JP4134527B2 - シート状物の架橋方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状物の架橋方法に関し、特に、高効率のもとに作業を遂行することのできるシート状物の架橋方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、フッ素樹脂の機械的強度および伸び不足を改善するため、放射線を照射することによって分子間を架橋することが行われている。照射対象としては、電線被覆やパッキンのような成型品、あるいはシート状物など様々であり、なかでもシート状物は、架橋を均一化できる点で放射線架橋に適している。
【0003】
シート状物をフッ素樹脂より構成するときの具体例としては、フッ素樹脂をシート状に成型したもの以外に、フッ素樹脂粉末を焼成して嵩密度の小さなシート状に固めたフッ素樹脂特有の形態がある。このシート状物は、最終製品ではなく、架橋後に粉砕されて再度粉末にされ、成型材として使用されることになる。
【0004】
図3は、粉末焼成体のシート状物を架橋するときの従来の方法を示したもので、1は電子線照射装置、2は照射窓3を介して照射装置1の下方に設置された照射室、4は照射室2内を循環するように配置された搬送体を示し、コンベア5と、これに懸架されたトレー6より構成されている。
【0005】
トレー6には、シート状に固めたフッ素樹脂粉末の焼成体7が載置されており、焼成体7は、照射窓3の下部を通過するたびに電子線の照射を受ける。
照射室2の内部は、加熱された窒素ガスの循環によってフッ素樹脂の融点より僅かに高い温度に設定されているとともに、酸素の影響をなくすために、この窒素ガスによって無酸素状態に置かれており、さらに、照射された焼成体7は、窒素ガスの循環によって元の温度に冷却され、これによって±10℃の架橋温度が維持されるように設定されている。
【0006】
図4は、粉末焼成体の連続したシート状物を架橋するための従来の方法を示したもので、8は照射室2の前に設けられた加熱室、9は加熱室8および照射室2を順に通過するように配置されたコンベア、10はコンベア9の一方の端部上に設けられたホッパを示し、このホッパ10からは、フッ素樹脂の粉末11がコンベア9に供給される。
【0007】
加熱室8および照射室2の内部は、窒素ガスの循環による加熱および冷却作用によって所定の架橋温度に維持されているとともに、無酸素状態にされており、コンベア9上に供給された粉末11は、加熱室を通過する間にシート状物12として焼成され、その後、照射室2において照射装置1より所定の線量の電子線照射を受け、架橋される。
【0008】
図5は、ソリッド状のフッ素樹脂シートの架橋方法を示したもので、リール13より引き出された未架橋のシート状物14を、加熱された窒素ガスを循環させた加熱室8内に引き込み、ここで架橋温度に加熱した後、照射室2において照射装置1より電子線を照射し、リール15に巻き取ることによって作業が進められる。
【0009】
図3の方法は、シート状の焼成体7が照射窓3の位置を通過するたびに電子線を照射することで線量を積算し、これによって所定の架橋を行うことに特徴を有しており、一方、図4の方法は、1パスによって焼成体12の架橋を行うことに特徴を有している。また、図5の方法は、フッ素樹脂に限らず、他の樹脂類のシート状物にも適用可能であり、これらの方法は、いずれも、シート状物の架橋方法としては実績があり、相応の評価を受けている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上に示した従来のシート状物の架橋方法によると、いずれの方法も低い生産効率しか得られず、製品コストが高くなる問題を有している。
即ち、図3の方法は、焼成体7に高水準の放射線を照射でき、従って、高い架橋密度が得られる反面、焼成体7が短片であることと繰り返しの照射を必要とするため、生産効率を低く評価せざるを得ず、また、図4および図5の方法も、1パスでの架橋であることで高効率のように見受けられるが、実質は、かなりの低速下での作業となるのが実情である。
【0011】
従って、本発明の目的は、高効率のもとに作業を遂行することのできるシート状物の架橋方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、走行するフッ素樹脂のシート状物に放射線を照射することによって前記シート状物の架橋を行うシート状物の架橋方法において、
複数の連続した前記シート状物を多段に配置した状態で走行させ、夫々独立して走行する各段のシート状物に一括して放射線を照射することによって前記複数のシート状物を同時に架橋する方法であって、
前記放射線の照射ステップは、多段に配置された前記複数のシート状物の走行速度を前記放射線の照射源より離れるにしたがって低速になるように設定して行われると共に、多段に配置された前記複数のシート状物の相互間に不活性ガスを循環させた状態で行われることを特徴とするシート状物の架橋方法を提供するものである。
【0013】
フッ素樹脂の形態としては、ソリッドのシート状物、あるいは架橋後に粉砕されるシート状の粉末焼成体のいずれでもよい。放射線としては、電子線等の電離性放射線が扱いやすく好適である。
【0014】
多段に配置された各シート状物の走行速度は、放射線の飛程に伴う減衰を考慮して、照射源より離れるにしたがって低速となるように設定する。このようにするときには、各シート状物の照射量を同じにして、架橋度合の均質化を図ることが可能となる。
【0015】
また、多段に配置されたシート状物の相互間には、窒素ガス等の不活性ガスを循環させ、これによって放射線の照射によるシート状物の昇温を防止するとともに、架橋雰囲気の無酸素化を図る。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるシート状物の架橋方法の実施の形態を説明する。
図1において、21は電子線照射装置、22は天井に照射窓23を形成した照射室、24は照射室22の前に連結された加熱室、25は照射室22の後ろに連結された冷却室を示す。
【0017】
26、27および28は、それぞれ照射室22、加熱室24および冷却室25内に多段に配置されたコンベアを示し、これらは、各段同士が同速で連動して走行するように構成されているとともに、その相互間には、加熱された窒素ガスが強制循環させられている。
【0018】
29は加熱室24よりそれぞれ突出させられた各段のコンベア27の端部上に設置されたホッパ、30はホッパ29の内部に収容されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉末を示す。図示されてはいないが、ホッパ29には、PTFE粉末30の消失分を補うタンクが連結されている。
【0019】
PTFE粉末30は、各ホッパ29より各コンベア27の端部上に平らになるように所定の量ずつ供給され、加熱室24内を通過する間に融点以上に加熱されて嵩密度の小さなシート状物31に固められる。固められたシート状物31は、照射室22において照射装置21より所定の線量の電子線を照射された後、照射による昇温を冷却室25で冷却され、外部に排出される。
【0020】
以上のようにして遂行されるこの実施の形態によるシート状物31の架橋作業は、たとえば、以下の条件のもとに行われる。
電子線照射装置21の加速電圧:3MV、照射窓23:40μm厚さのTi箔、コンベア26の構成材:同前、コンベア26の段数:5段、シート状物31の厚さ:3mm、シート状物31の嵩密度:0.63g/cm3 、シート状物31の相互間隔:100mm、循環窒素ガスの温度:340℃(PTFEの架橋温度)、窒素ガスの循環による熱伝達率:40〜50W/m2 K。
【0021】
以上の条件によるとき、最下段のシート状物31に到達する電子線の電圧は、約1.7MVとなり、この電圧は、上記寸法のシート状物31の架橋には充分な水準となる。従って、この実施の形態によるときには、各段を通過する複数のシート状物31への一括した電子線照射による同時架橋が可能となり、従来の方法に比べ格段に高い作業効率を得ることができる。
【0022】
また、条件を上記のように設定することにより架橋温度を好適温度である340±10℃に常時維持することも可能であり、さらには、電子線照射装置21より離れるにしたがってコンベア26〜28の速度を到達電子線の電圧に対応するように調整できるので、各段のシート状物31を均質に架橋することが可能となる。なお、ベルト26としては、電子線が透過しやすい金属メッシュベルトより構成することも考えられる。
【0023】
図2は、本発明によるシート状物の架橋方法の他の実施の形態を示す。
図1との違いは、架橋対象をPTFEのソリッドのシート状物とした点にあり、他は、作業条件も含めて図1と同じである(図1と同一の符号は、図1と同一部分を示す)。
【0024】
リール32より引き出されたPTFEのシート状物33は、各段のコンベア26〜28に載置されて加熱室24、照射室22および冷却室25を順に通過し、この間に架橋温度への昇温、電子線の照射、および冷却の各処理を施された後、リール34によって巻き取られる。なお、図では、シート状物を上2段だけ示し、他の段を省略してある。
【0025】
この実施の形態の場合も、図1の実施の形態と同様の高効率作業が可能であり、さらに、図1と同様に、各段のコンベア速度を到達電子線の電圧に応じた水準に設定することによって、各段の架橋を均一化することができる。PTFEのシート状物の代わりに、ポリエチレン等の他の樹脂のシート状物を適用することは可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるシート状物の架橋方法によれば、複数のシート状物を多段に配置した状態で走行させ、走行する複数のシート状物に放射線を一括して照射することにより複数のシート状物を同時に架橋するため、高効率の架橋作業を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシート状物の架橋方法の実施の形態を示す説明図であり、(a)は使用される装置の平面図、(b)は正面図を示す。
【図2】本発明によるシート状物の架橋方法の他の実施の形態を示す説明図であり、(a)は使用される装置の平面図、(b)は正面図を示す。
【図3】従来のシート状物の架橋方法を示す説明図であり、(a)は使用される装置の正面図、(b)は側面図を示す。
【図4】従来の他のシート状物の架橋方法を示す説明図。
【図5】従来のさらに他のシート状物の架橋方法を示す説明図。
【符号の説明】
21 電子線照射装置
22 照射室
23 照射窓
24 加熱室
25 冷却室
26、27、28 コンベア
29 ホッパ
30 PTFE粉末
31、33 シート状物
32、34 リール

Claims (1)

  1. 走行するフッ素樹脂のシート状物に放射線を照射することによって前記シート状物の架橋を行うシート状物の架橋方法において、
    複数の連続した前記シート状物を多段に配置した状態で走行させ、夫々独立して走行する各段のシート状物に一括して放射線を照射することによって前記複数のシート状物を同時に架橋する方法であって、
    前記放射線の照射ステップは、多段に配置された前記複数のシート状物の走行速度を前記放射線の照射源より離れるにしたがって低速になるように設定して行われると共に、多段に配置された前記複数のシート状物の相互間に不活性ガスを循環させた状態で行われることを特徴とするシート状物の架橋方法。
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