JP4135127B2 - 磁場発生装置の組立方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は磁場発生装置の組立方法に関し、特に磁極片を永久磁石上に設置する方法に関する。本発明は、永久磁石を用いた磁気共鳴撮影装置(MRI)に適用して好適である。
【0002】
磁気共鳴撮影装置(MRI)に使用する永久磁石は希土類磁石が主流となっている。本発明ではMRIを例にとって説明するが、本発明に係る組立方法は、MRIに限定されることなくMRI以外の磁場発生装置の組立方法にも適用可能である。
【0003】
【従来の技術】
図1は、本発明が適用される「永久磁石を用いたMRI」の概略を説明する図である。MRI自体は当業者にとって周知なので簡単な説明に止める。尚、説明を簡単にするため、MRIを単に磁場発生装置と称する場合がある。
【0004】
図1に示すように、磁場発生装置10の一部を構成する継鉄(ヨーク)12の内部に、異極同士を対向させた永久磁石14a及び14bが設けられている。永久磁石14a及び14bの対向面に、外周に環状突起部16a及び16bを夫々有する磁極片(軟鉄等の磁性体からなる整磁板)18a及び18bを設け、これらの磁極片間に均一磁場20を発生させている。継鉄12は、上下の板状の磁性体12a及び12b、側部に設けた柱状の磁性体12c及び12dから構成される。
【0005】
図1に示す磁場発生装置10を組み立てる際、磁極片18a及び18bの夫々を永久磁石14a及び14b上に設置する工程がある。従来、磁極片を磁石上に設置する方法として次の2通りがあった。
【0006】
従来の第1の組立(設置)方法によれば、継鉄12を上下2つの継鉄部に分割して製作する。分割した上下2つの継鉄部に永久磁石14a及び14bを夫々設けた後、磁極片18a及び18bを夫々磁石14a及び14bの表面に設置し、分割した2つの継鉄部を組み立てる。
【0007】
一方、従来の第2の組立方法によれば、継鉄12を一体として製作し、永久磁石14a及び14bを上下に設ける。その後、磁極片18a及び18bを夫々磁石14a及び14bの上を滑らせて設置していた。
【0008】
この第2の方法では、継鉄部に磁極片を誘導するガイドレールを取り付けると共に、磁石と磁極片との間に合成樹脂製の丸棒を複数本設けて磁極片を滑らせながら所定位置に設置するか、或いは、丸棒の代わりに、磁石と磁極片の表面にグリース等の潤滑剤を塗布し、磁極片を磁石上を滑らせながら所定位置に設置していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の第1の方法によれば、上下2つの継鉄部を組み立てる際、上下に設置した磁石の吸引力が極めて大きい(例えば約数10トン)ために、組み立てに使用する継鉄を保持する装置を頑丈に製作する必要があるため組立時の費用が高騰するという問題があった。
【0010】
一方、第2の方法は、第1の方法に比べて「磁極片の設置」を小規模の装置で行うことができる利点がある。しかし、第2の方法では、磁極片18a及び18bを滑らせながら夫々磁石14a及び14bの所定位置に設置する(組み立てる)場合、磁極片18a及び18bを同方向から装置に挿入すると次のような問題があった。
【0011】
即ち、図2に示すように、永久磁石14a及び14bが夫々矢印で示す厚み方向に磁化されているとすると、磁極片18aは永久磁石14aに近づくと矢印22aで示す方向に磁化され、一方、磁極片18bは永久磁石14bに近づくと矢印22bで示す方向に磁化される。
【0012】
したがって、磁極片18a及び18bが、夫々、磁石14a及び14bの所定位置に設置されると、環状突起部16a及び16bの間に磁力線30が形成される。つまり、図3の右側の磁力線30は、永久磁石14bから14aに向かう磁力線(図示せず)と同方向のために図3の右側の磁界が強くなり、一方、図3の左側の磁力線30は、永久磁石14bから14aに向かう磁力線と逆方向のため、図3の左側の磁界が弱くなる。
【0013】
即ち、磁極片18a及び18bを同方向から装置に挿入すると、組込んだ側の磁場が強くなり、反対側の磁場が弱くなる。ところで、MRI用の磁極片は、比較的保磁力の低い材料(例えば軟鉄)を使用した直径が約1m程度の大型の円盤であり、円盤状に製作したことに起因する形状異方性と、小さいながら保磁力を持つことにより、組立の際に磁化された履歴を消すことは出来なかった。したがって、磁極片18a及び18bの間の空間の中央部に形成される均一磁場が狭まると共に、均一磁場が球状にならないため、高い均一磁場を高範囲に確保したいというMRI用の磁場発生装置では問題であった。
【0014】
【発明の目的】
したがって、本発明は、第1及び第2の従来例に付随する上述の問題点を克服できる磁場発生装置の組立方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の実施の形態に係る磁場発生装置の組立方法では、厚み方向に磁化された1対の永久磁石を上下方向に対向させて継鉄内部に配置し、上記1対の永久磁石の夫々の空隙側表面に磁極片を設け、該磁極片間の空間に磁場を発生させる磁場発生装置において、上記磁極片を上記永久磁石上を滑らせて装置に組込む際に、上側と下側の磁極片を逆方向から装置に挿入することを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
図4〜図6を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。図4〜図6では、従来例の説明に使用した構成部品と同様な部分には図1〜図3で使用したと同一の参照符号を使用している。尚、以下の説明では、必要に応じて従来例の説明に使用した図1〜図3に言及する。
【0017】
本発明に係る実施の形態は、従来の第2の組立方法と同様に、継鉄12(図1参照)を一体として製作し、永久磁石14a及び14bを上下に設ける。その後、磁極片18a及び18bを夫々磁石14a及び14bの上を滑らせて設置する。
【0018】
しかし、本発明に係る実施の形態では、従来の第2の組立方法と異なり、磁極片18a及び18bを夫々逆方向から磁石14a及び14bの上を滑らせて設置している。
【0019】
磁極片設置の際には、従来と同様に、継鉄部に磁極片を誘導するガイドレールを取り付けると共に、磁石と磁極片との間に合成樹脂製の丸棒を複数本設けて磁極片を滑らせながら所定位置に設置するか、或いは、丸棒の代わりに、磁石と磁極片の表面にグリース等の潤滑剤を塗布し、磁極片を磁石上を滑らせながら所定位置に設置する。
【0020】
図4に示すように、上側の磁極片18aは図面上で左方向から装置に挿入され、一方、下側の磁極片18bは図面上で右方向から装置に挿入される。参照符号30aは、磁極片18aが永久磁石14aによって磁化される方向を示し、一方、参照符号30bは、磁極片18bが永久磁石14bによって磁化される方向を示している。尚、磁極片18a及び18bの装置への挿入方向を、夫々、上述の場合と逆にしてもよい。
【0021】
磁極片18a及び18bの材質及び寸法が同一であり、且つ、永久磁石14a及び14bの材質及び寸法が同一であれば、設置後に磁極片18a及び18bに残る磁化の程度も同一となる。
【0022】
従って、図5の白抜きの矢印で示すように、磁極片の環状突起16a及び16bからの磁力線は、図面の左側及び右側で逆方向となり互いに磁力線を打ち消すようになる。このため、装置の中央空間に形成される均一磁場に与える影響は、上述の従来例に比べて大幅に低くすることが出来る。
【0023】
発明者によって行われた実験によれば、上述の第2の従来例では、装置中央部の均一磁場が発生する空間の磁束密度が0.2Tの場合、装置中央部の直径400mmの空間内で約2500ppmの不均一が生じ、一方、上述の本発明に係る実施の形態による方法では、同一の条件下で、不均一性が約1500ppm改善されて約1000ppmに減少した。尚、上記の場合、磁極片18bの環状突起部16bの左端及び右端(図5のA及びB付近)での磁束密度は夫々−1.5mT及び+1.5mTであった(即ち、磁束密度の差は3.0mTであった)。これは、図2の同一個所の磁束密度の差と略々同一であった。
【0024】
図6は、上述の実施の形態に基づいて磁極片18a及び18bを装置内に設置する様子を示している。図示のように、磁極片18a及び18bを、夫々、ガイドレール40a及び40bを用いて永久磁石(図示せず)上に設置する。上部及び下部継鉄42a及び42bは、図5の継鉄12a及び12bに相当し、柱状継鉄42c及び42dは図1の柱状継鉄12c及び12dに対応する。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、磁極片の材質・形状を変更することく、従来のMRI用の磁場発生器の均一磁場を大幅に改良することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される磁場発生装置を示す概略図。
【図2】従来例に基づく磁極片の組立方法を説明する図。
【図3】図2で示す方法により組み立てた装置の様子を示す図。
【図4】本発明にかかる磁極片の組立方法を説明する図。
【図5】図4で示す方法により組み立てた装置の様子を示す図。
【図6】本発明にかかる磁極片の組立方法をより具体的に説明する図。
【符号の説明】
10:磁場発生装置
12a〜12d:継鉄
14a及び14b:永久磁石
16a及び16b:磁極片の環状突起
18a及び18b:磁極片
30a及び30b:磁極片に生ずる磁化の方向
40a及び40b:ガイドレール
42a〜42d:継鉄

Claims (2)

  1. 厚み方向に磁化された1対の永久磁石を上下方向に対向させて継鉄内部に配置し、上記1対の永久磁石の夫々の空隙側表面に磁極片を設け、該磁極片間の空間に磁場を発生させる磁場発生装置の組立方法において、
    上記磁極片を上記永久磁石上を滑らせて装置に組込む際に、上側と下側の磁極片を逆方向から装置に挿入することを特徴とする磁場発生装置の組立方法。
  2. 上記磁場発生装置は磁気共鳴撮影装置(MRI)用磁場発生装置である請求項1記載の磁場発生装置の組立方法。
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