JP4137655B2 - ヘリコプター搭載受信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ヘリコプターに搭載されて、地上局から通信衛星を経由して送られてくる信号を受信するヘリコプター搭載受信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ヘリコプターと地上局との間において通信衛星を経由して通信を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。一般に、通信衛星からの電波をヘリコプターで受信する場合、その電波は回転翼によって遮断され、連続的な受信が不可能になる。この問題を解消するために、特許文献1に開示された技術では、ヘリコプターの回転翼下に2つのアンテナを配置し、この2つのアンテナを切り換えながら電波を受信することにより、回転翼によって電波が遮断される事態を回避している。即ち、2つのアンテナはヘリコプター上の離れた位置に搭載され、回転翼検出器によって一方のアンテナに回転翼による電波の遮断が生じたことが検知されると、他方のアンテナによる受信に切り替えられる。そして、2つのアンテナから得られる間欠的な受信信号を受信部で合成することによって連続な受信信号を生成する。これにより、ヘリコプターにおいて連続的な受信が可能になる。
【0003】
また、ヘリコプターと地上局との間において通信衛星を経由して通信を行う他の技術が特許文献2に開示されている。この特許文献2に開示された技術では、地上局から通信衛星を経由して送られてきた電波がアンテナで受信される。このアンテナに接続された受信機は、アンテナから出力される受信信号の受信レベルを検出する。一方、データ端末機は、受信機から出力される受信信号の受信タイミングを算出する。そして、位相差検出器は、上記受信レベルと受信タイミングとの位相差を検出し、この検出した位相差に基づいて電波が遮断されたことを判断したときは、地上局からの送信を停止するように地上局の送信タイミングを制御する制御信号を生成して地上局に送信する。これにより、回転翼が通信の障害になるのを避けている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−167344号公報
【特許文献2】
特開平7−22993号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、アンテナの切り替えによる連続受信を実現するために2つのアンテナが必要になるので、装置が大型化してしまい、空間的な配置が制限されるヘリコプターに搭載するには不向きである。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、地上局からの信号を受信するとき、回転翼による電波の遮断を回避するために制御信号を地上局に送信しなければならない。そのため装置の構成が複雑になり、また、制御信号を送信するために或る帯域が占有されてしまう。
【0007】
更に、時間ダイバーシティ方式を用いて通信システムを実現した場合、ヘリコプター側で受信された信号の中の、回転翼による電波の遮断が発生した部分のデータは欠落し、熱雑音のみが受信されてしまうので、そのまま時間ダイバーシティ合成を行うと、熱雑音の影響によってC/N比(Carrier to Noise ratio)が悪化するという問題がある。
【0008】
この発明は上述した問題を解消するためになされたものであり、その目的は、小型で簡単な構造を有し、ヘリコプター側を受信局とする通信において、良好なC/N比を有するヘリコプター搭載受信装置を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るヘリコプター搭載受信装置は、上記目的を達成するために、地上局から通信衛星を経由して時間ダイバーシティ方式で送られてくる対象信号を受信して受信信号として出力する受信機と、対象信号の受信機における受信レベルを算出する受信レベル算出部と、受信レベル算出部で算出された受信レベルに基づいて、ヘリコプターの回転翼によって対象信号が遮断される遮断タイミングを推定する遮断タイミング推定部と、受信機から出力される受信信号のうちの、遮断タイミング推定部で推定された遮断タイミングにおける受信信号の振幅を除去してダイバーシティ信号を生成するノイズ除去部と、ノイズ除去部からのダイバーシティ信号を用いて時間ダイバーシティ合成を行う時間ダイバーシティ合成部とを備えているものである。
【0010】
この発明に係るヘリコプター搭載受信装置は、上記と同様の目的で、ヘリコプターの姿勢を表す動揺データ及び位置を表す位置データ並びに通信衛星の軌道上における位置を表す軌道データに基づいて通信衛星の方向を算出する受信方向算出部と、地上局から時間ダイバーシティ方式で送られてくる対象信号を受信方向算出部により算出された方向から受信し、受信信号として出力する受信機と、ヘリコプターの回転翼の回転位置と受信方向算出部で算出された通信衛星の方向とに基づいて、ヘリコプターの回転翼によって対象信号が遮断される遮断タイミングを推定する遮断タイミング推定部と、受信機から出力される受信信号のうちの、遮断タイミング推定部で推定された遮断タイミングにおける受信信号の振幅を除去してダイバーシティ信号を生成するノイズ除去部と、ノイズ除去部からのダイバーシティ信号を用いて時間ダイバーシティ合成を行う時間ダイバーシティ合成部とを備えているものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態に係るヘリコプター搭載受信装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態1及び2に係るヘリコプター搭載受信装置が適用される衛星通信システムの構成を概略的に示す図である。
【0013】
この衛星通信システムは、ヘリコプター1、通信衛星2及び地上局3から構成されている。ヘリコプター1は、通信衛星2を経由する送信回線4を用いて地上局3に信号を送信する。また、ヘリコプター1は、通信衛星2を経由する受信回線5を用いて地上局3から送られてくる信号(この発明の「対象信号」に対応する)を受信する。
【0014】
ヘリコプター1は、送信回線4を用いて地上局3に対象を送信するための送信アンテナ6、受信回線5を用いて地上局3から送られてくる電波を受信するための受信アンテナ7を備えている。この衛星通信システムにおいては、ヘリコプター1の回転翼8が回転することにより、受信回線5を用いて送られてくる電波(以下、「受信ビーム」という)が間欠的に遮断される。
【0015】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置を説明する。図2は、この実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置9の構成を示すブロック図である。なお、この図2には、衛星通信システムにおけるヘリコプター搭載受信装置9の位置付けを明確にするために、地上局3を構成する地上局通信装置10及び地上局用送信アンテナ11、通信衛星2、並びにヘリコプター1に搭載される受信アンテナ7も描かれている。
【0016】
ヘリコプター1に搭載された受信アンテナ7は、地上局通信装置10に接続された地上局用送信アンテナ11から通信衛星2を経由して送られてくるデータを受信する。この受信アンテナ7からの受信信号がヘリコプター搭載受信装置9に送られる。なお、この実施の形態1では、地上局3は、時間ダイバーシティ方式でデータを送信するものとする。
【0017】
ヘリコプター搭載受信装置9は、受信機12、受信レベル算出部13、遮断タイミング推定部14、ノイズ除去部15、時間ダイバーシティ合成部16、復調器17及び受信信号処理部18から構成されている。
【0018】
受信機12は、受信アンテナ7からの受信信号を低雑音増幅及び周波数変換する。この低雑音増幅及び周波数変換がなされた受信信号は、ノイズ除去部15に送られる。
【0019】
受信レベル算出部13は、各受信タイミングにおいて、受信アンテナ7からの受信信号の受信レベルを算出する。この算出された受信レベルは、受信レベル信号として遮断タイミング推定部14に送られる。
【0020】
遮断タイミング推定部14は、受信レベル算出部13から送られてくる受信レベル信号に基づいて、遮断タイミング、つまり受信ビームがヘリコプター1の回転翼8によって遮断されている区間を推定する。遮断タイミングを推定する方法としては、受信レベルが所定の閾値以下になった区間を遮断タイミングと推定する方法、或いは、受信ビームがヘリコプター1の回転翼8によって遮断されることによる受信レベルの低下は周期的に発生するので、連続して得られる受信信号のうちの受信レベルの低下が周期的に発生している区間を遮断タイミングと推定する方法等を採用することができる。遮断タイミング推定部14で推定された遮断タイミングは、遮断タイミング信号としてノイズ除去部15に送られる。
【0021】
ノイズ除去部15は、受信機12から送られてくる受信信号のうち、遮断タイミング推定部14から送られてくる遮断タイミング信号によって示される区間の受信信号を除去する。この除去は、受信信号の振幅をゼロにすることにより行うことができる。これにより、受信ビームが回転翼8によって遮断されることにより生じた熱雑音が除去される。このノイズ除去部15で熱雑音が除去された受信信号は、ダイバーシティ信号として時間ダイバーシティ合成部16に送られる。
【0022】
時間ダイバーシティ合成部16は、ノイズ除去部15で熱雑音を除去することにより得られたダイバーシティ信号の時間ダイバーシティ合成を行う。この時間ダイバーシティ合成により得られた合成信号は、復調器17に送られる。復調器17は、時間ダイバーシティ合成部16で得られた合成信号を復調することにより地上局3から受信した信号を再生し、受信信号処理部18に送る。
【0023】
受信信号処理部18は、復調器17からの信号を処理することにより、例えば、地上局3からの音声信号を音声に変換したり、地上局3からの制御信号に従った制御を実行する。
【0024】
次に、この発明の実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置の動作を、図3に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0025】
このヘリコプター搭載受信装置では、先ず、受信信号の受信レベルが算出される(ステップST1)。この受信レベルの算出は、受信レベル算出部13によって行われる。受信レベル算出部13は、上述したように、各受信タイミングにおいて受信アンテナ7から得られる受信信号の受信レベルを算出する。
【0026】
次いで、遮断タイミングの推定が行われる(ステップST2)。この遮断タイミングの推定は、遮断タイミング推定部14によって行われる。即ち、上記ステップST1で算出された受信レベルと所定の閾値とが比較される。そして、閾値以下又は未満の受信レベルを有する受信信号は、回転翼8により受信ビームが遮断された区間の受信信号とみなされ、この受信レベルの低下した区間が遮断タイミングであると認識される。
【0027】
次いで、遮断タイミングであるかどうかが調べられる(ステップST3)。即ち、現在、ステップST2で遮断タイミングであると推定された区間であるかどうかが調べられる。そして遮断タイミングでないことが判断されると、受信機12からの受信信号はそのままにされるが、遮断タイミングであることが判断されると、ノイズ除去が行われる(ステップST4)。具体的には、受信機12からの受信信号の振幅がゼロにされる。これらステップST3及びST4の処理は、ノイズ除去部15によって行われる。これにより、受信ビームが回転翼8により遮断され、受信信号として熱雑音のみが得られる区間であっても、その熱雑音の影響を除去することができる。
【0028】
図4は、ノイズ除去部15における受信信号と遮断タイミング信号との関係を示す。受信信号は、図4(A)に示すように、所定時間ごとに連続して得られる。遮断タイミング信号は、図4(B)に示すように、低レベル(Lレベル)又は高レベル(Hレベル)を有する信号である。遮断タイミング信号がLレベルの区間では、ヘリコプター1の回転翼8による受信ビームの遮断が存在せず、受信信号からノイズを除去する処理は行われない。一方、遮断タイミング信号がHレベルの区間では、受信信号の振幅をゼロにするノイズ除去が行われる。この図4(B)に示す遮断タイミング信号が、上述した遮断タイミング推定部14により生成される。
【0029】
次いで、ステップST3及びST4の処理によって熱雑音が除去された受信信号をダイバーシティ信号として時間ダイバーシティ合成が行われる(ステップST5)。この時間ダイバーシティ合成の動作を、図5を参照しながら説明する。この図5は、地上局3が1つの信号を異なるタイミングで4回送信(時間ダイバーシティ送信)した場合を示しており、各々に対応する熱雑音が除去された受信信号をダイバーシティ信号1〜4で表している。この例では、ダイバーシティ信号1に回転翼8による受信ビームの遮断が発生している。
【0030】
今、受信信号をそのまま(ノイズ除去をしないで)時間ダイバーシティ合成に用いるとすると、ダイバーシティ信号1のノイズ除去区間は熱雑音のみが含まれる部分になり、時間ダイバーシティ合成後にはノイズ(熱雑音)が含まれた信号が得られる。これに対し、この実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置では、ダイバーシティ信号1のノイズ除去区間は全てゼロにされるので、時間ダイバーシティ合成後の信号には熱雑音は含まれないので、回転翼8による受信ビームの遮断に起因するC/N比の悪化を改善することができる。
【0031】
この時間ダイバーシティ合成が完了すると、シーケンスはステップST1に戻り、以下同様の処理が繰り返される。これにより、ヘリコプター1の回転翼8によって遮断された受信ビームを補完しつつ、連続的な受信が可能になる。
【0032】
以上説明したように、この実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置によれば、地上局3から通信衛星2を経由して送られてくる信号をヘリコプター1で受信する場合、回転翼8が受信ビームを遮断する遮断タイミングを推定し、遮断タイミングにおける受信信号の振幅をゼロにして時間ダイバーシティ合成を行うので、回転翼8による受信ビームの遮断が発生しても、時間ダイバーシティ合成の後には良好なC/N比を有する受信信号を得ることができる。
【0033】
また、遮断タイミングであっても通信を停止する処理は不要であるため簡単な構成でヘリコプター搭載受信装置で実現できる。更に、受信アンテナ7は1台で済むので、安価で小型のヘリコプター搭載受信装置を構成することができる。
【0034】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係るヘリコプター搭載受信装置を説明する。図6は、この実施の形態2に係るヘリコプター搭載受信装置19の構成を示すブロック図である。なお、この図6には、衛星通信システムにおけるヘリコプター搭載受信装置9の位置付けを明確にするために、地上局を構成する地上局通信装置10及び地上局用送信アンテナ11、通信衛星2、並びにヘリコプター1に搭載される受信アンテナ7も描かれている。以下においては、実施の形態1と同一又は相当部分には実施の形態1と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0035】
このヘリコプター搭載受信装置19は、受信機12、ノイズ除去部15、時間ダイバーシティ合成部16、復調器17、受信信号処理部18、慣性航法装置20、回転翼検出器21、衛星方向算出部22、受信方向算出部23及び遮断タイミング推定部24から構成されている。
【0036】
上記構成要素のうち、慣性航法装置20及び回転翼検出器21は、機体の航行に必要な装置であり、元々ヘリコプター1に搭載されているものである。この実施の形態2に係るヘリコプター搭載受信装置19では、これら慣性航法装置20及び回転翼検出器21から出力される信号を利用して受信動作が制御されるので、図6では、便宜上、ヘリコプター搭載受信装置19の構成要素の一部として記載されている。
【0037】
慣性航法装置20は、緯度、経度、高度といった機体の位置を表す位置データ及びロール軸、ピッチ軸、方位軸といった機体の姿勢を表す動揺データを出力する。この慣性航法装置20から出力される位置データ及び動揺データは、衛星方向算出部22及び受信方向算出部23に送られる。
【0038】
回転翼検出器21は、回転速度を測るタコメータと同様に、回転翼8が図示しない回転軸の回転方向に1回転する毎に、回転翼8が特定回転位置に到達したことを検出し、回転翼検出信号として出力する。この回転翼検出器21は、例えば回転翼8又はその回転軸に設けた目印(磁性材料のピン等)を、機体の特定位置に固定された検出器(磁気検出器等)によって検出する。
【0039】
この回転翼検出器21は、機体の通常航行においては、一定時間における回転翼8の回転数を計数して、回転翼8の回転速度を求めるために使用される。なお、回転翼検出器21は、その構成が簡単であるので、ヘリコプター1の航行用に搭載された回転翼検出器21と同様の構成を有する検出器を別個に設けてもよい。
【0040】
衛星方向算出部22は、慣性航法装置20から受け取った機体の位置データ及び予め記憶されている通信衛星2の軌道上における位置を表す軌道データ(緯度、経度、高度データ)に基づいて、ヘリコプター1から見た通信衛星2の方向を算出する。この衛星方向算出部22で算出された方向は、方向データとして受信方向算出部23に送られる。
【0041】
受信方向算出部23は、衛星方向算出部22から受け取った方向データと、慣性航法装置20から送られてくる機体の動揺データとに基づいて、受信ビームの方向を算出する。この受信方向算出部23において算出された受信ビームの方向を表すデータは、図示しないアクチュエータに送られる。これにより受信アンテナ7が受信ビームの方向に向くように制御される。また、受信方向算出部23において算出された受信ビームの方向を表すデータは、遮断タイミング推定部24に送られる。
【0042】
遮断タイミング推定部24は、受信方向算出部23から送られてくる受信ビームの方向を表すデータに基づいて、回転翼8が受信ビームを遮断するタイミングを推定する。
【0043】
次に、この発明の実施の形態2に係るヘリコプター搭載受信装置の動作を、図7に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0044】
このヘリコプター搭載受信装置では、先ず、衛星方向の算出が行われる(ステップST10)。即ち、慣性航法装置20から送られてくる機体の位置データ及び予め記憶されている通信衛星2の軌道上における位置情報(緯度、経度、高度情報)に基づいて、ヘリコプター1から見た通信衛星2の方向が算出される。この衛星方向の算出は、衛星方向算出部22によって行われる。
【0045】
次いで、受信方向が算出される(ステップST11)。即ち、ステップST10で得られた通信衛星2の方向と、慣性航法装置20から送られてくる機体の動揺データとに基づいて、受信ビームの方向が算出される。この受信方向の算出は、受信方向算出部23で行われる。なお、ヘリコプター1の受信アンテナ7は、このステップST11で算出された受信ビームの方向に向けられる。
【0046】
次いで、回転翼8が検出されたかどうかが調べられる(ステップST12)。この回転翼8の検出は、ヘリコプター1に搭載された回転翼検出器21から回転翼検出信号が出力されたかどうかを調べることによって行われる。回転翼検出器21は、上述したように、回転翼8が1回転中の特定回転位置に到達したときに、回転翼検出信号を出力する。
【0047】
このステップST12で、回転翼8が検出されていないことが判断された場合は、ステップST15の時間ダイバーシティ合成処理に移る。一方、回転翼8が検出されたことが判断された場合は、次いで、遮断タイミングの推定が行われる(ステップST13)。この遮断タイミングの推定は、遮断タイミング推定部14によって行われる。
【0048】
即ち、回転翼検出器21から回転翼検出信号が発生されることにより回転翼8の回転方向の現在位置がわかる。また、ステップST11において、ヘリコプター1の機体(又はヘリコプター搭載受信装置)から見た受信ビームの到来方向が算出されている。従って、特定位置にある回転翼8が、この受信ビームを何時遮断するかは、回転翼検出器21からの回転翼検出信号に基づいて別途算出されている回転翼8の回転速度により推定することができる。このステップST13では、受信ビーム毎に遮断されるかどうかが推定され、遮断タイミングが生成される。
【0049】
次いで、ノイズ除去が行われる(ステップST14)。このノイズ除去は、受信機12から送られてくる受信信号のうち、遮断タイミングにおける受信信号の振幅をゼロにしたダイバーシティ信号を生成することにより行われる。受信ビームが回転翼8によって遮断されたタイミングでは、熱雑音のみから成る受信信号が受信される。そこで、このタイミングで受信された受信信号の振幅をゼロにすることにより熱雑音の影響を除去することができる。
【0050】
次いで、時間ダイバーシティ合成が行われる(ステップST15)。このステップST15の処理は、上述した実施の形態1におけるステップST5の処理と同じである。上記ステップST14でノイズ除去が行われると、受信信号に含まれる情報が部分的に欠落するが、時間ダイバーシティ合成を行うことにより、他のタイミングで受信した同じ信号でその欠落した情報を補完することが可能である。少なくとも1つの受信信号を回転翼8によって遮断されないタイミングで得ることができれば受信信号の復元を良好に行うことができる。
【0051】
その後、シーケンスはステップST10に戻り、以下同様の処理が繰り返される。これにより、ヘリコプター1の回転翼8によって遮断された受信ビームを補完しつつ、連続的な受信が可能になる。
【0052】
以上説明したように、この実施の形態2に係るヘリコプター搭載受信装置によれば、実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置と同様に、回転翼8による受信ビームの遮断が発生しても、時間ダイバーシティ合成の後には良好なC/N比を有する受信信号を得ることができると共に、簡単な構成でヘリコプター搭載受信装置で実現できる。
【0053】
また、受信アンテナ7は1台で済み、回転翼検出器は元々ヘリコプターに搭載されているものを使用できるので、安価且つ小型のヘリコプター搭載受信装置を構成することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、ヘリコプター側を受信局とする通信において、受信機における受信レベルを算出し、この受信レベルに基づいてヘリコプターの回転翼による受信信号の遮断タイミングを推定し、推定したタイミングで受信信号の振幅を除去してからダイバーシティ合成を行うように構成したので、良好なC/N比を有し、小型で簡単な構造を有するヘリコプター搭載受信装置を得ることができる効果がある。
【0055】
この発明によれば、ヘリコプター側を受信局とする通信において、ヘリコプターの姿勢を表す動揺データ及び位置を表す位置データ並びに通信衛星の軌道上における位置を表す軌道データに基づいて通信衛星の方向を算出し、この算出された方向とヘリコプターの回転翼の回転位置とに基づいてヘリコプターの回転翼による受信信号の遮断タイミングを推定し、推定したタイミングで受信信号の振幅を除去してからダイバーシティ合成を行うように構成したので、良好なC/N比を有し、小型で簡単な構造を有するヘリコプター搭載受信装置を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1及び2に係るヘリコプター搭載受信装置が適用される衛星通信システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】 この発明の実施の形態1に係るヘリコプター搭載受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】 この発明の実施の形態1及び2に係るヘリコプター搭載受信装置における受信信号と遮断タイミング信号との関係を説明するための図である。
【図5】 この発明の実施の形態1及び2に係るヘリコプター搭載受信装置の時間ダイバーシティ合成処理を説明するための図である。
【図6】 この発明の実施の形態2に係るヘリコプター搭載受信装置の構成を示すブロック図である。
【図7】 この発明の実施の形態2に係るヘリコプター搭載受信装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ヘリコプター、2 通信衛星、3 地上局、4 送信回線、5 受信回線、6 送信アンテナ、7 受信アンテナ、8 回転翼、10 地上局通信装置、11 地上局用送信アンテナ、12 受信機、13 受信レベル算出部、14 遮断タイミング推定部、15 ノイズ除去部、16 時間ダイバーシティ合成部、17 復調器、18 受信信号処理部、20 慣性航法装置、21 回転翼検出器、22 衛星方向算出部、23 受信方向算出部、24 遮断タイミング推定部。
Claims (2)
- ヘリコプターに搭載され、通信衛星を経由して地上局との間で通信を行うヘリコプター搭載受信装置であって、
前記地上局から時間ダイバーシティ方式で送られてくる対象信号を受信し、受信信号として出力する受信機と、
前記対象信号の前記受信機における受信レベルを算出する受信レベル算出部と、
前記受信レベル算出部で算出された受信レベルに基づいて、前記ヘリコプターの回転翼によって前記対象信号が遮断される遮断タイミングを推定する遮断タイミング推定部と、
前記受信機から出力される受信信号のうちの、前記遮断タイミング推定部で推定された遮断タイミングにおける受信信号の振幅を除去してダイバーシティ信号を生成するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去部からのダイバーシティ信号を用いて時間ダイバーシティ合成を行う時間ダイバーシティ合成部
とを備えたことを特徴とするヘリコプター搭載受信装置。 - ヘリコプターに搭載され、通信衛星を経由して地上局との間で通信を行うヘリコプター搭載受信装置であって、
前記ヘリコプターの姿勢を表す動揺データ及び位置を表す位置データ並びに前記通信衛星の軌道上における位置を表す軌道データに基づいて前記通信衛星の方向を算出する受信方向算出部と、
前記地上局から時間ダイバーシティ方式で送られてくる対象信号を前記受信方向算出部により算出された方向から受信し、受信信号として出力する受信機と、
前記ヘリコプターの回転翼の回転位置と前記受信方向算出部で算出された通信衛星の方向とに基づいて、前記ヘリコプターの回転翼によって前記対象信号が遮断される遮断タイミングを推定する遮断タイミング推定部と、
前記受信機から出力される受信信号のうちの、前記遮断タイミング推定部で推定された遮断タイミングにおける受信信号の振幅を除去してダイバーシティ信号を生成するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去部からのダイバーシティ信号を用いて時間ダイバーシティ合成を行う時間ダイバーシティ合成部
とを備えたことを特徴とするヘリコプター搭載受信装置。
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