JP4128311B2 - 電気絶縁被覆用組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品用絶縁塗料、特にコンデンサー類、フィルター類あるいはハイブリッドICなど電気絶縁用保護皮膜を形成するための外装塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子部品は湿気からの保護及び機械的保護を目的に絶縁被覆塗料により外装を施している。この絶縁塗料の特性は直接電子部品の信頼性に大きな影響を与える。一方、電子部品の被覆方法には溶剤系デイップコート法、注型法、粉体外装法、成形法などがある。この中で溶剤系デイップコート法は、熱硬化性樹脂、充填剤、添加剤等よりなる組成物に溶剤を配合してペースト状塗料に電子部品を浸漬被覆し、風乾操作により溶剤を部分蒸発させた後、加熱硬化処理して電子部品を被覆する方法である。
【0003】
溶剤系のデイップコート法に使用する材料は通常80%以上と多量に充填剤を含んだものであり、少量の樹脂が溶剤により溶解して多量のフィラーが均一にコーテイングされることにより、硬化収縮が小さく、その硬化塗膜の熱膨張率がセラミック並に小さく、内部ストレスも小さいので耐熱衝撃性に優れている。特にセラミックコンデンサー類、フィルター類、バリスター類、大型の基板を用いたハイブリッドICには好適な塗料である。
【0004】
この溶剤系ディップコート材料は上述のように絶縁被覆塗料として好ましい特性を有しているが、充填剤を多量に含んでいることよりデイップ作業時に充填剤が沈降して塗料組成が不均一となる傾向は避けられない。そのため充填剤の沈降が遅く、かつ沈降物が軟らかくソフトケーキ状であり、攪拌により容易に元のペーストに戻ることが要求される。これは有機ベントナイトなどの添加剤の配合により解決することができるが、硬化塗膜が緻密化されてワックス含浸性が著しく阻害される。また、沈降を安定させる揺変剤は微粉であるため硬化収縮を大きくし、塗膜クラック発生等の硬化物特性に悪影響を与える。そのため、配合量は最少に厳密に管理する必要がある。デイップコート材料は硬化塗膜が緻密性のある要求がある一方、ハイブリッドICの一部やフィルター用途には緻密でなくワックス含浸性の良く、上記した様に充填剤の沈降が遅く、かつ沈降物がソフトケーキ状であり、デイップ作業時タレの少なく、更に硬化収縮の小さいソリの発生のない材料の開発が望まれている。
【0005】
なお,溶剤系ディップコート法に用いる被覆材料としては、粉末状で供給し、使用時にアルコール類やケトン類などの低沸点の溶剤を加えてペースト化するものと、あらかじめ溶剤を加えてペースト状にし、供給しているものとの2種がある。前者の粉末状で供給される材料は後者のペースト状のものに比し、使用前に粉末に対し所定量の溶剤を配合して攪拌機で混合、熟成などの予備作業を要するので使用勝手は悪いものの、輸送、貯蔵時の危険物取り扱い処置が回避されるだけでなく、材料の保存性が良いのが特徴であり、それぞれ使い分けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上記した諸問題を改良するために研究した結果、熱硬化性樹脂、充填剤、添加剤等からなる溶剤系ディップコート材料において、熱硬化性樹脂の主成分として所定量のレゾール型フェノール樹脂(以下、レゾール樹脂という)とノボラック型フェノール樹脂(以下、ノボラック樹脂という)を併用使用することにより、充填剤の沈降性、沈降物のソフトケーキ化及びタレ防止などの諸課題が解決でき、かつ、ワックス含浸性(フィルターの場合はワックス抜け性)が良く、ソリの少ない硬化塗膜が得られることを知見した。ノボラック樹脂は通常硬化にヘキサメチレンテトラミンを必要とするが、本願はノボラック樹脂とレゾール樹脂を併用使用することで緩やかな硬化を図るものである。本発明の目的とするところはワックス含浸性がよく、硬化時収縮に伴うソリの発生が少なく、かつ、デイップコート材料の電気特性、作業性にすぐれた取り扱いやすい塗料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱硬化性樹脂及び充填剤を必須成分とする電気絶縁被覆用組成物であって、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を含み、熱硬化性樹脂分が組成物全体の5〜20重量%であることを特徴とする電気絶縁被覆用組成物に関するものである。
【0008】
本発明は、好ましくは熱硬化性樹脂はレゾール樹脂およびノボラック樹脂からなる。高速液体クロマトグラフ型HLCでスチレンカラムを用いて測定した数平均分子量は、好ましくはレゾール樹脂では300〜500、ノボラック樹脂では500〜1200である。これらの好ましい配合割合はレゾール樹脂10〜50重量%、ノボラック樹脂50〜90%である。この配合割合においては硬化性が良好であり、かつ反りが少なく好ましい。
【0009】
本発明において使用するレゾール樹脂とはフェノール類1モルに対し通常ホルムアルデヒドを1〜3モル、好ましくは1.1〜1.8モルである。触媒としては、通常含窒素化合物触媒、あるいは含窒素化合物とアルカリ土類金属触媒を併用使用して、常法により縮合脱水させた樹脂である。ここで、フェノール類とはフェノール、クレゾール、レゾルシン、パラターシャリーブチルフェノールなどのアルキルフェノールである。ホルムアルデヒドは通常ホルマリン水溶液が使用されるが、この他にパラホルムアルデヒドでもよい。含窒素化合物とは、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アニリン、ヘキサメチレンテトラミンなどである。アルカリ土類金属とはカルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物である。
【0010】
本発明において使用するノボラック樹脂とは、前記レゾール樹脂で使用されるフェノール類とホルムアルデヒドを用い、触媒としてシュウ酸などの有機酸及び硫酸などの無機酸、酢酸亜鉛などの有機酸塩の一種又はそれ以上を使用して、常法により縮合脱水させた樹脂である。本発明の熱硬化性樹脂成分としてノボラック樹脂を配合すると沈降性、タレ性、ソリを向上させる効果がある。
【0011】
溶剤を除く組成物中、熱硬化性樹脂成分の添加量は5〜20重量%が好ましい。樹脂が5重量%未満では所望の強度を有する絶縁被膜が得られにくく、20重量%を超える場合は硬化収縮が大きくなり塗膜へのクラック等の発生の原因となる。
【0012】
本発明において使用する充填剤は、溶融シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機充填剤である。これら充填剤の粒径は5〜40μmであり、好ましくは5〜30μmである。平均粒径5μm未満の充填剤の使用はワックス含浸性が低下すると共に塗膜クラックが発生の傾向があり、強度が低下する。40μmを超えると塗膜の平滑性が低下する。また、強度、タレ、ソリ等の特性面から見て溶融シリカ又は溶融シリカと炭酸カルシウムの併用が好ましい。この溶融シリカと炭酸カルシウムの併用割合は溶融シリカ100重量部に対し、炭酸カルシウム50重量部以下である。炭酸カルシウムの配合量が増すと強度の低下傾向があるので3〜30重量部であることがより好ましい。
【0013】
本発明の態様の一つとしてペースト化に使用する溶剤は、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、エチルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、その他、エステル系、エーテル系、エーテルアルコール系、エーテルエステル系などの溶剤1種または2種以上使用する。
本発明の組成物は輸送上等の問題を解決のため粉末組成物として製造し、使用前に溶剤でペースト状にすることも一つの態様として採用できる。添加剤については密着性をより向上させるためにシラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤を充填剤に対し0.1〜1.5重量%配合することが好ましい。他の添加剤としては微粉末シリカなどの揺変剤の少量添加およびイミダゾール化合物や芳香族アミン化合物などの硬化促進剤、消泡剤、顔料、染料また少量のメラミン樹脂、エポキシ樹脂など適宜配合することができる。
【0014】
【実施例】
以下本発明を実施例および比較例により説明する。なお、ここに記載している「部」および「%」はすべて「重量部」および「重量%」を示す。
【0015】
(製造例1)
フェノール94部、37%ホルマリン146部、触媒として28%アンモニア水15部と水酸化カルシウム0.5部を仕込み、温度100℃で40分間反応を行い、次いで真空下で脱水を行なって融点67℃の固形レゾール樹脂(以下、固形レゾールという)を得た。
【0016】
(製造例2)
フェノール94部、37%ホルマリン60部、触媒としてシュウ酸1部を仕込み温度100℃で3時間反応を行い、次いで、真空下で脱水を行って融点70℃のノボラック樹脂を得た。
【0017】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
表1に示す配合割合で粉砕混合して粉末組成物を得た。次いで、粉末組成物100部に対し、アセトン対メタノール=3対1の混合溶剤25部とエポキシシランカップリング剤0.5部を配合して2時間混合してペーストを作り、更に上記混合溶剤で希釈して25℃における粘度を15ポイズに調整した。調整したペーストを用いて、沈降性、沈降物の状況、タレ性、ワックス含浸性、ソリ、曲げ強度を測定した。評価結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 0004128311
【0018】
各特性の評価方法は次の通りである。
1.沈降性:100mlのメスシリンダーに100mlのペースト(15ポイズ)を入れ、静置して上澄液の分離開始時間(Hr)、5時間後の分離量(ml)からペーストの沈降安定性を評価した。
2.沈降物の硬さ:ペースト調整後常温で1ヶ月間放置したペースト中にガラス棒を差し込み、ペースト沈降物の硬さを観察した。
3.タレ性:ペースト調整後常温で1ヶ月間放置したペーストについて、スライドグラスを縦長方向に半分だけ浸漬し、ゆっくり引き上げて上下を反転させ、タレの度合いを目視により観察した。タレのないものを○、あるものを×と表示した。
4.ワックス含浸性:セラミック基板上にペーストを約10mmΦにドロップした後、風乾して150℃60分硬化した。この試験片を115℃の赤色染料で着色したマイクロクリスタリンワックス液中に30分間浸漬した後、試験片を取り出し、切断して、ワックスの含浸度合(含浸率%)を求め、塗膜のワックス含浸性を把握した。
5.ソリ:セラミック基板(巾18mm×長さ200mm×厚さ1mm)にペーストを1.7mm厚に片面に塗装し、風乾して150℃60分で硬化した。硬化後の試験片のソリ量を測定した。
6.曲げ強度:調整したペーストを型に流し込んだ後、風乾して150℃ 60分焼成して巾30mm×長さ100mm×厚さ1mmの試験片を作成し、この試験片を2mm/分の荷重速度で曲げ強度を測定した。
【0019】
【発明の効果】
本発明の電気絶縁被覆用組成物は、溶剤を配合した時充填剤を多量に含んだ溶剤系のデイップコート材料として耐熱衝撃性に優れていることはもとより、沈降安定性、タレ性などのデイップ時の作業性に優れ、ペーストの取り扱いが容易である。更に加熱硬化時の収縮が小さく、ソリの発生が非常に少ない材料である。また、硬化塗膜のワックス含浸性およびフィルターの場合のワックス抜け性も良く、含浸性が要求される用途には諸特性を向上することができる。

Claims (2)

  1. 熱硬化性樹脂及び充填剤を必須成分とする電気絶縁被覆用組成物であって、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を含み、熱硬化性樹脂分が組成物全体の5〜20重量%であり、熱硬化性樹脂が、レゾール型フェノール樹脂10〜50重量%、ノボラック型フェノール樹脂50〜90重量%からなることを特徴とする電気絶縁被覆用組成物。
  2. 充填剤が溶融シリカと炭酸カルシウムからなり、溶融シリカ100重量部に対し炭酸カルシウム3〜50重量部である請求項1記載の組成物。
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