JP4138560B2 - 焼結機における焼結時間予測方法及び操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結機における焼結時間予測方法及び操業方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
焼結機は、粉鉱と粉状コークスとが混合された原料に着火し、前記着火された原料を搬送手段で機長方向に搬送しつつ、下方の風箱で吸気することにより焼結を進行させ、高炉に投入可能な焼結鉱を製造するものである。
このような焼結機において、粉鉱の焼結を適切に行うためには、機長方向における温度分布を把握することが非常に重要であり、従来から風箱内の温度等をもとに機長方向温度分布を検出するようにしている。また、多くの操業実績より、機長方向の温度分布において最高温度を示した点が、焼結が完了する位置に対応していることが知られており、この焼結完了位置を機長方向のどの位置に持ってくるか、そのために搬送手段の速度をどの程度にするかは、品質のよい焼結鉱を得るための重要なファクターとなっている。
【0003】
特許文献1には、焼結機の排気温度から焼結が完了する位置を検出し、前記焼成完了の位置が目標位置にくるように搬送手段の速度を制御する技術が開示されている。
前記着火手段から焼結完了位置までの距離を見いだすためには、現時刻における機長方向の温度分布を用い、温度曲線上の最高温度点が焼結完了位置に対応するものとしている。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−228430号公報 (第2〜3頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際の焼結機においては、機内の温度は様々な要因で変化し、温度分布は時間が経つごとに変移するものであるため、焼結完了位置の正確な距離は刻々変化するものとなっている。ゆえに、現時刻での温度分布から得られる焼結完了位置だけを入力とした搬送手段の速度制御を行うだけでは、正確な制御が困難であるといった問題が存在した。
また、特許文献1は、焼結が完了する位置に着目した焼結機の速度制御を行っているが、前記焼結完了位置にこだわることなく、任意の燃焼・焼結状態のデータを入力値とした速度制御の方がフレキシブルな操業を行えることが実績としてわかっている。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、複数の風箱位置の温度履歴を用いた焼結機機長方向の温度予測を行った上で焼結時間の予測を行う方法を提供すると共に、この焼結時間を基にして搬送手段の速度操作量の算出し且つ搬送手段の制御を行うことを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、粉鉱を機長方向に所定厚みで搬送する搬送手段と、前記搬送手段上の粉鉱に着火する着火手段と、この着火手段の下流側であって搬送手段の下方で機長方向に複数配置され且つ吸気することで粉鉱の焼結を促進させる風箱とを有する焼結機において、現時刻での機長方向の温度の分布と現時刻までの温度履歴とを求め、両データをもとにして所定時間後の予測温度分布を算出し、前記予測温度分布を用いて、前記粉鉱が予め設定された目標温度に達するために要する時間である焼結時間を算出するものであって、前記焼結時間予測方法は、(a)現時刻での機長方向の温度の分布における最高温度とこの最高温度をもとに設定された所定温度とを有する複数の風箱位置を選出する工程と、(b)前記選出された風箱位置の温度履歴を用いて所定時間後の予測最高温度を算出する工程と、(c)前記予測最高温度をもとに所定時間後の予測所定温度を算出する工程と、(d)前記予測最高温度及び予測所定温度に対応する風箱位置を算出し、所定時間後の予測温度分布を導出する工程と、(e)前記予測温度分布を用いて、前記目標温度に対応する風箱位置を算出し、当該風箱位置から着火手段までの距離と現時刻における搬送手段速度とにより焼結時間を算出する工程と、を有しており、前記(a)から(e)の工程を順次行うことを特徴とする。
【0008】
この技術的手段によれば、前記(a)工程〜(d)工程を順次に行うことで焼結機の機長方向における所定時間後の温度分布の予測を行うことが可能となる。
すなわち、現時刻における焼結機の機長方向の温度分布を調べ、それから最高温度を検出し、この最高温度をもとに、一定の手続きにもとづいて複数の所定温度を選出することで、前記最高温度と所定温度に対応する複数の風箱位置を前記温度分布にもとづいて選出することができるようになる。[(a)工程]
その後、選び出された風箱位置の温度履歴を用いて、一定の予測式に基づいて所定時間後の予測最高温度を算出することができ[(b)工程]、前記予測最高温度をもとに、一定の予測手続きで、所定時間後の複数の予測所定温度を算出することができるようになる。[(c)工程]
その後、一定の予測手続きで、前記予測最高温度及び予測所定温度に対応する風箱位置を算出できるようになる。[(d)工程]
その後、任意に設定できる目標温度を定めた上で、前記予測温度分布を用いて、前記目標温度に対応する風箱位置を算出し、当該風箱位置と着火手段とまでの距離と、現時刻の搬送手段速度とにより焼結時間を算出する[(e)工程]。
【0009】
上記工程を経ることで、所定時間後の焼結時間を予測することが可能となる。
なお、前記(a)工程は、所定温度を最高温度の一定比率値とすればよく、前記最高温度を有する点が所定時間前に存在した風箱位置を算出し、その位置にある風箱内の温度を前記所定温度としてもよい。最高温度から一定温度を差し引くことで所定温度を算出するようにしても何ら問題はない。
前記(b)工程は、前記温度履歴を入力値とした線形式により予測最高温度を算出するようにしてもよい。
【0010】
前記(c)工程は、予測所定温度を予測最高温度の一定比率値として算出するとよい。
前記(d)工程は、前記予測最高温度及び予測所定温度を入力値とした線形式により風箱位置を算出するとよい。
なお、前記(d)工程は、着火手段からの機長方向距離又は搬送に要する経過時間を用いて風箱位置を算出するようにしてもよい。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記技術的手段のいずれかに記載された焼結時間予測方法により算出された焼結時間をもとに、前記搬送手段の速度操作量を算出し且つ焼結機に対して設定することを特徴とする。
【0011】
この技術的手段によれば、所定時間後の予測温度分布から算出された焼結時間に基づく搬送手段の速度操作量が求めることが出来るようになる。前記速度操作量を焼結機に適用することで良好な焼結鉱を製造できるようになる。
好ましくは、前記(d)工程で導出された予測温度分布について、搬送手段の速度操作による当該温度分布の変移を算出し、変移後の予測温度分布を用いて所定風箱内の温度が前記目標温度に達するように速度操作量を設定するとよい。
さらに好ましくは、前記搬送手段の目標速度と前記速度操作量を適用した際の搬送手段の速度との差の二乗和と、搬送手段の速度操作量の二乗との和が最小になるように前記速度操作量を設定するとよい。
【0012】
前記予測された焼結時間と着火手段から所定風箱までの搬送経過時間との差の二乗和と、搬送手段の速度操作量の二乗との和が最小になるように前記速度操作量を設定しても何ら問題はない。
これにより、速度操作量を最適制御の理論にもとづいて算出することが可能となる。
また、前記所定風箱を焼結が完了する位置に対応する風箱とし、前記目標温度を焼結が完了する温度とするとよい。
【0013】
また、前記温度を風箱内の排気温度とするとよい。
これにより、粉鉱の焼結にもっとも関係深い風箱内の排気温度を検出温度や予測温度とすることができ、風箱内に温度計を設置するのみで前記排気温度を検出することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図に基づいて説明する。
図1は、連続式焼結機1を例示したものであり、粉鉱と粉状コークスとが混合された原料2を機長方向に搬送する搬送手段3を有し、この搬送手段3は、無端帯状に配置された複数のパレット(焼結なべ)が長手方向上流及び下流に配置されたスプロケットホイル4で駆動されるものである。
前記搬送手段3の上流側で且つ上方には、パレットに原料2を装入する原料装入手段5が設けられおり、前記パレット上に一定の層厚で原料2を敷き詰めるようにしている。原料装入手段5の下流側で且つ上方には、原料2の上方に着火するべくガスバーナが備えられた着火手段6が設けられている。
【0015】
搬送手段3の下方には、複数の風箱7が長手方向に配置されており、この風箱7に連通している排風機(図示せず)により吸気されるようになっている。風箱7は、吸気することで原料2層内に空気を供給し、粉鉱の焼結を促進させるものとなっている。
したがって、前記粉鉱を含む原料2は、搬送手段3の上流側すなわち給鉱部8にある原料装入手段5によりパレットに層状に装入され、着火手段6により原料2の上層に着火される。着火された原料2は下流側へ搬送されるうちに、上層から下層へ燃焼・焼結が進み、下流側出口すなわち排鉱部9では全層に亘る焼結が完了して、高炉への投入に適した焼結鉱が製造されるようになる。
【0016】
かかる焼結機1において、粉鉱の焼結を適切に行うためには、機長方向における温度分布を把握することが非常に重要であり、本実施形態の場合は、排気(排ガス)の温度を検出するために、前記複数の風箱7内に熱電対等からなる排ガス温度計10を設置している。この排ガス温度計10の検出する温度をもとに、機長方向の温度分布を知ることが出来る。
焼結機機長方向の温度分布の一例を図3に示す。この図において横軸は、風箱番号を示し、着火手段6の配置された位置を原点とした機長方向の距離を意味するものとなっている。縦軸は風箱内温度(風箱温度)(℃)すなわち風箱7内の排ガス温度を示すものとなっている。
【0017】
多くの操業実績より、機長方向の温度分布において最高温度を示した点が、焼結が完了する位置に対応しており、この図の場合は、風箱番号No.16の位置において焼結が完了していることが示唆されている。
この焼結完了位置を機長方向のどの位置(風箱位置)に持ってくるか、ひいては搬送手段3の速度(パレット速度)をどの程度にするかは、品質のよい焼結鉱を得るための重要な要素となってくる。
また、前記速度操作量を決定するためには、正確な温度分布の予測と、それに基づく原料の焼結時間の予測とを行うことが非常に重要な事柄となってくる。
【0018】
以下、本発明にかかる焼結機1における機長方向の温度分布予測とそれに基づく焼結時間の予測方法を、図2のフローチャート、及び図3〜図6に基づいて述べる。
なお、説明において、温度単位は℃、時間単位はmin(分)、速度単位はm/minとする。
まず、現時刻における機長方向の温度分布を求め、当該温度分布における最高温度とこの最高温度をもとに設定された所定温度とを有する複数の風箱位置を選出する工程[(a)工程]を行う。
【0019】
焼結機1の排ガス温度計10からのデータを基に、図3に示すような現時刻tにおける機長方向の温度分布を取得する。この温度曲線において、最高温度すなわち焼結完了点は、風箱番号WB100で、温度Tp100(t)となっており、その値を取得する(図2のフローチャートでのS1)。
次に、前記最高温度の一定比率値、すなわち、90%,80%,・・・,10%,0%の値を有する温度を[数1]に基づいて算出し、所定温度Tp090(t),Tp080(t),・・・,Tp010(t),Tp000(t)とする(S2)。
【0020】
【数1】
【0021】
なお、原点の温度は、着火手段6の略下方に位置する風箱内温度であり、風箱温度が計測可能なものの内、最も着火手段6に近い風箱7の番号に対応するものである。
その後、現時刻の温度分布(温度曲線)を基にすることで、前記所定温度Tp090(t),Tp080(t),・・・,Tp010(t),Tp000(t)に対する風箱番号(風箱位置)を割り出すことが可能であり、それらをWB090,WB080,・・・,WB010,WB000とする(S3)。
【0022】
なお、前記(a)工程は、前記最高温度Tp100(t)を有する風箱番号WB100が所定時間前に存在した位置を算出し、その位置にある風箱7内の温度を前記所定温度としてもよい。
詳しくは、WB100の風箱7が、例えば1分前、3分前、5分前に存在した位置を割り出し、現時刻tにおいて、前記位置に存在する風箱7の番号WBnを所定温度の風箱番号とし、その内部温度を所定温度とするとよい。
また、最高温度から一定温度を差し引くことで所定温度を算出してもよい。例えば、一定温度を40度とし、Tp090(t)=Tp100(t)−40,Tp080(t)=Tp100(t)−40×2・・・等として算出してもよい。
【0023】
次に、前記選出された風箱番号の温度履歴を用いて所定時間ts後の予測最高温度を算出する工程を行う[(b)工程]。本実施形態ではts=10分としている。
前記(a)工程で求めた最高温度、所定温度値温、すなわち機長方向の各点における温度が計測される風箱7においては、過去一定時間の温度変化の履歴が、例えば、外部に接続されたコンピュータ等に保存されている。本実施形態の場合は、1分毎の風箱内温度履歴が20分前から保存されている。
【0024】
これら風箱内温度履歴は、[数2]で表現されるものとなっている。
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、風箱内温度履歴Tn(t)は、風箱番号WBn(t)における過去時刻の温度履歴を有する列ベクトルである。T(WBn(t),t)は時刻tにおける風箱内温度を表す。nは000,010,・・・,100である。[]Tは転置を示す。
次に、これら風箱内温度履歴Tn(t)を用いて、現時刻tから10分後の最高温度である予測最高温度を算出する(S4)。かかる算出は、[数3]に記載された風箱内温度履歴を入力値とした線形結合予測式を用いる。
【0027】
【数3】
【0028】
ここで、Tp100(t+10)は現時刻から10分後の予測最高温度、a100,・・・,a000は係数行ベクトルである。
このように、温度分布の複数位置の過去温度履歴を用いて、最高温度を予測するため、複数の履歴情報が反映されることになり、精度の高い温度予測が可能となる。
次に、前記予測最高温度をもとに所定時間ts後の予測所定温度を算出する工程[(c)工程]を行う。
【0029】
本実施形態の場合は、所定時間tsを10分とし、予測最高温度の一定比率値を予測所定温度とすることで各値を算出している。つまり、[数3]で求められた予測最高温度Tp100(t+10)をもとに、[数4]を用いて、予測所定温度Tp090(t+10),Tp080(t+10),・・・,Tp000(t+10)を求める(S5)。
【0030】
【数4】
【0031】
なお、原点の温度は、着火手段6の略下方に位置する風箱内温度であり、風箱温度が計測可能なものの内、最も着火手段6に近い風箱7の番号に対応するものである。
ここで、留意しなくてはいけないことは、これら求まった予測所定温度は、風箱7の過去温度履歴を用いて算出された値であり、この時点では、各所定温度に対応する風箱番号(風箱位置)が未定であることである。
したがって、最後に、前記予測最高温度及び予測所定温度に対応する風箱番号を算出する工程[(d)工程]を行うようにする。
【0032】
この工程は、前記予測最高温度ならびに予測所定温度に対応する風箱番号WB100(t+10)、WB090(t+10),・・・,WB000(t+10)を算出するものであり、算出方法としては、温度曲線の複数位置の過去温度履歴を用いて、[数5]により計算する(S6)。
【0033】
【数5】
【0034】
ここで、bn_nは係数行ベクトル、n=000〜100である。
前記(a)工程〜(d)工程を順次行うことで、現時刻tより10分後の予測最高温度及び予測所定温度、それらに対応する風箱位置を算出することができ、図5の破線で示すような温度分布曲線を得ることができる。
以上述べた温度分布予測は、焼結機1の複数位置の過去温度履歴を入力とした線形結合式を用いることにより、最高温度を予測するため、複数の履歴情報が予測に反映されることになり、精度の高い温度予測が可能なものである。また、入力値と出力値(予測値)が線形関係となるため、互いの影響度、因果関係が非常に明確なものとなり、予測値の評価や予測式の変更等が数学的観点より適切に行えるものとなっている。
【0035】
なお、前記(d)工程は、着火手段6からの機長方向距離や着火手段6を起点とした搬送に要する経過時間を用いて、風箱番号WBnを算出するようにしても何ら問題はない。
次に、前記ts=10分後の予測温度分布を用いて、現状の搬送手段3の速度で焼結機1を操業した場合の焼結時間Nd(t+10)を算出する(S7)。
図6には、10分後の予測温度分布が示されており、この図で、例えば、380℃を目標温度Tdを設定すると、予測温度分布曲線から対応する風箱番号WBd(t)がわかり、この風箱番号の位置と着火手段6(原点位置)との間の距離Dd(t+10)を求めることが出来る。
【0036】
さらに、今後10分間現在速度で操業した場合を考えて、その速度を用いて前記距離Dd(t+10)を移動するのにかかる時間、すなわち焼結時間Nd(t+10)を算出することとする。
この焼結時間は、原料2が燃焼し粉鉱が焼結するのに必要な時間であるため、搬送手段3の速度変化には影響されないものである。
前記焼結時間Nd(t+10)を用いた焼結機1の搬送手段制御は、以下のように行う。
【0037】
例えば、風箱番号No.14で前記目標温度Tdに達するように速度を制御したい場合は、着火手段6から風箱番号No.14までの距離をD14とすれば、焼結速度Vp(t+10)は、
【0038】
【数6】
【0039】
で算出され、現在の搬送手段速度をVp(t+10)とするように、速度をΔVだけ操作すればよいことになる。
しかしながら、単純に焼結機1に速度操作量ΔVを与えたとしても、焼結機1が直ちに反応することは、自動制御理論における遅れ問題等により実際には困難であり、最適な制御が行えないことが実績としてわかっている。
そこで、以下のような方法で、焼結機1の搬送手段3の速度操作量の最適値を求めている。
【0040】
まず、前述の一連のステップ(S4〜S6)を予測時間Δtずつを進めて(ts=ts+Δt)行うことで、例えば、将来のある時間幅における複数の予測温度分布を求めるようにする。本実施形態では、現在からts時間〜te時間後(te>ts=10min)での1分ごと(Δt=1min)の予測温度分布を求めるようにする。
次に、機長方向に列ぶ複数の風箱7の内、所定の風箱を評価ターゲットとして選出する。本実施形態の場合は、焼結が略完了する位置に対応する風箱7(焼結完了風箱)を所定風箱としている。また、当該所定風箱において焼結が適切に完了する温度を目標温度Tdとする(S9)。
【0041】
ここで、搬送手段3の速度をΔVだけ操作した場合、図7に示す如く、温度分布は横軸方向に移動(変移)することになる。この移動した温度曲線を利用しつつ、前記所定風箱が目標温度になるように、搬送手段3の速度をΔVだけ操作してもよいが、自動制御理論による最適制御の考え方を採用しつつ、速度操作量ΔVを決定する。
すなわち、[数7]に示す如く、VdとVyの差の二乗和であるSt、搬送手段3の速度操作量ΔVの二乗であるSv、それらを線形結合したQを導入する
【0042】
【数7】
【0043】
ここで、Vdは搬送手段3の目標速度であり、Vyは搬送手段3を速度操作量ΔVだけ操作した際の搬送速度(搬送手段の速度)である。Wv,Wtは定数である。
なお、本実施形態では、Vdを[数8]で定義されるものとしている。
【0044】
【数8】
【0045】
ここで、Vpは[数6]で計算される予測搬送手段速度であり、exp(−at)は指数関数で、aは定数、tは時刻を示す。
前記ΔVの値を変更した際に前記Qの値が最小になるようにすることで、最適制御の考えに基づく適切な搬送手段3の速度操作量ΔVを算出することが可能となる。
かかる速度操作量を焼結機1に適用することで、良好な焼結鉱を製造できる操業を行うことが可能となり、良好な焼結鉱を得ることが可能となる。
【0046】
以上述べた温度分布の予測や搬送手段の速度操作量ΔVの算出計算は、焼結機1の外部に設けられたコンピュータ等で構成される制御装置11で行われる。当該制御装置11には、排ガス温度計10からの温度データ、搬送手段速度計12からの速度データ、風箱内圧力データ等が転送されると共に随時保存され、温度履歴として記録されている。
前記制御装置11で求められた速度操作量ΔVは、搬送手段3の速度を制御する速度調節手段13を通じて焼結機1に適用されることになる。
【0047】
なお、本発明にかかる焼結機1における機長方向の温度分布予測方法及び操業方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。
すなわち、風箱内温度、時間、搬送手段3の速度等の物理量が用いられているが、それらの単位は、物理量を適切に表すものであれば任意のものでよく、例えば、温度は絶対温度であってもよい。時間は秒でもよく、速度もm/secやmm/secであってもよい。単位を適宜選択したとしても、予測式でそれに対応する係数行ベクトルや係数を使用すれば、上記予測方法をそのまま使用することができ、予測手法の技術的思想は何ら異なるものとはならない。
【0048】
また、温度として、風箱内排気の温度を用いていたが、原料2(粉鉱)層の実際の温度を採用してもよく、焼結中である原料2の輝度温度を採用してもよい。
また、将来における複数の連続した時間の温度分布を予測しているが、その時の時間間隔Δtは任意であって、10秒間隔であってもよく、5分間隔でも何ら問題はない。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の風箱位置の過去温度履歴を用いた焼結機機長方向の温度予測を行った上で焼結時間の予測を行うことが可能となる。また、前記焼結時間を基にして搬送手段の速度操作量の算出し且つ搬送手段の制御を行うことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 連続式焼結機の構成を示す概略図である。
【図2】 焼結機機長方向の温度予測方法、及び搬送手段の速度操作量の算出方法を示すフローチャートである。
【図3】 現時刻の温度分布及び所定温度を示した図である。
【図4】 風箱内の温度履歴を示した図である。
【図5】 現時刻温度分布と予測温度分布とを示した図である。
【図6】 予測温度分布を用いた焼結時間の算出方法を示した図である。
【図7】 搬送手段の速度をΔVだけ操作した際の予測温度分布の変移を示した図である。
【符号の説明】
1 焼結機
3 搬送手段
6 着火手段
7 風箱
Claims (15)
- 粉鉱を機長方向に所定厚みで搬送する搬送手段と、前記搬送手段上の粉鉱に着火する着火手段と、この着火手段の下流側であって搬送手段の下方で機長方向に複数配置され且つ吸気することで粉鉱の焼結を促進させる風箱とを有する焼結機において、
現時刻での機長方向の温度の分布と現時刻までの温度履歴とを求め、両データをもとにして所定時間後の予測温度分布を算出し、
前記予測温度分布を用いて、前記粉鉱が予め設定された目標温度に達するために要する時間である焼結時間を算出するものであって、
前記焼結時間予測方法は、
(a)現時刻での機長方向の温度の分布における最高温度とこの最高温度をもとに設定された所定温度とを有する複数の風箱位置を選出する工程と、
(b)前記選出された風箱位置の温度履歴を用いて所定時間後の予測最高温度を算出する工程と、
(c)前記予測最高温度をもとに所定時間後の予測所定温度を算出する工程と、
(d)前記予測最高温度及び予測所定温度に対応する風箱位置を算出し、所定時間後の予測温度分布を導出する工程と、
(e)前記予測温度分布を用いて、前記目標温度に対応する風箱位置を算出し、当該風箱位置から着火手段までの距離と現時刻における搬送手段速度とにより焼結時間を算出する工程と、
を有しており、
前記(a)から(e)の工程を順次行うことを特徴とする焼結機における焼結時間予測方法。 - 前記(a)工程は、所定温度を最高温度の一定比率値とすることを特徴とする請求項1に記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 前記(a)工程は、前記最高温度を有する点が所定時間前に存在した風箱位置を算出し、その位置にある風箱内の温度を前記所定温度とすることを特徴とする請求項1に記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 前記(a)工程は、最高温度から一定温度を差し引くことで所定温度を算出することを特徴とする請求項1に記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 前記(b)工程は、前記温度履歴を入力値とした線形式により予測最高温度を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 前記(c)工程は、予測所定温度を予測最高温度の一定比率値として算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 前記(d)工程は、前記予測最高温度及び予測所定温度を入力値とした線形式により風箱位置を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 前記(d)工程は、着火手段からの機長方向距離又は搬送に要する経過時間を用いて風箱位置を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載された焼結時間予測方法により算出された焼結時間をもとに、前記搬送手段の速度操作量を算出し且つ焼結機に対して設定することを特徴とする焼結機における操業方法。
- 前記(d)工程で導出された予測温度分布について、搬送手段の速度操作による当該温度分布の変移を算出し、変移後の予測温度分布を用いて所定風箱内の温度が前記目標温度に達するように速度操作量を設定することを特徴とする請求項9に記載の焼結機における操業方法。
- 前記搬送手段の目標速度と前記速度操作量を適用した際の搬送手段の速度との差の二乗和と、搬送手段の速度操作量の二乗との和が最小になるように前記速度操作量を設定することを特徴とする請求項10に記載の焼結機における操業方法。
- 前記予測された焼結時間と着火手段から所定風箱までの搬送経過時間との差の二乗和と、搬送手段の速度操作量の二乗との和が最小になるように前記速度操作量を設定することを特徴とする請求項10に記載の焼結機における操業方法。
- 前記所定風箱を焼結が完了する位置に対応する風箱とし、前記目標温度を焼結が完了する温度とすることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の焼結機における操業方法。
- 前記温度は風箱内の排気温度であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の焼結機における焼結時間予測方法。
- 前記温度は風箱内の排気温度であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の焼結機における操業方法。
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