JP4130889B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質を一組の電極で挟んで構成される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体とセパレータとを交互に積層する燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜(陽イオン交換膜)からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒と多孔質カーボンからなるアノード側電極およびカソード側電極を対設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することにより構成されている。
【0003】
この種の燃料電池において、アノード側電極に供給された燃料ガス(反応ガス)、例えば、主に水素を含有するガス(以下、水素含有ガスともいう)は、電極触媒上で水素がイオン化され、電解質膜を介してカソード側電極側へと移動する。その間に生じた電子は外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。なお、カソード側電極には、酸化剤ガス(反応ガス)、例えば、主に酸素を含有するガスあるいは空気(以下、酸素含有ガスともいう)が供給されているために、このカソード側電極において、水素イオン、電子および酸素が反応して水が生成される。
【0004】
ところで、燃料電池は、通常、数十〜数百の単位セルを積層して燃料電池スタックを構成している。その際、各単位セル同士を正確に位置決めする必要があり、例えば、前記単位セルに形成された位置決め用孔部にノックピンを挿入する作業が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている燃料電池の組み立て方法では、図10に示すように、単位セル1を構成するカーボンプレート(セパレータ)2a、2b間に電解質膜3が介装されるとともに、前記電解質膜3の両面には、シールプレート4a、4bを介装して触媒電極5a、5bが積層されている。
【0006】
単位セル1には、積層方向(矢印X方向)に貫通して、例えば、酸化剤ガス用のガス入口マニホールド6aとガス出口マニホールド6bとが形成されるとともに、前記ガス入口マニホールド6aと前記ガス出口マニホールド6bとは、カーボンプレート2aの触媒電極5aに対向する面に形成されたガス通路溝8aを介して貫通している。
【0007】
単位セル1には、例えば、燃料ガス用のガス入口マニホールド7aとガス出口マニホールド7bとが形成されるとともに、カーボンプレート2bの触媒電極5bに対向する面には、前記ガス入口マニホールド7aと前記ガス出口マニホールド7bとを連通するガス通路溝8bが形成されている。単位セル1の各角部には、図示しないノックピンを挿入するための位置決め穴9が形成されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−7627号公報(段落[0008]〜[0010]、図4)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1では、触媒電極5a、5bの周囲にガス入口マニホールド6a、7aおよびガス出口マニホールド6b、7bが形成されるとともに、各角部近傍にノックピン挿入用の位置決め穴部9が形成されている。このため、触媒電極5a、5bの発電面積に対して、カーボンプレート2a、2bの面積が相当に増大してしまい、単位セル1全体が大型化するという問題がある。これにより、複数の単位セル1を積層して燃料電池スタックを構成する際に、この燃料電池スタックの発電効率が著しく低下するという問題が指摘されている。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単かつコンパクトな構成で、発電効率を有効に向上させることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る燃料電池では、セパレータには、冷却媒体入口連通孔および冷却媒体出口連通孔に連通する冷却媒体流路が該セパレータの面方向に延在して形成されている。冷却媒体入口連通孔および冷却媒体出口連通孔は、それぞれ開口形状四角形の第1連通部と開口形状四角形の第2連通部とを前記面方向に一体に有し、前記第1連通部は、前記第2連通部よりも前記冷却媒体流路側に近接しかつ前記冷却媒体流路の幅方向中央部に連通するとともに、前記第2連通部の中央位置は、前記第1連通部の中央位置に対して高さ方向にオフセットすることにより、前記第1および第2位置決め用孔部をセパレータ面内の対角位置に形成するためのスペースを設けている。
【0012】
その際、第1連通部の略中央位置と第2連通部の略中央位置とは、互いに高さ方向にオフセットしている。このため、例えば、第2連通部は、ノック孔やバッファ部等に干渉しない位置に効率的に設けることができるとともに、第1連通部は、冷却媒体流路の幅方向中央部に形成することが可能である。
【0013】
従って、セパレータ面内の有効スペースを効率的に使用するとともに、冷却媒体を冷却媒体流路に沿って均一かつ円滑に供給することができる。これにより、燃料電池全体の小型化を図るとともに、発電効率の向上が容易に遂行可能になる。しかも、冷却媒体入口連通孔および冷却媒体出口連通孔の開口面積を十分に確保することができ、流路抵抗が低減されて冷却媒体の分配性が良好に向上する。
【0014】
さらに、第1位置決め用孔部と第2位置決め用孔部とは、セパレータ面内の対角位置に設けられている。これにより、第1および第2位置決め用孔部を使用して、隣り合うセパレータ同士を確実かつ高精度に位置決めすることができる。また、セパレータの水平方向一端部には、冷却媒体入口連通孔と第1位置決め用孔部とが隣接して設けられるとともに、前記セパレータの水平方向他端部には、冷却媒体出口連通孔と第2位置決め用孔部とが隣接して設けられている。
【0015】
このため、セパレータ面内には、反応ガス入口連通孔、反応ガス出口連通孔、冷却媒体入口連通孔、冷却媒体出口連通孔、第1位置決め用孔部および第2位置決め用孔部を効率的に形成することが可能になり、燃料電池全体の小型化が容易に図られる。
【0016】
方、冷却媒体入口連通孔と冷却媒体出口連通孔とは、略対称形状に構成されている。このため、冷却媒体流路に対する冷却媒体の出入りが同一条件で行われ、冷却媒体流路全体にわたって前記冷却媒体を円滑に流動させることが可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10の要部分解斜視図であり、図2は、前記燃料電池10の一部断面説明図である。
【0018】
燃料電池10は、電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)12と、金属セパレータ13とを交互に積層して構成されるとともに、この金属セパレータ13は、互いに積層される横長な第1および第2金属プレート14、16を備える。
【0019】
図1に示すように、燃料電池10の矢印B方向の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔(反応ガス入口連通孔)20a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔22a、および燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔(反応ガス出口連通孔)24bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0020】
冷却媒体入口連通孔22aと燃料ガス出口連通孔24bとの間には、燃料電池10を積層方向に位置決めするための第1位置決め用孔部18aが矢印A方向に互いに連通して設けられる。冷却媒体入口連通孔22aは、後述する冷却媒体流路42に連通する略四角形状の第1連通部25aと、この第1連通部25aに一部分を重ね合わせるように連通する略四角形状の第2連通部27aとを備える。第1連通部25aおよび第2連通部27aは、それぞれの角部にR(曲率)が設けられており、冷却媒体の流れを円滑にする機能を有する。
【0021】
図3に示すように、第1連通部25aの略中央位置P1と第2連通部27aの略中央位置P2とは、互いに高さ方向(矢印C方向)にオフセットして設定されている。第2連通部27aは、第1連通部25aよりも上方(矢印C1方向)に距離Hだけ離間して配置される。
【0022】
燃料電池10の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔(反応ガス入口連通孔)24a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔22b、および酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔(反応ガス出口連通孔)20bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0023】
燃料ガス入口連通孔24aと冷却媒体出口連通孔22bとの間には、燃料電池10を組み立てる際に位置決めを行うための第2位置決め用孔部18bが、矢印A方向に連通して設けられる。冷却媒体出口連通孔22bは、冷却媒体入口連通孔22aと同様に、後述する冷却媒体流路42に連通する略四角形状(Rを有する)の第1連通部25bと、前記第1連通部25bに連通する略四角形状(Rを有する)の第2連通部27bとを備える。
【0024】
第1連通部25bの略中央位置P1と第2連通部27bの略中央位置P2とは、互いに矢印C方向にオフセットしている。第1連通部25bは、第2連通部27bよりも上方向(矢印C1方向)に距離Hだけ離間して設けられる。
【0025】
冷却媒体入口連通孔22aおよび冷却媒体出口連通孔22bには、第1連通部25a、25bが冷却媒体流路42の幅方向(矢印C方向)中央部に形成されるとともに、第2連通部27a、27bが第1および第2位置決め用孔部18a、18bに干渉しない位置に設けられる。
【0026】
第1および第2位置決め用孔部18a、18bは、燃料電池10の矢印B方向両端部に対角位置に設けられる一方、冷却媒体入口連通孔22aと冷却媒体出口連通孔22bとは、略対称形状に構成される。
【0027】
図1および図2に示すように、電解質膜・電極構造体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸されてなる固体高分子電解質膜26と、該固体高分子電解質膜26を挟持するアノード側電極28およびカソード側電極30とを備える。
【0028】
アノード側電極28およびカソード側電極30は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布した電極触媒層とをそれぞれ有する。電極触媒層は、互いに固体高分子電解質膜26を介装して対向するように、前記固体高分子電解質膜26の両面に接合されている。
【0029】
図1および図3に示すように、第1金属プレート14の電解質膜・電極構造体12側の面14aには、酸化剤ガス流路32が設けられるとともに、この酸化剤ガス流路32は、酸化剤ガス入口連通孔20aと酸化剤ガス出口連通孔20bとに連通する。酸化剤ガス流路32は、酸化剤ガス入口連通孔20aに近接して設けられる略直角三角形状の入口バッファ部34と、酸化剤ガス出口連通孔20bに近接して設けられる略直角三角形状の出口バッファ部36とを備える。入口バッファ部34および出口バッファ部36は、互いに略対称形状に構成されるとともに、複数のエンボス34a、36aを設ける。
【0030】
入口バッファ部34と出口バッファ部36とは、3本の酸化剤ガス流路溝38a、38bおよび38cを介して連通している。酸化剤ガス流路溝38a〜38cは、互いに平行して矢印B方向に蛇行しながら矢印C方向に延在している。具体的には、酸化剤ガス流路溝38a〜38cは、例えば、2回の折り返し部位T1、T2を有して矢印B方向に一往復半のサーペンタイン流路溝に構成される。
【0031】
第1金属プレート14の面14aには、酸化剤ガス入口連通孔20a、酸化剤ガス出口連通孔20bおよび酸化剤ガス流路32を覆って酸化剤ガスのシールを行う線状シール40が設けられる。
【0032】
第1金属プレート14と第2金属プレート16との互いに対向する面14b、16aには、冷却媒体流路42が一体的に形成される。図4に示すように、冷却媒体流路42は、冷却媒体入口連通孔22aの矢印C方向両端近傍に設けられる、例えば、略直角三角形状の入口バッファ部44、46と、冷却媒体出口連通孔22bの矢印C方向両側近傍に設けられる、例えば、略直角三角形状の出口バッファ部48、50とを備える。
【0033】
入口バッファ部44と出口バッファ部50とは、互いに略対称形状に構成されるとともに、入口バッファ部46と出口バッファ部48とは、互いに略対称形状に構成される。入口バッファ部44、入口バッファ部46、出口バッファ部48および出口バッファ部50は、複数のエンボス44a、46a、48aおよび50aにより構成されている。
【0034】
冷却媒体入口連通孔22aの第1連通部25aと入口バッファ部44、46とは、第1および第2の入口連絡流路52、54を介して連通する一方、冷却媒体出口連通孔22bの第1連通部25bと出口バッファ部48、50とは、第1および第2の出口連絡流路56、58を介して連通する。第1の入口連絡流路52は、例えば、2本の流路溝を備えるとともに、第2の入口連絡流路54は、例えば、6本の流路溝を備えている。同様に、第1の出口連絡流路56は、6本の流路溝を設ける一方、第2の出口連絡流路58は、2本の流路溝を設けている。
【0035】
第1の入口連絡流路52の流路本数と第2の入口連絡流路54の流路本数とは、2本と6本とに限定されるものではなく、また、それぞれの流路本数が同一に設定されていてもよい。第1および第2の出口連絡流路56、58においても同様である。
【0036】
入口バッファ部44と出口バッファ部48とは、矢印B方向に延在する直線状流路溝60、62、64および66を介して連通するとともに、入口バッファ部46と出口バッファ部50とは、矢印B方向に延在する直線状流路溝68、70、72および74を介して連通する。直線状流路溝66、68間には、矢印B方向に所定の長さだけ延在して直線状流路溝76、78が設けられる。
【0037】
直線状流路溝60〜74は、矢印C方向に延在する直線状流路溝80、82を介して連通する。直線状流路溝62〜78は、矢印C方向に延在する直線状流路溝84、86を介して連通するとともに、直線状流路溝64、66および76と直線状流路溝68、70および78とは、矢印C方向に断続的に延在する直線状流路溝88および90を介して連通する。
【0038】
冷却媒体流路42は、第1金属プレート14と第2金属プレート16とに振り分けられており、前記第1および第2金属プレート14、16を互いに重ね合わせることによって、前記冷却媒体流路42が形成される。図5に示されるように、第1金属プレート14の面14bには、面14a側に形成される酸化剤ガス流路32を避けるようにして冷却媒体流路42の一部が形成される。
【0039】
なお、面14bには、面14aに形成された酸化剤ガス流路32が凸状に突出しているが、冷却媒体流路42を分かり易くするために、該凸状部分の図示は省略する。また、図6に示す面16aも同様に、面16bに形成された後述する燃料ガス流路96が前記面16aに凸状に突出する部分の図示は省略する。
【0040】
面14bには、冷却媒体入口連通孔22aに2本の第1の入口連絡流路52を介して連通する入口バッファ部44と、冷却媒体出口連通孔22bに2本の第2の出口連絡流路58を介して連通する出口バッファ部50とが設けられる。
【0041】
入口バッファ部44には、酸化剤ガス流路溝38a〜38cの折り返し部位T2および出口バッファ部36を避けるようにして、溝部60a、62a、64aおよび66aが矢印B方向に沿って断続的かつ所定の長さに設けられる。出口バッファ部50には、酸化剤ガス流路溝38a〜38cの折り返し部位T1および入口バッファ部34を避けるようにして、溝部68a、70a、72aおよび74aが矢印B方向に沿って所定の位置に設けられる。
【0042】
溝部60a〜78aは、それぞれ直線状流路溝60〜78の一部を構成している。直線状流路溝80〜90を構成する溝部80a〜90aは、蛇行する酸化剤ガス流路溝38a〜38cを避けるようにして、矢印C方向にそれぞれ所定の長さにわたって設けられる。
【0043】
図6に示すように、第2金属プレート16の面16aには、後述する燃料ガス流路96を避けるようにして冷却媒体流路42の一部が形成される。具体的には、冷却媒体入口連通孔22aに連通する入口バッファ部46と、冷却媒体出口連通孔22bに連通する出口バッファ部48とが設けられる。
【0044】
入口バッファ部46には、直線状流路溝68〜74を構成する溝部68b〜74bが矢印B方向に沿って所定の長さにかつ断続的に連通する一方、出口バッファ部48には、直線状流路溝60〜66を構成する溝部60b〜66bが所定の形状に設定されて連通する。面16aには、直線状流路溝80〜90を構成する溝部80b〜90bが矢印C方向に延在して設けられる。
【0045】
冷却媒体流路42では、矢印B方向に延在する直線状流路溝60〜78の一部がそれぞれの溝部60a〜78aおよび60b〜78bに互いに対向することにより、流路断面積を他の部分の2倍に拡大して主流路が構成されている(図4参照)。直線状流路溝80〜94は、一部を重合させてそれぞれ第1および第2金属プレート14、16に振り分けられている。第1金属プレート14の面14aと第2金属プレート16の面16aとの間には、冷却媒体流路42を囲繞する線状シール40aが介装されている。
【0046】
図1に示すように、金属セパレータ13は、第1および第2金属プレート14、16が積層された状態で、入口バッファ部34、46が互いに重なり合う一方、出口バッファ部36、48が互いに重なり合っている。
【0047】
図7に示すように、第2金属プレート16の電解質膜・電極構造体12側の面16bには、燃料ガス流路96が設けられる。燃料ガス流路96は、燃料ガス入口連通孔24aに近接して設けられる略直角三角形状の入口バッファ部98と、燃料ガス出口連通孔24bに近接して設けられる略直角三角形状の出口バッファ部100とを備える。
【0048】
入口バッファ部98および出口バッファ部100は、互いに略対称形状に構成されるとともに、複数のエンボス98a、100aを設けており、例えば、3本の燃料ガス流路溝102a、102bおよび102cを介して連通する。燃料ガス流路溝102a〜102cは、矢印B方向に蛇行しながら矢印C方向に延在しており、例えば、2回の折り返し部位T3、T4を設けて実質的に一往復半のサーペンタイン流路溝に構成される。面16bには、燃料ガス流路96を囲繞する線状シール40bが設けられる。
【0049】
図5および図7に示すように、第1金属プレート14の面14bに形成される入口バッファ部44と、第2金属プレート16の面16bに形成される出口バッファ部100とが重なり合う一方、前記面14bの出口バッファ部50と前記面16bの入口バッファ部98とが重なり合うように構成される。
【0050】
このように構成される第1の実施形態に係る燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0051】
図1に示すように、燃料ガス入口連通孔24aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス入口連通孔20aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔22aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0052】
酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔20aから第1金属プレート14の酸化剤ガス流路32に導入される。酸化剤ガス流路32では、図3に示すように、酸化剤ガスが一旦入口バッファ部34に導入された後、酸化剤ガス流路溝38a〜38cに分散される。このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路溝38a〜38cを介して蛇行しながら、電解質膜・電極構造体12のカソード側電極30に沿って移動する。
【0053】
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔24aから第2金属プレート16の燃料ガス流路96に導入される。この燃料ガス流路96では、図7に示すように、燃料ガスが一旦入口バッファ部98に導入された後、燃料ガス流路溝102a〜102cに分散される。さらに、燃料ガスは、燃料ガス流路溝102a〜102cを介して蛇行し、電解質膜・電極構造体12のアノード側電極28に沿って移動する。
【0054】
従って、電解質膜・電極構造体12では、カソード側電極30に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極28に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0055】
次いで、アノード側電極28に供給されて消費された燃料ガスは、出口バッファ部100から燃料ガス出口連通孔24bに排出される。同様に、カソード側電極30に供給されて消費された酸化剤ガスは、出口バッファ部36から酸化剤ガス出口連通孔20bに排出される。
【0056】
一方、冷却媒体入口連通孔22aに供給された冷却媒体は、第1および第2金属プレート14、16間に形成された冷却媒体流路42に導入される。この冷却媒体流路42では、図4に示すように、冷却媒体入口連通孔22aから矢印C方向に延在する第1および第2の入口連絡流路52、54を介して入口バッファ部44、46に冷却媒体が一旦導入される。
【0057】
入口バッファ部44、46に導入された冷却媒体は、直線状流路溝60〜66および68〜74に分散されて水平方向(矢印B方向)に移動するとともに、その一部が直線状流路溝80〜90および76、78に供給される。従って、冷却媒体は、電解質膜・電極構造体12の発電面全面にわたって供給された後、出口バッファ部48、50に一旦導入され、さらに第1および第2の出口連絡流路56、58を介して冷却媒体出口連通孔22bに排出される。
【0058】
この場合、第1の実施形態では、燃料電池10の長手方向(矢印B方向)両端に第1および第2位置決め用孔部18a、18bが設けられている。このため、図示しないノックピンを第1および第2位置決め用孔部18a、18bに挿入することにより、電解質膜・電極構造体12と金属セパレータ13とが互いに位置決めされて矢印A方向に積層され、燃料電池10が得られる。さらに、各燃料電池10の第1および第2位置決め用孔部18a、18bにノックピン(図示せず)が挿入されることによって、複数の燃料電池10が矢印A方向に積層した燃料電池スタックが組み付けられる。ノックピンは、樹脂材料等の絶縁材で形成されている。
【0059】
その際、燃料電池10では、冷却媒体入口連通孔22aおよび冷却媒体出口連通孔22bが、冷却媒体流路42に連通する略四角形状の第1連通部25a、25bと、前記第1連通部25a、25bに一部分が重なり合うように互いに矢印C方向にオフセットして連通する略四角形状の第2連通部27a、27bとを備えている。
【0060】
このため、第2連通部27a、27bは、第1および第2位置決め用孔部18a、18bに干渉しない位置に効率的に設けることができるとともに、第1連通部25a、25bを冷却媒体流路42の幅方向(矢印C方向)中央部に形成することが可能となる。従って、金属セパレータ13の面内の有効スペースを効率的に使用するとともに、冷却媒体を冷却媒体流路42に沿って均一かつ円滑に供給することができるという効果が得られる。その際、第1連通部25a、25bおよび第2連通部27a、27bは、それぞれの角部にR(曲率)が設けられており、冷却媒体の流れを一層に円滑にすることが可能になる。
【0061】
これにより、燃料電池10全体の小型化を図るとともに、発電効率の向上が容易に遂行可能になる。しかも、冷却媒体入口連通孔22aおよび冷却媒体出口連通孔22bの開口面積を十分に確保することができ、流路抵抗が低減されて冷却媒体の分配性が良好に向上し、冷却効率を有効に維持することが可能になる。
【0062】
さらに、第1位置決め用孔部18aと第2位置決め用孔部18bとは、燃料電池10の対角位置に設けられている。このため、燃料電池10全体を確実かつ容易に位置決めすることができる。一方、冷却媒体入口連通孔22aと冷却媒体出口連通孔22bとは、略対称形状に構成されている。これにより、冷却媒体流路42に対する冷却媒体の出入りが同一条件で行われ、冷却媒体流路42全体にわたって前記冷却媒体を円滑に流動させることが可能になるという利点がある。
【0063】
なお、第1の実施形態では、燃料電池10に図示しないノックピンを挿入するための第1および第2位置決め用孔部18a、18bを設けているが、これに限定されるものではなく、例えば、第1金属プレート14に前記第1および第2位置決め用孔部18a、18bを設ける一方、第2金属プレート16に突部を設け、該第1および第2位置決め用孔部18a、18bに前記突部を挿入して金属セパレータ13の位置決めを行うようにしてもよい。
【0064】
また、各燃料電池10毎に第1および第2位置決め用孔部18a、18bに挿入される位置決めピンを設け、各位置決め用ピン同士を連結して燃料電池スタック全体の位置決めを行うように構成してもよい。
【0065】
さらにまた、冷却媒体入口連通孔22aおよび冷却媒体出口連通孔22bは、セパレータ面内の有効スペースを効率的に使用するために、他の連通孔の形状やバッファ部の形状等に対応して第1連通部25a、25bと第2連通部27a、27bとを互いにオフセットして設けてもよい。
【0066】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する第1金属プレート110の正面図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても、同様にその詳細な説明は省略する。
【0067】
第1金属プレート110は、冷却媒体入口連通孔112aと冷却媒体出口連通孔112bとを備えており、前記冷却媒体入口連通孔112aは、略四角形状の第1連通部114aと、この第1連通部114aに一部分を重ね合わせるように連通する略菱形形状の第2連通部116aとを備える。第2連通部116aは、第1連通部114a側に向かって傾斜する傾斜面118aを有し、冷却媒体を前記第1連通部114aに円滑に供給することができる。
【0068】
冷却媒体出口連通孔112bは、同様に、略四角形状の第1連通部114bと、この第1連通部114bに一部分を重ね合わせるように連通する略菱形形状の第2連通部116bとを備える。第2連通部116bは、第1連通部114b側に向かって傾斜する傾斜面118bを有する。
【0069】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池120の要部分解斜視図である。燃料電池120は、電解質膜(電解質)・電極構造体122と、前記電解質膜・電極構造体122を挟持する第1および第2セパレータ124、126とを備える。電解質膜・電極構造体122と第1および第2セパレータ124、126との間には、ガスケット等のシール部材128が介装されている。第1および第2セパレータ124、126は、金属プレートの他、例えば、カーボンプレートで構成してもよい。
【0070】
第1セパレータ124の電解質膜・電極構造体122側の面124aには、燃料ガス入口連通孔24aと燃料ガス出口連通孔24bとに連通する燃料ガス流路130が形成される。この燃料ガス流路130は、例えば、矢印B方向に直線状に延在する複数本の溝部を備える。第1セパレータ124の面124aとは反対の面124bには、冷却媒体入口連通孔22aと冷却媒体出口連通孔22bとに連通する冷却媒体流路132が形成される。この冷却媒体流路132は、例えば、矢印B方向に延在する複数本の直線流路溝により構成される。
【0071】
第2セパレータ126の電解質膜・電極構造体122側の面126aには、酸化剤ガス入口連通孔20aと酸化剤ガス出口連通孔20bとに連通する酸化剤ガス流路134が設けられる。酸化剤ガス流路134は、例えば、矢印B方向に直線状に延在する複数本の溝部を備える。
【0072】
このように構成される第3の実施形態では、冷却媒体入口連通孔22aおよび冷却媒体出口連通孔22bが、第1連通部25a、25bと第2連通部27a、27bとを備えている。この第1連通部25a、25bは、冷却媒体流路132の幅方向(矢印C方向)中央部に形成される一方、この第2連通部27a、27bは、第1および第2位置決め用孔部18a、18bに干渉しない位置に効率的に設けられる。これにより、所望の冷却効率を維持して燃料電池120全体の小型化を図るとともに、発電効率の向上が容易に遂行可能になる等、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池では、冷却媒体入口連通孔および冷却媒体出口連通孔は、冷却媒体流路に連通する略四角形状の第1連通部と、前記第1連通部に高さ方向にオフセットして連通する略四角形状の第2連通部とを備えている。このため、第2連通部は、第1および第2位置決め用孔部に干渉しない位置に効率的に設けることができるとともに、第1連通部は、冷却媒体流路の幅方向中央部に形成することが可能である。
【0074】
従って、セパレータ面内の有効スペースを効率的に使用するとともに、冷却媒体を冷却媒体流路に沿って均一かつ円滑に供給することができる。これにより、燃料電池全体の小型化を図るとともに、発電効率の向上が容易に遂行可能になる。しかも、冷却媒体入口連通孔および冷却媒体出口連通孔の開口面積を十分に確保することができ、流路抵抗が低減されて冷却媒体の分配性が良好に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視図である。
【図2】前記燃料電池の一部断面説明図である。
【図3】第1金属プレートの一方の面の正面説明図である。
【図4】セパレータ内に形成される冷却媒体流路の斜視説明図である。
【図5】前記第1金属プレートの他方の面の正面説明図である。
【図6】第2金属プレートの一方の面の正面説明図である。
【図7】前記第2金属プレートの他方の面の正面説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する第1金属プレートの正面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視図である。
【図10】従来技術に係る燃料電池の組み立て方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
10、120…燃料電池 12、122…電解質膜・電極構造体
13…金属セパレータ 14、16、110…金属プレート
18a、18b…位置決め用孔部 20a…酸化剤ガス入口連通孔
20b…酸化剤ガス出口連通孔 22a、112a…冷却媒体入口連通孔
22b、112b…冷却媒体出口連通孔
24a…燃料ガス入口連通孔 24b…燃料ガス出口連通孔
25a、25b、27a、27b、114a、114b、116a、116b…連通部
26…固体高分子電解質膜 28…アノード側電極
30…カソード側電極 32、134…酸化剤ガス流路
34、44、46、98…入口バッファ部
36、48、50、100…出口バッファ部
38a〜38c…酸化剤ガス流路溝
42、132…冷却媒体流路 96、130…燃料ガス流路
102a〜102c…燃料ガス流路溝
118a、118b…傾斜面 124、126…セパレータ

Claims (2)

  1. 電解質を一組の電極で挟んで構成される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体と横長なセパレータとを交互且つ水平方向に積層するとともに、燃料ガス入口連通孔、燃料ガス出口連通孔、酸化剤ガス入口連通孔、酸化剤ガス出口連通孔、冷却媒体入口連通孔および冷却媒体出口連通孔である6つの連通孔が、水平方向両端縁部に3つずつ上下方向に振り分けられて積層方向に貫通して形成され、さらに前記セパレータを互いに位置決めして積層するための第1および第2位置決め用孔部が、それぞれ積層方向に連通して設けられる燃料電池であって、
    前記水平方向一端縁部には、3つの前記連通孔の中、中央に位置しかつ前記第1位置決め用孔部に隣接して前記冷却媒体入口連通孔が設けられる一方、前記水平方向他端縁部には、3つの前記連通孔の中、中央に位置しかつ前記第2位置決め用孔部に隣接して前記冷却媒体出口連通孔が設けられ、
    前記セパレータには、前記冷却媒体入口連通孔および前記冷却媒体出口連通孔に連通する冷却媒体流路が該セパレータの面方向に延在して形成されるとともに、
    前記冷却媒体入口連通孔および前記冷却媒体出口連通孔は、それぞれ開口形状四角形の第1連通部と開口形状四角形の第2連通部とを前記面方向に一体に有し、
    前記第1連通部は、前記第2連通部よりも前記冷却媒体流路側に近接しかつ前記冷却媒体流路の幅方向中央部に連通するとともに、
    前記第2連通部の中央位置は、前記第1連通部の中央位置に対して高さ方向にオフセットすることにより、前記第1および第2位置決め用孔部をセパレータ面内の対角位置に形成するためのスペースを設けることを特徴とする燃料電池。
  2. 請求項記載の燃料電池において、前記冷却媒体入口連通孔と前記冷却媒体出口連通孔とは、略対称形状に構成されることを特徴とする燃料電池。
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