下階2の下階壁25の内側面に設けられた受け材26によって保持されている。
そして、床構造10と天井構造20とは、図4に示すように、床構造10の小梁13と、天井構造20の梁21とが直交するように積層される。なお、図4では、床構造10の大梁11、小梁13および天井構造20の梁21だけが図示されている。従って、床構造10の曲げ剛性が小さい方向(弱軸方向)と天井構造20の曲げ剛性が小さい方向(弱軸方向)とが直交する。すなわち、床構造10の曲げ剛性が小さい方向と天井構造20の曲げ剛性が大きい方向とは一致している。
以上説明したように、本実施の形態の床−天井構造50では、床構造10の小梁13の配置方向と天井構造20の天井板22が接合された梁21の配置方向が直交する、すなわち、床構造10の弱軸方向と天井構造20の弱軸方向とが直交しているため、床板14−天井板22間の空気の振動によって天井板22の振動が励起されにくく、重量床衝撃音を低減することができる。また、床−天井構造50では、元来必要な部材の配置方向を変更するだけで重量床衝撃音を低減することができるので、材料および施工コストが増加しない。
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、床構造10の大梁11と下階2の下階壁25の上面との間には防振材30が設けられているが、防振材30はなくてもよく、床振動が大きく、空気伝搬成分が支配的な床−天井構造であれば、本発明の効果を得ることができる。
また、上述の実施の形態では、床構造10の小梁13と同じ高さの大梁11が、下階2の下階壁25の上面に防振材30を介して配置されているが、図6に示すように、床構造110の床板114に接合された小梁113が大梁111よりも高い位置に支持されており、その大梁111が下階2の下階壁25の上面に防振材130を介して配置されていてもよい。また、図7に示すように、床構造210は、複数配置されたパネルからなるパネル構造であってもよく、床板214の下方に平行配置された複数の床パネル213が配置されていてもよい。なお、床パネル213は、例えばコンクリート系パネル等である。ここで、長方形で材料特性が等方であるパネルの場合、一般にパネルの短手方向が弱軸方向である。
また、上述の実施の形態では、床構造10には4本の小梁13が配置されており、天井構造20には5本の梁21が配置されているが、小梁13及び梁21の数は変更することができる。また、4本の大梁によって矩形状の枠体12が組み立てられているが、枠体12の形状は変更することができる。
また、上述の実施の形態では、1つの部材である防振材30が床構造10と天井構造20との間に設けられているが、複数の部材から構成された防振機構が床構造と天井構造との間に設けられていてもよい。
本発明の実施の形態に係る床−天井構造の骨組みを有する戸建て住宅の外観斜視図を示す図である。 図1の床構造の上面図である。 図1の天井構造の上面図である。 床構造および天井構造の配置方向を示す図である。 床構造および天井構造の積層状態を示す図である。 その他の床構造および天井構造の積層状態を示す図である。 その他の床構造および天井構造の積層状態を示す図である。 重量床衝撃音の測定結果を示す図である。 衝撃力が作用したときの床構造及び天井構造の変形状態を示す図である。
符号の説明
1 戸建て住宅
2 下階の部屋
3 上階の部屋
10、110、210 床構造
11 大梁
13 小梁
14 床板
20 天井構造
21 梁
22 天井板
30、130 防振材
50 床−天井構造

Claims (5)

  1. 床構造から天井構造への振動伝搬において空気伝搬成分が支配的な床−天井構造であって、
    互いにほぼ平行に配置された複数の第1梁材と、前記第1梁材の上方に配置された第1板材とを有する床構造と、
    互いにほぼ平行に配置された複数の第2梁材と、前記第2梁材の下方に配置された第2板材とを有する天井構造とを備え、
    前記第1梁材の下端部と前記第2梁材の上端部とが離隔し且つそれらの間に空間が設けられた状態で、前記第2梁材が壁のみに支持されており、前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が小さい方向とが一致していないことを特徴とする床−天井構造。
  2. 床構造から天井構造への振動伝搬において空気伝搬成分が支配的な床−天井構造であって、
    互いにほぼ平行に配置された複数のパネル構造と、前記パネル構造の上方に配置された第1板材とを有する床構造と、
    互いにほぼ平行に配置された複数の第2梁材と、前記第2梁材の下方に配置された第2板材とを有する天井構造とを備え、
    前記パネル構造の下端部と前記第2梁材の上端部とが離隔し且つそれらの間に空間が設けられた状態で、前記第2梁材が壁のみに支持されており、前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が小さい方向とが一致していないことを特徴とする床−天井構造。
  3. 前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が大きい方向とがほぼ一致していることを特徴とする請求項1または2に記載の床−天井構造。
  4. 前記床構造の曲げ剛性が小さい方向と前記天井構造の曲げ剛性が小さい方向とがほぼ直交していることを特徴とする請求項1または2に記載の床−天井構造。
  5. 前記床構造と前記天井構造との間には防振機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の床−天井構造。
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