JP4132472B2 - 太陽電池モジュールの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池モジュールの製造方法に関し、特にモジュール側面からの水分の侵入による特性の劣化を防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、化石エネルギー資源の枯渇の問題や大気中のCO2の増加のような環境問題などから、クリーンな新エネルギーの開発が望まれており、特に太陽光発電が期待されている。太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールには、大別して、結晶系モジュールと薄膜系モジュールとがある。
【0003】
結晶系太陽電池モジュールでは、前面カバーガラス上に小面積の単結晶半導体ウェハを用いて形成された太陽電池セルを20〜30枚配置して相互配線している。そして、これらのセルをEVAなどの充填材で封止し、テドラー(登録商標)フィルムなどの保護材を用いて保護している。
【0004】
薄膜系太陽電池モジュール(基板一体型モジュール)では、前面カバーガラスを兼ねるガラス基板上に透明電極層、半導体薄膜光電変換層および裏面電極層を順に積層している。これらの層は気相成長とレーザスクライブなどによるパターニングとを利用して複数の太陽電池セルに分割され、かつ電気的に相互接続(集積化)されており、これによって所望の電圧と電流の出力が得られる。そして、薄膜系太陽電池モジュールでも結晶系太陽電池モジュールの場合と同様の充填材と保護フィルムが用いられる。
【0005】
薄膜系太陽電池モジュールの結晶系太陽電池モジュールに対する特長は、素子間の配線および素子−ガラス基板間の封止樹脂が不要なため、コスト面で有利であるだけでなく、封止樹脂における光吸収によるエネルギー損失および封止樹脂の黄変による特性劣化がないことである。
【0006】
ところで、薄膜系太陽電池モジュールにおいては、外部から太陽電池セル領域へ水分が侵入すると、絶縁不良やシリコン層の腐食などの致命的な欠陥が発生する。こうした水分の侵入を防止するために、例えばガラス基板の周縁部に製膜された裏面電極層およびシリコン層をブラスト処理により除去した後にEVAなどの充填材で封止することにより、周縁部においてガラス基板(または透明電極層)に対して充填材を直接密着させるようにするなどの対策がとられている。これは、充填材のガラス基板(または透明電極層)に対する接着性が、裏面電極やシリコン層に対する接着性よりも良好であるためである。
【0007】
一方、上記のような構成の太陽電池モジュールを屋根やビルの外壁に配列した場合、太陽と太陽電池モジュールとの角度によっては、太陽光が反射して隣接する家屋の中を照らしたりする等の光公害の問題が一部で指摘されていた。この問題に対しては、ガラス基板の光入射面に光を乱反射させる作用を有する防眩膜を形成する対策がなされている。
【0008】
しかし、防眩膜は有機溶剤(たとえばキシレン/MIBKやIPA)ベースの塗布液を塗布した後に硬化することにより形成することが多いため、有機溶剤によってEVAなどからなる充填材が溶解または膨潤することがある。この結果、ガラス基板と充填材との間に水分の侵入経路が生じ、絶縁不良やシリコン層の腐食などの欠陥発生を防止する効果が得られなくなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、外部から水分の侵入による絶縁不良やシリコン層の腐食などの欠陥発生を効果的に防止できる太陽電池モジュールを簡便に製造できる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、光入射面側に防眩膜を備えた透明絶縁基板と、半導体光電変換層、充填材およびモジュールの光入射側と反対面を保護する保護材を含む太陽電池モジュールを製造するにあたり、前記充填材としてエチレン−ビニルアセテート共重合体を用い、モジュールの端面に現れている前記充填材の側面をマスクして、前記透明絶縁基板の光入射面側に、有機ポリマーおよび/または無機ポリマーからなる防眩材料を有機溶剤に溶解または分散した防眩膜の塗布液を塗布することを特徴とする。
【0011】
充填材の側面をマスクする方法としては、マスク用治具を用いて充填材の側面をマスクしてもよいし、充填材の側面にマスキングテープを貼り付けてマスクしてもよい。また、たとえば防眩膜の塗布液をスプレーノズルから吹き付けて塗布する際に、充填材の側面がカゲになる方向から吹き付けるようにしてもよい。このような方法により、充填材が防眩膜の塗布液に用いられる有機溶剤に溶解したり膨潤することがなくなり、水分の侵入を効果的に防止できる。
【0016】
本発明において、防眩膜として有機ポリマーを用いる場合、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれらの混合物を含むものを用いることが好ましい。
【0017】
アクリル系樹脂としては、以下の分子構造:
【0018】
【化2】
Figure 0004132472
【0019】
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基からなる群より選択される一価の炭化水素基、aは0、1、または2を示す。)
で表わされる基を含有する加水分解性シリル基含有アクリル共重合体を含むものが挙げられる。また、フッ素系樹脂としては、水酸基含有フッ素系樹脂が挙げられる。
【0020】
本発明において、防眩膜として無機ポリマーを用いる場合、その原料としてアルキルシリケート(具体的には、エチルシリケート、ブチルシリケートまたはこれらの混合物)を用いることが好ましい。このような原料から生成される無機ポリマーはシリカを含む。
【0021】
なお、防眩膜は、光を散乱させるのに適した微細な凹凸を含む表面を有することが好ましい。この防眩膜は、さらに無機粒子または/および有機粒子を含んでいてもよい。また、防眩膜の凹凸表面上に平坦な表面を有する汚れ防止膜を形成してもよい。
【0022】
上記のように防眩膜に無機粒子を含有させる場合、無機粒子としてはたとえばシリカ粒子が挙げられる。また、防眩膜に有機粒子を含有させる場合、有機粒子としてはたとえばアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンワックス、またはこれらの少なくとも2種以上の混合物が挙げられる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0024】
図1に、本発明に係る薄膜系太陽電池モジュールの一部を断面で示す。なお、この図では太陽電池モジュールの周縁部は図示していない。図1において、透明絶縁基板1の下面(第1の主面)上には、SnO2等の透明導電酸化膜(TCO)からなる透明電極層2、シリコン等からなる半導体光電変換層3、およびAg等からなる裏面電極層4が順に積層されている。これらは、図1の紙面に直交する方向に延びる透明電極層2のスクライブ線2a、半導体光電変換層3のスクライブ線3a、および裏面電極層4のスクライブ線4aによってそれぞれ複数の細長い短冊状の領域に分割されている。このように順次積層されたそれぞれ短冊状の透明電極2、半導体光電変換層3および裏面電極4により1つの短冊状の太陽電池セル5が形成されている。そして、任意の太陽電池セル5の透明電極2は半導体層のスクライブ線3aを介して隣り合う太陽電池セル5の裏面電極4に接続され、複数の太陽電池セル5が電気的に直列に集積化されている。このように集積化された複数の太陽電池セルの背面は充填材6によって封止され、さらにその上に積層された耐候性の背面カバーフィルム7によって保護されている。
【0025】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、透明電極層2としては、SnO2、ITO、ITO/SnO2の積層体、またはZnO等が用いられる。半導体光電変換層3としては、非晶質シリコンa−Si、水素化非晶質シリコンa−Si:H、水素化非晶質シリコンカーバイドa−SiC:H、非晶質シリコンナイトライド等の他、シリコンと炭素、ゲルマニウム、錫等の他の元素との合金からなる非晶質シリコン系半導体の非晶質または微結晶を、pin型、nip型、ni型、pn型、MIS型、ヘテロ接合型、ホモ接合型、ショットキバリア型あるいはこれら組合せた型等に合成した半導体層が用いられる。この他、半導体光電変換層としては、CdS系、GaAs系、InP系等を用いることもできる。裏面電極層4としては、金属または金属酸化物/金属の複合膜等が用いられる。充填材6としては、シリコン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルブチラール等が用いられる。背面カバーフィルム7としては、フッ素系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、またはアルミニウム等の金属フィルムやSiO2等の薄膜をラミネートした多層構造のフィルム等が用いられる。
【0026】
また、透明絶縁基板1の上面(第2の主面)には、透光性の防眩膜10が形成されている。図1の防眩膜10は、たとえば塗布液を塗布した後にエンボスローラーを押し付けることにより、光を散乱させるのに適した微細な凹凸を含む表面を有する。
【0027】
本発明の一態様においては、この防眩膜10を形成する際に、防眩膜の塗布液を充填材6の側面に付着しないようにして透明絶縁基板1の上面に塗布する。たとえば、防眩膜の塗布液の塗布時に充填材6の側面をマスクしたり、防眩膜の塗布液をスプレーノズルから吹き付けて塗布する際に充填材6の側面がカゲになる方向から吹き付けるようにしてもよい。
【0028】
これらの方法を図2〜図5を参照して具体的に説明する。このうち図2〜図4は図1に示されていない太陽電池モジュールの周縁部を示す断面図である。これらの図においては、図1に示される部材に加えて、はんだ層8およびバスバー電極9が示されている。また、図示した状態で防眩膜が形成されるが、これらの図には形成される防眩膜は図示していない。
【0029】
図2は透明絶縁基板1の上面周縁部上にマスク用治具11を水平に外側へ向かって延びるように載せて、充填材6の側面をマスクした状態を示している。図3は透明絶縁基板1の側面にマスク用治具11を水平に押し当てて、充填材6の側面をマスクした状態を示している。図4は充填材6の側面を含むモジュール側面全面にマスキングテープ12を貼り付けて、充填材6の側面をマスクした状態を示している。これらの図に示されるように、充填材6の側面をマスクした状態で防眩膜の塗布液の塗布することにより、充填材6が防眩膜の塗布液に用いられる有機溶剤に溶解したり膨潤することがなくなり、太陽電池モジュールの使用中に水分の侵入を効果的に防止できる。
【0030】
図5は充填材6の側面がカゲになる方向からスプレーノズル13によって防眩膜の塗布液を吹き付ける方法を示している。なお、この図では太陽電池セル5を簡略化して図示している。この方法でも、充填材6が防眩膜の塗布液に用いられる有機溶剤に溶解したり膨潤することがなくなり、太陽電池モジュールの使用中に水分の侵入を効果的に防止できる。
【0031】
本発明の他の態様においては、充填材の側面に保護コートを形成する。形成された保護コートは充填材の側面に残したまま太陽電池モジュールを使用するので、水分の侵入を効果的に防止できる。
【0032】
これらの方法を図6〜図8を参照して具体的に説明する。図6〜図8は図1に示されていない太陽電池モジュールの周縁部を示す断面図である。
【0033】
図6は充填材6の側面を覆う最小限に保護コート20を形成した後、防眩膜10を形成し、その表面に凹凸をつけた状態を示している。図7は充填材6の側面および透明絶縁基板1の側面を含む太陽電池モジュールの側面全体を覆うように保護コート20を形成した後、防眩膜10を形成し、その表面に凹凸をつけた状態を示している。
【0034】
なお、図6および図7では、保護コート20と防眩膜10との間に隙間があるので、この隙間から水分が侵入する可能性がある。そこで、図8に示すように、防眩膜10を形成すると同時に太陽電池モジュールの側面全体を覆うように保護コート20を形成することが好ましい。これらを形成した後、防眩撒く10の表面に凹凸をつける。このように防眩膜10と保護コート20とを同じ材料で同時に形成すると、防眩膜10と保護コート20とが隙間なく連続的に形成されているので水の浸入経路が少なくなり、しかも両者の親和性が高くなるので信頼性が向上する。
【0035】
また、EVAなどの充填材を溶解または膨潤させる有機溶剤を含まない、水系エマルジョンやディスパーション塗料を用いて保護コートを形成すれば、水の浸入をより効果的に防止することができる。
【0036】
次に、防眩膜および/または保護コートの材料についてより詳細に説明する。
【0037】
防眩膜および/または保護コートの材料は、十分な耐候性を有し、光透過性が良好で、太陽電池セルを劣化させない温度、具体的には200℃以下、より好ましくは150℃以下で硬化することが要求される。このような要求を満たす防眩膜および/または保護コートの材料としては、有機ポリマー、無機ポリマー、またはそれらの複合材料を用いることができる。これらの原料に必要に応じて硬化剤を添加したり希釈剤(たとえば有機溶剤)で希釈した塗布液を所定の厚さに塗布した後、硬化することにより防眩膜および/または保護コートを形成することができる。このうち、有機ポリマーは柔軟であってひび割れしにくい点で好ましく、無機ポリマーは耐候性や耐熱性が高いという点で好ましい。
【0038】
本発明において、防眩膜および/または保護コートとして有機ポリマーを用いる場合、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれらの混合物を含むものを用いることが好ましい。有機ポリマー中のアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれらの混合物の含有率は、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上に設定される。
【0039】
アクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを含むビニルモノマーと、加水分解性シリル基含有モノマーとの共重合により得られるものが好ましい。このようなアクリル系樹脂は、主鎖が実質的に炭素−炭素結合からなり、末端または側鎖に少なくとも1個の加水分解性シリル基を含有する。加水分解性シリル基とは、加水分解性基と結合した珪素原子を有する置換基である。なお、上記のアクリル系樹脂は、主鎖または側鎖にウレタン結合またはシロキサン結合を一部含んでもよい。
【0040】
ビニルモノマーは特に限定されない。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのジエステルまたはハーフエステル等の不飽和カルボン酸のエステル;スチレン、a−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレート等のビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、a−エチル(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドン、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアミド基含有ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アロニクス5700(東亜合成(株)製)、Placcel FA-1、Placcel FA-4、Placcel FM-1、Placcel FM-4(以上ダイセル化学(株)製)等の水酸基含有ビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等)、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、酸無水物、またはその塩;ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、マレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸等のその他のビニル化合物等が挙げられる。
【0041】
加水分解性シリル基含有モノマーとしては、具体的には、以下のようなアルコキシシランビニルモノマーが挙げられる。
【0042】
【化3】
Figure 0004132472
【0043】
加水分解性シリル基含有アクリル系共重合体中のアルコキシシランビニルモノマー単位の含有率は、5〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%に設定される。
【0044】
アルコキシシランビニルモノマーとビニルモノマーとの共重合体の製造方法は、たとえば特開昭54−36395、特開昭57−36109、特開昭58−157810等に開示されている。アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系ラジカル開始剤を用いた溶液重合が最も好ましい。また必要に応じて、連鎖移動剤を用い、分子量を調節してもよい。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、(H3CO)3Si−S−S−Si(OCH3、(CH3O)3Si−S−Si(OCH33等が挙げられる。特に、分子中に加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤、たとえばγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いれば、末端に加水分解性シリル基が導入された加水分解性シリル基含有アクリル系共重合体を得ることができる。
【0045】
重合溶剤は炭化水素類(トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等)、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等)、エーテル類(エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等)、ケトン類(メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン、アセトン等)のような非反応性の溶剤であれば特に限定されない。
【0046】
市販の加水分解性シリル基含有アクリル系共重合体としては、鐘淵化学工業株式会社製ゼムラック(登録商標)が挙げられる。ゼムラックは、上述した
(R13-a(R2aSi−
(式中、R1、R2、およびaの定義は上記の通りである。)
という分子構造を含んでいる。
【0047】
一方、フッ素系樹脂としては、水酸基含有フッ素系共重合体を用いることが好ましい。水酸基含有フッ素系共重合体としては、水酸基価が5〜300mgKOH/g、さらに10〜250mgKOH/gのものが特に好ましい。水酸基含有フッ素系共重合体は、(1)フッ素含有ビニルモノマー、(2)水酸基含有ビニルモノマー、および(3)その他のモノマーを共重合することにより合成できる。
【0048】
(1)のフッ素含有ビニルモノマーとしては、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン;CH2=CHCOOCH2CF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF3、CH2=CHCOOCH(CF2、CH3=C(CH3)COOCH(CF32、CH2=CHCOOCH2CF2CF2CF、CH2=CHCOOCF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2CF2CF3、CH2=C(CH3)COOCF3等を含む(メタ)アクリル酸フルオロアルキル等が挙げられる。
【0049】
(2)の水酸基含有ビニルモノマーとしては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アロニクス5700(東亜合成(株)製)、Placcel FA-1、同 FA-4、同FM-1、同FM-4(以上ダイセル化学(株)製)等が挙げられる。
【0050】
(3)のその他のモノマーとしては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル;マレイン酸、フマール酸、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシルアルキルビニルエーテル等のカルボキシル基含有モノマー;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル;メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル;ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有モノマー等が挙げられる。
【0051】
市販の水酸基含有フッ素系樹脂としては、旭硝子コートアンドレジン株式会社製のルミフロン、ボンフロン、株式会社トウベ製ニューガメット、大日本塗料株式会社製Vフロン(いずれも登録商標)が挙げられる。
【0052】
上記のうちルミフロンは、以下に示す基本物性を有する。
【0053】
【表1】
Figure 0004132472
【0054】
本発明において、防眩膜および/または保護コートとして無機ポリマーを用いる場合、その原料としてアルキルシリケートを用いることができる。アルキルシリケートとしては、たとえばエチルシリケート、ブチルシリケート、またはこれらの混合物が挙げられる。このような原料から生成される無機ポリマーはシリカを含有する。こうした無機ポリマーを生成させる際には、原料に触媒好ましくはHCl等の酸触媒を添加した後に塗布することにより、硬化速度をコントロールしてもよい。
【0055】
市販の無機ポリマーの原料としては、たとえば(有)テー・エス・ビー製の無機ワニス、TSB4200、TSB4300、TSB4400が挙げられる。TSB4200はエチルシリケート、TSB4400はブチルシリケートを主成分とするものであり、TSB4300はエチルシリケートとブチルシリケートとの混合物である。これらの原料からは耐候性かつ耐熱性の無機ポリマーが得られる。
【0056】
さらに、防眩膜および/または保護コートとして複合材料を用いてもよい。複合材料としては、無機ポリマー分子構造中に有機分子を付加したもの、無機ポリマーと有機ポリマーとの混合物、無機ポリマー中に有機ポリマーを分散したものなどが挙げられる。
【0057】
市販の複合材料としては、日本油脂株式会社製のセラミック系塗料、ベルクリーン(登録商標)が挙げられる。ベルクリーンはアルキルシリケートに高耐久性の有機ポリマーを混合したものである。
【0058】
防眩膜10の平均厚さは、0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜30μmに設定される。防眩膜10の平均厚さが0.1μmより薄い場合には光散乱に適した凹凸を形成することが困難になる。防眩膜10の平均厚さが500μmより厚い場合には防眩膜10の透光性が低下して太陽電池セル5に達する光が減少するおそれがある。
【0059】
本発明においては、複数層の光乱反射層を積層してもよい。たとえば、屈折率の異なる材料からなる複数層の光乱反射層を組合せることにより光乱反射効果を向上することができる。上層の防眩膜として無機ポリマーを用いれば、表面硬度や耐摩耗性を向上させることができる。上層の防眩膜として有機ポリマーを用いれば、表面のクラックやひずみを吸収することができる。また、上層の防眩膜として、汚染防止のために撥水性の高いフッ素系樹脂や、水分散性のよい無機ポリマーを用いてもよい。
【0060】
本発明においては、有機ポリマーまたは無機ポリマーからなる防眩膜中に無機粒子または/および有機粒子を分散させてもよい。
【0061】
無機粒子としては、シリカからなるものが用いられる。具体的には、たとえば、φ4μmのシリカからなるデグサジャパン製TS100、φ2μmのシリカからなるデグサジャパン製デグサOK−607、φ0.07〜0.1μmのシリカゾルからなる日産化学工業株式会社製EG−ST−ZL等が用いられる。
【0062】
有機粒子としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンワックス、またはこれらの少なくとも2種以上の混合物を主成分とするものが用いられる。具体的には、たとえば、φ8μmのPMMA(ポリメチルメタクリレート)からなる積水化成製MBX−8、平均φ15μm、最大φ30μmのPE(ポリエチレン)からなる楠本化成製SE480−10T等が用いられる。
【0063】
無機粒子または/および有機粒子の粒径は、0.05〜200μm、より好ましくは0.5〜100μm、特に好ましくは1〜10μmである。
【0064】
有機または無機のポリマーと無機または有機の粒子との混合重量比は、無機または有機粒子の粒径に応じて調整することが好ましい。粒子の粒径が1μm未満の場合は50〜2000、特には100〜1500が好ましい。粒子の粒径が1μm以上、たとえば1〜10μmである場合は、0.1〜98、さらに1〜50、特に1〜10が好ましい。粒径が小さいと光乱反射効果が十分に発揮されず、逆に粒径が大きいとポリマーに対する粒子の分散性が低下するため好ましくない。
【0065】
さらに、防眩膜の凹凸表面上に平滑な表面を有する汚れ防止膜を形成してもよい。すなわち、防眩膜が微細な凹凸構造の表面を有する場合には汚れが付着しやすいが、その凹凸表面を汚れ防止膜で平坦化することによって、太陽電池モジュールの表面の汚れを軽減することができる。
【0066】
このような汚れ防止膜の材料としては、防眩膜として例示した材料を用いることができる。光乱反射効果の観点からは、汚れ防止膜と防眩膜は互いに異なる材料で形成されていることが好ましい。ただし、汚れ防止膜と防眩膜が同じ材料で形成されていても、一旦形成された防眩膜の凹凸表面は汚れ防止膜との間に明瞭な界面を形成するので、その凹凸界面によって光乱反射効果は維持される。
【0067】
汚れ防止膜としてフッ素系樹脂を用いた場合、その表面は良好な撥水性を有するので、雨水などによる塵の付着が減少する。汚れ防止膜としてアルキルシリケートから形成されるシリカを含む無機ポリマーを用いた場合、太陽電池セルの表面の耐薬品性が向上するとともに、親水性が良好になるため汚れがついたとしても均一化されて目立ちにくくなる。
【0068】
なお、以上においては主に薄膜系の太陽電池モジュールについて説明したが、本願発明は結晶系の太陽電池モジュールにも適用できることは言うまでもない。
【0069】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、外部から水分の侵入による絶縁不良やシリコン層の腐食などの欠陥発生を効果的に防止できる太陽電池モジュールを簡便に製造できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽電池モジュールの概略構成を示す断面図。
【図2】本発明に係るマスク用治具を用いる太陽電池モジュールの製造方法の例を示す断面図。
【図3】本発明に係るマスク用治具を用いる太陽電池モジュールの製造方法の他の例を示す断面図。
【図4】本発明に係るマスキングテープを用いる太陽電池モジュールの製造方法の例を示す断面図。
【図5】本発明に係るスプレーノズルを用いる太陽電池モジュールの製造方法の例を示す断面図。
【図6】本発明に係る保護コートを用いる太陽電池モジュールの製造方法の例を示す断面図。
【図7】本発明に係る保護コートを用いる太陽電池モジュールの製造方法の他の例を示す断面図。
【図8】本発明に係る保護コートを用いる太陽電池モジュールの製造方法のさらに他の例を示す断面図。
【符号の説明】
1…透明絶縁基板
2…透明電極層
3…半導体光電変換層
4…裏面電極層
5…太陽電池セル
6…充填材
7…背面カバーフィルム
10…防眩膜
11…マスク用治具
12…マスキングテープ
13…スプレーノズル
20…保護コート

Claims (5)

  1. 光入射面側に防眩膜を備えた透明絶縁基板と、半導体光電変換層、充填材およびモジュールの光入射側と反対面を保護する保護材を含む太陽電池モジュールを製造するにあたり、前記充填材としてエチレン−ビニルアセテート共重合体を用い、モジュールの端面に現れている前記充填材の側面をマスクして、前記透明絶縁基板の光入射面側に、有機ポリマーおよび/または無機ポリマーからなる防眩材料を有機溶剤に溶解または分散した防眩膜の塗布液を塗布することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
  2. 前記有機ポリマーは、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
  3. 前記アクリル系樹脂は、以下の分子構造:
    Figure 0004132472
    (式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基からなる群より選択される一価の炭化水素基、aは0、1、または2を示す。)
    で表わされる基を含有する加水分解性シリル基含有アクリル系共重合体を含み、
    前記フッ素系樹脂は水酸基含有フッ素系樹脂であることを特徴とする請求項2記載の太陽電池モジュールの製造方法。
  4. 前記無機ポリマーの原料が、アルキルシリケートであることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
  5. 前記無機ポリマーはシリカを含むことを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
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