JP4130156B2 - 物性値測定装置および物性値測定方法 - Google Patents

物性値測定装置および物性値測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は物性値測定装置および物性値測定方法に関し、特にモールド樹脂やプリント配線基板といった電子部品を構成する材料の物性値を求めるための物性値測定装置および物性値測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
モールド樹脂やプリント配線基板といった電子部品を構成する材料について、その物性値を知ることは、電子部品の耐久性や耐熱性、電子部品としての信頼性を確保する上で重要であり、材料の弾性率や線膨張率など物性値によってその測定方法や用いる測定装置は様々である。
【0003】
図14は引張試験装置の模式図である。
例えば、材料物性値として縦弾性係数(弾性率)を求める場合には、引張試験装置100が広く用いられている。引張試験装置100を用いた測定では、まず、初期長さLで断面積Aの材料101の両端をチャック部102によって保持する。そして、一定の引っ張り力Fで材料101をその両端側へ引っ張り、このときの材料101の長さL+ΔLを測定して、伸び量ΔLを求める。材料101の引張試験時にかけた荷重(引っ張り力F)と長さ変化(伸び量ΔL)の測定結果から応力(σ)と歪み(ε)をそれぞれ、σ=F/A,ε=ΔL/Lに従って計算し、縦弾性係数(E)を、E=σ/ε=F・ΔL/A・Lに従って求める。
【0004】
このような引張試験法のほか、縦弾性係数の測定には、材料の固有振動数が弾性率によって変化することを利用し、固有振動数から弾性率を計算する振動計測法も用いられる。
【0005】
図15は線膨張率測定装置の模式図である。
材料物性値として線膨張率あるいは線膨張係数を求める線膨張率測定装置200では、まず、温度管理槽201内に、線膨張係数が既知の基準試料202および長さLの試験片203が配置され、温度管理槽201内の温度を初期温度TからΔTだけ上昇させる。このときの試験片203の長さL+ΔLを測定して、伸び(収縮)量ΔLを求める。線膨張係数(α)は、α=ΔL/L・ΔTに従って求められる。
【0006】
また、線膨張率測定装置としては、測定すべき試料板を基準板と貼り合せてバイメタル効果を利用して線膨張率を測定するようにしたものも提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−181153号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、材料の物性値として温度依存性のある縦弾性係数や線膨張係数を求める場合には、以下に示すような問題点があった。
【0009】
プリント配線基板のような平面内で物性値に分布が生じるような材料に対しては、局所部分を切り出した試験片の結果だけでは、プリント基板全体の平均的な物性値を知ることができず、そのため、複数箇所についての試験片を作製して測定を行う必要がある。また、購入製品などについては、その仕様をユーザー側で詳細に知ることができないことが多く、その製品と同等の試験片を作製することが困難であり、実際の製品を使って物性値を測定する技術の開発が望まれている。また、測定装置ごとに、それに合わせた形状やサイズの試験片を設計・加工する必要があるため、物性値測定に時間とコストがかかってしまっている。
【0010】
特に縦弾性係数の測定においては、試験片を保持するチャック部で応力集中が発生し、荷重負荷条件と試験片形状に留意しないと、精度の良い物性値を求めることができない。そのため、標準試験片形状がJIS規格など各種規格により定められている。しかし、プリント配線基板やパッケージ材料などの複合材料をそのような規格形状に加工することは困難である。さらに、各温度での縦弾性係数を測定するためには、温度制御可能な引張試験装置が必要になり、通常の引張試験装置に比べて導入・運用コストがかかってしまう。
【0011】
また、特に線膨張係数の測定においては、試験片の伸び(収縮)量は、試験片の元の長さに対して、10-6〜10-5cm程度のオーダーの非常に微小な変化である。このような微小な長さ変化を測定するために、線膨張係数が既知の基準試料との比較を行って精度を保証している。しかし、現在の線膨張率測定装置では0.1μm程度の精度保証しかないものが多く、線膨張係数を高精度で測定することが難しい。例えば、試験片の元の長さが10cmで、この試験片の線膨張係数が1×10-6/℃であるとした場合、1℃の温度変化で、10cm×1℃×1×10-6/℃=0.1μmとなってしまう。そのため、線膨張係数の測定精度をもう1桁上げて10-7程度のオーダーまで精度良く低コストで測定することができる測定装置の開発が望まれている。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、材料が有している縦弾性係数や線膨張係数などの物性値を精度良く効率的に低コストで測定することのできる物性値測定装置および物性値測定方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に例示する構成によって実現可能な物性値測定装置1が提供される。本発明に係る物性値測定装置1は、材料温度を変化させて前記材料に発生する反りを測定する反り計測部2と、既知物性値を基に設定された前記材料の未知物性値の予測値から複数の水準値を設定し、それらの各水準値を用いて材料温度を変化させたときに発生する反りの予測値を算出し、算出した前記反りの予測値と、前記反り計測部2によって材料温度を変化させて測定した反りの実測値とを用いて前記材料の前記未知物性値を同定する物性値同定部3と、を有することを特徴とする。
【0014】
このような物性値測定装置1によれば、反り計測部2が、物性値を測定する材料を含むサンプル10の温度を変化させて反りを測定し、物性値同定部3が、反り計測部2で測定された反りの実測値と、温度を変化させたときにその材料に発生する反りの予測値とを用いて材料の未知物性値を同定する。反りの実測値と反りの予測値から材料の物性値を同定することで、材料に特別な加工を行うことなく、材料の未知物性値の同定が行えるようになる。さらに、材料の物性値をその反りから同定するので、その材料が有する様々な種類の物性値の同定に適用可能になる。
【0015】
また、本発明では、材料の物性値を測定する物性値測定方法において、材料温度を変化させて前記材料に発生する反りを測定し、既知物性値を基に設定された前記材料の未知物性値の予測値から複数の水準値を設定し、それらの各水準値を用いて、材料温度を変化させたときに前記材料に発生する反りの予測値を算出し、算出した前記反りの予測値と、材料温度を変化させて測定した反りの実測値とを用いて前記材料の前記未知物性値を同定する、ことを特徴とする物性値測定方法が提供される。
【0016】
このような物性値測定方法によれば、材料に特別な加工を行うことなく、その未知物性値の同定が行え、また、材料が有する様々な種類の物性値の同定が行える。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の概略を説明する。
図1は物性値測定装置の構成例を示す図である。
【0018】
図1に示す物性値測定装置1は、例えば電子部品を構成するプリント配線基板やLSIチップ封止用のモールド樹脂など、その物性値を測定すべき材料を含んだサンプル10の温度を調整して各温度におけるその反りを測定する反り計測部2を有している。さらに、この物性値測定装置1は、反り計測部2によって測定された反りの実測値(以下「反り実測値」という。)と各温度でサンプル10に発生すると予測される反りの予測値(以下「反り予測値」という。)とを用いてサンプル10の物性値を同定する物性値同定部3を有している。この反り予測値は、所定のアルゴリズムに従って計算により求められるようになっている。
【0019】
反り計測部2は、反りを測定するサンプル10が収容される透明な密閉容器2aを有し、この密閉容器2a内に配置されたサンプル10の温度を調整するための温度制御部2bを有する。さらに、反り計測部2は、密閉容器2a外であって密閉容器2a内に配置されるサンプル10の対向位置に、温度を変化させた際に発生するサンプル10の反りをレーザによってサンプル10に非接触で計測することのできる機構として非接触式レーザ変位計2cを有する。
【0020】
物性値同定部3は、反り計測部2で測定されたサンプル10の反り実測値を格納する反り実測値格納部3a、および反り予測値の計算に必要な既知の物性値や後述の初期物性値予測値並びに各種計算条件を設定するための設定入力部3bを有する。さらに、物性値同定部3は、反り予測値や新たに物性値を算出するためのアルゴリズムを格納するアルゴリズム格納部3c、および設定された既知の物性値や計算条件を用いて所定のアルゴリズムに従って反り予測値を算出する反り予測値算出部3dを有する。さらに、物性値同定部3は、反り予測値と反り実測値との間の誤差をサンプル10の同定すべき新たな物性値を変数とする近似式で表わして、その誤差を最小にする新たな物性値を所定のアルゴリズムに従って算出する反り誤差演算部3eを有する。さらに、物性値同定部3は、既知の物性値および新たに同定された物性値が格納される材料データベース3fを有する。
【0021】
図2は物性値測定装置を用いた物性値測定方法の流れを示す図である。
上記構成の物性値測定装置1を用いて材料の未知物性値を同定するため、まず、物性値測定装置1に用いるサンプル10を作製・準備する(ステップS1)。ここで、物性値測定装置1に用いられるサンプル構成について図3および図4を参照して述べる。図3はサンプルの構成例を示す断面図、図4はサンプルの別の構成例を示す断面図である。
【0022】
物性値を測定すべき測定対象物となる材料が四角形に加工可能な場合は、図3に示すように、物性値測定前に、測定対象物11aを、接合材料12aを用いて別の物性既知材料13aと貼り合わせてバイメタル構造体10aを作製する。物性既知材料13aには、物性値測定温度範囲で温度依存性を有しない、物性値が既知の金属(銅、アルミニウム、鋼鉄など)やセラミックス(アルミナなど)を用いることができる。物性既知材料13aの大きさは、測定対象物11aの平均的物性値を求める領域面積と合致させるものとする。図3では、物性既知材料13aの大きさは、測定対象物11aの大きさに合致させている。また、接合材料12aには、物性値が既知のろう材やはんだなどを用いることができる。物性値測定装置1に用いるサンプル10としては、例えば、測定対象物であるプリント配線基板を、はんだを介して42アロイと貼り合せてバイメタル構造としたものを作製することができる。
【0023】
図3に示したバイメタル構造体10aのような形状に加工するのが困難な場合であっても、図4に示すような構造を有するパッケージ構造体10bであれば、特別な加工を要せず物性値測定に用いることができる。一般に、このようなパッケージ構造体10bも温度変化により反りが発生することが知られている。このようなパッケージ構造体10bにおいて、パッケージ基板11bに実装されたLSIチップ12bを封止するモールド樹脂13bを測定対象物とした場合、パッケージ基板11bおよびLSIチップ12bの物性値が既知であれば、パッケージ構造体10bは上記バイメタル構造体10aと同様の構造を有すると考えることができる。モールド樹脂13bの物性値が既知で、パッケージ基板11bを測定対象物とした場合も同様である。
【0024】
なお、以下の物性値測定の流れの説明では、図1に示したサンプル10がバイメタル構造体10aである場合を例にして述べるが、サンプル10がパッケージ構造体10bであってもその物性値測定の流れは同じである。
【0025】
上記構成のバイメタル構造体10aについて、その温度変化の前後で発生する反り量を測定するため、反り計測部2では最初に、密閉容器2a内に配置したバイメタル構造体10aの温度変化前の温度(以下「初期温度」という。)での反りが非接触式レーザ変位計2cを用いて測定される(ステップS2)。次いで、反り計測部2では、バイメタル構造体10aが密閉容器2a内で温度制御部2bによって加熱または冷却され、温度変化後の反りが非接触式レーザ変位計2cを用いて測定される(ステップS3)。温度変化前後の反り実測値の差をとることで、その温度変化によってバイメタル構造体10aに発生する反り量が求められる。反り計測部2で測定された反り実測値は、物性値同定部3に伝達され、反り実測値格納部3aに格納される。
【0026】
本発明では、この反り計測部2における反りの実測とは別に、物性値同定部3において、バイメタル構造体10aの温度変化によって発生する反り量が計算により予測される。ここで、例えば、バイメタル構造体10aの測定対象物11aが、3種類の未知の物性値A,B,Cを有しているとした場合を想定する。
【0027】
反り予測値を計算するに際し、まず、接合材料12aおよび物性既知材料13aについては、既知の物性値をあらかじめ物性値同定部3の設定入力部3bから設定しておく。そして、未知の物性値A,B,Cを有する測定対象物11aについては、材料データベース3fから類似材料を選択・抽出して初期温度における物性値を推定し、これを初期物性値予測値として設定する(ステップS4)。初期物性値予測値は、作業者が材料データベース3fを参照して適当な値を選択し設定入力部3bから入力しても、あるいは物性値同定部3によって一定の条件の下で材料データベース3fから抽出されるようにしても、いずれであってもよい。
【0028】
続いて、物性値同定部3では、初期物性値予測値を基準にして、未知の物性値A,B,Cをプラス方向およびマイナス方向に適当な割合(例えば5%〜100%)で変動させた水準値がいくつか設定される(ステップS5)。その際の変動幅(%)は、作業者があらかじめ設定入力部3bから設定しておく。例えば、求める物性値が弾性率であって、その初期物性値予測値が100である場合に、変動幅が50%に設定されていれば、水準値は50,100,150になる。各物性値A,B,Cについて、それぞれ3水準の水準値を設定した場合、各水準値(A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1,C2,C3)は次のようになり、したがって、測定対象物11aがとり得る水準値の組み合わせは27通りになる。
【0029】
物性値A(水準1=A1,水準2=A2,水準3=A3
物性値B(水準1=B1,水準2=B2,水準3=B3
物性値C(水準1=C1,水準2=C2,水準3=C3
水準値を設定するときの変動幅は、その物性値の上限値から下限値までといったように、求める物性値がその範囲に入ると予測される範囲で指定するようにする。全く不明の場合には、一律、基準となる初期物性値予測値の何%かの変動(例えば50%変動)を与えるようにする。
【0030】
次いで、物性値同定部3では、測定対象物11aがとり得る水準値の組み合わせの中から適当な組み合わせが選択され、反り予測値の計算に用いる水準値の組み合わせを決定する(ステップS6)。このステップS6において、水準値の組み合わせを、何ケースどの組み合わせにするかについては、後述する全てのケースを選択して反り予測値の計算を行う実験計画法である全因子実験や直交表に基づく実験計画法、あるいはCCD(Central Composite Design)実験計画法その他の実験計画法によって決定する。いずれの実験計画法を用いるかは、作業者があらかじめ設定入力部3bから設定する。
【0031】
例えば、全因子実験計画法では、各未知物性値について推定される上限値および下限値を最初に設定する。例えば、未知の物性値A,B,Cの上限値および下限値をそれぞれ(A1,Amax),(B1,Bmax),(C1,Cmax)とする。この上限値と下限値の間を適当な水準数で(n−1),(m−1),(p−1)分割し、その値を(A1,A2,A3,・・・,An),(B1,B2,B3,・・・,Bm),(C1,C2,C3,・・・,Cp)とする。分割は、等間隔で行っても、何らかの関数関係に従って行っても、いずれであってもよい。
【0032】
全因子実験計画法では、このように得られた各変数の全ての組み合わせ、すなわち、(A1,B1,C1),・・・,(An,Bm,Cp)の組み合わせについて計算を行う。この場合、全計算回数は、n×m×p通りとなる。例えば、求める物性値A,B,Cの水準数がそれぞれ3水準の場合には、3×3×3=27通りの組み合わせの計算が行われることになる。
【0033】
このような全因子実験計画法においては、因子数と水準数が増加していった場合に、計算回数の組み合わせが急激に増加する。そのため、直交表を用いた実験計画法により、水準値の数などに制約条件が発生するが、より少ない計算回数で因子の影響を調査する。2水準や3水準のための直交表が既に各種文献で提案されており、このような直交表を用いて適切な回数で計算を行うようにすればよい。
【0034】
例えば、物性値A,B,Cの3因子について、(A1,A2,A3),(B1,B2,B3),(C1,C2,C3)の各3水準を設定した場合、上記全因子実験計画法では27通りの計算が必要であったが、直交表を用いた実験計画法では表1に示す9通りの計算を行えばよいことになる。
【0035】
【表1】
Figure 0004130156
【0036】
この表1において、各計算ナンバー(No.)のA,B,C欄の数字は、物性値A,B,Cそれぞれの水準値の番号を示している。例えば、表1中の計算No.1は、(A1,B1,C1)の水準値を組み合わせることを示している。
【0037】
物性値の同定にこのような実験計画法を採用することにより、適切な水準値の組み合わせで、精度良く物性値を同定することができる。
ステップS6において水準値の組み合わせを決定した後、物性値同定部3では、決定された組み合わせの水準値を用いて、それらをバイメタル構造体10aに含まれる測定対象物11aが有している場合に発生する反り予測値の計算が反り予測値算出部3dによって実行される(ステップS7)。例えば、ステップS6で水準値として(A1,B1,C1)の組み合わせが選択されていれば、測定対象物11aが(A1,B1,C1)の物性値を有しているとした場合のバイメタル構造体10aの反り予測値が計算される。なお、反り予測値が、反り実測値と大きく異なるようであれば、ステップS5における変動幅を拡大または縮小して設定し直し、ステップS6以降の処理を再度行うようにしてもよい。
【0038】
上記ステップS7における各ケースについての反り予測値の計算には、次の第1,第2のいずれかの方法が用いられる。まず第1の方法では、バイメタル構造体10aについて、従来公知の2層バイメタル積層板の反り予測値(δ*)を算出するための式(1a)〜(1c)に従って計算を行う。ここで、図5は2層のバイメタル構成材料からなる2層バイメタル積層板における反り予測値の計算方法の説明図である。
【0039】
【数1】
Figure 0004130156
【0040】
ここで、α1,α2は各バイメタル構成材料21,22の線膨張係数、ΔTは温度差、Lは両バイメタル構成材料21,22の長さ、t1,t2は各バイメタル構成材料21,22の厚さ、E1,E2は各バイメタル構成材料21,22の縦弾性係数、I1,I2は各バイメタル構成材料21,22の曲げ剛性(断面2次モーメント)、bは2層バイメタル積層板20の板幅を表わしている。2層バイメタル積層板20の温度変化時の反り予測値δ*は、上記の式(1a)〜(1c)を用いて近似的に算出することができる(例えば、尾田他,「多層ばり理論によるプリント基板の応力」,日本機械学会論文集,Vol.59,No.563,pp203-208参照。)。
【0041】
この2層バイメタル積層板20の例に従い、バイメタル構成材料21を接合材料12aおよび物性既知材料13aと、バイメタル構成材料22を測定対象物11aとそれぞれ仮定し、バイメタル構造体10aについての反り予測値δ*を計算する。ただし、バイメタル構造体10aの物性値A,B,Cの中に、温度変化に対して著しい非線形性を有する物性値が含まれている、あるいは含まれていると考えられる場合には、次の第2の方法で述べる有限要素解析プログラムを用いて、その反り予測値δ*を計算する。
【0042】
第2の方法では、その物性値が温度変化に対して著しい非線形性を有するバイメタル構造体10a、あるいはサンプル10の別形態であるパッケージ構造体10bのような一般的な電子部品サンプルについて、シミュレーションモデルを用いた計算により、反り予測値δ*を計算する。この場合、サンプル形状を忠実に再現した有限要素法などのシミュレーションモデルを作成し、ABAQUS(米国HKS社の登録商標),NASTRAN(米国NASAの登録商標)のような汎用有限要素プログラム、または反り予測値の計算が可能なこれらに類するプログラムによって計算を行う。
【0043】
この第1,第2の方法で述べたような反り予測値の計算に用いる式やプログラムなどのアルゴリズムは、アルゴリズム格納部3cに格納されている。計算は、設定入力部3bからの計算条件の設定に応じたアルゴリズムに従って反り予測値算出部3dで実行され、反り予測値δ*が算出される。
【0044】
反り予測値δ*の計算後の物性値同定部3では、計算が実行された各ケースでの水準値と反り予測値δ*を用い、反り予測値δ*と反り実測値δとの間の反り誤差(δ*−δ)を近似的に表わす式が反り誤差演算部3eによって作成される(ステップS8)。その場合、反り誤差(δ*−δ)は正負の値をとり得るので、反り誤差(δ*−δ)の大きさは、それを2乗して評価するようにしておく。例えば、反り誤差(δ*−δ)の2乗値Rの近似式は、次の式(2)に示すような各物性値A,B,Cを変数とする2次多項式で表わされる。
【0045】
【数2】
Figure 0004130156
【0046】
ここで、a1,a2,b1,b2,c1,c2は定数の係数、βは定数、A,B,Cは物性値である。
この式(2)に、各ケースの水準値並びに反り予測値δ*および反り実測値δが代入され、反り誤差演算部3eで反り誤差2乗値Rを最小化する誤差最小化の原理に基づいて反り誤差2乗値Rが最小化され(ステップS9)、反り誤差2乗値Rが最小になるときの物性値A,B,Cが決定される(ステップS10)。
【0047】
ここで反り誤差2乗値Rの最小化に用いる式(2)は、物性値A,B,Cに関する項がそれぞれ独立しており、相互作用項(A×B,B×C,A×C,A×B×C)が含まれない。そのため、式(2)の次数が2次までの場合には2次関数の最小化の問題となるため、反り誤差2乗値Rを最小化する未知変数としての物性値A,B,Cは容易に求められる。
【0048】
上記式(2)のような近似式の作成は、使用された実験計画法に応じて、例えば、直交表を用いた実験計画法の場合にはチェビチェフの直交多項式に基づき、それ以外の実験計画法の場合には最小2乗法などを用いて行われる。また、近似式は、この式(2)に示したような2次多項式のほか、それ以外のより一般的な関数(三角関数、対数関数、指数関数など)を用いて表わすこともできる。近似式を2次多項式以外の関数を用いて表わした場合には、反り誤差2乗値Rの最小化は、逐次2次計画法などの汎用的な数理計画法のアルゴリズムを用いて行うほか、その他これに類する最適化アルゴリズム(遺伝的アルゴリズムや焼き鈍し法など)を用いて行うことが可能である。
【0049】
ここでは3種類の物性値A,B,Cが未知である場合を例にして述べたが、未知の物性値が2種類以下または4種類以上存在する場合であっても、物性値測定の流れは同様である。例えば、未知の物性値として、物性値A,B,Cのほかに物性値Dが存在している場合には、この物性値Dについても水準値を設定し、物性値A,B,C,Dの水準値の組み合わせのケースを選択し、反り予測値の計算を行う。そして、式(2)には、さらに物性値Dについての2次多項式が加わり、この近似式を用いて反り誤差2乗値Rを最小にする物性値A,B,C,Dを決定すればよい。近似式が2次多項式ではない他の関数を用いて作成されていても同様である。
【0050】
また、水準値を設定する際には、水準数は上記のような3水準に限ったものではなく、さらに、求める各物性値について必ずしも一律同数の水準値を設定する必要はない。
【0051】
なお、バイメタル構造体10aのモデルとした上記2層バイメタル積層板20は、バイメタル構成材料21,22が線形な材料特性のみ有した単純な構成である場合には、反りが材料寸法L,t1,t2、縦弾性係数E1,E2、線膨張係数α1,α2によって決定される。従って、一方のバイメタル構成材料21の物性値が既知であれば、反り予測値δ*の計算では、未知材料であるバイメタル構成材料22の縦弾性係数E2および線膨張係数α2を除き全て既知になる。そのため、ある温度変化ΔT1,ΔT2を与えたときの反りδ1,δ2を外部からレーザ変位計で精度良く測定できれば、次式(3a),(3b)が得られ、これら式(3a),(3b)から2つの未知の物性値E2,α2を決定できる。ここで、関数fは、式(1a)〜(1c)の内容を簡略化して表わしたものである。
【0052】
【数3】
Figure 0004130156
【0053】
また、3点以上の温度で測定を行えば、式の数が未知変数(物性値)の数より多くなるので、この場合は残差2乗和を最小化する最小2乗法によって物性値が決定される。ここで、物性値E2,α2を仮定し、反り予測値δ1 *,δ2 *,δ3 *を計算したとする。反り予測値δ1 *,δ2 *,δ3 *は、それぞれ次式(4a)〜(4c)で表わされる。
【0054】
【数4】
Figure 0004130156
【0055】
反り予測値δ1 *,δ2 *,δ3 *と反り実測値δ1,δ2,δ3との間の反り誤差は次式(5a)〜(5c)で表わされる。
【0056】
【数5】
Figure 0004130156
【0057】
式(5a)〜(5c)の誤差は正負の値をとり得るので、反り誤差2乗値Rを求めると、次式(6)が得られる。
【0058】
【数6】
Figure 0004130156
【0059】
この式(6)において、E2,α2のみが未知数であり、それ以外の値は既知の数値である。したがって、式(6)の反り誤差2乗値Rが最小となるようなE2,α2の値を、未知材料であるバイメタル構成材料22の物性値として決定すればよい。この値は、本例のように、反り予測値δ*の計算に用いる関数が既知である場合には、式(6)をE2,α2で偏微分した値が0となる条件(式(7a),(7b))から決定できる。
【0060】
【数7】
Figure 0004130156
【0061】
このような物性値の同定方法は、反りと未知物性値の関係が明確であるバイメタル構造体の場合には有効である。しかしながら、パッケージ構造体10bのような一般的な電子部品のように複雑な形状を有するサンプルには適用することができない。また、物性値が非線形性を有する場合には適用できない。その点、上記図2のステップS1〜S10に示した物性値測定方法では、バイメタル構造体10aのほか、パッケージ構造体10bにも適用可能であり、その形状を特別加工することなく、未知物性値を同定することが可能である。
【0062】
次に、上記物性値測定方法の適用例について述べる。
最も簡単な例として、未知物性値がサンプルに含まれる、ある一構成材料の線膨張係数αのみである場合を想定する。その場合、まず、この構成材料を含んだサンプルの初期温度および温度変化後の反り実測値δを測定し、また、この構成材料を含んだサンプルの線膨張係数αの水準値を、α1,α2,α3の3水準設定し、反り予測値δ1 *,δ2 *,δ3 *を計算する。この線膨張係数αと反り予測値δ*の関係を、例えば次の式(8)に示す2次多項式により近似する。
【0063】
【数8】
Figure 0004130156
【0064】
ここで、d1,d2は係数、d3は定数であり、これらは、(α,δ*)が3点与えられているので、d1,d2,d3についての連立方程式を解くことによって一意に決定できる。
【0065】
そして、反り実測値δを用いて、式(8)で求まる反り予測値δ*との反り誤差(δ*−δ)の2乗値を最小にする線膨張係数αを決定すればよい。本例では、未知変数は線膨張係数αのみであり、反り誤差(δ*−δ)の2乗値は、たかだか4次多項式となるので、これを線膨張係数αで偏微分した値を0とすることで線膨張係数αの値を決定できる。
【0066】
あるいは、上記物性値測定方法で述べたように、次式(9)に示すように、はじめから反り誤差2乗値Rを線膨張係数αの2次多項式で近似表現しておいてもよい。
【0067】
【数9】
Figure 0004130156
【0068】
ここで、e1,e2は係数、e3は定数であり、これらは式(8)のときと同様に連立方程式を解いて決定できる。式(9)は2次多項式であるので、αに何ら制約がない場合には、線膨張係数αは次式(10)によって決定できる。
【0069】
【数10】
Figure 0004130156
【0070】
線膨張係数αに何らかの制約条件、例えば線膨張係数αがある温度以下でとり得る値の範囲が決まっている、あるいはある温度以上でとり得る値の範囲が決まっているなどの境界条件がある場合には、その制約条件と式(9),(10)で求められる値との関係によって誤差が最小となる線膨張係数αを決定する。
【0071】
以上説明したように、物性値測定装置1によれば、バイメタル構造体10aのほか、電子部品のパッケージ構造体10bなどについて、それに用いられている材料の物性値を同定することができる。そのため、物性値測定に当たり、サンプルを装置に適合した特定形状に加工することを要せず、また、購入した製品についてそのまま物性値測定を行うことも可能になる。プリント配線基板のような面内に複雑な物性値分布を有する材料に対しても、特定領域の平均的物性値を求めることができる。
【0072】
さらに、物性値測定装置1では、サンプルの反り実測値と反り予測値によって物性値を同定することができるので、同定する物性値の反り予測値が算出できる限りはその種類が限定されず、物性値測定装置1を様々な物性値の測定に適用することができる。また、線膨張係数や縦弾性係数などの各種物性値を個別に測定することを要せず、効率的に低コストで物性値測定を行うことができる。
【0073】
さらに、物性値測定装置1では、温度制御部2bによって複数条件での反り測定が行えるので、効率的なデータ収集が可能であるとともに、より高精度に物性値を同定することが可能になる。また、物性値測定装置1では、複数種のサンプルを同時に熱処理することもでき、物性値測定を効率的に低コストで行うことが可能になる。
【0074】
以下、本発明の実施の形態をより具体的に説明する。
まず、第1の実施例について述べる。
図6は第1の実施例のサンプルの構成例を示す図である。
【0075】
図6に示すサンプル10cは、厚さ1.0mmのプリント配線基板11cが、厚さ0.1mmのはんだ12cを介して、厚さ1.0mmの42アロイ(以下、単に「アロイ」と記す。)13cと貼り合わされたバイメタル構造を有している。プリント配線基板11cには、縦横30mm角のものを用い、はんだ12cおよびアロイ13cは、このプリント配線基板11cと同サイズにしている。また、はんだ12cには、その組成がSn96.5%,Ag3.0%,Cu0.5%で、融点217℃の鉛フリーはんだを用いている。
【0076】
この第1の実施例では、上記構成のサンプル10cについて、プリント配線基板11cの未知物性値である線膨張係数(CTE)および弾性率(E)を求める。この場合、まず、はんだ12cの融点217℃を初期温度とし、サンプル10cを初期温度217℃から室温(25℃)まで冷却したときの反り量を測定する。
【0077】
図7は第1の実施例のサンプルの25℃における反り実測値の測定結果である。図7において、X軸およびY軸は、それぞれサンプル10cの縦方向の位置(mm)および横方向の位置(mm)を表わし、Z軸は反り実測値(mm)を表わしている。初期温度217℃から温度25℃まで冷却することにより、サンプル10cは、その中央部から縁部に向かって反りが発生することがわかる。
【0078】
また、図8は第1の実施例の各温度における反り実測値を示す図である。図8において、横軸は温度(℃)を表わし、縦軸は反り実測値(mm)を表わしている。初期温度217℃での反りを0mmとした場合、サンプル10cは、初期温度217℃から冷却されるのに伴い、その反りが次第に大きくなっていくことがわかる。温度25℃での反り量は0.125282mmであった。以下、この第1の実施例では、この図8に示した反り実測値を、サンプル10cの各温度での反り量として計算を行う。
【0079】
このような反り挙動を示すサンプル10cにおいて、初期温度217℃におけるプリント配線基板11cの線膨張係数および弾性率をそれぞれCTE217およびE217と、温度25℃におけるプリント配線基板11cの線膨張係数および弾性率をそれぞれCTE25およびE25とする。そして、これらCTE25,CTE217,E25,E217の4変数についてそれぞれ適当な分割間隔で水準値を設定する。この水準値の設定は、ここでは初期温度217℃から温度25℃の範囲でとり得ると考えられる値の平均値を中央値にして、水準値の最小値および最大値はその平均値から30%変化させた値として、1変数につき3水準ずつ設定している。
【0080】
このように設定した水準値について、直交表(L27)に基づく実験計画法により、27通りの水準値組み合わせケースを決定し、有限要素解析により反り予測値を計算する。この有限要素解析にはABAQUSを用い、各ケースの反り予測値の計算に必要なはんだ12cおよびアロイ13cの既知の物性値を用いて、反り予測値を計算する。例えば、この第1の実施例における有限要素解析に使用可能なはんだ12cの物性値としては、次の表2に示した各種値が挙げられる。
【0081】
【表2】
Figure 0004130156
【0082】
この表2において、SnAgCu−65は温度マイナス65℃でのはんだ12cを、SnAgCu+25は温度25℃でのはんだ12cを、SnAgCu+75は温度75℃でのはんだ12cを、SnAgCu+125は温度125℃でのはんだ12cを、それぞれ表わしている。表2には、これらの各温度でのはんだ12cについての弾性率(MPa)、ポアソン比、線膨張係数(×10-6/℃)、降伏応力(MPa)の値をそれぞれ示している。有限要素解析には、物性値測定時の温度に該当する温度での物性値を、必要に応じて反り予測値の計算に使用する。
【0083】
各ケースのCTE25,CTE217,E25,E217の水準値、各ケースについて有限要素解析によって得られた反り予測値、および温度25℃で測定した反り実測値(反り量)を表3にまとめる。
【0084】
【表3】
Figure 0004130156
【0085】
表3において、CTE25は、中央値16.5856×10-6/℃、最小値11.6099×10-6/℃、最大値21.5613×10-6/℃である。CTE217は、中央値11.0472×10-6/℃、最小値7.7330×10-6/℃、最大値14.3614×10-6/℃である。E25は、中央値11912.99MPa、最小値8339.09MPa、最大値15486.89MPaである。E217は、中央値3486.20MPa、最小値2440.34MPa、最大値4532.06MPaである。表3には、直交表に基づくNo.1〜No.27の各ケースについて、その水準値と、各ケースについての反り予測値δ*(mm)、および反り実測値δ=0.125282(mm)を示している。
【0086】
表3に示した各値を用い、CTE25,CTE217,E25,E217を設計変数とする反り誤差2乗値R(=(δ*−δ)2)の近似式を目的関数として定式化する。例えば、近似式をCTE25,CTE217,E25,E217をそれぞれ2次多項式で近似してそれらの2次多項式の和で定式化する。
【0087】
このような近似式を用いて、反り誤差2乗値Rを最小にするCTE25,CTE217,E25,E217を求める。この第1の実施例では、線膨張係数については、CTE25=16.68×10-6/℃、CTE217=12.80×10-6/℃という結果が得られた。また、弾性率については、E25=11912.99MPa、E217=3486.20MPaという結果が得られた。
【0088】
さらに、ここで得られたCTE217およびE217の値を既知物性値として用い、初期温度217℃から温度25℃までの間の50℃,110℃,190℃の各温度でのプリント配線基板11cの線膨張係数および弾性率を求める。
【0089】
ここでは温度50℃,110℃,190℃でのプリント配線基板11cの線膨張係数CTE50,CTE110,CTE190、および弾性率E50,E110,E190を、上記CTE25,CTE217,E25,E217のときと同様に、それぞれの測定温度の場合について有限要素解析を行い、反り誤差2乗値を最小化して求める。なお、有限要素解析を行う上で必要となる水準値の設定においては、プリント配線基板11cの線膨張係数および弾性率について、その上限値(初期温度217℃での線膨張係数および弾性率)と下限値(温度25℃での線膨張係数および弾性率)とが既知であるので、これらの値をそれぞれ最大値と最小値にして分割を行い、1変数につき3水準ずつ設定する。したがって、それぞれの温度について9通りのケースで有限要素解析が実行される。反り誤差2乗値を最小化して各温度での線膨張係数および弾性率を求めた結果を図9に示す。
【0090】
図9は第1の実施例の各温度での線膨張係数を示す図である。図9において、横軸は温度(℃)を表わし、縦軸は線膨張係数CTE(×10-6/℃)を表わしている。各温度での線膨張係数CTEは、CTE50=16.57×10-6/℃、CTE110=16.40×10-6/℃、CTE190=14.50×10-6/℃であった。この図9より、プリント配線基板11cの線膨張係数は、温度によってその値が変化し、初期温度217℃から温度25℃へと冷却されるに従い、大きな線膨張係数を示すようになる。特に初期温度217℃から温度100℃程度までの冷却過程では線膨張係数の値の変化が大きく、それより低い温度ではあまり線膨張係数が変化しないことがわかる。
【0091】
また、各温度での弾性率は、E50=11734.61MPa、E110=11235.28MPa、E190=5771.53MPaであった。
このように、先にCTE25,CTE217,E25,E217を求めてからCTE50およびE50など他の温度における物性値を求めることで、これらの物性値を全て未知変数として1度に計算する場合に比べて計算量が少なくて済み、物性値の同定を効率的に行うことができる。また、求められる物性値の精度向上も期待できる。勿論、未知物性値の数が少ない、あるいは組み合わせのケースが少なくて済むことがわかっている場合などには、未知物性値を全て変数として1度に計算を行えばよい。
【0092】
図10は第1の実施例で同定した物性値を用いて反り予測値を再計算した結果を示す図である。図10において、横軸は温度(℃)を表わし、縦軸は反り量(mm)を表わしている。また、図10では、プリント配線基板11cの同定した物性値を用いてサンプル10cの各温度での反り予測値の再計算を行った結果を実線で、サンプル10cの反り実測値の測定結果を点線で、それぞれ示している。この図10より、計算結果と実測結果との一致は良好であり、この物性値測定で精度良くプリント配線基板11cの未知物性値が同定されているということができる。
【0093】
次に、第2の実施例について述べる。
第2の実施例では、プリント配線基板にLSIチップが実装されているときのプリント配線基板の線膨張係数および弾性率を求める場合について述べる。この第2の実施例では、LSIチップを物性既知材料として扱い、未知物性値を有するプリント配線基板のLSIチップが実装されている領域についての平均的な物性値を求める場合について述べる。
【0094】
図11は第2の実施例のサンプルの平面図である。
図11に示すサンプル10dは、第1の実施例で用いたプリント配線基板11cの中央部にLSIチップ14dが実装されている。ただし、この第2の実施例では、プリント配線基板11cは、その大きさを縦横49.5mm角としている点でのみ第1の実施例とは異なる。このプリント配線基板11cには、その中央部に縦横それぞれ29ポイントのバンプ(図示せず)が形成されていて、LSIチップ14dは、これらのバンプ上にはんだボールを介してBGA(Ball Grid Array)接合で実装されている。プリント配線基板11cに実装されるLSIチップ14dは、厚さ0.6mmで縦横20mm角の大きさであり、プリント配線基板11cへのLSIチップ14dの実装後のサンプル10dの合計高さは1.7mmになる。
【0095】
図12は第2の実施例の室温から温度168℃の間での反り実測値の測定結果である。図12において、横軸はLSIチップ14dの実装領域の端部からの位置(mm)を表わし、縦軸は反り実測値(mm)を表わしている。図12は、初期温度を168℃とし、150℃,110℃,50℃,25℃(室温)の各温度でサンプル10dの反りを測定したときの反り実測値を示している。この図12より、LSIチップ14dの実装領域では、温度168℃からの温度低下に伴い、サンプル10dの反りが大きくなっていくことがわかる。
【0096】
以降は、第1の実施例の場合と同様に、まず、未知物性値であるプリント配線基板11cの線膨張係数(CTE)および弾性率(E)の水準値をそれぞれ設定する。そして、有限要素解析により反り予測値δ*を求め、反り予測値δ*と反り実測値δとの間の反り誤差2乗値Rの近似式を作成し、これを用いて反り誤差2乗値Rを最小にする未知物性値の値を求める。
【0097】
表4に第2の実施例の反り予測値の計算に使用可能な物性値を示す。
【0098】
【表4】
Figure 0004130156
【0099】
この表4において、SiはLSIチップ14dの主な構成成分であり、SnAg−65は温度マイナス65℃でのはんだボールを、SnAg+25は温度25℃でのはんだボールを、SnAg+75は温度75℃でのはんだボールを、SnAg+125は温度125℃でのはんだボールを、それぞれ表わしている。表4には、これらの各温度でのはんだボールについての弾性率(MPa)、ポアソン比、線膨張係数(×10-6/℃)の値をそれぞれ示している。有限要素解析には、物性値測定時の温度に該当する温度での物性値を、必要に応じて反り予測値の計算に使用する。
【0100】
有限要素解析を行う上で必要となる水準値の設定においては、第1の実施例において得られたプリント配線基板11cの物性値を水準値の中央値とし、水準値の最小値および最大値はその中央値から30%変化させた値にする。
【0101】
第2の実施例では、まず、第1の実施例と同様に、CTE25,CTE217,E25,E217の4種類の未知物性値について、水準値が設定された各ケースでの反り予測値δ*を有限要素解析により計算する。そして、反り誤差2乗値Rの近似式を求め、これを最小化してCTE25,CTE217,E25,E217の各値を求める。これにより求められるCTE217は、9.58×10-6/℃となった。
【0102】
次いで、求めたCTE217の値を既知物性値として用い、CTE25,CTE217,E25,E217を求めたときと同様にして、各温度50℃,110℃,150℃でのプリント配線基板11cの弾性率および線膨張係数をそれぞれ求める。
【0103】
温度50℃におけるプリント配線基板11cの弾性率E50および線膨張係数CTE50を求めるための反り予測値の計算結果を表5に示す。
【0104】
【表5】
Figure 0004130156
【0105】
この表5において、E50は、その中心値が第1の実施例で得られた11734.61MPaであり、これを30%変化させた8214.227MPa,15254.99MPaがそれぞれ最小値、最大値として設定されている。また、CTE50は、その中心値が第1の実施例で得られた16.57×10-6/℃であり、これを30%変化させた11.599×10-6/℃,21.541×10-6/℃がそれぞれ最小値、最大値として設定されている。No.1〜No.9の各ケースについて反り予測値の計算を行い、E50およびCTE50を変数とする反り誤差2乗値の近似式を求め、これを最小にするE50およびCTE50を求める。
【0106】
温度110℃におけるプリント配線基板11cの弾性率E110および線膨張係数CTE110を求めるための反り予測値の計算結果を表6に、温度150℃におけるプリント配線基板11cの弾性率E150および線膨張係数CTE150を求めるための反り予測値の計算結果を表7に、それぞれ示す。
【0107】
【表6】
Figure 0004130156
【0108】
【表7】
Figure 0004130156
【0109】
表6の温度110℃の場合についても温度50℃の場合と同様に、E110は、その中心値が11235.28MPaであり、最小値、最大値はそれぞれ7864.696MPa,14605.86MPaである。CTE110は、その中心値が16.40×10-6/℃であり、最小値、最大値はそれぞれ11.48×10-6/℃,21.32×10-6/℃である。No.1〜No.9の各ケースについて反り予測値の計算を行い、E110およびCTE110を変数とする反り誤差2乗値の近似式を求め、これを最小にするE110およびCTE110を求める。
【0110】
表7の温度150℃の場合は、E150はその中心値が8746.5MPaであり、最小値、最大値はそれぞれ6122.55MPa,11370.45MPaである。CTE150はその中心値が14.95×10-6/℃であり、最小値、最大値はそれぞれ10.465×10-6/℃,19.435×10-6/℃である。No.1〜No.9の各ケースについて反り予測値の計算を行い、E150およびCTE150を変数とする反り誤差2乗値の近似式を求め、これを最小にするE150およびCTE150を求める。
【0111】
図13は第2の実施例の各温度での線膨張係数を示す図である。図13において、横軸は温度(℃)を表わし、縦軸は線膨張係数CTE(×10-6/℃)を表わしている。この図13より、LSIチップ14dが実装されたプリント配線基板11cの線膨張係数CTEは、温度によってその値が変化し、温度217℃から温度150℃へと冷却されるに従って一旦小さくなった後、温度150℃からさらに温度25℃まで冷却されるに従って上昇する傾向が見られる。さらに、温度217℃から温度100℃程度までの間での線膨張係数CTEの変化に比べて、温度100℃程度から温度25℃までの間での線膨張係数CTEの変化が大きくなっている。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、材料の反りを測定し、測定された反りの実測値と材料に発生する反りの予測値とを用いて材料の未知物性値を同定するようにした。これにより、測定する材料を特定形状に加工することなく、材料の未知物性値を精度良く同定することが可能になり、効率的に低コストで未知物性値を同定することが可能になる。
【0113】
さらに、様々な物性値の測定が可能であり、また、各種物性値を個別に測定することを要せず、効率的に物性値測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】物性値測定装置の構成例を示す図である。
【図2】物性値測定装置を用いた物性値測定方法の流れを示す図である。
【図3】サンプルの構成例を示す断面図である。
【図4】サンプルの別の構成例を示す断面図である。
【図5】2層のバイメタル構成材料からなる2層バイメタル積層板における反り予測値の計算方法の説明図である。
【図6】第1の実施例のサンプルの構成例を示す図である。
【図7】第1の実施例のサンプルの25℃における反り実測値の測定結果である。
【図8】第1の実施例の各温度における反り実測値を示す図である。
【図9】第1の実施例の各温度での線膨張係数を示す図である。
【図10】第1の実施例で同定した物性値を用いて反り予測値を再計算した結果を示す図である。
【図11】第2の実施例のサンプルの平面図である。
【図12】第2の実施例の室温から温度168℃の間での反り実測値の測定結果である。
【図13】第2の実施例の各温度での線膨張係数を示す図である。
【図14】引張試験装置の模式図である。
【図15】線膨張率測定装置の模式図である。
【符号の説明】
1 物性値測定装置
2 反り計測部
2a 密閉容器
2b 温度制御部
2c 非接触式レーザ変位計
3 物性値同定部
3a 反り実測値格納部
3b 設定入力部
3c アルゴリズム格納部
3d 反り予測値算出部
3e 反り誤差演算部
3f 材料データベース
10,10c,10d サンプル
10a バイメタル構造体
10b パッケージ構造体
11a 測定対象物
11b パッケージ基板
11c プリント配線基板
12a 接合材料
12b,14d LSIチップ
12c はんだ
13a 物性既知材料
13b モールド樹脂
13c アロイ
20 2層バイメタル積層板
21,22 バイメタル構成材料

Claims (5)

  1. 材料の物性値を測定する物性値測定装置において、
    材料温度を変化させて前記材料に発生する反りを測定する反り計測部と、
    既知物性値を基に設定された前記材料の未知物性値の予測値から複数の水準値を設定し、それらの各水準値を用いて材料温度を変化させたときに発生する反りの予測値を算出し、算出した前記反りの予測値と、前記反り計測部によって材料温度を変化させて測定した反りの実測値とを用いて前記材料の前記未知物性値を同定する物性値同定部と、
    を有することを特徴とする物性値測定装置。
  2. 前記物性値同定部は、前記反りの実測値と前記反りの予測値との間に生じる誤差を前記未知物性値を変数とする数式で表わし、前記数式で表わされた前記誤差が最小になる前記未知物性値を求めることによって前記未知物性値を同定することを特徴とする請求項1記載の物性値測定装置。
  3. 材料の物性値を測定する物性値測定方法において、
    材料温度を変化させて前記材料に発生する反りを測定し、
    既知物性値を基に設定された前記材料の未知物性値の予測値から複数の水準値を設定し、それらの各水準値を用いて、材料温度を変化させたときに前記材料に発生する反りの予測値を算出し、
    算出した前記反りの予測値と、材料温度を変化させて測定した反りの実測値とを用いて前記材料の前記未知物性値を同定する、
    ことを特徴とする物性値測定方法。
  4. 測定された前記反りの実測値と算出された前記反りの予測値とを用いて前記材料の前記未知物性値を同定する際には、
    前記反りの実測値と前記反りの予測値との間に生じる誤差を前記未知物性値を変数とする数式で表わし、
    前記数式で表わされた前記誤差が最小になる前記未知物性値を求めることによって前記未知物性値を同定する、
    ことを特徴とする請求項3記載の物性値測定方法。
  5. 測定された前記反りの実測値と算出された前記反りの予測値とを用いて前記材料の前記未知物性値を同定する際には、前記材料の複数の前記未知物性値を同定することを特徴とする請求項3記載の物性値測定方法。
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