JP4126339B2 - セラミック状中空ボール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば溶鋼を連続鋳造するプロセスにおけるタンディッシュ内の溶鋼の保温性に優れるとともに溶鋼表面と外気との遮断性能にも優れた保温材料としてまた、各種耐熱性保温材料の素材として用いることができる軽量なセラミック状中空ボールまたは多孔質体ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば鉄鋼製造業において、溶鋼を連続鋳造する場合、溶鋼は取鍋からタンディッシュ内に注入され、タンディッシュから鋳型内に溶鋼が注入され連続鋳造が遂行される。タンディッシュ内において、溶鋼表面と外気とを遮断すべくまた、溶鋼温度の降下を可及的に抑える目的で保温材が用いられる。保温材として、従来、焼き籾、トーワライト、チャーライト、バーミュキュライト(蛭石)などが用いられてきた。
【0003】
また、特開平7−232246号公報には、少なくとも全体の80%を占める主成分として、二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および酸化マグネシウム(MgO)を含み、SiO2とAl2O3の重量比が2/1以下、1/1以上の範囲内であって、酸化マグネシウムを、重量で、主成分に対し20%〜45%含有する粒状保温材が開示されている。
さらに、特開平8−33960号公報には、CaO/Al2O3=0.5〜1.0かつ、MgO=5%〜30%未満、SiO2≦10%とする液相保温剤にCaO/Al2O3=0.5未満または2.0超である中空焼結体を5%〜90%含有せしめた溶鋼表面保温剤が開示されている。
また、特公平3−48152号公報には、酸化マグネシウム≧60%で比表面積:15m2/gr〜1m2/gr、嵩比重:0.2〜1.5、粒径:0.5mmから15mmである断熱、耐火粒子が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の保温材には、以下の問題が存していた。即ち、焼き籾の場合は、焼き籾の主成分が二酸化珪素と炭素であり、二酸化珪素は熱伝導率が低く保温性に優れているけれども、溶鋼中のアルミニウムと反応しこれを酸化アルミニウム(Al2O3)に変化させる。従って、二酸化珪素を主成分とする焼き籾は、タンディッシュ等における溶鋼の保温材としては好ましくない。また、炭素を多く含む焼き籾は溶鋼の炭素含有量を変化させ、極低炭素鋼等に対しては好ましくない。
【0005】
トーワライト、チャーライト、バーミュキュライト(蛭石)などの主成分は二酸化珪素(SiO2)である。而して、焼き籾におけると同様に、溶鋼中のアルミニウムと反応しこれを酸化アルミニウム(Al2O3)に変化させる点で好ましくない。そして、これらトーワライト、チャーライト、バーミュキュライト(蛭石)などは、海外からの供給に依存している問題もある。焼き籾、トーワライト、チャーライト、バーミュキュライト(蛭石)などは、その使用に際し、作業者に、粉塵に起因する珪肺疾患を招く虞もある。
【0006】
特開平7−232246号公報に開示されている保温材は、二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)を主成分とするものであり、溶鋼成分を変化させ、延いては最終的に得られる鋼材の特性に影響を与える問題がある。
【0007】
特開平8−33960号公報に開示の保温剤の場合、使用時に粒子間の焼結が進み、タンディッシュから鋳型への溶鋼供給の制御を行うストッパーの開閉制御が困難となる問題がある。また、特公平3−48152号公報に開示の断熱、耐火粒子の場合も同様の問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術における問題を解決し、耐熱性、保温性に優れるとともに機械的強度が高いセラミック状中空ボールまたは多孔質体およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、原料として、マグネシアクリンカー(MgO含有率≧90%)微粉末または、廃棄マグネシア耐火れんがの粉砕粒を原料とし、二酸化珪素(SiO2)の含有量が多くないセラミック状中空ボールまたは多孔質体を、簡便なプロセスで、しかも低コスト下に製造できる方法を提供することである。その際、従来の保温材で見られる、粒子間の焼結によるタンディッシュ内でのストッパー開閉制御に問題を生ぜしめることのない保温材とすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、珪酸ナトリウムと、カルシウムおよびマグネシウムの何れか一方または双方を含む酸化物系セラミック組成物発泡体中空ボールをコア部とし、珪酸ナトリウムとマグネシウムを含む酸化物系セラミック組成物発泡体をシェル部とする二重構造の、嵩比重≦1.0、軟化点≧1500℃である耐熱性、断熱性に優れる溶鋼用保温材、建築用断熱材、軽量断熱材用セラミック状中空ボールである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、少量の水ガラス(W)と、少量の炭酸カルシウム(C)および/または炭酸マグネシウム(M)を、重量で、W:Cおよび/またはM=0.5:1〜5:1となるように混合した後、空気中、200℃以上の温度域で1分間以上加熱して発泡させ、酸化物系セラミック組成物発泡体中空ボールコアとし、該コアの外側に、水ガラス(W)と酸化マグネシウム(MgO)を、重量で、W:MgO=1:0.5〜1:25となるように混練して均一に塗布した後、空気中、200℃以上の温度域で1分間以上加熱して発泡させ、酸化物系セラミック組成物発泡体のシェルを形成することを特徴とする二重構造の、耐熱性、断熱性に優れる溶鋼用保温材、建築用断熱材、軽量断熱材用セラミック状中空ボールの製造方法である。
【0011】
【作用】
本発明のセラミック状中空ボールまたは多孔質体は、耐熱性、保温性に優れるとともに機械的強度も高い。このセラミック状中空ボールまたは多孔質体は、タンディッシュ内において溶鋼の保温と外気との遮断を行う保温材として好適に用いることができる。また、このセラミック状中空ボールまたは多孔質体を用いれば、きわめて軽量の、耐熱性を有する断熱材の開発が可能であり、ビルや住宅などの建築用断熱材(断熱ボード)、電気炉や電熱器、冷蔵庫や冷凍庫などの家電製品用断熱材、自動車や船舶、航空機、ロケット、スペースシャトルなどの軽量耐熱断熱材さらに、焼却炉(施設)や原子力施設、核燃料再処理施設、増殖炉、核融合炉など多くの分野での利用が期待される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好ましい実施形態に則して説明する。
【0013】
本発明のセラミック状中空ボールまたは多孔質体を製造するに際しては、水ガラスを用いる。水ガラスは、二酸化珪素とアルカリとを融解して得られる珪酸アルカリ塩を濃厚水溶液としたものであって、通常、Na2O:1molにつきSiO2:2mol〜4molを含み無色で粘性の大きな液体である。水ガラスの約50wt%は水であり、適度の粘性を有するため炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを凝集させ、成型することを容易にする。
【0014】
請求項1に記載のセラミック状中空ボールにおけるコア部を製造する場合、水ガラス(W)に対する炭酸カルシウム(C)や炭酸マグネシウム(M)の混合比率は、重量で、W:C、M=0.5:1〜5:1の範囲内とすることが望ましい。W:C、M=0.5:1に満たない低い水ガラス混合比率であると、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを効率よく簡便に混合することが困難となる。一方、W:C、M=5:1を超えて多量に水ガラスを加えると、混合物の球状化成型が困難となるのみならず、得られるセラミック状中空ボールにおける二酸化珪素(SiO2)の含有量が多くなり、タンディッシュ内等において使用するときに、溶鋼中のAlをAl2O3に変化させる問題を惹起する。
【0015】
水ガラスと、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとの混合、成型物を、空気雰囲気中、200℃以上といった比較的低い温度域に1分間〜20分間加熱することによって、成型物中の水分を揮散させる。水ガラス中の水分が蒸発する際、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが熱分解して二酸化炭素(CO2)を同時に発生することによって混合物成型体は効率よく発泡し、中空ボールとなる。このときの化学反応は、以下の如くである。
【0016】
【化1】
(1)(Na2O・SiO2・H2O)n→(Na2O・SiO2)n+
nH2O↑
(2)CaCO3→CaO+CO2↑
(3)MgCO3→MgO+CO2↑
【0017】
水ガラス(W)と、炭酸カルシウム(C)や炭酸マグネシウム(M)との混合比率(重量)W:C、Mをたとえば4:1とする場合は、370℃で10分間程度の加熱により最も効率よく発泡し、中空ボールを形成することができる。
【0018】
水ガラスと、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとの混合、成型物の加熱は、空気雰囲気中、200℃以上好ましくは250℃以上であり、350℃以上が最も望ましい。加熱温度が高くなるに従って発泡に要する時間は短くなるが、加熱温度が500℃を超えると反応速度が高くなり過ぎて、得られる中空ボールの形状が球形から外れ、楕円形となったり、破裂に至ったりする。従って、加熱温度は250℃〜500℃が好ましく、350℃〜450℃が最も望ましい。このときの加熱時間は5分間〜20分間が好ましく、10分間程度が最も望ましい。
【0019】
請求項1に記載のセラミック状中空ボールは、セラミック状中空ボールのコア部とセラミック状発泡体のシェル部からなる。このセラミック状中空ボールは、上記プロセスによって得られた、少量の珪酸(SiO2)と、カルシア(CaO)および/またはマグネシアからなる酸化物系セラミック状発泡体からなる中空ボールの表面を、少量の水ガラス(W)とマグネシア(MgO)の混合物で被覆し、これを再び空気雰囲気中、200℃以上の温度域で5分間〜20分間加熱、発泡させることによって得られる。
【0020】
その際、水ガラス(W)に対するマグネシア(MgO)の混合比率、W:MgO=1:0.5〜1:25とする。マグネシアの比率が0.5に満たない、マグネシアが少量の系では、シェル部の耐熱性が不十分となる。一方、マグネシアの比率が25を超えて多量になると、マグネシアを効率よく簡便に混合することが困難となる。
【0021】
シェル部を形成する時の加熱温度は、水ガラスとマグネシアの混合比率にもよるが、たとえばW:MgO=1:3の場合、空気雰囲気中、370℃で5分間〜20分間の加熱によって効率よくマグネシウムと珪素からなる酸化物系セラミック組成物発泡体をコア部の表面に固定することができる。
【0022】
シェル部を形成するときの加熱温度は好ましくは250℃以上であり、350℃以上が最も望ましい。加熱温度が高くなるに従って発泡に要する時間は短くなるけれども、加熱温度が500℃を超えると反応速度が過大となりシェル部の厚さにむらを生じたり、シェル部が破裂に至ったりする。従って、加熱温度は250℃〜500℃が好ましく、350℃〜450℃が最も望ましい。このときの加熱時間は5分間〜20分間が好ましく、10分間程度が最も望ましい。
【0023】
セラミック状中空ボールまたはセラミック状多孔質体を得るには、水ガラス(W)とマグネシア(MgO)の重量比を、W:MgO=1:0.5〜1:25となるように混練・成型し、空気雰囲気中、200℃以上の温度域で5分間〜20分間の加熱を行って発泡させる。こうして、マグネシウムと珪素を含む酸化物系組成物発泡体のセラミック状中空ボールまたは多孔質体を得る。このセラミック状中空ボールまたは多孔質体は、嵩比重が1.3以下、軟化点が1500℃以上であり、耐熱性、保温性に優れるとともに機械的強度も高い。
【0024】
上記セラミック状中空ボールまたは多孔質体を得るときの加熱温度は、好ましくは250℃以上であり、350℃以上が最も望ましい。加熱温度が高くなるに従って発泡に要する時間は短くなるけれども、加熱温度が500℃を超えると反応速度が過大となりシェル部の厚さにむらを生じたり、シェル部が破裂に至ったりする。従って、加熱温度は250℃〜500℃が好ましく、350℃〜450℃が最も望ましい。このときの加熱時間は5分間〜20分間が好ましく、10分間程度が最も望ましい。
【0025】
【実施例】
実施例1
水ガラス(W)と、炭酸カルシウム(C)を、重量で、W:C=4:1となるように混練・成型し、これをアルミナ坩堝に装入して、空気雰囲気中、370℃で10分間程度の加熱を行った。水ガラスからの水蒸気発生と、炭酸カルシウムの熱分解による炭酸ガス(CO2)の同時発生によって発泡し、ほぼ球状のセラミック状白色中空ボールが得られた。中空ボールの直径(サイズ)は、水ガラスと、炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウムの混合物の重量が大なるほど或いは水ガラスの配合割合が大なるほど大きくなった。
【0026】
上記、珪素とカルシウムを含む酸化物系セラミック組成物の発泡体である白色中空ボールをコア部とし、その表面に、水ガラス(W)とマグネシア(MgO)を、重量で、W:MgO=1:3の比率となるように混練したものを均一に塗布し、これを再びアルミナ坩堝に装入し、370℃で10分間程度の加熱を行って発泡させ、マグネシウムと珪素からなる酸化物系セラミック状シェルを形成した。
シェル部はコア部をすっぽり包み込んでおり、マグネシア原料に起因する淡褐色を呈していた。シェル部の厚さは、マグネシアと水ガラスの混合物の総重量が大なるほど厚くなった。シェル部の厚さは、薄いもので0.1mm、厚いもので2mmを超えるものも作成できた。この二重構造のセラミック状中空ボールは、嵩比重が0.46、軟化点が1570℃であった。
【0027】
実施例2
水ガラス(W)と、炭酸カルシウム(C)および炭酸マグネシウム(M)との混合比率(重量比)、W:(C+M)=3:1となるように混練・成型し、これをアルミナ坩堝に装入して、空気雰囲気中、370℃で10分間の加熱を行った。水ガラスからの水蒸気発生と、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの熱分解による炭酸ガス(CO2)の同時発生によって発泡し、珪素、カルシウム、およびマグネシウムを成分とする酸化物系のセラミック状中空ボールが得られた。
これらは、直径:2mm〜20mmのほぼ真球の白色中空ボールであった。これらのセラミック状中空ボールは、嵩比重が0.15、0.18、軟化点が1250℃であった。
【0028】
実施例3
水ガラス(W)に対するマグネシア(MgO)の混合比率(重量比)、W:MgO=1:5として混練・成型し、これをアルミナ坩堝に装入して、空気雰囲気中、370℃で10分間の加熱を行って発泡させ、珪素とマグネシウムを成分とする酸化物系のセラミック状中空ボールを得た。この中空ボールは、マグネシウム原料に起因する淡褐色を呈し、マグネシアと水ガラスからなる混合物における水ガラスの配合割合が大なるほどそのサイズが大きくなった。これら中空ボールは嵩比重が0.78、軟化点が1550℃であった。水ガラス:マグネシア=1:0.5では、直径約30mmの発泡体が得られたが、いびつでラグビーボール状であった。このような組成では、真球の中空ボールの製造が困難となり、しばしば発泡し過ぎて破れることが多かった。水ガラスの配合割合が小なるもの、たとえば水ガラス:マグネシア=1:20では、直径1mm程度の無数の小さな孔をもつセラミック多孔質体が得られた。この多孔質体は、嵩比重が1.20、軟化点が1550℃であった。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、嵩比重が1.3以下、軟化点が1500℃以上の軽量、耐熱性、断熱セラミック状中空ボールまたは多孔質体を提供できる。而して、溶鋼の連続鋳造プロセスのタンディッシュにおける保温材として好適に用いることができる。また、この中空ボールまたは多孔質体を用いれば、きわめて軽量の耐熱性を有する断熱材の開発が可能であり、ビルや住宅などの建築用断熱材(断熱ボード)、電気炉や電熱器、冷蔵庫や冷凍庫などの家電製品用断熱材、自動車や船舶、航空機、ロケット、スペースシャトルなどの軽量耐熱断熱材さらに、焼却炉(施設)や原子炉、核燃料再処理炉、増殖炉など多くの分野での利用が可能となる。
【0030】
本発明は、製造プロセスが簡便で、しかも電力の消費量が少ないので製造コストが低い。しかも、耐火れんがなどの廃棄物を出発原料とすることができるので、環境問題の解決にも資する。
Claims (2)
- 珪酸ナトリウムと、カルシウムおよびマグネシウムの何れか一方または双方を含む酸化物系セラミック組成物発泡体中空ボールをコア部とし、珪酸ナトリウムとマグネシウムを含む酸化物系セラミック組成物発泡体をシェル部とする二重構造の、嵩比重≦1.0、軟化点≧1500℃である耐熱性、断熱性に優れる溶鋼用保温材、建築用断熱材、軽量断熱材用セラミック状中空ボール。
- 水ガラス(W)と、炭酸カルシウム(C)および/または炭酸マグネシウム(M)を、重量で、W:Cおよび/またはM=0.5:1〜5:1となるように混合した後、空気中、200℃以上の温度域で1分間以上加熱して発泡させ、酸化物系セラミック組成物発泡体中空ボールコアとし、該コアの外側に、水ガラス(W)と酸化マグネシウム(MgO)を、重量で、W:MgO=1:0.5〜1:25となるように混練して均一に塗布した後、空気中、200℃以上の温度域で1分間以上加熱して発泡させ、酸化物系セラミック組成物発泡体のシェルを形成することを特徴とする二重構造の、耐熱性、断熱性に優れる溶鋼用保温材、建築用断熱材、軽量断熱材用セラミック状中空ボールの製造方法。
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