JP4136107B2 - 浄水用凝集剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浄水用凝集剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、飲料水中のアルミニウム(Al)に関して濃度規制が行われるようになり、世界保健機構(WHO)の飲料水水質ガイドラインでは0.2mg/L、米国環境保護庁(US.EPA)の安全飲料水法第二種飲料水規制では0.05〜0.2mg/L(暫定)、欧州共同体(EC)の飲料水水質基準ではガイドレベルを0.05mg/L、最大許容濃度を0.2mg/Lと定めている。
【0003】
一方、日本においても厚生省が定めた水道水質に関する基準の快適水質項目(平成4年12月21日)にAlが示され、その目標値を0.2mg/L以下と定めている。
【0004】
現在、多くの浄水施設では、通常0.数mg/LのAlを含有する河川水等を急速ろ過方式によって処理しており、凝集剤としてはポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム系の凝集剤が主に使用されている。しかしながら、水処理技術1995年、第36巻、No.4、第13〜19頁には、凝集剤を注入していた20施設、計57件の浄水について調査した結果、浄水のAl濃度の最高値は0.18mg/Lであり、快適水質項目等で示されている0.2mg/Lを超えるものは存在しないものの、ECの飲料水水質基準(ガイドレベル)等で示される0.05mg/Lを超えるものが報告されている。
【0005】
これらの観点より、凝集処理後の水に残存するAl濃度(以下、残存Al濃度と称する)の低い浄水用凝集剤の開発が要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況下に鑑み、本発明者等は浄水施設等においてろ過処理後の浄水中に残存するAl濃度を低減し得る凝集剤を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分の含有量を特定量以下にした塩基性塩化アルミニウムよりなる浄水用凝集剤を用いる場合には、従来のPACと同等の凝集性能と保存安定性を維持しながら、処理後の浄水中の残存Al濃度を低減し得ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の第1は、ナトリウム含有量(Na換算)がアルミナ含有量(Al2O3換算)に対する重量比で0.01以下であり、かつ塩基度が40〜80%である塩基性塩化アルミニウムよりなる浄水用凝集剤を提供するにある。
【0008】
本発明の第2は、ナトリウム含有量(Na換算)がアルミナ含有量(Al 2 O 3 換算)に対する重量比で0.01以下であり、かつ塩基度が65〜75%である塩基性塩化アルミニウムよりなる浄水用凝集剤を製造する方法であり、水酸化アルミニウムと塩酸とを加圧下で反応させて塩基度40〜60%の塩基性塩化アルミニウムとした後、該塩基性塩化アルミニウムに、アルミナゲルを添加することを特徴とする上記浄水用凝集剤の製造方法を提供するにある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の第1の浄水用凝集剤は塩基性塩化アルミニウムよりなり、かつ塩基度が40〜80%、好ましくは55〜75%、さらに好ましくは65〜75%であることを特徴とする。塩基度が上記範囲を外れると十分な凝集性能が得られない。また、塩基度が80%より高いと保存安定性が低下する。
【0010】
本発明の第1の浄水用凝集剤のナトリウム含有量(Na換算)は、浄水用凝集剤のアルミナ含有量(Al2O3換算)に対する重量比で0.01以下、好ましくは0.005以下であることを特徴とする。ナトリウム含有量が0.01より多いと残存Al濃度が高くなる。
【0011】
本発明の第1の浄水用凝集剤のアルミナ含有量(Al2O3換算)は、使用条件、その製造方法、ナトリウム含有量、塩基度等により異なり一義的ではないが、通常、約8〜25重量%、好ましくは約16〜25重量%である。アルミナ含有量が約25重量%より高い場合、保存安定性が低下する場合がある。
【0012】
本発明の第2の浄水用凝集剤の製造方法は、まず、水酸化アルミニウムと塩酸とを加圧下で反応させて塩基度40〜60%の塩基性塩化アルミニウムを得ることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の製造方法において用いる水酸化アルミニウムは、従来公知のものであればよく特に制限はない。安価で入手しやすいことからバイヤー法により得られる水酸化アルミニウム、特に塩酸等との反応性にも優れる酸易溶性水酸化アルミニウムの適用が推奨される。
【0014】
本発明の第2の製造方法において用いる塩酸は、特に制限はなく市販のものを用いればよく、通常約30%以上の濃塩酸の適用が推奨される。
【0015】
反応温度は通常約120〜180℃、好ましくは約150〜165℃である。また、反応時間は反応温度により異なり一義的ではないが通常約1〜10時間である。反応圧力は反応温度等により異なり一義的ではないが通常約2〜10気圧である。
【0016】
本発明の第2の浄水用凝集剤の製造方法は、次いで、塩基性塩化アルミニウムに水及び/またはアルミナゲルを添加することを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の製造方法にて用いるアルミナゲルは、従来公知のものであればよく特に制限はないが、得られる浄水用凝集剤のナトリウム含有量を下げられることから、ナトリウム含有量の低いもの、好ましくはアルミナ含有量に対する重量比で約0.01以下のものの適用が推奨される。アルミナゲルの調製方法としては、例えば、硫酸アルミニウムとアルミン酸アルカリを反応させる方法、塩化アルミニウムとアルミン酸アルカリを反応させる方法、アルミン酸アルカリと炭酸アルカリとの混合液に硫酸アルミニウムを反応させる方法、塩基性塩化アルミニウムとアルミン酸アルカリ、アルミン酸アルカリと炭酸アルカリとの混合液に塩基性塩化アルミニウムを反応させる方法等があり、好ましくは塩基性塩化アルミニウムとアルミン酸アルカリ、アルミン酸アルカリと炭酸アルカリとの混合液に塩基性塩化アルミニウムを反応させる方法が挙げられる。また、凝集剤のナトリウム含有量を低減する目的で、次いでろ過、洗浄等による脱塩(脱ナトリウム)処理を行ってもよい。
【0018】
アルミナゲルの調製に際しては、例えば、攪拌機付きの反応容器に水を入れ、次いで、アルミン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及び水を混合したアルカリ溶液と塩基性塩化アルミニウムと水を混合した酸性溶液とを攪拌しながら常温下同時に添加すればよい。さらに得られたアルミナゲルを水で希釈しリパルプ洗浄後、ろ過等固液分離して脱塩処理することも勿論可能である。
【0019】
本発明の第2の浄水用凝集剤の製造方法において、水及び/またはアルミナゲルを添加するに際しては、塩基性塩化アルミニウムのアルミナ含有量、塩基度、アルミナゲルのアルミナ含有量及び浄水用凝集剤の目標アルミナ含有量、目標塩基度等により、水添加量、アルミナゲル添加量、添加順序等を適宜決めればよい。
【0020】
本発明の第2の浄水用凝集剤の製造方法を行うに際しては、例えば、密閉可能な反応容器に塩酸を入れ、次いで攪拌しながら水酸化アルミニウムを入れた後、反応容器を密閉し、必要に応じて加温し、加圧下で塩酸に水酸化アルミニウムを溶解させて塩基度40〜60%の塩基性塩化アルミニウムを得、次いで約40〜約60℃で該塩基性塩化アルミニウムに水及び/またはアルミナゲルを攪拌しながら添加すればよい。
【0021】
本発明の第2の製造方法により得られる浄水用凝集剤は、ナトリウム含有量がアルミナ含有量に対する重量比で0.01以下、好ましくは0.005以下であり、かつ塩基度が40〜80%、好ましくは55〜75%、さらに好ましくは65〜75%である塩基性塩化アルミニウムよりなる。該浄水用凝集剤は、通常、アルミナ含有量が約8〜約25重量%、好ましくは約16〜約25重量%である。
【0022】
本発明の浄水用凝集剤を浄水施設等で使用する場合、その添加量(Al2O3換算)は通常、河川水等の水に対して約1〜約100ppmである。添加量が約1ppmより少ないと、十分な凝集効果が得られない場合がある。また、添加量が約100ppmより多いと、添加量に見合う効果が得られないばかりか、残存Al濃度が増加する場合がある。
【発明の効果】
以上詳述した如く、本発明の浄水用凝集剤は従来のPACと同等の凝集性能及び200日以上の保存安定性を有し、かつ河川水等を処理する浄水施設に適用する場合には残存Al濃度を低減できることから、その産業上の利用価値は大である。
【0023】
【実施例】
以下、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によりその範囲を制限されるものではない。塩基性塩化アルミニウム及び浄水用凝集剤の分析、凝集性能、保存安定性、水中の残存Al濃度の測定は以下の方法で行った。
【0024】
塩基性塩化アルミニウム、浄水用凝集剤の分析:
アルミナ含有量(Al2O3換算)〔重量%〕: JIS K1475(1996年)による。
塩基度〔%〕: JIS K1475(1996年)による。
ナトリウム含有量(Na換算)〔mg/L〕: 無炎原子吸光法による。
【0025】
凝集性能:
(1)供試水
淀川表流水(濁度12.8、アルカリ度28度、PH7.2/25℃、Al濃度0.29mg/L)を用いた。尚、Al濃度は、採取した水をそのまま無炎原子吸光度計(AA−670、株式会社島津製作所製)により測定した。
(2)ジャーテスト
供試水各1Lを1Lビーカー4ヶに分取し、各ビーカーに浄水用凝集剤をAl2O3換算で1.5、2.0、2.5、3.0mg/Lを添加し、100rpmで1分間、50rpmで10分間攪拌後、10分間静置した。次に、上澄み液を採取して濁度を測定した。各ビーカー4ポイントの平均除濁率により凝集性能(除濁性能)を評価した。尚、除濁率は以下の計算式より導出した。
除濁率(%)={1−(上澄み液の濁度/供試水の濁度)}×100
(3)判定基準
凝集性能は平均除濁率95%以上が合格(○)、95%未満が不合格(×)である。
【0026】
保存安定性〔日〕:浄水用凝集剤150mlを広口瓶に採集密栓し、20℃の恒温槽に放置し溶液の径時変化を観察した。
【0027】
残存Al濃度〔mg/L〕:ジャーテスターで得た上澄液を0.45μメンブランフィルターで濾過し、濾液中のAl濃度を無炎原子吸光度計(AA−670、株式会社島津製作所製)により測定した。
【0028】
実施例1
塩基性塩化アルミニウムの調製
水酸化アルミニウム(Al2O3含有量60.6%)431.1重量部と塩酸(35.8%)768.9重量部を反応容器に添加し、撹拌しながら158℃に昇温し、2.5時間保持した。このときの圧力は4.5気圧であった。放冷後、反応液をろ過して未反応の水酸化アルミニウムを除去し塩基性塩化アルミニウム(Al2O3含有量20.1%、塩基度50.1%)を得た。尚、未反応の水酸化アルミニウムは8.3%であった。
【0029】
アルミナゲルの調製
予め200.0重量部の水を投入した撹拌機付き反応容器中に、アルミン酸ナトリウム(Al2O3含有量25.9%、Na2O/Al2O3モル比=1.2)332.5重量部と炭酸ナトリウム(96%)78.0重量部および水600.8重量部を混合したアルカリ溶液と、塩基性塩化アルミニウム(Al2O3濃度19.8%、塩基度49.0%)575.2重量部と水436.2重量部を混合した酸性溶液とを、撹拌しながら常温下同時に添加した後、脱塩処理の為、水にてAl2O3濃度約3%に希釈後、ろ過、洗浄しアルミナゲルを得た。
【0030】
50℃に保持した状態で塩基性塩化アルミニウム1164重量部にアルミナゲル960重量部を攪拌しながら1時間で添加し、2時間保持した後、ろ過して浄水用凝集剤を得た。この浄水用凝集剤の物性及び凝集性能、保存安定性、水中の残存Al濃度を表1に示す。
【0031】
比較例1
50℃に保持した状態で実施例1に用いたと同じ塩基性塩化アルミニウム1164重量部に水1200重量部を攪拌しながら1時間で添加し、2時間保持した後、ろ過して浄水用凝集剤を得た。この浄水用凝集剤の物性及び凝集性能、保存安定性、水中の残存Al濃度を表1に示す。
【0032】
比較例2
市販のポリ塩化アルミニウム(JIS規格品)の物性及び凝集性能、保存安定性、水中の残存Al濃度を表1に示す。
【0033】
比較例3
実施例1で得られた浄水用凝集剤に硫酸ナトリウムを常温で添加し、ナトリウム含有量の高い浄水用凝集剤を得た。この浄水用凝集剤の物性及び凝集性能、保存安定性、水中の残存Al濃度を表1に示す。
【0034】
【表1】
Claims (4)
- ナトリウム含有量(Na換算)がアルミナ含有量(Al2O3換算)に対する重量比で0.01以下であり、かつ塩基度が65〜75%である塩基性塩化アルミニウムよりなる浄水用凝集剤を製造する方法であり、
水酸化アルミニウムと塩酸とを加圧下で反応させて塩基度40〜60%の塩基性塩化アルミニウムとした後、該塩基性塩化アルミニウムに、脱塩処理されたアルミナゲルを添加することを特徴とする前記浄水用凝集剤の製造方法。 - 水酸化アルミニウムと塩酸とを2〜10気圧下で反応させることを特徴とする請求項1に記載の浄水用凝集剤の製造方法。
- 水酸化アルミニウムと塩酸とを加圧下、120℃〜180℃で反応させることを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載の浄水用凝集剤の製造方法。
- アルミナゲルが、アルミン酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合液に塩基性塩化アルミニウムを反応させて得られたものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の浄水用凝集剤の製造方法。
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