特許文献1に開示されているような、酵素を利用するアレルゲン不活性化フィルタを車両の空調装置に適用すれば、アレルゲンが不活性化された環境を提供できる。ところで、特許文献1に開示されている、酵素を利用してアレルゲンを不活性化させる方法では、ある条件の湿度及び水分含有率に保つ必要があり、特に、水分含有率の条件は重要である。しかしながら、車両用空調装置では、そのような手段は存在せず、また、特許文献1にもそのような手段は開示されていない。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、酵素を利用したアレルゲン不活性化フィルタの水分含有率を、アレルゲンの分解に適した条件に維持できる車両用空調装置提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、この発明に係る車両用空調装置は、車両に備えられるとともに、車両室内へ空気を導入するための送風手段と、前記車両室内へ導入する空気を冷却する蒸発器と、車両室内へ導入する空気を加熱する加熱器とを備える車両用空調装置であって、前記車両室内へ導入する空気に含まれるアレルゲンを不活性化させるアレルゲン不活性化フィルタと、前記蒸発器周辺の空気を前記アレルゲン不活性化フィルタへ与える空気供給手段とを備えることを特徴とする。
この車両用空調装置は、タンパク質分解酵素を利用してアレルゲンを不活性化させるアレルゲン不活性化フィルタを備えるとともに、空気供給手段により、蒸発器周辺の湿度の高い空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与える。これにより、アレルゲン不活性化フィルタの水分含有率をアレルゲンの分解に適した条件に維持して、アレルゲンの分解効率を向上させることができる。
次の本発明に係る車両用空調装置は、前記車両用空調装置において、前記空気供給手段は、前記蒸発器の少なくとも前記車両室内側から空気をバイパスさせるバイパス通路と、このバイパス通路入り口に備えられる開閉可能のバイパス通路切り替え手段とを備えて構成されるものであり、前記蒸発器周辺の空気を前記アレルゲン不活性化フィルタへ与える際には、前記バイパス通路切り替え手段を開くとともに前記送風手段を駆動することにより、前記バイパス通路を経由させて前記蒸発器周辺の空気を前記アレルゲン不活性化フィルタへ与えることを特徴とする。
この車両用空調装置は、前記車両用空調装置と同じ構成を備えるので、前記車両用空調装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この車両用空調装置は、バイパス通路切り替え手段を開くとともに送風手段を駆動するので、より確実に蒸発器周辺の湿度の高い空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与えることができる。これにより、アレルゲン不活性化フィルタの水分含有率を、さらにアレルゲンの分解に適した条件に維持しやすくなる。
次の本発明に係る車両用空調装置は、前記車両用空調装置において、前記蒸発器周辺における空気の湿度が予め定める所定値よりも小さくなった場合には、前記送風手段の駆動を停止することを特徴とする。
この車両用空調装置は、前記車両用空調装置と同じ構成を備えるので、前記車両用空調装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この車両用空調装置は、蒸発器周辺における空気の湿度が予め定める所定値よりも小さくなった場合には、前記送風手段の駆動を停止するので、効率よくアレルゲン不活性化フィルタに水分を与えることができる。また、送風手段を無闇に駆動するおそれを低減できるので、空気供給手段を駆動するための消費電力を抑制できる。
次の本発明に係る車両用空調装置は、前記車両用空調装置において、前記空気供給手段は、前記アレルゲン不活性化フィルタよりも車両室内側から前記ダクト内の空気を吸引するダクト内空気吸引手段であり、前記加熱器を通過した後に前記蒸発器を通過した空気を前記アレルゲン不活性化フィルタへ与えることを特徴とする。
この車両用空調装置は、前記車両用空調装置と同じ構成を備えるので、前記車両用空調装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この車両用空調装置は、ダクト内空気吸引手段により、加熱器を通過した後に蒸発器を通過した空気を前記アレルゲン不活性化フィルタへ与える。加熱器を通過して温められた空気は、蒸発器周辺に滞留する水分を奪いやすくなるので、前記空気にはより多くの水分を含ませることができる。これにより、アレルゲン不活性化フィルタに対して効率よく水分を与えることができるとともに、アレルゲンの分解に適した温度条件とすることもできる。
次の本発明に係る車両用空調装置は、前記車両用空調装置において、前記蒸発器周辺における空気の湿度が予め定める所定値よりも小さくなった場合には、前記ダクト内空気吸引手段の駆動を停止することを特徴とする。
この車両用空調装置は、前記車両用空調装置と同じ構成を備えるので、前記車両用空調装置と同様の作用、効果を奏する。さらに、この車両用空調装置は、蒸発器周辺における空気の湿度が予め定める所定値よりも小さくなった場合には、ダクト内空気吸引手段の駆動を停止するので、効率よくアレルゲン不活性化フィルタに水分を与えることができる。また、ダクト内空気吸引手段を無闇に駆動するおそれを低減できるので、空気供給手段を駆動するための消費電力を抑制できる。
次の本発明に係る車両用空調装置は、車両に備えられるとともに、車両室内へ導入する空気を冷却する蒸発器と、前記車両室内へ導入する空気を加熱する加熱器と、前記蒸発器と前記加熱器との間に備えられるとともに前記加熱器に導入する空気量を調整する温度調整ドアとをダクト内に備える車両用空調装置であって、前記ダクトの外気取り入れ口側に配置されて、前記車両室内へ導入する空気に含まれるアレルゲンを不活性化させるアレルゲン不活性化フィルタを備え、前記蒸発器を通過した空気の全量を加熱器に導入するように前記温度調整ドアを切り替えて、前記ダクト内に発生する空気の自然対流によって前記蒸発器周辺の空気を前記アレルゲン不活性化フィルタへ与えることを備えることを特徴とする。
この車両用空調装置は、ダクト内の温度調整ドアを切り替えて、前記ダクト内に発生する空気の自然対流によって、蒸発器周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与える。これにより、アレルゲン不活性化フィルタの水分含有率をアレルゲンの分解に適した条件に維持して、アレルゲンの分解効率を向上させることができる。また、ダクト内に発生する自然対流を利用するので、空気供給手段等を駆動する必要はない。これにより、エネルギー消費を抑制できるので、例えば車両に搭載されるバッテリの消耗を抑制できる。
次の本発明に係る車両用空調装置は、車両に備えられるとともに、車両室内へ導入する空気を冷却する蒸発器と、前記車両室内へ導入する空気を加熱する加熱器とをダクト内に備える車両用空調装置であって、前記ダクトの軸が鉛直方向に対して略平行になるように前記ダクトが配置され、かつ前記加熱器及び前記蒸発器の上方にアレルゲン不活性化フィルタが配置されるとともに、前記ダクト内に発生する空気の自然対流によって、前記蒸発器周辺の空気を前記アレルゲンフィルタへ与えることを特徴とする。
この車両用空調装置は、ダクトの軸が鉛直方向に対して略平行になるように配置するとともに、前記ダクト内の温度調整ドアを切り替えて、前記ダクト内に発生する空気の自然対流によって、蒸発器周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与える。これにより、アレルゲン不活性化フィルタの水分含有率をアレルゲンの分解に適した条件に維持して、アレルゲンの分解効率を向上させることができる。また、ダクトの軸が鉛直方向に対して略平行になるように配置するとともに、加熱器及び蒸発器の上方にアレルゲン不活性化フィルタを配置する。これにより、自然対流の効果を効率よく利用して、効率的にアレルゲン不活性化フィルタへ水分を与えることができる。同時に、アレルゲン不活性化フィルタへ熱も与えることができる。さらに、ダクト内に発生する自然対流を利用するので、空気供給手段等を駆動する必要はない。これにより、エネルギー消費を抑制できるので、例えば車両に搭載されるバッテリの消耗を抑制できる。
この発明に係る車両用空調装置では、酵素を利用したアレルゲン除去フィルタの水分含有率を、アレルゲンの分解に適した条件に維持できる。
実施例1に係る車両用空調装置は、空調装置の運転を停止した後に、前記蒸発器周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与える空気供給手段を備える点に特徴がある。ここでは、空気供給手段として、少なくとも車両用空調装置が備える蒸発器の下流側から、当該蒸発器周囲の空気をバイパスさせて、アレルゲン不活性化フィルタへ与える例を説明する。
図1は、実施例1に係る車両用空調装置を備える車両の一例を示す断面図である。この車両1はいわゆる乗用車である。車両1は、路面L上を走行する。ここで、車両1の進行方向をY、路面Lと平行かつYに直交する方向をX、XとYとに直交する方向をZとする。車両用空調装置10は、車両室内1i内に配置されている。また、圧縮機3と凝縮機2とは、車両1のボンネット1b内へ設けられる。車両用空調装置10には車両1の前部に配置される凝縮器2から、冷媒が供給される。車両用空調装置10内の蒸発器で熱交換した冷媒は、圧縮機3へ送られる。圧縮機3は、蒸発器で熱を奪って気化した冷媒を圧縮して凝縮器2へ送る。この冷媒は、凝縮器2で冷却された後、再び蒸発器へ送られる。
図2−1、図2−2は、アレルゲン不活性化フィルタの一例を示す概念図である。アレルゲン不活性化フィルタは、フィルタ上に空気中のアレルゲン及びウィルスを捕捉し、タンパク質分解酵素の酵素反応を利用して、これらを不活性化させるものである。アレルゲン不活性化のプロセスは、タンパク質分解酵素によりアレルゲンのタンパク質分子を分解して低分子化する。これにより、アレルゲンを不活性化するものである。アレルゲン分解プロセス中に尿素を存在させると、尿素がアレルゲンタンパク質分子の高次構造を緩ませるので、タンパク質分解酵素は、アレルゲンのタンパク質分子を分解しやすくなる。これにより、より効率的にアレルゲンを分解することができる。
アレルゲンを分解するタンパク質分解酵素は、酸性、中性及び塩基性のうち、いずれであってもよい。例えば、トリプシン等のセリンプロアテーゼ、パパイン、カルパイン、カテプシンB及びカテプシンL等のシステインプロアテーゼ、ペプシン、レニン及びカテプシンD等のアスパラギン酸プロアテーゼ及びメタロプロアテーゼ等のプロアテーゼを用いることができる。また、使用する前記タンパク質分解酵素の最も働きやすい条件を考慮して、温度及び補酵素等の条件を任意に選択してもよい。ここで、プロアテーゼは、タンパク質を分解する性質を有する酵素を総括的に示すものである。
図2−1に示すアレルゲン不活性化フィルタ5aは、アレルゲン不活性化層51と、他の層(例えば帯電不織布)52とを積層させた構造である。アレルゲン不活性化層51は、例えば、吸湿性を有する不織布にアレルゲン不活性薬剤(タンパク質分解酵素及び尿素)6を担持させた構成である。この不織布に水分を含有させることによって、アレルゲン不活性化層51に担持するタンパク質分解酵素を効率的に働かせる条件に保つことができる。
図2−2に示すアレルゲン不活性化フィルタ5bは、アレルゲン不活性化層54を、保湿層53と他の層(例えば帯電不織布)52とで狭持した構造である。アレルゲン不活性化層54は、前記アレルゲン不活性化層51と同様の構成である。保湿層53は、例えばシリカゲル等のような吸湿及び放湿性を有する物質(以下保湿材という)を不織布に担持させることにより構成することができる。この保湿層が水分を含有し、放出することによって、アレルゲン不活性化層51に担持するタンパク質分解酵素を効率的に働かせる条件に保つことができる。なお、保湿層53を別個に設けなくとも、アレルゲン不活性化層54に保湿材を担持させても同様の効果を奏する。
本実施例及び以下の実施例では、上述のアレルゲン不活性化フィルタ5a、5bのいずれも使用することができる。また、上記以外のフィルタであっても、アレルゲン不活性機能と保湿機能とを備えているフィルタであれば、本発明に適用することができる。なお、以下の説明において、アレルゲン不活性化フィルタ5a、5bは、アレルゲン不活性化フィルタ5というものとする。
図3は、実施例1に係る車両用空調装置を示す断面図である。この車両用空調装置10は、車両用空調装置10の運転停止後において、蒸発器40よりも車両室内1i側から前記蒸発器40周辺の空気AHを取得して、アレルゲン不活性化フィルタ5へ与える構成である。図3に示す車両用空調装置10は、ダクト20の空気取り入れ口20iにアレルゲン不活性化フィルタ5を備える。そして、ダクト20には、空気取り入れ口20iから車両室内1iに向かって、送風手段の一例であるブロア30、蒸発器40、温度調整ドア60、加熱器42の順に各構成機器が配置されている。
ダクト20の空気取り入れ口20iには、外気取り入れ口20i1と、内気取り入れ口20i2とが設けられている。車両用空調装置10の運転時においては、ブロア30を駆動することによって、空気取り入れ口20iから空気をダクト20内へ取り入れる。ここで、外気取り入れ口20i1と、内気取り入れ口20i2とは、内気外気切替ドア62によって切り替えることができる。内気外気切替ドア62が図3の実線に示す位置にあるときは、ダクト20内へ外気取り入れ口20i1から外気が導入される。そして、内気外気切替ドア62が図3の点線に示す位置にあるときは、ダクト20内へ内気取り入れ口20i2から車両室内1iの空気が導入される。
温度調整ドア60を動作させることによって、加熱器42を通過する空気量を変化させることができる。これにより、車両室内1iへ与える空気の温度を調整する。なお、図3において、温度調整ドア60は、ダクト20へブロア30が取り入れるすべての空気を加熱器42へ導く、いわゆるMaxHotの位置に設定されている。蒸発器40は、冷房及び除湿に用いる。車両用空調装置10の運転時において、ダクト20内に導入された空気は、蒸発器40及び加熱器42で熱交換され、設定した温度及び湿度に調整される。そして、空気供給口20oから車両室内1iへ送られる。
蒸発器40よりも車両室内1i側へ配置される加熱器42の車両室内1i側に、バイパス通路22のバイパス空気取り入れ口(バイパス通路入り口)22iが開口している。バイパス空気取り入れ口22iには、バイパス通路切り替え手段の一例であるバイパス通路切替ドア64が取り付けられており、車両用空調装置10の通常運転時には、このバイパス通路切替ドア64を閉じておく。そして、車両用空調装置10の運転停止後において蒸発器40周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるときに、前記切替ドア64を開くようにする。バイパス通路22は、ダクト20の空気取り入れ口20iにバイパス空気供給口22sが開口する。そして、車両用空調装置10の運転停止後には、バイパス通路22を通った蒸発器40周辺の空気AHがアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給される。蒸発器40周辺の空気は高湿度であり、水分を多く含むので、上記構成により、アレルゲンの分解に適した含水率に、アレルゲン不活性化フィルタ5を維持できる。ここで、蒸発器40周辺における空気の湿度は、相対湿度で90%以上になり、アレルゲン不活性化フィルタ5へ供給する空気の湿度は、温度にも依存するが、相対湿度で50%以上100%未満程度である。
なお、温度調整ドア60をMaxHotの位置に設定すれば、効率よく加熱器42の熱を蒸発器40周辺の空気に与えることができるとともに、バイパス通路22へ効率よく前記空気を導入できる。しかし、本発明の実施においては、ダクト20へブロア30が取り入れる空気の一部が加熱器42へ導かれるようにすればよく、必ずしも温度調整ドア60をMaxHotとしなくともよい。
この車両用空調装置10が備える蒸発器40の近傍には、湿度センサ7が取り付けられており、これによって蒸発器40近傍の湿度を測定する。図4は、蒸発器周辺における空気の湿度Hと、車両用空調装置の運転停止後における時間Tとの関係を示す説明図である。図4に示すように、車両用空調装置10の運転を停止してからは、時間の経過とともに車両用空調装置10の周辺における空気の湿度は低下する。すなわち、車両用空調装置10の運転停止後、長時間が経過すると、アレルゲン不活性化フィルタ5に対する水分の供給効率が低下する。
したがって、車両用空調装置10の周辺における空気の湿度が所定の湿度閾値Htに到達したらブロア30の駆動を停止するように制御する。このように制御することにより、効率よくアレルゲン不活性化フィルタ5に水分を供給できるとともに、ブロア30を駆動するバッテリの消費も抑制できる。このように、湿度センサ7を備えれば、車両用空調装置10の運転停止後において、蒸発器40周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるブロア30の動作時間を制御することができる。なお、湿度センサ7を必ずしも備える必要はなく、必要に応じて用いればよい。
蒸発器40の近傍には、高湿度(相対湿度で70%以上)の空気が存在する。この車両用空調装置10は、運転停止後にバイパス通路切替ドア64を開けるとともに、温度調整ドア60をMaxHotの位置に切り替える。これにより、蒸発器40の近傍に存在する高湿度の空気へ、加熱器42の熱を与える。このとき、車両室内1iへ高湿度の空気が流れ込まないように、内気外気切替ドア62を外気導入位置(図3の実線)に切り替える。
この状態で、車両用空調装置10の運転停止後にブロア30を駆動すると、蒸発器40近傍の高湿度空気が加熱器42で温められた後にバイパス通路22を通ってアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給される。このように、蒸発器40周辺の空気を加熱器により昇温させることにより、アレルゲンの分解に適した含水率及び温度に、アレルゲン不活性化フィルタ5を維持できる。なお、車両用空調装置10の運転停止後に蒸発器40周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えることが好ましいが、蒸発器40周辺の空気の供給時期はこれに限られるものではない(以下同様)。例えば、車両用空調装置10の運転時に、蒸発器40を通過する空気の一部を、蒸発器40の車両室内1i側から取り出して、これをアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えてもよい。
(変形例1)
図5は、実施例1の第1変形例に係る車両用空調装置を示す断面図である。この車両用空調装置11は、実施例1に係る車両用空調装置10と略同様の構成であるが、蒸発器40直後の車両室内1i側から前記蒸発器40周辺の空気AHを取得して、アレルゲン不活性化フィルタ5へ与える点が異なる。他の構成は実施例1と同様なので説明を省略するとともに、同一の構成には同一の符号を付す。
図5に示すように、この車両用空調装置11は、蒸発器40直後の車両室内1i側、すなわち、蒸発器40と加熱器42との間に、バイパス通路24のバイパス空気取り入れ口24iが開口している。車両用空調装置10の通常運転時には、バイパス空気取り入れ口24iに取り付けられたバイパス通路切替ドア64を閉じておく。そして、車両用空調装置10の運転停止後において、蒸発器40周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるときに、前記バイパス通路切替ドア64を開くようにする。
バイパス通路24は、ダクト20の空気取り入れ口20iにバイパス空気供給口24sが開口する。そして、車両用空調装置10の運転停止後にブロア30を駆動すると、バイパス通路24を通った蒸発器40周辺の空気AHがアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給される。アレルゲン不活性化フィルタ5に含まれるアレルゲンを分解するタンパク質分解酵素は、高湿環境下で活性化してアレルゲンを活発に分解する。この変形例に係る車両用空調装置11は、アレルゲンの分解に適した含水率にアレルゲン不活性化フィルタ5を維持できるので、効率よくアレルゲンを分解できる。なお、さらに効率よくアレルゲンを分解するため、アレルゲン不活性化フィルタ5の近傍に加熱器を配置してアレルゲン不活性化フィルタ5を加熱してもよい。
さらに、図5の点線に示すように、アレルゲン不活性化フィルタ5と蒸発器40との間に、補助加熱器46と、補助加熱器切替ドア66とを設けてもよい。そして、蒸発器40周辺の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給する際には、補助加熱器切替ドア66を矢印D方向に移動させて、ブロア30の空気はすべて補助加熱器46へ導かれるようにする。この状態で、ブロア30を駆動するとともに補助加熱器46を加熱すると、補助加熱器46により昇温した空気が蒸発器40へ導かれる。これにより、蒸発器40周辺の高湿度の空気AHにより多くの水分を含有させるとともに、当該空気AHを昇温させてアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えることができる。その結果、アレルゲンの分解に適した含水率及び温度に、アレルゲン不活性化フィルタ5を維持できる。なお、本実施例において、補助加熱器46には電気式のヒータを用いるが、これに限られるものではない。
(変形例2)
図6は、実施例1の第2変形例に係る車両用空調装置を示す断面図である。この車両用空調装置12は、実施例1に係る車両用空調装置10と略同様の構成であるが、次の点が異なる。すなわち、アレルゲン不活性化フィルタ5へ蒸発器40周辺の空気AHを与える空気供給手段として、アレルゲン不活性化フィルタ5の外気取り入れ口20i1又は内気取り入れ口20i2側へ送風機(ダクト内空気吸引手段)32を設けてある。他の構成は実施例1と同様なので説明を省略するとともに、同一の構成には同一の符号を付す。
図6に示すように、この車両用空調装置12は、ダクト20の空気取り入れ口20iにおける外気又は車室内側に送風機32を備える。車両用空調装置10の運転停止後において、蒸発器40周辺の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるときには、まず、温度調整ドア60をMaxHot側に切り替える。そして、送風機32を駆動してダクト20内の空気を空気取り入れ口20iから吸い出すように駆動する。これにより、蒸発器40周辺の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給できる。
第2変形例の構成では、加熱器42で昇温された空気が蒸発器40を通過する。空気は、温度が高い程単位体積あたりに含まれる水分量が大きくなる。このため、第2変形例に係る車両用空調装置12によれば、より多くの水分を含んだ空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給できる。その結果、アレルゲン不活性化フィルタの含水率を効率的に上昇させることができる。同時に、加熱器42で昇温した空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えることができるので、タンパク質分解酵素をより活性化できる。また、蒸発器40周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるためのバイパス通路が不要になるので、車両用空調装置12を軽量、コンパクトにすることができる。その結果、車両用空調装置12を車両1に搭載する際における自由度が向上する。
次に、実施例1及びその変形例に係る車両用空調装置の制御について説明する。図7は、実施例1及びその変形例に係る車両用空調装置の制御装置を示す説明図である。実施例1及びその変形例に係る車両用空調装置10、11等は、車両用空調装置の制御装置(以下制御装置という)8により制御される。また、実施例1に係る車両用空調装置の制御方法は、前記車両用空調装置の制御装置8によって実現できる。
車両用空調装置の制御装置8は、高湿空気供制御部80と、主処理部8pと、記憶部8mとを含んで構成される。高湿空気供制御部80は、実施例1及びその変形例に係る車両用空調装置10、11等の運転停止後に、蒸発器40の周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与える際の運転を制御する。そして、高湿空気供制御部80は、バッテリ残量判定部81と、運転判定部82と、ドア制御部83と、送風制御部84と、タイマー判定部85と、湿度判定部86とを含んで構成される。主処理部8pは、前記車両用空調装置10、11等の通常の運転を制御する。記憶部8mは、前記車両用空調装置10、11等の運転制御に用いる運転パラメータのマップ等を格納してある。
バッテリ残量判定部81と、運転判定部82と、ドア制御部83と、送風制御部84と、タイマー判定部85と、湿度判定部86とは、車両用空調装置の制御装置8の入出力ポート(I/O)8bを介して接続される。これにより、バッテリ残量判定部81と、運転判定部82等とは、それぞれ双方向でデータをやり取りできるように構成される。なお、装置構成上の必要に応じて片方向でデータを送受信するようにしてもよい(以下同様)。
高湿空気供制御部80と、主処理部8pと、記憶部8mとは、車両用空調装置の制御装置8に備えられる入出力ポート(I/O)8bを介して接続されており、これらの間でも相互にデータをやり取りすることができる。また、入出力ポート(I/O)8bには、湿度センサ7、温度調整ドア60、内気外気切替ドア62、バイパス通路切替ドア64、ブロア30、タイマー9その他のセンサや制御対象機器が接続されている。そして、高湿空気供制御部80が備えるドア制御部83や送風制御部84等からの制御信号によりこれらが開閉されるように構成される。
記憶部8mには、実施例1及びその変形例に係る車両用空調装置の制御方法の処理手順を含むコンピュータプログラムや、車両用空調装置10、11等の運転制御に用いるデータマップ等が格納されている。ここで、記憶部8mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。また、高湿空気供制御部80や主処理部8pは、メモリ及びCPUにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、高湿空気供制御部80や主処理部8p等へすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、この実施例に係る車両用空調装置の制御方法の処理手順を実現できるものであってもよい。この車両用空調装置の制御装置8は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、高湿空気供制御部80の機能を実現するものであってもよい。次に、この車両用空調装置の制御装置8を用いて、この実施例に係る車両用空調装置の制御方法を実現する手順を説明する。なお、次の説明においては、適宜図1〜6を参照されたい。
図8は、実施例1及びその変形例に係る車両用空調装置の制御手順を示すフローチャートである。バッテリ残量判定部81は、車両1が搭載するバッテリが所定値以上の残量を有するか否かを判定する(ステップS101)。バッテリ残量が所定よりも少ないと、車両1が搭載する内燃機関の再始動等に支障が出る場合があるからである。なお、バッテリの残量判定は必ずしも実行しなくてもよい。
バッテリが所定値以上の残量を有する場合(ステップS101;Yes)、運転判定部82は、前記車両用空調装置10、11等がそれまで運転されていたか否かを判定する(ステップS102)。前記車両用空調装置10、11等が運転されていないと、蒸発器40の周辺に存在する高湿度の空気量少ないからである。前記車両用空調装置10、11等がそれまで運転されていた場合(ステップS102;Yes)、ドア制御部83は、前記車両用空調装置10、11等が備える温度調整ドア60、内気外気切替ドア62、及びバイパス通路切替ドア64の位置を、所定位置に切り替える(ステップS103)。すなわち、温度調整ドア60をMaxHotに、内気外気切替ドア62を外気導入とする。また、バイパス通路切替ドア64を開く。なお、第2変形例に係る前記車両用空調装置12は、バイパス通路22等及びバイパス通路切替ドア64を備えていないので、温度調整ドア60、内気外気切替ドア62を切り替える。
各ドアの位置を切り替えたら(ステップS103)、送風制御部84が、ブロア30又は送風機32により送風を開始する(ステップS104)。実施例1及びその第1変形例に係る車両用空調装置10、11の場合には、ブロア30で送風することにより、蒸発器40周辺の空気がバイパス通路22又は24を通ってアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給される。実施例1の第2変形例に係る車両用空調装置12の場合には、送風機32によりダクト20内の空気を吸い出すことにより、を用いる場合には、蒸発器40周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与える。
送風を開始したら(ステップS104)、バッテリ残量判定部81が、バッテリの残量が所定値以上あるか否かを判定する(ステップS105)。バッテリ残量が所定よりも少ないと、車両1が搭載する内燃機関の再始動等に支障が出る場合があるからである。バッテリが所定値以上の残量を有する場合(ステップS105;Yes)は、まだバッテリ残量に余裕があるので、引き続き送風を継続する。
ここで、車両用空調装置10、11等が送風時間をカウントするためのタイマー9を備える場合、タイマー判定部85は、タイマー9のカウント値が予め設定した値未満であるか否かを判定する(ステップS106)。例えば、送風時間を予め決定しておき、タイマー9のカウントがこの時間に到達したら、送風を停止するように構成する。また、バッテリ残量と送風時間との関係を予めマップ化して記憶部8mに格納しておき、バッテリ残量から求めた送風時間がタイマー9のカウント以上になったら、送風を停止するように構成する。この場合、場っている残量を判定する手順(ステップS105)は設けなくともよい。なお、タイマー9も任意の構成要素であり、必ずしも備える必要はない。
前記カウント値が予め設定した値未満である場合(ステップS106;Yes)、まだ送風を継続してもよい状態なので、送風を継続する。次に、湿度判定部86は、湿度センサ7により測定した蒸発器40の周辺における湿度が予め定めた所定値以上であるか否かを判定する(ステップS107)。これは、実施例1において説明したように(図4)、効率よくアレルゲン不活性化フィルタへ水分を与えるためである。蒸発器40の周辺における湿度が予め定めた所定値以上である場合(ステップS107;Yes)、ステップS105に戻って送風を継続する。
バッテリ残量が所定値未満になった場合(ステップS105;No)、タイマーのカウント値が予め設定した値以上になった場合(ステップS106;No)、又は蒸発器40の周辺における湿度が予め定めた所定値未満である場合(ステップS107;No)のいずれか1つに該当する場合には、送風制御部84が送風を停止する(ステップS108)。そして、ドア制御部83は、前記車両用空調装置10、11等が備える温度調整ドア60、内気外気切替ドア62、及びバイパス通路切替ドア64の位置を初期位置に切り替えて(ステップS109)、車両用空調装置10、11等の再運転に備える。また、バッテリの残量が所定未満である場合(ステップS101;No)、又は車両用空調装置10、11等がそれまで運転されていない場合(ステップS102;No)のいずれか1つに該当する場合も送風を開始しない。そして、ドア制御部83は、温度調整ドア60、内気外気切替ドア62等を初期位置に切り替えて(ステップS109)、車両用空調装置10、11等の再運転に備える。
以上、実施例1及びその変形例に係る車両用空調装置では、蒸発器周辺の湿度の高い空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与える。これにより、アレルゲン不活性化フィルタの水分含有率をアレルゲンの分解に適した条件に維持して、アレルゲンの分解効率を向上させることができる。なお、以下の実施例及びその変形例において、実施例1及びその変形例で開示した構成は、必要に応じて適宜適用できるものとする。また、実施例1及びその変形例で開示した構成と同一の構成を備える限り、実施例1及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
実施例2に係る車両用空調装置は、空調装置の運転を停止した後に、自然対流を利用して、前記蒸発器周辺の空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与える点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なのでその説明を省略するとともに、同一の構成に対しては同一の符号を付す。図9は、実施例2に係る車両用空調装置を示す断面図である。この車両用空調装置13は、ダクト20内に、蒸発器40と、加熱器42と、温度調整ドア60とを備える。
車両用空調装置13の運転終了後、蒸発器40周辺の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるにあたっては、温度調整ドア60をMaxHot側に切り替えるとともに、内気外気切替ドア62を外気導入側に切り替える。これにより、加熱器42近傍の温かい空気と外気との温度差による自然対流が発生する。そして、加熱器42近傍の温かい空気が蒸発器40近傍の空気から水分を奪い、アレルゲン不活性化フィルタ5へ水分と熱とを与える。これにより、タンパク質分解酵素をアレルゲンの分解に適した環境に維持できる。また、蒸発器40周辺の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ与える際にはブロアやファンを使用しないので、当該供給に要するエネルギー消費を極めて低減できる。これにより、車両1が備えるバッテリの消費を極めて抑制することができる。
(変形例1)
実施例2の第1変形例に係る車両用空調装置14は、実施例2に係る車両用空調装置略同様の構成であるが、ダクトの管軸を鉛直方向と略平行に配置して、自然対流をより効果的に作用させる点が異なる。他の構成は、実施例2と略同様なのでその説明を省略するとともに、同一の構成には同一の符号を付す。
図10−1は、実施例2の第1変形例に係る車両用空調装置を示す説明図である。この車両用空調装置14が備えるダクト20内には、空気取り入れ口20iから空気供給口20oに向かって、蒸発器40、加熱器42、補助加熱器44の順に配置されている。空気供給口20oには、アレルゲン不活性化フィルタ5が配置されており、車両室内1iへ供給する、温度と湿度とが調整された空気に含まれるアレルゲンを捕捉し、不活性化させる。
アレルゲン不活性化フィルタ5へ蒸発器40周辺の空気AHを与える際には、温度調整ドア60をMaxHotの状態(図10−1に示す状態)とする。この状態で、車両用空調装置14の運転を停止すると、蒸発器40周辺の高湿度の空気AHが加熱器42で温められてアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給される。これにより、これにより、タンパク質分解酵素をアレルゲンの分解に適した高湿、高温環境に維持できる。このとき、補助加熱器44も用いて加熱すれば、より効率的に蒸発器40周辺の高湿度の空気AHを昇温させることができる。
この車両用空調装置14は、ダクト20の管軸Zpを鉛直方向に対して略平行にして、ダクト20を配置してある。このように構成することで、車両用空調装置14の運転停止時には、加熱器42の周辺に存在する昇温した空気は、アレルゲン不活性化フィルタ5の方向へ流れる。このダクト20内に発生する自然対流によって、蒸発器40周辺の高湿度の空気AHを効率的にアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えることができる。また、補助加熱器44を併用することで、より強い自然対流をダクト20内へ生み出すことができる。その結果、さらに効率的に蒸発器40周辺の高湿度の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えることができる。さらに、自然対流を利用して蒸発器40周辺の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるので、当該供給に要するエネルギー消費を極めて低減できる。これにより、車両1が備えるバッテリの消費を極めて抑制することができる。なお補助加熱器44には、エンジンの冷却水やエンジンオイルを利用してもよいし、電気式のヒータを用いてもよい。
(変形例2)
実施例2の第2変形例に係る車両用空調装置15は、実施例2の第1変形例に係る車両用空調装置略同様の構成であるが、アレルゲン不活性化フィルタをダクトの空気取り入れ口に配置するとともに、空気取り入れ口側から空気供給口へ向かって蒸発器、加熱器の順に配置する点が異なる。他の構成は、実施例2と略同様なのでその説明を省略するとともに、同一の構成には同一の符号を付す。
図10−2は、実施例2の第2変形例に係る車両用空調装置を示す説明図である。この車両用空調装置15が備えるダクト20内には、空気取り入れ口20iから空気供給口20oに向かって、アレルゲン不活性化フィルタ5、蒸発器40、加熱器42の順に配置されている。空気取り入れ口20iに配置されるアレルゲン不活性化フィルタ5は、車両室内1iへ供給する、温度と湿度とが調整された空気に含まれるアレルゲンを捕捉し、不活性化させる。
アレルゲン不活性化フィルタ5へ蒸発器40周辺の空気AHを与える際には、温度調整ドア60をMaxHotの状態(図10−2に示す状態)とする。この状態で、車両用空調装置14の運転を停止すると、加熱器42により空気が温められる。そして、ダクト20内に発生する自然対流によって、この温められた空気が空気取り入れ口20i側へ移動して、蒸発器40周辺の高湿度の空気AHとともにアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給される。これにより、タンパク質分解酵素をアレルゲンの分解に適した高湿、高温環境に維持できる。
この車両用空調装置15は、ダクト20の管軸Zpを鉛直方向に対して略平行にして、ダクト20を配置してある。また、加熱器42の鉛直方向上方(重力の作用方向に対して反対方向)に、蒸発器40を配置してある。このように構成することで、ダクト20内には、加熱器42の周辺に存在する昇温した空気が、アレルゲン不活性化フィルタ5の方向へ流れる。このダクト20内に発生する自然対流により、蒸発器40周辺の高湿度の空気AHを効率的にアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えることができる。また、加熱器42で温められた空気が蒸発器40へ供給されるので、より多くの水分を取り込んだ空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えることができる。さらに、自然対流を利用して蒸発器40周辺の空気AHをアレルゲン不活性化フィルタ5へ与えるので、当該供給に要するエネルギー消費を極めて低減できる。これにより、車両1が備えるバッテリの消費を極めて抑制することができる。
次に、実施例2及びその変形例に係る車両用空調装置の制御方法について説明する。なお、前記制御方法は、実施例1で説明した車両用空調装置の制御装置8が有する機能の一部を利用することで実現できる。次の説明においては、適宜図1、7、10−1、10−2を参照されたい。
図11は、実施例2及びその変形例に係る車両用空調装置の制御手順を示すフローチャートである。まず、車両用空調装置の制御装置8が備える運転判定部82は、車両用空調装置13、14等がそれまで運転されていたか否かを判定する(ステップS201)。前記車両用空調装置13、14等が運転されていないと、蒸発器40の周辺に存在する高湿度の空気量が少ないからである。前記車両用空調装置13、14等がそれまで運転されていた場合(ステップS201;Yes)、ドア制御部83は、前記車両用空調装置13、14等が備える温度調整ドア60、内気外気切替ドア62の位置を所定位置に切り替える(ステップS202)。より具体的には、温度調整ドア60をMaxHotに、内気外気切替ドア62を外気導入とする。なお、第1変形例に係る前記車両用空調装置14(図10−1)においては、空気供給口20oに遮蔽ドアを設けて、車両室内1iへ高湿空気が流れ込まないようにしてもよい。
各ドアの位置を切り替えると(ステップS202)、ダクト20内の自然対流により、蒸発器40周辺の空気がアレルゲン不活性化フィルタ5へ供給される。車両用空調装置10、11等が送風時間をカウントするためのタイマー9を備える場合、タイマー判定部85は、タイマー9のカウント値が予め設定した値未満であるか否かを判定する(ステップS203)。例えば、蒸発器40周囲の高湿空気をアレルゲン不活性化フィルタ5へ与える時間を予め決定しておき、タイマー9のカウントがこの時間に到達したら、温度調整ドア60や内気外気切替ドア62を初期位置に戻すように構成することができる。なお、タイマー9も任意の構成要素であり、必ずしも備える必要はない。
前記カウント値が予め設定した値未満である場合(ステップS203;Yes)、まだアレルゲン不活性化フィルタ5に蒸発器40周辺の空気を供給してもよい状態なので、供給を継続する。次に、湿度判定部86は、湿度センサ7により測定した蒸発器40の周辺における湿度が予め定めた所定値以上であるか否かを判定する(ステップS204)。これは、実施例1において説明したように(図4)、効率よくアレルゲン不活性化フィルタへ水分を与えるためである。蒸発器40の周辺における湿度が予め定めた所定値以上である場合(ステップS204;Yes)、ステップS203に戻って送風を継続する。
タイマーのカウント値が予め設定した値以上になった場合(ステップS106;No)、又は蒸発器40の周辺における湿度が予め定めた所定値未満である場合(ステップS107;No)に該当するとき、ドア制御部83は、温度調整ドア60、内気外気切替ドア62を初期位置に切り替える(ステップS205)。これにより、車両用空調装置13、14等の再運転に備える。また、車両用空調装置13、14等がそれまで運転されていない場合(ステップS201;No)に該当する場合も、ドア制御部83は上記と同様に制御して、車両用空調装置13、14等の再運転に備える。
以上、実施例2及びその変形例に係る車両用空調装置では、自然対流を利用して、蒸発器の周辺に存在する高湿度の空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与える。これにより、タンパク質分解酵素をアレルゲンの分解に適した環境に維持できる。また、自然対流を利用して蒸発器周辺の高湿度の空気をアレルゲン不活性化フィルタへ与えるので、当該供給に要するエネルギー消費を極めて低減できる。これにより、車両が備えるバッテリの消費を極めて抑制することができる。