JP4131752B2 - 多結晶半導体膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子等に用いられる多結晶半導体膜の製造方法に関し、特に、大粒径の多結晶半導体膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子等に用いられる多結晶半導体膜は、通常、所望の基板上に非晶質又は単結晶の半導体膜を成長・堆積させた後に、加熱融解することで製造される。多結晶半導体膜の半導体特性は、結晶粒が大きいほど向上するため、基板が耐熱性の石英ガラスの場合や、太陽電池のように基板のダメージが使用上問題とならないような場合には、その簡便さ等から、その基板上に成長・堆積した非晶質半導体膜、例えばアモルファスSi膜(以下、「a−Si膜」と記す。)を基板と共に加熱し融解して多結晶化が行われることが多い。
【0003】
一方、液晶表示素子のTFT素子の場合には、ガラス基板上に多結晶Siが形成されるため、ガラスの変形や歪みを生じる長時間の高温アニールをすることはできず、従って、上述したような基板と共に加熱融解することは不可能である。そこで、一般には、ガラス基板上に成長させたa−Siのみを加熱溶解して多結晶化することが可能なエキシマレーザーアニールが行われている。エキシマレーザーアニールでは、数10n秒のパルスレーザーをa−Si膜又は多結晶Si膜の表面に照射しこれらの膜のみを融解し、その後に液相成長により再び多結晶化を進めることができる。
【0004】
しかしながら、エキシマレーザーによりa−Si膜又は多結晶Si膜を融解する際に、下地膜との界面まで完全に融解し界面の結晶核が消失してしまった場合には、その後の冷却時に融液が過冷却状態になり、界面・液中から急激に核発生し微結晶化するという現象が発生じてしまう。逆に融解が不十分な場合には、下地膜との界面に多くの結晶核が残留することになるが、その残留核を種(シード)として結晶成長が進行するため、結果的に残留核密度(N)に逆比例した粒径(d∝1/(πN0.5 ))の多結晶が生成し、微細な結晶粒となってしまう。
【0005】
上式から、レーザービーム強度が残留核の消失(完全融解)する強度(極限値Qc)に漸近するほど、残留核の密度が低くなり結晶は大粒径化するが、レーザービーム強度が極限値に達した瞬間に結晶核が消失し冷却過程で過冷却状態になり微結晶化が起きることになる。このように、エキシマレーザーアニールはQcを境にして結晶粒の大きさが急激に変化する不安定なプロセスである。
【0006】
従って、大結晶粒を成長させるためには、残留核密度と核発生位置の制御が重要であり、これらの制御のために、これまでに大別して4つ手法が提案されている。
【0007】
(1)下地膜との界面に予め結晶核を形成しておく方法
(2)下地膜の界面形状や材質に不均一化することにより界面の結晶核を安定化する方法
(3)異種元素や化合物を下地膜との界面に添加し結晶核発生を促進する方法
(4)レーザービームに強度分布を形成して、低強度部分に残留核を形成する方法
これら4つの手法の中で、TFT素子の特性への悪影響やコスト面を考慮すると、上記(4)の手法が最も優れており、このレーザービームに強度分布を形成する方法としてはさらに次のような方法が考えられる。
【0008】
(a)ビームの一部を遮光する方法
(b)複数のビームの位置を僅かにずらして重ねることにより合成する方法
(c)スリットなどの回折素子で干渉させる方法
しかしながら、上記(a)〜(c)の方法は、パルスレーザーアニール法における結晶核の制御方法としては不十分なものであった。というのは、エキシマレーザーなどの数10n秒のパルスレーザーにより融解された半導体膜が冷却・固化する時間(固化時間)は、非常に短く(100n秒程度)、その間に成長できる結晶の最大粒径は数μmが限界であるため、残留核の分布は数μm以下で形成する必要がある。従って、レーザービームの光強度分布もこれ以下の周期性を有することを要求される。ところが、上記(a)〜(c)の方法で形成されるレーザービームの強度分布の周期性は光の波長(数100nm)の千倍以上(数100μm)となってしまい、上記条件を満足することができないからである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来のエキシマレーザーアニールによる多結晶半導体膜の製造方法では、極限値の近傍におけるレーザービーム強度の微妙な変動で、生成される結晶粒の大きさが大幅に変化してしまい、安定して大結晶粒の多結晶半導体膜を供給することができなかった。
【0010】
また、上記不具合を回避するために提案されたレーザービームに強度分布を持たせる方法では、実際に要求される強度分布を実現することができなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、その目的は、上述したレーザーアニールによる多結晶半導体膜の製造方法において、非晶質又は多結晶の半導体膜表面に数μm周期の光強度分布を実現することにより、下地膜との界面における残留核を数μm周期で制御し、数μmオーダーの大結晶粒からなる高特性の多結晶半導体膜の製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の特徴は、予め与えられた非晶質半導体膜又は第1の多結晶半導体膜を一旦融解し、その後再び結晶化することにより結晶粒度の異なる第2の多結晶半導体膜を形成する多結晶半導体膜の製造方法において、第1のレーザー光を非晶質半導体膜又は第1の多結晶半導体膜表面の所定位置に複数回照射するとともに第1のレーザー光より長波長の第2のレーザー光を所定の入射角及び偏光状態で所定位置に照射することにより表面に凹凸を形成し、凹凸と第2のレーザー光の所定の入射角及び偏光状態で決定される定在波を形成し、所定位置に定在波と同周期の熱密度分布を、定在波の谷部の熱発生密度が、0以上、かつ、非晶質半導体膜又は第1の多結晶半導体膜が完全に融解するために必要な熱密度量未満であり、定在波の山部の熱発生密度が、非晶質半導体膜又は第1の多結晶半導体膜が完全に融解するために必要な熱密度量以上、かつ、非晶質半導体膜又は第1の多結晶半導体膜がアブレーションする熱密度量未満で発生させることである。
【0016】
本発明の特徴では、前記レーザー光の照射で前記半導体膜が一旦融解・再結晶化した後に形成される表面荒れにさらに前記レーザー光が再び照射し、この表面荒れで散乱された散乱光同士を干渉させることにより、前記半導体膜表面に定在波を形成するのである。
【0017】
ここで、前記レーザー光の偏光状態は、反射面に対して45°以外の角度をなしていることが少なくとも必要であり、平行(P偏光)又は垂直(S偏光)となっていることがより望ましい。そして、平行又は垂直となっている場合には、その定在波の周期は、前記レーザー光の波長をλ、入射角をθとすれば、基本的には偏光方向に垂直な方向にはλ/(1−sinθ)とλ/(1+sinθ)の周期の定在波が発生し、偏光方向に平行な方向には、λ/cosθ周期の定在波が発生する。特に、λ/(1±sinθ)の周期の定在波は35°以下の垂直に近い条件で強く、一方、λ/cosθの周期の定在波は35°以上の斜入射で、かつ、反射面へ平行な偏光状態、すなわちP偏光で強くなる。従って、一定のレーザー光の波長に対して、入射角を調整することにより、定在波の周期、すなわち半導体表面に形成される熱密度分布の周期を高精度に制御することが可能となる。
【0018】
なお、TFT−LCD用ポリシリコンでは、その粒径として1〜10μmとすることが望ましいが、1〜10μmの粒径のポリシリコン膜を本発明の特徴により製造するためには、前記入射角が、前記レーザー光の波長が230〜280nmである場合には76°以上88.6°以下、前記レーザー光の波長が280〜400nmである場合には72°以上88.2°以下、前記レーザー光の波長が400〜800nmである場合には59°以上87.1°以下、前記レーザー光の波長が800〜1200nmである場合には0°以上84.3°以下であることが望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
第1の実施の形態
図1は本発明の第1の実施の形態に係る多結晶半導体膜の製造方法を説明するための図であり、(a)がレーザー光と半導体基板との位置関係(光学配置)を示す図、(b)が(a)のA部分の拡大図である。図1(a)に示すように、本実施の形態に係る多結晶半導体膜の製造方法では、レーザー光1をビームスプリッター3aで2光束に分割し、該2光束を反射ミラー5a、5bを用いて再び交差・干渉させることにより、波長オーダー(μmオーダー)の周期を持つ定在波を半導体膜9の表面に形成する。例えばレーザー光1の波長がλである場合には、図1(b)に示すように、半導体膜9の表面に形成される定在波の周期はλ/(2sinθ)となる(Appl. Phys. Lett. 57, 132(1990))。そして、その強度分布により基板7上の半導体膜9の表面に上記定在波と同周期の熱発生密度分布が形成される。定在波の谷部(節部)に相当する熱発生密度の低い部分において核の融解を安定化させることにより、残留核を波長オーダー(μmオーダー)で制御することが可能となる。それにより、大結晶粒を持つ多結晶半導体膜を製造することができる。
【0021】
図2は、図1に示す2光束の半導体膜9に対する入射角θと半導体膜9の表面に形成される定在波の周期との関係を示す図である。図2から明らかなように、入射角θが30°以下ではレーザー光1の波長λ以上の周期の定在波が、入射角θが30°以上ではレーザー光1の波長λ以下で半波長以上の定在波が形成されることが分かる。このように、本実施の形態によれば、入射角θによって定在波の周期を制御することができる。従って、干渉縞の周期をレーザー光1の波長の数倍程度にするには、図2に示すように、入射角θを5〜20°の範囲に設定すれば良い。例えば、TFT(thin film transistor)−LCD(liquid crystal display)用多結晶シリコン(ポリシリコン)では、その粒径として1〜10μmとすることが望ましいが、この粒径のポリシリコン膜を本実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法で製造するためには、レーザー光1の波長と入射角θとの関係は次の表1に示すようになる。
【0022】
【表1】
表1 レーザー光1の波長と入射角θとの関係
レーザー光1の波長 入射角θ
KrFレーザー (248nm) 0.7°≦θ≦8.2°
XeClレーザー(308nm) 0.9°≦θ≦8.9°
Ar+ レーザー (514.5nm) 1.5°≦θ≦15°
YAGレーザー (1060nm) 2.9°≦θ≦30°
なお、上述した定在波により半導体膜9の表面に生じる熱発生密度分布が残留核を形成するためには、定在波の谷部(節部)の熱発生密度(QBottom)は、0以上、かつ、半導体膜9が完全に融解するために必要な熱密度量QL 未満でなければならず、一方、定在波の山部(腹部)の熱発生密度(QTop)は、QL以上、かつ、半導体膜9がアブレーション(熱を吸収することにより膜の温度が沸点を越え、蒸発してしまうこと)する熱密度量QAB 未満でなければならない。すなわち、残留核が定在波の谷部に安定に形成されるためには、
0≦QBottom<QL ≦QTop <QAB……(1)
を満足する必要がある。
【0023】
ここで、レーザー光1の平均出力((QTop +QBottom)/2)をQL に設定した場合、レーザー光1の出力の変動率を±δ、定在波の谷部と山部の熱発生密度の差をQP-P (=QTOP −QBottom)とすると、上記(1)式から、
QP-P ≧2δQL ……(2)
の関係が導出される。この(2)式から、定在波の熱密度分布の差QP-P 、すなわち振幅は、ビーム出力変動以上に設定する必要があることが分かる。但し、残留核の存在を左右する因子としては、上記レーザー出力変動が主因であるが、その他の因子として半導体膜の膜厚変動、下地膜の熱伝動率変動などがある。従って、これらの全変動以上に振幅を設定しなければならない。
【0024】
なお、本実施の形態は1つのレーザー光を分割しているが、本発明はこれに限られるものではなく、波長と位相が一致しているものであれば2つ以上のレーザー光を組み合わせて用いても良い。
【0025】
第2の実施の形態
本実施の形態に係る多結晶半導体膜の製造方法は、上述した第1の実施の形態のように2つのレーザー光を交差・干渉させて半導体膜の表面に定在波を形成するのではなく、反射面に平行または垂直な直線偏光状態の1つのレーザー光を半導体膜へ斜入射し、表面散乱光の干渉により半導体膜の表面に波長オーダー(μmオーダー)の周期を持つ定在波を形成するものである。そして、第1の実施の形態と同様に、半導体膜に定在波と同周期の熱発生密度分布を形成し、定在波の谷部(節部)に相当する熱発生密度の低い部分において、核の融解を安定化させ、残留核を波長オーダー(μmオーダー)で制御して大結晶粒を持つ多結晶半導体膜の製造を可能とするものである。
【0026】
本実施の形態における定在波の形成においては、レーザー光の照射で半導体膜が融解・再結晶化した後に形成される表面荒れが、光散乱(光分割)の起点となる。この表面荒れは、基本的には固液状態での密度変化に起因するもので、固化が横方向に進み結晶粒が成長した場合の固化の終点(粒界部)に凹凸が形成される現象として定性的に理解される。そして、この半導体膜の荒れた表面にレーザー光を再び照射すると、この凹凸部で散乱された散乱光同士が干渉し、膜表面に定在波を形成するのである。従って、多重回照射では、この過程を繰り返す中で最終的に特定の周期の凹凸パターンが半導体膜表面に形成される(J.Sipe, J.F.Young, J.S.Perston, and H.M.van Driel, Phys. Rev. B27,1141,1155,2001(1983)) 。
【0027】
なお、上記文献によれば、レーザー光の偏光状態とその入射角によって半導体膜の表面に発生する定在波の形態は多様に変化するが、基本的には偏光方向に垂直な方向にはλ/(1−sinθ)とλ/(1+sinθ)の周期の定在波が発生し、偏光方向に平行な方向には、λ/cosθ周期の定在波が発生することが確認されている。特に、λ/(1±sinθ)の周期の定在波は35°以下の垂直に近い条件で強く、一方、λ/cosθの周期の定在波は35°以上の斜入射で、かつ、反射面へ平行な偏光状態、すなわちP偏光で強くなることが実験的・理論的に知られている。図3に半導体膜に対する入射角θと半導体膜の表面に形成される上記定在波の周期との関係を示す。同図が示すように、垂直入射近傍で強いλ/(1±sinθ)周期の定在波は、レーザー光の波長より長い周期(λ/(1−sinθ))とレーザー光の波長より短い周期(λ/(1+sinθ))とが重複するが、P偏光の斜入射で強いλ/cosθの定在波はレーザー光の波長より長い単一周期となる。定在波が均一であれば均一な結晶粒を形成することができるので、λ/cosθの単一周期の定在波を形成するほうが好ましいと言える。
【0028】
ここで、第1の実施の形態と同様、粒径が1〜10μmのTFT−LCD用ポリシリコン膜を本実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法で製造するためには、レーザー光の波長と入射角θとの関係は次の表2に示すようになる。
【0029】
【表2】
なお、形成される定在波の振幅は、入射レーザー光の偏光度とその入射角、及び、半導体膜の光学定数と表面形態、から決定される。そのうち、偏光度、入射角及び光学定数は容易に決めることはできるが、表面形状に関してはレーザー照射を繰り返す中で変化・形成されるために困難である。また、表面形状の変化・形成に伴って、形成される定在波の強度が増強していくことになる。従って、定在波の振幅(強度)を見積もることは容易ではない。そこで、偏光度が高いほど少ない照射回数で定常的な表面形状を形成することができるので、強い定在波を形成するためには高い偏光度が望ましいが、少なくとも10%以上の偏光度が必要であり、より好ましくは90%以上である。
【0030】
以上説明した第1の実施の形態、第2の実施の形態においては、レーザー光としてエキシマレーザー光単一ビームを用いることができるが、エキシマレーザー光はビーム形状の整形や均一性の高精度に制御しているため、入射角を制御することは非常に困難である。このため、エキシマレーザー光以外に、その波長(200〜400nm)よりも長波長の第2のレーザー光を別途設け、エキシマレーザー光の照射部に重複照射し、上記第2のレーザー光の波長、偏光度及び入射角を制御することにより任意の周期の定在波を半導体膜上に形成することができる。
【0031】
【実施例】
上述した本発明の実施の形態の実施例について説明する。
【0032】
(実施例1) 第1の実施の形態の第1の実施例
図4は、本発明の第1の実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法を実施するレーザーアニール装置の光学配置を示す図である。
【0033】
この装置においては、エキシマレーザー光11をガラス基板7上のシリコン膜9の表面に垂直に照射する。一方、エキシマレーザー光11より長波長(λ)の第2のレーザー光13をビームスプリッター3bを用いて2光束に分割し、それぞれのビームを反射ミラー5c、5d、5eを用いてシリコン膜9のエキシマレーザー照射部上に入射角θで照射し、2光束を干渉させ定在波をシリコン膜上に形成する。そして、エキシマレーザー光11による加熱と第2のレーザー光13が形成する定在波による加熱とがシリコン膜9のレーザー照射部にλ/(2sinθ)の周期の温度分布を形成する。この際に、この温度分布の低温部をシリコンの融点(1415℃)未満、温度分布の高温部をシリコンの融点以上となるようにエキシマレーザー光11と第2のレーザー光13それぞれの出力を設定すれば、定在波の低温部のみに選択的に残留核を形成することができる。そして、この残留核をその後の結晶成長の核とすることにより、大粒径の結晶を形成することができる。なお、ガラス基板7全体をレーザー照射ごとにレーザー光のビーム幅以下のステップで移動させれば、シリコン膜9全体を再結晶することができる。
【0034】
(実施例2) 第1の実施の形態の第2の実施例
図5は、本発明の第1の実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法を実施するレーザーアニール装置の他の光学配置を示す図である。
【0035】
この装置においては、エキシマレーザー光11をガラス基板7上のシリコン膜9の表面に垂直に照射する。一方、エキシマレーザー光11より長波長(λ)の第2のレーザー光13をビームスプリッター3cを用いて2光束に分割し、それぞれのビームを反射ミラー5f、5gを用いてシリコン膜9のエキシマレーザー光照射部上にガラス基板7の裏面から入射角θで照射し、2光束を干渉させ定在波をシリコン膜9上に形成する。このようにガラス基板7の裏面から第2のレーザー光13を入射するのは、加熱によりシリコン膜9から飛び出すシリコン粒が反射ミラー5f、5g等の光学系に衝突するのを防止するためである。そして、上記実施例1と同様に、エキシマレーザー光11による加熱と第2のレーザー光13が形成する定在波による加熱とがシリコン膜9のレーザー照射部にλ/2sinθの周期の温度分布を形成する。この際に、この温度分布の低温部をシリコンの融点(1415℃)未満、温度分布の高温部をシリコンの融点以上となるようにエキシマレーザー光11と第2のレーザー光13それぞれの出力を設定すれば、定在波の低温部のみに選択的に残留核を形成することができる。そして、この残留核をその後の結晶成長の核とすることにより、大粒径の結晶を形成することができる。なお、ガラス基板7全体をレーザー照射ごとにレーザー光のビーム幅以下のステップで移動させれば、シリコン膜9全体を再結晶することができる。
【0036】
(実施例3) 第2の実施の形態の実施例
図6は、本発明の第2の実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法を実施するレーザー照射装置の光学配置を示す図であり、(a)がその正面図、(b)がその上面図である。
【0037】
この装置においては、エキシマレーザー光11をガラス基板7上のシリコン膜9の表面に垂直に照射する。一方、エキシマレーザー光11より長波長(λ)でかつ直線偏光である第2のレーザー光15をP偏光状態でシリコン膜9のエキシマレーザー光11の照射部に入射角θで照射する。エキシマレーザー光11を多重回照射し、シリコン膜9の融解・再結晶化を繰り返すうちに、第2のレーザー光15の入射角θが0°≦θ≦35°の場合には、偏光方向と垂直な方位に1/(1−sinθ)と1/(1+sinθ)の周期の凹凸が、また35°≦θの場合には、偏光方向に平行な方位に1/cosθの周期の凹凸が、それぞれ強くシリコン膜9の表面に形成され、それにより、同周期の定在波が形成される。そして、この定在波により同周期の熱発生密度分布が形成される。この定在波の谷部には残留核が形成され、その残留核を結晶成長の核として再結晶化し、大粒径のポリシリコン膜を形成することができる。
【0038】
なお、照射される2つのレーザー光の合計出力はシリコン膜9が完全融解する出力未満に設定し、かつ、第2のレーザー光15の出力は、偏光度をF%(F≧10)とした場合には全レーザー出力の1000/F%以上としなければならない。というのは、全レーザー出力に対して10%以上の偏光度を有する必要があるからである。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、半導体膜を高エネルギーパルスレーザー照射により融解・結晶化して多結晶半導体膜を製造する処理において、融解時に界面に存在する残留核の分布をミクロンオーダーで制御し、その分布の安定化を図ることができる。それにより、大粒径の多結晶半導体膜を安定して製造することが可能となり、従って、多結晶半導体膜の結晶性及びそれを用いたTFTの素子特性が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多結晶半導体膜の製造方法を説明するための図であり、(a)がレーザー光と半導体基板との位置関係(光学配置)を示す図、(b)が(a)のA部分の拡大図である。
【図2】図1に示す2光束の半導体膜9に対する入射角θと半導体膜9の表面に形成される定在波の周期との関係を示す図である。
【図3】半導体膜に対する入射角θと半導体膜の表面に形成される上記定在波の周期との関係を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法を実施するレーザーアニール装置の光学配置を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法を実施するレーザーアニール装置の他の光学配置を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の多結晶半導体膜の製造方法を実施するレーザー照射装置の光学配置を示す図であり、(a)がその正面図、(b)がその上面図である。
【符号の説明】
1 レーザー光
3a、3b、3c ビームスプリッター
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g 反射ミラー
7 ガラス基板
9 半導体膜(シリコン膜)
11 エキシマレーザー光
13、15 第2のレーザ光
17 第2のレーザ光照射部
19 エキシマレーザー光照射部
Claims (2)
- 予め与えられた非晶質半導体膜又は第1の多結晶半導体膜を一旦融解し、その後再び結晶化することにより結晶粒度の異なる第2の多結晶半導体膜を形成する多結晶半導体膜の製造方法において、
第1のレーザー光を前記非晶質半導体膜又は第1の多結晶半導体膜表面の所定位置に複数回照射するとともに前記第1のレーザー光より長波長の第2のレーザー光を所定の入射角及び偏光状態で前記所定位置に照射することにより前記表面に凹凸を形成し、該凹凸と前記第2のレーザー光の所定の入射角及び偏光状態で決定される定在波を形成し、前記所定位置に該定在波と同周期の熱密度分布を、前記定在波の谷部の熱発生密度が、0以上、かつ、前記非晶質半導体膜又は前記第1の多結晶半導体膜が完全に融解するために必要な熱密度量未満であり、前記定在波の山部の熱発生密度が、前記非晶質半導体膜又は前記第1の多結晶半導体膜が完全に融解するために必要な熱密度量以上、かつ、前記非晶質半導体膜又は前記第1の多結晶半導体膜がアブレーションする熱密度量未満で発生させることを特徴とする多結晶半導体膜の製造方法。 - 前記熱密度分布の周期が1〜10μmとなるように前記入射角を設定することを特徴とする請求項3記載の多結晶半導体膜の製造方法。
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