JP4127133B2 - 受動的光ネットワーク試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の宅側装置が媒体を共有してデータの伝送を行なう媒体共有型通信であるPON(Passive Optical Network)に関し、特に、データをイーサネット(R)フレームのまま伝送を行なうEPON(Ethernet(R) PON)に接続されるONU(光加入者線終端装置)またはOLT(光加入者線端局装置)を試験する受動的光ネットワーク試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットが広く普及しており、利用者は世界各地で運営されているサイトの様々な情報にアクセスし、その情報を入手することが可能である。それに伴って、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、FTTH(Fiber To The Home)などのブロードバンドアクセスに対する要望も急速に高まってきている。
【0003】
図7は、従来のPONシステムの概略構成を示すブロック図である。このPONシステムは、主に電話局などに設置されるOLT101と、主に各宅内に設置される複数のONU102−1〜102−nと、OLT101から送出される光信号を分岐してONU102−1〜102−nに送出し、ONU102−1〜102−nから送出される光信号を集束してOLT101に送出するスプリッタ105と、ONU102−1〜102−nのそれぞれに接続されるユーザ端末111とを含む。なお、第1のONU102−1〜第nのONU102−nは、それぞれ同じ構成を有している。
【0004】
OLT101は、上位ネットワーク109を介して受信したデータを、伝送路104およびスプリッタ105を介してONU102−1〜102−nに送出する。また、OLT101は、ONU102−1〜102−nから送出されたレポート107に基づいて、ONU102−1〜102−n内のバッファ103−1〜103−nに蓄積されているデータの送出開始時刻および送出許可量を演算し、指示信号を挿入したグラント106を伝送路104およびスプリッタ105を介してONU102−1〜102−nに送出する。
【0005】
たとえば、ONU102−1が下位ネットワーク110を介してユーザ端末111から上り情報フレーム108を受信すると、この上り情報フレーム108を一旦バッファ103−1に蓄積する。ONU102−1は、OLT101からグラント106を受信すると、そのグラント106によって指定された時刻にバッファ103−1内のデータ量をレポート107でOLT101に通知する。なお、上り情報フレーム108は、可変長パケット単位で到着する。
【0006】
ONU102−1は、OLT101から指示信号を挿入したグラント106を受信すると、その指示信号に基づいてバッファ103−1内のデータをレポート107とともにOLT101に送出する。
【0007】
図8は、従来のPONシステムの動作手順を説明するためのシーケンス図である。なお、このシーケンス図は、OLT101と、ONU102−1との動作についてのものであるが、他のONU102−2〜02−nの動作についても同様である。
【0008】
運用時間開始時刻T0において、OLT101はONU102−1〜102−nに関するRTT(Round Trip Time)を既に計算している。時刻Ta1において、OLT101は送出要求量を通知させるために、ONU102−1に対してレポート送出開始時刻Tb2を含んだグラント121を送信する。このレポート送出開始時刻Tb2は、他のONUから送信されるレポートと衝突しないように計算される。
【0009】
ONU102−1は、自身に対するグラント121を受信すると、バッファ103−1に蓄積されたデータ量を参照して送出要求量を算出し、グラント121に含まれるレポート送出開始時刻Tb2に、OLT101に対して送出要求量を含んだレポート122を送出する。
【0010】
OLT101はレポート122を受信すると、固定または可変の最大送出許可量以下となり、かつレポート122に含まれるバッファ内データ量のデータをなるべく多く送れるような値を演算し、演算結果を送出許可量としてグラント123に挿入する。レポート122に含まれる送出要求量がゼロの場合には、OLT101による演算結果がゼロとなるため帯域が割当てられないが、ONU102−1にレポートを送出させる必要があるので、OLT101はONU102−1に対して必ずグラント123を送出する。
【0011】
グラント123に含まれる送出開始時刻Tb4は、演算済みである前回のONUデータの受信予定時刻、前回のONUの送出許可量、現在のONUに関するRTTおよび固定時間であるガードタイムを用い、データおよびレポートが他のONUからのデータまたはレポートと衝突しないように計算される。なお、OLT101は、送出許可量および送出開始時刻Tb4を含むグラント123を送出する時刻Ta3を、グラント123が送出開始時刻Tb4までにONU102−1に到着するように計算する。
【0012】
ONU102−1は、自身に対するグラント123を受信すると、グラント123に含まれる送出開始時刻Tb4に、送出許可量分のデータ124を、次回の送出要求量を含んだレポートとともにOLT101に送出する。このレポートはデータの直前または直後に送出されるが、データの直前に送出される場合には、送出要求量としてOLT101に報告する値は、バッファ103−1に蓄積されているデータ量とデータ124のデータ量との差分である。
【0013】
OLT101はデータおよびレポート124を受信すると、データを上位ネットワーク109に送出し、レポートについてはレポート122に対する処理と同様の処理を行なう。以上説明した処理は、全てのONU102−1〜102−nに対して独立に行なわれ、運用時間が終了するまで時刻Ta3〜時刻Ta4の処理が繰返される。
【0014】
図9は、分散割当方式の一例を示す図である。この図は、ONU数を3とした場合の帯域割当てと、OLT−ONU間のグラントおよびレポートの送受信とを示すシーケンス図である。
【0015】
OLT101は、ONU102−3、102−2および102−1に対して、グラント131〜133を順次送出する。OLT101は、ONU102−3、102−2および102−1からレポート134〜136を受信すると、最初にデータの送出を許可するONU102−3に対するグラント137を送出する。
【0016】
OLT101は、ONU102−3から送出されるデータ138を受信するとともに、これと並行してONU102−2に対するグラント139を送出する。以降同様の処理が繰返され、OLT101は順次ONU102−1〜102−3に対して帯域を割当てて、データの受信を繰返す。
【0017】
これに関連する先行技術として、「IPACT:A Dynamic Protocol for an Ethernet(R) PON」(Glen Kramer他、pp74-80,IEEE Commun,Feb.2002.)がある。この先行技術は、EPON方式のFTTHサービスにおける動的割当方式に関するものであり、OLTが各ONUに対して独立にレポートを送出させ、その都度OLTが対応するONUにグラントを発行する分散型割当方式に関するものである。
【0018】
図10は、このようなPONシステムに接続されるONUを試験する従来の試験装置の一例を示す図である。この試験装置は、規範OLT101と、規範ONU102−1〜102−31と、スプリッタ105と、被試験ONU150と、イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ151とを含む。この試験装置においては、最大32台のONUが収容できるPONを想定している。
【0019】
この試験装置には、試験対象の被試験ONU150以外に、システム的な負荷を与えるために31台の規範ONU102−1〜102−31が接続される。この規範ONU102−1〜102−31には、動作が保証されたONUが使用される。また、規範OLT101にも、動作が保証されたものが使用される。
【0020】
イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ151は、上位ネットワーク109に接続されるサーバや、下位ネットワーク110に接続される端末の代わりに、イーサネット(R)フレームを生成して規範OLT101、規範ONU102−1〜102−31または被試験ONU150へ送信する。そして、規範OLT101、規範ONU102−1〜102−31または被試験ONU150からイーサネット(R)フレームを受信することによって、被試験ONU150の試験を行なう。
【0021】
このような構成を有する試験装置によって、被試験ONU150が正しく動作するか、被試験ONU150が他の規範ONUに102−1〜102−31に悪影響を与えないか、などが検証される。
【0022】
また、この試験装置は、OLTを試験対象とすることも可能である。この場合、図10に示す規範OLT101が試験対象の被試験OLTに置換えられ、被試験ONU120が規範ONUに置換えられる。試験装置をこのような構成とすることによって、被試験OLTが最大数のONUを正しく収容し、正しくデータ通信が行えるかが検証される。
【0023】
さらには、図10に示す規範OLT101だけを試験対象の被試験OLTに置換えることによって、被試験OLTの動作と被試験ONUの動作とを同時に検証することも可能である。
【0024】
【非特許文献1】
「IPACT:A Dynamic Protocol for an Ethernet(R) PON」(Glen Kramer他、pp74-80,IEEE Commun,Feb.2002.)
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
OLTおよびONUの開発、製造時にはPONシステムとしての動作検証が必要であり、上述した試験装置が使用される。しかし、PONの最大構成におけるOLTまたはONUの動作検証が必要となるため、OLTに32台程度のONUを収容することが必要となる。そのため、試験装置の規模が大きくなり、経済性、簡便性が悪くなるといった問題点があった。
【0026】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、第1の目的は、装置の構成を簡略化することができ、コストを削減することが可能な受動的光ネットワーク試験装置を提供することである。
【0027】
PONに収容される仮想ONUの属性を容易に設定することが可能な受動的光ネットワーク試験装置を提供することである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の受動的光ネットワーク試験装置は、受動的光ネットワークに接続された光加入者線終端装置または光加入者線端局装置を試験するための受動的光ネットワーク試験装置であって、光加入者線端局装置から受信した制御フレームに応じて、複数の光加入者線終端装置の動作を模擬するための模擬手段と、外部から受けた試験のためのフレームに含まれる識別子に応じて、当該フレームを模擬手段によって模擬される光加入者線終端装置のいずれかに振分けるための振分け手段とを含み、模擬手段は、制御端末からの指示に応じて、模擬する複数の光加入者線終端装置の仮想伝播遅延を設定するための制御手段を含む。
【0029】
模擬手段が、光加入者線端局装置から受信した制御フレームに応じて、複数の光加入者線終端装置の動作を模擬するので、装置の構成を簡略化することができると共に、コストを削減することが可能となる。
【0037】
また、光加入者線終端装置があたかも長い光ファイバに接続されているような状況を模擬することが可能となる。
【0038】
請求項2に記載の受動的光ネットワーク試験装置は、請求項1に記載の受動的光ネットワーク試験装置であって、さらに試験用のフレームを生成するフレーム試験機と、フレーム試験機の第1のポートに接続され、フレーム試験機との間でフレームを送受信し、受信したフレームを前記振分け手段へ出力するインタフェース手段とを含み、光加入者線端局装置は、フレーム試験機の第2のポートに接続される。
【0039】
したがって、フレーム試験機が、模擬手段によって模擬される複数の光加入者線終端装置および光加入者線端局装置にフレームを送信することによって、様々な負荷状態における試験を実現することが可能となる。
【0040】
請求項3に記載の受動的光ネットワーク試験装置は、請求項2に記載の受動的光ネットワーク試験装置であって、試験対象の光加入者線終端装置は、フレーム試験機の第3のポートに接続される。
【0041】
したがって、フレーム試験機が、試験対象の光加入者線終端装置にフレームを送信することによって、様々な負荷状態における試験を実現することが可能となる。
【0042】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態における試験装置の概略構成を示すブロック図である。この試験装置は、規範OLT1と、被試験ONU2と、擬似ONU3と、イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4と、擬似ONU3を制御する制御端末5と、スプリッタ8とを含む。この試験装置においては、最大32台のONUが収容できるPONを想定している。
【0043】
この試験装置には、試験対象の被試験ONU2以外に、システム的な負荷を与えるために擬似ONU3が接続される。擬似ONU3は、図10に示す従来の試験装置における規範ONU102−1〜102−31の動作を擬似的に実現するものであり、その詳細は後述する。
【0044】
規範OLT1は、光ファイバ6およびスプリッタ8を介して被試験ONU2および擬似ONU3に接続される。また、擬似ONU3と、イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4とは、たとえば1本のイーサネット(R)7で接続される。
【0045】
規範OLT1はイーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4の1つのポートに接続され、被試験ONU2はイーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4の別のポートに接続され、擬似ONU3はイーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4のさらに別のポートに接続される。
【0046】
図2は、擬似ONU3の詳細を説明するためのブロック図である。擬似ONU3は、ONUの物理層を制御するPON−PHY部11と、仮想ONU12−1〜12−31と、振分け処理部13と、LAN送受信IF(Interface)14と、制御端末5に接続され、擬似ONU3の全体的な制御を行なう制御部15と、OR回路16とを含む。
【0047】
LAN送受信IF14は、イーサネット(R)7を介してイーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4の1つのポートに接続され、イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4との間でイーサネット(R)フレームの送受信を行なう。
【0048】
振分け処理部13は、LAN送受信IF14から出力されたイーサネット(R)フレームの識別子、たとえばVLAN(Virtual LAN) IDを参照して仮想ONUを選択し、イーサネット(R)フレームを出力する。また、振分け処理部13は、仮想ONU12−1〜12−31から出力されたイーサネット(R)フレームをLAN送受信IF14へ出力する。下りフレームは時分割されているので、振分け処理部13は仮想ONU12−1〜12−31から出力されたイーサネット(R)フレームを、そのままLAN送受信IF14へ出力するだけで多重化が行なえる。
【0049】
仮想ONU12−1〜12−31は、自身へのグラントフレームに基づいて上りフレームの送信期間を計算し、その送信期間中レーザオン信号を出力する。OR回路16は、仮想ONU12−1〜12−31から出力されるレーザオン信号の論理和を演算して出力する。
【0050】
PON−PHY部11は、仮想ONU12−1〜12−31から上りフレームを受けると、OR回路16から出力されるレーザオン信号に同期して電気信号を光信号に変換して、スプリッタ8へ上りフレームを送出する。
【0051】
制御部15は、制御端末5に接続されており、制御端末5からのコマンドに応じて、どの仮想ONUを稼動させるか、どの仮想ONUにどのような属性やVLAN IDを設定するか、などの制御を行なう。
【0052】
仮想ONU12−1〜12−31は、一般的なONUからPON−PHY部およびLAN送受信IFに相当する部分を削除した構成を有するが、PON側から複数のONUがあるかのように見えれば、その実体は何でもよい。また、データパスが共通であって、PON制御プロトコルのみ独立して動作するようなものでもよい。
【0053】
また、仮想ONUの特有の属性として、仮想伝播遅延を加えるようにしてもよい。仮想ONUの時刻を、OLTから送られるフレーム内のタイムスタンプ値で更新するとき、仮想伝播遅延分だけ戻した時刻で更新することによって、そのONUが長い光ファイバを介してつながっているかのように模擬することが可能となる。
【0054】
イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4は、擬似ONU3に接続しているポートにVLANを設定し、上述した振分け処理部13による振分け処理と連動させる。これによって、イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ4から選択的に仮想ONU12−1〜12−31へのトラフィックを注入することができ、任意の負荷状況を実現することができる。
【0055】
図3は、仮想ONU12−1〜12−31の構成の一例を示すブロック図である。図2において、仮想ONU12−1〜12−31は、個別のものとして示しているが、図3に示すように仮想ONU12−1〜12−31とレーザオンのOR回路16とを共通にすることも可能である。以下、この共通化された仮想ONUを、仮想ONU群と呼ぶことにする。
【0056】
仮想ONU群は、PON−PHY部11を介してフレームを受信する受信部21と、仮想ONU群の全体的な制御を行なうPON制御部22と、振分け処理部13から受けたフレームを蓄積するバッファメモリ23と、バッファメモリ23に蓄積されたフレームをPON−PHY部11を介して送信する送信部24とを含む。
【0057】
受信部21は、受信フレームのPONヘッダに記述されたONU識別子を参照して、管轄する仮想ONU12−1〜12−31以外の宛先のフレームを廃棄する。受信フレームが管轄する仮想ONU12−1〜12−31宛てのフレームの場合には、さらにフレームタイプを参照して、PON制御フレームおよびユーザフレームのいずれであるかを区別する。受信フレームがPON制御フレームであれば、そのPON制御フレームをPON制御部22へ送り、ユーザフレームであれば、そのユーザフレームを振分け処理部13へ送る。
【0058】
バッファメモリ23は、振分け処理部13から受けたユーザフレームを仮想ONU毎のキューに記憶する。さらに、サービスクラス別のキューに記憶するようにしてもよい。
【0059】
PON制御部22は、管轄する仮想ONU12−1〜12−31全てのPON制御フレームを終端し、必要に応じてPON制御フレームを生成して規範OLT1へ送出する。また、PON制御部22は、制御部15からの指示に応じて、仮想ONUをPONへ加入させたり、離脱させたりする。そのため、OLTとの間で取り決められたプロトコルに従ったPON制御フレームを、規範OLT1との間で送受信する。
【0060】
また、PON制御部22は、仮想ONUがPONに加入している間、バッファメモリ23における仮想ONU毎のキューの状態を調べ、上り帯域要求問合せ、帯域要求、帯域割当てなどのPON制御フレームを、規範OLT1との間で送受信し、PON区間内でフレームを送ってもよい期間を獲得する。そして、PON制御部22は、その期間にバッファメモリ23にキューイングされたユーザフレームを、送信部24に送信させる。
【0061】
また、PON制御部22は、PON制御フレームを規範OLT1へ送信する場合、PON制御フレームを一旦バッファメモリ23に書込み、規範OLT1によって送信を許可された期間に、そのPON制御フレームを送信部24に送信させる。
【0062】
さらには、PON制御部22は、保守監視フレームを終端すると共に、応答の保守監視フレームを生成し、PON制御フレームと同様の方法で送信部24に送信させるようにしてもよい。PON制御部22は、ユーザフレーム、PON制御フレームまたは保守監視フレームを送出している間、レーザオン信号をPON−PHY部11へ出力する。
【0063】
PON制御部22は、複数の仮想ONU12−1〜12−31を管理するため、仮想ONU毎の状態を保持する。PONの性質上、OLTからのフレームの到着およびOLTへのフレームの送出は、それぞれ逐次的になるので、複数の仮想ONUを管理する場合でも、基本的には1つのステートマシンで擬似ONUを構築することが可能である。
【0064】
仮想ONUがPONに加入するための手続は、OLTが加入問合せをしている比較的長い期間の中で、ONUがランダムに決定した期間に加入要求をOLTへ送出することになっている。したがって、複数のONUからの加入要求が衝突することによって、加入要求が失敗する場合がある。この状態を模擬するために、PON制御部22は、1つの加入問合せ期間に複数の仮想ONUが加入要求を送出する場合、その加入要求を送出する期間がオーバラップしているか否かを判断し、オーバラップしている場合には加入要求を送出しないか、CRC(Cyclic Redundancy Check)エラーなどの無効なフレームを送出する。
【0065】
図4は、図2に示す振分け処理部13の構成を示すブロック図である。この振分け処理部13は、VLANタグ内のVIDに対応してONU識別子が格納される振分けテーブル31と、上りユーザフレームに含まれるVLANタグ内のVIDを切出して振分けテーブル31へ出力するVID切出し部32とを含む。
【0066】
振分けテーブル31の内容は、制御部15によって管理される。ただし、このVIDは、試験のために便宜的に使用されるものであるので、VIDがONU識別子と同じになるような簡易な変換式を取決めることによって、振分けテーブル31を削除することも可能である。
【0067】
制御部15は、通常のONUと同様に、擬似ONU3をONUとして動作させるための基本的な設定を行なう。また、制御部15は、制御回線を介して接続される制御端末5に対して、設定の問合せや変更に対応するコマンドラインインタフェース(CLI)を提供する。
【0068】
図5は、制御部15が制御端末5から受けるコマンドの種類を説明するための図である。加入コマンドは、仮想ONUをPONに加入させるためのコマンドであり、パラメータとして仮想ONUのビットマップが付加される。PON制御部22は、この加入コマンドを受けると、ビットマップで“1”となっている仮想ONUをPONに加入させる。このとき、PONに加入される仮想ONUの電源オンが模擬される。複数の仮想ONUを同時に電源オンする場合には、ビットマップの複数ビットが“1”とされる。
【0069】
離脱コマンドは、仮想ONUをPONから離脱させるためのコマンドであり、パラメータとして仮想ONUのビットマップが付加される。PON制御部22は、この離脱コマンドを受けると、ビットマップで“1”となっている仮想ONUをPONから離脱させる。このとき、PONから離脱される仮想ONUの電源オフが模擬される。複数の仮想ONUを同時に電源オフする場合には、ビットマップの複数ビットが“1”とされる。
【0070】
加入問合せコマンドは、PONに加入している仮想ONUを通知させるためのコマンドであり、パラメータは付加されない。PON制御部22は、この加入問合せコマンドを受けると、そのときPONに加入している仮想ONUをビットマップ形式で通知する。
【0071】
振分けテーブル設定コマンドは、振分けテーブル31の内容を設定するためのコマンドであり、パラメータとしてエントリ番号とそれに対応するONU識別子とが付加される。PON制御部22は、この振分けテーブルコマンドを受けると、振分け処理部13に対して、振分けテーブル31のエントリ番号に対応するONUの識別子を設定させる。
【0072】
振分けテーブル問合せコマンドは、振分けテーブル31に設定されているエントリ番号の内容を通知させるためのコマンドであり、パラメータとしてエントリ番号が付加される。PON制御部22は、この振分けテーブル問合せコマンドを受けると、振分け処理部13に対してエントリ番号の内容を問合せ、その結果を通知する。
【0073】
追加RTT設定コマンドは、仮想ONUに対して、往復伝播時間が追加RTTだけ遅延するように模擬させるためのコマンドであり、パラメータとしてONU識別子と、追加RTTとが付加される。PON制御部22は、この追加RTTコマンドを受けると、ONU識別子で指定された仮想ONUの往復伝播時間が追加RTT分だけ遅延するように模擬する。
【0074】
追加RTT問合せコマンドは、仮想ONUに設定されている追加RTTを問合せるためのコマンドであり、パラメータとしてONU識別子が付加される。PON制御部22は、この追加RTT問合せコマンドを受けると、ONU識別子で指定された仮想ONUに設定されている追加RTTを通知する。
【0075】
図6(a)は、基本的なRTT測定を説明するための図である。OLTが時刻T1にPON制御フレームをONUへ送出する場合、PON制御フレーム中のタイムスタンプに時刻T1が記述される。ONUは、このPON制御フレームを受取った時点で、そのPON制御フレームに記述されているタイムスタンプを用いて、自身の時計を更新する。ONUに与えられた送信開始時刻は、ONUの時計が基準となり、その時刻をT4とする。OLTは、ONUから時刻T5(OLTの時計による時刻)にPON制御フレームを受信する。このとき、RTT=T5−T4となる。
【0076】
図6(b)は、擬似ONUにおけるRTT測定を説明するための図である。OLTがPON制御フレームを仮想ONUへ送出する場合、実際の仮想ONUはL0の位置にあるとする。仮想ONUがあたかもL1の位置にあるかのように模擬させるために、擬似ONU3の制御部15は、PON制御フレームを受信した時点で、そのPON制御フレームに記述されているタイムスタンプで自身の時計を更新する。そして、仮想ONUに与えられている送信開始時刻を追加RTT分だけ遅らせる。擬似ONUの時計がその時刻になれば、PON制御部22は、PON制御フレームの送信を開始する。このPON制御フレームに記述されるタイムスタンプは、そのときの時刻から追加RTTだけ戻った時刻とする。このようにして、擬似ONUがあたかもL1の位置にあるかのように模擬させることが可能となる。
【0077】
また、各擬似ONUに独立した時計を持たせ、タイムスタンプから追加RTT分だけさかのぼった時間で時計を更新してもよい。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態における検査装置によれば、1台の擬似ONU3が複数台の規範ONUの動作を模擬するようにしたので、受動的光ネットワーク検査装置の構成を簡略化することができると共に、受動的光ネットワーク試験装置のコストを削減することが可能となった。
【0079】
また、PON制御部22が、制御端末5から追加RTT設定コマンドを受けた場合、往復伝播時間を追加RTT分だけ遅延するようにしたので、仮想ONUがあたかも長い光ファイバに接続されているかのような状況を模擬することが可能となった。
【0080】
また、PON制御部22が、制御端末5から受けた加入コマンドまたは離脱コマンドに対応して、仮想ONUをPONに加入させたり、仮想ONUをPONから離脱させたりするようにしたので、PONに収容される仮想ONUの数を任意とすることができ、様々な状況での試験を実現することが可能となった。
【0081】
さらには、PON制御部22が、制御端末5から受けた振分けテーブル設定コマンドに対応して、仮想ONUにVIDを設定するようにしたので、仮想ONUに任意のONU識別子を付与することができ、試験装置の汎用性を高めることが可能となった。
【0082】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0083】
【発明の効果】
請求項1に記載の受動的光ネットワーク試験装置によれば、模擬手段が、光加入者線端局装置から受信した制御フレームに応じて、複数の光加入者線終端装置の動作を模擬するので、装置の構成を簡略化することができると共に、コストを削減することが可能となった。
【0087】
また、光加入者線終端装置があたかも長い光ファイバに接続されているような状況を模擬することが可能となった。
【0088】
請求項2に記載の受動的光ネットワーク試験装置によれば、フレーム試験機が、模擬手段によって模擬される複数の光加入者線終端装置および光加入者線端局装置にフレームを送信することによって、様々な負荷状態における試験を実現することが可能となった。
【0089】
請求項3に記載の受動的光ネットワーク試験装置によれば、フレーム試験機が、試験対象の光加入者線終端装置にフレームを送信することによって、様々な負荷状態における試験を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】 擬似ONU3の詳細を説明するためのブロック図である。
【図3】 仮想ONU12−1〜12−31の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】 図2に示す振分け処理部13の構成を示すブロック図である。
【図5】 制御部15が制御端末5から受けるコマンドの種類を説明するための図である。
【図6】 (a)は、基本的なRTT測定を説明するための図である。(b)は、擬似ONUにおけるRTT測定を説明するための図である。
【図7】 従来のPONシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図8】 従来のPONシステムの動作手順を説明するためのシーケンス図である。
【図9】 分散割当方式の一例を示す図である。
【図10】 PONシステムに接続されるONUを試験する従来の試験装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1,101 規範OLT、2,150 被試験ONU、3 擬似ONU、4,151 イーサネット(R)フレームジェネレータ/テスタ、5 制御端末、6光ファイバ、7 イーサネット(R)、8,105 スプリッタ、11 PON−PHY部、12−1〜12−31 仮想ONU、13 振分け処理部、14LAN送受信IF、15 制御部、16 OR回路、22 PON制御部、23 バッファメモリ、24 送信部、31 振分けテーブル、32 VID切出し部、102−1〜102−n 規範ONU、103−1〜103−n バッファ、104 伝送路、106 グラント、107 レポート、108 上り情報フレーム、109 上位ネットワーク、110 下位ネットワーク、111 ユーザ端末。
Claims (3)
- 受動的光ネットワークに接続された光加入者線終端装置または光加入者線端局装置を試験するための受動的光ネットワーク試験装置であって、
前記光加入者線端局装置から受信した制御フレームに応じて、複数の光加入者線終端装置の動作を模擬するための模擬手段と、
外部から受けた試験のためのフレームに含まれる識別子に応じて、当該フレームを前記模擬手段によって模擬される光加入者線終端装置のいずれかに振分けるための振分け手段とを含み、
前記模擬手段は、制御端末からの指示に応じて、模擬する複数の光加入者線終端装置の仮想伝播遅延を設定するための制御手段を含む、受動的光ネットワーク試験装置。 - 前記受動的光ネットワーク試験装置はさらに、試験用のフレームを生成するフレーム試験機と、
前記フレーム試験機の第1のポートに接続され、前記フレーム試験機との間でフレームを送受信し、受信したフレームを前記振分け手段へ出力するインタフェース手段とを含み、
前記光加入者線端局装置は、前記フレーム試験機の第2のポートに接続される、請求項1記載の受動的光ネットワーク試験装置。 - 試験対象の光加入者線終端装置は、前記フレーム試験機の第3のポートに接続される、請求項2記載の受動的光ネットワーク試験装置。
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