JP4127087B2 - アンテナ装置および無線装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波あるいはミリ波帯域(0.3〜300(GHz))の電波を用いるアンテナ装置、および、このアンテナ装置を用いた無線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、アクセス回線を用いたインターネットへの接続が、時間および場所の制約を受けず自由に行える環境の実現が望まれている。
アクセス回線が大容量の情報を高速に通信可能とする光ファイバである場合、インターネットへの接続において場所の制約を受けないように、光ファイバの敷設作業を行う必要がある。アクセス回線が電話線を利用したADSL(Asynchronous Digital Subscriber Line)である場合、基地局である電話局とアクセス端末との距離に通信速度が依存し、高速通信の点で低い回線品質となっている。また、いずれのアクセス回線も有線のため、移動体でのアクセスは原理的に困難である。
【0003】
これに対して、無線LANに代表される無線アクセス回線は、屋内および屋外における電波の送受信はもちろん、無線の特徴を生かした移動体でのアクセスも可能であり、マイクロ波あるいはミリ波帯域の電波を用いることで高速な無線通信を行うことができる。今後、屋内と屋外間における高速な無線通信の実現が期待されている。
一般に、屋内と屋外間の無線通信の場合、屋内、すなわち、建物内部は、鉄あるいはコンクリート等を用いた厚さの厚い構造体で囲まれているため、マイクロ波あるいはミリ波帯域の高周波の電波はこの構造体を透過することができず、無線通信を行うことができない。このため、建物内の通路あるいは換気等の目的で設けられている建物の開口部、特に窓ガラスを設けた開口部にアンテナを設置して開口部で信号の送受を行いながら、屋内と屋外間の無線通信を行うことが考えられる。
【0004】
無線通信を行う場合、一般に信号処理回路で生成した処理信号により搬送波を変調して高周波信号を生成し、この高周波信号を電波に変換して伝送するので、無線装置には、高周波信号を生成するための無線周波数回路(RF回路)と高周波信号から電波を放射するアンテナ装置とが接続されている。アンテナ装置とRF回路との接続には、同軸ケーブルあるいはマイクロストリップ線路等を代表とする接地導体と信号線導体とを備える不平衡型伝送線路が用いられる。また、平衡型アンテナを用いて不平衡型伝送線路と接続する場合、不平衡電流の発生により生じるアンテナ装置の指向特性の劣化を防止するために、不平衡型伝送線路と平衡型アンテナとの接続部分である給電部分に平衡−不平衡変換素子(バラン)が設けられる。
【0005】
図9は、従来のアンテナ装置の構成の一例を示す斜視図である。
図9に示すアンテナ装置は、一対のダイポールアンテナで構成される平衡型アンテナ103が誘電体基板104の両面に形状加工されて設けられている。また、接地導体105と信号線路106とを有するマイクロストリップ線路が、誘電体基板104の両面に形状加工されて設けられたレッヘル線(平衡二線)120を介して各々の平衡型アンテナ103に接続されている。レッヘル線120の一方は接地導体105と接続され、レッヘル線の他方は信号線路106と接続されている。ここでレッヘル線は、上記バランとして機能して、アンテナ装置の指向特性の劣化を抑制している。
【0006】
また、下記非特許文献1では、誘電体基板上に設けられた平衡型のquasi-八木アンテナに、コプレーナストリップ線路(共平面線路)を介して、マイクロストリップ線路等から給電されるアンテナ装置が開示されている。ここで、コプレーナストリップ線路は、複雑な形状に加工された部分有し、この部分がバランとして機能する。
さらに、下記非特許文献2では、不平衡型伝送線路であるマイクロストリップ線路と平衡型伝送線路であるコプレーナストリップ線路との接続部分に、バランとして機能する、複数の基板の端部を金リボンで溶接した変換回路を設けることが開示されている。
【0007】
【非特許文献1】
N.Kaneda, W.R.Deal, Y.Qian, R.Waterhouse and T.Itoh,
" A Broad-band Planar Quasi-Yagi Antenna",
IEEE Transactions on Antennas and Propagation,Vol.50,No.8,p.1158-1160,Aug.2002
【非特許文献2】
H.Y.Lee, T.Itoh,
"Wideband and Low Return Loss Coplanar Strip Feed Using Intermediate Microstrip",
Electron. Lett.,Vol.24,No.9,p.1207-1208,Sept.1988
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図9に示すアンテナ装置では、誘電体基板104の両面に一対のダイポールアンテナおよびレッヘル線をパターン加工して設ける際、両面のパターンの重なり位置の精度が高いことが要求され、生産効率が低い。また、誘電体基板104の両面に設けられるダイポールアンテナが互いに対称の位置に配置されて平衡型平面アンテナが構成されるので、ダイポールアンテナは誘電体基板104の面に垂直方向に直線上に配列されず、アンテナ装置としての交差偏波特性が劣化する。さらに、八木アンテナのように寄生素子を用いて多素子化した場合、給電されるアンテナ素子が同一平面上に設けられていないため、寄生素子への結合効率が若干低くなる。
【0009】
一方、非特許文献1で開示される平衡型のquasi-八木アンテナでは、このquasi-八木アンテナとコプレーナストリップ線路とが誘電体基板の一方の面にパターン加工して設けられので、図9に示すアンテナ装置のように両面のパターンの重なり位置の精度を考慮する必要がない。したがって、図9に示すアンテナ装置に比べて生産効率は向上する。しかし、バランとして機能するコプレーナストリップ線路の一部分が誘電体基板上で複雑な形状を成して2次元的に広がった回路となっているため、設計上の制約が多く設計自由度が低い他、アンテナ装置としての集積度の向上に限界がある。
【0010】
非特許文献2で開示される変換回路では、複数の基板に設けられた伝送線路のパターン同士を積層する際、位置精度を確保する必要があるが、この位置精度の確保が困難である。また、伝送線路同士の接続には溶接あるいはボンディング等の工程が必要であり生産効率が低い。
このように、平衡型アンテナとマイクロストリップ線路等の不平衡型伝送線路とが、バランとして機能する回路または素子を介して接続されるアンテナ装置において、指向性の高いアンテナ装置を効率よく作製することができない。
【0011】
そこで、本発明は、上述の問題を解決するために、誘電体基板の一方の面に設けられた平衡型平面アンテナがバランとして機能する回路を介して不平衡型伝送線路と接続されるアンテナ装置において、アンテナ装置としての設計自由度が高く、しかも、効率良く作製することのできるアンテナ装置を提供するとともに、このアンテナ装置を用いて、屋内、屋外間で無線通信を行う際、信号の劣化を低減した無線装置を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、誘電体基板と、誘電体基板の基板面に設けられた平衡型平面アンテナと、誘電体基板の前記基板面に設けられた一対の信号線路を有するコプレーナストリップ線路と、コプレーナストリップ線路に接続された、信号線路と接地導体とを有する不平衡型伝送線路と、を備え、前記コプレーナストリップ線路は前記平衡型平面アンテナに接続されており、前記誘電体基板は、前記不平衡型伝送線路の信号線路および接地導体のいずれか一方を前記コプレーナストリップ線路の信号線路に配線接続させるための、前記誘電体基板の厚さ方向に配線された配線接続部分を有し、前記コプレーナストリップ線路の信号線路と前記配線接続部分との接続位置は、前記配線接続部分と接続される前記コプレーナストリップ線路の信号線路と、前記コプレーナストリップ線路における前記一対の信号線路間に挟まれた間隙部分との境界近傍に設けられていることを特徴とするアンテナ装置を提供する。
【0013】
ここで、前記配線接続部分は、例えば、前記誘電体基板の縁部あるいは縁部に囲まれた内側領域に設けられる。
また、前記不平衡型伝送線路の信号線路および接地導体は、例えば、前記誘電体基板を挟んで互いに異なる面に設けられており、前記配線接続部分は、前記誘電体基板を貫通する貫通導体によって構成される。その際、前記基板面と反対側の面に設けられた前記不平衡型伝送線路の信号線路および接地導体のいずれか一方は、前記貫通導体により前記基板面と反対側の面から、すなわち前記基板面の面の外から、前記コプレーナストリップ線路の信号線路と配線接続される。また、前記基板面に設けられる前記不平衡型伝送線路の信号線路および接地導体の他方は、前記基板面で前記コプレーナストリップ線路の他方の信号線路と配線接続される。
【0014】
前記不平衡型伝送線路は、例えば、マイクロストリップ伝送線路、ストリップ線路あるいは同軸線路等が例示される。前記平衡型平面アンテナは、例えば、プリントフォールデッドダイポールアンテナが例示される。
ここで、前記不平衡型伝送線路と平衡型伝送線路である前記コプレーナストリップ線路間の接続における高周波信号の変換効率を向上させる点から、前記アンテナ装置は以下のように構成するのが好ましい。
)前記不平衡型伝送線路がマイクロストリップ伝送線路の場合、マイクロストリップ伝送線路における接地導体は、前記貫通導体との接続位置に近づくにつれて、マイクロストリップ伝送線路の信号線路方向と直交する方向の前記接地導体の横幅が狭くなる形状とするのが好ましい。
)前記コプレーナストリップ線路は、前記平衡型平面アンテナとインピーダンス整合するように特性インピーダンスを設定するのが好ましい。
)前記不平衡型伝送線路は、前記コプレーナストリップ線路の特性インピーダンスに一致するように特性インピーダンスを設定するのが好ましい。
【0015】
さらに、前記誘電体基板には、前記平衡型平面アンテナを複数個一方向に配列して設けることで、この配列方向に対して略直交し前記誘電体基板の前記基板面に対して略垂直な方向(ブロードサイド方向)に双指向性を有するアレイアンテナが構成されるのが好ましい。
このようなアレイアンテナを構成することで、誘電体基板を挟んだ両側(前記基板面の側とこの基板面と反対の面側)との間で無線通信を可能とする無線装置を構成することができる。
【0016】
すなわち、本発明は、回路基板に設けられた無線周波数回路と、前記回路基板を前記誘電体基板とした前記アンテナ装置と、を有することを特徴とする無線装置を提供する。これにより、前記アンテナ装置と無線周波数回路とを一体化して、信号の劣化を低減することができる。また、誘電体基板を挟んだ両側に感度を有する双指向性を備えた平衡型平面アンテナを用いることで、回路基板を挟み両側の双方向に感度を有する無線装置となる。
【0017】
ここで、前記無線装置における厚さは、例えば、30mm以下であり、この無線装置は、建物や自動車等の窓ガラスに固着して電波の送信および受信の少なくとも一方を行うのが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアンテナ装置および無線装置を、添付の図面に示される好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1(a)は、本発明のアンテナ装置の一実施形態を示すアンテナ装置10の斜視図であり、図1(b)は、アンテナ装置10の平面図である。
アンテナ装置10は、誘電体基板12と、誘電体基板12に設けられた平衡型平面アンテナ14と、コプレーナストリップ線路(以降、CPS線路という)16と、接地導体18と信号線路20とを有する不平衡型伝送線路であるマイクロストリップ線路(以降、MS線路という)22と、を備えて構成されている。
CPS線路16は、平衡型平面アンテナ14と同じ側の誘電体基板12の面(以降、第1の面という)に設けられた一対の信号線路16a,16bとを有し、一対の信号線路16a,16bが平衡型平面アンテナ14に接続されている。
MS線路22における接地導体18は、誘電体基板12の第1 の面に設けられ、CPS線路16の信号線路16bと第1の面で接続されている。一方、信号線路20は、誘電体基板12の第1の面と反対側の面(以降、第2の面という)に設けられ、この第2の面から、誘電体基板12を厚さ方向に貫通したビアホール24を介してCPS線路16の信号線路16aと接続されている。
【0020】
ここで、上述の平衡型とは、一対の信号線路に、互いに振幅が同じで極性が逆の電圧を掛けることで信号を伝える方式をいい、例えば、アンテナではフォールデッドダイポールアンテナが、伝送線路ではコプレーナストリップ線路が例示される。一方、不平衡型とは、基準の電位、例えば接地導体の電位に対して電圧を変動させて信号を伝える方式をいい、例えば、アンテナではマイクロパッチアンテナ、伝送線路ではマイクロストリップ線路が例示される。
【0021】
誘電体基板12は、一定の厚さを備える板状の電気絶縁性を有する部材であって、ガラス、樹脂、セラミック等の誘電体材料で構成されたものである。例えば、比誘電率εr =3.4、誘電正接Tanδ=0.0025、基板厚さ0.74mmの基板である。
【0022】
平衡型平面アンテナ14は、直線状のアンテナエレメントを折り曲げたプリントフォールデッド(折り曲げ)ダイポールアンテナである。平衡型平面アンテナ14のアンテナ長さL3 (図1(b)参照)は、例えば、誘電体基板12による波長短縮効果を考慮した電波の伝播波長λg の1/2の長さとされる。アンテナ寸法L2 (図1(b)参照)は給電側に位置する直線状のアンテナエレメントとこのアンテナエレメントを折り曲げた非給電側に位置する直線状のアンテナエレメントとの間に位相差が生じるのであまり長くすることはできない。アンテナ寸法L2 は、アンテナエレメントの幅にも依存するが、例えば、略0.001λg 〜0.1λg の範囲にするとよい。図1(a),(b)に示すアンテナ装置10では、アンテナ寸法L2 を0.05λg の長さとしている。平衡型平面アンテナ14における入力インピーダンスは、例えば、アンテナエレメントの幅W1 (図1(b)参照)とW2 (図1(b)参照)の比をW1 :W2 =1:0.737とし、200Ωに調整されている。
【0023】
CPS線路16は、一対の平行な帯状の導体で構成される信号線路16a,16bを有し、各信号線路16a,16bの一方の端部は、平衡型平面アンテナ14に接続されている。一方、信号線路16bの他方の端部は、MS線路22における接地導体18と誘電体基板12の第1の面で接続されている。信号線路16aの他方の端部は、誘電体基板12を貫通する貫通孔の内表面に導体(貫通導体)が設けられたビアホール24を介して、誘電体基板の第2の面に設けられた信号線路20と接続されている。すなわち、ビアホール24によって信号線路20を信号線路16aに配線接続させる配線接続部分が誘電体基板12に構成されている。このビアホール24と信号線路16aとの接続位置は、平行な信号線路16a,16b間に挟まれた間隙部分との境界近傍にあるのが好ましい。これにより、後述する不平衡型伝送線路であるMS線路22と平衡型伝送線路であるCPS線路16との接続に際して高周波信号の変換効率を向上させることができる。ビアホール24によって構成される配線接続部分での高周波信号の変換は、誘電体基板12を横切るMS線路22において生成される電界成分が、CPS線路16において誘電体基板12の表面に平行な電界成分に変換されることによって行われるものと考えられる。この考えに基づいて、CPS線路16において電界成分の集中する、信号線路16a、16b間に挟まれた間隙部分との境界近傍にビアホール24との接続位置を設けることで、MS線路22において生成された高周波信号の電界成分を効率よくCPS線路16の電界成分に変換することができる。
【0024】
なお、一般にCPS線路は特性インピーダンスを低くすることが困難である。しかし、平衡型平面アンテナ14とMS線路22との間に介在するCPS線路16の線路長L1 をλg /4の奇数倍の長さにすることで、平衡型平面アンテナ14とMS線路22とのインピーダンス整合をとることができる。このとき、平衡型平面アンテナ14の入力インピーダンスをZant 、MS線路22の特性インピーダンスをZubl とすると、CPS線路16の特性インピーダンスZcps は(Zant ・Zubl ) (1/2) で決定される。通常、伝送線路の特性インピーダンスは50Ωに設定されるので、Zubl =50Ωであり、上述した例のように、200Ωの平衡型平面アンテナ14の入力インピーダンス(Zant =200Ω) と整合させるためには、Zcps =100Ωであればよい。この場合、CPS線路16の線路長さL1 を例えば1.25λg として、100Ωの特性インピーダンスで設計するとよい。また、CPS線路16の線路幅W3 (図1(b)参照)および線路間隙の幅W4 (図1(b)参照)の比は、例えば、W3 :W4 =1:0.148と設定される。
【0025】
MS線路22は、誘電体基板12の第1の面に接地導体18を、第2の面に信号線路20が設けられた不平衡型伝送線路である。接地導体18は、CPS線路16における信号線路16bと接続するビアホール24との接続位置に近づくにつれて、信号線路20の方向に対して直交する方向の接地導体18の横幅が狭くなる形状、すなわち、斜めの切り込みが設けられている。不平衡型伝送線路では一般に接地導体の横幅は広い方が伝送の点で好ましい。しかし、平衡型伝送線路であるCPS線路16の信号線路16a,16bは同一パターンで一方向に伸びる帯状の線路を成しているので、接地導体18の横幅を広く維持した状態で信号線路16bと接続することは、変換効率の点で好ましくない。このため、CPS線路16と接続するビアホール24との接続位置に近づくにしたがって接地導体18の横幅を狭くすることにより接続位置において電界を集中させ、変換効率を高くしている。
【0026】
アンテナ装置10における平衡型平面アンテナ14と、CPS線路16の信号線路16a,16bと、MS線路22における接地導体18および信号線路20とは、上述したように誘電体基板12に設けられた導体で構成される。この導体は、例えば、銅箔厚み18μmの三菱化学(株) 製BTレジンCCL−HL870(M)の銅箔を所定の形状に加工して作製される。なお、アンテナ装置10は、平衡型平面アンテナ14、CPS線路16の信号線路16a,16b、および、MS線路22の各種寸法を調整して、所望の動作周波数、例えば5(GHz)で効率よく動作するように設計することができる。
【0027】
このようなアンテナ装置10は、送信の場合、不平衡型伝送線路であるMS線路22の信号線路20に給電された高周波信号が、誘電体基板12を横切る電界成分の生成によって伝送され、平衡型伝送線路であるCPS線路16に供給される。このとき、ビアホール24によって構成される配線接続部分において、MS線路22により誘電体基板12内に生成された電界成分が、CPS線路16における誘電体基板12の表面に平行な電界成分に変換されると考えられる。この電界成分の変換の際、不平衡電流が発生することがなく、CPS線路16に接続された平衡型平面アンテナ14において、誘電体基板12の面に対して垂直方向に指向性を有する電波が効率よく放射される。受信の場合は、上記送信と逆の作用により、平衡型平面アンテナ14からMS線路22へ高周波信号が伝送される。
【0028】
図2は、図1(a)に示すアンテナ装置10のリターンロス(反射減衰量)の一例を表した図であり、図3は、放射する電波の磁界面内における主偏波の指向特性の一例を表した図である。図3に示す角度は、図1(a)に示すxz面内におけるz軸からの角度θである。
なお、この例のアンテナ装置は、誘電体基板12として比誘電率εr =3.4、誘電正接Tanδ=0.0025、基板厚さ0.74mmの誘電体基板を用い、各信号線路およびアンテナの形状寸法を、線路長さL1 =1.25・λg 、アンテナ寸法L2 =0.05λg 、アンテナ長さL3 =1/2・λg 、W1 :W2 =1:0.737、W3 :W4 =1:0.148とし、入力インピーダンスおよび特性インピーダンスをZubl =50Ω、Zant =200Ω、Zcps =100Ωとし、動作周波数を5(GHz)として設計したものである。
【0029】
図2によると、設計時の動作周波数5(GHz)付近でリターンロスが増大し、共振することがわかる。
また、アンテナ装置は、図3によると、誘電体基板12の基板面に対して垂直方向、すなわち、略±90度の方向(図1中の略x軸および略−x軸方向)で主偏波が最大となる双指向性を備えることがわかる。
【0030】
このように、アンテナ装置10において、不平衡型伝送線路の信号線路20が誘電体基板12に設けたビアホール24を介して誘電体基板12の第2の面からCPS線路16の信号線路16aと接続されるので、バランの機能を誘電体基板12上に備えた簡単な装置構成のアンテナ装置が得られる。また、簡単な装置構成のアンテナ装置であるので、設計自由度が高く、効率良く作製することができる。
【0031】
本発明におけるアンテナ装置は、アンテナ装置10の構成に限定されず、図4(a)および(b)に示すようなアンテナ装置30であってもよい。
図4(a)は、本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示すアンテナ装置30の斜視図であり、図4(b)は、アンテナ装置30の平面図である。
【0032】
アンテナ装置30は、誘電体基板32と、誘電体基板32の第1の面に設けられた平衡型平面アンテナ34と、一対の信号線路36a,36bを有するCPS線路36と、接地導体38と信号線路40とを有するMS線路42と、を備えて構成される。
CPS線路36における一対の信号線路36a,36bは、誘電体基板32の第1の面に設けられ、平衡型平面アンテナ34に接続されている。
MS線路42における信号線路40は、誘電体基板32の第1の面に設けられ、CPS線路36の信号線路36bと第1の面で接続されている。一方、接地導体38は、誘電体基板32の第1の面と反対側の第2の面に設けられ、この第2の面から、誘電体基板32を厚さ方向に貫通したビアホール44を介してCPS線路36の信号線路36aと接続されている。すなわち、ビアホール44によって接地導体38を信号線路36aに配線接続させる配線接続部分が誘電体基板32に構成されている。
アンテナ装置30における平衡型平面アンテナ34、CPS線路36およびビアホール44の構成は、上述の平衡型平面アンテナ14、CPS線路16およびビアホール24と同様の構成であるので説明は省略する。
【0033】
MS線路42は、信号線路40が誘電体基板32の第1の面に設けられ、信号線路36bと接続されている。一方、接地導体38は、誘電体基板32の第2の面に設けられ、この第2の面からビアホール44を介して信号線路36aと接続されている。すなわち、アンテナ装置30においてMS線路42の接地導体38および信号線路40の設けられる誘電体基板32の面が、アンテナ装置10と異なっている他は、同様の構成を有する。
ビアホール44と信号線路36aとの接続位置は、アンテナ装置10と同様に、平行な信号線路36a、36b間に挟まれた導体のない間隙部分との境界近傍にあるのが好ましい。
【0034】
このようなアンテナ装置30においても、アンテナ装置10の作用と同様に、MS線路42において、誘電体基板32を横切る電界成分の生成によって高周波信号が伝送され、平衡型伝送線路であるCPS線路36に供給される。このとき、ビアホール44によって構成される配線接続部分において、誘電体基板32内に生成された電界成分が、CPS線路36における誘電体基板32の表面に平行な電界成分に変換されると考えられる。この電界成分の変換の際、不平衡電流が発生することがなく、CPS線路36に接続された平衡型平面アンテナ14において、誘電体基板32の面に対して垂直方向に指向性を有する電波が効率よく放射される。
【0035】
さらに、図4(a)および(b)に示されるアンテナ装置30に替えて図5に示すアンテナ装置50であってもよい。
図5は、本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示すアンテナ装置50の平面図である。
【0036】
アンテナ装置50は、MS線路の信号線路52において横幅が狭くなった領域51を有する以外はアンテナ装置30と同様の構成であるので、領域51以外の構成の説明は省略する。
MS線路における領域51は、信号線路54a,54bを有するCPS線路54の特性インピーダンスと略一致するように調整されたものである。すなわち、MS線路の特性インピーダンスをCPS線路の特性インピーダンスに近い値にして信号の変換効率を向上させるようにしたものである。例えば、領域51の特性インピーダンスを、上述したように、例えばZant =200Ω、Zubl =50ΩとしたときのCPS線路の特性インピーダンスZcps =100Ωと同じ値、すなわち、Zubl2=100Ωとする。この場合、図5中のCPS線路54とこのCPS線路54と同じ特性インピーダンスを持つ信号線路52の領域51との長さの総和Lを、λg /4の長さの奇数倍になるように設定することで、平衡型平面アンテナとMS線路とのインピーダンス整合を行うことができる。
【0037】
さらに、本発明のアンテナ装置においては、図6に示すように、誘電体基板に平衡型平面アンテナを一方向に複数配置(図6では2つ配置)して、アレイアンテナを構成したものであってもよい。本発明のバランの機能を備えたアンテナ装置において平衡型平面アンテナを誘電体基板に複数個を設けて、CPS線路と接続することにより、アレイアンテナの動作原理に基づき、単一のアンテナとは異なる指向性を実現することができる。
【0038】
図6は、本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示すアンテナ装置60の平面図である。
アンテナ装置60は、図4(a)および(b)に示すアンテナ装置30を左右対称に配置したものである。
アンテナ装置60は、誘電体基板62の第1の面に設けられた一対の平衡型平面アンテナ64、65と、一対の信号線路66a,66bを有するCPS線路66と、一対の信号線路67a,67bを有するCPS線路67と、CPS線路66,67に接続された、接地導体68および信号線路70を有するMS線路72と、を備えている。
MS線路72における接地導体68は、誘電体基板62の第1の面と反対側の第2の面に設けられ、この第2の面から、誘電体基板62を貫通するビアホール74を介してCPS線路における信号線路66a,67aと接続されている。すなわち、ビアホール74によって接地導体68を信号線路66a,67aに配線接続させる配線接続部分が誘電体基板62に構成されている。MS線路における信号線路70は、信号線路66b、67bと誘電体基板62の第1の面で接続されている。
ビアホール74と信号線路66a、67aとの接続位置は、平行な信号線路66a,66bおよび平行な信号線路67a, 67b間に挟まれた間隙部分との境界近傍にあるのが好ましい。
【0039】
このような構成においても、MS線路72の信号線路70に給電された高周波信号が、誘電体基板62を横切る電界成分の生成によって伝送され、CPS線路66,67に供給される。このとき、アンテナ装置10,30と同様に、ビアホール74によって構成される接続部分において、誘電体基板62内に生成された高周波信号の電界成分が、CPS線路66,67における誘電体基板62の表面に平行な電界成分に変換されると考えられる。この電界成分の変換の際、不平衡電流が発生することがなく、CPS線路66,67に接続された平衡型平面アンテナ64,65において効率よく電波が放射される。
【0040】
アンテナ装置60においては、平衡型平面アンテナ64,65に同位相で信号が給電されるため平衡型平面アンテナ64,65の配列方向であるエンドファイア方向に指向性がなく、平衡型平面アンテナ64,65の配列方向に略直交し、かつ誘電体基板62の面に対して略垂直な方向であるブロードサイド方向に双指向性を有するものとなる。ここでいうエンドファイア方向とは、図6中のz軸および−z軸方向で、ブロードサイド方向とは図6中のx軸および−x軸方向を意味する。
なお、アンテナ装置60は、MS線路72の接地導体68をビアホール74を介してCPS線路66,67と接続したものであるが、図1(a),(b)に示すアンテナ装置10のように、不平衡型伝送線路における信号線路をビアホールを介してCPS線路の信号線路と接続した構成としてもよい。
【0041】
以上、アンテナ装置における平衡型平面アンテナとしてフォールディッドダイポールアンテナを用いたが、本発明においては、フォールディッドダイポールアンテナに限定されるものではない。インピーダンス整合ができれば、ダイポールアンテナ又はプリント八木アンテナを用いてもよい。
また、不平衡伝送線路はMS線路に限定されるものではなく、ストリップ線路、同軸線路等を用いてもよい。
【0042】
以上、本発明のアンテナ装置を実施形態に沿って種々説明したが、本発明のアンテナ装置は、例えば、図7に示すような無線装置80に組み込まれ無線通信に利用される。
【0043】
図7は、本発明の無線装置の一実施形態を示す無線装置80の平面図である。
無線装置80は、高周波信号を生成するRF回路82と、図5に示したアンテナ装置50と同様の構成のアンテナ装置84,86とを有する。アンテナ装置84,86は、RF回路82の回路基板88をアンテナ装置84,86における誘電体基板として用いてアンテナ装置84,86とRF回路82とが回路基板88に一体的に設けられ、無線装置80の厚さが30mm以下となっている。無線装置80は、図示されない外部の信号処理回路とケーブル90およびコネクタ92を介して接続されている。
このように、高周波信号を生成するRF回路82をアンテナ装置84,86の近傍に設けることで、高周波信号の伝送距離が短くなり高周波信号の劣化が抑制される。
また、アンテナ装置84,86をアレイ状に配置するので、例えば、供給される高周波信号の位相を種々変化させて給電することにより種々の方向に電波を放射させることができ、また、種々の方向に受信感度を持たせることができる。したがって、ダイバーシティ機能を備える無線装置を構成することができる。このような無線装置80を図8に示すように、建物等の開口部96に設けられた窓ガラス等に固着して実装することで、屋内および屋外の間の無線通信を行うことができる。
【0044】
以上、本発明のアンテナ装置および無線装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0045】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のアンテナ装置では、平衡型平面アンテナと接続されたCPS線路における一対の信号線路のうちの一方が、誘電体基板を貫通する貫通導体等の誘電体基板の配線接続部分によって不平衡型伝送線路の信号線路または接地導体と接続され、この配線接続部分がバランとしての機能を有する。したがって、アンテナ装置は良好な指向性を備えることができる。また、従来のバランの機能を有する回路に比べて簡単な装置構成となるため、設計自由度が高く集積度の高いアンテナ装置、例えばアレイアンテナで構成されたアンテナ装置を効率良く作製することができる。
また、上記アンテナ装置を無線周波数回路の回路基板に無線周波数回路と一体的に設けることで、アンテナ装置の近傍に高周波信号を生成する無線周波数回路を設けることができ、伝送する高周波信号の劣化を抑制することができる。さらに、無線周波数回路の回路基板にアンテナ装置を設けた無線装置を、例えば窓ガラス等に実装することで、窓ガラスの両側に対して双指向性を有する無線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、本発明のアンテナ装置の一実施形態を示すアンテナ装置の斜視図であり、(b)は、(a)に示すアンテナ装置の平面図である。
【図2】 図1(a)に示すアンテナ装置のリターンロスの一例を表した図である。
【図3】 図1(a)に示すアンテナ装置の指向特性の一例を表した図である。
【図4】 (a)は、本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示すアンテナ装置の斜視図であり、(b)は、(a)に示すアンテナ装置の平面図である。
【図5】 本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示すアンテナ装置の平面図である。
【図6】 本発明のアンテナ装置の他の実施形態を示すアンテナ装置の平面図である。
【図7】 本発明の無線装置の一実施形態を示す無線装置の平面図である。
【図8】 図9に示す無線装置を開口部に一体化した様子を表す斜視図である。
【図9】 従来のアンテナ装置の斜視図である。
【符号の説明】
10,30,50,60,84,86 アンテナ装置
12,32,62 誘電体基板
14,34,64,65 平衡型平面アンテナ
16,36,54,66,67 コプレーナストリップ線路
16a,16b,20,36a,36b,40,52,54a,54b,66a,66b,67a,67b,70 信号線路
18,38,68 接地導体
22,42,72 マイクロストリップ線路
24,44 ビアホール
51 領域
80 無線装置
82 無線周波数回路
88 回路基板
90 ケーブル
92 コネクタ
96 開口部

Claims (3)

  1. 誘電体基板と、
    誘電体基板の基板面に設けられた平衡型平面アンテナと、
    誘電体基板の前記基板面に設けられた一対の信号線路を有するコプレーナストリップ線路と、
    コプレーナストリップ線路に接続された、信号線路と接地導体とを有する不平衡型伝送線路と、を備え、
    前記コプレーナストリップ線路は前記平衡型平面アンテナに接続されており
    前記誘電体基板は、前記不平衡型伝送線路の信号線路および接地導体のいずれか一方を前記コプレーナストリップ線路の信号線路に配線接続させるための、前記誘電体基板の厚さ方向に配線された配線接続部分を有し、
    前記コプレーナストリップ線路の信号線路と前記配線接続部分との接続位置は、前記配線接続部分と接続される前記コプレーナストリップ線路の信号線路と、前記コプレーナストリップ線路における前記一対の信号線路間に挟まれた間隙部分との境界近傍に設けられていることを特徴とするアンテナ装置。
  2. 前記誘電体基板には、前記平衡型平面アンテナを複数個配列して設けることで、この配列方向に対して略直交し前記誘電体基板の前記基板面に対して略垂直な方向に双指向性を有するアレイアンテナが構成されている請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 回路基板に設けられた無線周波数回路と、
    前記回路基板を前記誘電体基板とした請求項1または2に記載の前記アンテナ装置と、を有することを特徴とする無線装置。
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