JP4130276B2 - ディジタル−アナログ変換器のスプリアスのないダイナミック・レンジを拡大する方法および装置 - Google Patents

ディジタル−アナログ変換器のスプリアスのないダイナミック・レンジを拡大する方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の分野】
本発明は、ディジタル−アナログ変換器に関し、特にスプリアスのないダイナミック・レンジ(Spurious Free Dynamic Range:SFDR)が拡大されたディジタル−アナログ変換器に関する。
【0002】
【関連技術の記述】
多くの物理デバイスは、アナログ、すなわち、連続的に変化する出力信号を発生する。現在、信号処理はディジタルの方法を使って実行されることが多く、その処理された信号はアナログ形式へ逆に変換されることが多い。アナログのデバイスとディジタルのシステムとの間のインタフェースとして働く多くの型式の変換器が存在する。これらの変換器はテスト、計測、プロセス制御、および通信などの各種の用途において使われる。ディジタル−アナログ変換器(Digital Analog Converers:DAC)は与えられたディジタル入力からアナログ出力を発生する。DACに対するスプリアスのないダイナミック・レンジ(SFDR)は相互変調の結果などのスプリアス歪みの振幅と、最大の出力信号振幅との間のデシベル(dB)での差として測定されることが多い。DACのSFDR性能は変換されるべきディジタル信号の振幅の関数として変化する。普通、ディジタル信号の振幅が大きいほど、SFDRは小さくなる。というのは、ディジタル信号の振幅が増加するにつれて、アナログ出力信号の振幅が増加するが、結果のスプリアス歪みの振幅の増加が一般に出力信号の振幅の増加より大きいからである。用途によって変わるが、DACのSFDRを拡大することによって、DACがスプリアス歪みのレベルを維持するか、あるいは減らしながら、より広い範囲のディジタル信号をアナログ信号に変換することができるか、あるいはスプリアス歪みのレベルを減らしながら、与えられた範囲のディジタル信号をアナログ信号に変換することができる。例えば、説明の目的のために、16ビットのDACのスプリアスのないダイナミック・レンジは、4dBmの大出力レベルによって測定された場合、90dBであり、スプリアス歪みのレベルは−86dBmである。最も悪い場合のスプリアス歪みの振幅と、大出力信号との間の相対的な差を増やすことによって、DACのSFDRを拡大することができる。
【0003】
【発明の概要】
本発明は、DACシステムを構成する個々のDACのSFDRに対して比較されるときに、拡大されたSFDRを提供するDACシステムに関する。そのDACシステムはディジタル入力信号を受け取って振幅が制限された信号を提供するクリッピング装置を使用し、第1のDACに対して不十分なSFDRを生じる結果となる振幅のディジタル入力信号に対してその第1のDACに対するクリップされた結果の信号歪みを生じる。ディジタル入力信号の振幅を制限することによって、そのディジタル入力信号の振幅は実効的に減らされ、すなわち、クリップされ、それによって第1のDACに対するSFDR性能が改善される。この信号調整の結果の信号歪みが第2のDACへ経路指定される。第1のDACは振幅が制限されたディジタル信号をアナログ信号に変換し、その調整されたディジタル信号の振幅が小さいためにSFDRが拡大されている。第2のDACはディジタル入力信号のクリップされた振幅の部分として見ることができる信号歪みを受け取る。第2のDACはその調整されたディジタル信号より振幅が普通は小さい信号歪みを最低限受け入れ可能なSFDRのアナログ信号に変換する。DACシステムは第1および第2のDACからの結果のアナログ信号を組み合わせて、出力信号の振幅とスプリアス歪みとの間の相対的な差が増加している所望の変換されたアナログ信号を発生し、それによって、ディジタル入力信号が振幅調整されずに第1のDACによって変換されたとした場合のSFDRに比較して拡大されているSFDRをそのDACシステムに対して提供する。
【0004】
ある実施例においては、DACシステムはNビットのディジタル入力信号を受け取る。クリッピング装置が第1のDACに対するディジタル入力信号のn2個の最上位ビット(Most Significant Bits:MSB)を含んでいるディジタル入力信号の振幅制限された部分を、アナログ形式に変換するために経路指定することに関与する。DACシステムは、n1個のビットを含んでいるディジタル入力信号のクリップされた振幅の部分をアナログ形式に変換するために第2のDACに対して経路指定する。合計N個のビットのディジタル入力から第2のDACへ経路指定されるn1個の最下位ビット(Least Significant Bits:LSB)は、そのディジタル入力信号の振幅の「クリッピング」の量を反映する。第2のDACに対して経路指定されるLSBの数が多ければ多いほど、第1のDACに対して経路指定されるディジタル入力信号の振幅制限された部分の振幅は小さくなる。信号歪みを伴うより小さい振幅のディジタル信号を第1のDACに対して提供することによって、第1のDACのSFDRが拡大される。第2のDACのSFDRは一般には問題にならない。というのは、ディジタル入力信号のクリップされた部分、すなわち、信号歪みの部分の振幅を、第2のDACからのスプリアスの歪みのレベルが許される程度になるように設計することができるからである。次に、DACシステムは第1および第2のDACからのアナログ出力を組み合わせて、スプリアスの歪みのレベルが減少している(したがって、SFDRが拡大されている)所望の変換された信号を発生する。
【0005】
本発明の他の態様および利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を参照することによって明らかとなる。
【0006】
【発明の詳細な記述】
教育学的な目的のために、本発明はスプリアスのないダイナミック・レンジ(SFDR)が拡大されているDACシステムの実施例に関して以下に説明される。図1を特に参照して、DACシステム10はアナログ形式に変換されるべきNビットのディジタル信号Sを受け取る。この例においては、信号Sは、第1のDAC12によって信号Sが変換された場合、その変換された信号Sの振幅に相対的な対応しているレベルのスプリアス歪みを発生することになる振幅を有する。振幅は多くの方法で、例えば、電圧、電流、エネルギ、パワーまたは強度として測定することができるが、説明の目的のために、ディジタル領域での振幅はそのディジタル信号が表す数値を指すことができる。周波数領域においては、振幅はパワー・レベルを指すことができ、そして時間領域においては、振幅は電圧レベルを指すことができる。SFDRの十分性は特定の用途によって変わる設計の選定の問題である。代表的なディジタル−アナログ変換器においては、SFDRは一般的にアナログ出力信号の振幅に対して、そのアナログ出力信号の振幅とそれに伴って発生されるスプリアス歪みの振幅との間の差として定義される。通常、出力信号の振幅が増加するにつれて、スプリアス歪みと出力信号との間の差は減少する。したがって、SFDRは最大の出力信号レベルとそれに対応するスプリアス歪みのレベルに対して相対的に定義することができる。一般に、スプリアスのないダイナミック・レンジの拡大は、与えられたアナログ出力信号レベルに対してスプリアス歪みのパワー・レベルが減らされる場合、すなわち、発生されるスプリアス歪みの与えられたパワー・レベルに対して出力信号のパワー・レベルが増やされる場合、あるいは出力信号の振幅と対応しているスプリアス歪みとの間の相対的な差が増加する場合に生じる。例えば、DAC12からのアナログ出力信号のパワー・レベルがあるレベルの歪みを伴って発生される場合、DACシステム10は歪みのレベルが下げられている同じ出力信号レベルを発生することによって、拡大されたSFDRを提供する。
【0007】
図1において、DACシステム10はNビットのディジタル入力信号Sのうちのn2ビットを含んでいる第1の部分、すなわち、振幅制限された部分をDAC12に対して第1の経路16上で経路指定し、DAC12はその第1の部分をアナログ形式に変換する。コンポジットの信号Sおよびディジタル入力信号Sのクリッピングの結果として生じる信号歪みDは、ディジタル入力信号Sの最上位ビット(MSB)だけを含む。信号歪みDはNビットのディジタル入力信号に対して相対的であり、そしてシステムはディジタル入力信号Sを実効的にクリップすることによって信号歪みDを導入する。第1の経路16上で調整された信号、すなわち、コンポジットのディジタル信号が信号Sおよび信号歪みDとして示される。というのは、ディジタル入力信号Sのうちの最上位n2ビットだけが第1の経路16上に経路指定(routed)されるからである。DACシステム10はディジタル入力信号Sのn1ビットを含んでいる第2の部分D* を第2の経路18上で、その第2の部分をアナログ形式に変換する第2のDAC14に対して経路指定する。その第2の、すなわち、クリップされた振幅のディジタル信号Sの部分は、Nビットのディジタル入力信号Sの最下位ビット(LSB)を含む。ここで、この実施例においてはN=n1+n2である。n2個のMSBだけを第1の経路16上で経路指定することによって、DAC10はディジタル入力信号Sを実効的にクリップし、そのクリップされて取り去られた部分、すなわち、歪みD* を第2のDAC14に対して経路指定する。歪みD* はディジタル領域におけるディジタル入力信号Sからクリップされた最下位ビットを反映し、第1の経路16上の信号歪みDと位相が180度違っている。
【0008】
第2のDAC14に対して経路指定されるディジタル入力信号Sの最下位ビットの数は、ディジタル入力信号Sの振幅のクリッピングの量を反映する。第2のDAC14に対して経路指定されるLSBが多ければ多いほど、ディジタル入力信号Sのクリッピングが多くなり、そして第1のDAC12に対して経路指定されるコンポジットの信号SとDの振幅が小さくなる。信号歪みDを伴うより小さい振幅のコンポジットのディジタル信号Sを第1のDAC12に対して提供することによって、出力信号レベルに相対的に、より小さいスプリアス歪みレベルが発生され、それによって第1のDAC12のSFDRが改善される。この特定の実施例においては、第1のDAC12の不使用ビット(入力信号SのLSBに対応している)はゼロ(「0」)に設定され、第2のDAC14の不使用ビット(入力信号SのMSBに対応している)はゼロ「0」に設定される。0に設定されるビットの数が入力信号Sに依存して変化する他の実施例も可能である。他の実施例においては、その第1のDAC12はn1個のビットが0に設定されており、第2のDAC14は0に設定されていないn1個のビットを受け取ることになる。
【0009】
第2のDAC14は、一般的に、DAC14の出力信号レベルに相対的なスプリアス歪みのレベルが小さい。というのは、DAC14は、一般に小さいレベルのスプリアス歪みを発生し、そしてその第2のDAC14に対して受け入れ可能なSFDRを生じる最大振幅のクリップされたD* を受け取るように設計されるからである。DACシステム10は、第1のDAC12からのアナログ出力S'およびD' と第2のDAC14からのアナログ出力D*'を組み合わせ、それによって、ディジタル信号Sが第1のDAC12によって変換された場合のスプリアス歪みの振幅に対して比較されるとき、スプリアス歪みの振幅がより小さい所望の変換されたアナログ信号S' を発生する。このように、DACシステム10は、SFDRが改善されている所望の変換されたアナログ信号S'を発生する。
【0010】
この特定の実施例においては、2:1の加算回路(summer)20が第1のDAC12からの第1の経路14上でのアナログ出力S'およびD'を、第2のDAC14からの第2の経路18上でのアナログ出力D*'と組み合わせる。加算回路20として他の型式の結合器(combiner)を使うことも可能である。さらに、この特定の実施例においては、サンプリング・クロック22がサンプリング信号を1:2のスプリッタ24に対して提供する。1:2のスプリッタ24はそのサンプリング信号を第1のDAC12および第2のDAC12に対して提供し、同期サンプルを提供する。他のサンプリング信号の構成が第1および第2のDAC12および14に対して可能である。
【0011】
歪みのエネルギのD* を供給し、それをアナログ形式に変換し、それを第1の経路16上のアナログ信号S'およびD'と組み合わせることによって、DACシステム10は、ディジタルからアナログへの(digital-to-analog:D/A)変換に先立って入力信号Sから「クリップされた」振幅エネルギを使って所望の変換されたアナログ信号S' を実効的に再構築している。D/A変換は信号を再び組み合わせる前に別々の経路上でより小さい振幅で実行されるので、DACシステム10はSFDRが改善されている所望の変換されたアナログ信号S' を発生する。SFDRは、クリッピングによってディジタル入力信号の振幅が減少し、DAC12からのアナログ出力信号の振幅が対応している量だけ減少するが、第1のDAC12からのスプリアス歪みの振幅が出力信号の振幅より多く減少するのでSFDRが改善される。例えば、SFDRの上側の境界においては、出力信号のパワー・レベルが1dB変化するたびにスプリアスの歪みのパワー・レベルにおける3dBの変化が発生する可能性がある。信号D* の振幅は受け入れ可能なSFDRを結果として生じさせるので、第2のDAC14は受け入れ可能なレベルのスプリアス歪みを発生し、その結果、DACシステム10に対する総合のスプリアス歪みの振幅が許容される値となる。
【0012】
図2は、ディジタル入力信号Sが12個のビットを含む場合の実施例を示している。この実施例においては、DACシステム10はその12個のビットを第1の経路16上での7個のn2ビットと、第2の経路18上での5個のn1ビットとに分割する。さらに、この実施例においては、第1および第2のDAC12および14として12ビットのDACが使われている。したがって、最下位ビット(ビット1)から第5ビットまでがそれぞれ第2のDAC14の第1ビットの入力から第5ビットの入力に対して接続され、第6ビットの入力から第12ビットの入力までは0に設定されている。第1のDAC12においては、第1ビットの入力から第5ビットの入力までは0に設定され、そして第6ビットから最上位ビット(ビット12)までは第6ビットの入力から第12ビットの入力が、それぞれ接続されている。
【0013】
図3aは、説明の目的のために、ディジタル入力信号Sのスペクトル表現を示している。入力信号Sをスプリット、すなわち、クリップすることによって、コンポジット信号SおよびDの合計振幅が減らされる。ディジタル入力信号の振幅のクリップによって、図3bに示されているように信号歪みDが周波数領域において発生する。その結果の信号歪みD(図3c)は元の入力信号の周波数帯域を増加させ、結果のコンポジットSおよびDの合計振幅を減らす。DACの帯域幅性能は非常に良好であるので、SおよびDの追加の帯域幅は第1のDAC12(図1)によって容易に扱うことができる。コンポジット信号SおよびDに対する合計振幅が元の信号Sに比較して減らされるので、第1のDAC12(図1)はスプリアス歪みのレベルが小さい変換されたコンポジット信号SおよびDを発生し、したがって、元の信号Sが変換されたとした場合の結果のSFDRに比較してSFDRが拡大されている。図3dは信号歪みD(図3c)と位相が180度異なって示されている元の信号Sのクリップされた部分D* (図3a)を示している。歪みD* が第2の経路18上にあり、そして第2のDAC14はその歪みD* をアナログ形式に変換する。クリップされた部分D* の振幅は第2のDAC14(スプリアス歪みの振幅が小さい)に対して受け入れ可能なSFDRを結果として生じさせる筈である。最後に、変換されたコンポジット信号S' およびD' は変換された歪みD*'と組み合わされてスプリアス歪みの振幅の小さい変換された元の信号S' を発生し、それによって拡張されたSFDRを提供する。説明の目的のために、第1の経路16上の入力信号はSとして示され、クリップされた信号はSおよびDのコンポジット信号として示されている。第2の経路18上では、入力信号Sが信号歪みDのコンポジット信号Sと組み合わされて第2の経路18上で信号歪みDを分離する。各種の信号の異なる表記、参照および特徴付けが使えることを理解されたい。上記の指定は本発明の説明を単純化するために選定されたものである。
【0014】
図4は変換された歪みD*'の位相および振幅を調整するために、第2の経路18上で位相および振幅の調整器42を使用するDACシステム40の実施例を示している。位相および振幅の調整器42は変換された歪みD*'の位相および振幅を調整して変換された信号歪みD' の削減を改善し、それによって所望の変換されたアナログ信号Sの再構築を改善している。変換された信号歪みD' の削減は、変換された信号歪みD' およびD*'が同じ振幅で180度の位相差に近付くように改善される。変換された歪みD' およびD*'の実現されるべき打消しの程度は特定の用途によって変わるが、完全な打消しは普通は不要である。例えば、175乃至185度の位相差および/または2dBの振幅差が変換された信号歪みD* とD'*との間で可能であり、それで十分な打消しが実現される。ある実施例においては、組合せ回路および加算回路20の出力におけるカプラ44が出力信号S' の一部分を利得および位相の制御回路46に対して提供する。位相および利得の制御回路46は位相および振幅の調整信号を位相および振幅の調整回路42に対して提供することによって、出力信号S' の中に残っている変換された信号歪みD' の振幅に応答する。位相および振幅の調整回路42は、その変換された信号歪みD*'の位相および振幅を調整して出力信号S' から信号歪みD' の削減を微調整することによって、この位相および振幅の調整信号に応答する。その調整は、DACシステム40の出力における信号歪みD' のパワー・レベルなどの信号Sの測定値に基づいて計算すること、あるいはルックアップ・テーブルを使って得ることができる。ある用途においては、位相および振幅の調整は一定であるか、あるいは調整回路42の前の信号歪みD* の測定値および/または加算回路20の前の信号歪みD'の測定値に基づいて行われる。
【0015】
遅延48は第1の経路16と第2の経路18との間の遅延を整合させようとする。特に、この実施例の場合、遅延48は位相および振幅の調整回路42を通る信号歪みD*'によって生じる遅延を反映する。というのは、経路16および18の両方における成分は第2の経路18上の位相および振幅の調整回路42以外は同じだからである。遅延48は経路16と18の両方の遅延を正確に等化する必要はないが、それぞれの遅延は第1の経路16上の信号歪みD' の対応している部分と、第2の部分18上の信号歪みD*'が、位相が約180度ずれて組み合わされるのに十分近いこと(例えば、ピコ秒のオーダでの遅延差)が必要である。理想的には、第1の経路16上の信号歪みD' および第2の経路18上の信号歪みD*'を約180度の位相差で組み合わせることができるが、用途によっては、信号歪みD' を180度より大きいか、あるいは小さい値、例えば、変換された信号歪みD' とD*'との間の175乃至185度の位相差を許すようにすることができる。代わりに、位相および振幅の調整回路42を第1の経路16上に置き、そして遅延48を第2の経路18上に置くことができる。
【0016】
また、図4のDACシステム40は1つのクリッピング装置50を示しており、それはディジタル入力信号Sをクリップし、そして信号歪みがDである結果の信号Sを第1の経路16上で経路指定し、そのクリップされた信号歪みD*は第2の経路18上で経路指定される。このクリッピング装置50は各種の形式が可能である。例えば、図5aは、Nビットのディジタル入力信号Sを受け取るクリッピング装置を示している。「クリッピング」はn2個の最上位ビットを第1の経路16に沿って第1のDAC12(図14)に対して単純に経路指定し、そして第1のDAC12に対する残りの使用されていない最下位の入力を0に設定することによって行われる。ディジタル入力信号Sの残りの最下位のn1ビットは第2の経路18に沿って第2のDAC14に対して経路指定され、そこで第2のDAC14の使用されていない最上位入力は0に設定される。
【0017】
図5bにおいて、ディジタル入力信号Sは第1の経路16と第2の経路18とに分割される。第1の経路16においては、ディジタル制限器52がディジタル入力信号Sの振幅をクリップし、それが第1のDAC12(図4)の出力に対するある「クリッピング」または調整のレベルを超えて許容できないSFDRとなるのを防止する。ディジタル信号に対して、「クリッピング」、すなわち、調整のレベルはNビットの信号に対する最上位のn2ビット(それを第1のDAC12が所望のSFDRで変換することができる)で測定される。ディジタル入力信号Sの振幅を調整する際、ディジタル制限器52は元の信号Sのn2個の最上位ビットを表しているコンポジット信号SおよびDを発生する。信号歪みDを伴うコンポジット信号Sを第1の経路16および第3の経路54の両方に対して提供することができる。第3の経路54における信号Sおよび信号歪みDは減算デバイス56を使って第2の経路18上のディジタル入力信号Sから差し引かれる。第2の経路18上のNビットのディジタル入力信号Sから、そのディジタル入力信号Sのn2個のMSBを表しているコンポジット信号SおよびDを差し引くことによって、クリッピング装置はディジタル制限器52によって取り除かれたn1個の最下位ビットに対応する信号歪みD* を残す。周波数領域においては、結果の信号歪みD* に対するすべての周波数成分は信号歪みDの周波数成分と位相が約180度違っている。用途によって変わるが、ディジタル制限器52は、Nビットの信号がクリッピングのしきい値レベル以上である場合、n1個のLSBを無視することによって単純に実装することができる。減算デバイス56は各種の方法で実装することができる。減算デバイス56は、n2個のビットをNビットの信号から、例えば、この分野の技術に熟達した人によって理解されるように対応しているビットのXORを取ることによって単純に差し引く。
【0018】
図6は、n個のビットを含んでいるディジタル入力信号Sを受け取るDACシステム60を示している。図1の実施例と同様に、DACシステム60はNビットの信号を第1の経路16上のn2個の最上位ビットと、第2の経路18上のn1個の最下位ビットとに分割する。n1個の最下位ビットは第2のDAC64の最下位の入力ビットへ経路指定され、残りの最上位入力は0に設定される。n2個の最上位ビットは第1のDAC64へ経路指定される。第1のDAC62において、n1個の最下位入力は0に設定され、残りのn2個の最上位ビットが第1のDAC62の対応している入力に対して印加される。しかし、第1のDAC62はディジタル入力信号Sによって必要とされるN個のビットよりn3個だけ多いビット入力を有する。スプリアスのない歪みのレベルを下げることによって、そして最大の出力信号レベルとスプリアスのない歪みのレベルとの間の相対的な差を増加させることによって、第1のDAC62のSFDRをさらに拡大するために、第1のDAC62のn3個の最上位ビット入力が0に設定されている。
【0019】
上記の実施例の他に、本発明の原理によるDACシステムの代わりの構成が可能である。それはコンポーネントの省略および/または追加を行い、そして/または所望のシステムの変形版または部分を使用する。組み合わせる信号間で許される振幅差、位相差、および遅延差の量は特定の用途およびその用途によって許される対応している許容値によって変わる。また、これらの動作設計パラメータはどのコンポーネントを追加、変更または省略することができるかを決定する可能性がある。例えば、スプリッタ20はカプラまたは他のデバイスによって実装することができる。カプラが使われた場合、線形の増幅器をより高い損失のカプラのレッグに対して接続されている経路上に含めることができる。さらに、遅延48は受動フィルタ、伝送線路(同軸、マイクロストリップ、またはストリップ線路)などの受動デバイス、または増幅器、アクティブ・フィルタ、ディジタル遅延またはファイバなどのアクティブ・デバイスを使って実装することができるが、アクティブ・デバイスは歪みを導入する。
【0020】
この分野の技術に通常の技能を有する人によって理解されるように、DACシステムを構成する各種のコンポーネントおよびそれぞれの動作パラメータおよび特性が、DACシステムの設計において適切に考慮される必要がある。例えば、DACは同じタイプのDACであってよいが、異なるタイプのDACも使える。DACに対する他の動作パラメータ以外に、ディジタル入力信号に対する調整レベルを決定する際に、SFDRを考慮する必要がある。DACシステムの各種のコンポーネントに依存してSFDRが変化する可能性がある。例えば、DAC装置のSFDRを、同じSFDRの2つのDACを使うことによって理論的には倍にすることができる。そのDACシステムは個々のDACのSFDRを定義している最大の出力信号の振幅の2倍の出力信号となるディジタル入力信号を半分にクリップして、その個々のDACに対するSFDRを定義している最大出力信号レベルにある振幅を有する第2の信号を発生することができる。クリップされた信号は第1のDACによって変換されて第1のDACに対するSFDRを定義している最大出力信号レベルにおける振幅を有する変換されたクリップされた信号を発生する。入力信号のクリップされた振幅の部分が第2の経路上で第2のDACに与えられ、そして第2のDACはそのクリップされた振幅の部分を変換して、第2のDACに対するSFDRを定義している最大出力信号レベルにおける振幅を有する変換されてクリップされた振幅の信号を発生する。そのように、変換されてクリップされた信号とその変換されてクリップされた振幅の部分とをDACシステムの出力において組み合わせて、各DACのSFDRを定義している最大出力信号レベルの振幅の2倍とすることができ、それによって約2倍のSFDRを提供することができる。ただし、システムDACの個々のSFDRに比較してそのDACシステムのSFDRを50%増加させることは、より簡単に実現できる。
【0021】
代わりに、SFDRがより小さいか、あるいは異なっているDACまたは複数のDACを使って、より低いコストで所望の拡大されたSFDRを提供することができる。最大出力信号レベルと対応しているスプリアス歪みのレベルとの間の相対的な差を増加させることによって、例えば、DACシステムの出力信号の振幅(DACが変換できるディジタル値の範囲)を増加させて、対応している歪みのレベルの増加を維持するか、あるいは小さくすることによって、あるいは歪みの振幅を減らし、一方、出力信号の振幅における増加を維持するか、あるいは少なくすることによって、結果として拡大されたSFDRが得られる。
【0022】
さらに、DACシステムは異なるコンポーネントの特定の構成を使って記述されてきたが、DACシステムおよびその部分は、本発明の利点を伴って、この分野の技術に熟達した人によって理解されるように、特殊用途向けIC、ソフトウェア駆動の処理回路、ファームウェアまたは他のディスクリート・コンポーネント装置で実装することができる。この実施例は特定の回路について示されているが、DACシステムは図に示された回路に比較して同様な機能を一緒に実行する異なるコンポーネントを使うことができる。これまで記述されてきたことは本発明の原理の用途を単に例示しているだけである。この分野の技術に熟達した人であれば、上記および各種の他の変更、装置および方法を、ここで図示し、説明してきた実施例の用途に厳格に従うことなしに、そして本発明の精神および範囲から逸脱することなしに構成できることは容易に理解することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理に従ってダイナミック・レンジが拡大されているDACシステムの一実施例の一般的なブロック図を示す。
【図2】図1のDACシステムの実施例によって変換されるべきNビットのディジタル入力信号の例を示す。
【図3a】DACシステムの内部でのディジタル信号のスペクトルの内容を一般的に示している、説明の目的のためのグラフである。
【図3b】DACシステムの内部でのディジタル信号のスペクトルの内容を一般的に示している、説明の目的のためのグラフである。
【図3c】DACシステムの内部でのディジタル信号のスペクトルの内容を一般的に示している、説明の目的のためのグラフである。
【図3d】DACシステムの内部でのディジタル信号のスペクトルの内容を一般的に示している、説明の目的のためのグラフである。
【図4】DACシステムの、より詳しい実施例を示す。
【図5a】DACシステムに対するクリッピング装置の2つの実施例を示す。
【図5b】DACシステムに対するクリッピング装置の2つの実施例を示す。
【図6】DACシステムの他の実施例を示す。

Claims (10)

  1. デジタル入力信号をアナログ形式に変換するための方法であって、該デジタル入力信号が、第1の経路上の第1のデジタル−アナログ変換器(DAC)によりスプリアスのないダイナミックレンジ(SFDR)を有する変換されたアナログ信号生成され得るN個のビットにより規定される振幅を有しているような方法において、
    該デジタル入力信号の振幅を、該第1の経路上でクリップさせて、該第1のDACが該N個のビットの最上位ビットを受信するようにするステップと、
    該第1の経路上の該デジタル入力信号の該最上位ビットを、該第1のDACにより変換して、第1のアナログ信号を生成するステップと、
    該デジタル入力信号の該N個のビットの残りのビットを、第2の経路上で第2のDACにより変換して、第2のアナログ信号を生成するステップと、
    該第1のアナログ信号を該第2のアナログ信号と結合して、変換されたアナログ信号を生成するステップとを含み、
    該変換されたアナログ信号は、該第1のDACのSFDRよりも大きなSFDRを有しており、該クリップするステップは、
    該N個のビットの最上位ビットとしての該デジタル入力信号のn2個のビットを、該デジタル信号および歪調節信号として該第1の経路上に経路指定するステップと、
    該N個のビットの残りのビットとしての該デジタル入力信号のn1個のビットを、該歪調節信号と位相が180度ずれた歪信号として該第2の経路上に経路指定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、
    該結合するステップが加算操作である方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、
    該第1のアナログ信号と該第2のアナログ信号の間の相対的な振幅および位相を調節するステップを含む方法。
  4. 請求項3に記載の方法において、
    該振幅および位相が調節された第1および第2のアナログ信号を得るステップと、
    該調節された第1および第2のアナログ信号を結合するステップを含む方法。
  5. 請求項4に記載の方法において、該結合するステップが、
    該第2の経路上の該歪信号を該第1の経路上の該歪調節信号と結合するステップを含む方法。
  6. 請求項5に記載の方法において、
    該変換するステップがある周波数を有するサンプリング信号を、該変換するステップのために用いるステップを、さらに含む方法。
  7. デジタル入力信号を変換されたアナログ信号に変換するためのデジタル−アナログ変換器(DAC)システムであって、該デジタル入力信号が、第1の経路上の第1のDACによりスプリアスのないダイナミックレンジ(SFDR)が与えられるデジタル入力信号の振幅を規定するN個のビットを有しているようなデジタル−アナログ変換器(DAC)システムにおいて、
    該デジタル入力信号を受信し、および該デジタル入力信号の振幅を調節して、該第1の経路上にデジタル信号および歪調節信号を、また第2の経路上に歪信号を生成するためのクリッピング装置を含み、
    該第1の経路上の該第1のDACは、該第1の経路上で該デジタル信号および該歪調節信号を受信し、および該第1の経路上の該デジタル信号および該歪調節信号を第1のアナログ信号に変換するよう動作するものであり、該システムは、さらに、
    該第2の経路上の該歪信号を受信し、および該第2の経路上の該歪信号を該第2のアナログ信号に変換する、該第2の経路上の第2のDACと、
    該第1のアナログ信号を該第2のアナログ信号と結合して、変換されたアナログ信号を生成するよう動作する、該第1および第2の経路に結合された結合器とを含み、
    該変換されたアナログ信号は、該第1のDACについてのSFDRよりも大きなSFDRを有しており、そして
    該クリッピング装置は、該デジタル入力信号のうちのn2個のビットを、該デジタル信号および該歪調節信号として該第1の経路上に経路指定し、また、該デジタル入力のうちのn1個のビットを該歪調節信号と位相が180度ずれた歪信号として該第2の経路上に経路指定するよう動作するものである、ことを特徴とするデジタル−アナログ変換器(DAC)システム。
  8. 請求項7に記載のシステムにおいて、
    該結合器が加算器であるシステム。
  9. 請求項7に記載のシステムにおいて、
    該クリッピング装置が
    該デジタル入力信号を該第1の経路および第2の経路上に提供する第1の経路分岐と、
    該デジタル入力信号の振幅を制限して該第1の経路上にデジタル信号および歪調節信号を生成する該第1の経路上のデジタルリミッターとを含むシステム。
  10. 請求項7に記載のシステムにおいて、さらに
    該第1の経路上の該デジタル信号および歪調節信号を第3の経路に対して提供する、該第1の経路上の第2の経路分岐を含むシステム。
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