JP4144863B2 - 回転鋸による被削材の切断方法 - Google Patents

回転鋸による被削材の切断方法 Download PDF

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【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、金属材料などを切断するために刃部となるチップに超硬質焼結体を用いた回転鋸による被削材の切断方法に関するものであり、チップが土砂摩耗を受け易い材料の切断に好適な回転鋸による被削材の切断方法に関する。より特定的には、エンジンのシリンダブロックなどに用いられるハイシリコンアルミニウム合金の切断に好適な回転鋸による被削材の切断方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ステンレス鋼などの切断には、円盤状の基板の外周に焼結体のチップが設けられた回転鋸が用いられている。このような回転鋸における刃先のチッピング対策として、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1は、主に粘性が高く且つ熱伝導率の低い金属、例えばオーステナイト系ステンレス鋼を切断するための回転鋸を開示している。その内容は、超硬合金製の山刃チップと、同じく超硬合金製の平刃チップとを有し、平刃チップの数を山刃チップの数より多くし、平刃チップを連続させて配置したものである。このようなチップの形状および配置にすることにより、大きな負荷がかかる平刃チップの一部が欠損しても他の平刃チップが補完するため、長期にわたって良好な切断性能を維持することができる。
【0003】
一方、切削工具用のチップ材料としてはダイヤモンド焼結体が知られている。特許文献2は、ダイヤモンド粒子径が0.1〜70μmであってダイヤモンド粒子の含有量が80〜99体積%、焼結助剤として鉄、コバルトなどを用いたダイヤモンド焼結体を開示している。
【0004】
【特許文献1】
実開平7-15224号公報(第2、4〜5頁、図1、2)
【特許文献2】
特開平11-240762号公報(第2頁、第11頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1のチップは、超硬合金製であり、切断する材料はオーステナイト系ステンレス鋼のようなものを対象としている。しかしながら、上記のようなチップを用いて、例えばハイシリコンアルミニウム合金を切断する場合、硬いシリコン粒子があるので、超硬合金製のチップでは摩耗が激しく寿命が短くなって実用的な製品が得られない。
【0006】
一方で、ダイヤモンド焼結体など、特許文献2に示すような超硬質焼結体を回転鋸のチップとすることも考えられる。しかし、このような超硬質チップでは、10μm未満の微細な超硬質粒子を含有するので土砂摩耗しやすくチッピングが発生する。このような焼結体を用いて、ハイシリコンアルミニウム合金などを切断すると、不連続な切屑が生じるため回転鋸のチップの刃先はチッピングを起こす。さらに土砂摩耗を受けてチップを構成する超硬質粒子が脱落して刃先が後退する。土砂摩耗とは、チップすくい面から逃げ面にかけて、切刃周辺が土砂崩れするように摩耗することを言う。その結果、切断抵抗や振動が大きくなって台金も損傷を受け、回転鋸の寿命が短くなるという問題があった。
【0007】
従って、本発明の主目的は、超硬質焼結体チップを用いた回転鋸による被削材の切断方法において、チッピングや基板の損傷が発生しにくく、回転鋸を長寿命とできる回転鋸による被削材の切断方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、土砂摩耗しやすい難削材料の切断においても耐久性が高い回転鋸による被削材の切断方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、台金の振動を低減して、台金の振動に伴う切刃のチッピングを抑制できる回転鋸による被削材の切断方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明回転鋸による被削材の切断方法は、円板状の台金の外周に超硬質焼結体からなる複数のチップが設けられた回転鋸による被削材の切断方法であって、以下の構成を備えることを特徴とする。
前記超硬質焼結体は、ダイヤモンド焼結体またはCBN焼結体からなり、その超硬質焼結体を構成する超硬質粒子の平均粒径は10〜100μmである。
前記チップの刃先のすくい角は、−1〜−20°である。
前記チップは山刃チップと平刃チップを交互に配置させるとともに、平刃チップの高さは山刃チップより低くされる。
前記被削材は、ハイシリコンアルミニウム合金、軽量気泡コンクリート(ALC)、金属基複合材(MMC)、半焼結の超硬合金、半焼結のセラミックス又は窯業系材料の中の何れかである。
【0009】
この回転鋸において、超硬質焼結体としては、ダイヤモンド焼結体やCBN焼結体を用いることができる。超硬質焼結体を構成する超硬質粒子の平均粒径を通常より大きい10〜100μmのものを使用することで土砂摩耗が発生しにくくなる。この理由は、超硬質粒子径が大きいので結合相の中に同粒子が埋め込まれていて、高温のハイシリコンアルミニウム合金の切粉がチップの上を通り過ぎる際に結合相が取り去られても、超硬質粒子が脱落しにくいからである。また、チップの刃先のすくい角を負角とすることで刃先自体の強度が向上するため、チッピングが発生しにくくなる。そして、山刃チップと平刃チップを交互に配置させ、平刃チップの高さを山刃チップより低くすることで、切断抵抗を低減させ、振動も抑制することができる。その結果、刃先に加わるダメージも少なくなるので、上記の超硬質粒子の粒径と相まってチッピング防止効果が高くなる。なお、平刃チップとは、チップを回転鋸の回転方向前側から見たときの切れ刃稜の形状が直線であり、山刃チップとは切れ刃稜の形状が台形状になったものをいう。
【0010】
上記方法に用いる回転鋸において、すくい角αの負角を−1〜−20°としたのは次の理由による。一般的に、すくい角を負角とすることにより、切れ味が悪化するが刃先強度が高くなるので、両者のバランスをとることが重要である。−1°より小さいと刃先強度がより高くなり、逆に、−20°より大きくすることにより、切れ味をよりよくすることができる。その結果、切断抵抗が低くなり、台金のビビリ防止に効果がある。
【0011】
本発明の切断方法は、チップを土砂摩耗させやすい材料の切断に好適である。土砂摩耗とは、液体とその中に混在する固形物によって進む摩耗のことで、土砂が崩れるようなイメージで、切刃周辺が摩耗する摩耗形態のことである。本発明方法で規定した回転鋸を使用することで、土砂摩耗を起こしやすい被削材に対してもチッピングを防止でき、切れ刃稜の形状変化も小さくすることができるので、回転鋸の寿命を大幅に向上させることができる。チップを土砂摩耗させやすい材料としては、ハイシリコンアルミニウム合金、軽量気泡コンクリート(ALC)、金属基複合材(MMC)、半焼結の超硬合金、半焼結のセラミックス、窯業系材料などが挙げられる。
【0012】
本発明の切断方法で用いる上記の回転鋸において、円板状の台金に制振用のスリットを設けてもよい。制振用のスリットは、基板の強度を低下させずに振動の減衰性能を高くすることができる。土砂摩耗しやすい材料を切断するとき、切断抵抗により高速回転している台金が変形し、切刃のチッピングの原因となることがある。制振用のスリットを設けることにより、台金の変形が抑制され切刃のチッピングを防止する上で効果がある。さらに、切断時の騒音も抑制できる。
【0013】
スリットの形態としては、外周側と内周側に一対のジグザグ状のスリットを組み合わせたものが望ましい。例えば、直線スリットの端部に半円スリットを連続し、さらに逆向きの半円スリットの端部に別の直線スリットを連続させて、これを繰り返してジグザグ状としたスリットを組み合わせる。ジグザグ状のスリットは、その振れ幅が、徐々に小さくなるような構成が好適である。一対のジグザグ状のスリットは、各々連続することなく設けることが望ましい。例えば、直線状のスリットと半円スリットを交互に連続させることで各ジグザグ状のスリットを形成した場合、このスリットで囲まれる箇所は舌片状に形成される。外周側の第一のジグザグ状スリットの内周側端部に形成される舌片に、内周側の第二のジグザグ状スリットの始点があり、以下第一のスリットと同様に内周側に向かう第二のスリットを形成することで制振に効果的な形態のスリットを形成できる。つまり、第一のスリットと第二のスリットではジグザグの方向が互いに逆になっていることが好適である。両スリットは、台金の外周側から内周側に向けて形成されている。このスリットは、例えばレーザにより加工する。レーザ加工によれば、高精度にスリットを形成することができる。
【0014】
さらに、この制振用スリットには、樹脂を充填することが好ましい。樹脂の充填により、一層制振効果を向上することができる。樹脂の具体例としては、フェノール系、ポリイミド系、エポキシ系又はシリコン系のいずれかであることが望ましい。
【0015】
本発明の切断方法で用いる上記の回転鋸において、円板状の台金の外周縁部に、チップを台金に装着する際の熱膨張による歪を抑制する歪み防止用スリットを設けたことである。一般に、チップもしくはチップの台座となる刃台を台金に接合するには、ロウ付けが用いられる。その際、台金も加熱されて熱膨張するため、この膨張分を逃がしておかないと台金が歪む。台金が歪むと、チップの回転軌跡がずれるのでチッピングなどの原因となる。チップが装着される外周縁部に歪み防止用スリットを設けることで、このような台金の歪みを防止し、チッピングを抑制することができる。
【0016】
歪み防止用スリットは、台金の外周縁部において、所定間隔でスリットを設けることが好ましい。例えば、外周から中心に向かうスリットを設けることが好適である。歪み防止用スリットの長さは、チップ接合時の熱影響が及びやすい範囲に形成できれば十分である。
【0017】
本発明の切断方法で用いる上記の回転鋸において、円板状の台金を回転方向前側から見て、台金の一方の側面とチップの一方の側面との距離L1と、台金の他方の側面とチップの他方の側面との距離L2とを異なるようにしてもよい。例えば、エンジンのシリンダブロックの湯口を切断する場合、製品として残される本体側と、切断して廃棄される湯口側とでは、切粉の排出され易さが全く異なり、製品として残される本体側は、被削材の形態上、台金と被削材に囲まれるため、切粉の流れが悪くなり本体側の台金側面には切粉が溶着し易い。そこで、台金の一方の側面とチップの一方の側面との距離L1と、台金の他方の側面とチップの他方の側面との距離L2とを異ならせることで、台金に切粉が付着することを抑制し、回転鋸の寿命を長くすることができる。つまり、製品として残される被削材の本体側における台金とチップのクリアランスL1を、被削材の廃棄側における台金とチップのクリアランスL2より大きくすることで、台金における被削材本体側の切粉の排出を円滑にし、台金への切粉の付着を抑制する。
【0018】
さらに、本発明の切断方法で用いる回転鋸において、切刃の好ましい逃げ角βは、10〜20°である。この回転鋸ではすくい角が負角なので、逃げ角をそれ以上にしなければ、チップと被削材が接触しスムースな切削は難しい。逃げ角βが20°を越えると、刃先強度が不足して寿命が短くなる。また、逃げ角βが10°未満であれば切れ味が悪くなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明切断方法で用いる回転鋸の側面を図1、そのチップ部を拡大して図2に示す。図1に示す回転鋸は、SKS5やSKS51などの鋼製の薄板円板からなる台金2の外周に、超硬合金からなる刃台3が接合される。さらに刃台3の上に、超硬合金基台4bと超硬質焼結体チップ4aが接合されてなるチップ4がロウ付けなどの方法で接合されている。そして、図1の回転方向Rに、回転鋸を回転させて使用する。
【0020】
図3は、回転鋸のチップを回転方向Rの前側から見たとき、山刃チップと平刃チップが同一の位置にあった時の切れ刃稜の位置関係を示す。チップは、山刃チップと平刃チップからなり、これらが交互に台金上に接合されている。チップ4は、回転方向Rの前側に超硬質粒子の平均粒径が10〜100μmの超硬質焼結体4a、そしてこの超硬質焼結体4aの回転方向Rの後側には超硬合金基台4bを有し、この基台4bと刃台3がろう付けなどにより接合されている。超硬質焼結体4aとして、ダイヤモンド焼結体やCBN焼結体が使用される。山刃チップと平刃チップの刃先先端部はすくい角が負角となるように取り付けられている。
【0021】
図3において、山刃チップは切れ刃稜5を回転方向Rの前側から見た時の形状が台形状に形成され、山刃チップの中央部の切れ刃稜5aは平刃チップの切刃稜5と平行になっており、両端部の切れ刃稜5bは傾斜が付けられている。図3に示すように、平刃チップの高さは山刃チップより低くなっており、山刃チップの中央部の切れ刃稜5aは平刃チップの切れ刃稜5よりも僅かながら外周側に突出している。これらチップの高さの差は、0.1〜0.4mmとするのが好ましく、山刃チップの中央部の切れ刃稜5aの長さは、平刃チップの切れ刃稜5の長さの30〜70%とするのが好ましい。このようにすることで山刃チップにより切削した後、山刃チップで除去しきれなかった部分を平刃チップで除去するので、平刃チップへの負担を軽減して切削精度を向上させることができる。また、山刃チップで切削した部分が、回転鋸の案内溝の役割を果たし回転鋸の振動やビビリを防ぐ上で効果がある。
【0022】
図4、図5は、図3と同様に、切れ刃稜を回転方向前側から見たときのチップの形状を示している。図4に示す平刃チップは、先が幅広の形状をしている。このような形状とすることで、被削物との接触面積を減らし、切断抵抗を小さくすることが出来る。また、図5に示す山刃チップは、先端部が狭くなっている。これら二つのチップは、先端部を除き重ね合わせると同じ形状をしている。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。本発明の切断方法で用いる回転鋸として、図1に示すものを製作した。図2を参照して、チップ4の素材として超硬合金基台4b上ダイヤモンド焼結体4aが接合されたブランクを、所定の形状に切断した後、砥石による研削および研磨を行って、山刃チップおよび平刃チップを製作した。これらのチップ4を材質がSKS5の台金2に接合された刃台3の部分に交互にろう付けして回転鋸とした。台金2には、刃台3をロウ付けするときに加熱されるので、熱歪が発生する。この熱歪みの影響を取り除くために、歪み防止用スリット8が設けられている。さらには工作機械に取り付けるための、取り付けネジ9が形成されている。実施例と比較例では、超硬質焼結体4aとしてダイヤモンド焼結体を用いた。
【0024】
この回転鋸の仕様は以下の通りである。
外径 :250mm
基板厚み :4.5mm
刃幅 :6.0mm
ダイヤモンドの平均粒径:10μm (超硬質焼結体の粒子)
刃先のすくい角α :-1°
刃先の逃げ角β :15°
チップ形状 :山刃チップと平刃チップを交互に配置
山刃チップと平刃チップの高さの差:0.3mm
【0025】
(実施例2〜7、比較例1〜9)
実施例1の回転鋸におけるダイヤモンド焼結体4aの平均粒径または刃先のすくい角αのいずれかを本発明の範囲内で変更した仕様のものを実施例2〜7として製作した。また、実施例1の回転鋸における超硬質焼結体としてダイヤモンド焼結体4aの平均粒径、刃先のすくい角α、チップ4の形状のいずれか1〜3種類を本発明の範囲外に変更した仕様のものを比較例1〜9として製作した。なお、比較例においてチップ4の配列として4通りのものを製作した。比較例1、2および6は本発明のものと同じ山刃チップと平刃チップを交互に取り付けたものである。比較例3はすべてが山刃チップのものであり、比較例4はすべてが平刃チップのものである。比較例5、7、8および9は切れ刃稜5に傾斜がついた傾斜チップのもので、図8に示すように傾斜チップの傾斜の方向を交互にして千鳥状に設けたものである。以下表の中では、千鳥と称す。実施例および比較例の仕様を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004144863
【0027】
上記の回転鋸を用いて、ハイシリコンアルミニウム合金(Si含有率:12質量%)の切断を行った。切断条件を以下に示す。
【0028】
回転数(周速度):2365min-1(1857m/min)
切り込み量 :30mm
送り速度 :360mm/min
被削材のサイズ :厚さ100mm×幅100mm×長さ300mm
【0029】
上記の条件で切断を行い、寿命、チッピングの有無、切断抵抗を測定した。その結果を表2に示す。なお寿命は、回転鋸の寿命までの切り口の切断面積の総和であり、1つの切り口の切断面積と切断個数をかけた数値である。切断抵抗については、評価開始時に測定し、実施例1のものを基準(1.0)として、相対値で表している。
【0030】
【表2】
Figure 0004144863
【0031】
実施例1〜3および比較例1を比較すると、超硬質焼結体を構成するダイヤモンドの平均粒径の違いによる差が見られる。本発明の平均粒径10〜100μmのものについては、寿命が長い上に切断抵抗も低く、特に粒径が大きくなるほど両者とも向上する傾向が見られた。これに対し、比較例1の平均粒径が5μmと小さいものは寿命が大幅に短くなり、切断抵抗も高くなった。
【0032】
実施例1および4〜7と比較例2を比較すると、チップのすくい角による差が見られる。すくい角が負角のものは切断抵抗が低くなり寿命も長い。但し、-30°になるとやや切断抵抗が高くなるので、寿命と切断抵抗の観点からは-10〜-20°のものがより好ましい。これに対し、比較例2は、すくい角を正角の1°としたので切断抵抗は低かったが、寿命が大幅に短くなった。なお、チッピングについてはいずれのものも発生しなかった。
【0033】
実施例1と比較例3〜5を比較すると、実施例1の山刃チップと平刃チップの組合せのものは寿命も長く切断抵抗も低い。これに対し、比較例3の山刃チップのみのものは、切断抵抗は低いものの寿命が短くなる傾向が見られた。また、比較例4の平刃チップのみのものはチッピングが生じて寿命が短くなり、切断抵抗も高くなる傾向が見られた。さらに、比較例5の千鳥刃チップのものは、チッピングが生じて寿命は短く、切断抵抗も非常に高くなった。
【0034】
比較例9は、チップの素材の平均粒径、すくい角、チップ形状のいずれも本発明の範囲外とした従来の回転鋸である。これと本発明方法で用いる実施例1の回転鋸と比較すると、大幅に寿命が長く、チッピングも少なく、切断抵抗も低いことがわかる。この比較例9の上記の3つの要件のうち、いずれか1つを本発明の範囲のものにしたのが比較例6〜8の回転鋸である。比較例6は、山刃チップと平刃チップの配列を本発明と同様に交互にした場合、チッピングは発生しなかったが切断抵抗がやや高く寿命は短くなった。また、比較例7ですくい角を本発明の範囲のものにした場合、チッピングは発生しなかったが、切断抵抗が高く寿命も短くなった。さらに、比較例8でチップの素材の平均粒径を本発明の範囲のものにした場合、チッピングは発生し、切断抵抗は高く、寿命も短くなった。
【0035】
以上の結果を総合して検討すると、切断抵抗の大小はチップ配列によるところが比較的大きいが、これだけで解決できるものではない。また、寿命とチッピングに関しては、チップの素材の平均粒径とすくい角によるところが大きいが、これにチップ形状を特定することで飛躍的に向上することがわかり、上記の3つの要件を組み合わせることにより大きな効果が得られることがわかった。
【0036】
(実施例8)
図6に示す制振用スリット7を5つ設けた台金を用いた以外は、実施例1と同様の回転鋸を作製した。外周側の第一のスリットは、スリット幅0.1〜0.3mmとし、ジグザグ状の振り幅は最大35mm、スリット間隔(舌片の幅)を9mmとし第一スリットの舌片を3個とし、第二のスリットの舌片も3個とした。第二のスリット幅は、第一のスリット幅と同じとした。このスリットを概観すると、図からも明らかなように半径方向から傾斜している。スリットのすべての端部は、スリットが割れ目になって広がらないように、スリット幅より大きな直径の円形穴を形成した。この制振用スリットは、薄い回転台金の振動を抑制する働きがあり、本発明の台金の振動抑制に効果があることが判った。制振用スリット7の中には、エポキシ樹脂を含浸した。ただし、制振用スリット7は、3対以上のときに特に効果が大きい。しかしながら、数が多すぎると台金の剛性が下がるので8対以上は好ましくない。いうまでもなく、各スリットは等間隔で設けることで効果を発揮する。
【0037】
前記した実施例に記載されているのと同様の切断条件で切断テストをした。切断抵抗はわずかに下がる程度であったが、寿命は12000cm2であった。おそらくは、振動が抑制されるので、チップの通る道筋が安定し、寿命が長くなったものと考えられる。このスリットは、レーザで加工された。
【0038】
(実施例9)
さらには、図7に示す台金とチップの位置関係を有し、その他は実施例1と同じ回転鋸を作製した。図7は、図3などと同様に山刃チップと平刃チップを重ねて記載したものであるが、チップ4の台金2に対する取り付け位置が左右対称になっていない。図7でL1、L2で示した距離は、台金2の側面とチップ4の側面との距離を示しているが、L1を1.2mm、L2を0.8mmとしL1を長くしてある。一般的に排出される切粉の一部のものは、工具などに付着して残る。そして、被削材の切り落とされる側からの切粉は広い空間に逃げることが出来るが、本体側の切粉は逃げ場がないので工具などによく付着する。本発明では、本体側の台金とチップ側面との距離L1を大きくすることで、寿命をさらに長くすることが出来る。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、超硬質粒子の平均粒径を10〜100μmとし、すくい角を負角とし、山刃チップと平刃チップを交互に配列することにより、寿命が長く、切断抵抗も低い回転鋸を提供することができる。従って、高精度な加工を高能率、低コストで行うことができる。さらには、制振用のスリットを台金に設けることで、台金自体の振動を防止でき、超硬質焼結体からなるチップのチッピングを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明切断方法に用いる回転鋸を示す側面図である。
【図2】図1のチップ周辺の拡大側面図である。
【図3】本発明切断方法に用いる回転鋸のチップを回転方向Rの前側から見た時、山刃チップと平刃チップが同じ位置にあるときの両者の切れ刃稜の位置関係を示す説明図である。
【図4】本発明及び比較例で使用されたの平刃チップを回転方向Rの前側から見たときの説明図である。
【図5】発明及び比較例で使用された山刃チップを回転方向Rの前側から見たときの説明図である。
【図6】本発明切断方法に用いる別の回転鋸の側面図である。
【図7】本発明切断方法に用いるさらに別の回転鋸を回転方向Rの前側から見たときの局部拡大図である。
【図8】比較例で用いる回転鋸の千鳥刃チップを回転方向前側から見た時の切れ刃稜の位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 回転鋸
2 台金
3 刃台
4 チップ
4a 超硬質焼結体
4b 超硬合金基台
5 切れ刃稜
5a 中央部切れ刃稜
5b 端部切れ刃稜
6 すくい面
7 制振用スリット
8 ひずみ防止用スリット
9 取り付けネジ
α すくい角
β 逃げ角
L1、L2 台金の側面とチップの側面のクリアランス
R 回転方向

Claims (6)

  1. 円板状の台金の外周に超硬質焼結体からなる複数のチップが設けられた回転鋸による被削材の切断方法であって、
    前記超硬質焼結体は、ダイヤモンド焼結体またはCBN焼結体からなり、その超硬質焼結体を構成する超硬質粒子の平均粒径は10〜100μmであり、
    前記チップの刃先のすくい角は、−1〜−20°であり、
    前記チップは山刃チップと平刃チップを交互に配置させるとともに、平刃チップの高さは山刃チップより低くされ、
    前記被削材は、ハイシリコンアルミニウム合金、軽量気泡コンクリート(ALC)、金属基複合材(MMC)、半焼結の超硬合金、半焼結のセラミックス又は窯業系材料の中の何れかであることを特徴とする回転鋸による被削材の切断方法
  2. 前記円板状の台金に制振用のスリットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転鋸による被削材の切断方法
  3. 前記円板状の台金の外周縁部に、チップを台金に装着する際の熱膨張による歪を抑制する歪み防止用スリットが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転鋸による被削材の切断方法
  4. 前記円板状の台金を回転方向前側から見て、台金の一方の側面とチップの一方の側面との距離L1と、台金の他方の側面とチップの他方の側面との距離L2とが異なることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回転鋸による被削材の切断方法
  5. 前記平刃チップの高さを、前記山刃チップよりも0.1〜0.4mm低く設定したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転鋸による被削材の切断方法
  6. 前記山刃チップの中央部の切れ刃稜の長さは、前記平刃チップの切れ刃稜の長さの30〜70%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の回転鋸による被削材の切断方法
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