JP4124537B2 - 廃棄物最終処分場における漏水検知方法及び採水装置 - Google Patents
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【発明が属する技術分野】
本発明は廃棄物最終処分場における漏水検知方法に関し、更に詳しくは、遮水シートと粘土(遮水層)との二重化遮水構造を採用する廃棄物最終処分場において、シート破損時に粘土を透過する極微量の漏水の有無及び漏水位置を早期に検知するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
平成10年6月に施行された最終処分場の技術基準改正では、処分場の遮水構造として、▲1▼遮水シートのニ重化、▲2▼遮水シート+粘土(粘土層の厚さ:50cm以上,透水係数:10-6cm/秒以下)による二重化、▲3▼遮水シート+アスファルト・コンクリートによる二重化のいずれかの採用が義務付けられた。この内、上記▲2▼の遮水構造は粘土の恒久的安定性から処分場に対し特に有効であり、粘土を遮水層として採用した場合、シート破損時の漏水量が例えば上記▲1▼(シート2枚が同時に破損した場合)に比べ極めて微量になる。しかしこのような粘土層を透過する極微量の漏水であっても、処分場周辺の住民は該漏水の確実な検知を要望すると考えられる。
【0003】
上記▲2▼の遮水構造において、粘土層を透過した漏水を検知する方法としては、公知の電気式あるいは漏水集水式の方法を適用することが考えられる。しかし電気式では長期間の維持・管理の保証等に問題がある。また集水式では上述したように粘土層を透過する漏水が極めて微量であるため、漏水の有無を確認・検知する地点である排水管末端部まで漏水が連続流下するには相当量の漏水が生じて初めて可能となる。従ってこれでは漏水が拡大してから検知していることになり、その補修対策も大幅に遅れてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は遮水シートと粘土との二重化遮水構造を採用する処分場において、シート破損時に粘土を透過する極微量の漏水の有無及び漏水位置を早期に検知可能な廃棄物最終処分場における漏水検知方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、遮水シートと該遮水シート下に敷設した粘土層とを有する二重化遮水構造を採用する廃棄物最終処分場において、前記粘土層中に複数の排水シートを該層全域にわたって敷設し、該各排水シートの勾配下側端辺を該シート上の水が自然流下により流入可能となるよう複数のシート接続管にそれぞれ独立に接続し、前記各シート接続管に排水があった場合は該排水中の漏水の有無を分析し、漏水を検知した場合は該漏水を排出したシート接続管に接続する排水シート上方に漏水箇所が存在すると推定する廃棄物最終処分場における漏水検知方法であって、前記シート接続管が複数分岐する集排水管内に、前後のパッカーとカメラ機能と採水機能と負圧チューブとを有する自走式の採水装置を導入し、該集排水管内における一のシート接続管の分岐孔の前後で前記パッカーを膨らませ、該パッカー間に前記負圧チューブを介して負圧をかけるようにすることを特徴とする廃棄物最終処分場における漏水検知方法提供される。
【0006】
本方法では、粘土層中間に該層を広がり方向に複数に区画させるような形で複数の排水シート(矩形)を密に敷設し、該各シートの勾配下(自然流下方向)端辺部分をそれぞれ独立にシート接続管に接続し、シート表面まで浸透した漏水が自然流下により接続管に集水されるようにする。かかるシート−管の接続態様としては、イ)シート端辺部分を有孔接続管に巻き込む態様や、あるいはロ)シート端辺部分を無孔接続管に長手方向に沿って設けたスリットに受け入れさせるような態様等を挙げることができる。
【0007】
そして各シート接続管毎に独立にその下流側端部等から真空ポンプによって弱い負圧をかける。該負圧による吸引作用によってシート上に水がある場合は該水が排水されるため、該排水の塩分等を分析することにより、浸出水の漏洩か否かを確認し、浸出水の漏洩の場合は、該排水を排出したシート接続管に接続する排水シート上方にシート損傷部が存在すると推定することができる。
【0008】
排水シートは、該シート上の漏水を該シート外に流出させることなく該シートが接続する接続管へと確実に流下させるべく流下方向に直交する断面を波形様にすることが望ましい。また、一の排水シートの面積(シート1単位)は例えば5×5〜10m等とすることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0009】
各シート接続管は水を自然流下させるべく所要の勾配を持たせながら、大規模処分場にあっては観測用トンネル(ギャラリートンネル)まで、小規模処分場にあっては処分場堰堤(貯留構造物)を貫通させて処分場外部までそれぞれ独立に延長させることができる。
【0010】
そして、複数のシート接続管を集排水管に合流させ、該集排水管を該上記観測用トンネル等に接続する場合は、前記シート接続管が複数分岐する集排水管内に、前後のパッカーとカメラ機能と採水機能と負圧チューブとを有する自走式の採水装置を導入し、該集排水管内における一のシート接続管の分岐孔の前後で前記パッカーを膨らませ、該パッカー間に前記負圧チューブを介して負圧をかけるようにすることができる。
【0011】
即ち、集排水管内に開放する一のシート接続管端孔の前後で採水装置のパッカーを膨らませることにより、該一の接続管(及びパッカー間部分)と該集排水管に接続する他の接続管(及びパッカー間を除く集排水管内)とを気密に仕切ることができ、その後、採水装置の負圧チューブを介して負圧をかけ、第一の接続管のみから排水させるようにするものである。該排水は例えば前後パッカー間の集排水管部分に集め、ここで採水装置のノズルによって採水し、負圧チューブ(又は別の送水チューブ)を介して分析地点へ送ることができる。
その他本発明では、前記排水シートを漏水流下方向に直交する断面波型のドレーンシートを採用することで、上載荷重により十分な強度を有するものとした。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は大規模処分場を横断面から斜視した説明図であり、図2は該処分場の縦断面説明図である。該処分場は遮水工として遮水シート1と該シート下に敷設した粘土層2との二重化構造を採用し、粘土層2の中間には多数の排水シート10等が敷設される。尚、粘土層2のシート10より上方の層部分厚は30〜50cm程度、シート下方の層部分厚も30〜50cm程度とし、粘土の透水係数を10-7cm/秒とした。
【0014】
排水シート10は厚さ5〜10mmの耐圧排水材を厚さ1〜2mmの長繊維不織布で被覆して成り、上記排水シートは上載荷重3kgf/cm2程度によって完全にはつぶれない強度を持つ波型ドレーンシート(漏水流下方向に直交する断面例を図3(イ)(ロ)に略示する。)から成る。かような排水シート10は、5×5m又は5×10mを1単位として、処分場底面及び法面の粘土層2中全域にわたって密に敷設され、各シート10は粘土層2を多数に区画した形となる。また各排水シート10は粘土層2と同様、所定の勾配が付され、各シート10の勾配下(流下方向)下端辺はシート接続管11に接続される。該接続の態様は、図4に示すように、シート10の端辺部分を有孔接続管11Aに巻き付けるようにするものと、図5に示すようにシート端を無孔接続管11Bのスリット11B'内に差し込むようにするものとがある。いずれの接続態様でも粘土層2を排水シート10上まで浸透した漏水はシート10上から外れることなく流下して該シートと接続する接続管11内に流入する。
【0015】
各シート接続管11は、図6に略示するように、それぞれ独立に観測用トンネル3に延長・接続される態様と、漏水集排水管12に複数合流し、該管12が観測用トンネル3に接続される態様とがあり、図1及び図2では後者が表されるが、まず前者での実施状況を説明する。
【0016】
図6を参照して、観測用トンネル3内から各シート接続管11毎に真空ポンプによってゆるやかな負圧(0.1〜0.5kgf/cm2)をかける。これにより排水があれば、該排水中に浸出水が存在するか否かを分析し、浸出水が検知された場合は、該一のシート接続管11と接続する排水シート10の上方にシート破損部があると推定される。
【0017】
一方、図7に示す配管態様では、観測用トンネル3から集排水管(φ5〜10cm程度)内に自走式の検知・サンプリング装置20を導入する。該装置20は図8に示すように、前後二つのパッカー21,22と、CCDカメラ23と、採水ノズル24と、トンネル3側と連通するチューブ・ケーブル類25とを備える。
チューブ・ケーブル類25には電源ケーブル等の他、各パッカーへの給気チューブ、負圧チューブ等が備わる。
【0018】
そして集排水管12内に導入された検知・サンプリング装置20は、CCDカメラ23によって該管12内に開放するシート接続管11の端部孔(分岐孔)を探し、分岐孔毎に次の作業を行う。前後のパッカー21,22間に一の分岐孔11'が入ったところで装置20の走行を停止し、ここで各パッカー21,22を図9に示すように膨張させる。これにより該シート接続管11'及び前後パッカー21,22間の集排水管部分12'と、他の(複数の)シート接続管11及び集排水管内部分(パッカー間部分12'を除く。)とが気密に仕切られる。この状態から負圧チューブを介して観測用トンネル3内から負圧をかける。これによりパッカー21,22間集排水管部分12'に排水が排出されれば、該排水を装置20の採水ノズル24によってサンプリングし、該採水をトンネル内分析地点へ送り、漏水の有無を分析し、漏水が検知されれば接続管11Cに接続する排水シート10上方にシート損傷部が存在すると推定できる。
【0019】
以上は大規模な処分場を例にしたが、小規模な処分場では、シート接続管又は集排水管を処分場堰堤(貯留構造物)を貫通させ、処分場外部から上述したと同様に漏水箇所検知作業を行うことができる。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る廃棄物最終処分場における漏水検知方法では、遮水シート+粘土層から成る二重化遮水構造を採用する処分場において、シート破損時に粘土層を透過する極微量の漏水を、粘土層中に敷設した排水シート上でキャッチ可能とし、該シートに接続したシート接続管に負圧をかけて能動的に採水することができるため、漏水を早期に検知可能であり、止水対策を迅速に講じることができ、また漏水増加等の異常時にも迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大規模な処分場を横断面から斜視した説明図である。
【図2】図1の縦断面説明図である。
【図3】排水シートの自然流下方向に交差する方向に沿う概略断面であり、シート波型態様の一例(イ)と他の例(ロ)を示す。
【図4】排水シートとシート接続管との接続態様の一例を示す説明図である。
【図5】排水シートとシート接続管との接続態様の他の例を示す説明図である。
【図6】シート接続管が独立に延長する配管態様を示す説明図である。
【図7】複数のシート接続管が集排水管に合流する配管態様における実施状態説明図である。
【図8】通常走行時の検知・サンプリング装置の説明図である。
【図9】パッカー膨張時の検知・サンプリング装置の説明図である。
【符号の説明】
1 遮水シート
2 粘土層
3 観測用トンネル
10 排水シート
11,11A,11B、11C シート接続管
11' 分岐孔
12 集排水管
20 検知・サンプリング装置
21,22 パッカー
23 CCDカメラ
24 採水ノズル
25 チューブ・ケーブル類
Claims (2)
- 遮水シートと該遮水シート下に敷設した粘土層とを有する二重化遮水構造を採用する廃棄物最終処分場において、前記粘土層中に複数の排水シートを該層全域にわたって敷設し、該各排水シートの勾配下側端辺を該シート上の水が自然流下により流入可能となるよう複数のシート接続管にそれぞれ独立に接続し、前記各シート接続管に排水があった場合は該排水中の漏水の有無を分析し、漏水を検知した場合は該漏水を排出したシート接続管に接続する排水シート上方に漏水箇所が存在すると推定する廃棄物最終処分場における漏水検知方法であって、
前記シート接続管が複数分岐する集排水管内に、前後のパッカーとカメラ機能と採水機能と負圧チューブとを有する自走式の採水装置を導入し、該集排水管内における一のシート接続管の分岐孔の前後で前記パッカーを膨らませ、該パッカー間に前記負圧チューブを介して負圧をかけるようにすることを特徴とする廃棄物最終処分場における漏水検知方法。 - 前記排水シートが、漏水流下方向に直交する断面を波型のドレーンシートとしたことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物最終処分場における漏水検知方法。
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