JP4130145B2 - 磁気ディスク装置及び磁気ヘッドスライダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置及び磁気ヘッドスライダに係わり、特にスライダ基板部上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部を備える磁気ヘッドスライダ及びこれを用いた磁気ディスク装置に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク装置では、記録再生素子を搭載した磁気ヘッドスライダが空気のくさび膜効果によって磁気ディスクから浮上し、磁気ディスク上の磁気情報を記録/再生するようになっている。磁気ディスク装置の高記録密度化とそれによる装置の大容量化あるいは小型化を実現するためには、磁気ヘッドスライダと磁気ディスクの距離(スライダ浮上量)を縮め、線記録密度を上げることが有効である。近年、スライダ浮上量は10nm程度あるいは10nm以下まで縮められている。
【0003】
従来の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドスライダとしては、図4に示すものがある(従来技術1)。この磁気ヘッドスライダ1は、アルミナおよび炭化チタンの混合焼結体(アルチックと表記することもある)で形成されたスライダ基板部1aと、スライダ基板部1a上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部1bとを備える。そして、薄膜ヘッド部1bは、スライダ基板部1aの線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面8aから反浮上面側に延びる金属膜4と、浮上面8aから反浮上面側に延びると共にスライダ基板1aの線膨張係数とほぼ同じ線膨張係数を有する絶縁膜5とを備える。金属膜4は例えばニッケル、鉄、あるいはコバルトなどの組成からなるパーマロイ磁性膜である。絶縁膜5は、アルミナで形成され、記録再生素子を保護したり、層間の絶縁をしたりする役目をする。
【0004】
また、図4に示す磁気ヘッドスライダ1に代わるものとして、図5に示す磁気ヘッドスライダ1が考えられる(従来技術2)。この磁気ヘッドスライダ1は、アルミナおよび炭化チタンの混合焼結体で形成されたスライダ基板部1aと、スライダ基板部1a上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部1bとを備える。そして、薄膜ヘッド部1bは、スライダ基板部1aの線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面8から反浮上面側に延びる金属膜4と、浮上面8から反浮上面側に延びると共にスライダ基板1aの線膨張係数より小さな線膨張係数を有する絶縁膜5とを備える。金属膜4は例えばニッケル、鉄、あるいはコバルトなどの組成からなるパーマロイ磁性膜である。絶縁膜5は、二酸化ケイ素とアルミナとの混合薄膜で形成され、記録再生素子を保護したり、層間の絶縁をしたりする役目をする。ここで、アルミナに二酸化ケイ素が重量比で35%混合した膜5を用いるとすると、ニ酸化ケイ素の線膨張係数(約0.6ppm/K)とアルミナの線膨張係数(約7ppm/K)とから単純に比例計算した混合膜5の線膨張係数は約5ppm/Kとなり、アルチックの線膨張係数より小さい。
【0005】
なお、後述する本発明の実施例に示す符号と同一の図4及び図5に示す符号のものは、同一物または相当物を示す。
【0006】
さらには、従来の薄膜磁気ヘッドとして、特許文献1に示すものがある(従来技術3)。この薄膜磁気ヘッドは、セラミック材料からなる基板の上に下部絶縁膜、下シールド層、絶縁膜からなる再生下ギャップ、磁気抵抗効果素子、絶縁膜からなる再生上ギャップ、下コア層、書込みギャップ、上コア、及び上部保護膜を積層してなるものである。そして、下部絶縁膜を二酸化ケイ素の混合比が50%以下であるアルミナと二酸化ケイ素の混合膜から形成することにより、研磨加工による基板の空気ベアリング面と薄膜磁気ヘッドの端面間の段差を小さくするようにしたものである。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−276721号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術1では、絶縁膜5の材料として用いられるアルミナの線膨張係数は、アルチック基板1aの線膨張係数とほぼ同じで、約7ppm/K(ここでppmは百万分の一の意味である)であるため、研磨加工時に比べて使用時の環境温度が上昇しても、絶縁膜5とアルチック基板1aとの線膨張係数の差に起因する薄膜ヘッド部1bの熱膨張突出は生じない。しかし、金属膜4として用いられるパーマロイ磁性膜は、アルチック基板1aの線膨張係数より大きな約13ppm/Kの線膨張係数を持つため、使用時の環境温度が研磨加工時の温度に比べて上昇すると、ナノメートルオーダの薄膜ヘッド部1bの熱膨張突出を起こし、図4に模式的に示すようにS1面からS2面のように変化し、磁気ヘッドスライダ1と磁気ディスク10が接触する原因となる。なお、金属膜4にはインダクティブコイルを形成する銅膜も含まれ、これも同様にアルチックより大きな線膨張係数を持つため、これによっても薄膜ヘッド部1bの熱膨張突出を起こす原因となる。
【0009】
これに代わるものとして考えられる従来技術2では、使用時の環境温度が加工時に比べて上昇すると、絶縁膜5全体が線膨張係数が小さい材料で構成されているため、金属膜4による突出力よりも絶縁膜5による凹み力の方が大きくなって、図5に模式的に示すようにS1面からS2面のように凹んでしまう。これによって、磁気ヘッドスライダ1と磁気ディスク10が大きく離れることとなって、記録/再生性能が低下するという問題が発生する。
【0010】
また、従来技術2では、硬さ等の機械的特性でアルミナより劣るニ酸化ケイ素とアルミナとの混合膜5を用いるため、磁気ディスク10との接触によってクラッシュ等の大きなダメージにつながるおそれがある。そこで、硬さに関して優れる炭化ケイ素とアルミナとの混合膜5を用いることが考えられるが、炭化ケイ素は薄膜ヘッド部1bにおけるアルミナのような信頼性の実績がなく、信頼性に不安がある。換言すれば、絶縁膜5の材料としてアルミナが広く使われているのは、硬度などの機械的特性および、摩擦、摩耗などのトライボロジー特性が良好であり、炭素保護膜9によって摩耗から保護されたレール面8aはもちろん、レール面8a以外の炭素保護膜9に覆われていないステップ軸受面8bでも、ランプから磁気ディスク10へのロード時等に磁気ディスク10と一時的に接触しても、大きなダメージを受けないことが多数の実績から証明されているからである。
【0011】
一方、従来技術3では、下部絶縁膜を二酸化ケイ素の混合比が50%以下であるアルミナと二酸化ケイ素の混合膜から形成することが開示されているが、この下部絶縁膜は浮上面に露出して形成されているため、従来技術2と同様にトライボロジー特性が劣るものである。
【0012】
本発明の目的は、薄膜ヘッド部の浮上面のトライボロジー特性を良好にしつつ、薄膜ヘッド部の熱膨張突出を抑制して磁気スライダヘッドと磁気ディスクとの接触の可能性を低減し、安定した記録/再生性能の確保と信頼性の向上が図れる磁気ディスク装置及び磁気ヘッドスライダを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、回転自在に配設された磁気ディスクと、この磁気ディスク面に対向するように配設される磁気ヘッドスライダと、この磁気ヘッドスライダを前記磁気ディスク面の半径方向に移動させる駆動装置とを備え、回転する前記磁気ディスクと前記磁気ヘッドスライダとの間に空気流を発生させて前記磁気ヘッドスライダを浮上させた状態で記録/再生を行なう磁気ディスク装置において、前記磁気ヘッドスライダは、スライダ基板部と、前記スライダ基板部上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部とを備え、前記薄膜ヘッド部は、前記スライダ基板部の線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面から反浮上面側に延びる磁性膜と、浮上面から反浮上面側に延びる第1絶縁膜と、前記磁性膜及びコイルの樹脂膜より空気流出端側の前記第1絶縁膜内に形成され且つ前記スライダ基板部の線膨張係数より小さい線膨張係数を有すると共に浮上面より内方の位置から反浮上面側に延びる第2絶縁膜とを備える構成にしたことにある。
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、回転する磁気ディスクとの間に空気流を発生させて浮上させた状態で記録/再生を行なう磁気ヘッドスライダにおいて、スライダ基板部と、前記スライダ基板部上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部とを備え、前記薄膜ヘッド部は、前記スライダ基板部の線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面から反浮上面側に延びる磁性膜と、浮上面から反浮上面側に延びる第1絶縁膜と、前記磁性膜及びコイルの樹脂膜より空気流出端側の前記第1絶縁膜内に形成され且つ前記スライダ基板の線膨張係数より小さい線膨張係数を有すると共に浮上面より内方の位置から反浮上面側に延びる第2絶縁膜とを備える構成にしたことにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複数の実施例を、図を用いて説明する。なお、各実施例の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
【0016】
本発明の第1実施例の磁気ディスク装置を、図1〜図3及び図6を用いて説明する。
【0017】
この第1実施例に係る磁気ディスク装置の全体構成を図1を参照しながら説明する。
【0018】
磁気ディスク装置13は、コンピュータ装置に搭載されるハードディスク装置として適用されるものであり、回転自在に配設された磁気ディスク10と、この磁気ディスク10面に対向するように配設される磁気ヘッドスライダ1と、この磁気ヘッドスライダ1を磁気ディスク10面の半径方向に移動させる駆動装置41とを備えて構成されている。そして、この磁気ディスク装置13は、回転する磁気ディスク10と磁気ヘッドスライダ1との間に空気流を発生させ、この空気流によるくさび効果によって磁気ヘッドスライダ1を磁気ディスク10から微小間隙で浮上させ、磁気ディスク10と磁気ヘッドスライダ1とが直接固体接触しない状態で記録/再生するように構成されている。
【0019】
磁気ディスク10は、磁気情報が格納される円板状の媒体であり、筐体内に設置されたスピンドルモータに装着され、高速で回転される。この磁気ディスク10は、ガラス等の硬質基板と、この硬質基板上に真空蒸着法等の薄膜形成手段により成膜されてなる磁性膜とを有して構成されている。
【0020】
磁気ヘッドスライダ1は、磁気ディスク10に対して情報を記録/再生するためのものであり、駆動装置41の一部を構成する板ばね状のロードビーム15の先端部に装着され、ロードビーム15によって磁気ディスク面への押し付け荷重を与えられている。駆動装置41は、ロードビーム15及びボイスコイルモータ16を備えて構成されている。このロードビーム15はボイスコイルモータ16により回転運動が可能な形で支持されている。これによって、磁気ヘッドスライダ1は、ロードビーム15を介してボイスコイルモータ16により駆動されて磁気ディスク10上の任意の半径位置に移動され、磁気ディスク面全体で記録/再生を行なう。そして、磁気ヘッドスライダ1は、装置の停止時あるいは記録/再生命令が一定時間無い時に、磁気ディスク10の外側に位置するランプ14に待避し、磁気ディスク10面から離れた状態で保持される。なお、ここではロード・アンロード機構を備えた装置を示したが、装置停止中は磁気ヘッドスライダ1が磁気ディスク10のある特定の領域で待機するコンタクト・スタート・ストップ方式の磁気ディスク装置でも本発明の効果は同様に得られる。
【0021】
次に、上述した磁気ヘッドスライダ1の具体的構造に関して図2を参照しながら説明する。
【0022】
磁気ヘッドスライダ1は、空気流入端面11、浮上面8及び空気流出端面12を備えて構成されている。ここで、浮上面8は、レール面8a、浅溝面8b及び深溝面8cを備えて構成されている。
【0023】
また、磁気ヘッドスライダ1は、アルチックで形成されたスライダ基板部1aと、このスライダ基板部1a上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部1bとを備えて構成されている。この磁気ヘッドスライダ1は、ウエハ状態で薄膜ヘッド部1bをスライダ基板部1a上に積層した後に、このウエハをバー状態に切断し、切断面を研磨して平滑に仕上げることにより形成されるものである。磁気ヘッドスライダ1は、例えば長さ1.25mm、幅1.0mm、厚さ0.3mmのほぼ直方体形状をしており、浮上面8、空気流入端面11、空気流出端面12、両側面、背面の計6面から構成される。浮上面8にはイオンミリングやエッチングなどのプロセスによって微細な段差(ステップ軸受)が設けられており、磁気ディスク10と対向して空気圧力を発生し、背面に負荷される荷重を支える空気軸受の役目を果たしている。
【0024】
浮上面8には前記のように段差が設けられ、実質的に平行な3種類の面に分類される。最も磁気ディスク1に近いレール面8a、レール面より約100nm乃至200nm深いステップ軸受面である浅溝面8b、レール面より約1μm深くなっている深溝面8cの3種類である。磁気ディスク1が回転することで生じる空気流が、浅溝面8bからレール面8aへ進入する際に、先すぼまりの流路によって圧縮され、正の空気圧力を生じる。一方、レール面8aや浅溝面8bから深溝面8cへ空気流が進入する際には流路の拡大によって、負の空気圧力が生じる。
【0025】
磁気ヘッドスライダ1は空気流入端11側の浮上量が空気流出端側12の浮上量より大きくなるような姿勢で浮上するように設計されている。従って、空気流出端近傍の浮上面8aが磁気ディスク1に最も接近する。空気流出端近傍では、レール面8aが周囲の浅溝面8b、深溝面8cに対して突出しているので、スライダピッチ姿勢およびロール姿勢が一定限度を超えて傾かない限り、レール面8aが最も磁気ディスク1に近づくことになる。記録素子2および再生素子3は、レール面8aの薄膜ヘッド部1bに属する部分に形成されている。ロードビーム15から押し付けられる荷重と、浮上面8で生じる正負の空気圧力とがうまくバランスし、記録素子2および再生素子3から磁気ディスクまでの距離を10nm程度の適切な値に保つよう、浮上面8の形状が設計されている。
【0026】
なお、ここでは浮上面8が実質的に平行な3種類の面8a、8b、8cから形成される二段ステップ軸受浮上面の磁気ヘッドスライダについて説明したが、4種類以上の平行な面から形成されるステップ軸受浮上面の磁気ヘッドスライダでも本発明は同様の効果が得られる。
【0027】
次に、上述した薄膜ヘッド部1bの詳細構造に関して図3を参照しながら説明する。図3において、17は磁気ディスク10の回転方向を示す。
【0028】
磁気情報を記録/再生する薄膜ヘッド部1bは、コイルを流れる電流で磁極間に磁界を発生して磁気情報を記録するインダクティブ記録素子2と、磁界によって抵抗値が変化するのを測る磁気抵抗型の再生素子3を備えている。具体的には、アルチックで形成されたスライダ基板部1a上に、メッキ、スパッタ、研磨などの薄膜プロセスを用いて金属膜4、セラミック膜である絶縁膜5、樹脂膜6などからなる薄膜ヘッド部1bを形成して構成されている。また、レール面8aの表面には磁気ディスク10との短時間かつ軽微な接触が起こっても摩耗しないよう、また記録素子2および再生素子3の腐食を防ぐため、厚さ数nmの炭素保護膜9が形成されている。
【0029】
薄膜ヘッド部1bは、スライダ基板部1aの線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面8から反浮上面側に延びる金属膜4と、浮上面8から反浮上面側に延びる第1絶縁膜5aと、スライダ基板部1aの線膨張係数より小さい線膨張係数を有すると共に浮上面8より内方の位置から反浮上面側に延びる第2絶縁膜5bとを備える。第1絶縁膜5aと第2絶縁膜5bは絶縁膜5を構成する。
【0030】
本実施例では、金属膜4は例えばニッケル、鉄、あるいはコバルトなどの組成からなるパーマロイ磁性膜で形成され、第1絶縁膜5aはアルミナで形成され、第2絶縁膜5bは二酸化ケイ素とアルミナとの混合薄膜(二酸化ケイ素が重量比で35%混合)で形成されている。なお、第1絶縁膜5aはアルミナと炭化チタンとの混合焼結体で形成され、第2絶縁膜5bは二酸化ケイ素薄膜、あるいは炭化ケイ素薄膜、あるいは炭化ケイ素とアルミナとの混合薄膜の何れかで形成されてもよい。
【0031】
そして、第2絶縁膜5bは、第1絶縁膜5a内に形成されると共に、金属膜4の反浮上面側の端面に対向して反浮上面側に形成されている。このように、第2絶縁膜5bは、浮上面8には用いず、浮上面8から奥まった内部に用い、浮上面8には信頼性の実績に優れたアルミナの第1絶縁膜5aを用いている。
【0032】
本実施例によれば、浮上面8から反浮上面側に延びる第1絶縁膜5aと、スライダ基板部1aの線膨張係数より小さい線膨張係数を有すると共に浮上面より内方の位置から反浮上面側に延びる第2絶縁膜5bとを備える構成としているので、使用時の環境温度が加工時に比べて上昇しても、金属膜4が突出しようとする力と第2絶縁膜5bが凹もうとする力とが相殺されて結果的に薄膜ヘッド部1bの熱膨張突出を抑制して磁気スライダヘッド1と磁気ディスク10との接触の可能性を低減し、安定した記録/再生性能の確保と頼性の向上を図ることができる。また、絶縁膜5の薄膜ヘッド部1bの浮上面を形成する第1絶縁膜5aには、信頼性の実績のあるアルミナ、あるいはアルミナと炭化チタンとの混合焼結体を用いることができるので、トライボロジー特性の良好なものとすることができる。
【0033】
その結果、信頼性を保ちつつ、磁気ヘッドスライダ1の設計浮上量を下げることができ、磁気ディスク面の記録密度の増大、更には装置の大容量化あるいは小型化に寄与することができる。
【0034】
また、第2絶縁膜5bは、第1絶縁膜5a内に形成されると共に、金属膜4の反浮上面側の端面に対向して反浮上面側に形成されているので、金属膜4の熱膨張突出力と対面して収縮力を加えられる。これによって、より効果的に薄膜ヘッド部1bの熱膨張突出を抑制することができる。
【0035】
なお、二酸化ケイ素の混合比が35%以外の割合、例えば純二酸化ケイ素でも、突出を低減する効果は得られる。また、二酸化ケイ素の代わりに線膨張係数が約3.7ppm/Kの炭化ケイ素またはアルミナと炭化ケイ素の混合膜を用いても同様の効果が得られる。
【0036】
また、樹脂膜6の線膨張係数もアルチックに比べて大きいが、剛性が小さいためにヘッド突出に与える寄与は比較的小さい。
【0037】
次に、磁気ヘッドスライダ1の薄膜ヘッド部1bの突出量に関して図6を参照しながら説明する。図6は使用時の環境温度が加工時に比べて30℃上昇した場合の突出量を数値シミュレーションで解析した結果を示す。
【0038】
図6に示すように、絶縁膜5の材料がすべてアルミナである場合(C1)には、約2nmの大きな突出があり、薄膜ヘッド部1bと磁気ディスク10とが接触する可能性が高まる。金属膜4の体積を基準として、第2絶縁膜5bがその25倍の大きさの二酸化ケイ素膜で形成されている場合(C2)には、突出量が半減している。第2絶縁膜5bが35倍の大きさの二酸化ケイ素混合膜5bで形成されている場合(C3)には、突出量と凹み量がほぼ相殺されている。第2絶縁膜5bの体積をそれ以上大きくした場合(C4、C5)は、逆に薄膜ヘッド部1bが磁気ディスク10から大きく遠ざかることとなり、磁気ディスク10との接触を防ぐことはできるが、記録/再生性能を悪化させるデメリットが生じる。また、凹みが激しいと、逆に使用時の環境温度が下がった場合に大きく突出することになる。従って、トライボロジー特性の面からだけでなく、凹みすぎないという観点からも、絶縁膜5全てを低線膨張係数5bで形成するのではなく、アルミナ膜5aと低線膨張係数材料5bのニ種類、あるいはそれ以上の種類で形成した方が良い。
【0039】
突出する金属膜4の体積に対して、アルチックよりも線膨張係数が小さい絶縁膜5bの体積を10倍以上50倍以下とすることによって、薄膜ヘッド部1bの突出およびそれに伴う磁気ディスク10との接触を抑制することができる。
【0040】
なお、環境温度の上昇によるヘッド突出だけでなく、記録素子に流れる電流発熱で磁気ヘッドスライダ中に温度分布が生じたことによるヘッド突出に対しても、本発明は効果を持つ。
【0041】
次に、本発明の第2実施例を図7を用いて説明する。この第2実施例は、次に述べる通り第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0042】
この第2実施例では、第2絶縁膜5bは、金属膜4の空気流出端面側に対面するように延長されて形成されている。これによって、第2絶縁膜5bの体積を増大することができ、金属膜4の熱膨張突をより一層抑制することができる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、薄膜ヘッド部の浮上面のトライボロジー特性を良好にしつつ、薄膜ヘッド部の熱膨張突出を抑制して磁気スライダヘッドと磁気ディスクとの接触の可能性を低減し、安定した記録/再生性能の確保と信頼性の向上が図れる磁気ディスク装置及び磁気ヘッドスライダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の磁気ディスク装置の斜視図である。
【図2】図1の磁気ディスク装置に用いる磁気ヘッドスライダの斜視図である。
【図3】図2の磁気ヘッドスライダの記録再生素子近辺を拡大した断面図である。
【図4】従来技術1の磁気ヘッドスライダの記録再生素子近辺を拡大した断面図である。
【図5】従来技術2の磁気ヘッドスライダの記録再生素子近辺を拡大した断面図である。
【図6】図2の磁気ヘッドスライダの記録再生素子近辺の環境温度上昇変形シミュレーション結果図である。
【図7】本発明の第1実施例の磁気ディスク装置の磁気ヘッドスライダの記録再生素子近辺を拡大した断面図である。
【符号の説明】
1…磁気ヘッドスライダ、1a…スライダ基板部、1b…薄膜ヘッド部、2…記録素子、3…再生素子、4…金属膜、5…絶縁膜(セラミックス膜)、5a…第1絶縁膜、5b…第2絶縁膜、6…樹脂膜、8…浮上面、8a…レール面、8b…浅溝面、8c…深溝面、9…炭素保護膜、10…磁気ディスク、11…空気流入端面、12…空気流出端面、13…磁気ディスク装置、14…ランプ、15…ロードビーム、16…ボイスコイルモータ、17…ディスク回転方向、41…駆動装置、S1…研磨加工時のレール面形状、S2…環境温度が上昇した場合のレール面形状。

Claims (7)

  1. 回転自在に配設された磁気ディスクと、この磁気ディスク面に対向するように配設される磁気ヘッドスライダと、この磁気ヘッドスライダを前記磁気ディスク面の半径方向に移動させる駆動装置とを備え、回転する前記磁気ディスクと前記磁気ヘッドスライダとの間に空気流を発生させて前記磁気ヘッドスライダを浮上させた状態で記録/再生を行なう磁気ディスク装置において、
    前記磁気ヘッドスライダは、スライダ基板部と、前記スライダ基板部上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部とを備え、
    前記薄膜ヘッド部は、前記スライダ基板部の線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面から反浮上面側に延びる磁性膜と、浮上面から反浮上面側に延びる第1絶縁膜と、前記磁性膜及びコイルの樹脂膜より空気流出端側の前記第1絶縁膜内に形成され且つ前記スライダ基板部の線膨張係数より小さい線膨張係数を有すると共に浮上面より内方の位置から反浮上面側に延びる第2絶縁膜とを備える
    ことを特徴とする磁気ディスク装置。
  2. 回転自在に配設された磁気ディスクと、この磁気ディスク面に対向するように配設される磁気ヘッドスライダと、この磁気ヘッドスライダを前記磁気ディスク面の半径方向に移動させる駆動装置とを備え、回転する前記磁気ディスクと前記磁気ヘッドスライダとの間に空気流を発生させて前記磁気ヘッドスライダを浮上させた状態で記録/再生を行なう磁気ディスク装置において、
    前記磁気ヘッドスライダは、スライダ基板部と、前記スライダ基板部上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部とを備え、
    前記薄膜ヘッド部は、前記スライダ基板部の線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面から反浮上面側に延びる金属膜と、浮上面から反浮上面側に延びる第1絶縁膜と、前記スライダ基板部の線膨張係数より小さい線膨張係数を有すると共に浮上面より内方の位置から反浮上面側に延びる第2絶縁膜とを備える
    前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜内に形成されると共に、前記金属膜の反浮上面側の端面に対向して反浮上面側に形成される部分を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
  3. 前記スライダ基板部はアルミナおよび炭化チタンの混合焼結体で形成され、前記第1絶縁膜はアルミナあるいはアルミナと炭化チタンとの混合焼結体の何れかで形成され、前記第2絶縁膜は二酸化ケイ素薄膜あるいは二酸化ケイ素とアルミナとの混合薄膜、あるいは炭化ケイ素薄膜、あるいは炭化ケイ素とアルミナとの混合薄膜の何れかで形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気ディスク装置。
  4. 前記スライダ基板部はアルミナおよび炭化チタンの混合焼結体で形成され、前記第1絶縁膜はアルミナで形成され、前記第2絶縁膜は二酸化ケイ素あるいは二酸化ケイ素とアルミナとの混合薄膜で形成され、前記第2絶縁膜は前記金属膜の体積の10倍以上50倍以下の体積を有することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気ディスク装置。
  5. 回転する磁気ディスクとの間に空気流を発生させて浮上させた状態で記録/再生を行なう磁気ヘッドスライダにおいて、
    スライダ基板部と、前記スライダ基板部上に薄膜プロセスを用いて形成された薄膜ヘッド部とを備え、
    前記薄膜ヘッド部は、前記スライダ基板部の線膨張係数より大きな線膨張係数を有すると共に浮上面から反浮上面側に延びる磁性膜と、浮上面から反浮上面側に延びる第1絶縁膜と、前記磁性膜及びコイルの樹脂膜より空気流出端側の前記第1絶縁膜内に形成され且つ前記スライダ基板の線膨張係数より小さい線膨張係数を有すると共に浮上面より内方の位置から反浮上面側に延びる第2絶縁膜とを備える
    ことを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
  6. 前記スライダ基板部はアルミナおよび炭化チタンの混合焼結体で形成され、前記第1絶縁膜はアルミナあるいはアルミナと炭化チタンとの混合焼結体の何れかで形成され、前記第2絶縁膜は二酸化ケイ素薄膜あるいは二酸化ケイ素とアルミナとの混合薄膜、あるいは炭化ケイ素薄膜、あるいは炭化ケイ素とアルミナとの混合薄膜の何れかで形成されたことを特徴とする請求項5に記載の磁気ヘッドスライダ。
  7. 前記スライダ基板部はアルミナおよび炭化チタンの混合焼結体で形成され、前記第1絶縁膜はアルミナで形成され、前記第2絶縁膜は二酸化ケイ素薄膜あるいは二酸化ケイ素とアルミナとの混合薄膜で形成され、前記第2絶縁膜は前記金属膜の体積の10倍以上50倍以下の体積を有することを特徴とする請求項5に記載の磁気ヘッドスライダ。
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