JP4127789B2 - 相変化光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ビームの照射により結晶質と非晶質との間で可逆的な相変化を起こさせて情報を記録する相変化光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
(相変化光記録媒体の原理)
相変化光記録媒体は、光ビームの照射により結晶質と非晶質との間で可逆的な相変化を起こす相変化光記録層を用い、以下のような原理で動作する。記録時には光ビームを照射した領域を融点以上に加熱して溶融した後、急激に冷却してその領域の原子配列を非晶質にする。また、消去時には、光ビームを照射した領域を融点以下・結晶化温度以上の温度領域に一定時間以上保持する。このとき、初期状態が結晶質の場合には結晶質のままであり、初期状態が非晶質の場合には結晶化する。読み出し時には、非晶質領域からの反射光強度と、結晶質領域からの反射光強度が異なることを利用して、反射光の強弱を電気信号の強弱に変換し、さらにA/D変換を行って情報を読み出す。
【0003】
なお、結晶質−非晶質間の相変化のほか、マルテンサイト相のような準安定結晶相と安定結晶相、または複数の準安定結晶相間の遷移を利用して記録・読み出しを行うことも可能である。
【0004】
(高密度化の手法)
ここで、一枚の記録媒体に記録できる情報の量すなわち記録容量を増すためには、以下の二通りの方法で記録密度を向上させることが考えられる。
【0005】
記録密度向上の一つの方法は、トラック方向の記録マークのピッチを微細化する方法である。しかし、微細化の程度が進むと記録マークのピッチが再生ビームの大きさよりも小さくなる領域に至り、再生ビームスポット内に二つの記録マークが一時的に含まれる場合が生じる。記録マークが互いに十分離れている場合には、再生信号が大きく変調され、振幅の大きい信号が得られる。しかし、記録マークが互いに近接している場合には、振幅の小さい信号となり、デジタルデータへの変換の際にエラーを生じやすい。
【0006】
もう一つの記録密度向上の方法は、トラックピッチを狭小化することである。この方法は、前記のマークピッチ微細化による信号強度低減の影響を大きく受けることなく、記録密度を上げることができる。しかし、この方法の問題点は、トラックピッチが光ビームの大きさにくらべて同程度か小さい領域においては、あるトラックの情報が隣接したトラックに書き込みまたは消去動作を行っている際に劣化してしまう、いわゆるクロスイレースが発生することである。
【0007】
クロスイレースの原因は、隣接するトラック上のレーザービームの外縁部によって記録マークが直接照射を受けてしまうことと、記録時の熱流が隣接トラックに流れ込み、隣接トラック上のマーク温度が上昇して形状が劣化することにある。これらを解決することが相変化光記録媒体の高密度化に必要である。
【0008】
(高速記録の手法)
高速記録は相変化光記録に対するもうひとつの要求である。例えば、映像を録画する場合、実際の視聴時間よりも短時間で記録ができるようになれば、配布媒体のダビング時や、放送録画中に時間を戻って前の映像を視聴するいわゆるタイムシフト機能の実現が容易となる。ここで相変化光記録において高速記録をさまたげる一つの要因は、オーバーライト時に比較的パワーの低い消去レベルのレーザービームによって結晶化を行う際に、情報が消え残ってしまう問題、すなわち消去率不足の問題である。これは、記録マークがレーザースポット内を高速に通過するため、結晶化可能な温度領域に十分に長い時間保たれず、情報が消え残ってしまうためである。
【0009】
特開平11−213446号公報には、相変化光記録層に接してGeN系の界面層に設け、結晶化を促進して消去速度を高める工夫が開示されている。しかし、本発明者らの実験によれば、GeN系の界面層を有する相変化光記録媒体では、記録時に問題が生じることがわかった。この問題は、記録時の初期溶融領域の周縁部が再結晶化し、その内側に非晶質の記録マークが形成されることに基づく。すなわち、必要な大きさの記録マークを形成するそれ以上の範囲を溶融しなければならないため、クロスイレースを助長する結果となり、高密度記録の観点から逆効果である。これに対して、クロスイレースの点で許容できる範囲のレーザーパワーで記録すると、形成される記録マークの幅が細くなり、信号対ノイズ比(CNR)が低下するという問題がある。
【0010】
したがって、消去時の結晶化速度を速めて消去率不足の問題を解消するとともに、記録時の溶融部再結晶化を抑制できる新しい界面層材料が望まれていた。
【0011】
(二層媒体による大容量化)
もうひとつの大容量化の手法は、それぞれ相変化光記録層を含む複数の情報層を重ね合わせる方法である。この方法は、たとえば特開2000−322770号公報に開示されている。光入射側に近い方に設ける第1情報層は、遠い方に設ける第2情報層にアクセスする際に、必要以上に光を減衰させないため、おおよそ50%以上の透過率を確保する必要がある。このためには、記録層の厚さを5〜8nm、反射層の厚さを5〜10nmときわめて薄くする必要がある。記録層を薄くしたために、結晶化に必要な保持時間が長くなり、通常の記録速度では消え残りが発生する。
【0012】
そのための対策には、GeSbTe記録層の一部をSnで置換する方法が有効であることが、第12回相変化記録研究会シンポジウム予稿集(Proceedings of PCOS2000)pp.36−41に開示されている。同様に、GeSbTe記録層の一部をBi,In,Sn,Pbで置換することが有効であることが、特開2001−232941号公報に開示されている。
【0013】
一般に、記録層の厚さが15nmを超えるような場合には、反射層に近く高速に冷却される記録層上側と記録層下側で温度差が生じるため、記録層上側で結晶核が生じ、それが核成長することにより、記録層全体が結晶化すると考えられている。しかし、記録層の膜厚が薄いときには、記録層上下で十分な温度差が生じないため、消去率を確保するためには、記録層材料を工夫しただけでは不十分で、記録層との界面に結晶化促進効果を示す層を配置する必要がある。前記相変化光記録研究会シンポジウム予稿集によると、界面層として窒化ゲルマニウムが有効であるとされている。しかし、本発明者らの検討の結果、前記の材料からなる5〜8nmの極薄の記録層とGeNなどの界面層との組み合わせにおいては、再生信号特性が劣化し、デジタルデータへの変換の際にエラーを頻繁に発生させることが判明した。特に、GeNからなる界面層の厚さを約5nmより薄くした場合に特性の劣化が著しい。
【0014】
一方、反射層は記録光を吸収し昇温した記録層を冷却する。しかし、半透明情報層では、この反射層を薄くする必要があるために、記録時の冷却機能が十分でなくなり、再生信号特性が劣化する。そのための対策として、反射層の上部に熱拡散層を設ける方法が、特開2000−222777号公報に開示されている。実際に、文献Proceedings of ISOM/ODS 2002 pp.234−236によれば、熱伝導率が非常に大きなAlNからなる厚さ約100nmの熱拡散層を設けた場合、信号特性が向上することが報じられている。しかし、本発明者らの検討の結果、AlNのように非常に大きな熱伝導率を有する材料を熱拡散層に用いた場合には、記録感度が劣化することが判明した。
【0015】
以上のように、複数の情報層を有する相変化光記録媒体のうち第1情報層(半透明情報層)では記録層および反射層の両方を通常の記録媒体よりも薄くする必要があるため、クロスイレースを小さく保ちながら高いCNRと消去率を示す界面層を開発するとともに、熱拡散層まで含めた熱特性の最適化が望まれていた。
【0016】
【特許文献1】
特開平11−213446号公報
【0017】
【特許文献2】
特開2000−322770号公報
【0018】
【非特許文献1】
第12回相変化記録研究会シンポジウム予稿集(Proceedings of PCOS2000)pp.36−41
【0019】
【特許文献3】
特開2001−232941号公報
【0020】
【特許文献4】
特開2000−222777号公報
【0021】
【非特許文献2】
Proceedings of ISOM/ODS 2002 pp.234−236
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クロスイレースを低く保ちながら、高いCNRと消去率を示す、複数の情報層を有する相変化光記録媒体を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様に係る相変化光記録媒体は、基板上に形成された、構成元素の一部がBiおよび/またはSnで置換されており、下記一般式
(Ge (1−w) Sn w )x(Sb (1−v) Bi v )yTez
(ここで、x+y+z=100,0≦w<0.5、0≦v<0.7)
で表される組成を有する相変化光記録層、前記相変化光記録層の少なくとも一方の面に接して形成された酸化ハフニウムおよび酸化セリウムからなる群より選択される少なくとも1種の材料を含む界面層、前記界面層上に形成された半透明反射層、および前記半透明反射層上に形成された熱拡散層を含む半透明の第1情報層と、前記第1情報層上にUV硬化樹脂層を介して形成された第2情報層とを有し、前記熱拡散層の熱伝導率は前記界面層の熱伝導率の0.7倍以上で100W/mK以下であり、かつ前記熱拡散層の屈折率と前記UV硬化樹脂の屈折率との差は0.5以下であることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体を詳しく説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体の層構成の一例を示す。第1の基板10上に、第1誘電体層11、下部界面層12、相変化光記録層13、上部界面層14、第2誘電体層15、半透明反射層16、熱拡散層17が順次成膜され、第1情報層(半透明情報層)100が形成されている。一方、第2の基板20上に、反射層24、誘電体層23、相変化光記録層22、誘電体層21が順次成膜され、第2情報層200が形成されている。第1の基板10と第2の基板20は、互いの成膜面が内側になるように対向されてUV硬化樹脂18により貼り合わされている。光は第1の基板10を通して入射される。
【0026】
本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体は、相変化光記録膜の少なくとも一方の面に接して形成された酸化ハフニウムまたは酸化セリウムを含有する界面膜を有する。なお、相変化光記録膜と界面膜との間に酸化ハフニウムまたは酸化セリウムを含まない膜を意図的に設けない限りは、相変化光記録膜に「接して形成された」という表現が適用される。したがって、たとえばオージェ分析などによって、相変化光記録膜の表面において成膜中に自然に形成された極薄酸化膜(厚さ1nm以下)が検出されたような場合でも、界面膜が相変化光記録膜に接して形成されているとみなすものとする。
【0027】
本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体では、2つの情報層が積層されているため、光入射側の第1情報層は記録光に対して半透明にする。ここで、第1情報層が「半透明」ということは、記録光に対する透過率が40〜70%であることを意味する。第1情報層(半透明情報層)では、記録層の膜厚を5〜8nm、反射層の膜厚を5〜10nmとすることが好ましい。
【0028】
なお、本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体の構成は、図1の構成に限定されない。たとえば、第1の基板10と下部界面層12の間に複数の誘電体層を設けてもよい。第1誘電体層11や第2誘電体層15を省略し、相変化光記録層13と反射層16との間に上部界面層14のみを設けてもよい。反射層16を複数の層で構成してもよい。
【0029】
また、基板の厚さや成膜の順番に制限をもたらすものではなく、成膜する基板を介して光を入射する形式の媒体にも、成膜した基板に別な透明シートを接着しその透明シートを介して光を入射する形式の媒体にも同様に適用できる。例えば、0.85程度の高NAの対物レンズを用い、光入射側の透明シート厚を0.1mm程度に薄く設計したタイプの相変化光記録媒体を作製してもよい。
【0030】
即ち、この透明シートを用いる形態に係る相変化光記録媒体では、例えば、1.1mm厚程度の基板から順に、反射層、誘電体層、相変化光記録層、誘電体層を順次形成する。ひきつづいて紫外線硬化樹脂の薄い層(10nm〜50nmが好適)をスピンコートし、それにグルーブ形成用のスタンパーを押し付けた状態で樹脂を硬化し、スタンパーをはがす。引き続き、熱拡散層、半透明反射層、誘電体層、界面層、相変化光記録層、界面層、誘電体層を順次形成する。さらに0.1mm程度の薄い透明シートを接着するか、同じく0.1mm程度の厚さに樹脂の膜を形成する。このようにして0.85程度の高いNAに対応した二層媒体を形成できる。
【0031】
なお、以上の本発明の各態様では、界面層を相変化光記録層をはさんで両側に設けたが、どちらかを省略しても本発明の主旨をはずれないし、また、必要に応じ誘電体層を省略して界面層のみとすることもできる。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体に用いられる材料について説明する。
【0033】
界面層の材料としては、酸化ハフニウムおよび酸化セリウムからなる群より選択される少なくとも1種の材料が用いられる。
【0034】
相変化光記録層の材料としては、たとえばGeSbTeを用いることが好ましい。特に、(GeTe)x(Sb2Te3)yと表記できるいわゆる擬二元系の近傍の組成を有するGeSbTe相変化光記録層に対して本発明に係る界面層を用いると、顕著な効果が得られる。
【0035】
より具体的には、相変化光記録膜として、下記一般式
GexSbyTez(ここで、x+y+z=100)
で表したとき、GeSbTe三元相図上で、x=55,z=45と、x=45,z=55と、x=20,y=20,z=60と、x=20,y=28,z=52とで囲まれる範囲の組成を有するものを用いることが好ましい。
【0036】
また、相変化光記録層として、上記組成範囲のGeSbTeの一部をBiおよび/またはSnで置換した、下記一般式
(Ge (1−w) Sn w )x(Sb (1−v) Bi v )yTez
(ここで、x+y+z=100、0≦w<0.5、0≦v<0.7)
で表される組成を有するものを用いてもよい。ここで、Geに対するSnの置換割合wが0.5以上になると、結晶化速度が速すぎて溶融後の再結晶化が顕著になり、非晶質マークが安定に形成できない。Sbに対するBiの置換割合vが0.7以上になると、やはり結晶化速度が速すぎて溶融後の再結晶化が顕著になり、非晶質マークが安定に形成できない。特に、前記表記でx=30.8、y=15.4、z=53.8とx=40、y=8、z=52とを結ぶ線分上の組成がよく、w=0かつ0.25≦v≦0.5が好ましい。
【0037】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、GeSbTeにSn、Bi以外の材料、たとえばCo、V、Agなどを微量添加した記録膜材料を用いることもできる。
【0038】
第1および第2誘電体層の材料としては、ZnS−SiO2、SiO2、SiO、Si−O−N、Si−N、Al2O3、Al−O−N、TiO2、Ta−N、Ta2O5、Ta−O−N、Zn−O、ZnS、ZrO2、Zr−O−N、Zr−N、Cr−O、Mo−O、W−O、V−O、Nb−O、Ta−O、In−O、Cu−O、Sn−O、In−Sn−Oなど、実質的に透明で適度な熱伝導率を持つ誘電体材料またはそれらの混合物を用いることができる。
【0039】
熱拡散層の材料としては、Al2O3、SiO2、SiO、Si−O−N、Si−N、Al−O−N、TiO2、Ta−N、Ta2O5、Ta−O−N、Zn−O、ZnS、ZrO2、Zr−O−N、Zr−N、Cr−O、Mo−O、W−O、V−O、Nb−O、Ta−O、In−O、Cu−O、Sn−O、In−Sn−Oなど、実質的に透明で適度な熱伝導率を持つ誘電体材料またはそれらの混合物を用いることができる。
【0040】
本発明者らは、相変化光記録層の厚さを約6nmに設定し、相変化光記録層の結晶化を促進する効果が知られている窒化ゲルマニウム(GeN)、酸化クロム(Cr−O)、炭化珪素(Si−C)、窒化珪素(Si−N)などの材料ならびに酸化ハフニウムおよび酸化セリウムを用いて、5nm以下の膜厚を有する界面層を形成した相変化光記録媒体について、記録再生実験を行った。
【0041】
その結果、結晶化促進効果が高い材料からなる界面層を使うとCNRが低下し、高いCNRが得られる材料を使うと結晶化促進効果が乏しいというトレードオフがあることを見出した。しかし、界面層材料に酸化ハフニウムまたは酸化セリウムを用いた場合には、そのトレードオフの程度が特に小さく、高いCNRと高い結晶化促進効果を両立できることが判明した。
【0042】
界面層として酸化ハフニウムまたは酸化セリウムを用いた場合に特に優れた特性を示す機構は明らかではないが、おそらくハフニウムまたはセリウムと酸素との結合が他の金属と酸素との結合よりも強いことによるものと考えられる。これまで、界面層に結合が強く硬度の高い物質を用いた場合、厚い記録層を有する媒体では、溶融した記録層が収縮するため、記録層と界面層との部分的な乖離が生じうると考えられていた。しかし、半透明情報層を有する媒体の場合には記録層の膜厚が8nm以下と薄く、溶融時の記録層の収縮が小さく乖離が生じにくいため、界面層に硬度の高い酸化ハフニウムや酸化セリウムを適用しても、良好な特性を示すものと考えられる。
【0043】
界面層には、良好な結晶化促進機能を保ったまま、膜の屈折率および/または熱伝導特性を調整するために、適宜他の材料を混合してもよい。相変化光記録媒体では、記録層が光を吸収することによって発熱し、その熱が上下の層を介して伝熱することにより冷却される。記録層が非晶質化するか結晶化するかは、照射された記録光のパワー、線速および照射時間に依存する発熱と、記録層上下の層の熱伝導特性と、記録層の結晶化速度との兼ね合いによって決まる。したがって、所望の線速において、良好な記録マークを形成し、かつ十分な消去特性を得るには、記録層上下の層の熱伝導率を微妙に制御することが重要になる。本発明の実施形態においては、酸化ハフニウムまたは酸化セリウムに対して混合する材料の種類と混合比によって、界面層の屈折率および熱伝導特性を調整することができるので、媒体の層構成の設計が格段に容易になる。また、従来必須と思われていたZnS:SiO2誘電体層を界面層材料で置き換えることもできる。この場合、層の積層数を減らすることができ、製造性に優れた記録媒体を提供できる。
【0044】
界面層である酸化ハフニウムまたは酸化セリウムに対して混合することができる材料としては、AlN、Al2O3、SiO2、SiO、Si−O−N、Si−N、Al−O−N、Si−C、TiO2、Ta−N、Ta2O5、Ta−O−N、Zn−O、ZnS、ZrO2、Zr−O−N、Zr−N、Cr−O、Mo−O、W−O、V−O、Nb−O、Ta−O、In−O、Cu−O、Sn−O、In−Sn−Oなどが挙げられる。特に、Si−Cが酸化ハフニウムおよび酸化セリウムの強度を保つ上で好ましい。
【0045】
次に、本発明者らは、熱拡散層に種々の熱伝導率を有する材料を用いて比較検討した。その結果、熱拡散層の熱伝導率は界面層の熱伝導率の0.7倍以上、さらに熱拡散層の熱伝導率は界面層の熱伝導率より大きいことが望ましく、かつ約100W/mK以下であることが望ましいことを見いだした。これについて詳細に説明する。
【0046】
図2(a)および(b)は、半透明情報層の記録層が記録光を吸収して昇温した際の熱伝導の様子を示す模式図である。理想的には、図2(a)に示すように、記録層から反射層および熱拡散層への垂直方向の熱伝導が大きければ、隣接トラックの記録層への影響が少ないので望ましい。しかし、熱拡散層の熱伝導率が界面層の熱伝導率に比べて小さい場合には、図2(b)に示すように、記録層上下への熱伝導とは別に、界面層内での面内方向の熱伝導が顕著になる。界面層は記録層と接しているので、図2(b)のように熱伝導が起こると、隣接トラックの記録層に熱影響を与えることがある。つまり、現在のトラックに情報を記録することにより、隣接トラックの情報を消去してしまうクロスイレースが生じる。したがって、クロスイレースを生じさせないためには、熱拡散層の熱伝導率は界面層の熱伝導率より大きいことが望ましい。
【0047】
一方、熱拡散層の熱伝導率が過大になると、第1情報層(半透明情報層)の記録感度が低下する。これは、熱拡散層の熱伝導率が大きすぎると、通常の光強度で記録した場合に、光強度が大きいビーム中央は非晶質化するが、光強度がそれほど大きくないビーム周辺部は十分に溶融が起こらず結晶質のままであるためである。この場合、光ビームの全領域で非晶質化を起こさせるためには、通常の光強度よりも大きな強度で記録を行う必要がある。したがって、半透明情報層の記録感度を低下させないためには、熱拡散層の熱伝導率が過大でないことが要求され、実験の結果おおよそ100W/mK以下が適切であることが判明した。
【0048】
なお、薄膜状態とバルク状態では、同種の材料でも熱伝導率が異なることが知られている。しかし、2種の材料の熱伝導率を薄膜状態どうしまたはバルク状態どうしで比較すれば、熱伝導率の大小関係についてはおおむね状態に依存しないといえる。したがって、本明細書におけるすべての熱伝導率は、バルク状態での値を用いるものとする。
【0049】
次に、本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体を構成する各層の適切な設計条件を求めるために、媒体の光学特性を計算した。具体的には、各層の材料(屈折率、消衰係数)および膜厚を決め、全ての界面に対してエネルギー保存則に基づいて光エネルギー収支の連立方程式を立ててこれを解いた。このような計算により、多層膜全体の反射率および透過率ならびに各層の吸収率を求めることができる。この方法は、マトリックス法として公知である(例えば、久保田広等「波動光学」岩波書店、1971年など)。ここでは、図1に示す相変化光記録媒体に波長405nmの光ビームを入射させることを想定して、第1情報層(半透明情報層)の反射率および透過率を計算した。
【0050】
以下においては、記録層が結晶状態のときの反射率Rc、記録層が非晶質状態のときの反射率Ra、コントラスト(Rc−Ra)/(Rc+Ra)、および結晶状態または非晶質状態にある記録層の平均透過率に基づいて、各層の屈折率や膜厚などの適切な範囲を調べた。Rc、Raおよび平均透過率は、各層の屈折率や膜厚を変化させても、その変動が小さいことが好ましい。コントラストは、各層の屈折率や膜厚が適切な範囲であるときに、高い値を示すことが好ましい。
【0051】
まず、本発明者らは、熱拡散層の屈折率が熱拡散層に接するUV硬化樹脂の屈折率に近いことが望ましいことを見出した。より具体的には、両者の屈折率の差は約0.5以下であることが好ましく、約0.3以下であることがより好ましい。これについて詳細に説明する。
【0052】
第1の基板上に、第1誘電体層ZnS:SiO2(ZnSとSiO2の混合物。他も同じ。)/下部界面層HfO2/相変化光記録層GeSbTeBi/上部界面層HfO2/第2誘電体層ZnS:SiO2/反射層AgPdCu/熱拡散層/UV硬化樹脂を有する媒体について光学定数を計算した。熱拡散層の屈折率をntd、UV硬化樹脂の屈折率をnrとする。UV硬化樹脂の屈折率nrは1.52とした。一方、熱拡散層の屈折率ntdは1.8または2.7とした。
【0053】
屈折率の異なる熱拡散層を用いたそれぞれの媒体の第1情報層(半透明情報層)について、第2誘電体層(ZnS:SiO2)の膜厚(x座標)と熱拡散層の膜厚(y座標)の組み合わせに対し、第1誘電体層(ZnS:SiO2)の膜厚を適当に設定すれば、良好な光学特性が得られる場合に、その組み合わせに対応する点にプロットした。ここで、良好な光学特性とは、コントラスト0.8以上、平均透過率50%以上を満たすものとした。
【0054】
これらの結果を図3(a)[ntd=1.8]および図3(b)[ntd=2.7]に示す。図3(a)から、ntdとnrが近い場合には、第2誘電体層および熱拡散層の膜厚をかなり広い範囲で変えても、良好な光学特性が得られることがわかる。特に、第2誘電体層の好ましい膜厚範囲(5〜30nm)で、良好な光学特性が得られる範囲が広い。一方、図3(b)から、ntdとnrが大きく異なるときには、良好な光学特性が得られる膜厚範囲がかなり狭くなることがわかる。
【0055】
相変化光記録媒体の熱特性は、界面層および熱拡散層の熱伝導率のみでなく、各層の膜厚、特に反射層側誘電体層の膜厚にも大きく依存するので、広い膜厚範囲で良好な光学特性が得られるということは、光学特性と熱特性を両立させることが容易であることを示す。
【0056】
次に、熱拡散層の屈折率ntdおよび膜厚ttdの変化による、媒体の光学定数の変化を調べた。ここでは、ZnS:SiO2(50nm)/HfO2(3nm)/GeSbTeBi(6nm)/HfO2(3nm)/ZnS:SiO2(20nm)/AgPdCu(6nm)/熱拡散層/UV硬化樹脂という構造の媒体について光学定数を計算した。UV硬化樹脂nrの屈折率は1.52または1.8とした。
【0057】
熱拡散層の吸収を0としたとき、熱拡散層の屈折率ntdおよび膜厚ttdに応じて、第1情報層(半透明情報層)の光学特性(Rc、Ra、コントラスト、平均透過率)がどのように変化するかを計算した。その結果を図4(a)および(b)に示す。図4(a)はUV硬化樹脂の屈折率nrが1.52のときの計算結果、図4(b)はUV硬化樹脂の屈折率nrが1.80のときの計算結果である。
【0058】
図4(a)でも図4(b)でも、熱拡散層の屈折率ntdがUV硬化樹脂の屈折率nrに近いときに、熱拡散層の膜厚ttdの変化による半透明情報層の光学特性の変化が小さい(等高線の分布が疎になっている)ことがわかる。本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体の半透明情報層では、熱拡散層による冷却効果が、反射層や誘電体層による冷却効果に比べて非常に大きい。このため、熱拡散層の膜厚ttdによって半透明情報層全体の冷却効果が大きく変化する。図4(a)および(b)は、ntdとnrが近いときには、半透明情報層全体の冷却効果を最適化するために熱拡散層の膜厚ttdを変化させても、半透明情報層の光学特性がほとんど変化しないことを意味しており、熱設計上非常に大きなメリットとなる。
【0059】
図3、図4の結果から、|ntd−nr|<0.5を満たすことが好ましく、特にnr<ntd<nr+0.3であることがより好ましいことが判明した。
【0060】
次に、第1誘電体層の膜厚td1および第2誘電体層td2の膜厚の変化による、媒体の光学定数の変化を調べた。ここでは、ZnS:SiO2(xnm)/HfO2(3nm)/GeSbTeBi(6nm)/HfO2(3nm)/ZnS:SiO2(ynm)/AgPdCu(6nm)/SiO2またはTiO2(30nm)/UV硬化樹脂という構造の媒体について光学定数を計算した。UV硬化樹脂の屈折率nrは1.52とした。熱拡散層の屈折率ntdは、SiO2が約1.5、TiO2が約2.9である。その結果を図5(a)および(b)に示す。図5(a)は熱拡散層としてSiO2を用いた場合の計算結果、図5(b)は熱拡散層としてTiO2を用いた場合の計算結果である。
【0061】
図5(a)に示すように、熱拡散層の屈折率ntdがUV硬化樹脂の屈折率nrに近い場合には、記録層上下の第1および第2誘電体層の膜厚td1,td2を大きく変えても、第1情報層(半透明情報層)の光学特性の変化は比較的小さい(等高線の分布が疎になっている)。一方、図5(b)に示すように、熱拡散層の屈折率ntdがUV硬化樹脂の屈折率nrと大きく異なる場合には、記録層上下の第1および第2誘電体層の膜厚td1,td2を少し変えただけで、第1情報層(半透明情報層)の光学特性が大きく変化する(等高線の分布が密になっている)。
【0062】
熱拡散層の膜厚と同様に、記録層上下の第1および第2誘電体層の膜厚は第1情報層(半透明情報層)の冷却効果に非常に大きく影響する。したがって、図5(a)のように、第1情報層(半透明情報層)の光学特性が誘電体膜厚に大きく依存しないことは、冷却効果を最適化する上でも成膜時の膜厚むらによる特性変化を回避する上でも大きなメリットである。
【0063】
次に、界面層として酸化ハフニウムの代わりに酸化セリウムを用いて、上記と同様に、第1および第2誘電体層の膜厚td1,td2の変化による、媒体の光学定数の変化を調べた。すなわち、ZnS:SiO2(xnm)/CeO2(3nm)/GeSbTeBi(6nm)/CeO2(3nm)/ZnS:SiO2(ynm)/AgPdCu(6nm)/SiO2またはTiO2(30nm)/UV硬化樹脂という構造の媒体について光学定数を計算した。その結果を図6(a)および(b)に示す。図6(a)は熱拡散層としてSiO2(屈折率:約1.5)を用いた場合の計算結果、図6(b)は熱拡散層としてTiO2(屈折率:約2.9)を用いた場合の計算結果である。
【0064】
図6(a)および(b)の場合も、図5(a)および(b)と同様に、熱拡散層の屈折率ntdとUV硬化樹脂の屈折率nrが近いときに、広い膜厚範囲で良好な光学特性を示すことがわかる。
【0065】
【実施例】
以下の実施例においては、図1に示す片面二層型の相変化光記録媒体を作製した。基板として、射出成形によって形成された厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を使用した。このポリカーボネート基板には、グルーブピッチ0.74μmでグルーブが形成されている。したがって、ランド・グルーブ記録を行う場合は、トラックピッチ0.37μmに相当する。
【0066】
ポリカーボネート基板のグルーブが形成された面に、スパッタリング装置を用いて、各層を順次成膜して第1情報層(半透明情報層)を形成した。用いたスパッタ装置は、各層それぞれを異なる成膜室でスパッタ成膜する、いわゆる枚葉式スパッタ成膜装置である。この装置は真空搬送室を備えているので、最終的に成膜が終了するまで、基板は真空中を搬送される。
【0067】
別の0.6mm厚の基板上に、Ag合金/ZnS:SiO2/GeSbTe記録層/ZnS:SiO2をスパッタ成膜して第2情報層を準備した。初期化装置により初期結晶化を行った後、互いの成膜面が内側になるように対向させ、UV樹脂硬化樹脂を用いて貼り合わせた。
【0068】
得られた片面二層媒体を初期化装置にかけ、第一情報層の記録層を全面にわたって初期結晶化した後、評価を行った。評価には、パルステック(株)製のディスク評価装置DDU−1000を用いた。この装置は、波長405nmの青紫色半導体レーザーと、NA=0.65の対物レンズを備えている。評価装置のピックアップヘッドを第一情報層に合焦するように調整し、ランド・グルーブ記録によって記録実験を行った。ランド・グルーブ記録では上述したようにトラックピッチは0.37μmとなる。ディスクの線速は6.7m/sとした。以下の説明において、2Tマークはマーク長0.21μm、9Tマークはマーク長0.95μmである。
【0069】
結晶質部の反射率(Rc)と非晶質部の反射率(Ra)とを測定した。また、ビットエラーレート(BER)測定によりデータの誤り率を評価し、アナログ測定により読み出し信号品質を評価した。アナログ測定では、信号対ノイズ比(CNR)、DC消去率、およびクロスイレース(X−E)を求めた。いずれの測定もグルーブ(G)およびランド(L)上のトラックについて行った。
【0070】
BER測定は下記のようにして行った。まず、あるトラックに2Tから9Tまでのマークがランダムに含まれるマーク列を10回オーバーライトした。次に、前記トラックの両側の隣接トラックに同じランダムパターンを10回オーバーライトした。その後、中央のトラックに戻り、BERを測定した。
【0071】
アナログ測定は下記のようにして行った。まず、あるトラックに2Tから9Tまでのマークがランダムに含まれるマーク列を10回オーバーライトした。次に、そのトラックに9Tマーク列(シングルパターン)を1回オーバーライトした。9Tマークの信号周波数の信号対ノイズ比(以下、CNR)をスペクトラムアナライザーによって測定した。次いで、そのトラックに消去パワーレベルのレーザービームをディスク一回転分照射し、記録マークを消去した後、9Tマークの信号レベルの減少分を求めた。これをDC消去率と定義する。また、十分離れたトラックにヘッドを移動し、下記のようにクロスイレース(X−E)測定を行った。まず、対象とするトラックに2Tマーク列を10回オーバーライトし、2Tマーク列からの信号レベルをスペクトラムアナライザーによって測定した。次に、そのトラックの両側の隣接トラックに、9Tマーク列を10回オーバーライトした。その後、2Tマーク列が書き込まれた中央のトラックにヘッドを戻し、2Tマーク列からの信号レベルを再度測定した。最初の測定値からの減少分をクロスイレース値とした。
【0072】
実施例A
第1の基板上に、表1に示す膜厚で、ZnS:SiO2(第1誘電体層)/HfO2(下部界面層)/GeSbTe(相変化光記録層)/HfO2(上部界面層)/SiO2(第2誘電体層)/Ag合金(半透明反射層)/SiO2(熱拡散層)を順次成膜して第1情報層(半透明情報層)を形成した。
【0073】
相変化光記録層はGe40Sb8Te52(Ge:Sb:Te=10:2:13)の組成を有するターゲットを用いて形成した。界面層のZnS:SiO2はZnSを80at.%、SiO2を20at.%の比率で混合したターゲットを用いた形成した。
【0074】
記録光(405nm)に対して、UV硬化樹脂の屈折率は約1.5、SiO2熱拡散層の屈折率は約1.5である。また、界面層であるHfO2と熱拡散層SiO2の熱伝導率は、それぞれ1.8W/mKおよび1.3W/mKである。
【0075】
表1に作製した相変化光記録媒体についての測定結果を示す。ビットエラーレート(BER)はランド・グルーブともに6×10-5以下であり、実用上問題がない。このように優れたBERが得られた原因は、アナログ測定に示されているように、CNRがランド・グルーブともに52dB以上、消去率が−25dB以下、クロスイレースも−0.2dB以下と優れているためであると考えられる。このように、HfO2を界面層に用いた場合には、CNRとクロスイレース(X−E)のトレードオフがないという特徴がよく表われている。
【0076】
なお、各層の膜厚の好ましい範囲は以下の通りである。光入射側のZnS:SiO2などの第1誘電体層の膜厚は30nm以上、160nm以下で所望の反射率の条件を満足する範囲が好ましい。界面層の膜厚は5nm以下が好ましい。記録層の膜厚は5〜8nmが好ましい。反射層に近い第2誘電体層の膜厚は5〜30nmが好ましい。反射層の膜厚は5〜10nmが好ましい。熱拡散層の膜厚は10〜100nmが好ましい。
【0077】
実施例B1、B2(記録層の組成変更)
記録層の組成をGe40Sb4Te52Bi4(Ge:Sb:Te:Bi=10:1:13:1)に変更した以外は実施例Aと同様な相変化光記録媒体(実施例B1)を作製した。評価結果を表1に示す。実施例B1の媒体は、CNR、消去率およびX−Eが実施例Aの媒体よりも優れていた。
【0078】
同様に、記録層の組成をGe23Sb15Te54Sn8(Ge:Sb:Te:Sn=3:2:7:1、GeとSnをあわせた組成比は31at.%)に変更した以外は実施例Aと同様な相変化光記録媒体(実施例B2)を作製した。評価結果を表1に示す。実施例B2の媒体は、CNRが実施例Aの媒体に比較して若干劣るが、使用上は問題のない値であった。また、実施例B2の媒体は、消去率およびX−Eが実施例Aの媒体よりも優れていた。
【0079】
実施例C(第2誘電体層および熱拡散層の材料変更)
実施例B1の媒体から、第2誘電体層の材料をZnS:SiO2、熱拡散層の材料をAl2O3に変更して、ZnS:SiO2/HfO2/GeSbTeBi/HfO2/ZnS:SiO2/Ag合金/Al2O3という構造の相変化光記録媒体(実施例C)を作製した。熱拡散層として用いたAl2O3の屈折率は約1.7である。評価結果を表1に示す。実施例Cの媒体は、CNR、消去率ともに実施例B1の媒体よりも優れており、X−Eも実用上問題のないレベルであった。また、透過率は最も優れた値を示した。
【0080】
【表1】
【0081】
比較例A(界面層をGeNまたはCr−Oに変更)
実施例Cの媒体の界面層を、GeNに変更した媒体(比較例A1)と、Cr−Oに変更した媒体(比較例A2)を作製した。評価結果を表2に示す。比較例A1、A2のいずれの媒体も、BERが実施例Cの媒体に比べけた違いに悪かった。その理由は、アナログ測定の結果からわかるように、界面層がGeNにした場合には実施例Cに比較してX−Eが悪く、界面層をCr−Oにした場合には実施例Cに比較してCNRが悪いことに起因するといえる。
【0082】
なお、それぞれの界面層材料を用いた場合でも、膜厚を調整することによってCNRまたはX−Eのどちらかを若干改善することができるが、両者を同時に改善することはできない。
【0083】
比較例B(界面層なし)
実施例Cの媒体から界面層を省略した、ZnS:SiO2/GeSbTeBi/ZnS:SiO2/Ag合金/Al2O3という構造の媒体(比較例B)を作製した。評価結果を表2に示す。比較例Bの媒体では、BERを測定することができず、CNRもオーバーライト時の消去率の悪さを反映してきわめて悪かった。このため、比較例Bの媒体は、評価条件の下では実質的に書き換えができない。
【0084】
【表2】
【0085】
実施例D1、D2(記録層膜厚への依存性)
実施例Cの媒体に比べて、記録層の膜厚を5nmに薄くした実施例D1の媒体と、記録層の膜厚を8nmに厚くした実施例D2の媒体を作製した。評価結果を表3に示す。実施例D1の媒体は結晶質と非晶質の反射率差が十分でないため、CNRが実施例Cの媒体に比べて劣っている。実施例D2の媒体は、CNRと消去率はすぐれているが、平均透過率が実施例Cの媒体に比べて劣っており、第2情報層に情報を記録再生することが難しくなる。したがって、記録層の膜厚は5〜8nmが好ましいことが判明した。
【0086】
実施例E1、E2(反射層膜厚への依存性)
実施例Cの媒体に比べて、反射層の膜厚を5nmに薄くした実施例E1の媒体と、反射層の膜厚を10nmに厚くした実施例E2の媒体を作製した。評価結果を表3に示す。実施例E1の媒体は、反射層の冷却効果が弱まったために、CNRが実施例Cの媒体に比べて劣っている。実施例E2の媒体は、CNRと消去率は優れているが、平均透過率が実施例Cの媒体に比べて劣っており、第2情報層に情報を記録再生することが難しくなる。したがって、反射層の膜厚は5〜10nmが好ましいことが判明した。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例F(HfO2界面層とSiO2熱拡散層との組み合わせ)
ZnS:SiO2/HfO2/GeSbTeBi/HfO2/ZnS:SiO2/Ag合金/SiO2という構造の媒体(実施例F)を作製した。GeSbTeBiの組成は実施例B1の媒体と同じにした。評価結果を表4に示す。実施例Fの媒体は、CNR、消去率、X−Eともに、実用上問題のないレベルを示した。
【0089】
実施例G(CeO2界面層とAl2O3熱拡散層との組み合わせ)
界面層としてCeO2、熱拡散層としてAl2O3を用い、ZnS:SiO2/CeO2/GeSbTeBi/CeO2/SiO2/Ag合金/Al2O3という構造の媒体(実施例G)を作製した。GeSbTeBiの組成は実施例B1の媒体と同じにした。CeO2とAl2O3の熱伝導率は、それぞれ、15W/mKおよび30W/mKである。評価結果を表4に示す。実施例Gの媒体は、CeO2界面層よりもAl2O3熱拡散層の方が大きな熱伝導率を有するため、CNRおよび消去率が大きく、クロスイレースの低下を実現できる。
【0090】
実施例H(片側界面層)
光入射側の下部界面層を省略した、ZnS:SiO2/GeSbTeBi/CeO2/ZnS:SiO2/Ag合金/Al2O3という構造の媒体(実施例H)を作製した。GeSbTeBiの組成は実施例B1の媒体と同じにした。評価結果を表4に示す。実施例Hの媒体は、CNRと消去率が大きく、クロスイレースが小さい。
【0091】
実施例I(第2誘電体層の省略)
さらに、記録層上側の第2誘電体層を省略して界面層で置き換えた、ZnS:SiO2/HfO2/GeSbTeBi/HfO2/Ag合金/Al2O3という構造の媒体(実施例I)を作製した。GeSbTeBiの組成は実施例Cの媒体と同じにした。評価結果を表4に示す。実施例Iの媒体は、CNRと消去率が大きく、クロスイレースが小さい。
【0092】
【表4】
【0093】
比較例C(熱伝導率が低い熱拡散層)
実施例Gの媒体の熱拡散層をSiO2に変更した、ZnS:SiO2/CeO2/GeSbTeBi/CeO2/SiO2/Ag合金/SiO2という構造の媒体(比較例C)を作製した。評価結果を表5に示す。比較例Cの媒体は、クロスイレースが大きいことがわかる。これは、SiO2熱拡散層の熱伝導率(1.3W/mk)がCeO2界面層の熱伝導率(15W/mk)よりも大幅に小さいためであると考えられる。
【0094】
比較例D(熱伝導率が過大な熱拡散層)
実施例B1の媒体の熱拡散層をAlNに変更した、ZnS:SiO2/HfO2/GeSbTeBi/HfO2/SiO2/Ag合金/AlNという構造の媒体(比較例D)を作製した。評価結果を表5に示す。比較例Dの媒体は、評価装置に搭載されているレーザーの最大記録パワー11mWの条件でも十分なCNRを得ることができなかった。これは、AlNの熱伝導率(270W/mK)が過大であり、記録感度が劣化したためであると考えられる。
【0095】
【表5】
【0096】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、クロスイレースを低く保ちながら、高いCNRと消去率を示す、複数の情報層を有する相変化光記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る片面二層相変化光記録媒体を示す図。
【図2】半透明情報層に含まれる記録層からの熱伝導の様子を示す模式図。
【図3】屈折率の異なる熱拡散層を含む半透明情報層で良好な光学特性が得られる第2誘電体層の膜厚と熱拡散層の膜厚の組み合わせを示す図。
【図4】屈折率の異なるUV硬化樹脂で貼り合わされた半透明情報層の光学特性を、熱拡散層の屈折率および膜厚の関数として示した図。
【図5】界面層としてHfO2、熱拡散層としてSiO2またはTiO2を有する半透明情報層の光学特性を、第1誘電体層の膜厚および第2誘電体層の膜厚の関数として示した図。
【図6】界面層としてCeO2、熱拡散層としてSiO2またはTiO2を有する半透明情報層の光学特性を、第1誘電体層の膜厚および第2誘電体層の膜厚の関数として示した図。
【符号の説明】
10…第1の基板
11…第1誘電体層
12…下部界面層
13…相変化光記録層
14…上部界面層
15…第2誘電体層
16…半透明反射層
17…熱拡散層
18…UV硬化樹脂
100…第1情報層(半透明情報層)
20…第2の基板
21、23…誘電体層
22…相変化光記録層
24…反射層
200…第2情報層
Claims (3)
- 基板上に形成された、構成元素の一部がBiおよび/またはSnで置換されており、下記一般式
(Ge (1−w) Sn w )x(Sb (1−v) Bi v )yTez
(ここで、x+y+z=100,0≦w<0.5、0≦v<0.7)
で表される組成を有する相変化光記録層、前記相変化光記録層の少なくとも一方の面に接して形成された酸化ハフニウムおよび酸化セリウムからなる群より選択される少なくとも1種の材料を含む界面層、前記界面層上に形成された半透明反射層、および前記半透明反射層上に形成された熱拡散層を含む半透明の第1情報層と、前記第1情報層上にUV硬化樹脂層を介して形成された第2情報層とを有し、前記熱拡散層の熱伝導率は前記界面層の熱伝導率の0.7倍以上で100W/mK以下であり、かつ前記熱拡散層の屈折率と前記UV硬化樹脂の屈折率との差は0.5以下であることを特徴とする相変化光記録媒体。 - 前記相変化光記録層と前記基板との間、前記相変化光記録層と前記半透明反射層との間の少なくとも一方に誘電体層が介在してなることを特徴とする請求項1に記載の相変化光記録媒体。
- 前記界面層が酸化ハフニウムからなり、前記熱拡散層がアルミニウム酸化物からなることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の相変化光記録媒体。
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