JP4124434B2 - デジタル音源付き電子楽器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル音源付き電子楽器に関し、特に、パーカッシブ・サウンドつまり打楽器的な音を再現するための振幅エンベロープ制御を行うことができるデジタル音源付き電子楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子オルガン等の電子楽器において、ティビア系音色としてのパーカッシブ・サウンド(TIBIA Percus:ティビア・パーカス、以下、単に「パーカス」という)を再現できるものが知られる。パーカスの発音では、複数の発音、例えば4音で単一のエンベロープを共有する。したがって、従来はエンベロープをCPUで作成し、これに従って第1鍵目の発音を行い、第2鍵目以降は、第1鍵目の発音の該第2鍵目以降の押鍵時の振幅値と同じ振幅値を初期値として発音する。押鍵時の振幅値はCPUで作成されるエンベロープをモニタして知ることができる。
【0003】
近年、音源としてLSIからなるデジタル音源が普及しており、エンベロープは、このデジタル音源の内部で作成される。したがって、CPUでエンベロープを作成するのと違い、エンベロープをモニタして再利用するのが困難である。
【0004】
そこで、デジタル音源を使った電子楽器では、エンベロープをモニタするのに代えて、エンベロープの減衰をタイマ演算によって推測するタイマ演算法が採用される。すなわち、第1鍵目の発音開始からタイマをスタートさせ、第2鍵目以降の発音では、タイマ値をモニタし、テーブルを使ったり関数を使ったりしてモニタされたタイマ値に対応するエンベロープの振幅を演算し、第2鍵目以降の発音のエンベロープ初期値を決定する。タイマを使ってエンベロープを生成する電子楽器は、例えば、特開平3−238500号公報に記載されている。
【0005】
タイマ演算によるエンベロープ振幅値の推定では、レジスタに最初の発音時の振幅初期値をセットし、それ以降はタイマ値に従って振幅初期値をインクリメントすればよいので、演算が簡単であるという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、タイマ演算によるエンベロープ振幅値の推定では、演算の精度が低く、高精度を得るためにはレジスタの語長を十分長く取らなければならない。また、プログラムやデータの規模が比較的大きいことも問題である。パーカス音はボリューム値を持つので、例えば、時間分解能を7ビット、ボリューム値の分解能を5ビットとすると、それだけで1024語のテーブルが必要である。さらに、タイマ・ルーチンを新たに作成しなければならない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、エンベロープ振幅値の演算精度を向上させ、プログラムやデータの規模を小さくし、かつタイマ・ルーチンや演算用テーブル等を専用に作成する必要がないデジタル音源付き電子楽器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決し、目的を達成するための本発明は、複数音同時に発音できる少なくとも一つの音色系列を含む複数の音色系列を発音可能なデジタル音源付き電子楽器において、発音指示に応答してデジタル音源の複数の発音系列のうち、発音されていないものを割り当てるアサイン手段と、複数音同時に発音できる前記音色系列の最初の発音指示があったときに、音源の発音系列を同時発音数分確保して共通のエンベロープを立ち上げ、該エンベロープを立ち上げた複数の発音系列のうち一つだけを発音可能にし、その他を発音準備中にする先頭音発生制御手段と、複数音同時に発音できる前記音色系列の第2番目以降の発音指示があった場合、該指示毎に、前記発音系列の発音準備中を一つずつ解除して発音可能にする後続音発生制御手段と、前記発音準備中とされている発音系列がすべて発音可能とされるまでに発生した他の後発音色系列の発音指示に対して、前記発音準備中とされている発音系列が該後発音色系列のために確保されるのを回避するアサイン回避手段とを具備した点に第1の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、複数音同時に発音できる少なくとも一つの音色系列を含む複数の音色系列を発音可能なデジタル音源付き電子楽器において、発音指示に応答してデジタル音源の複数の発音系列のうち、発音されていないものを割り当てるアサイン手段と、複数音同時に発音できる前記音色系列の発音指示があったときにインクリメントされ、発音停止指示があったときにデクリメントされるカウンタ手段と、複数音同時に発音できる前記音色系列の発音指示があったときに、前記カウンタ手段のカウンタ値が初期値であった場合、同時発音数分の発音系列を確保して共通のエンベロープを立ち上げるとともに、該発音系列のうち一つを除いて発音準備中にする第1発音制御手段と、複数音同時に発音できる前記音色系列の発音指示があったときに、前記カウンタ手段のカウンタ値が初期値でなかった場合、前記発音準備中の発音系列を一つ発音可能にする第2発音制御手段と、前記発音準備中とされている発音系列がすべて発音可能とされるまでに発生した他の後発音色系列の発音指示に対して、前記発音準備中とされている発音系列が該後発音色系列のために確保されるのを回避するアサイン回避手段とを具備した点に第2の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記発音系列を発音準備中にするため波形データの読み出し周波数および音量データのいずれか一方をゼロにし、発音可能にするため該読み出し周波数および音量データのいずれか一方を、現在のエンベロープに応じた適正値に復帰させる点に第3の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記アサイン回避手段が、前記発音準備中の発音系列を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている発音系列を前記後発音色系列のために割り当てるときに前記記憶手段を参照し、前記発音準備中の発音系列と重なるかどうかを判別する手段と、前記記憶手段に前記発音準備中とされた発音系列と重なると判別された場合に、他の発音されていない発音系列を割り当てる手段とからなる点に第4の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、音階数と音色系列数との積より少ない発音系列数のデジタル音源を備えた点に第5の特徴があり、前記複数音同時に発音できる音色系列が、ティビア・パーカス音色系列である点に第6の特徴がある。
【0013】
上記第1〜第6の特徴によれば、同時発音される音の発音指示に対して同時発音数の発音系列が確保されてエンベロープが立ち上げられる。第1音の発音指示に対しては、前記確保された発音系列のうち、一つだけが発音可能に設定され、他は準備中とされる。準備中とされた他の発音系列は第2音以降の発音指示に応答して、該発音指示のつど発音可能に設定される。第2音以降では、エンベロープはすでに立ち上がっているので、波形データの読み出し周波数または音量データを現在のエンベロープ値に対応する正規の値にするだけで、発音される。
【0014】
第1音の発音中に指示された第2音以降の発音は、第1音の現在のエンベロープと共通のエンベロープに従って発音されるので、演算の誤差は実質的にゼロである。
【0015】
特に、アサイン回避手段を設けたので、発音準備中の発音系列が、後発の他の音色系列によって確保されるのが防止される。
【0016】
さらに、第6の特徴によれば、ティビア・パーカス系音色の発音をデジタル音源で容易に実現できる。すなわち、レガート演奏では、第2音以降の楽音は発音中の第1音と同じエンベロープで発音され、スタッカート演奏では、各音は、それぞれ共通のエンベロープを先頭から読み出して発音される
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る電子楽器のハード構成を示すブロック図である。同図において、MPUバス1には、MPU2、ROM3、RAM4、鍵盤スキャン回路5、音源装置6、パネルスキャン回路7、およびMIDIインタフェース8が接続される。ROM3にはMPU2の制御プログラムや楽音波形データやデモデータ(自動演奏データ)が格納され、RAM4にはMPU2のワークエリアとして、MPU2で使用されるデータが一時的に格納される。
【0018】
鍵盤スキャン回路5に接続される鍵盤9の各鍵には押鍵と離鍵に応答して、キーオン信号やキーオフ信号などを検出信号として出力するセンサ(図示せず)が設けられ、鍵盤スキャン回路5は、このセンサの出力をスキャンしてキーオン・キーオフを検出するとともに、押鍵強さつまりベロシティを検出する。パネルスキャン回路7は操作パネル10のスイッチのオン・オフやボリュームの値を検出する。
【0019】
音源装置6にはTG(音源)バス11を介して第2のROM12が接続される。ROM12には音源装置6で使用されるプログラムやデータが格納される。さらに、音源装置6にはデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)13が接続され、DSP13は、D/A変換器14に接続され、D/A変換器14はサウンドシステム15に接続される。なお、必要に応じて、フロッピディスク装置等の外部記憶装置やパソコンとのインタフェースを設けることができる。
【0020】
図1は、音源装置の要部構成を示すブロック図である。音源装置6は、複数の楽音を同時発生できるように複数の楽音発生チャンネル(例えば64チャネル)を備え、例えば、正弦波加算方式で楽音を合成する。MPUバス1に音源装置6を接続するためのインタフェースとして、アサイメントメモリ61が設けられる。MPU2で作成された楽音データはアサイメントメモリ61に書き込まれる。音源装置6には、楽音のピッチ(音高)を設定するFナンバ累算器62、音色を設定するエンベロープ発生器63、および音量を設定するボリュームレジスタ64が設けられる。Fナンバ累算器62、エンベロープ発生器63、およびボリュームレジスタ64は、チャネル数分設けられる。
【0021】
Fナンバ累算器62で累算されたFナンバ(読み出し周波数)は波形メモリ121に供給される。波形メモリ121は、ROM12で構成できる。波形メモリ121には楽音波形データが格納されていて、供給されたFナンバに応じて順次波形データが読み出される。読み出された波形データは乗算器65に入力され、エンベロープ発生器63から出力されるエンベロープと乗算される。乗算された波形データはデジタルフィルタ66を通して所望の倍音構成が作られる。
【0022】
さらに、デジタルフィルタ66を通過した波形データは、デジタルフィルタ66の後段に設けられた乗算器67でボリュームレジスタ64から出力されるボリュームデータと乗算される。系列乗算器68は音色系列(ティビア・パーカス系、ストリング系、リード系等)毎の波形データを乗算する。系列乗算器68で乗算された各音色波形データはDSP13でエフェクトが付加される。エフェクトが付加された波形データは前記D/A変換器14でアナログデータに変換され前記サウンドシステム15に入力されて発音される。
【0023】
続いて、上記電子楽器の制御についてフローチャートを参照して説明する。図3はメインフローチャートである。ステップS1では、各種レジスタやカウンタ等の設定を含むMPU2の初期化を行う。ここでは、後述のオンカウンタが「0」にリセットされる。ステップS2では、イベント検出を行う。イベントとは鍵盤9のキーオン・キーオフイベントや操作パネル10のスイッチ切り替えやボリュームの変化等である。ペダルを有する場合はペダルのオンイベントもここで検出される。ステップS3では、検出された各イベントに応じた処理(イベント処理)が行われる。ステップS2,S3は繰り返される。
【0024】
図4は、イベント処理の要部フローチャートである。ステップS20では、発生したイベントがティビア・パーカス系列に関するイベントか、それとも他の系列に関するイベントかを判断する。この判断が肯定ならば、ステップS21に進んでティビア・パーカス系列に関する発音・消音やパネル操作(音色切り替え・音量調節)等の処理を行う。一方、ステップS2が否定ならば、ステップS22にするんで、その他の音色(ピアノやストリングス等)系列に関する発音・消音やパネル操作(音色切り替え・音量調節)等の処理を行う。
【0025】
図5は、パーカス処理(ステップS21)の詳細なフローチャートである。ステップS30では、キーイベントか否かを判断する。キーイベントならばステップS31に進んで発音処理を行う。キーイベント以外、例えば、音色切り替えや音量(ボリューム)調節等であれば、ステップS32に進んで、それらの処理を行う。
【0026】
図6は、発音処理(ステップS31)の詳細なフローチャートである。ステップS40では、キーオンか否かを判断し、キーオンならばステップS41に進んでキーオン処理を行う。キーオンでなければ、ステップS42に進んでキーオフ処理を行う。
【0027】
図7は、ティビア・パーカス処理におけるキーオフ処理のフローチャートである。ステップS421では、離鍵処理を行う。つまり発音中の音を消す。ステップS422では、消音に応答して押鍵中のキーの数を示すオンカウンタをデクリメントする。ステップS423では、オンカウンタが「0」以下か判断する。この判断が肯定、つまり発音中の音がなくなれば、ステップS424でオンカウンタを「0」にリセットする。続いてステップS425でアサイメントメモリ61をクリアして、どのチャネルにもアサイン可能な状態にする。
【0028】
図8は、キーオン処理(ステップS41)の詳細なフローチャートである。ステップS411では、オンカウンタが「0」か否か、つまりティビア・パーカス系の発音がなされていない状態での最初のキーオンか否かを判断する。最初のキーオンであれば、ステップS412で、まず、このキーオンに対する発音のために音源6のチャネルを一つ確保する。具体的にはアサインメントメモリ61のエリアを、例えば空きチャネルに対して1区画占有する。空きチャネルがない場合は発音レベルの最も低いチャネルに対して1区画占有する。
【0029】
次にステップS413で、先に占有したチャネルに対して発音のためのデータを送信することによって発音を行う。具体的にはアサインメントメモリ61の、占有されたエリアに発音データ(Fナンバ、ボリューム、およびその他のデータ)を転送する。転送されたデータはアサインメントメモリ61から音源6の各部(Fナンバ累算器62,エンベロープ発生器63、ボリュームレジスタ64)の当該チャネルに転送されて楽音が生成される。次いで、第2〜第n音(ティビア・パーカス系の同時発音数がnである場合)の発音のためのチャネルを確保し、発音準備処理を行う。
【0030】
ステップS414では、ステップS312と同様の方法で第2〜第n音の発音の音源6のチャネルを(n−1)だけ確保する。ステップS412と同様の処理を行うためには、具体的には同じサブルーティンをコールする等の手段を用いる。ステップS415では、ステップS413と同様に方法で(n−1)音の発音準備を行う。但し、ステップS415ではFナンバおよび/またはボリュームに、正規の値ではなく、「0」を用いる。図1で明らかなように、Fナンバが「0」の場合、波形アドレスは波形データの先頭値を示したままの状態になるので、波形メモリ121から読み出される値は波形データの先頭値、すなわち「0」となり、乗算器65の乗算結果が「0」となるので、楽音は発生しないが、エンベロープは時間とともに進行する。
【0031】
また、ボリュームが「0」の場合も同様に乗算器67の乗算結果が「0」となり、楽音は発生しないが、エンベロープは時間と共に進行する。この状態でFナンバおよびボリュームを「0」以外に変更すると、変更した時点以降のエンベロープが乗ぜられた楽音が出力される。ステップS416では、ステップS414で確保したチャネルを記憶する。
【0032】
一方、オンカウンタが「0」でない場合、つまり第2番目以降のキーオンであればステップS411が否定になり、ステップS417に進んで、第2番目以降の発音処理を行う。つまりステップS416で記憶したチャネルのFナンバおよび/またはボリューム「0」から正規の値に戻す。これによって、第2番目以降のティビア・パーカス系列のキーオンに対応した実質的な発音がなされる。ステップS418では、ティビア・パーカス系列での現在の発音数を示すオンカウンタをインクリメントする。
【0033】
図9は、上記ティビア・パーカス系音色の発音態様を示す模式図である。同図(a)は、演奏がレガートの場合の発音態様である。第1番目のキーオン時(t1)に予定数分(ここでは4つ)のチャネルが確保され、所定のエンベロープが立ち上がり、第1番目のキーオンに対応した発音がなされる。第2番目以降のチャネルはエンベロープだけが走っているので実質的には発音されていない。第2番目のキーオンによってタイミングt2で実質的に発音される。このときの振幅は、第1番目とエンベロープが共通なので、第1番目の発音開始からの時間に応じて小さくなっている。
【0034】
同様に第3番目、第4番目のキーオンに応じて、それぞれ、タイミングt3,t4で、第3番目、第4番目のキーオンに対応した発音がなされる。そして、第1〜第4番目のキーオンに対応する全ての発音の振幅はタイミングtdで「0」になる。すなわち、消音される。
【0035】
図9(b)は、演奏がスタッカートの場合の発音態様である。スタッカートでは、キーオン時間が短いので、キーオン時には先の音は消滅している。すなわち、キーオン時(タイミングt1,t2,t3,t4)には前記オンタイマがいつも「0」である。したがって、キーオンのつどエンベロープは初期値から始まる。
【0036】
続いて、ティビア・パーカス系の発音用に確保されたソース(本実施形態では四つのチャネル)が、他の系列の発音に使用されないようにする手段を説明する。複数のチャネルに対して発音指示つまり押鍵があった場合、空きチャネルがアサインされる。一方、全てのチャネルがアサインされていて空きがない場合は、例えば、音量が最も減衰しているチャネルを選択するとか、音量が一定値に減衰しているものの中からランダムに選択するとかして、後から発生した発音指示のためにチャネルが確保される。
【0037】
したがって、このような構成においては、ティビア・パーカス系の発音のために確保して、まだ実質的に発音されていないチャネルは、後からの発音指示によってそのためにアサインされてしまう。音階数つまり鍵盤のキーの数と音色系列(複数音同時に発音する同じ音色系列は該複数分の音色系列)の積より少ない発音系列しかない場合(たいていの場合、そのように大きい数の発音系列を持てない)、このような不具合が起こりえる。
【0038】
そこで、本実施形態では、このような不具合が生じるのを防止する手段を備える。まず、フローチャートを参照してこの手段を説明する。図10は、図4のステップS22に示したその他の音色処理のフローチャートであり、ティビア・パーカス系以外の音色が指示された場合の処理を示す。ステップS50では、キーイベントか否かを判断する。キーイベントならばステップS51に進んで発音処理を行う。キーイベント以外、例えば音色切り替えやボリューム調節等であれば、ステップS52に進んで、それらの処理を行う。
【0039】
図11は、ステップS51の発音処理の詳細なフローチャートである。ステップS60では、キーオンか否かを判断し、キーオンならばステップS61に進んでキーオン処理を行う。キーオンでなければ、ステップS62に進んでキーオフ処理を行う。
【0040】
図12は、ステップS62のティビア・パーカス処理以外の音色処理におけるキーオフ処理の詳細なフローチャートである。ステップS621では、離鍵処理を行う。離鍵処理が終われば次のルーチンに進む。
【0041】
図13は、ステップS61のティビア・パーカス処理以外の音色処理におけるキーオン処理のフローチャートである。ステップS611では、所定のアサイン手順に従ってチャネルを割り当てる。例えば、音量レベルがゼロのチャネルの中からランダムにチャネルを選択する。ステップS612では、選択されたチャネルがティビア・パーカス系の発音のために確保されているチャネルでないか判断する。この判断は、図8のステップS416で記憶したチャネルであるかどうかによって行うことができる。ステップS612が肯定ならば、そのチャネルはアサインしない。したがって、ステップS611に進み、別のチャネルを選択する。ステップS612が否定、つまりティビア・パーカス系音色発音のために確保されているチャネル以外のチャネルに割り当てられた場合は、ステップS613に進んで発音用のパラメータを音源装置6にセットする。
【0042】
図14は、発音系列割り当てのための要部機能を示すブロック図である。発音回路16は複数の発音系列16aからなり、各発音系列16aは時分割処理される。なお、発音系列数は音階と音色系列数との積より少ないものとする。パーカス系アサイン部17はティビア・パーカス系音色の発音指示に応答して同時発音数の発音系列16aを割り当てる。割り当てられた発音系列16aのうち、第1音目の発音系列16aだけが発音可能になり、他は第2音目の発音指示があるまでエンベロープのみを立ち上げて発音準備中とする。発音準備中の発音系列がどれであるかの情報がチャネル記憶部18に記憶される。他音色系アサイン部19は、ティビア・パーカス系以外の音色について発音指示があった場合に、発音系列16aを割り当てる。
【0043】
このとき、アサイン判別部20において、割り当てられた発音系列16aがティビア・パーカス系のために確保されているものでないかをソース記憶部18を参照して判別する。この結果、ティビア・パーカス系のために確保されている発音系列と重なったと判断された場合は、他音色系アサイン部19に発音系列16あの再割り当てを指示する。こうして、ティビア・パーカス系のために確保されている発音系列16aと重ならない発音系列16aがティビア・パーカス系以外の音色のために割り当てられたならば、この発音系列16aに、Fナンバ、エンベロープ、ボリューム等を設定する。これによって発音可能になる。ソース記憶部18は、ティビア・パーカス系音色の発音指示がすべて実行されて消音した時点で、該発音系列を次の発音指示を受け付けられるように、その記憶情報がクリアされる。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1〜請求項6の発明によれば、音源内部で演算される単一のエンベロープが同時発音される複数の音色系列に共通に使用されるので、各音毎の演算誤差が生じない。
【0045】
確保された発音系列を発音可能にするか発音準備中にするかを、波形データの読み出し周波数や音量データを入れ替えるだけで簡単に切り替えられる。
【0046】
タイマ演算を行うのではないため、タイマルーチンや演算テーブル等を、当該同時発音する音色系列専用に設ける必要がないので、プログラムやデータの規模が大きくならない。
【0047】
同時に確保された複数の発音系列のうち、発音準備中として実質的に発音されていない発音系列が、後発の他の音色系列の発音指示によってアサインされるのを防止でき、例えば、ティビア・パーカス系等、同時に複数音を発音する音色で発音することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る電子楽器の音源の要部構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係る電子楽器の全体構成を示すブロック図である。
【図3】 本発明の一実施形態に係る電子鍵盤楽器のメインルーチン処理のフローチャートである。
【図4】 イベント処理のフローチャートである。
【図5】 ティビア・パーカス処理のフローチャートである。
【図6】 発音処理のフローチャートである。
【図7】 キーオフ処理のフローチャートである。
【図8】 キーオン処理のフローチャートである。
【図9】 ティビア・パーカス系の楽音波形の一例を示す図である。
【図10】 他の音色系列のイベント処理の要部フローチャートである。
【図11】 他の音色系列の発音処理の要部フローチャートである。
【図12】 他の音色系列のキーオフ処理のフローチャートである。
【図13】 他の音色系列のキーオン処理のフローチャートである。
【図14】 発音系列割り当てのための要部機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
2…MPU、 6…音源装置、 9…鍵盤、 10…操作パネル、 13…DSP、 16a…発音系列、 17…パーカス系アサイン部、 18…ソース記憶部、 19…他系列アサイン部、 20…アサイン判別部、 61…アサイメントメモリ、 62…Fナンバ累算器、 63…エンベロープ発生器、 64…ボリュームレジスタ

Claims (6)

  1. 複数音同時に発音できる少なくとも一つの音色系列を含む複数の音色系列を発音可能なデジタル音源付き電子楽器において、
    発音指示に応答してデジタル音源の複数の発音系列のうち、発音されていないものを割り当てるアサイン手段と、
    複数音同時に発音できる前記音色系列の最初の発音指示があったときに、音源の発音系列を、該発音指示、およびその後の予定数の発音指示に対応する同時発音数分確保して、確保した発音系列に形状が共通のエンベロープを各々の発音系列毎に立ち上げ、該エンベロープを立ち上げた複数の発音系列のうち一つだけを該形状が共通のエンベロープに応じた振幅で発音可能にし、その他を発音準備中にする先頭音発生制御手段と、
    複数音同時に発音できる前記音色系列の第2番目以降の発音指示があった場合、該指示毎に、前記発音系列の発音準備中を一つずつ解除して前記形状が共通のエンベロープのうち、該発音指示を受けた前記発音系列に対応するエンベロープに応じた振幅で発音可能にする後続音発生制御手段と、
    前記発音準備中とされている発音系列がすべて発音可能とされるまでに発生した他の後発音色系列の発音指示に対して、前記発音準備中とされている発音系列が該後発音色系列のために確保されるのを回避するアサイン回避手段とを具備したことを特徴とするデジタル音源付き電子楽器。
  2. 複数音同時に発音できる少なくとも一つの音色系列を含む複数の音色系列を発音可能なデジタル音源付き電子楽器において、
    発音指示に応答してデジタル音源の複数の発音系列のうち、発音されていないものを割り当てるアサイン手段と、
    複数音同時に発音できる前記音色系列の発音指示があったときにインクリメントされ、発音停止指示があったときにデクリメントされるカウンタ手段と、
    複数音同時に発音できる前記音色系列の発音指示があったときに、前記カウンタ手段のカウンタ値が初期値であった場合、同時発音数分の発音系列を確保して、確保した発音系列に共通のエンベロープを立ち上げるとともに、該発音系列のうち一つを除いて発音準備中にする第1発音制御手段と、
    複数音同時に発音できる前記音色系列の発音指示があったときに、前記カウンタ手段のカウンタ値が初期値でなかった場合、前記発音準備中の発音系列を一つ発音可能にする第2発音制御手段と、
    前記発音準備中とされている発音系列がすべて発音可能とされるまでに発生した他の後発音色系列の発音指示に対して、前記発音準備中とされている発音系列が該後発音色系列のために確保されるのを回避するアサイン回避手段、
    前記第1または第2の発音制御手段の発音指示に応じて、前記共通のエンベロープに応じた振幅で楽音を発生する楽音発生手段とを具備したことを特徴とするデジタル音源付き電子楽器。
  3. 前記発音系列を発音準備中にするため波形データの読み出し周波数および音量データのいずれか一方をゼロにし、発音可能にするため該読み出し周波数および音量データのいずれか一方を、現在のエンベロープに応じた適正値に復帰させることを特徴とする請求項1または2記載のデジタル音源付き電子楽器。
  4. 前記アサイン回避手段が、
    前記発音準備中の発音系列を記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に記憶されている発音系列を前記後発音色系列のために割り当てるときに前記記憶手段を参照し、前記発音準備中の発音系列と重なるかどうかを判別する手段と、
    前記記憶手段に前記発音準備中とされた発音系列と重なると判別された場合に、他の発音されていない発音系列を割り当てる手段とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデジタル音源付き電子楽器。
  5. 音階数と音色系列数との積より少ない発音系列数を有するデジタル音源を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデジタル音源付き電子楽器。
  6. 前記複数音同時に発音できる音色系列が、ティビア・パーカス音色系列であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデジタル音源付き電子楽器。
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