JP4127739B2 - アルミニウム合金溶湯用フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金 (以下、単にアルミニウム合金と言い、アルミニウムも単にAlと言う) の溶湯から介在物を除去する溶湯用フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Alは、再溶解にかかるエネルギーが、Al鉱石の電解精錬の場合の約1/30であることから、Alスクラップをリサイクルして溶解原料に用いる( 再溶解する) ことで、大幅なエネルギーの節約を図ることが可能である。したがって、Alはリサイクルのメリットが大きい金属である。
【0003】
但し、Alスクラップには種々の不純物が高濃度で含有されており、このAlスクラップを再溶解して得られる溶湯中には、溶解原料としてのAlスクラップ由来、若しくは溶解時の大気雰囲気による酸化等に起因する、多くの非金属介在物を含む介在物が含有されている。この点が、Alスクラップをリサイクルして溶解原料に用いる場合の、Al地金を用いる場合に比した、最大の問題である。なお、前記介在物としては、アルミナ(Al2O3) 、スピネル(MgAl2O4) 、マグネシア(MgO) などの酸化物系介在物が例示される。
【0004】
したがって、Al溶解原料の一部または全部をAl合金材製品のスクラップとする場合に、少なくともAl合金溶湯中から介在物を除去することが必要となる。このため、従来から、フラックスを用いた溶湯の脱ガスなどの精錬とともに、鎮静法、活性ガス法、溶湯濾過法等の脱介在物処理が用いられている。
【0005】
沈静法は溶湯を静置して溶湯との比重差により介在物を浮上または沈殿させて分離する。しかし、溶湯と介在物との比重差はそれほど大きくなく、かつ溶湯と介在物との濡れ性も著しく大きいため、両者の分離効率は非常に悪い。したがって、処理時間をかけても、多くの介在物が溶湯中に残存してしまうという問題がある。
【0006】
次に、活性ガス法は溶湯中に不活性ガスまたはハロゲンガスを導入し、気泡を発生させて介在物を気泡に吸着および浮上させて分離する方法である。本方法は水素等の脱ガスの方法としては有効である。しかし、浮上する気泡が激しく溶湯表面をゆらして溶湯を攪拌することとなり、溶湯表面のAl酸化皮膜を溶湯中に再混入させ、アルミナ系介在物量が却って増加する問題がある。
【0007】
溶湯濾過法は溶湯を耐火物製のフィルターを通過させて、フィルターにより介在物を分離するものである。しかし、溶湯中の介在物の内、比較的大きな介在物は除去可能であるものの、介在物の多くを占める100 μm 以下、特に、高品質のAl合金材に要求される10〜25μm 程度の微細な介在物の低減については、除去が困難であるという問題がある。また、この微細な介在物を除去するために、従来のフィルターのメッシュを小さくしすぎると、介在物量が多い場合、フィルター表面での目詰まりが短期間で生じ、フィルター寿命が短くなるという実用上の問題もある。
【0008】
したがって、Al溶解原料の一部または全部がAl合金材製品のスクラップからなり、Al合金溶湯中の非金属などの介在物量が多い場合でも、また、10〜25μm 程度の微細な介在物量が多い場合でも、溶湯の品質を保証できる量に低減できるとともに、フィルターの寿命も長いという、相反する課題を同時に満足するフィルター技術が求められている。
【0009】
このため、出願人は、特開平7-207355号または特開平9-235629号公報で、従来の耐火物製の骨材のみからなり、フィルター表面での介在物の堆積作用のみによる濾過フィルター (表面濾過フィルター) に代えて、耐火物製の骨材からなり、該骨材表面をAl合金溶湯の温度で軟化乃至粘稠化する融点を有する化合物で被覆して表層部を形成し、この被覆化合物乃至表層部の吸着作用による濾過フィルター (内部濾過フィルター) を提案した。
【0010】
そして、この内部濾過フィルターの被覆化合物として、具体的には、MnO2、Bi2O3 、NaO 、B2O3、MgBr2 、NaBr、Na2CO3、CrCl2 、KCl 、NaCl、SrCl2 、Na3AlF6 、AlK(SO4)2 、K2SO4 等 (特開平9-235629号) 、K やLiのアルカリ金属の硫酸塩、ほう酸塩、炭酸塩等 (K2SO4 、Li2SO4、Li2B2O7 、Li3CO3) の化合物が例示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
これらMnO2等、或いはK やLiのアルカリ金属の硫酸塩等 (以下従来の被覆化合物と言う) では、溶湯流の衝撃力や粘着力に対し、被覆化合物の骨材表面との密着性を確保するために、接着剤を使用する必要がある。即ち、従来の被覆化合物には、骨材表面との強い接着力は無く、これら化合物のみの被覆では、前記溶湯流の衝撃力や粘着力によって、使用中に化合物が剥離しやすく、濾過フィルターの寿命が極端に短くなる。このため、幾ら化合物の吸着性能が高くても、実用化ができないこととなる。
【0012】
前記接着剤としては、高温下での使用となるため、被覆化合物と共存させた、耐熱性を有するシリカゾル等の物質が必然的に用いられる。しかし、このシリカゾル等の接着剤は、前記化合物に比して、介在物の吸着作用が著しく低い( 前記化合物の約15〜30%)。このため、被覆化合物の骨材表面との密着性を確保するために、接着剤量を増やせば、その分被覆化合物量が減り、吸着能力が低下することになる。
【0013】
また、濾過フィルターの介在物除去能力
(効果) は、骨材の目の粗さ (メッシュ) および骨材形状にも大きく依存している。したがって、前記10〜25μm 程度の微細な介在物を除去するためには、骨材のメッシュが、孔数が6 個/1インチ 以上の細かさを有することが必要である。
【0014】
一方、内部濾過フィルターを作成するためには、セラッミック等の骨材を成形後焼成したフィルターに、例えば、前記被覆化合物を含浸させるなどして、骨材表面に化合物を被覆する必要がある。しかし、前記接着剤を使用した場合、予め接着剤をフィルターに含浸したあとで被覆化合物を含浸させるにせよ、或いは被覆化合物と接着剤を混合したものを骨材に含浸させるにせよ、これら含浸させる物質の粘度は、被覆化合物と接着剤の元々の物性からして、相当高いものとなる。このため、これらの含浸させる物質の粘度が高いほど、或いは、骨材のメッシュが細かいほど、フィルターの内部まであるいはフィルターを構成する個々の骨材の全表面に化合物を被覆させるのは、実質的に不可能となる。
【0015】
したがって、前記従来の被覆化合物を、実際の内部濾過フィルターに適用する限り、骨材の全表面積に対する化合物の被覆効率は低くならざるを得ず、この結果、フィルターの単位体積や単位重量当たりの介在物除去効率も、低くならざるを得なかった。そして、このことがAl合金溶湯への内部濾過フィルター実用化の妨げとなっていた。
【0016】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、特に、10〜25μm 程度の微細な介在物の除去効率を高めた、内部濾過フィルターを提供しようとするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明の要旨は、Al (アルミニウム) 合金溶湯から、該溶湯中に含まれる介在物を除去するフィルターであって、耐火物製の骨材からなるとともに、骨材表面がAl合金溶湯の温度で軟化乃至粘稠化する融点を有する化合物で被覆された構造を有し、該被覆化合物を珪酸ソーダとすることである。
【0018】
本発明者は、内部濾過フィルターについて、骨材の被覆化合物を珪酸ソーダとすれば、▲1▼接着剤を使用することなく、溶湯流の衝撃力や粘着力に対し、被覆化合物の骨材表面との密着性が確保できること、▲2▼骨材のメッシュが、孔数が6 個/1インチ 以上の細かさを有した場合でも、骨材の内部まであるいは骨材の全表面に化合物を被覆させ得ること、これらの結果として、10〜25μm 程度の微細な介在物を含め、フィルターの単位体積や単位重量当たりの介在物除去効率が高くなることを知見した。
【0019】
珪酸ソーダ (珪酸ナトリウム) 自体は各種組成の化合物がある。本発明ではこれら珪酸ソーダの内、水溶性を持つものを用いる。本発明で言う珪酸ソーダは、水溶性の塩として、一般式Nax Siy O z で表され(x=2,4、y=1,2,4 、Z=3,4,5,9)、メタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3) 、オルト珪酸ナトリウム(Na4SiO4) 、或いは他にNa2Si2O5、Na2Si4O9などがある。そして、これらの混合物の水溶液が水ガラスと称される。
【0020】
水ガラス自体は、汎用的に粘着剤として人造石、ガラス、陶磁器の接合や、耐火塗料、耐酸塗料の製造に用いられる。また、セメント混合剤、土質硬化剤としても用いられ、吸湿剤であるシリカゲルの原料となることが公知である。したがって、珪酸ソーダなり、水ガラスなりに、ガラスやセラミックスの接着効果があること、また、吸湿効果があることは公知である。しかし、珪酸ソーダなり、水ガラスなりに、Al合金溶湯中の介在物に対する吸着効果があること、しかも、Al合金溶湯に対するよりも、介在物に対し、優先的な吸着効果があることは公知ではない。そして、この効果により、Al合金溶湯中の介在物の除去用フィルターとして使用可能であることも公知ではない。
【0021】
【発明の実施の形態】
(耐火物製の骨材) 濾過フィルターの介在物除去能力
(効果) は、骨材の目の粗さ (メッシュ) にも大きく依存しているので、本発明における、耐火物製の骨材( 成形された濾過フィルターの) のメッシュも、前記した10〜25μm 程度の微細な介在物を除去するために、細かい方が好ましく、メッシュが、孔数が6 個/1インチ 以上の細かさを有することが好ましい。但し、フィルターのメッシュを小さくしすぎると、介在物量が多い場合、フィルターの目詰まりが短期間で生じ、フィルター寿命が短いという実用上の問題もあるので、メッシュの選択はこのフィルター寿命を低下させない範囲で選択する。
【0022】
この骨材を構成する耐火物の種類は、前記メッシュに成形乃至製造可能な耐火物から選択すれば良く、アルミナ、マグネシア、シリカ、ムライト、炭化珪素あるいはこれらの混合物等から選択される公知の耐火物が適宜選択される。そして、これらのセラミックを、所望メッシュとなるよう、また、溶湯の熱衝撃や磨耗に対し、必要な強度を確保できるような形状、例えば、ヌードル状、ハニカム状、チューブ状などの適宜の形状の多孔質体に、粘土状態乃至スラリー状態から成形し、焼成する。
【0023】
この際、前記セラミックの混練乃至混合粘土またはスラリーに対し、発泡スチロール等のプラスチックの小片乃至小粒を混合し、これを適宜の形状に成形後焼成して、プラスチックを焼失せしめ、この焼失孔をフィルターの孔とすれば、所望の細かいメッシュを有するフィルターをつくることが可能である。この方法によれば、前記ヌードル状やハニカム状など、骨材の構成乃至構造により孔を形成する場合に比して、所望の細かいメッシュを有するとともに、均一に分散し、かつ同じ孔径を有する、より微細な孔とすることが可能となる。そして、この結果、前記10〜25μm 程度のより細かい介在物を除去することが可能となる。
【0024】
(珪酸ソーダ) 本発明における珪酸ソーダは、内部濾過フィルターの骨材の被覆化合物に必要な特性を有している。まず、被覆化合物としては、Al合金溶湯の温度で軟化乃至粘稠化する融点を有することが必要である。この点、珪酸ソーダの融点は、組成により異なるものの、730 〜870 ℃程度であり、前記特性を満足する。
【0025】
そして、次に、本発明における珪酸ソーダは、前記特開平7-207355号および特開平9-235629号公報に記載された被覆化合物 (MnO2、Bi2O3 、NaO 、B2O3、MgBr2 、NaBr、Na2CO3、CrCl2 、KCl 、NaCl、SrCl2 、Na3AlF6 、AlK(SO4)2 、K2SO4 、K やLiのアルカリ金属の硫酸塩、ほう酸塩、炭酸塩等) に比して、溶湯流の衝撃力や粘着力に対する、被覆化合物の骨材表面との密着性が優れる。したがって、これら従来技術のように接着剤を使用する必要がない。また、特別に骨材表面との密着性向上のために接着剤を使う場合でも、その使用量を大幅に少なくすることが可能である。この結果、被覆化合物の骨材表面との密着性を確保するために、接着剤量を増やせば、その分被覆化合物量が減り、吸着能力が低下するような、従来の内部濾過フィルターの、フィルター寿命とフィルターの介在物除去能力とが相矛盾することがなくなる。
【0026】
そして、更に重要な点は、珪酸ソーダが、Al合金溶湯との粘着性が高くなく、逆に、Al合金溶湯中の介在物の内、特に微細な介在物の多く乃至大部分を占めるアルミナ(Al2O3) 、スピネル(MgAl2O4) 、マグネシア(MgO) 等の酸化物系介在物の吸着性が高いことである。この介在物の優先吸着特性は内部濾過フィルターにとって極めて重要であり、この優先吸着特性が無いと、Al合金溶湯のみが被覆化合物に吸着し、介在物の除去効率が低くなるとともに、フィルター自体の目詰まりが顕著となり、フィルター寿命が著しく低下するというフィルターとしての基本性能に関わる問題となる。
【0027】
したがって、これら本発明における珪酸ソーダの特性から、珪酸ソーダの骨材への被覆量は、介在物量とこれに対して必要なフィルターの介在物除去能力 (溶湯の品質面から要求される清浄度) によって適宜設定することができる。より具体的には、現状では、Al合金鋳塊中のアルミナ等の酸化物系介在物を200 ppm 以下とすることが求められており、このレベルを達成するために、元々の溶湯中の介在物の大きさや量、或いは後述するフィルターの設置体積 (濾過面積) 、更には溶湯流量などの実際の適用条件に応じて、珪酸ソーダの骨材への被覆量を決定する。但し、珪酸ソーダの骨材への被覆量があまり多くなり過ぎ、フィルターのメッシュを小さくしすぎると、前記した通り、介在物量が多い場合、フィルターの目詰まりが短期間で生じ、フィルター寿命が短い、或いは被覆化合物の骨材表面との密着性も低下するという実用上の問題もある。したがって、珪酸ソーダの骨材への被覆量の選択はこの問題が許容される範囲で選択することが好ましい。
【0028】
この珪酸ソーダの骨材への被覆は、前記珪酸ソーダの内の水溶性を持つメタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3) 、オルト珪酸ナトリウム(Na4SiO4) 、Na2Si2O5、Na2Si4O9などを単独乃至これらの混合物を水溶液化 (水ガラス化) し、この水ガラスへ骨材を浸漬するなどして、骨材へ水ガラスを含浸させ、しかる後にこれを乾燥して行う。この際、水ガラスの粘度 (珪酸ソーダの濃度) を調整して、珪酸ソーダの骨材への被覆量を調節する。粘度が高すぎると、フィルター内部への水ガラスの含浸および珪酸ソーダの被覆ができなくなる。また、一方、あまり粘度が低すぎると、珪酸ソーダの被覆量が少なくなる。
【0029】
このようにして製作した、濾過フィルターは、Al溶解原料を溶解炉で溶解および精錬した後、溶湯を鋳型に供給して鋳造を行うまでの工程に設けられ、Al合金溶湯を濾過する。通常、Al合金溶湯は、Al溶解原料を溶解炉で溶解および精錬した後、一旦移湯樋を介して保持炉に移湯され、この保持炉から移湯樋を介して溶湯を鋳型に供給して鋳造を行う。この際、Al合金溶湯中の介在物は各炉だけではなく、移湯中にも多く発生する。したがって、介在物の除去は、できるだけ鋳造側で行われることが好ましい。このためには、鋳型直前、鋳型上流側の移湯樋 (保持炉と鋳型間) に設けられることが好ましい。
【0030】
濾過フィルターの移湯樋への設け方は、既存の移湯樋内部 (流路) に溶湯を遮る堰のような形でフィルターを設置する方法でも良い。しかし、フィルターを多段に配置する乃至フィルターの長さを長くして、溶湯の濾過時間を確保したい場合および溶湯の清浄度をより高くしたい場合には、移湯樋の長さや容積には限りがあるので、移湯樋途中に暗渠状の溶湯溜まり或いは溶湯の流路を別に設け、これをフィルターボックスとしてフィルターを設置し、溶湯を通過させて処理することが好ましい。
【0031】
なお、本発明が介在物除去の対象とする純AlまたはAl合金は特に限定されない。例えば、JIS 1000系の純Alから、JIS 2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系などのAl合金にまで広く適用することが可能である。また、本発明フィルターは、Pb、Ti、Sn、Fe等の金属不純物元素、或いは溶湯中の酸素、水素等のガス成分の除去などを目的とした精錬方法と併用することも可能である。
【0032】
【実施例】
次に、本発明方法の実施例を説明する。表1 に示すJIS 1000系から7000系までの種々のAl合金の溶解、精錬、鋳造を行った。溶解条件は、Al合金原料を内容積1000kg/ch の高周波誘導溶解炉にて、750 ±10℃の温度で大気溶解し、各々のAl合金の成分組成に調整した。この組成調整および精錬後のAl溶湯を、溶解炉から保持炉を介して、移湯樋に移湯した。そして、移湯樋の鋳型までの間に、暗渠状のフィルターボックスを設置し、このボックス内に体積44000 mm3 とし、15 mm 厚み (長さ) で、前記発泡ウレタンにより多孔質化し、表1 に示す孔数( メッシュ) のアルミナ製多孔質板を積層した濾過フィルターを各々設置し、このフィルターへの被覆化合物条件のみを変え、前記フィルター条件や試験条件は同じとして、730 〜740 ℃のAl溶湯を通過させた。
【0033】
フィルターの被覆化合物条件を表1 に示す。なお、珪酸ソーダの骨材への被覆は、前記珪酸ソーダの内の水溶性を持つNa2SiO3 、Na4SiO4 、Na2Si2O5、Na2Si4O9などを単独乃至これらの混合物を水溶液化 (水ガラス化) し、この水ガラスへ骨材を浸漬して、骨材へ水ガラスを含浸させ、接着剤を用いずに、骨材内部も含めた骨材の全表面に水ガラスを被覆した。そして、これを乾燥し、珪酸ソーダとして骨材へ被覆した。この際、水ガラスの粘度 (珪酸ソーダの濃度) を調整して、珪酸ソーダの骨材への被覆量を調節した。なお、比較例の被覆化合物も基本的には、前記被覆方法と同じ条件で、被覆化合物のみを替えて、しかし、シリカゾルを接着剤として、50wt% 加えて製作した。
【0034】
そして、フィルターによる濾過直前と濾過直後のAl溶湯の中の介在物として、介在物の中でも10〜25μm 程度の微細な介在物として主要な、アルミナ(Al2O3) 、スピネル(MgAl2O4) 、マグネシア(MgO) の3 つの酸化物の合計量を測定した。測定は、濾過直前の溶湯の場合はフィルター直前の溶湯から、濾過後の溶湯の場合はフィルター直後の溶湯から、各々溶湯を採取して冷却固化した後、試験片中の前記3 つの酸化物量をBr- メタノール法 (試験片を臭素メタノール溶液に溶解し、溶解残渣中の酸化物量を定量分析する方法) により定量分析した。各溶湯とも濾過前の3 つの酸化物の合計量は300 〜400ppmであり、これに対する濾過後のAl溶湯中の3 つの酸化物の合計量から、介在物の除去率を各々の例について算定した。この結果も表1 に示す。なお、各例の酸化物量は、移湯樋におけるAl溶湯 1ロット (乃至1 バッチ) 当たりの先端、中ほど、後端の3 点の採取サンプルの平均とした。
【0035】
表1 から明らかな通り、珪酸ソーダを被覆した発明例No.1〜5 は、Al合金の種類に拘らず、酸化物系介在物の除去率が70% 以上と高い。したがって、本発明に係る珪酸ソーダが、フィルターの単位体積や単位重量当たりの介在物除去効率を高め、介在物の多くを占める100 μm 以下、特に、高品質のAl合金材に要求される10〜25μm 程度の微細な介在物の低減に効果があることが分かる。また、前記試験中、フィルター表面での目詰まりが短期間で生じ、フィルター寿命が短くなるという問題も発生しなかった。
【0036】
なお、本実施例および表1 の結果は、溶湯濾過前の酸化物系介在物量が300 〜400ppmのレベルという、現在のAlの溶解、精錬、鋳造工程における平均的な介在物レベルでの結果である。したがって、スクラップの使用量が増えるなどして、介在物除去効率を更に高めたい場合、或いは溶湯の濾過前の介在物量が更に増加する場合には、▲1▼フィルターの有効表面積を更に増加する、或いは▲2▼フィルターを通過する溶湯流路を複雑化して、溶湯のフィルターとの接触時間を更に増やすことにより対応可能である。そして、このようにしても、フィルターの寿命を低下させない点が、本発明の実用的な価値でもある。更に▲1▼の珪酸ソーダの骨材への被覆量を増加することにより対応する場合には、結果として、フィルターのコンパクト化が図れることにもつながる。
【0037】
これに対し、比較例No.6〜10の、前記 特開平7-207355号または特開平9-235629号公報に記載された被覆化合物は、いずれも、介在物の除去率が高くても50% 台と低く、発明例に比して、著しく劣っている。したがって、以上の結果から、本発明に係る珪酸ソーダの優位性乃至実用性が明らかである。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明内部濾過フィルターによれば、介在物除去効率とフィルター寿命の両者を高めることができ、介在物量を低いレベルに除去することができる。また、この効果を内部濾過フィルターがよりコンパクトな形で実現できる。したがって、Alスクラップを溶解原料に用いるリサイクルシステムの実現に不可欠な、Al溶湯中の介在物の除去を可能にする点で、工業的な価値が大きい。
Claims (7)
- アルミニウム合金溶湯から介在物を除去するフィルターであって、耐火物製の骨材からなるとともに、骨材表面がアルミニウム合金溶湯の温度で軟化乃至粘稠化する融点を有する化合物で被覆された構造を有し、該被覆化合物が珪酸ソーダであることを特徴とするアルミニウム合金溶湯用フィルター。
- 前記骨材のメッシュが、孔数で6 個/1インチ 以上の細かさを有する請求項1に記載のアルミニウム合金溶湯用フィルター。
- 前記珪酸ソーダを、接着剤を使用せずに、骨材表面に被覆したものである請求項1または2に記載のアルミニウム合金溶湯用フィルター。
- 前記フィルターが、アルミニウム溶解原料を溶解炉で溶解および必要により精錬した後、溶湯を鋳型に供給して鋳造を行うまでの工程に設けられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金溶湯用フィルター。
- 前記フィルターが、溶解炉から鋳型までの移湯樋に設けられる請求項4に記載のアルミニウム合金溶湯用フィルター。
- 前記フィルターが、移湯樋途中に設置されたフィルターボックスに設けられる請求項4に記載のアルミニウム合金溶湯用フィルター。
- 前記Al溶解原料の一部または全部がアルミニウム合金材のスクラップからなる請求項4乃至6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金溶湯用フィルター。
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