JP4140093B2 - エンジンの燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒エンジンの各気筒毎に設けた燃料噴射弁の作動制御を行う燃料噴射制御装置に関し、特にその燃料噴射時期の制御の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のエンジンの燃料噴射制御装置として、例えば特開平6−264776号公報に開示されるように、ディーゼルエンジンにおいて燃料噴射ポンプから噴射ノズル(燃料噴射弁)への燃料供給のタイミングをエンジン回転数等に応じて機械的に制御することにより、各気筒毎の燃料噴射時期を一律に変更するようにしたものは既に知られている。
【0003】
前記従来のものでは、多気筒ディーゼルエンジンの各気筒毎に噴射ノズルが配設されており、その各噴射ノズルが燃料噴射ポンプからの高圧燃料の供給を受けて開かれ、各気筒内の燃焼室にそれぞれ燃料を噴射するようになっている。また、前記燃料噴射ポンプには、エンジン回転数が高いほど燃料の供給時期を進角させる機械式のオートマチックタイマと、エンジンの負荷状態に応じて燃料供給時期を遅角側に補正するロードセンシングタイマとが設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、社会環境保護の観点からエンジンの排ガス清浄化や騒音低減といった低公害化のニーズが高まっており、特にディーゼルエンジンにおいては、HCやCOに比べて排出量の多いNOxを抑えることや特有のスモークを低減させることが強く求められている。そして、そのような観点から燃料噴射の時期について考察すると、一般に、燃料噴射時期を進めれば、燃料噴霧の気化霧化や空気とのミキシング状態が改善され、スモークを減らすことができるが、その反面、着火直後の予混合燃焼が激しくなり、図6に一点鎖線で示すように燃焼圧力や燃焼温度が急峻に立ち上がってトルク変動が大きくなるとともに、燃焼温度の上昇によりNOx生成量が増大する難がある。
【0005】
一方、燃料噴射時期を遅らせれば、同図に二点鎖線で示すように着火直後の燃焼圧力や燃焼温度の立ち上がりは緩やかになり、NOxの生成を抑えることができるものの、今度は燃焼が緩慢になって長引くことから、スモークの増大を招くことになる。
【0006】
加えて、前記のように燃料噴射時期の進角によって混合気の着火直後に燃焼圧力が急激に高まるような燃焼状態では、その燃焼圧の上昇に伴い耳障りな燃焼音が大きくなるので、特にアイドル運転時の騒音低減という点で好ましくない。
【0007】
このように、ディーゼルエンジンにおいては、燃料を早すぎも遅すぎもしない適切な時期に噴射して、初期の予混合燃焼及びその後の拡散燃焼における混合気の燃焼状態を最適化することが、排ガス清浄化や騒音低減といった観点から極めて重要である。
【0008】
しかしながら、前記従来例のような燃料噴射制御装置では、燃料噴射ポンプからの燃料の供給タイミングを制御することにより、各気筒毎の燃料噴射時期を一律に変更するようにしても、高圧で燃料噴射を行わなければならない個々の噴射ノズルの噴射特性にばらつきがあるので、結局、燃料噴射時期は各気筒毎にそれぞれ異なるものとなり、上述の如き適切な時期に均一に揃えることはできなかった。また、各気筒毎に製作誤差に起因して筒内圧力や筒内温度の上昇度合がばらつくので、仮に燃料噴射時期を均一に揃えることができたとしても、燃焼噴霧の着火時期は各気筒毎に異なり、燃焼状態に差が生じるので、前記の排ガス清浄化や騒音低減といった課題を十分には満足できないのが実状である。
【0009】
さらに、排ガスの一部を吸気系に還流させることで、予混合燃焼時の燃焼温度を低下させてNOxの生成を抑えるわゆるEGR装置を備えたエンジンの場合、各気筒への排ガスの還流量が均一にならないため、そのことによっても各気筒毎の燃焼状態に差を生じてしまう。
【0010】
そして、そのような種々の要因によって各気筒間に燃焼較差が生じる結果、前記の排ガス清浄化や騒音低減を十分に図れないばかりか、エンジンがアイドル運転状態等の低回転域にあるときに回転変動が大きくなって、運転者が不快な振動を感じる虞れもある。
【0011】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各気筒毎に燃料噴射弁が設けられている多気筒ディーゼルエンジンにおいて、アイドル運転時の各気筒毎の燃料噴射時期の制御に工夫を凝らして、排ガス中の有害成分の一層の低減を図るとともに、騒音を低減しかつエンジンの燃焼安定性を高めることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成すべく、本発明の解決手段では、多気筒ディーゼルエンジンの各気筒毎にその気筒内燃焼室における燃焼状態を検出するとともに、その検出結果に応じて各気筒毎に燃料噴射時期を補正するようにした。
【0013】
すなわち、本発明では、図1に示すように、多気筒ディーゼルエンジン1の各気筒毎に燃料噴射弁5が設けられ、エンジン1の運転状態に応じて前記燃料噴射弁5による燃料の噴射時期を気筒毎に制御するようにしたエンジンの燃料噴射制御装置Aを前提とする。そして、エンジンがアイドル運転状態になっているときに、少なくとも2つの気筒2についてそれぞれ燃焼状態に対応する燃焼状態量を検出する燃焼状態検出手段35bと、該燃焼状態検出手段35bにより検出される前記各検出気筒毎の燃焼状態量が略同じになるように、該各検出気筒2の燃料噴射時期を補正する噴射時期補正手段35cとを設ける構成とする。
【0014】
燃焼状態検出手段35bについては、各気筒毎に圧縮行程終期に燃料が噴射された後、燃焼初期に相当するクランク角区間を経過するまでの第1所要時間と、その後、燃焼後期に相当するクランク角区間を経過するまでの第2所要時間と、をそれぞれ検出し、その第1所要時間の第2所要時間に対する比率を燃焼状態量として検出するように構成する。
【0015】
そして、前記の構成により、エンジン1の運転中に少なくとも2つの気筒2についてそれぞれ燃焼状態検出手段35bにより燃焼状態量が検出され、その燃焼状態量に基づいて、噴射時期補正手段35cにより前記各検出気筒2の燃料噴射時期が補正される。このことで、多気筒エンジン1の複数の気筒のうちの少なくとも2つの気筒について、その気筒の燃焼状態を均一にかつ適切な状態に揃えることができる。
【0016】
その際、燃料噴射時期の補正が各検出気筒2の実際の燃焼状態に基づいてなされるので、燃料噴射弁5の個体差に起因する噴射ばらつきや筒内温度のばらつき、或いは各気筒毎の吸入空気量や排ガス還流量のばらつき等があっても、それらに拘わらず前記各気筒2の燃焼状態を均一に揃えることができる。よって、該各検出気筒2における燃焼状態を改善して、排ガスの清浄化及び騒音低減を図ることができ、しかも、気筒間の燃焼状態の差を低減させて、エンジン1のアイドル安定性を高めることができる。
【0017】
上記燃焼状態量としての第1所要時間の第2所要時間に対する比率について説明する。一般に多気筒エンジンでは、膨張行程にある気筒で燃焼圧がトルクとして取り出される一方、そのときに圧縮行程にある他の気筒では吸気を圧縮するためにトルクが消費されるので、各気筒毎にクランク軸の回転変動状態に基づいて燃焼状態を検出するためには、当該気筒の影響が最も強くて、しかも他の気筒の影響が弱いクランク角区間で回転変動状態を検出することが望ましい。
【0018】
そこで、この発明では、各気筒毎に圧縮行程終期に燃料が噴射された後、燃焼初期に相当するクランク角区間を経過するまでの第1所要時間、即ち当該気筒の燃焼初期におけるクランク軸の平均の回転角速度を検出するようにした。このため、他の気筒の影響を排除しつつ各気筒毎の燃焼状態を正確に検出することができる。
【0019】
また、各気筒毎の燃焼初期の燃焼状態を反映する第1所要時間に加えて、その後の燃焼状態を反映する第2所要時間を検出するので、その検出結果に基づいて、各気筒毎の燃焼状態を極めて正確に検出できる。
【0020】
すなわち、第1所要時間の第2所要時間に対する比率を燃焼状態量として検出するので、燃焼状態量が具体化され、燃焼初期のクランク軸の回転角速度と燃焼後期の回転角速度との比率に基づいて、燃焼初期の混合気の燃焼割合と燃焼後期の燃焼割合との燃焼比率、つまり、混合気の燃焼圧波形の特徴を表す値を容易に検出することができる。
【0021】
そうして、第1所要時間の第2所要時間に対する比率に基いて各検出気筒2の燃料噴射時期を補正するので、各気筒の初期の予混合燃焼における燃焼圧の立ち上がりやその後の拡散燃焼における燃焼速度等を、NOx及びスモークの生成を抑える上で最適な状態にすることができ、その結果、排ガス中のNOxやスモーク等の有害成分を極めて少なくすることができ、かつエンジンの運転騒音を十分に低減することができる。
【0022】
特にディーゼルエンジンでは、燃焼室に噴射された燃料噴霧の自己着火により燃焼が開始するので、その燃料噴射時期の変更による燃焼状態の変化が極めて大きい。従って、本発明では、上述の如き各気筒毎の燃料噴射時期の制御により燃焼状態を改善するという作用効果が極めて大きくなる。
【0023】
上記燃焼初期に相当するクランク角区間と燃焼後期に相当するクランク角区間とは、互いに同じ大きさの角度範囲とすることができる。
【0024】
噴射時期補正手段は、エンジンがアイドル運転状態になっていて、且つエンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが所定以上に大きいときには、燃料噴射時期の補正を行わないように構成することが好ましい。エンジン回転数の目標回転数からのズレが大きいときには、そのズレに対応する噴射時期補正量が過度に大きくなってしまい、燃料噴射時期の制御が不安定化する虞れがあるからである。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態に係るエンジンの燃料噴射制御装置Aの全体構成を示し、1は車両に搭載された多気筒ディーゼルエンジンである。このエンジン1は第1〜第4の4つの気筒2,2,…(1つのみ図示する)が直列に並ぶ直列4気筒エンジンであり、その各気筒2内に往復動可能にピストン3が嵌挿されていて、このピストン3によって各気筒2内に燃焼室4が区画されている。また、各燃焼室4の上面の略中央部には、インジェクタ(燃料噴射弁)5が先端部の噴孔を燃焼室4に臨ませて配設されており、例えば、第1気筒、第3気筒、第4気筒、第2気筒の順番にそれぞれ所定の噴射タイミングで開作動されて、燃焼室4に燃料を直接噴射するようになっている。
【0026】
前記各インジェクタ5は高圧の燃料を蓄える共通のコモンレール(蓄圧室)6に接続されていて、そのコモンレール6には、内部の燃圧(コモンレール圧)を検出する圧力センサ6aが配設されているとともに、クランク軸7により駆動される高圧供給ポンプ8が接続されている。この高圧供給ポンプ8は、圧力センサ6aにより検出されるコモンレール6内の燃圧が所定値以上(例えば、アイドル運転時に40MPa、それ以外の運転状態では80MPa以上)に保持されるように作動する。また、クランク軸7の回転角度を検出するクランク角センサ9が設けられている。このクランク角センサ9は例えば電磁ピックアップからなり、図示しないが、クランク軸7の端部に設けられた被検出用プレートの外周に相対向するように配置されていて、その被検出用プレートの外周部全周に亘って所定角度(例えば10°)おきに形成された突起部の通過に対応して、パルス信号を出力するようになっている。
【0027】
また、10はエンジン1の燃焼室4に対し図外のエアクリーナで濾過した吸気(空気)を供給する吸気通路であり、この吸気通路10の下流端部は、図示しないがサージタンクを介して気筒毎に分岐して、それぞれ吸気ポートにより各気筒2の燃焼室4に接続されている。また、そのサージタンク内の過給圧力を検出する過給圧センサ10aが設けられている。前記吸気通路10には上流側から下流側に向かって順に、エンジン1に吸入される吸気流量を検出するホットフィルム式エアフローセンサ11と、後述のタービン21により駆動されて吸気を圧縮するブロワ12と、このブロワ12により圧縮した吸気を冷却するインタークーラ13と、吸気通路10の断面積を絞る吸気絞り弁14とがそれぞれ設けられている。この吸気絞り弁14は、全閉状態でも吸気が流通可能なように切り欠きが設けられたバタフライバルブからなり、後述のEGR弁24と同様、ダイヤフラム15の負圧が負圧制御用の電磁弁16により調節されることで、弁の開度が制御されるようになっている。
【0028】
また、20は各気筒2の燃焼室4から排ガスを排出する排気通路で、この排気通路20の上流端部は分岐してそれぞれ図示しない排気ポートにより各気筒2の燃焼室4に接続されている。この排気通路20には、上流側から下流側に向かって順に、排ガス流により回転されるタービン21と、排ガス中のHC、CO及びNOx並びにパティキュレートを浄化可能な触媒コンバータ22とが配設されている。前記タービン21及びブロワ12からなるターボ過給機25は、図示しないが、タービン21を収容するタービン室に設けられた複数のフラップが、排気流路のノズル断面積を変化させるように回動するVGT(バリアブルジオメトリーターボ)であり、そのフラップを回動させてノズル断面積を小さくさせることで、排気流量の少ないエンジン1の低回転域でも過給効率を高めることができるようになっている。
【0029】
前記排気通路20は、タービン21よりも上流側の部位で、排ガスの一部を吸気側に還流させる排気還流通路(以下EGR通路という)23の上流端に分岐接続されている。このEGR通路23の下流端は吸気絞り弁14よりも下流側の吸気通路10に接続されており、そのEGR通路23の途中の下流端寄りには、開度調節可能な負圧作動式の排気還流量調節弁(以下EGR弁という)24が配置されていて、排気通路20の排ガスの一部を前記EGR弁24により流量調節しながら吸気通路10に還流させるようになっている。
【0030】
前記EGR弁24は、図示しない弁本体がスプリングによって閉方向に付勢されている一方、ダイヤフラム24aにより開方向に作動されて、EGR通路23の開度をリニアに調節するものである。すなわち、前記ダイヤフラム24aには負圧通路27が接続され、この負圧通路27が負圧制御用の電磁弁28を介してバキュームポンプ(負圧源)29に接続されていて、その電磁弁28が後述のECU35からの制御信号によって負圧通路27を連通・遮断することにより、EGR弁駆動負圧が調節されて、EGR弁24が開閉作動されるようになっている。また、EGR弁24の弁本体の位置を検出するリフトセンサ26が設けられている。
【0031】
尚、前記ターボ過給機25のフラップにもEGR弁24と同様にダイヤフラム30が取り付けられており、負圧制御用の電磁弁31によりダイヤフラム30に作用する負圧が調節されて、前記フラップが回動されるようになっている。
【0032】
前記各インジェクタ5、高圧供給ポンプ8、吸気絞り弁14、EGR弁24、ターボ過給機25のフラップ等はコントロールユニット(Engine Contorol Unit:以下ECUという)35からの制御信号によって作動するように構成されている。一方、このECU35には、前記圧力センサ6aからの出力信号と、クランク角センサ9からの出力信号と、エアフローセンサ11からの出力信号と、車両の運転者による図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ32からの出力信号とが少なくとも入力されている。
【0033】
そして、インジェクタ5の作動による燃料噴射制御が行われて、燃料噴射量及び燃料噴射時期がエンジン1の運転状態に応じて制御されるとともに、高圧供給ポンプ8の作動によるコモンレール圧力、即ち燃量噴射圧の制御が行われる。また、吸気絞り弁14の作動による吸入空気量の制御と、EGR弁24の作動による排ガス還流量の制御と、ターボ過給機25のフラップの作動制御とが行われるようになっている。
【0034】
具体的に、前記ECU35には、アクセル開度及びエンジン回転数の変化に応じて実験的に決定した最適な燃料噴射量Qを記録した燃料噴射量マップが、メモリ上に電子的に格納して備えられている。そして、通常は、エンジン1の運転状態、即ちアクセル開度センサ32からの出力信号とクランク角センサ9からの出力信号に基づいて求めたエンジン回転数とに基づいて、燃料噴射制御部35aにおいて、各気筒毎に前記燃料噴射量マップから基本燃料噴射量Qbaseが読み込まれ、この基本燃料噴射量Qbaseと圧力センサ6aにより検出されたコモンレール圧力とに基づいて、各インジェクタ5の励磁時間(開弁時間)が決定されるようになっている。
【0035】
また、エンジン1がアイドル運転状態になっているときには、前記燃料噴射制御部35aにおいて、各気筒毎の燃料噴射量Qが気筒間のトルク差が減少するように補正されるようになっている。
【0036】
さらに、本発明の特徴部分として、エンジン1の各気筒2について、それぞれクランク軸7の回転変動状態量(燃焼状態量)を検出する燃焼状態検出手段35bと、エンジン1がアイドル運転状態になっているときに、前記燃焼状態検出手段35bにより検出される前記各気筒毎の回転変動状態量が所定の設定量になるように、その各気筒2の燃料噴射時期を補正する噴射時期補正手段35cとが設けられており、各気筒毎に実際の回転変動状態に基づいて燃料噴射時期を補正するようにしている。
【0037】
(燃料噴射量制御)
次に、前記ECU35による燃料噴射制御の手順について、具体的に図2に示すフローチャート図に沿って説明する。尚、この制御フローはメモリ上に電子的に格納されたプログラムに従い、各気筒毎に独立して所定クランク角で実行される。
【0038】
まず、スタート後のステップS1において、クランク角信号に基づいて求められたエンジン回転数と、アクセル開度センサ32からの信号(アクセル開度)と、その他の各種センサ信号とを読み込み、続くステップS2において、前記アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて、燃料噴射量マップから基本燃料噴射量Qbaseを読み込む。続いて、ステップS3では、前記アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて、エンジン1がアイドル運転状態になっているか否かを判定する。すなわち、アクセル開度が零であって、かつエンジン回転数がアイドル目標回転数よりもやや高めに設定されているアイドル判定回転数以下であれば、アイドル運転状態になっているyesと判定してステップS4に進む一方、アクセル開度が零でないか、又はエンジン回転数が前記アイドル判定回転数よりも高いnoであれば、ステップS12に進む。
【0039】
ステップS4では、今度は、エンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが所定以上であるか否かを判定し、回転数のズレ量が予め設定されている基準ズレ量よりも小さいnoであれば、ステップS9に進む一方、ズレ量が基準ズレ量以上でyesならば、ステップS5に進む。このステップS5では、エンジン回転数がアイドル目標回転数に近づくように燃料噴射量を増量又は減量するためのアイドルスピードコントロール補正量(以下ISC補正量という)を演算して、ステップS6に進む。
【0040】
ステップS6では、基本燃料噴射量QbaseとISC補正量QISCとを足し合わせて燃料噴射量Qを演算し(Q#=0)、続くステップS7において各気筒毎に燃料噴射時期になったか否かを判定する。そして、燃料噴射時期になるまで待って(ステップS7でno)、燃料噴射時期になれば(ステップS7でyes)、ステップS8に進んで、各気筒毎にインジェクタ5により燃料を噴射して、しかる後にリターンする。
【0041】
つまり、エンジン1がアイドル運転状態になっていて、かつエンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが所定以上であるときは、各気筒毎の燃料噴射量の補正は行わずに、全気筒の燃料噴射量を一律に増量又は減量することで、エンジン回転数を速やかにアイドル目標回転数に近づけるようにしている。
【0042】
これに対し、前記ステップS4においてエンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレ量が基準ズレ量よりも小さいnoと判定されて進んだステップS9では、各気筒毎にその気筒(当該気筒)の燃焼力が最も影響するクランク角区間について、その区間をクランク軸7が回転するのに要する所要時間QTIMEを求める。この所要時間QTIMEは、例えば図3に示すように、各気筒毎にその圧縮行程終期に燃焼が開始してからクランク軸7が180度回転するまでの期間とすればよく、第1〜第4の各気筒の所要時間QTIMEはそれぞれ同図に斜線を入れて示す領域(ア)〜(エ)の面積に対応している。
【0043】
すなわち、前記所要時間QTIMEは、各気筒毎にその気筒の1回の燃焼サイクルにおいて燃焼力が最も強く反映されるクランク各区間で、クランク軸7の平均の回転角速度ωの逆数を求めるものであり、それゆえにこの所要時間QTIMEに基づいて、当該気筒の燃焼力を他の気筒の影響を排除して検出することができるのである。より具体的に、前記所要時間QTIMEが相対的に短い気筒では、その区間のクランク軸7の回転角速度ωが相対的に高いので、燃焼力が相対的に大きいと言うことができ、反対に、前記所要時間QTIMEが相対的に長い気筒では、燃焼力が相対的に小さいと言える。この各気筒毎の所要時間QTIMEは、詳しくは後述するが、各気筒毎にその燃焼サイクル毎に計測されてECU35のメモリに記憶更新されるようになっていて、前記ステップS9では、前回の燃焼サイクルで記憶更新された値を読み込むようにしている。
【0044】
前記ステップS9に続いて、ステップS10では、第1〜第4気筒の各所要時間QTIMEの平均値である全気筒平均所要時間QTAVEを更新し、続くステップS11において、各気筒毎にその気筒の所要時間QTIMEと前記全気筒平均所要時間QTAVEとのズレ量に応じて、燃料噴射量の気筒毎の補正量Q#を算出する。この補正量Q#は、図4に例示するように所要時間のズレ量QTIME−QTAVEに対応する値を実験的に決定して記録したマップがECU35のメモリ上に電子的に格納されており、当該マップから読み込まれるようになっている。このマップによれば、前記所要時間のズレ量QTIME−QTAVEの絶対値が大きいほど、そのズレを減少させる向きに補正量Q#が大きくなるように設定されている。
【0045】
そして、前記ステップS10に続いて前記ステップS6に進んで、各気筒毎に基本燃料噴射量Qbase、ISC補正量QISC、及び補正量Q#を足し合わせて燃料噴射量Qを演算し、その後。ステップS7、S8で各気筒毎に燃料噴射を実行して、しかる後にリターンする。
【0046】
つまり、エンジン1がアイドル運転状態になっていて、かつエンジン回転数がアイドル目標回転数に近ければ、各気筒毎にその気筒の燃焼力を強く反映する所要時間QTIMEを求め、その各気筒毎の所要時間QTIMEが全気筒の平均値に一致するように、各気筒毎の燃料噴射量を個別に増量又は減量補正するようにしている。このことで、各気筒間のトルク差を減少させて、エンジンのアイドル安定性を高めることができる。
【0047】
また、前記ステップS3において、エンジン1がアイドル運転状態になっていないnoと判定されて進んだステップS12では、ISC補正量QISCの値を零として(QISC=0)、前記ステップS6〜S8に進んで、燃料噴射を実行した後にリターンする。つまり、エンジンがアイドル運転状態になっていなければ、上述の燃料噴射量の補正制御は実行しない。
【0048】
前記図2に示す燃料噴射制御のフローが全体として、燃料噴射制御部35aに対応しており、特にステップS6、S9〜S11の各ステップにより、エンジン1がアイドル運転状態になっているときに、燃焼状態検出手段35bにより検出された各気筒毎の回転変動状態量(燃焼状態量)に基づいて、各気筒毎の燃料噴射量Qを気筒間のトルク差が減少するように補正する噴射量補正手段35dが構成されている。
【0049】
(燃料噴射時期の設定手順)
次に、前記ECU35による燃料噴射時期の設定の具体的な手順について、図5に示すフローチャート図に沿って説明する。尚、この制御フローもメモリ上に電子的に格納されたプログラムに従い、各気筒毎に独立して所定クランク角で実行されるものである。
【0050】
まず、スタート後のステップT1において、クランク角信号に基づいて求められたエンジン回転数と、アクセル開度センサ32からの信号(アクセル開度)と、その他の各種センサ信号とを読み込み、続くステップT2において、前記アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて、燃料噴射時期マップから基本燃料噴射時期ITbaseを算出する。この燃料噴射時期マップはECU35のメモリ上に電子的に格納されており、アクセル開度及びエンジン回転数の変化に応じて実験的に決定した最適な燃料噴射時期を記録したものである。
【0051】
続いて、ステップT3では、前記アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて、エンジン1がアイドル運転状態になっているか否かを判定する。すなわち、アクセル開度が零であって、かつエンジン回転数がアイドル目標回転数よりも高めに設定されているアイドル判定回転数以下であれば、アイドル運転状態になっているyesと判定してステップT4に進む一方、アクセル開度が零でないか、又はエンジン回転数が前記アイドル判定回転数よりも高いnoであれば、ステップT9に進む。
【0052】
ステップT4では、今度は、エンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが所定以上であるか否かを判定し、回転数のズレ量が予め設定されている基準ズレ量以上でyesあれば、ステップT9に進む一方、ズレ量が基準ズレ量よりも小さいnoならば、ステップT5に進む。このステップT5では、各気筒毎にその気筒(当該気筒)の燃焼初期に相当する第1クランク角区間について、その区間をクランク軸7が回転するのに要する第1所要時間ITTMF#を求める。
【0053】
ここで、前記第1クランク角区間は、図6に例示するように、各気筒毎に圧縮行程終期に燃料が噴射された後の所定角度(図例では90°CA)区間とすればよく、この区間の回転に要する第1所要時間ITTMF#とは、各気筒2の圧縮行程でクランク軸7の平均的な回転角速度ωが略減少状態から増加状態に変化したときから該クランク軸7が前記所定角度回転するまでの所要時間、即ち、各気筒2の燃焼初期におけるクランク軸7の回転角速度ωの逆数になる。従って、この第1所要時間ITTMF#に基づいて、当該気筒の燃焼初期の燃焼力を検出することができる。
【0054】
尚、第1所要時間ITTMF#として、クランク軸7が各気筒2の圧縮上死点近傍に対応する設定クランク角位置(例えば圧縮上死点前10°CA)から所定角度(例えば90°CA)回転するまでに要する時間としてもよい。そのようにすれば、第1所要時間ITTMF#の計測をクランク角信号のみに基づいて行うことができるので、燃焼状態検出手段35bを簡単な構成とすることができる。
【0055】
また、第1所要時間ITTMF#は、各気筒2の圧縮行程でクランク軸7の回転角速度ωが略減少状態から増加状態に変化したときから次に略減少状態に変化するまでに要する時間としてもよく、そのようにしてもこの実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0056】
前記ステップT5に続くステップT6では、今度は各気筒毎に燃焼後期に相当する第2クランク角区間について同様に第2所要時間ITTMR#を求める。すなわち、この第2クランク角区間は、各気筒毎に前記第1クランク角区間の後の所定角度(例えば90°CA:図6参照)区間とすればよく、この区間の回転に要する第2所要時間ITTMR#とは、前記第1所要時間ITTMF#の経過後にクランク軸7がさらに前記所定角度だけ回転するのに要する時間、即ち、各気筒2の燃焼後期におけるクランク軸7の平均的な回転角速度ωの逆数になる。従って、この第2所要時間ITTMR#に基づいて、当該気筒の燃焼後期の燃焼力を検出することができる。
【0057】
尚、前記第2所要時間ITTMR#として、第1所要時間ITTMF#の経過後にクランク軸7の回転角速度ωが再び略減少状態から増加状態に変化するまでの時間としてもよく、そのようにしてもこの実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0058】
また、詳しくは後述するが、前記第1及び第2所要時間ITTMF#,ITTMR#はいずれも燃料噴射制御と平行して各気筒毎に計測され、ECU35のメモリに記憶更新されるようになっていて、前記ステップT5,T6では、前回の燃焼サイクルで更新された値を読み込むようにしている。
【0059】
そして、前記ステップT6に続いて、ステップT7では、各気筒毎に前記第1所要時間ITTMF#及び第2所要時間ITTMR#に基づいて、燃料噴射時期のタイミング補正値IT#を算出する。すなわち、上述の如く第1及び第2所要時間ITTMF#,ITTMR#は各気筒毎に燃焼初期及び燃焼後期の燃焼力をそれぞれ反映するものなので、前記第1所要時間ITTMF#と第2所要時間ITTMR#との時間比率は、即ち混合気の燃焼初期及び後期における燃焼割合の比率(燃焼比率)を表しており、換言すれば燃焼圧波形の形状に対応するものである。
【0060】
詳しくは、前記図6に実線で示す目標とする燃焼圧波形に対して、それよりも燃料噴射時期が進角側にずれていると、燃料噴霧の気化霧化や空気とのミキシングが促進されて、着火直後の予混合燃焼が激しくなり、同図に一点鎖線で示すように燃焼圧力や燃焼温度が急峻に立ち上がるようになる。その結果、燃焼初期の燃焼割合が大きくなり、第1クランク角区間でのクランク軸7の回転角速度ωが高まって、第1所要期間ITTMF#が短くなる。
【0061】
反対に、同図に二点鎖線で示すように燃料噴射時期が遅角側にずれていると、着火直後の燃焼圧力や燃焼温度の立ち上がりが緩やかになり、全体として燃焼が緩慢になって燃焼後期まで燃焼圧の高い状態が続くようになる結果、燃焼後期の燃焼割合が大きくなって、第2クランク角区間でのクランク軸7の回転角速度ωが高まり、第2所要期間ITTMR#が短くなる。
【0062】
従って、まず、ディーゼルエンジンがアイドル運転状態にある場合について、排気中のNOx及びスモークを両方共に少なくさせ、かつ燃焼音も低減できる理想的な燃焼状態の燃焼圧波形を実験的に求め、第1所要期間ITTMF#の第2所要期間ITTMR#に対する時間比率の前記目標とする燃焼圧波形に対応する所定値(以下アイドル基準値という)ITDEVをECU35のメモリに設定しておく。そして、このステップT7では、ステップT5及びT6で読み込んだ第1及び第2所要時間ITTMF#,ITTMR#に基づく時間比率ITTMF#/ITTMR#と前記アイドル基準値ITDEVとの偏差を算出し、その偏差が小さくなるように燃料噴射時期を補正するタイミング補正値IT#を予め設定した噴射時期補正マップから読み込むようにしている。
【0063】
すなわち、前記噴射時期補正マップはECU35のメモリ上に電子的に格納されており、図7に例示するように、時間比率のアイドル基準値との偏差(ITTMF#/ITTMR#)−ITDEVに対応するタイミング補正値IT#が実験的に決定して記録されている。この噴射時期補正マップによれば、偏差(ITTMF#/ITTMR#)−ITDEVの絶対値が小さい間は、タイミング補正値IT#が零の不感帯とされている一方、偏差(ITTMF#/ITTMR#)−ITDEVの絶対値が大きいほど、その偏差を減少させる向きにタイミング補正値IT#が大きくなるように設定されている。
【0064】
そして、前記ステップT7に続いて、ステップT8において、各気筒毎に基本噴射時期ITbaseにタイミング補正値IT#を足し合わせて燃料噴射時期ITを算出し、この燃料噴射時期ITを各気筒毎にECU35のメモリに記憶更新して、しかる後にリターンする。
【0065】
つまり、エンジン1がアイドル運転状態になっていて、かつエンジン回転数がアイドル目標回転数に近くなっていれば、各気筒毎に燃焼初期及び後期の燃焼比率に対応する時間比率ITTMF#/ITTMR#を求め、その値がアイドル基準値ITDEVになるように各気筒毎の燃料噴射時期ITを個別に進角又は遅角補正することで、各気筒毎に燃焼初期及び後期の燃焼割合の比率を目標値に近づけるようにしている。
【0066】
一方、前記ステップT3においてエンジン1がアイドル運転状態になっていないnoと判定されたか、或いは前記ステップT4においてエンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが所定以上であるyesと判定されて進んだステップT9では、タイミング補正量IT#の値を零にして(IT#=0)、前記ステップT8に進む。つまり、アイドル運転状態以外では上述の燃料噴射時期の補正は行わない。また、アイドル運転状態になっていても、そのときのエンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが所定以上のときには、燃料噴射時期の補正は行わない。これは、エンジン回転数の目標回転数からのズレが大きいときには、そのズレに対応するタイミング補正量IT#の値が過度に大きくなってしまい、燃料噴射時期の制御が不安定化する虞れがあるからである。
【0067】
前記図5に示す燃料噴射時期の設定のフローにおいて、ステップT5及びステップT6は、エンジン1の各気筒2について、それぞれ燃焼状態に対応するクランク軸7の回転変動状態量(燃焼状態量)を検出する燃焼状態検出手段35bに対応している。また、ステップT7及びステップT8は、エンジン1がアイドル運転状態になっているときに、前記燃焼状態検出手段35bにより検出される前記各気筒毎の回転変動状態量が設定量になるように、その各気筒2の燃料噴射時期を補正する噴射時期補正手段35cに対応している。
【0068】
そして、前記燃焼状態検出手段35bは、各気筒2にインジェクタ5から噴射された燃料が着火して、クランク軸7の回転角速度ωが略減少状態から増加状態に変化したときから、該クランク軸7が所定角度回転するまでの第1所要時間ITTMF#と、その第1所要時間ITTMF#の経過後にクランク軸7がさらに所定角度回転するまでの第2所要時間ITTMR#とを検出し、その第1所要時間の第2所要時間に対する時間比率ITTMF#/ITTMR#に基づいて、各気筒2の回転変動状態(燃焼状態)を検出するようになっている。
【0069】
(所要時間の計測手順)
次に、前記燃料噴射制御における所要時間QTIME、及び燃料噴射時期の設定における第1及び第2所要時間ITTMF#,ITTMR#の計測手順について、図8に示すフローチャート図に沿って詳細に説明する。尚、このフローも各気筒毎に独立して、所定間隔(例えば数マイクロ秒間隔)で実行される。
【0070】
まず、スタート後のステップU1においてクランク角信号を入力し、続くステップU2で、各気筒毎に燃料噴射の開始時期になったか否かを判定する。この判定が噴射開始でyesであれば、ステップU3に進んで、第1クランク角区間であることを示す第1フラグF1の値を1にし(F1=1)、続くステップU4でタイマ値Tをインクリメントして、ステップU5に進む。一方、前記ステップU3で噴射開始でないnoと判定されれば、ステップU6に進んで第1フラグF1の値を判別し、F1=1でyesならば、前記ステップU4に進む一方、F1=0でnoならばリターンする。
【0071】
ステップU5では、前記ステップU2で判定した噴射開始から、クランク軸7が前記第1クランク角区間に対応する第1設定角度(例えば90°CA)だけ回転したか否かを判定する。この判定が回転していないnoであればリターンする一方、回転したyesであればステップU7に進み、今度は、第2クランク角区間であることを示す第2フラグF2の値を判別する。そして、F2=1でnoならば後述のステップU10に進む一方、F2=0でyesならばステップU8に進む。このステップU8では、そのときのタイマ値Tを第1タイマ値T1としてECU35のメモリに記憶し、続くステップU9で、第2フラグF2の値を1にして(F2=1)、ステップU10に進む。
【0072】
つまり、各気筒毎にインジェクタ5による燃料噴射からクランク軸7が第1設定角度回転するまでの間、タイマ値Tをインクリメントしていって、クランク軸7が前記第1設定角度だけ回転すれば、そのときのタイマ値を第1タイマ値T1として、メモリに記憶する。この第1タイマ値T1が第1所要時間ITTMF#に相当している。
【0073】
続いて、ステップU10では、クランク軸7が前記ステップU2で判定した噴射開始から第2設定角度(例えば180°CA)回転したか否かを判定する。この第2設定角度は、第1クランク角区間及び第2クランク角区間を合わせた区間に対応する。そして、未だ回転していないnoと判定すればリターンする一方、回転したyesと判定すればステップU11に進んで、そのときのタイマ値Tを第2タイマ値T2としてECU35のメモリに記憶する。
【0074】
つまり、各気筒毎にインジェクタ5による燃料噴射からクランク軸7が前記第2設定角度だけ回転するまでの間、タイマ値Tをインクリメントしていって、クランク軸7が第2設定角度だけ回転すれば、そのときのタイマ値を第2タイマ値T2としてメモリに記憶する。この第2タイマ値T2が所要時間QTIMEに相当している。
【0075】
続いて、ステップU12では、メモリに記憶されている第2タイマ値T2から同じくメモリに記憶されている第1タイマ値T1を減算して、第3タイマ値T3を算出し、この第3タイマ値T3をメモリに記憶する。この第3タイマ値T3が第2所要時間ITTMR#に相当している。そして、上述の如く各気筒毎に第1所要時間ITTMF#と、第2所要時間ITTMR#と、所要時間QTIMEとを計測した後、ステップU13において第1及び第2フラグを共にクリアし(F1=F2=0)、タイマ値Tをリセットして(T=0)、しかる後にリターンする。
【0076】
したがって、この実施形態に係る燃料噴射制御装置Aによれば、エンジン1がアイドル運転状態になっているとき、エンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが大きければ、まず、全気筒の燃料噴射量Qを一律に増量又は減量させて、エンジン回転数をアイドル目標回転数に近づける。そして、エンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが大きくなくなれば、各気筒毎の燃焼力に対応するクランク軸7の回転角速度ωを検出し、その検出値に基づいて各気筒毎の燃焼力が略同じになるように燃料噴射量Qを気筒毎に補正する。このことで、気筒間の燃焼力のばらつきを減らしてトルク差を減少させ、エンジンのアイドル安定性を高めることができる。
【0077】
同時に、エンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが大きくなくなれば、燃焼状態検出手段35bにより前記各気筒毎にその気筒2の燃焼状態を反映する回転変動状態量、具体的には、燃焼初期及び後期のそれぞれの燃焼割合の比率に対応する時間比率ITTMF#/ITTMR#を検出し、その検出結果に基づいて、時間比率ITTMF#/ITTMR#が予め設定されているアイドル基準値ITDEVになるように各気筒毎に燃料噴射時期ITを補正する。このことで、エンジン1の各気筒2における燃焼状態を改善して、排ガス中のNOx及びスモークの生成を抑えるとともに、騒音低減を図ることができる。また、そのことによっても気筒間の燃焼較差が減少するので、エンジン1のアイドル安定性を一層、高めることができる。
【0078】
しかも、燃料噴射時期ITの補正を各気筒2における実際の燃焼状態に基づいて行うことで、インジェクタ5の個体差に起因する噴射ばらつきや筒内温度のばらつき、或いは各気筒毎の吸入空気量や排ガス還流量のばらつき等があっても、それらに拘わらず各気筒2の燃焼状態を均一に前記の最適な状態に揃えることができる。
【0079】
また、この実施形態に係る燃料噴射制御装置Aによれば、各気筒2の燃焼初期の燃焼力を、その気筒2において燃料が噴射されて燃焼が開始したときから、クランク軸7が90°CA回転するまでの第1所要時間ITTMF#に基づいて検出するとともに、燃焼後期の燃焼力を前記第1所要時間ITTMF#の経過後にクランク軸7がさらに90°CA回転するまでの第2所要時間ITTMR#に基づいて検出するようにしているので、前記燃焼初期及び後期のそれぞれの燃焼力を各気筒毎に他の気筒の影響を排除しつつ極めて正確に検出することができる。
【0080】
さらに、エンジン1がアイドル運転状態になっているときには、車両の運転者がエンジン1の回転変動による振動を特に不快に感じやすいので、このようなときに、気筒間の燃焼較差の低減によってエンジン1の燃焼安定性を高めることの作用効果が特に有効なものになる。尚、上述の燃料噴射時期の補正制御をアイドル運転時に限らず、より広くエンジン1の定常運転時に行うようにすることも可能である。
【0081】
また、この実施形態では、上述の如き燃料噴射時期の補正制御をディーゼルエンジン1に適用している。このディーゼルエンジンでは、燃焼室4に噴射された燃料噴霧の自己着火により燃焼が開始するという特性上、燃料噴射時期ITの変更による燃焼状態の変化が極めて大きいので、各気筒毎の燃料噴射時期の補正制御によって燃焼状態を改善するという作用効果が極めて有効になる。
【0082】
(他の実施形態)
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、各気筒毎の燃焼初期の燃焼力を検出するために、その気筒2における燃料の噴射からクランク軸7が90°CA回転するまでの第1クランク角区間で、第1所要時間ITTMF#を検出するようにしているが、これに限らず、前記第1クランク角区間は、混合気の予混合燃焼時に対応するように、例えば30°〜90°CAの任意の大きさのクランク角区間としてもよく、また、クランク軸7の回転角速度ωが極小値から極大値に変化するまでのクランク角区間としてもよい。同様に、第2クランク角区間の大きさも90°CAに限るものではない。
【0083】
すなわち、ディーゼルエンジンにおいて排ガス中のNOx及びスモークを両方共に低減しかつ燃焼音の増大を抑えることもできるような理想的な燃焼状態に対応する燃焼圧波形を実験的に決定しておいて、その目標とする燃焼圧波形と現在の燃焼圧波形とのずれを検出できるように燃焼圧波形の特徴を表す状態量を検出すればよい。
【0084】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によると、ディーゼルエンジンがアイドル運転状態になっているときに、少なくとも2つの気筒について、各気筒毎に圧縮行程終期に燃料が噴射された後、燃焼初期に相当するクランク角区間を経過するまでの第1所要時間と、その後、燃焼後期に相当するクランク角区間を経過するまでの第2所要時間とをそれぞれ検出し、この各気筒毎の燃焼初期の燃焼状態を反映する第1所要時間の、燃焼後期の燃焼状態を反映する第2所要時間に対する比率を燃焼状態量とし、この燃焼状態量に基いて検出気筒毎の燃焼状態量が略同じになるように、該各検出気筒の燃料噴射時期を補正するから、燃料噴射弁5の個体差に起因する噴射ばらつきや筒内温度のばらつき、或いは該各検出気筒毎の吸入空気量や排ガス還流量のばらつき等があっても、それらに拘わらず前記各検出気筒2の燃焼圧波形の特徴を表す値を容易に検出して燃焼状態を均一に揃えることができ、よって、該各検出気筒2における燃焼状態を改善して、排ガスの清浄化及び騒音低減を図ることができる。また、気筒間の燃焼較差を低減させて、エンジン1のアイドル安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るエンジンの燃料噴射制御装置の全体構成を示す図である。
【図2】 燃料噴射制御の処理手順を示すフローチャート図である。
【図3】 第1〜第4の各気筒における筒内圧、クランク軸の回転角速度及びその逆数の変化を、各気筒における行程の変化に対応づけて示した説明図である。
【図4】 燃料噴射量の補正量が、全気筒平均所要時間と各気筒毎の所要時間との偏差に対応づけて設定されているマップを例示する説明図である。
【図5】 燃料噴射時期の設定手順を示すフローチャート図である。
【図6】 燃料噴射時期の変化に対する燃焼圧波形の変化の様子と、燃焼初期及び後期にそれぞれ対応する第1及び第2クランク角区間とを例示する説明図である。
【図7】 燃料噴射時期のタイミング補正量が、時間比率のアイドル基準値との偏差に対応づけて設定されているマップを例示する説明図である。
【図8】 所要時間の計測手順を示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
A 燃料噴射制御装置
1 ディーゼルエンジン
2 気筒
5 インジェクタ(燃料噴射弁)
7 クランク軸
35 ECU(コントロールユニット)
35b 変動状態判定手段
35c 噴射時期補正手段
35d 噴射量補正手段
ITTMF# 第1所要時間
ITTMR# 第2所要時間
ITDEV アイドル基準値(設定量)
Claims (3)
- 多気筒ディーゼルエンジンの各気筒毎に燃料噴射弁が設けられ、該エンジンの運転状態に応じて前記燃料噴射弁による燃料の噴射時期を気筒毎に制御するようにしたエンジンの燃料噴射制御装置において、
前記エンジンがアイドル運転状態になっているときに、少なくとも2つの気筒についてそれぞれ燃焼状態に対応する燃焼状態量を検出する燃焼状態検出手段と、
前記燃焼状態検出手段により検出される前記各検出気筒毎の燃焼状態量が略同じになるように、該各検出気筒の燃料噴射時期を補正する噴射時期補正手段とが設けられ、
前記燃焼状態検出手段は、各気筒毎に圧縮行程終期に燃料が噴射された後、燃焼初期に相当するクランク角区間を経過するまでの第1所要時間と、その後、燃焼後期に相当するクランク角区間を経過するまでの第2所要時間と、をそれぞれ検出し、その第1所要時間の第2所要時間に対する比率を燃焼状態量として検出するように構成されていることを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。 - 請求項1のエンジンの燃料噴射制御装置において、
燃焼初期に相当するクランク角区間と燃焼後期に相当するクランク角区間とが、互いに同じ大きさの角度範囲とされていることを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。 - 請求項1又は2のいずれかのエンジンの燃料噴射制御装置において、
噴射時期補正手段は、エンジンがアイドル運転状態になっていて、且つエンジン回転数とアイドル目標回転数とのズレが所定以上に大きいときには、燃料噴射時期の補正を行わないように構成されていることを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。
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