JP4140322B2 - 水中物体の捜索運用方式及び捜索用プログラム - Google Patents

水中物体の捜索運用方式及び捜索用プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水中物体の捜索運用方式及び捜索用プログラムに係り、特に海洋内に音波を放射し、水中物体からの反響音を受信することによって、海洋内に潜在する水中物体を捜索する水中物体の捜索運用方式及び捜索用プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、海洋内の媒質においては、水深によって水温が異なり、水圧及び塩分濃度の影響も加わり、海洋内での音速は一定ではなく、水深に対して不均一となる。このため、海洋内を伝搬する音波は屈折する。また、音波伝搬の妨げとなる海嶺等の影響を受け回折し、更に海洋内に熱エネルギー等で取り込まれ、減衰を受けると共に、海面及び海底のように境界となる面の粗さや形状等の影響を受け、反射、散乱による位相干渉を生じ、送信された音波のエネルギー分布は単なる平面波とは異なり、複雑に変形されて伝搬する。特に、大陸棚等の水深の比較的浅い海域である浅海域では、この音波のエネルギー分布の変形が顕著に現れることが知られている。
【0003】
また、一般に、水中物体を探知可能という状況は、海洋内に送信された音波が伝搬し、水中物体に当たり、反響音として送信地点に戻ってくる音波の強さ(以下、エコーレベルと称す)と、海洋内の浮遊物や気泡、及び海面、海底の境界面からの散乱によって戻ってくる音波によって構成される音波の強さ(以下、残響レベルと称す)と、波浪、航行する船舶等の雑音による音波の強さ(以下、雑音レベルと称す)との関係による。ここで、エコーレベル、残響レベルは送信地点の海洋環境によるものが大きく、操作者の経験のみにより水中物体を探知可能か否かを予測することは容易ではない。
【0004】
これにより、海洋内に送信する送信音波の波形,周波数、帯域幅、パルス幅等の諸設定の組合せ(以下、送信モードと称す)によって、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況にどのように影響するかを予測し、水中物体の捜索運用において最も効率的である最適な送信モードを決定することは容易ではない。
【0005】
図10は従来の水中物体の捜索運用方式の一例のブロック図を示す。同図において、送信モード入力部11は、海洋内に送信する送信音波の波形、周波数、帯域幅、パルス幅等の諸設定の組合せである送信モードを一つデフォルトとして備えている。なお、必要があれば、操作者によって入力することも可能である。また、その設定された送信モードを予察部14へ出力する機能を有する。
【0006】
諸元データ入力部12は、予察部14で計算する際に必要となる送信器及び受波器の位置、深度、性能等のセンサ情報等の諸設定値である諸元データをデフォルトとして備えている。なお、必要があれば、操作者によって入力することも可能である。また、その設定された諸元データを予察部14へ出力する機能を有する。
【0007】
環境データ入力部13は、送信地点の海域における海面状況、水深、海底状況及び統計BTプロファイル,また観測BTプロファイル等の環境データを自動若しくは操作者の手動により入力することにより、予察部14へ出力する機能を有する。
【0008】
予察部14は、送信モード入力部11、諸元データ入力部12及び環境データ入力部13から入力された各パラメータやデータを基に、海洋内音源伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、設定された一つの送信モードにおける水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率等の計算結果を表示出力する機能を有する。
【0009】
判断15は、予察部14より表示された計算結果を基に、水中物体の捜索運用に際し、海洋環境条件に適合した効果的な捜索運用を実現する送信モードか否かを操作者が判断し、効果的であると判断すれば、予察部14の海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算で用いた送信モードをソーナーの送信モードと決定する。また、効果的ではないと判断すれば、操作者の経験により、操作者が送信モードを変更し、再度、予察部14によって海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、再び操作者により表示された計算結果を判断するループをとる。このようにして、従来は、必要があれば、操作者により、送信モードの設定を変更し、予察部14に表示される表示結果を基に、海洋環境条件に適合した効果的な捜索運用を実現する送信モードか否かを操作者が判断するようにしている。
【0010】
また、従来の水中物体の捜索運用方式の他の例として、アクティブソノブイから受信された水中音響信号の速度と距離データに基づいて送信モードを決定するソノブイ管制装置において、過去の送信で得られた目標の方位データ及び距離データから各送信時の目標位置を計算し、計算したその目標位置から目標の現在の速度データ及び針路データを計算し、これに基づき更に次の送信時の目標位置を推測するようにした方式が知られている(特許文献1参照)。
【0011】
また、従来の水中物体の捜索運用方式の更に他の例として、互いに周波数の異なる2つの超音波を用いて水中物体としての魚群の位置及びその種類等を探知する方式が知られている(特許文献2参照)。この従来の水中物体の捜索運用方式では、第1〜第3の3つの送受波器を設け、浅部探知モード時は第1の送受波器を低周波超音波の送波専用とし、第2の送受波器を低周波超音波の受波と高周波超音波の送受波専用とし、第3の送受波器は使用せず、また、深部探知モード時は第1の送受波器を低周波超音波の送受波専用とし、第3の送受波器を高周波超音波の送受波兼用とし、第2の送受波器は使用しないようにすることにより、深度に応じて適切に魚群を探知するようにしたものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平7−020231号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】
特開平4−278486号公報(第4−5頁、図1、図4)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10に示した従来の水中物体の捜索運用方式は、次の2つの問題がある。第1の問題は、送信モードを変更した場合、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況にどのように影響するか操作者の経験のみで予測することは不可能であり、操作者が送信モードを計算毎に設定することが必要になり、操作者の操作する負担が増大する。
【0014】
第2の問題は、予察部14によって計算された結果はあくまで補助的な役割であり、そのため、海洋内に音波を送信する際の送信モードが最適であるとの判断は、操作者自身によるものであるため、操作者の最適である送信モードの判断に要する負荷がかかっているということである。また、海洋環境条件によっては、判断が曖昧になることが考えられ、操作者の判断ミスを誘発させかねない。それにより、水中物体の捜索運用効率が低下するおそれも生じる。
【0015】
また、特許文献1記載の従来方式では、送信モード選択部にて目標速度及び距離から送信モードを決定するが、予察部を有していないため、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況を加味し、送信モードを選択することができない。ここで、音波は前述したように、屈折、回折、減衰及び海面・海底の影響を受け、音波の伝搬エネルギーは単純な平面波とは異なり、非常に複雑なエネルギー分布を示す。そのため、予察部を有しない特許文献1記載の方式では、水中物体探索に最適といえる送信モードを選択することは不可能である。
【0016】
更に、特許文献2記載の従来方式では、モード設定部で操作者が浅部探知モードと深部探知モードの2種のみ選択し、海洋内に超音波を送信する方式であるため、単に深度で探知モードを切り換えているに過ぎず、水中物体の探知距離を最大にするのか、探知面積を最大にするのか、探知確率を最大にするのかなど、同じ深度であっても複数の判断基準から所望の判断基準を選択できないため、より多様な水中物体の最適な探索ができず、また、探索も自動的に行えない。
【0017】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、水中物体の捜索運用に際し、海洋環境条件に適合した効果的な捜索運用を実現する送信モードの決定に対する操作者の負荷を軽減し、捜索効率を向上させるリコメンド機能を付加した水中物体の捜索運用方式及び捜索用プログラムを提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の他の目的は、水中物体の捜索運用に際し、海洋環境条件に適合した最適な送信モードの決定における操作者の判断ミスの誘発を軽減し得る水中物体の捜索運用方式及び捜索用プログラムを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、海洋内に音波を放射し、音波による水中物体からの反射音を受信することによって、海洋内に潜在する水中物体を捜索する水中物体の捜索運用方式において、基本送信モードが複数予め設定されている基本送信モード入力部と、諸元データを入力するための諸元データ入力部と、送信地点の海域における海面状況、水深、海底状況の各データを少なくとも含む環境データを入力するための環境データ入力部と、基本送信モード入力部から入力される複数の基本送信モードのそれぞれについて、諸元データ入力部から入力された諸元データと、環境データ入力部から入力された環境データとに基づいて、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、その計算により得られた各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力する予察部と、水中物体の捜索運用に適合した判断基準又は優先順位を入力するための最適判断基準入力部と、予察部から入力された各基本送信モード毎の計算結果を、最適判断基準入力部から入力された判断基準又は優先順位に基づいて、最適であるかの比較及び評価を行い、得られた最適である基本送信モードを操作者に推奨する最適送信モード評価部とを有する構成としたものである。
【0020】
本発明では、海洋内に音波を送信するに際し、設定する送信モードを、予め用意した複数の基本送信モードのそれぞれについて、諸元データ及び環境データに基づいて、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、その計算により得られた各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を、入力された判断基準又は優先順位に基づいて比較及び評価を行うようにしたため、複数の基本送信モードの中から最適である基本送信モードを操作者に推奨することができる。
【0021】
ここで、上記の基本送信モード入力部は、海洋内に送信する送信音波の波形、周波数、帯域幅、パルス幅等の諸設定の組合せである複数の送信モードが、予め基本送信モードとしてデフォルトで設定されていることを特徴とする。また、上記の最適送信モード評価部は、予察部から入力された各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率が、判断基準又は優先順位に基づき最適であるか否かの比較及び評価を自動で行うことを特徴とする。
【0022】
また、上記の適送信モード評価部は、水中物体の探知距離を最大とする第1の判断基準、水中物体の探知面積を最大とする第2の判断基準及び水中物体の探知確率が最大となる第3の判断基準の計3種類の判断基準の中から選択した一又は二以上の判断基準に基づき、比較及び評価を行うことを特徴とする。
【0023】
また、上記の目的を達成するため、上記の予察部は、音波の屈折、海面・海底での反射を考慮した音波が伝搬する際に失うエネルギー損失を計算する音波伝搬計算、海洋内に送信された音波が伝搬し、水中物体に当たり、反響音として戻ってくる音波の強さであるエコーレベルを計算するエコーレベル計算、海洋内の浮遊物や気泡、及び海面、海底の境界面からの散乱によって戻ってくる音波によって構成される残響レベル、及び波浪、航行する船舶等の雑音による雑音レベルを計算する残響・雑音計算、これらの計算情報を基に水中物体を探知可能か否か判定するエクセス判定計算を、各基本送信モード毎に行って、水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力することを特徴とする。
【0024】
また、上記の予察部は、残響・雑音計算を省略し、観測された残響・雑音データを代用して計算を行うことができる。
【0025】
また、本発明の水中物体の捜索用プログラムは、上記の目的を達成するため、海洋内に音波を放射し、音波による水中物体からの反射音を受信することによって、海洋内に音波を放射し、音波による水中物体からの反射音を受信することによって、海洋内に潜在する水中物体を捜索するために最適な音波の送信モードを、コンピュータにより決定させる水中物体の捜索用プログラムであって、コンピュータを、
海洋内に送信する送信音波の波形、周波数、帯域幅、パルス幅等の諸設定の組合せである複数の基本送信モードのそれぞれについて、音波の送信器及び反射音の受波器の位置、深度、性能等のセンサ情報等の諸設定値である諸元データと、送信地点の海域における海面状況、水深、海底状況の各データを少なくとも含む環境データとに基づいて、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、その計算により得られた各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力する予察部と、水中物体の探知距離を最大とする第1の判断基準、水中物体の探知面積を最大とする第2の判断基準及び水中物体の探知確率が最大となる第3の判断基準の計3種類の判断基準の中から選択した、水中物体の捜索運用に適合した一又は二以上の判断基準を入力するための最適判断基準入力部と、予察部から入力された各基本送信モード毎の計算結果を、最適判断基準入力部から入力された判断基準に基づいて、最適であるかの比較及び評価を行い、得られた最適である基本送信モードを操作者に推奨する最適送信モード評価部として機能させることを特徴とする。
【0026】
この発明では、海洋内に音波を送信するに際し設定する送信モードを、コンピュータにより、予め用意した複数の基本送信モードのそれぞれについて、諸元データ及び環境データに基づいて、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、その計算により得られた各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を、入力された判断基準又は優先順位に基づいて比較及び評価を行うようにしたため、複数の基本送信モードの中から最適である基本送信モードを操作者に推奨することができる。
【0029】
また、上記のプログラムにおいて、予察部は、音波の屈折、海面・海底での反射を考慮した音波が伝搬する際に失うエネルギー損失を計算する音波伝搬計算、海洋内に送信された音波が伝搬し、水中物体に当たり、反響音として戻ってくる音波の強さであるエコーレベルを計算するエコーレベル計算、海洋内の浮遊物や気泡、及び海面、海底の境界面からの散乱によって戻ってくる音波によって構成される残響レベル、及び波浪、航行する船舶等の雑音による雑音レベルを計算する残響・雑音計算、これらの計算情報を基に水中物体を探知可能か否か判定するエクセス判定計算を、各基本送信モード毎に行って、水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力する機能である。ここで、本発明のプログラムは、コンピュータを予察部の機能として、残響・雑音計算を省略し、観測された残響・雑音データを代用して計算を行わせることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になる水中物体の捜索運用方式の一実施の形態のブロック図を示す。同図中、図10と同一構成部分には同一符号を付してある。本実施の形態の水中物体の捜索運用方式は、海洋内に音波を放射し、水中物体からの反響音を受信することによって、海洋内に潜在する水中物体を捜索する運用方式において、基本送信モード入力部16と最適判断基準入力部18とを付加することにより、操作者を支援するリコメンド機能を保有することを特徴とする。
【0031】
図1に示す本実施の形態の水中物体の捜索運用方式は、諸元データ入力部12と、環境データ入力部13と、基本送信モード入力部16と、予察部17と、最適判断基準入力部18と、最適送信モード評価部19とから構成される。諸元データ入力部12は、後述の予察部17で計算する際に必要となる送信器及び受波器の位置、深度、性能等のセンサ情報等の諸元データをデフォルトとして格納しているデータベースを備えている。なお、必要があれば操作者によって入力することも可能である。また、その設定された諸元データを予察部17へ出力する機能を有する。
【0032】
環境データ入力部13は、送信地点の海域における海面状況、水深、海底状況及び統計BT(BARHY-THERMOGRAPHY)プロファイル、また観測BTプロファイル等の環境データが格納されたデータベースを備えると共に、自動若しくは操作者により手動で環境データ等を入力する機能と予察部17へそれら環境データを出力する機能を有する。
【0033】
ここで、BTプロファイルとは、図2(A)に示すように、水深に対する水温の関係を示す特性データで、このデータに基づき計算式により同図(B)に示すような水深に対する音速の関係のデータが導かれ、このデータに基づき音速の違いによる音波の屈折を予想することが可能になる。よって、海洋内音波伝搬状況を把握するには、BTプロファイルが必要である。
【0034】
また、統計BTプロファイルとは、同地点及び同季節のBTプロファイルを統計した平均的なBTプロファイルであり、その地点及び季節におけるBTプロファイルの特徴が色濃く出ているものである。
【0035】
基本送信モード入力部16は、海洋内に送信する基本となる送信音波の波形、周波数、帯域幅、パルス幅等の諸設定の組合せである複数N個の基本送信モードをデフォルトとするデータベースを備えている。なお、必要があれば、操作者によって基本送信モードを入力することも可能である。また、その設定された基本送信モードを予察部17へ出力する機能を有する。
【0036】
ここで、上記のN個の基本送信モードは、送信地点の海域及び捜索方法の少なくとも一方に応じて予めグループ化された多数の送信モードの中から、海域又は捜索方法に応じて、一つのグループの複数の送信モードを基本送信モードとして選択して入力するようにしてもよい。この場合は、送信地点の海域及び捜索方法によっては明らかに不適切である送信モードを予め除去できると共に、適切と思われる多くの送信モードを設定入力できる。
【0037】
また、基本送信モードの例としては、送信音波の波形がPCW(Pulse Continuous Wave)で同じであっても、周波数、帯域幅及び送信パルス幅のいずれか一つ又は全部が異なる組合せの複数の送信モードが考えられ、またこれらに加えて、全方位送信か前方のみの送信かとの組合せや、更に送信音波の波形がLFM(Linear Frequency Wave)かPCWかを組み合わせた送信モードが考えられる。
【0038】
予察部17は、基本送信モード入力部16、諸元データ入力部12及び環境データ入力部13からの各種パラメータやデータを入力として受け、これらを基に海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、各送信モードにおける水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率等の計算結果を最適送信モード評価部19へ出力する機能を有する。
【0039】
最新判断基準入力部18は、最適送信モード評価部19において最適であると評価する基準として、予め操作者により水中物体の捜索運用に適合した判断基準又は優先順位を入力する機能を有する。
【0040】
最適送信モード評価部19は、予察部17から出力された計算結果を基に、最適判断基準入力部18によって選択された評価基準により最適であるかの比較及び評価を行って得た最適である送信モードを、操作者が送信開始、水中物体の探知及び送信終了の操作を行う操作パネル(コンソール)に表示出力することにより、操作者に最適送信モードを推奨する。
【0041】
なお、以上の構成は、ソフトウェアプログラムにより一般市販のコンピュータを用いて実現するようにしてもよく、また専用ハードウェア(DSP等)を使用して計算高速化を図るようにしてもよい。
【0042】
次に、図1に示した本実施の形態の動作について、図3のフローチャートを併せ参照して説明する。本実施の形態は、実際に音波を送受信して水中物体を探索する前に、どの送信モードが最適かを決定するための運用方式であり、まず、基本送信モード入力部16により、水中物体の捜索運用において基本となる送信モードを、基本送信モード入力部16に予めデフォルトとして設定されている複数の基本送信モードを順次選択して、更には操作者が手動により操作した基本送信モードを、予察部17へ順次入力する(ステップ101)。
【0043】
続いて、最適であると評価する判断基準又は優先順位を、最適判断基準入力部18から入力する(ステップ102)。ここで、入力する判断基準又は優先順位としては、水中物体の探知距離を最大とする第1の判断基準、前記水中物体の探知面積を最大とする第2の判断基準及び前記水中物体の探知確率が最大となる第3の判断基準の計3種類の判断基準の中から選択した一又は二以上の判断基準である。
【0044】
次に、諸元データ入力部12に予めデフォルトとして設定されている、送信器及び受波器の位置、深度、性能等のセンサ情報等の諸設定値である諸元データを諸元データ入力部12から予察部17へ入力すると共に、環境データ入力部13により、送信地点の海域における海面状況、水深、海底状況及び統計BTプロファイル、また観測BTプロファイル等の環境データを自動又は操作者の手動により予察部17へ入力する(ステップ103)。なお、必要であれば、諸元データは操作者が諸元データ入力部12を手動により操作して、予察部17へ入力してもよい。
【0045】
続いて、予察部17は、これらの入力された基本送信モード、諸元データ及び環境データを基に、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を基本送信モード毎に行い、計算結果を最適送信モード評価部19へ出力する(ステップ104)。
【0046】
ここで、予察部17による計算処理内容を具体的に説明する。予察部17では、音波の屈折、海面・海底での反射を考慮した音波が伝搬する際に失うエネルギー損失を計算する音波伝搬計算、海洋内に送信された音波が伝搬し、水中物体に当たり、反響音として戻ってくる音波の強さであるエコーレベルを計算するエコーレベル計算、海洋内の浮遊物や気泡、及び海面、海底の境界面からの散乱によって戻ってくる音波によって構成される残響レベル、及び波浪、航行する船舶等の雑音による雑音レベルを計算する残響・雑音計算、これらの計算情報を基に水中物体を探知可能か否か判定するエクセス判定計算を行うことによって、水中物体の探知距離、探知面積、探知確率の出力を可能とする。ここで、予察部17では、計算処理内容の一つである残響・雑音計算を省略し、観測された残響・雑音データを代用することも可能である。
【0047】
また、例として、水中物体の探知距離の算出方法を図4の特性図に基づいて説明する。図4は横軸が距離、縦軸がレベルを示す。まず、エコーレベルIと残響レベルIIをレベル比較し、エコーレベルIが残響レベルIIより大である場合に、水中物体が探知可能な状態であり、このレベル大小関係を満足するときの距離が求めたい探知距離IIIである。反対に、残響レベルIIがエコーレベルIよりも大レベルであるときは、水中物体は探知不可能な状態となる。ただし、残響レベルIIは、距離が十分長い場合、雑音レベルIVと等しくなる。
【0048】
再び図1及び図3に戻って説明する。次に、最適送信モード評価部19は、予察部17による計算結果を、最適判断基準入力部18から入力された最適判断基準を基にして評価し、最適である送信モードを自動的に選定する(ステップ105)。そして、最適送信モード評価部19によって選定された最適である送信モードを、操作者にリコメンド機能として推奨する(ステップ106)。このリコメンド機能の推奨は、操作者が送信開始、水中物体の探知及び送信終了の操作を行う操作パネル(コンソール)に、最適である送信モードを表示することで行う。
【0049】
この推奨方法としては、例えば、最適判断基準入力部18により選択された評価判断基準又は優先順位において、最適な送信モードであると判断された送信モードを文字情報として操作パネルに表示する。
【0050】
他の推奨方法としては、最適判断基準入力部18により選択された評価判断基準として水中物体の探知距離を選択した場合は、例えば図5(A)に示すように、N個の送信モードのうち最適な送信モードの探知距離を、探知可を領域21で探知不可を領域22で示すバー表示で操作パネルに示す。また、水中物体の探知面積を最適判断基準として選択した場合は、図5(B)に示すように、N個の送信モードのうち最適な送信モードの探知面積を、探知不可を示す矩形の領域23内に探知可領域24を異なる色などで示す探知面積の面積表示などで操作パネルに比較表示する。なお、図5(B)の中心点25は送受信地点を示す。
【0051】
更に、水中物体の探知確率を最適判断基準として選択した場合は、N個の送信モードのうち最適な送信モードの探知確率を、図6(A)、(B)に示すように、コンターマップ表示で操作パネルに比較表示する。ここで、図6(A)は水平断面図、同図(B)は垂直断面図を示し、探知不可領域27と探知可領域28とは互いに明らかに異なる色で表示し、探知可領域28内においては探知確率を異なる濃度で表示することにより探知確率を区別させる。探知確率は大きいほど探知し易いことを示す。なお、送受信地点は黒丸29で示されている。
【0052】
更に他の推奨方法としては、最適判断基準入力部18により選択された評価判断基準又は優先順位によらず、各送信モードに対する探知距離、各送信モードに対する探知面積、各送信モードに対する探知確率の計3種類において効果的な図として操作パネルに比較表示してもよい。この場合、各送信モードに対する探知距離を効果的に示す図としては、例えば図7に示すように、N個の送信モードのそれぞれについて異なる色又は濃度により、探知可の距離31と探知不可の距離32を示すバーグラフを一覧表示するようにしてもよい。ここで、図7中、左端が送受信地点であり、右へ行くほど距離が長くなる。
【0053】
また、各送信モードに対する探知面積を効果的に示す図としては、図8(A)に示すようなマルチウィンドウ表示図、又は同図(B)に示すようなテキスト表示図がある。図8(A)に示すマルチウィンドウ表示では、探知不可を示す矩形領域34内に送受信地点36を中心とする探知可領域35を示す探知面積に応じた大きさで示す図を、N個の送信モードのそれぞれについてN枚用意してそれを切り替え表示できるようにしたものである。また、図8(B)に示すテキスト表示は、N個の送信モードのそれぞれに対応して、その送信モードにおける探知可の面積を数字で一覧表示したものである。
【0054】
更に、各送信モードに対する探知確率を効果的に示す図としては、N個の送信モードのそれぞれに対応して、その送信モードにおける探知確率の水平断面図を図9(A)に、探知確率の垂直断面図を同図(B)に示すように、探知不可領域38と探知可領域39とは互いに明らかに異なる色で表示し、探知可領域39内においては探知確率を異なる濃度で表示するコンターマップ表示すると共に、マルチウィンドウにより表示する。
【0055】
これにより、例えば、N個の基本送信モードとある場合で、最適判断基準入力部18によって最適判断基準が探知距離が最大であるとした場合、図7に示した表示では、送信モードNが探知距離最大であるため、これを最適送信モードとして推奨する。また、最適判断基準入力部18によって最適判断基準が探知面積が最大であるとした場合、図8(B)に示した表示では、送信モードNが探知面積最大であるため、これを最適送信モードとして推奨する。また、最適判断基準入力部18によって最適判断基準が探知確率とした場合、図9に示した表示から、例えば水中物体の存在し得る水深0〜200m程度の範囲での探知確率が比較的大きな範囲で広がっている場合の送信モードを最適送信モードとして推奨する。
【0056】
以上の動作により、本実施の形態によれば、海洋環境条件に適合した最適な送信モードを自動的に操作者に推奨することができ、この結果、操作者の経験等によらず、最も効率的である水中物体を捜索可能な状態を操作者に容易に選択させることができ、また、海洋環境条件下による操作者の判断ミスを誘発することを防止できる。
【0057】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、例えば、操作者が操作する操作パネルへの表示は、図5〜図9に示す例に限定されるものではない。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、海洋内に音波を送信するに際し、設定する送信モードを、予め用意した複数の基本送信モードのそれぞれについて、諸元データ及び環境データに基づいて、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、その計算により得られた各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を、入力された判断基準又は優先順位に基づいて比較及び評価を行うことにより、複数の基本送信モードの中から最適である基本送信モードを操作者に推奨するようにしたため、送信モードの諸設定値である音波の波形、周波数、帯域幅、パルス幅等を最適な値に設定でき、この結果、操作者の負担を軽減し、操作者の経験等によらず、容易に短時間で最適な送信モードの設定が誰にでもできる。
【0059】
また、本発明によれば、海洋環境条件による操作者の判断ミスを誘発することによって生じる水中物体の捜索運用の低下を防ぎ、効率的な捜索運用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のブロック図である。
【図2】BTプロファイル等の説明図である。
【図3】図1の実施の形態の動作説明用フローチャートである。
【図4】図1の予察部での動作説明用特性図である。
【図5】最適送信モードの探知距離及び探知面積の表示の一例を示す図である。
【図6】最適送信モードの探知確率の表示の一例を示す図である。
【図7】複数の送信モードの探知距離の表示の一例を示す図である。
【図8】複数の送信モードの探知面積の表示の各例を示す図である。
【図9】複数の送信モードの探知確率の表示の一例を示す図である。
【図10】従来の一例のブロック図である。
【符号の説明】
12 諸元データ入力部
13 環境データ入力部
16 基本送信モード入力部
17 予察部
18 最適判断基準入力部
19 最適送信モード評価部
21、24、35、39 探知可領域
22、23、34、38 探知不可領域
I エコーレベル
II 残響レベル
III 探知距離
IV 雑音レベル

Claims (10)

  1. 海洋内に音波を放射し、前記音波による水中物体からの反射音を受信することによって、海洋内に潜在する水中物体を捜索するために使用する前記音波の送信モードを決定する水中物体の捜索運用方式において、
    海洋内に送信する送信音波の波形、周波数、帯域幅、パルス幅等の諸設定の組合せである複数の送信モードが、予め基本送信モードとしてデフォルトで設定されている基本送信モード入力部と、
    前記音波の送信器及び前記反射音の受波器の位置、深度、性能等のセンサ情報等の諸設定値である諸元データを入力するための諸元データ入力部と、
    送信地点の海域における海面状況、水深、海底状況の各データを少なくとも含む環境データを入力するための環境データ入力部と、
    前記基本送信モード入力部から入力される前記複数の基本送信モードのそれぞれについて、前記諸元データ入力部から入力された前記諸元データと、前記環境データ入力部から入力された前記環境データとに基づいて、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、その計算により得られた各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力する予察部と、
    前記水中物体の探知距離を最大とする第1の判断基準、前記水中物体の探知面積を最大とする第2の判断基準及び前記水中物体の探知確率が最大となる第3の判断基準の計3種類の判断基準の中から選択した、前記水中物体の捜索運用に適合した一又は二以上の判断基準を入力するための最適判断基準入力部と、
    前記予察部から入力された各基本送信モード毎の前記計算結果を、前記最適判断基準入力部から入力された前記判断基準に基づいて、最適であるかの比較及び評価を行い、得られた最適である基本送信モードを操作者に推奨する最適送信モード評価部と
    を有することを特徴とする水中物体の捜索運用方式。
  2. 前記最適送信モード評価部は、前記予察部から入力された各基本送信モード毎の前記水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率が、前記判断基準に基づき最適であるか否かの比較及び評価を自動で行うことを特徴とする請求項1記載の水中物体の捜索運用方式。
  3. 前記予察部は、音波の屈折、海面・海底での反射を考慮した音波が伝搬する際に失うエネルギー損失を計算する音波伝搬計算、海洋内に送信された音波が伝搬し、水中物体に当たり、反響音として戻ってくる音波の強さであるエコーレベルを計算するエコーレベル計算、海洋内の浮遊物や気泡、及び海面、海底の境界面からの散乱によって戻ってくる音波によって構成される残響レベル、及び波浪、航行する船舶等の雑音による雑音レベルを計算する残響・雑音計算、これらの計算情報を基に水中物体を探知可能か否か判定するエクセス判定計算を、前記各基本送信モード毎に行って、前記水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力することを特徴とする請求項1記載の水中物体の捜索運用方式。
  4. 前記予察部は、前記残響・雑音計算を省略し、観測された残響・雑音データを代用して前記計算を行うことを特徴とする請求項3記載の水中物体の捜索運用方式。
  5. 前記基本送信モード入力部は、送信地点の海域及び捜索方法の少なくとも一方に応じて予めグループ化された多数の送信モードの中から、前記海域又は前記捜索方法に応じて、一つのグループの前記複数の送信モードを、前記基本送信モードとして選択して入力することを特徴とする請求項1記載の水中物体の捜索運用方式。
  6. 前記環境データ入力部は、前記環境データとして統計BTプロファイル及び観測BTプロファイルを含むことを特徴とする請求項1記載の水中物体の捜索運用方式。
  7. 海洋内に音波を放射し、前記音波による水中物体からの反射音を受信することによって、海洋内に潜在する水中物体を捜索するために最適な音波の送信モードを、コンピュータにより決定させる水中物体の捜索用プログラムであって、
    前記コンピュータを、
    海洋内に送信する送信音波の波形、周波数、帯域幅、パルス幅等の諸設定の組合せである複数の基本送信モードのそれぞれについて、前記音波の送信器及び前記反射音の受波器の位置、深度、性能等のセンサ情報等の諸設定値である諸元データと、送信地点の海域における海面状況、水深、海底状況の各データを少なくとも含む環境データとに基づいて、海洋内音波伝搬及び水中物体の探知状況の計算を行い、その計算により得られた各基本送信モード毎の水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力する予察部と、
    前記水中物体の探知距離を最大とする第1の判断基準、前記水中物体の探知面積を最大とする第2の判断基準及び前記水中物体の探知確率が最大となる第3の判断基準の計3種類の判断基準の中から選択した、前記水中物体の捜索運用に適合した一又は二以上の判断基準を入力するための最適判断基準入力部と、
    前記予察部から入力された各基本送信モード毎の前記計算結果を、前記最適判断基準入力部から入力された前記判断基準に基づいて、最適であるかの比較及び評価を行い、得られた最適である基本送信モードを操作者に推奨する最適送信モード評価部と
    して機能させることを特徴とする水中物体の捜索用プログラム。
  8. 前記最適送信モード評価部は、前記予察部から入力された各基本送信モード毎の前記水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率が、前記判断基準に基づき最適であるか否かの比較及び評価を自動で行うことを特徴とする請求項7記載の水中物体の捜索用プログラム。
  9. 前記予察部は、音波の屈折、海面・海底での反射を考慮した音波が伝搬する際に失うエネルギー損失を計算する音波伝搬計算、海洋内に送信された音波が伝搬し、水中物体に当たり、反響音として戻ってくる音波の強さであるエコーレベルを計算するエコーレベル計算、海洋内の浮遊物や気泡、及び海面、海底の境界面からの散乱によって戻ってくる音波によって構成される残響レベル、及び波浪、航行する船舶等の雑音による雑音レベルを計算する残響・雑音計算、これらの計算情報を基に水中物体を探知可能か否か判定するエクセス判定計算を、前記各基本送信モード毎に行って、前記水中物体の探知距離又は探知面積又は探知確率の計算結果を出力することを特徴とする請求項7記載の水中物体の捜索用プログラム。
  10. 前記予察部は、前記残響・雑音計算を省略し、観測された残響・雑音データを代用して前記計算を行うことを特徴とする請求項9記載の水中物体の捜索用プログラム。
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