JP4143458B2 - 添加物ペースト、添加物ペーストの製造方法、グリーンシートの製造方法および電子部品の製造方法 - Google Patents

添加物ペースト、添加物ペーストの製造方法、グリーンシートの製造方法および電子部品の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、添加物ペースト、添加物ペーストの製造方法、グリーンシートの製造方法および電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化に伴い、その中に使用される電子部品の小型化が急激に進行している。積層セラミックコンデンサに代表されるような積層電子部品においては、積層数の増加、層間厚みの薄層化が急激に進んでいる。
【0003】
そのため、誘電体の層間厚みを決定するグリーンシート厚みは、3μm以下から2μm以下に移行し、使用される誘電体(BaTiO)原料の粒径も層間厚みの減少に伴い、0.5μmから0.3μm、さらには0.2μmと小さくなってきている。
【0004】
このような薄層用コンデンサの製造工程では、焼結後の微細構造組織を均一にする(異相の析出防止および、異常粒成長防止)ために、誘電体スラリー(誘電体ペーストまたはグリーンシート用塗料)における各種粒子の分散性を向上させると共に、シート成形後の各組成物の分散性を向上させる必要がある。
【0005】
一般に、主原料としての誘電体の粒径に比べ、誘電体スラリーに添加されるその他の添加剤粒子の粒径は、十分に小さくなければ十分な分散効果が得られない。このため、誘電体粒子の小径化に対して、添加剤粒子の粒径を十分に小さくし、分散性を向上させる技術が必要となってくる。
【0006】
また、一般に、誘電体組成物に対する添加物の添加量は、主剤であるBaTiO系材料100質量部に対して、3〜6質量部の添加物(たとえばアルカリ土類金属、遷移金属、希土類、ガラス組成物)が添加される(下記の特許文献1参照)。これら添加物の配合量は、誘電体の特性および信頼性が密接に関係するために、配合量を厳密に管理する必要がある。
【0007】
添加剤の粒径を細かくすることは、ボールミルによる粉砕時間を長くしたり、ビーズミルおよびサンドミルなどのような粉砕特性に優れたアジテータミルを使用することによって可能となる。
【0008】
しかしながら、ボールミルの粉砕時間を長くする場合、添加物の粒径を0.1μm以下にすることは非常に困難であり、しかも、工程時間が長くなってしまう。一方、ビーズミルやサンドミルのようなアジテータミルを使用する場合、添加される添加物の量が、主剤であるBaTiOに比べ相対的に少ないために、スラリー製造用の分散機と、添加物分散用の分散機とを共用する事が難しくなる。なぜなら、添加される添加物の量が、主剤であるBaTiOに比べ相対的に少ないために、ミルベースを分散・粉砕に適した量に合わせる事が出来ない。
【0009】
また、アジテータミルでは、スラリーの完全回収が不可能であるため、添加物投入量を制御することが実質不可能である。このため、添加物スラリー(添加物ペースト)を予め大量に作製しておき、スラリーの状態で保管し、主剤を含む誘電体スラリーを作製する時に、その添加物スラリーを秤量する方法が考えられる。しかしながら、この場合には、添加物粒子の再凝集により分散性が低下し、スラリーの安定性が低下すると共に、スラリー沈降(スラリーにおける固体成分と液体成分との分離)などの問題が発生する。このような場合には、秤量精度の低下の問題が発生してしまう。なお、秤量精度の低下とは、正確な量で、添加物スラリーを秤量できないことである。秤量精度が低下すると、主剤であるBaTiOに対して正確な量で添加物を添加することが困難になる。
【0010】
また、このようなスラリーを乾燥し、粉末にした後に添加する事も考えられるが、乾燥粉末の凝集により、グリーンシート用塗料の作製時に再分散が非常に困難になる。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−67567号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、グリーンシート用塗料を作製するために用いる添加物ペーストであって、比較的に長期の保存が可能であり、保存中に添加物の沈降分離が抑制され、しかも、秤量精度が良好であり、グリーンシート用塗料作製時にも、再分散が容易な添加物ペーストを提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、その添加物ペーストを容易に製造するための方法と、その添加物ペーストを用いてグリーンシートを製造する方法と、そのグリーンシートを製造する方法を用いて電子部品を製造する方法とを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る添加物ペーストの製造方法は、
添加物粉体と、沸点が80°C以下である低沸点溶媒と、沸点が150°C以上である高沸点溶媒と、分散剤とを混合し、分散スラリーを得る工程と、
前記分散スラリーを、所定の温度で加熱し、前記低沸点溶媒を蒸発させ、グリーンシート用塗料を作製するために用いる添加物ペーストを得る工程とを有する。
【0014】
本発明に係る添加物ペーストの製造方法によれば、その分散スラリー中に、低沸点溶媒のみでなく、高沸点溶媒を含んでいる。そのために、低沸点溶媒の蒸発後には、添加物ペーストは、添加物粉体が単に溶媒中に分散しているスラリーではなく、しかも、ゲル状でもなく、クリーム状(ペースト状)となる。そのために、たとえば数日間以上、この添加物ペーストを保存したとしても、ペースト中の添加物粉体が、溶媒から沈降分離することがないと共に、ゲル化してペースト中での凝集や不均一化することもない。
【0015】
そのため、この添加物ペーストは、数日間以上おいた後でも、正確に秤量して、グリーンシートを形成するための主成分となる主成分粉体を含む分散塗料に添加することが可能である。しかも、この添加物ペーストは、乾燥粉の状態ではないことから、乾燥粉の凝集により再分散が困難になることもなく、主成分粉体と共に、良好に分散させることができる。
【0016】
なお、もし、添加物ペーストが、添加物粉体が単に溶媒中に分散しているスラリーである場合には、添加物粉体が、時間の経過と共に沈降分離してしまい、添加物粉体を正確に秤量することが困難になり、主成分粉体に対して正確な量で混合することが困難になる。また、もし、添加物ペーストが、ゲル化してしまうと、この場合にも、添加物粉体を正確に秤量することが困難になり、主成分粉体に対して正確な量で混合することが困難になる。
【0017】
本発明の方法によれば、比較的に長期の保存が可能であり、保存中に添加物の沈降分離が抑制され、しかも、秤量精度が良好であり、グリーンシート用塗料作製時にも、再分散が容易な添加物ペーストを提供することができる。
【0018】
本発明において、添加物粉体としては、グリーンシートの主成分となる主成分粉体(誘電体粒子)に対して後工程で添加される粉体であれば、特に限定されないが、好ましくは、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素、ガラス組成物のいずれか1つを少なくとも含む粉体である。このような添加物粉体は、一般に、主成分粉体に対して、たとえば3〜6質量部の少ない割合で含まれる。
【0019】
本発明では、このように少ない添加物粉体を、その都度に分散して、主成分粉体に対して混ぜるのではなく、予め添加物ペーストとして準備しておき、保存することができる。したがって、本発明によれば、添加物ペーストを作り置きし、グリーンシートの製造工程の短縮化を図ることもできる。
【0020】
好ましくは、前記低沸点溶媒が、沸点が80°C以下であるアルコール、ケトン類および/またはエステル類を含む。沸点が80°C以下であるアルコールとしては、メタノール、エタノールなどが例示される。また、沸点が80°C以下であるケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などが例示される。さらに、沸点が80℃以下であるエステル類としては、酢酸メチル・エチルなどが例示される。これらの中でも、アセトンが特に好ましい。
【0021】
好ましくは、前記低沸点溶媒を、前記添加物粉体100質量部に対して、50〜150質量部、さらに好ましくは60〜100質量部の割合で添加して、分散スラリーを得る。この低沸点溶媒が少なすぎると、分散・粉砕が難しくなる傾向にある。また、多すぎると、ペーストを除去することが難しくなる傾向にある。
【0022】
好ましくは、前記高沸点溶媒が、沸点が150°C以上であるグリコール類、高級アルコール、ケトン類および/またはテルペン系溶媒を含む。沸点が150°C以上であるグリコール類としては、エチルカルビトール、ブタンジオール、2−ブトキシエタノールなどが例示される。沸点が150°C以上である高級アルコールとしては、ノナノール、デカノール、オクタノール、ヘプタノール、ヘキサノールなどが例示される。さらに、沸点が150°C以上であるケトン類としては、ジアセトンアルコールなどが例示される。さらにまた、沸点が150°C以上であるテルペン系溶媒としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどが例示される。これらの中でも、2−ブトキシエタノール、ジアセトンアルコールが特に好ましい。
【0023】
好ましくは、前記高沸点溶媒を、前記添加物粉体100質量部に対して、70〜150質量部、さらに好ましくは70〜120質量部の割合で添加して、分散スラリーを得る。この高沸点溶媒が少なすぎると、低沸点溶媒除去後のペーストの粘度が増加し固くなる傾向にある。また、多すぎると、スラリー状になり、ペーストの安定性に欠ける傾向にある。
【0024】
好ましくは、前記分散剤が、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤および/またはアリルエーテルコポリマー分散剤を含む。
【0025】
好ましくは、前記分散剤を、前記添加物粉体100質量部に対して、1〜2質量部の割合で添加して、分散スラリーを得る。この分散剤が少なすぎたり、多すぎたりすると、粉砕が進行しなくなる傾向がある。
【0026】
好ましくは、前記分散スラリーを、前記低沸点溶媒の沸点以下の温度で加熱し、前記低沸点溶媒を蒸発させる。あるいは、前記分散スラリーを、40〜70°Cの温度で加熱し、前記低沸点溶媒を蒸発させても良い。加熱する温度が高すぎると、高沸点溶媒が蒸発し、固形分濃度が変動する傾向にあり、低すぎると、低沸点溶媒を蒸発させるためには長時間を要してしまう傾向にある。
【0027】
好ましくは、前記添加物粉体をアジテータミルで破砕しながら、前記添加物粉体と、低沸点溶媒と、高沸点溶媒と、分散剤とを混合し、分散スラリーを得る。アジテータミルとしては、特に限定されないが、ビーズミル、サンドミルなどが例示される。添加物粉体の粒径を、たとえば0.15μm以下程度に細かくするためにボールミルを用いると、粉砕時間が長くなってしまうと共に、さらに細かな粒径にすることは、ボールミルでは困難である。したがって、本発明では、アジテータミルを用いることが好ましい。
【0028】
好ましくは、前記添加物粉体の粒径が、0.05〜0.15μmとなるように、前記添加物粉体を粉砕しながら、前記添加物粉体と、低沸点溶媒と、高沸点溶媒と、分散剤とを混合する。添加物粉体の粒径を細かくすることで、グリーンシートの薄層化に寄与する。
【0029】
本発明に係る添加物ペーストは、上記のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法により得られる。
【0030】
この添加物ペーストは、添加物粉体と、沸点が150°C以上である高沸点溶媒と、分散剤とを少なくとも有する添加物ペーストである。
【0031】
本発明に係るグリーンシートの製造方法は、
上記のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法により添加物ペーストを作製する工程と、
グリーンシートを形成するための主成分となる主成分粉体を、前記添加物ペーストと共に混合し、グリーンシート用塗料を得る工程と、
前記グリーンシート用塗料を用いてグリーンシートを成形する工程と、を有する。
【0032】
好ましくは、前記グリーンシート用塗料には、ブチラール系樹脂を主成分とするバインダ樹脂を含ませる。
【0033】
好ましくは、前記ブチラール系樹脂がポリブチラール樹脂であって、
前記ポリブチラール樹脂の重合度が1000以上1700以下であり、樹脂のブチラール化度が64%より大きく78%より小さく、残留アセチル基量が6%未満である。
【0034】
ポリブチラール樹脂の重合度が小さすぎると、たとえば5μm以下、好ましくは3μm以下程度にグリーンシートを薄層化した場合に、十分な機械的強度が得られにくい傾向にある。また、重合度が大きすぎると、シート化した場合における表面粗さが劣化する傾向にある。また、ポリブチラール樹脂のブチラール化度が低すぎると、ペーストへの溶解性が劣化する傾向にあり、高すぎると、シート表面粗さが劣化する傾向にある。さらに、残留アセチル基量が多すぎると、シート表面粗さが劣化する傾向にある。
【0035】
好ましくは、前記バインダ樹脂を前記主成分粉体100質量部に対して5質量部以上6.5質量部以下で含ませる。バインダ樹脂の含有量が少なすぎると、シート強度が低下すると共にスタック性(積層時の接着性)が劣化する傾向にある。また、バインダ樹脂の含有量が多すぎると、バインダ樹脂の偏析が発生して分散性が悪くなる傾向にあり、シート表面粗さが劣化する傾向にある。
【0036】
好ましくは、前記グリーンシート用塗料には、可塑剤としてのフタル酸ジオクチルを、前記バインダ樹脂100質量部に対して、40質量部以上70質量部以下で含ませる。他の可塑剤に比較して、フタル酸ジオクチルは、シート強度およびシート伸びの双方の点で好ましく、支持体からの剥離強度が小さく剥がれやすいので特に好ましい。なお、この可塑剤の含有量が少なすぎると、シート延びが小さく、可撓性が小さくなる傾向にある。また、含有量が多すぎると、シートから可塑剤がブリードアウトして、シートに対する可塑剤の偏析が発生しやすく、シートの分散性が低下する傾向にある。
【0037】
好ましくは、前記主成分粉体を、前記添加物ペーストと共に、アジテータミル用いて混合し、グリーンシート用塗料を得る。アジテータミルを用いることで、粉砕時間を短くして分散性を高めることができる。
【0038】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、
上記のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法により、グリーンシートを製造する工程と、
前記グリーンシートを、内部電極層を介して積層し、グリーンチップを得る工程と、
前記グリーンチップを焼成する工程と、を有する。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造過程を示す要部断面図である。
まず、本発明に係る添加物ペーストおよびグリーンシートを用いて製造される電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の一方の端部に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の他方の端部に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0041】
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
【0042】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0043】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×横(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×厚み(0.1〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
【0044】
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
【0045】
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、グリーンシート用塗料を準備する。
グリーンシート用塗料は、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
【0046】
誘電体原料には、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどのようにグリーンシートの主成分となる主成分粉体(誘電体粒子)と、その誘電体粒子と共に添加される添加物粉体(添加物粒子)とが含まれる。
【0047】
添加物粉体は、たとえばアルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素、ガラス組成物の少なくとも1つを含む。アルカリ度類金属、遷移金属、希土類元素は、元素単独の態様での粉体に限らず、それらの酸化物、複合酸化物、酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などの態様の粉体で、添加物粉体に含まれてもよい。このような添加物粉体は、一般に、グリーンシート用塗料中に、主成分粉体100質量部に対して、たとえば3〜6質量部の少ない割合で含まれる。
【0048】
本実施形態では、グリーンシートを形成する都度に、添加物粉体と主成分粉体とを破砕混合して、粒径の小さな粉体を含むグリーンシート用塗料を準備するのではない。本実施形態では、予め添加物粉体のみを破砕して細かな粒径とした添加物粉体を含む添加物ペーストを準備する。
【0049】
添加物ペーストを作製するために、まず、添加物粉体と、沸点が80°C以下である低沸点溶媒と、沸点が150°C以上である高沸点溶媒と、分散剤とを混合し、分散スラリーを得る。添加物粉体としては、たとえば(Ba,Ca)SiO、Y、MgCO、Cr、MnO、Vなどの粉体が例示される。
【0050】
添加物粉体としては、添加物成分を予めボールミルなどによって混合し、乾燥した粉体を800〜1000°Cで仮焼した後、その仮焼物を粗粉砕したものを用いても良い。
【0051】
低沸点溶媒としては、沸点が80°C以下であるアルコール、ケトン類および/またはエステル類が例示される。沸点が80°C以下であるアルコールとしては、メタノール、エタノールなどが例示される。また、沸点が80°C以下であるケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などが例示される。さらに、沸点が80℃以下であるエステル類としては、酢酸メチル・エチルなどが例示される。これらの中でも、アセトンが特に好ましい。
【0052】
低沸点溶媒は、添加物粉体100質量部に対して、50〜150質量部、さらに好ましくは60〜100質量部の割合で添加される。
【0053】
高沸点溶媒としては、沸点が150°C以上であるグリコール類、高級アルコール、ケトン類および/またはテルペン系溶媒が例示される。沸点が150°C以上であるグリコール類としては、エチルカルビトール、ブタンジオール、2−ブトキシエタノールなどが例示される。沸点が150°C以上である高級アルコールとしては、ノナノール、デカノール、オクタノール、ヘプタノール、ヘキサノールなどが例示される。さらに、沸点が150°C以上であるケトン類としては、ジアセトンアルコールなどが例示される。さらにまた、沸点が150°C以上であるテルペン系溶媒としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどが例示される。これらの中でも、2−ブトキシエタノール、ジアセトンアルコールが特に好ましい。
【0054】
高沸点溶媒は、添加物粉体100質量部に対して、70〜150質量部、さらに好ましくは70〜120質量部の割合で添加される。
【0055】
分散剤としては、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤および/またはアリルエーテルコポリマー分散剤が例示される。分散剤は、添加物粉体100質量部に対して、1〜2質量部の割合で添加される。
【0056】
本実施形態では、添加物粉体をアジテータミルで破砕しながら、添加物粉体と、低沸点溶媒と、高沸点溶媒と、分散剤とを混合し、分散スラリーを得る。アジテータミルとしては、特に限定されないが、ビーズミル、サンドミルなどが例示される。添加物粉体の粒径を、たとえば0.15μm以下程度に細かくするためにボールミルを用いると、粉砕時間が長くなってしまうと共に、さらに細かな粒径にすることは、ボールミルでは困難である。したがって、本実施形態では、アジテータミルを用いることが好ましい。
【0057】
アジテータミルを用いて、粉砕後の添加物粉体の粒径(メジアン径(50%粒径))が、0.05〜0.15μmとなるように、添加物粉体を粉砕しながら、添加物粉体と、低沸点溶媒と、高沸点溶媒と、分散剤とを混合する。添加物粉体の粒径を細かくすることで、グリーンシートの薄層化に寄与する。
【0058】
次に、この分散スラリーをアジテータミルから回収し、加熱機構を備えた攪拌機を用いて、低沸点溶媒の沸点以下の温度で加熱し、低沸点溶媒を蒸発させて、添加物ペーストを得る。あるいは、この分散スラリーを、40〜70°Cの温度で加熱し、低沸点溶媒を蒸発させても良い。加熱撹拌時間は、たとえば1時間以上であり、好ましくは2〜3時間である。
【0059】
このようにして得られた本実施形態に係る添加物ペーストは、添加物粉体と、沸点が150°C以上である高沸点溶媒と、分散剤とを少なくとも有するクリーム状の添加物ペーストである。
【0060】
この添加物ペーストは、必要に応じて数日間保存され、必要な量だけ秤量されて、主成分粉体と混合される。主成分粉体と添加物ペーストとを混合してグリーンシート用塗料を作製するために、さらに有機ビヒクルが添加される。
【0061】
主成分粉体としては、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの粒子が用いられる。主成分粉体の粒径は、添加物粉体の粒径よりも大きく、たとえば0.1〜0.3μm以下、好ましくは0.4μm以下程度である。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
【0062】
有機ビヒクルとは、バインダ樹脂を有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダ樹脂としては、本実施形態では、ポリビニルブチラール樹脂が用いられる。そのポリブチラール樹脂の重合度は、1000以上1700以下であり、好ましくは1400〜1700である。また、樹脂のブチラール化度が64%より大きく78%より小さく、好ましくは64%より大きく70%以下であり、その残留アセチル基量が6%未満、好ましくは3%以下である。
【0063】
ポリブチラール樹脂の重合度は、たとえば原料であるポリビニルアセタール樹脂の重合度で測定されることができる。また、ブチラール化度は、たとえばJISK6728に準拠して測定されることができる。さらに、残留アセチル基量は、JISK6728に準拠して測定されることができる。
【0064】
ポリブチラール樹脂の重合度が小さすぎると、たとえば5μm以下、好ましくは3μm以下程度に薄層化した場合に、十分な機械的強度が得られにくい傾向にある。また、重合度が大きすぎると、シート化した場合における表面粗さが劣化する傾向にある。また、ポリブチラール樹脂のブチラール化度が低すぎると、ペーストへの溶解性が劣化する傾向にあり、高すぎると、シート表面粗さが劣化する傾向にある。さらに、残留アセチル基量が多すぎると、シート表面粗さが劣化する傾向にある。
【0065】
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤は、特に限定されず、たとえばテルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。本実施形態では、有機溶剤としては、好ましくは、アルコール系溶剤と芳香族系溶剤とを含み、アルコール系溶剤と芳香族系溶剤との合計質量を100質量部として、芳香族系溶剤が、10質量部以上20質量部以下含まれる。芳香族系溶剤の含有量が少なすぎると、シート表面粗さが増大する傾向にあり、多すぎると、塗料濾過特性が悪化し、シート表面粗さも増大して悪化する。
【0066】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが例示される。芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸ベンジルなどが例示される。
【0067】
バインダ樹脂は、予め、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールの内の少なくとも一種類以上のアルコール系溶剤に溶解濾過させて溶液にしておき、その溶液に、主成分粉体およびその他の成分を添加することが好ましい。高重合度のバインダ樹脂は溶剤に溶け難く、通常の方法では、塗料の分散性が悪化する傾向にある。本実施形態の方法では、高重合度のバインダ樹脂を上述の良溶媒に溶解してから、その溶液に主成分粉体およびその他の成分を添加するために、ペースト分散性を改善することができ、未溶解樹脂の発生を抑制することができる。なお、上述の溶剤以外の溶剤では、固形分濃度を上げられないと共に、ラッカー粘度の経時変化が増大する傾向にある。
【0068】
本実施形態では、誘電体ペースト中には、バインダ樹脂と共に、粘着付与剤として、キシレン系樹脂を添加してもよい。キシレン系樹脂は、主成分粉体100質量部に対して、1.0質量%以下、さらに好ましくは0.1以上1.0質量%以下、特に好ましくは0.1より大きく1.0質量%以下の範囲で添加される。キシレン系樹脂の添加量が少なすぎると、接着性が低下する傾向にある。また、その添加量が多すぎると、接着性は向上するが、シートの表面粗さが粗くなり、多数の積層が困難になると共に、シートの引張強度が低下し、シートのハンドリング性が低下する傾向にある。
【0069】
グリーンシート用塗料中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、帯電除剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。
【0070】
本実施形態では、分散剤としては、特に限定されないが、好ましくはポリエチレングリコール系のノニオン性分散剤が用いられ、その親水性・親油性バランス(HLB)値が5〜6である。分散剤は、主成分粉体100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上1.0質量部以下添加されている。
【0071】
HLBが上記の範囲を外れると、ペースト粘度が増大すると共にシート表面粗さが増大する傾向にある。また、ポリエチレングリコール系のノニオン性分散剤ではない分散剤では、ペースト粘度が増大すると共に、シート表面粗さが増大したり、シート伸度が低下することから好ましくない。
【0072】
分散剤の添加量が少なすぎると、シート表面粗さが増大する傾向にあり、多すぎると、シート引張強度およびスタック性が低下する傾向にある。
【0073】
本実施形態では、可塑剤としては、好ましくはフタル酸ジオクチルが用いられ、バインダ樹脂100質量部に対して、好ましくは40質量部以上70質量部以下、さらに好ましくは40〜60質量部で含有してある。他の可塑剤に比較して、フタル酸ジオクチルは、シート強度およびシート伸びの双方の点で好ましく、支持体からの剥離強度が小さく剥がれやすいので特に好ましい。なお、この可塑剤の含有量が少なすぎると、シート延びが小さく、可撓性が小さくなる傾向にある。また、含有量が多すぎると、シートから可塑剤がブリードアウトして、シートに対する可塑剤の偏析が発生しやすく、シートの分散性が低下する傾向にある。
【0074】
また、本実施形態では、グリーンシート用塗料には、主成分粉体100質量部に対して、水を1質量部以上6質量部以下、好ましくは1〜3質量部で含有してある。水の含有量が少なすぎると、吸湿によるペースト特性の経時変化が大きくなると共に、ペースト粘度が増大する傾向にあり、ペーストの濾過特性が劣化する傾向にある。また、水の含有量が多すぎると、ペーストの分離や沈降が生じ、分散性が悪くなり、シートの表面粗さが劣化する傾向にある。
【0075】
さらに、本実施形態では、主成分粉体100質量部に対して、炭化水素系溶剤、工業用ガソリン、ケロシン、ソルベントナフサの内の少なくとも何れか1つを、好ましくは3質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは5〜10質量部で、グリーンシート用塗料に添加してある。これらの添加物を添加することで、シート強度およびシート表面粗さを向上させることができる。これらの添加物の添加量が少なすぎると、添加の効果が少なく、添加量が多すぎると、逆に、シート強度およびシート表面粗さを劣化させる傾向にある。
【0076】
バインダ樹脂は、主成分粉体100質量部に対して、好ましくは5質量部以上6.5質量部以下で含まれる。バインダ樹脂の含有量が少なすぎると、シート強度が低下すると共にスタック性(積層時の接着性)が劣化する傾向にある。また、バインダ樹脂の含有量が多すぎると、バインダ樹脂の偏析が発生して分散性が悪くなる傾向にあり、シート表面粗さが劣化する傾向にある。
【0077】
さらに本実施形態では、グリーンシート用塗料には、好ましくは帯電除剤が含まれ、その帯電助剤が、イミダゾリン系帯電除剤であることが好ましい。帯電除剤がイミダゾリン系帯電除剤以外の場合には、帯電除去効果が小さいと共に、シート強度、シート伸度あるいは接着性が劣化する傾向にある。
【0078】
帯電助剤は、主成分粉体100質量部に対して0.1質量部以上0.75質量部以下、さらに好ましくは、0.25〜0.5質量部で含まれる。帯電除剤の添加量が少なすぎると、帯電除去の効果が小さくなり、多すぎると、シートの表面粗さが劣化すると共に、シート強度が劣化する傾向にある。帯電除去の効果が小さいと、セラミックグリーンシートから支持体としてのキャリアシートを剥がす際などに静電気が発生しやすく、グリーンシートにしわが発生する等の不都合が発生しやすい。
【0079】
このグリーンシート用塗料を用いて、ダイコーター・バーコーター法などにより、図2に示すように、支持体としてのキャリアシート30上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで、グリーンシート10aを形成する。グリーンシート10aは、キャリアシート30に形成された後に乾燥される。
【0080】
グリーンシートの乾燥温度は、好ましくは50〜100°Cであり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。乾燥後のグリーンシートの厚みは、乾燥前に比較して、5〜25%の厚みに収縮する。乾燥後のグリーンシート10aの厚みは、3μm以下が好ましい。
【0081】
(2)上記のキャリアシート30とは別のキャリアシート20を準備し、その上に、剥離層22を形成し、その上に、所定パターンの電極層12aを形成し、その前後に、その電極層12aが形成されていない剥離層22の表面に、電極層12aと実質的に同じ厚みの余白パターン層24を形成する。
【0082】
キャリアシート20,30としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコンなどがコーティングしてあるものが好ましい。これらのキャリアシート20,30の厚みは、特に限定されないが、好ましくは、5〜100μmである。
【0083】
剥離層22は、好ましくはグリーンシート10aを構成する誘電体と同じ誘電体粒子を含む。また、この剥離層22は、誘電体粒子以外に、バインダと、可塑剤と、離型剤とを含む。誘電体粒子の粒径は、グリーンシートに含まれる誘電体粒子の粒径と同じでも良いが、より小さいことが好ましい。
【0084】
本実施形態では、剥離層22の厚みは、電極層12aの厚み以下の厚みであることが好ましく、好ましくは60%以下の厚み、さらに好ましくは30%以下に設定する。
【0085】
剥離層22の塗布方法としては、特に限定されないが、きわめて薄く形成する必要があるために、たとえばワイヤーバーコーターまたはダイコーターを用いる塗布方法が好ましい。なお、剥離層22の厚みの調整は、異なるワイヤー径のワイヤーバーコーターを選択することで行うことができる。すなわち、剥離層22の塗布厚みを薄くするためには、ワイヤー径の小さいものを選択すれば良く、逆に厚く形成するためには、太いワイヤー径のものを選択すればよい。剥離層22は、塗布後に乾燥される。乾燥温度は、好ましくは、50〜100°Cであり、乾燥時間は、好ましくは1〜10分である。
【0086】
剥離層22のためのバインダとしては、たとえば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体からなる有機質、またはエマルジョンで構成される。剥離層22に含まれるバインダは、グリーンシート10aに含まれるバインダと同じでも異なっていても良いが同じであることが好ましい。
【0087】
剥離層22のための可塑剤としては、特に限定されないが、たとえばフタル酸エステル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。剥離層22に含まれる可塑剤は、グリーンシートに含まれる可塑剤と同じでも異なっていても良い。
【0088】
剥離層22のための剥離剤としては、特に限定されないが、たとえばパラフィン、ワックス、シリコーン油などが例示される。剥離層22に含まれる剥離剤は、グリーンシートに含まれる剥離剤と同じでも異なっていても良い。
【0089】
バインダは、剥離層22中に、誘電体粒子100質量部に対して、好ましくは2.5〜200質量部、さらに好ましくは5〜30質量部、特に好ましくは8〜30質量部程度で含まれる。
【0090】
可塑剤は、剥離層22中に、バインダ100質量部に対して、0〜200質量部、好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは50〜100質量部で含まれることが好ましい。
【0091】
剥離剤は、剥離層22中に、バインダ100質量部に対して、0〜100質量部、好ましくは2〜50質量部、さらに好ましくは5〜20質量部で含まれることが好ましい。
【0092】
剥離層22をキャリアシートの表面に形成した後、剥離層22の表面に、焼成後に内部電極層12を構成することになる電極層12aを所定パターンで形成する。電極層12aの厚さは、好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.1〜1.0μm程度である。電極層12aは、単一の層で構成してあってもよく、あるいは2以上の組成の異なる複数の層で構成してあってもよい。
【0093】
電極層12aは、たとえば電極ペーストを用いる印刷法などの厚膜形成方法、あるいは蒸着、スパッタリングなどの薄膜法により、剥離層22の表面に形成することができる。厚膜法の1種であるスクリーン印刷法あるいはグラビア印刷法により、剥離層22の表面に電極層12aを形成する場合には、以下のようにして行う。
【0094】
まず、電極ペーストを準備する。電極ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、あるいは焼成後に上記した導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、またはレジネート等と、有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0095】
電極ペーストを製造する際に用いる導体材料としては、NiやNi合金さらにはこれらの混合物を用いる。このような導体材料は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導体材料の平均粒子径は、通常、0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1μm程度のものを用いればよい。
【0096】
有機ビヒクルは、バインダおよび溶剤を含有するものである。バインダとしては、例えばエチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体などが例示されるが、特にポリビニルブチラールなどのブチラール系が好ましい。
【0097】
バインダは、電極ペースト中に、導体材料(金属粉体)100質量部に対して、好ましくは8〜20質量部含まれる。溶剤としては、例えばテルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン等公知のものはいずれも使用可能である。溶剤含有量は、ペースト全体に対して、好ましくは20〜55質量%程度とする。
【0098】
接着性の改善のために、電極ペーストには、可塑剤が含まれることが好ましい。可塑剤としては、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤は、電極ペースト中に、バインダ100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、さらに好ましくは10〜200質量部である。なお、可塑剤または粘着剤の添加量が多すぎると、電極層12aの強度が著しく低下する傾向にある。また、電極層12aの転写性を向上させるために、電極ペースト中に、可塑剤および/または粘着剤を添加して、電極ペーストの接着性および/または粘着性を向上させることが好ましい。
【0099】
剥離層22の表面に、所定パターンの電極ペースト層を印刷法で形成した後、またはその前に、電極層12aが形成されていない剥離層22の表面に、電極層12aと実質的に同じ厚みの余白パターン層24を形成する。余白パターン層24は、グリーンシートと同様な材質で構成され、同様な方法により形成される。電極層12aおよび余白パターン層22は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜120°Cであり、乾燥時間は、好ましくは5〜15分である。
【0100】
(3)その後に、電極層12aを、グリーンシート10aの表面に接着する。そのために、電極層12aおよび余白パターン層24を、グリーンシート10aの表面にキャリアシート20と共に押し付け、加熱加圧して、電極層12aおよび余白パターン層24を、グリーンシート10aの表面に転写する。ただし、グリーンシート側から見れば、グリーンシート10aが電極層12aおよび余白パターン層24に転写される。なお、接着性を向上するために、電極層12aおよび余白パターン層24の表面には、転写法により接着層を予め形成しておいても良い。
【0101】
この転写時の加熱および加圧は、プレスによる加圧・加熱でも、カレンダロールによる加圧・加熱でも良いが、一対のロールにより行うことが好ましい。その加熱温度および加圧力は、特に限定されない。
【0102】
単一のグリーンシート10a上に単一層の所定パターンの電極層12aが形成されたグリーンシートを積層させれば、電極層12aおよびグリーンシート10aが交互に多数積層された積層ブロックが得られる。その後に、この積層体の下面に、外層用のグリーンシート(電極層が形成されていないグリーンシートを複層積層した厚めの積層体)を積層する。その後に、積層体の上側に、同様にして外層用のグリーンシートを形成した後、最終加圧を行う。
【0103】
最終加圧時の圧力は、好ましくは10〜200MPaである。また、加熱温度は、40〜100°Cが好ましい。その後に、積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成する。このグリーンチップは、脱バインダ処理、焼成処理が行われ、そして、誘電体層を再酸化させるため、熱処理が行われる。
【0104】
脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよいが、内部電極層の導電体材料にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、特に下記の条件で行うことが好ましい。
【0105】
昇温速度:5〜300℃/時間、特に10〜50℃/時間、
保持温度:200〜400℃、特に250〜350℃、
保持時間:0.5〜20時間、特に1〜10時間、
雰囲気 :加湿したNとHとの混合ガス。
【0106】
焼成条件は、下記の条件が好ましい。
昇温速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
保持温度:1100〜1300℃、特に1150〜1250℃、
保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス等。
【0107】
ただし、焼成時の空気雰囲気中の酸素分圧は、10−2Pa以下、特に10−2〜10−8 Paにて行うことが好ましい。前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にあり、また、酸素分圧があまり低すぎると、内部電極層の電極材料が異常焼結を起こし、途切れてしまう傾向にある。
【0108】
このような焼成を行った後の熱処理は、保持温度または最高温度を、好ましくは1000℃以上、さらに好ましくは1000〜1100℃として行うことが好ましい。熱処理時の保持温度または最高温度が、前記範囲未満では誘電体材料の酸化が不十分なために絶縁抵抗寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲をこえると内部電極のNiが酸化し、容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にある。熱処理の際の酸素分圧は、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧であり、好ましくは10−3Pa〜1Pa、より好ましくは10−2Pa〜1Paである。前記範囲未満では、誘電体層2の再酸化が困難であり、前記範囲をこえると内部電極層3が酸化する傾向にある。そして、そのほかの熱処理条件は下記の条件が好ましい。
【0109】
保持時間:0〜6時間、特に2〜5時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に100〜300℃/時間、
雰囲気用ガス:加湿したNガス等。
【0110】
なお、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は0〜75℃程度が好ましい。また脱バインダ処理、焼成および熱処理は、それぞれを連続して行っても、独立に行ってもよい。これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、熱処理の保持温度に達したときに雰囲気を変更して熱処理を行なうことが好ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処理時の保持温度までNガスあるいは加湿したNガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、熱処理時の保持温度まで冷却した後は、再びNガスあるいは加湿したNガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。また、熱処理に際しては、Nガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、熱処理の全過程を加湿したNガス雰囲気としてもよい。
【0111】
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、例えばバレル研磨、サンドプラスト等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6,8が形成される。端子電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、端子電極6,8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、端子電極用ペーストは、上記した電極ペーストと同様にして調製すればよい。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0112】
本実施形態に係るグリーンシート用塗料を用いる積層セラミックコンデンサの製造方法では、ブチラール系樹脂を主成分とするバインダ樹脂を用いていることから、極めて薄いグリーンシートであっても、支持体からの剥離に耐えうる強度を有し、かつ良好な接着性およびハンドリング性を有するグリーンシートを製造することが可能になる。たとえば焼成後の誘電体層(焼成後のグリーンシート)の厚みを5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下に薄層化が可能になる。また、本実施形態のグリーンシートでは、その表面粗さが小さいので、積層数を増大することも可能である。
【0113】
また、本実施形態に係るグリーンシート用塗料を用いる積層セラミックコンデンサの製造方法では、特定種類の分散剤であって、HLBが特定範囲の分散剤を用いている。そのため、たとえば5μm以下程度に極めて薄いグリーンシートであっても、キャリアシートからの剥離に耐えうる強度を有し、かつ良好な接着性およびハンドリング性を有する。また、シートの表面粗さも小さく、且つスタック性に優れている。そのため、グリーンシートを、電極層を介して多数積層することが容易になる。
【0114】
さらに、本実施形態に係るグリーンシート用塗料を用いる積層セラミックコンデンサの製造方法では、誘電体ペーストに帯電助剤を含み、その帯電助剤が、イミダゾリン系帯電除剤である。そのため、たとえば5μm以下程度に極めて薄いグリーンシートであっても、支持体としてのキャリアシートからの剥離に耐えうる強度を有し、キャリアシートからの剥離時などに発生する静電気を抑制し、かつ良好な接着性およびハンドリング性を有するグリーンシートを製造することができる。また、シートの表面粗さも小さく、且つスタック性に優れている。そのため、グリーンシートを、電極層を介して多数積層することが容易になる。
【0115】
また、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法では、グリーンシートが破壊または変形されることなく、グリーンシートの表面に高精度に乾式タイプの電極層を容易且つ高精度に転写することが可能である。
【0116】
特に本実施形態に係る添加物ペーストの製造方法によれば、その分散スラリー中に、低沸点溶媒のみでなく、高沸点溶媒を含んでいる。そのために、低沸点溶媒の蒸発後には、添加物ペーストが、添加物粉体が単に溶媒中に分散しているスラリーではなく、しかも、ゲル状でもなく、クリーム状(ペースト状)となる。そのために、たとえば数日間以上、この添加物ペーストを保存したとしても、ペースト中の添加物粉体が、溶媒から沈降分離することがないと共に、ゲル化することもない。
【0117】
そのため、この添加物ペーストは、数日間以上おいた後でも、正確に秤量して、グリーンシートを形成するための主成分となる主成分粉体を含む分散塗料に添加することが可能である。しかも、この添加物ペーストは、乾燥粉の状態ではないことから、乾燥粉の凝集により再分散が困難になることもなく、主成分粉体と共に、良好に分散させることができる。
【0118】
なお、もし、添加物ペーストが、添加物粉体が単に溶媒中に分散しているスラリーである場合には、添加物粉体が、時間の経過と共に沈降分離してしまい、添加物粉体を正確に秤量することが困難になり、主成分粉体に対して正確な量で混合することが困難になる。また、もし、添加物ペーストが、ゲル化してしまうと、この場合にも、添加物粉体を正確に秤量することが困難になり、主成分粉体に対して正確な量で混合することが困難になる。
【0119】
本実施形態の方法によれば、比較的に長期の保存が可能であり、保存中に添加物の沈降分離が抑制され、しかも、秤量精度が良好であり、グリーンシート用塗料作製時にも、再分散が容易な添加物ペーストを提供することができる。
【0120】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明の方法は、積層セラミックコンデンサの製造方法に限らず、その他の積層型電子部品の製造方法としても適用することが可能である。
【0121】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0122】
実施例1
添加物ペーストの作製
主成分粉体としてのBaTiO粉体100質量部に対して、(Ba0.6Ca0.4)SiO:1.48質量部、Y:1.01質量部、MgCO:0.72質量%、MnO:0.13質量%、およびV:0.045質量%になるように副成分添加物を用意した。この副成分添加物を、ボールミルで混合し、乾燥させた後、その乾燥物を800〜1000°Cで仮焼したあと、その仮焼物を粗粉砕して、添加物粉体を得た。
【0123】
この添加物粉体100重量部に対して、低沸点溶媒としてのアセトン:100重量部、高沸点溶媒としての2−ブトキシエタノール:150重量部、分散剤としてのポリエチレン系分散剤:2重量部を添加して混合したスラリー(表における組成B)を準備した。このスラリーを、アシザワ製LMZ0.6のビーズミル装置を用いて混合し、添加物粉体を粉砕して小径化し、分散スラリーを得た。直径0.1mmのZrOメディアを装置内に充填量80%で充填し、周速14m/sec、ベッセル滞留時間:5分の条件下で、添加物粉体を粉砕した。粉砕後の添加物粉体の粒径は、メジアン径(50%粒径)で0.107μmであった。なお、紛体粒径は、日機装株式会社製のマイクロトラックHRAによって測定した。以下、同様である。
【0124】
次に、粉砕スラリー(分散スラリー)を装置から回収し、加熱機構を備えた攪拌機により、低沸点溶媒としてのアセトンを蒸発除去して、添加物ペーストを得た。低沸点溶剤の除去条件は、加熱温度50°Cで、加熱時間が2時間であった。
【0125】
この添加物ペーストは、クリーム状であり、表1に示すように、そのペーストを一日後および10日後に観察しても、全く変化せず、クリーム状のままであり、10日後でも、正確な秤量が可能なことが確認された。保存性の評価は、表1に示すように、良好であった(OK)。
【0126】
【表1】
Figure 0004143458
【0127】
【表2】
Figure 0004143458
【0128】
グリーンシート用塗料の作製
次に、主成分粉体としてのBaTiO粉体(BT−02/堺化学工業(株)):200gに対して、上記の添加物ペーストを24g、エタノールを38g、n−プロパノールを38g、キシレンを28g、ミネラルスピリットを14g、可塑剤成分としてDOPを6g、分散剤としてのポリエチレングリコール系のノニオン性分散剤を1.4g添加し、上記と同様なビーズミル装置によって、2時間混合し、分散塗料を得た。次に、この分散塗料に、バインダとして、積水化学社製BH6−15%ラッカー(積水化学社製BH6をエタノール/n−プロパノール=1:1で溶解)を固形分として6質量%添加した。その後、これを4時間、上記と同様なビーズミル装置によって混合し、グリーンシート用塗料とした。
【0129】
このグリーンシート用塗料における主成分粉体の粒径(50%メジアン径)を測定したところ、表2に示すように、0.531μm(表におけるBT粒度)であった。
【0130】
グリーンシートの作製
得られたグリーンシート用塗料をバーコーターによって、PETフィルム上に2μm厚みで塗布した。塗布速度は50m/minm、乾燥条件は、乾燥炉内の温度が60°C〜70°C、乾燥時間が2分であった。
剥離層の形成
次に、前記のグリーンシート用塗料をエタノール/トルエン(55/10)によって重量比で2倍に希釈したものを剥離層用塗料とし、この塗料を用いてワイヤーバーコーターにより塗布し、その塗布膜を乾燥させて、図2に示すように、0.2μmの剥離層22を形成した。
【0131】
内部電極層の形成
次に、剥離層22の表面に、厚さ1.2μmの内部電極層12aを所定パターンで形成した。内部電極層12aは、内部電極塗料を用いて印刷法により形成した。
【0132】
内部電極塗料は、下記に示される配合比にて、ボールミルにより混練し、スラリー化して形成した。すなわち、平均粒径が0.2μmのNi粒子(電極材粉体)100質量部に対して、グリーンシート用塗料に含まれているセラミック粉体と同じセラミック粉体(BaTiO粉体およびセラミック粉体副成分添加物)を20質量部と、有機ビヒクル(バインダ樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂8質量部をターピネオール92質量部に溶解したもの)58質量部と、ターピネオール10質量部、アセトン45質量部とを加え、ボールミルにより混練し、スラリー化し、その後、加熱攪拌装置よりアセトンを除去し、電極ペーストとした。
【0133】
余白パターン層の形成
次に、剥離層22の表面で、内部電極層12aが形成されていない部分に、内部電極層12aと同じ厚みで、余白パターン層24を印刷法により形成した。
【0134】
誘電体グリーンシートに用いた誘電体原料100重量部に対し、
有機ビヒクル:71質量部
(ポリビニルブチラール樹脂8質量部をターピネオール92質量部に溶解したもの)、
可塑剤としてフタル酸ビス(2ヘチルヘキシル)DOP:50質量部、
ターピネオール:5質量部、
分散剤 :1質量部、
アセトン :64質量部、
を配合し、ボールミルによって20時間混合した。混合後のスラリーを40°Cで加熱攪拌することによって、余剰のアセトンを揮発させ、余白パターン層用ぺーストとした。
【0135】
接着層用ペースト
接着層用ペーストとして、有機ビヒクルを用いた。ポリビニルブチラール樹脂を100質量部に対して、可塑剤としてフタル酸ビス(2ヘチルヘキシル)DOP:50質量部、MEK900質量部の混合溶液をMEKで更に10倍に希釈した。
【0136】
積層体(焼成前素子本体)の形成
図2に示す電極層12aおよび余白パターン層24をグリーンシート10aの表面に転写したものを多数積層し、最終的に、200層の内部電極層12aが積層された積層体を得た。積層条件は、加圧力が5MPa、温度が120℃であった。
【0137】
焼結体の作製
次いで、積層体を所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニール(熱処理)を行って、チップ形状の焼結体を作製した。
【0138】
脱バインダは、
昇温速度:15〜50℃/時間、
保持温度:400℃、
保持時間:2時間、
冷却速度:300℃/時間、
雰囲気ガス:NとH(H濃度1%)の混合ガス(露点20°C)、
酸素分圧:10−3Pa、
で行った。
【0139】
焼成は、
昇温速度:200〜300℃/時間、
保持温度:1200°C、
保持時間:2時間、
冷却速度:300℃/時間、
雰囲気ガス:NとH(H濃度5%)の混合ガス(露点20°C)、
酸素分圧:3×10−8Pa、
で行った。
【0140】
アニール(再酸化)は、
昇温速度:200〜300℃/時間、
保持温度:1000°C、
保持時間:2時間、
冷却速度:200℃/時間、
雰囲気ガス:加湿したNガス(露点20°C)、
酸素分圧:7×10−2Pa、
で行った。なお、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用い、水温0〜75℃にて行った。
【0141】
次いで、チップ形状の焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを端面に転写し、加湿したN+H雰囲気中において、800℃にて10分間焼成して外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサのサンプルを得た。
【0142】
このようにして得られた各サンプルのサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は200、各層の厚さは1.0μmであり、内部電極層の厚さは1.0μmであった。各サンプルについて、ショート不良率および寿命の測定を行った。結果を表2に示す。
【0143】
ショート不良率は、100個のコンデンサのサンプルを用い、テスターで導通チェックを行い、得られた抵抗値が1Ω以下のものをショート不良として、その不良個数を求め、全体個数に対するパーセンテージ(%)を算出することにより求めた。その結果、本実施例では、ショート不良率は2.7%であった。
【0144】
また、寿命試験では、コンデンサのサンプルに対し、120℃で12.6V/μmの直流電圧の印加状態に保持することにより測定した。この寿命試験は、誘電体層を薄層化する際に特に重要となるものである。本実施例では印加開始から抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義し、これを10個のコンデンササンプルに対して行い、その平均寿命時間を算出した。表2に示すように、本実施例では、241時間であった。
【0145】
また、各サンプルの誘電体層について、EPMAによるSi−CV値を測定した。Si−CV値は、加速電圧:20kV、照射電流:0.1μA、計測時間:30msec/点、電子線径:spot、範囲:25μm×25μmの条件で、EPMA(X線マイクロアナライザ、分光結晶:TAP、JOEL製、JXA−8800RL)を用いてデータを収集し、CV値(単位なし)=(標準偏差/平均値)の式により算出した。その結果、表2に示すように、Si−CV値は20%であった。Si−CV値は、定性的には、Si濃度のばらつきを示し、添加物の分散状態を示しており、この値が低いほど、均一性が高くなる。
【0146】
比較例1
添加物粉体100重量部に対して、溶媒としてのエタノール:47重量部、プロパノール:47重量部、キシレン:17重量部、分散剤としてのポリエチレン系分散剤:2重量部を添加して混合したスラリー(表における組成A)を準備し、ボールミル(BM)を用いて20時間スラリーを混合し、低沸点溶媒としてのエタノール、プロパノールの除去は行わなかった以外は、実施例1と同様にして、添加物ペーストを作製した。この添加物ペーストにおける粉砕後の添加物粉体の粒径は、表2に示すように、メジアン径(50%粒径)で0.331μmであった。
【0147】
また、この添加物ペーストは、表1に示すように、1日後でもスラリー状であったが、10日後には、スラリーにおける添加物粉体が沈降して分離してしまった。そのために、添加物粉体を正確に秤量して、主成分粉体に添加することは困難であった。したがって、保存性の評価は、表1に示すように、不良(NG)であった。
【0148】
この比較例1に係る添加物ペーストを作製した直後(沈降分離する前)に、この添加物ペーストを、ボールミルを用いて、主成分粉体と4時間混合し、分散塗料を得た。その後、この分散塗料に、バインダを加えて、ボールミルにより16時間混合した。その他は、実施例1と同様にして、グリーンシート用塗料を得た。
【0149】
このグリーンシート用塗料における主成分粉体の粒径(50%メジアン径)を測定したところ、表2に示すように、0.586μm(表におけるBT粒度)であった。
【0150】
このグリーンシート用塗料を用いて、実施例1と同様にして、コンデンサのサンプルを特製し、Si−CV値、ショート不良率および寿命を測定した。結果を表2に示す。
【0151】
比較例2
添加物粉体100重量部に対して、低沸点溶媒としてのエタノール:47重量部、低沸点溶媒としてのプロパノール:47重量部、低沸点のキシレン:17重量部、分散剤としてのポリエチレン系分散剤:2重量部を添加して混合したスラリー(表における組成A)を準備し、ビーズミル装置により分散を行い、低沸点溶媒の除去は行わなかった以外は、実施例1と同様にして、添加物ペーストを作製した。
【0152】
この添加物ペーストは、表1に示すように、1日後および10日後に、ゲル化し、不均一化な状態になってしまった。そのために、添加物粉体を正確に秤量して、主成分粉体に添加することは困難であった。したがって、保存性の評価は、表1に示すように、不良(NG)であった。
【0153】
比較例3
比較例1に係る添加物ペーストを作製した直後(沈降分離する前)に、この添加物ペーストを、実施例1に示すビーズミル装置を用いて、主成分粉体と2時間混合し、分散塗料を得た。その後、この分散塗料に、バインダを加えて、ビーズミル装置により4時間混合した。その他は、実施例1と同様にして、グリーンシート用塗料を得た。
【0154】
このグリーンシート用塗料における主成分粉体の粒径(50%メジアン径)を測定したところ、表2に示すように、0.531μm(表におけるBT粒度)であった。
【0155】
このグリーンシート用塗料を用いて、実施例1と同様にして、コンデンサのサンプルを特製し、Si−CV値、ショート不良率および寿命を測定した。結果を表2に示す。
【0156】
比較例4
ボールミル(BM)を用いて100時間スラリーを混合し、低沸点溶媒の除去は行わなかった以外は、比較例1と同様にして、添加物ペーストを作製した。この添加物ペーストにおける粉砕後の添加物粉体の粒径は、表2に示すように、メジアン径(50%粒径)で0.202μmであった。
【0157】
この比較例1に係る添加物ペーストを作製した直後(沈降分離する前)に、この添加物ペーストを、ボールミルを用いて、主成分粉体と混合した以外は、比較例1と同様にして、グリーンシート用塗料を得た。
【0158】
このグリーンシート用塗料における主成分粉体の粒径(50%メジアン径)を測定したところ、表2に示すように、0.583μm(表におけるBT粒度)であった。
【0159】
このグリーンシート用塗料を用いて、実施例1と同様にして、コンデンサのサンプルを特製し、Si−CV値、ショート不良率および寿命を測定した。結果を表2に示す。
【0160】
評価
表1および表2に示すように、本実施例の添加物ペーストは、保存性に優れ、添加物の沈降分離が抑制され、しかも、秤量精度が良好であり、グリーンシート用塗料作製時にも、再分散が容易であることが確認できた。また、本実施例の添加物ペーストを用いて製造されたコンデンサのサンプルでは、Si−CV値が低く、添加物が均一に分散されている為、組織・組成が均一になったと考えられ、ショート不良率も低く、しかも長寿命であることが確認できた。
【0161】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、グリーンシート用塗料を作製するために用いる添加物ペーストであって、比較的に長期の保存が可能であり、保存中に添加物の沈降分離が抑制され、しかも、秤量精度が良好であり、グリーンシート用塗料作製時にも、再分散が容易な添加物ペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】 図2は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造過程を示す要部断面図である。
【符号の説明】
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12… 内部電極層
12a… 電極層
20… キャリアシート
22… 剥離層
24… 余白パターン層
30… キャリアシート

Claims (21)

  1. 添加物粉体と、沸点が80°C以下である低沸点溶媒と、沸点が150°C以上である高沸点溶媒と、分散剤とを混合し、分散スラリーを得る工程と、
    前記分散スラリーを、所定の温度で加熱し、前記低沸点溶媒を蒸発させ、グリーンシート用塗料を作製するために用いる添加物ペーストを得る工程とを有する添加物ペーストの製造方法。
  2. 前記添加物粉体が、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素、ガラス組成物のいずれか1つを少なくとも含む粉体である請求項1に記載の添加物ペーストの製造方法。
  3. 前記低沸点溶媒が、沸点が80°C以下であるアルコール、ケトン類および/またはエステル類を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の添加物ペーストの製造方法。
  4. 前記高沸点溶媒が、沸点が150°C以上であるグリコール類、高級アルコール、ケトン類および/またはテルペン系溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  5. 前記分散剤が、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤および/またはアリルエーテルコポリマー分散剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  6. 前記低沸点溶媒を、前記添加物粉体100質量部に対して、50〜150質量部の割合で添加して、分散スラリーを得る請求項1〜5のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  7. 前記高沸点溶媒を、前記添加物粉体100質量部に対して、70〜150質量部の割合で添加して、分散スラリーを得る請求項1〜6のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  8. 前記分散剤を、前記添加物粉体100質量部に対して、1〜2質量部の割合で添加して、分散スラリーを得る請求項1〜7のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  9. 前記分散スラリーを、前記低沸点溶媒の沸点以下の温度で加熱し、前記低沸点溶媒を蒸発させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  10. 前記分散スラリーを、40〜70°Cの温度で加熱し、前記低沸点溶媒を蒸発させることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  11. 前記添加物粉体をアジテータミルで破砕しながら、前記添加物粉体と、低沸点溶媒と、高沸点溶媒と、分散剤とを混合し、分散スラリーを得る請求項1〜10のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  12. 前記添加物粉体の粒径が、0.05〜0.15μmとなるように、前記添加物粉体を粉砕しながら、前記添加物粉体と、低沸点溶媒と、高沸点溶媒と、分散剤とを混合する請求項1〜11のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法により得られる添加物ペースト。
  14. 添加物粉体と、沸点が150°C以上である高沸点溶媒と、分散剤とを少なくとも有するグリーンシート用塗料を作製するために用いる添加物ペースト。
  15. 請求項1〜12のいずれかに記載の添加物ペーストの製造方法により添加物ペーストを作製する工程と、
    グリーンシートを形成するための主成分となる主成分粉体を、前記添加物ペーストと共に混合し、グリーンシート用塗料を得る工程と、
    前記グリーンシート用塗料を用いてグリーンシートを成形する工程と、
    を有するグリーンシートの製造方法。
  16. 前記グリーンシート用塗料には、ブチラール系樹脂を主成分とするバインダ樹脂を含ませる請求項15に記載のグリーンシートの製造方法。
  17. 前記ブチラール系樹脂がポリブチラール樹脂であって、
    前記ポリブチラール樹脂の重合度が1000以上1700以下であり、樹脂のブチラール化度が64%より大きく78%より小さく、残留アセチル基量が6%未満である請求項16に記載のグリーンシートの製造方法。
  18. 前記バインダ樹脂を前記主成分粉体100質量部に対して5質量部以上6.5質量部以下で含ませる請求項16または17に記載のグリーンシートの製造方法。
  19. 前記グリーンシート用塗料には、可塑剤としてのフタル酸ジオクチルを、前記バインダ樹脂100質量部に対して、40質量部以上70質量部以下で含ませる請求項15〜18のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法。
  20. 前記主成分粉体を、前記添加物ペーストと共に、アジテータミルを用いて混合し、グリーンシート用塗料を得る請求項15〜19のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法。
  21. 請求項15〜20のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法により、グリーンシートを製造する工程と、
    前記グリーンシートを、内部電極層を介して積層し、グリーンチップを得る工程と、
    前記グリーンチップを焼成する工程と、
    を有するセラミック電子部品の製造方法。
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