JP4129074B2 - スクータ型自動二輪車の車体フレーム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操向ハンドルとシートとの間に低床の足載部を備えたスクータ型自動二輪車の車体フレームに関する。
【0002】
【従来の技術】
スクータ型の自動二輪車の車体フレームとして、従来、ヘッドパイプに1本のメインフレームを接続し、該メインフレームを後方斜め下方に傾斜させて延長し、該傾斜部の下端を略水平に屈曲させて後方に延長し、該後方延長部により低床の足載部を形成したものがある。
【0003】
ところで、上記スクータ型自動二輪車の車体フレームでは、その構造上上記低床の足載部に大きな曲げモーメントが作用することから、該足載部の剛性を高めることが必要である。上記従来の車体フレームでは、上記足載部の剛性を高めるために、上記メインフレームの後方屈曲部付近に左,右一対のサイドフレームの前端を接続し、該サイドフレームを略水平に後方に延長し、さらに上記メインフレームの後端と左,右のサイドフレームとをクロスパイプで接続した構造が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで小型のスクータ型自動二輪車の場合には上記従来の車体フレームにより必要な足載部の剛性が確保できるものの、より大型のスクータ型自動二輪車の場合には、前,後輪の軸間距離(ホイールベース)が大きくなり、上記足載部により一層大きな曲げモーメントが作用し、しかも2名乗車により荷重自体も大きくなることから、より一層フレーム剛性の向上が要請される。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、車体フレームの足載部の剛性をより一層高めることができるスクータ型自動二輪車の車体フレームを提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、操向ハンドルとシートとの間に低床の足載部を備えたスクータ型自動二輪車の車体フレームにおいて、上記車体フレームの、メインフレームを後方斜め下方に傾斜するように延長し、さらに略水平後方に延長し、左,右のサブフレームを後方斜め下方に延長し、さらに略水平後方に延長し、該左,右のサブフレームの後方延長端にサイドガセットを介して左,右のサイドフレームを接続し、該サイドフレームを後方斜め上方に傾斜するように延長し、上記メインフレームの下方傾斜部を、上記左右のサブフレームの下方傾斜部より緩い傾斜にするとともに、該メインフレームの下方傾斜部と上記サイドフレームの上方傾斜部とを左,右一対のテンションパイプで接続し、該テンションパイプの上記メインフレームとの接続部は、車両側方から見たとき上記サブフレームの下方傾斜部より後方に位置しており、さらに上記テンションバイプは車両側方から見たとき及び上方から見たときの両方において直線状をなしていることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、上記左,右のテンションパイプ同士を該両パイプに架け渡すように配置されたシートステーにより接続し、該シートステーにより上記シートの前端部を軸支したことを特徴としている。
【0008】
【発明の作用効果】
請求項1の発明にかかるスクータ型自動二輪車の車体フレームによれば、メインフレームの下方傾斜部とサイドフレームの上方傾斜部とを左,右一対のテンションパイプで接続したので、曲げモーメントにより足載部の凹状屈曲形状の開口寸法が狭まるのを上記テンションパイプが突っ張って阻止する作用が得られ、該足載部の剛性を向上できる効果がある。
【0009】
また請求項2の発明では、左,右のテンションパイプ同士を、該両テンションパイプに架け渡して配置されたシートステーにより接続したので、該テンションパイプの軸方向荷重による座屈変形を該シートステーが阻止する機能が得られ、より一層足載部部の剛性を向上できる効果がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図8は本発明の第1実施形態によるスクータ型自動二輪車の車体フレームを説明するための図であり、図1は該実施形態車体フレームを備えたスクータ型自動二輪車の左側面図、図2,図3は上記車体フレームの左側面図,平面図、図4はヘッドガセット回りの左側面図、図5は図4のV-V 線断面図、図6はサイドガセット回りの左側面図、図7は図6のVII-VII 線断面図、図8はメイン,サブ,サイドフレーム及びクロスパイプの接続部の平面図である。
【0011】
図において、1はスクータ型自動二輪車であり、これは車体フレーム2の前端のヘッドパイプ3によりフロントフォーク4を左右に操向自在に枢支し、該フロントフォーク4の下端で前輪5を軸支するとともに上端に操向ハンドル6を固着し、上記車体フレーム2の前後方向略中央部でエンジンユニット7を上下揺動自在に枢支し、該エンジンユニット7の後端で後輪8を軸支し、車体フレーム2の上部にシート9を搭載した概略構造を有している。そして上記フロントフォーク4及び車体フレーム2の周囲は車体カバー22により囲まれており、また上記シート9と操向ハンドル6との間に低床の足載部Fが形成されている。なお、9aの前席乗員の背もたれ、9bは後席乗員の背もたれであり、また9cは後席乗員の乗車姿勢を安定させるための把持部材である。
【0012】
上記車体フレーム2は、上記ヘッドパイプ3にヘッドガセット10を介して溶接接続された1本のメインフレーム11及び左,右2本のサブフレーム12,12と、該左,右のサブフレーム12,12の後端部にサイドガセット13,13を介して溶接接続された左,右のサイドフレーム14,14とを備えている。
【0013】
上記ヘッドガセット10は、横断面コ字形にプレス成形された左,右側板10a,10aを突き合わせて溶接接続してなり、縦長の角形断面で前,後端開口10b,10cを有するいわゆるモノコック状のものである。また上記左,右の側板10a,10a同士は内部に配置された補強プレート23を介して互いに接続されている。この補強プレート23は横断面コ字形のもので、その一辺23aは右側板10aの内面に溶接され、他辺23bは左側板10aのスリット10eの周縁に外側から溶接されている。
【0014】
上記ヘッドガセット10の前端開口10bは上記ヘッドパイプ3の外周形状に沿った形状になっており、該前端開口10bの周縁をヘッドパイプ3の外周面にに嵌合させて溶接されている。
【0015】
上記ヘッドガセット10の後端開口10cは上記メインフレーム11の前端部11aの形状に対応した形状になっており、該後端開口10cに上記前端部11aが嵌合挿入されて溶接接合されている。該メインフレーム11はヘッドガセット10の後端開口10cから後方斜め下方に延びる下方傾斜部11bと、該下方傾斜部11bの下端から略水平に後方に延びる水平部(後方延長部)11cとから構成されている。
【0016】
上記サブフレーム12の上端部を圧潰してフランジ状に形成された前端部12aは、上記ヘッドガセット10の側板10aの外面の上記補強プレート23に対向する部分に溶接接合されている。該サブフレーム12はヘッドガセット10の側板10aから後方斜め下方に延びる傾斜部12bと、該傾斜部12bの下端から略水平後方に延びる水平部(後方延長部)12cとから構成されている。
【0017】
上記左,右のサブフレーム12の傾斜部12b,12bはメインフレーム11の傾斜部11bより急傾斜になっており、該左,右2本の傾斜部12b,12bの間でかつ中央1本のメインフレーム11の下方傾斜部11bの前側の空間にラジエータ24が配設されている。なお24aは送風ファンであり、これは側面から見て上記傾斜部12bと11bとで形成される三角形空間に位置している。
【0018】
また上記左,右のサイドガセット13,13は、横断面略コ字形でかつ側面視大略L字形にプレス成形された外側板13a,内側板13bを突き合わせて溶接接合したいわゆるモノコック状の角筒体である。該サイドガセット13の前端開口13cに上記サブフレーム12の後端部12dが嵌合挿入されて溶接接続されており、また後端開口13dに上記サイドフレーム14の前端部14aが嵌合挿入されて溶接接続されている。
【0019】
上記左,右のサイドフレーム14は、上記サイドガセット13の後端開口13dから後方斜め上方に傾斜して延びる立ち上がり部(上方傾斜部)14bと、該立ち上がり部14bの上端から略水平に後方に延びる水平部14cとから構成されている。
【0020】
上記左,右のサイドガセット13,13同士はクロスパイプ15により溶接接合されている。このクロスパイプ15は円形の横断面形状を有し、その左,右端部15bはサイドガセット13の内側板13aの接続用穴内に嵌合挿入されて溶接固定されており、さらに該サイドガセット13とクロスパイプ15の左,右端部15bとは補強部材15aを介して溶接固定されている。なお、25はサイドスタンドを取り付けるためのブラケットである。
【0021】
また上記左,右のサブフレーム12の水平部12c,12cと中央のメインフレーム11の水平部11cとはその下面が略一致するように高さが設定されており、メインフレーム11の後端部11dは上記クロスパイプ15の大きさに合わせて成形され、該クロスパイプ15の車幅方向中央部に溶接接合されている。
【0022】
また上記左,右のサイドガセット13,13の下面及び上記クロスパイプ15の左,右端部15bの下面に渡るように左,右のエンジン懸架用ブラケット16,16が溶接固定されている。該エンジン懸架用ブラケット16,16により上記エンジンユニット7のピボット部7aが枢支されている。
【0023】
上記1本のメインフレーム11の下方傾斜部11bと上記左,右2本のサイドフレーム14,14の左,右の立ち上がり部14b,14bとはテンションパイプ17,17により互いに溶接接合されている。該両テンションパイプ17,17の前端部17a,17aは共通の前側ブラケット18に溶接固定され、該前側ブラケット18が上記メインフレーム11の傾斜部11bの途中部分に溶接固定されている。また上記左,右のテンションパイプ17,17の後端部17b,17bはそれぞれ後側ブラケット19,19に溶接固定され、該後側ブラケット19が上記立ち上がり部14bに溶接固定されている。
【0024】
そして上記左,右のテンションパイプ17,17には、門型で板金製のシートステー20が架け渡されて溶接接合されている。このシートステー20の車幅方向中央部の上面にはヒンジブラケット21が設けられており、該ヒンジブラケット21により上記シート9の前端に固定されたヒンジを軸支している。
【0025】
上記左,右のサブフレーム12の傾斜部12b及び水平部12cにはフートブラケット12eが溶接固着されており、該フートブラケット12eにより上記車体カバー22のフートボード部22bが支持されている。
【0026】
また上記左,右のサイドフレーム14,14の水平部14c,14cの前,後方向略中央部分同士はクロスパイプ29により溶接接合されており、さらに水平部14c,14cの後端部同士は、上記シート9の後端部を支持するとともに、ロック機構が配設された門型のシート受けブラケット30により溶接接合されている。
【0027】
さらにまた上記左,右の水平部14c,14cの後部にはスタンディングハンドル31が該水平部14cと平面視で略並行に配設されている。このスタンディングハンドル31を、上記車体カバー22のシート下部を覆うサイドカバー部22aに形成された穴から手を挿入して把持し上方に引き上げて車両をメインスタンドで起立させるようになっている。
【0028】
上記左,右のサイドフレーム14,14の立ち上がり部14b,14b間から水平部14c,14c間にかけて燃料タンク26が搭載され、該水平部14c,14c間の後部にヘルメットH等を収納可能の収納ボックス27が搭載されており、さらに該収納ボックス27と上記燃料タンク26との間にバッテリ28が搭載されている。上記収納ボックス27は、上記スタンディングハンドル31の車体取り付けフランジ部31aに形成されたボルト穴31b,上記シート受けブラケット30の上辺部30aに形成されたボルト穴30bを利用して車体フレームに固定されている。
【0029】
本実施形態の車体フレーム2では、ヘッドパイプ3に板金製でモノコック状のヘッドガセット10の前端開口10dを溶接固着し、該ヘッドガセット10の後端開口10eにメインフレームの前端部11aを溶接固着し、該ヘッドガセット10の左,右側板10a,10bに左,右のサブフレーム12,12の前端12a,12aを溶接固着したので、一般に厚肉で大重量のメインフレーム11が略ヘッドガセット10の長さ分だけ短くて済み、それだけ軽量化を図ることができる。
【0030】
また、上記ヘッドガセット10は横断面で見て縦長に、つまりヘッドパイプ3とメインフレーム11の接続部に作用する曲げモーメントの方向(上下方向)に対して縦長となっており、該方向の断面係数が大きくなり、そのため車体フレーム2において最も大きな曲げモーメントが作用するヘッドパイプとメインフレームとの接続部に必要な剛性を容易確実に確保できる。また本実施形態では、ヘッドガセット10内に補強プレート23を配設し溶接固定したので、左,右側板10a,10aが内方に変形することがなく、この点からも剛性を確保できる。
【0031】
また本実施形態では、メインフレーム11及びサブフレーム12をヘッドガセット10を介してヘッドパイプ3に接合したので、メインフレーム及びサブフレームをヘッドパイプに直接接合するようにした従来構造に比較して、メインフレーム,サブフレームの傾斜角度の自由度が高い。即ち、従来のヘッドパイプにメインフレーム等を直接接合する構造の場合には、傾斜角度を急にするほどヘッドパイプとの接合が困難となったり、あるいはラジエータ等との干渉の問題が発生し易い。本実施形態の場合には、メインフレームの傾斜角度をより急にすることもヘッドガセットの形状を適宜設定することにより支障なく実現できる。
【0032】
またメインフレーム11及びサブフレーム12をヘッドガセット10を介してヘッドパイプ3に接合するようにしたので、必要な溶接長さを短縮でき、生産性が向上する。即ち、メインフレーム及びサブフレームをヘッドパイプに直接接合するようにした場合は、剛性確保の観点から補強プレートが必須であり、結果的に必要な溶接長さが長くなる。
【0033】
さらにまた本実施形態では、左,右のサブフレーム12の後端部12dにサイドガセット13を介して左,右のサイドフレーム14の前端14aを溶接接合したので、サイドガセット13の前,後端開口13b,13cの径を適宜設定することにより径の異なるサブフレーム12とサイドフレーム14を容易に溶接接合できる。
【0034】
また、左,右のサイドガセット13,13同士をクロスパイプ15を介して溶接接合し、該クロスパイプ15にメインフレーム11の後端11dを溶接接合し、該クロスパイプ15とサイドガセット13との接続部にエンジン懸架用ブラケット を溶接接合したので、エンジンユニット7の支持剛性を高めることができる。
【0035】
メインフレーム11の下方傾斜部11bの途中と左,右のサイドフレーム14,14の立ち上がり部14b,14bの途中とを左,右一対のテンションパイプ17,17で溶接接合し、さらに該左,右のテンションパイプ17,17をシートステー20で接合したので、車体フレーム2全体の剛性を大幅に高めることが可能となり、車体の捩じれ感を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の車体フレームを備えたスクータ型自動二輪車の左側面図である。
【図2】上記車体フレームの側面左側面図である。
【図3】上記車体フレームの平面図である。
【図4】上記車体フレームのヘッドガセット部分の左側面図である。
【図5】上記車体フレームのヘッドガセット部分の断面背面図(図4のV-V 線断面図) である。
【図6】上記車体フレームのサイドガセット部分の左側面図である。
【図7】上記車体フレームのサイドガセット,クロスパイプ部分の断面背面図(図6のVII-VII 線断面図)である。
【図8】上記車体フレームのメイン,サブ,サイドフレーム及びクロスパイプの接続部の平面図である。
【符号の説明】
1 スクータ型自動二輪車
2 車体フレーム
3 ヘッドパイプ
6 操向ハンドル
9 シート
11 メインフレーム
11b メインフレームの下方傾斜部
12 サブフレーム
14b 立ち上がり部(上方傾斜部)
17 テンションパイプ
20 シートステー
Claims (2)
- 操向ハンドルとシートとの間に低床の足載部を備えたスクータ型自動二輪車の車体フレームにおいて、上記車体フレームの、メインフレームを後方斜め下方に傾斜するように延長し、さらに略水平後方に延長し、左,右のサブフレームを後方斜め下方に延長し、さらに略水平後方に延長し、該左,右のサブフレームの後方延長端にサイドガセットを介して左,右のサイドフレームを接続し、該サイドフレームを後方斜め上方に傾斜するように延長し、上記メインフレームの下方傾斜部を、上記左右のサブフレームの下方傾斜部より緩い傾斜にするとともに、該メインフレームの下方傾斜部と上記サイドフレームの上方傾斜部とを左,右一対のテンションパイプで接続し、該テンションパイプの上記メインフレームとの接続部は、車両側方から見たとき上記サブフレームの下方傾斜部より後方に位置しており、さらに上記テンションバイプは車両側方から見たとき及び上方から見たときの両方において直線状をなしていることを特徴とするスクータ型自動二輪車の車体フレーム。
- 請求項1において、上記左,右のテンションパイプ同士を該両パイプに架け渡すように配置されたシートステーにより接続し、該シートステーにより上記シートの前端部を軸支したことを特徴としている。
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