JP3590598B2 - 距離計測装置及び計測距離処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、距離計測装置及び計測距離処理装置に係り、さらに詳しくは、人工衛星などの飛翔体までの距離を周期的に計測して回帰分析を行う装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
測距信号の送受信により人工衛星などの飛翔体までの距離を計測することができる。つまり、地上局から人工衛星に対し測距信号を送信し、この測距信号に基づいて人工衛星が送信する測距信号を地上局において受信すれば、これらの送受信の時間差に基づいて、地上局から人工衛星までの距離を計測することができる。その際、計測された距離の誤差を補正するために回帰分析処理が行われる。この様な距離計測装置が、例えば特開平6−281717号公報、特開平10−20010号公報に開示されている。
【0003】
図9は、従来の距離計測システムの構成を示したブロック図である。この距離計測システムは、ブロック10〜12により構成される人工衛星1と、ブロック20〜28により構成される距離計測装置としての地上局2からなる。図中の10〜12は、それぞれ人工衛星のアンテナ装置、受信機、送信機である。
【0004】
また、図中の20は距離計測のための測距トーン発生回路、21は測距トーンで搬送波を変調し、高周波数帯に変換して大電力増幅する送信機、22は人工衛星1に対して電波を送出し、また人工衛星1からの微弱な電波を受信するアンテナ装置であり通常指向性の強いパラボラアンテナが使用される。23は人工衛星1からの微弱な電波を低雑音増幅し、周波数変換及び復調を行う受信機、24は復調され雑音に埋もれた受信測距トーンを追尾する受信トーンPLL回路(Phase Locked Loop)、25は送信測距トーンと受信測距トーンの位相差を検出して、衛星までの遅延時間を計測する遅延時間計測手段、26は計測された遅延時間(距離データ)に対し、入力端子T1から入力される距離データサンプルパルスに基づいて回帰分析を行う回帰分析手段、T2は回帰分析によって得られた距離計測データの出力端子である。T3は人工衛星1の軌道情報が入力される入力端子、27はこの衛星軌道情報に基づいて、アンテナ22を待ち受ける角度予測値(角度予報値)を計算するアンテナ角度予測演算手段、28は予測されたアンテナ角度に基づいて、パラボラアンテナ22を衛星方向に指向させるアンテナ制御装置である。
【0005】
次に、図9の距離計測システムの動作について説明する。地上局2では、測距トーン発生回路20において、人工衛星1までの距離を計測するための測距トーン信号(例えば正弦波信号)が発生され、送信測距トーン信号として送信機2に出力される。送信機21では、送信測距トーン信号により搬送波に変調をかけて電波として発信できる高周波数帯の信号に周波数変換され、大電力増幅される。大電力増幅された送信機21の出力は、衛星方向を自動的に指向するアンテナ装置22から、人工衛星1に向かって送出される。アンテナ角度予測演算手段27は、入力端子T3から入力される衛星軌道情報に基づいてアンテナ22の角度を予測し、アンテナ制御装置28は、この予測角度に基づいてアンテナ装置の指向角度を制御している。
【0006】
人工衛星1では、アンテナ装置10で電波を受信した後、受信機11により、低雑音増幅および周波数変換されてベースバンド帯の測距トーン信号に一度復調された後、再度、送信機12により搬送波変調、周波数変換および電力増幅されて地上局2に向けて送出される。 人工衛星1からの電波が地上局2のアンテナ装置22により受信されると、受信機23で低雑音増幅、周波数変換及び復調が行われ、受信測距トーン信号として出力される。
【0007】
このとき、衛星からの電波は非常に微弱であるため、復調された受信測距トーン信号は、熱雑音に埋もれている。受信トーンPLL回路24は受信測距トーン信号を狭帯域トラッキングフィルタで追尾して雑音を除去し、S/Nの良好な受信測距トーン信号として遅延時間計測手段25へ出力している。遅延時間計測手段25では、送信測距トーン信号と受信測距トーン信号の間の位相差を計測することにより電波が人工衛星1との間を往復する遅延時間を計測し、光速を用いて衛星までの距離に換算している。
【0008】
ここで、受信トーンPLL回路24は、衛星のダイナミックな動きを追尾する必要があるため、その帯域をあまり狭くすることできず、受信トーンPLL回路24によるS/Nの改善度には限界がある。すなわち、人工衛星1と地上局2間の距離は時々刻々変化しているため、計測される距離には、変化率が一定の速度成分のみならず、変化率の変化率である加速度成分も含まれている。その結果、受信測距トーンの位相は速度成分だけでなく加速度成分をも含んでいる。特に低軌道の周回衛星の場合この傾向が顕著となる。受信トーンPLL回路24は位相変動の加速度成分を精度よく追尾する必要があり、PLLの帯域をあまり狭くすることはできず、受信トーンPLL回路24によるS/Nの改善には限界があった。
【0009】
このため、距離計測の精度を向上させるためには、遅延時間計測手段25の出力に対して回帰分析を行うことが考えられる。すなわち、遅延時間から換算された距離データに対し、端子T1から入力される距離データサンプルパルスによる一定時間間隔内で回帰分析手段26により回帰分析を行えば、距離データの雑音によるばらつきを小さくすることができる。
【0010】
遅延時間計測手段25の出力は衛星までの距離データであり、計測された時刻t(i=0,1,2,…)について値R(i=0,1,2…)が出力される。Rは雑音により、ランダムなばらつきを持つ値である。今、距離データサンプル間隔を例えば1秒とし、1秒間にN個の距離Ri(i=0,1,2,…,N−1)が計測されたとする。これらのRについて、回帰直線R=a・t+bに対するRのばらつきが最小2乗法則で最小となる係数a、bを求めれば、補正後のRを求めることができる。
【0011】
この様な回帰直線により衛星までの距離を近似しているのは、衛星までの距離が特に地球を周回する衛星では時々刻々変化しているからであり、また、直線で近似することにより、回帰分析が単純になるためである。この結果、1秒間の平均化データとして、回帰直線R=a・t+bにおいて、たとえばt=0の値を出力することことより、もとあったRのばらつきを小さくすることができる。Rのばらつきを小さくするためには、できるだけ多くのデータを使って回帰分析することが望ましく、回帰分析する時間は距離計測サンプル間隔内で、できるだけ長いほうが望ましい。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の距離計測方式は以上のように構成されており、静止衛星のような距離変化の少ない軌道の衛星については、上記の様な線形回帰分析を行っても特に問題ない。しかしながら、低高度軌道周回移動衛星のような地上局との距離変化が大きい軌道の衛星に対しては、衛星までの距離が線形で近似できなくなることによる誤差が発生するという問題点があった。
【0013】
すなわち、移動衛星では、衛星までの距離変化の加速度成分が存在するため、回帰分析を行う時間が長くなると、線形で距離を近似できなくなり計測誤差が発生する。しかしながら、雑音による距離データのばらつきを抑えるには、回帰分析を行う時間は、距離計測サンプル間隔の範囲内で、できるだけ長くする必要があるというジレンマがあった。
【0014】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、衛星までの距離の変動に加速度成分を含む飛翔体、例えば低高度軌道周回移動衛星の距離計測を行う場合に、回帰分析により計測誤差を低減するとともに、回帰分析による分析誤差を低減して高精度な計測を行う距離計測装置及び計測距離処理装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明による距離計測装置は、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星までの距離の加速度に応じて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えて構成される。
【0016】
請求項2に記載の本発明による距離計測装置は、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、上記人工衛星の軌道情報に基づいて人工衛星までの距離の加速度を求める加速度演算手段と、求められた加速度に基づいて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えて構成される。
【0017】
請求項3に記載の本発明による距離計測装置は、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星からの受信信号のドップラ計測結果に基づいて人工衛星までの距離の加速度を求める加速度演算手段と、求められた加速度に基づいて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えて構成される。
【0018】
請求項4に記載の本発明による距離計測装置は、分析時間変更手段が、人工衛星までの距離の加速度がより大きい場合の分析期間を加速度がより小さい場合の分析期間に比べて短くすることを特徴とする請求項2又は3に記載の距離計測装置。
【0019】
請求項5に記載の本発明による距離計測装置は、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、測距信号の送受信角度に応じて分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えて構成される。
【0020】
請求項6に記載の本発明による距離計測装置は、人工衛星の軌道情報に基づいて測距信号のためのアンテナ角度を予測する角度予測手段を備え、分析時間変更手段が、予測されたアンテナ角度に基づいて分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えて構成される。
【0021】
請求項7に記載の本発明による距離計測装置は、測距信号の送受信を行うアンテナと、周期的に送信測距信号を生成する送信手段と、受信信号から受信測距信号を検出する受信処理手段と、送信測距信号及び受信測距信号に基づいて人工衛星までの距離を計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星までの距離の加速度に応じて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えて構成される。
【0022】
請求項8に記載の本発明による計測距離処理装置は、周期的に計測された人工衛星までの距離について所定の分析時間に関する回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星までの距離の加速度に応じて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えて構成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。図中の30は衛星軌道情報に基づいて衛星までの距離変化の加速度成分を推定する加速度推定手段、31は推定された加速度の大きさに応じて回帰分析を行う分析時間を決定する回帰分析時間決定手段である。なお、従来の距離測定装置の構成部分に相当するブロックには同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
入力端子T3には、衛星軌道情報として、例えば軌道6要素のような衛星の位置や速度に関する情報が入力され、加速度推定手段30では、この衛星軌道情報に基づいて人工衛星との距離の加速度が求められる。この加速度に基づいて、回帰分析時間決定手段31で回帰分析の分析時間が決定され、回帰分析手段26は、この分析時間について回帰分析を行う。つまり、衛星軌道情報に基づき計測値の加速度を予測し、この予測結果により分析時間を可変制御している。
【0025】
図5は、地球を周回する衛星軌道の一例を示した説明図である。この衛星軌道は、地球を周回する周回円軌道であり、地上局の真上(天頂)を通る軌道(パス)が図示されている。図中のhは衛星の高度、R(t)は地上局から衛星までの距離、Rは地球の半径、tは時間、ωは衛星移動角速度、θは地上局から衛星を見た場合の仰角(EL角度)である。なお、時間tは、天頂通過時を基準(t=0)とした時刻の意である。
【0026】
図6は、衛星までの距離R(t)の回帰分析結果の一例を示した図であり、天頂付近の衛星について分析時間1秒で線形回帰解析を行った結果が示されている。天頂通過時を基準とした地上局から衛星までの距離の変化量(すなわち衛星高度hとの差)を縦軸とし、天頂通過時からの経過時間を横軸として示している。また、理論値が波線で示され、回帰分析結果が実線で示されている。なお、この回帰分析は、理論値に対して行われ、雑音によるばらつきは考慮されていない。また、分析時間を1秒とし、分析方法を線形として行われた。この図によれば、線形回帰分析結果にはR(t)が線形に変化しないことによる誤差、例えばt=0(天頂)で5m程度の誤差が発生していることがわかる。
【0027】
図7は、衛星までの距離R(t)の回帰分析結果の他の例を示した図であり、天頂から離れた衛星について分析時間1秒で線形回帰解析を行った結果が示されている。すなわち、天頂通過後200秒〜201秒における衛星までの距離を、天頂通過後200秒を基準とした地上局から衛星までの距離の変化量を縦軸とし、天頂通過200秒後からの経過時間を横軸として示している。分析時間は1秒、分析方法は線形であり図6の場合と同様である。図7によれば、天頂通過200秒後の距離誤差は、回帰分析時間を1秒としたにもかかわらず、約0.2mと小さくなっていることがわかる。
【0028】
すなわち、周回円軌道衛星では、天頂付近で衛星までの距離変化の加速度成分が最大となり、天頂を通過してから時間が経過すると、加速度成分が小さくなっている。このため、分析時間が同じでも、天頂から離れると、回帰分析による分析誤差は小さくなる。
【0029】
図8は、衛星までの距離R(t)の回帰分析結果の他の例を示した図であり、天頂付近の衛星について分析時間0.2秒で線形回帰解析を行った結果である。この図によれば、天頂付近の回帰分析による距離誤差は約0.2mとなり、図6の分析時間が1秒の場合に比べて、回帰分析による分析誤差が小さくなっていることがわかる。
【0030】
図6〜図8により、天頂付近では回帰分析時間を短くして衛星の加速度運動による回帰分析誤差を小さくし、衛星が天頂を通過した後は回帰分析時間を長くして、雑音による計測距離データのばらつきを抑えることが望ましいことがわかる。図1における加速度推定手段30は端子T3に入力される衛星軌道情報に基づいて、測定対象となる衛星の軌道位置に基づいて、その距離の加速度変化分を推定する。衛星の軌道がわかれば、地上局と衛星までの距離の加速度成分は計算により算出することができる。
【0031】
次に、回帰分析時間決定手段31は、この加速度の大きさに基づいて、距離誤差が最適になるように回帰分析時間を決定する。雑音による計測距離データのばらつきを抑えるには分析時間は長い方がよいが、加速度変化による回帰分析誤差を抑えるには分析時間は短い方がよい。この相反する要求を両立させる様、回帰分析時間決定手段31が推定加速度に基づいて分析時間を可変調整する。つまり、加速度に応じて分析時間を異ならせている。
【0032】
例えば、推定された加速度を所定の加速度閾値と比較し、この閾値以下であれば回帰分析時間を長くし、この閾値を越えれば回帰分析時間を短くすればよい。また、加速度閾値を複数とし、回帰分析時間を他段階に変化させてもよい。さらに、推定加速度をパラメータとする演算式が予め与えられ、演算により回帰分析時間を求めてもよい。
【0033】
本実施の形態によれば、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段とを有する距離計測装置が、人工衛星までの距離の加速度に応じて分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えている。このため、回帰分析による計測誤差の低減と、回帰分析による分析誤差の低減とを両立させた高精度な計測を行うことができる。つまり、雑音によるばらつきを持った距離計測データに対し回帰分析を行う際、その分析時間を衛星までの距離の加速度成分による誤差を小さくしつつ最長となるように制御することができる。
【0034】
上記分析時間変更手段は、衛星までの距離の加速度が大きい場合の分析時間を加速度が小さい場合の分析時間に比べて短くすることにより、加速度が大きい場合の分析誤差を低減するとともに、加速度が小さい場合のばらつきなどの計測誤差を低減することができる。この場合、天頂付近の分析時間が最も短くなる。
【0035】
また、本実施の形態では、衛星軌道情報を用いて地上局と衛星間の加速度成分の大きさを計算している。このため、地上局が衛星を追尾する前に時間の関数として加速度成分の大きさを求めることができ、正確な加速度を予測することができるという効果がある。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では、衛星軌道情報を直接用いて、衛星の軌道位置から回帰分析時間を決定する場合の例について説明した、本実施の形態では、アンテナ角度情報を用いて回帰分析時間を決定する場合について説明する。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態2による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。図中の32はアンテナ角度の予測値に基づいて衛星までの距離変化の加速度成分を推定する加速度推定手段、31は推定された加速度の大きさに応じて回帰分析を行う分析時間を決定する回帰分析時間決定手段である。なお、図1の距離測定装置の構成部分に相当するブロックには同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
加速度推定手段32に入力されるアンテナ角度の予測値は、入力端子T3から入力される衛星軌道情報に基づいて、アンテナ角度予測演算手段27により求められた値である。この場合、正確な加速度を求めることは困難であるが、地上局アンテナの仰角が低いときは加速度が小さく、仰角が高いときは加速度が大きいという関係から、容易に複雑な計算なしである程度の精度で加速度の大きさを推定することができる。
【0039】
本実施の形態によれば、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段とを有する距離計測装置が、測距信号の送受信角度に応じて分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えている。このため、回帰分析による計測誤差の低減と、回帰分析による分析誤差の低減とを両立させた高精度な計測を行うことができる。
【0040】
すなわち、上記分析時間変更手段は、アンテナ角度が大きい場合の分析時間を加速度が小さい場合の分析時間に比べて短くすることにより、加速度が大きい場合の分析誤差を低減するとともに、加速度が小さい場合のばらつきなどの計測誤差を低減することができる。
【0041】
アンテナ角度(特に仰角)と衛星距離の加速度との間には相関関係があるため、この様な構成によりアンテナ角度に基づいて高精度の距離計測を行うことができ、しかもアンテナ角度に基づいて分析時間を決定しているので、複雑な演算処理を行う必要がないという効果がある。
【0042】
実施の形態3.
実施の形態2では、アンテナ角度の予測値を用いて、回帰分析時間を決定する場合の例について説明したが、本実施の形態では、アンテナ駆動信号を用いて回帰分析時間を決定する場合について説明する。
【0043】
図3は、本発明の実施の形態3による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。図中の33はアンテナ駆動信号に基づいて衛星までの距離変化の加速度成分を推定する加速度推定手段、31は推定された加速度の大きさに応じて回帰分析を行う分析時間を決定する回帰分析時間決定手段である。なお、図1の距離測定装置の構成部分に相当するブロックには同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
加速度推定手段33に入力されるアンテナ駆動信号は、アンテナ角度の予測値に基づいてアンテナ制御装置28により求められ、アンテナ22を予測角度に実際に駆動するための駆動制御信号である。この場合、正確な加速度を求めることは困難であるが、地上局アンテナの仰角が低いときは加速度が小さく、仰角が高いときは加速度が大きいという関係から、容易に複雑な計算なしである程度の精度で加速度の大きさを推定することができる。
【0045】
この様にアンテナを実際に駆動しているアンテナ駆動信号を用いても、衛星の軌道位置が推定できるので、回帰分析時間の決定に用いることができる。この場合、正確な加速度は計算するのは困難であるが、地上局アンテナの仰角が低いときは加速度が小さく、仰角が高いときは加速度が大きいという関係から、容易に、複雑な計算なしである程度の精度で加速度の大きさをリアルタイムに推定することができる。
【0046】
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、端子T3から入力される衛星軌道情報に基づいて回帰分析時間を決定する場合の例について説明したが、本実施の形態では、ドップラ計測データ(速度計測データ)に基づいて回帰分析時間を決定する場合について説明する。
【0047】
図4は、本発明の実施の形態4による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。図中のT3はドップラ計測データが入力される端子、34はドップラ計測データに基づいて衛星までの距離変化の加速度成分を推定する加速度推定手段、31は推定された加速度の大きさに応じて回帰分析を行う分析時間を決定する回帰分析時間決定手段である。なお、図1の距離測定装置の構成部分に相当するブロックには同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
入力端子T3から入力されるドップラー計測データは、図示しないドップラ計測装置において、受信信号のドップラ成分に基づいて計測される速度計測データであり、衛星までの距離の変化率である。加速度推定手段34は、このドップラ計測データの変化率として加速度を求めて回帰分析時間決定手段31へ出力する。
【0049】
本実施の形態によれば、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星からの受信信号についてドップラ計測を行うドップラ計測手段と有する距離計側装置が、ドップラ計測データに基づいて人工衛星までの距離の加速度を求める加速度演算手段と、求められた加速度に基づいて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えている。このため、回帰分析による計測誤差の低減と、回帰分析による分析誤差の低減とを両立させた高精度な計測を行うことができる。
【0050】
また、ドップラ計測データに基づいて分析時間を決定しているため、実際の衛星と地上局間の速度情報からリアルタイムに速度情報を求めて分析時間を決定できるという効果がある。
【0051】
なお、実施の形態1〜4では、地上局2に回帰分析手段26が含まれる場合の例について説明したが、遅延時間計測手段25の距離データを出力する地上局2と、この距離データについて回帰分析を行う計測距離処理装置とにより構成することもできる。この場合、計測距離処理装置は、回帰分析手段26及び回帰分析時間決定手段31からなり、適宜、加速度推定手段30,32、33、34を含めて構成される。
【0052】
【発明の効果】
本発明による距離計測装置は、測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星までの距離の加速度に応じて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えている。このため、回帰分析による計測誤差の低減と、回帰分析による分析誤差の低減とを両立させた高精度な計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態2による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態3による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態4による距離計測装置の一構成例を示したブロック図である。
【図5】人工衛星の軌道と地上局および距離計測を説明する図である。
【図6】衛星までの距離R(t)の回帰分析結果の一例を示した図であり、天頂付近の衛星について分析時間1秒で線形回帰解析を行った結果が示されている。
【図7】衛星までの距離R(t)の回帰分析結果の他の例を示した図であり、天頂から離れた衛星について分析時間1秒で線形回帰解析を行った結果が示されている。
【図8】衛星までの距離R(t)の回帰分析結果の他の例を示した図であり、天頂付近の衛星について分析時間0.2秒で線形回帰解析を行った結果である。
【図9】従来の距離計測システムの構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
1 人工衛星、10 衛星アンテナ、11 衛星受信機、12 衛星送信機、
2 地上局、 20 測距トーン発生回路、 21 地上局送信機、
22 地上局アンテナ、23 地上局受信機、24 受信トーンPLL回路、
25 遅延時間計測回路、 26 回帰分析手段、
27 アンテナ角度予測演算手段、28 アンテナ制御装置、
30,32,33,34 加速度推定手段、 31回帰分析時間決定手段
T1 距離データサンプルパルス入力端子、T2 距離計測データ出力端子、
T3 衛星軌道情報入力端子、T4 ドップラー計測データ入力端子

Claims (8)

  1. 測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星までの距離の加速度に応じて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えたことを特徴とする距離計測装置。
  2. 測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、上記人工衛星の軌道情報に基づいて人工衛星までの距離の加速度を求める加速度演算手段と、求められた加速度に基づいて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えた距離計測装置。
  3. 測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星からの受信信号のドップラ計測結果に基づいて人工衛星までの距離の加速度を求める加速度演算手段と、求められた加速度に基づいて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えた距離計測装置。
  4. 上記分析時間変更手段は、人工衛星までの距離の加速度がより大きい場合の分析期間を加速度がより小さい場合の分析期間に比べて短くすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の距離計測装置。
  5. 測距信号の送受信時間差に基づいて人工衛星までの距離を周期的に計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、測距信号の送受信角度に応じて分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えた距離計測装置。
  6. 上記人工衛星の軌道情報に基づいて測距信号のためのアンテナ角度を予測する角度予測手段を備え、上記分析時間変更手段が、予測されたアンテナ角度に基づいて分析時間を変更することを特徴とする請求項5に記載の距離計測装置。
  7. 測距信号の送受信を行うアンテナと、周期的に送信測距信号を生成する送信手段と、受信信号から受信測距信号を検出する受信処理手段と、送信測距信号及び受信測距信号に基づいて人工衛星までの距離を計測する計測手段と、所定の分析時間における計測距離について回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星までの距離の加速度に応じて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えたことを特徴とする距離計測装置。
  8. 周期的に計測された人工衛星までの距離について所定の分析時間に関する回帰分析を行う回帰分析手段と、人工衛星までの距離の加速度に応じて上記分析時間を変更する分析時間変更手段とを備えたことを特徴とする計測距離処理装置。
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