JP4124429B2 - 珪酸塩水和物含有複合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低結晶性二価金属珪酸塩水和物と、熱硬化性樹脂前駆体とで構成された複合体材料、およびそれを含有する成形用材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性樹脂は、成形が可能であり強度が高く、耐薬品性や寸法安定性に優れることから、電気関係、機械関係、電子部品、または船舶車両関係など、様々な分野で古くから使用されている。
しかしながら、船舶車両関係の内装材等防火性を必要とする用途では、その防火性能の不足から樹脂の使用は制限されており、それを克服すべく耐熱性向上を目的とした研究が数多くなされてきた。その一つは樹脂と無機質材料との複合化であり、シリカや粘土、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム等のフェノール樹脂への添加が報告されている(例えば特許文献1)が、充分な耐熱性を得るためには多量の無機質材料の添加が必要であり、そのことにより成形性の悪化や強度の低下が生じ、充分な強度を得るために更にガラス繊維等を添加しているのが実情である。
【0003】
一方で、近年、単一の材料では得られない、優れた特性を得るため、あるいは、単一材料の欠点を補う可能性を有する、様々な複合材料に関する研究が盛んに行われている。中でも無機化合物と有機化合物の組み合わせからなる複合材料(以下、無機・有機複合材料と言う。)、特に、無機化合物と有機化合物が複合化しており、かつ両者のいずれか一方がナノメーターレベルのサイズとして存在するナノコンポジット材料は、その構造に由来する新規な特性に対し、応用展開への期待が高まっている。
無機・有機複合材料におけるナノレベルの複合化技術としては、珪酸カルシウム水和物の層間に水溶性ポリマーが挿入された複合材料が開発されている(非特許文献1)が、これは有機化合物が水溶性ポリマーに限られたものであり、ポリマー同士の架橋に関与する官能基を持たないために、フィラーとして樹脂に添加しても飛躍的な強度向上は期待できないものであった。
【0004】
更に、水溶性または水分散性有機ポリマーからなる有機ドメインと無機ドメインからなる無機・有機複合材料が提案されている(特許文献2)が、これには熱硬化性樹脂前駆体を用いる記載はなく、該複合材料を熱硬化性樹脂に添加して防火性を付与する技術は開示されていない。
以上のように、樹脂への無機材料添加による防火性付与に際し、均一構造で成形性に優れ、高強度の成形体の製造を可能とする成形材料を得るためには、ナノメーターレベルの分散を実現し得るような無機・有機複合材料が求められていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−230326号公報
【非特許文献1】
H.Matsuyama,et.al. Chemistry of Materials,11 [1] P.16-19(1999)
【特許文献2】
国際公開第01/012726号パンフレット
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱硬化性樹脂の特性の低下を招くことなく、該樹脂の防火性向上を実現し得る無機・有機複合材料、および該複合材料を含有するプレス成形用材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、低結晶性二価金属珪酸塩水和物と水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体とからなる新規な複合体を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
(1) 低結晶性二価金属珪酸塩水和物と、水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体とからなり、該低結晶性二価金属珪酸塩水和物の層間に、該水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体が取り込まれていることを特徴とする複合体、
(2) 低結晶性二価金属珪酸塩水和物の二価金属が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムの群より選ばれる、少なくとも1種であることを特徴とする(1)記載の複合体。
(3) 二価金属が、カルシウムであることを特徴とする(2)記載の複合体。
(4) 該水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体の数平均分子量が100〜1000であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の複合体。
(5) 水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂前駆体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の複合体。
(6) 水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体がレゾールであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の複合体。
(7) 低結晶性二価金属珪酸塩水和物を50〜99重量部と、水と相溶性のある熱硬化性樹脂前
駆体1〜50重量部を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の複合体。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の複合体35〜90重量部と、熱硬化性樹脂65〜10重量部を含有するプレス成形用材料。
(9) 水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体と珪酸アニオンを含有する混合水溶液に、二価金属塩を添加することによって得られる(1)〜(7)のいずれかに記載の複合体。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合体は、低結晶性二価金属珪酸塩水和物と、水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体とからなり、該低結晶性二価金属珪酸塩水和物の層間に、該水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体が取り込まれていることを特徴とするものである。
本発明における低結晶性二価金属珪酸塩水和物とは、二価金属の珪酸塩水和物のうち、低結晶性のものである。
本発明において低結晶性とは、CuKα線を用いて測定した広角X線回折分析において、2θ=20°から60°の間に存在するピークの半値幅が、全て0.5°以上である場合をいう。例えば、低結晶性珪酸カルシウム水和物では、2θ=30゜をメインピークとし32゜、50゜、55゜に、層構造を反映した低結晶性ピークを確認することができる。
【0009】
本発明で用いられる二価金属原子の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、銅、亜鉛、ニッケル、鉄、マンガン、クロム及びコバルトなどの遷移金属原子が挙げられる。これらの金属は、単一で用いても、2種以上組み合わせて用いても良い。入手の容易さや経済面から、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属が好ましい。また、アルカリ土類金属の珪酸塩水和物は層状構造を形成するため、この層間に樹脂前駆体が入る形での複合化が可能であり、本発明の効果がより顕著に発現して好ましい。中でも、マグネシウム及びカルシウムが好ましく、カルシウムが最も好ましい。
【0010】
珪酸カルシウム水和物のうち低結晶性のものは、セメントの水和によって多量に生成する一般的に知られる物質で、俗にセメントゲル、トバモライトゲル、C-S-Hゲル等と呼ばれているものであり、樹脂前駆体との複合化効果が最も顕著に発現する。
本発明において、熱硬化性樹脂前駆体とは、触媒及び/又は促進剤などの存在下で熱や光のエネルギーを加えることによって架橋反応が進行して、不溶不融の3次元分子となる、数平均分子量が100〜1000の間、より好ましくは100〜500の低分子である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法によりポリスチレン換算で求められた数値を用いる。
【0011】
また、本発明において、水と相溶性のあるとは、水を50wt%含む溶液に、常温(20℃)で1wt%の濃度で溶解したときに、目視で均一な濁りの無い溶液になる熱硬化性樹脂前駆体であり、好ましくは5wt%、更に好ましくは10wt%の濃度で溶解したときに目視で均一な濁りの無い溶液になる熱硬化性樹脂前駆体である。水を50wt%含む溶液に混合できる溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシドなどの各種水溶性溶媒等が例示でき、用いる熱硬化性樹脂前駆体の溶解度が高い溶媒を選んで使用する。また、溶液のpHを調整することによって、均一に溶解する場合も水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体に含むものとする。
【0012】
本発明における、水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体としては、例えばフェノール樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂等の一般的な熱硬化性樹脂の前駆体が挙げられ、中でもフェノール樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ樹脂等の前駆体は、水との相溶性に優れ好ましい。特にフェノール樹脂の前駆体はその硬化体が耐熱性に優れるために好適であり、中でもアルカリ触媒を用いてフェノールとホルムアルデヒドを反応させたレゾ−ルは、酸触媒を用いたノボラックよりも親水性のメチロール基が多いために水との相溶性に優れ、特に好ましい。
本発明の複合体中の二価金属珪酸塩水和物は、複合体100重量部に対し、50〜99重量部、熱硬化性樹脂前駆体は1〜50重量部の範囲が、複合体の安定性上好ましい。二価金属珪酸塩水和物が50重量部未満となると、複合体はその層状構造の維持が難しくなるため、複合化が困難となり好ましくない。より少量の添加で防火性を満足し、さらに樹脂との結合性を維持するために、二価金属珪酸塩水和物が70〜95重量部の範囲がより好ましい。更に好ましくは75〜90重量部である。
【0013】
該複合体をプレス成形用材料に混合して用いる場合、プレス成形用材料100重量部に対し、複合体は35〜90重量部、熱硬化性樹脂65〜10重量部の範囲で混合するのがその成形性および強度等の樹脂特性を維持し、かつ無機材料の特性である防火性付与のために好ましい。より好ましくは、複合体60〜85重量部、熱硬化性樹脂40〜15重量部である。
但し、プレス成形材料中の二価金属珪酸塩水和物の含有率が30wt%未満であると防火性が極端に低下するため好ましくなく、二価金属珪酸塩水和物の含有率が84wt%を超えると、成形材料としての成形性や表面意匠性の低下が起こり好ましくないことから、用いる複合体中に含まれる二価金属珪酸塩水和物と熱硬化性樹脂の比率を考慮し、プレス成形用材料中への適正混合範囲で使用することが好ましい。
【0014】
本発明の複合体は、後述する製造工程を経て複合化した後、後述の洗浄操作および乾燥操作によって複合化時に用いられた溶媒や未反応原料を除去した状態で使用することが好ましいが、後述の製造方法に記載の濃度範囲内であれば、未洗浄のまま使用することもできる。
以下に、本発明の複合体の製造方法について説明する。
本発明の複合体は、水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体と珪酸アニオンを含有する混合水溶液に、二価金属塩を添加することにより得られ、反応は常温(20℃)で速やかに進行する。安定な複合体形成のためには、50℃以上100℃未満で4〜30日養生することが好ましい。養生温度のより好ましい範囲は60〜80℃、養生時間は7〜15日である。養生により、二価金属珪酸塩水和物の層構造が明確に確認されるようになる。養生温度が高すぎると結晶性が高くなり、複合体が形成されにくくなるため、好ましくない。養生時間が4日より短いと養生の効果が不明確となり、30日を超えて実施しても更なる変化は見られない。
【0015】
熱硬化性樹脂前駆体の上記混合水溶液中の濃度は、最も好ましい例であるフェノール樹脂前駆体のレゾールの場合、水100重量部に樹脂前駆体0.1〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部である。濃度が低すぎると複合体中の樹脂濃度が著しく減少し、また、濃度が高すぎると未反応樹脂の溶液中への残存量が増加し、好ましくない。
珪酸アニオンの原料としては、水溶液中で珪酸アニオンを形成し得るものであれば特に限定するものではないが、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムに代表される珪酸塩、珪酸、シリカ等の無機珪酸化合物類が例示できる。これらの中で、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムなどの珪酸アルカリ金属塩は取り扱いが容易であり、かつ、低コストで入手できるため好ましく用いられる。なお、珪酸アルカリ金属塩には工業的に使用されている日本工業規格(JISK1408−66)に定められた水ガラスの1号、2号、3号も含まれる。
【0016】
珪酸アニオン原料の好ましい溶液中の濃度は、好ましい例であるメタ珪酸ナトリウム・9水和物を使用した場合には、水100重量部に対し2〜10重量部であり、より好ましくは3〜8重量部である。
熱硬化性樹脂前駆体と珪酸アニオンの混合水溶液は、均一に溶解した濁りの無い状態であることが、均一に反応させ不純物の混入を避ける点で好ましい。この水溶液中には、各種水溶性溶媒を含んで構わないが、これら各種水溶性溶媒の合計量は50wt%未満である。また、混合水溶液のpHを9以上に調整して二価金属塩を添加することが、複合体を形成する上で好ましく、より好ましいpHは11〜13.6の範囲である。二価金属塩を添加した後の、最終的な複合体分酸液のpHが10.8〜13.6の範囲であることが、安定な複合体形成のために好ましい。より好ましくは、11.3〜13.4である。この複合体分散液のpHが中性側に近づくとニ価金属珪酸塩水和物が形成しにくくなるため好ましくない。適正pHの範囲においては、pHが高くなるにつれて複合体中の樹脂含有量が低下することから、pHを変化させて複合体中の樹脂含有量を調整することもできる。
【0017】
pHを調整するために用いられる物質としては、溶液をアルカリ性にする場合には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物やその水溶液、アンモニア水、アミン類などを用いることができる。また、溶液を酸性にする場合には、塩酸、硝酸などの鉱酸類や、酢酸等の有機酸を用いることができる。
使用できる二価金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、水酸化物、酸化物、炭酸化物等が例示でき、これらは水等の溶媒に溶解した状態あるいは、固体の状態でも添加することができる。より均一に反応を進めるためには、溶液として添加することが好ましい。また、二価金属塩は、珪酸アニオンと熱硬化性樹脂前駆体を含む混合水溶液に添加することが好ましい。二価金属珪酸塩が形成される場に、熱硬化性樹脂前駆体が共存することが、複合体をより安定に形成することにつながることから好ましい。
【0018】
二価金属塩の添加量は、二価金属原子(M)と珪素原子(S)のモル比として、M/S=0.05〜2.5の範囲となる量にすることが好ましい。より好ましくは0.6〜1.9、更に好ましくは1.2〜1.8の範囲である。二価金属として2種類以上を用いる場合は、全ての2価金属原子を足しあわせたモル数をMとする。
得られた複合体を、洗浄及び乾燥操作によって複合化時に用いられた溶媒や未反応原料を除去した状態で使用する際の洗浄及び乾燥操作は以下のようにして行うことができる。
洗浄操作は、複合材料を製造する際に使用した溶媒を用い、複合材料原料固形分質量の100倍以上を用いて、洗浄前後における複合体の乾燥状態での質量変化が10%以下になるまで行う。乾燥操作は、上記の操作で洗浄した複合材料を60℃、1kPa以下の減圧下で乾燥させ、質量変化が恒量(質量変化が1時間あたり0.5wt%以下)になるまで行う。
【0019】
次に、本発明の複合体の特徴について述べる。
本発明の複合体の中で、例えば二価金属としてカルシウムを用いた複合体では、粉末X線において、面方向の繰り返し距離を反映した2θ=20〜60゜の広角側のピークは珪酸カルシウム水和物と何ら変化は見られず、層間隔を反映した2θ=10゜以下に見られるピークのみが、樹脂前駆体の複合化によって低角側にシフトすることが確認され、珪酸カルシウム水和物の層間が複合化によって広がり、樹脂前駆体がその層間に取り込まれたことが示唆された。更に、透過型電子顕微鏡(TEM)観察においても、粉末X線の層間距離に対応する層間隔の広がりが確認され、この複合体は、珪酸カルシウム水和物の層間に樹脂前駆体が取り込まれた、ナノレベルの複合体であることが分かった。
本発明のプレス成形材料が熱硬化性樹脂の強度を低下させることなく、防火性を付与することができたのは、本発明の複合体が、均一構造で成形性に優れた成形材料を得るのに理想的と考えられている、無機材料のナノメーターレベルの分散を実現し、かつ樹脂との化学結合の可能な官能基を有する複合体であるためと推定している。
【0020】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で示した試験は、以下の方法で行った。
(1)曲げ強度試験
プレス成形体(15×50×2mm(厚さ))の試験片を準備する。測定は万能引張圧縮試験機(TVM500(ミネベア(株)製))を使用し、ヘッドスピード2mm/min、試験スパン32mmの条件で、3点支持による曲げ荷重を測定した。
(2)防火性試験
プレス成形体(100×100×2mm(厚さ))の試験片を準備する。
東洋精機(株)製のコーンカロリーメータ装置を用い、(財)日本建築総合試験所編「防耐火性能試験・評価業務方法書」に基づいて、10分間の燃焼試験を行った。
(3)複合体中の二価金属珪酸塩水和物および樹脂量の測定
セイコー電子工業(株)製TG−DTA測定装置(TG/DTA320)を用い、リファレンスをAl2O3とし、大気中で20〜1000℃の範囲で20℃/minで昇温して示差熱熱重量同時測定を行い、前述の方法で洗浄・乾燥操作を行った複合体100重量部において、300℃以下に見られる吸熱を伴う重量減少率を水和水の重量部、1000℃の残留灰分重量を無水二価金属珪酸塩の重量部、100から両者の重量部を差し引いた値を熱硬化性樹脂の重量部とし、水和水と無水二価金属珪酸塩の重量部を足しあわせたものを二価金属珪酸塩水和物の重量部とした。
【0021】
【実施例1】
(1)複合体の合成
精製水150gにメタ珪酸ナトリウム・9水和物7.7g(珪素として0.027mol)を溶解し、更に水酸化ナトリウム3gを加えて完全に溶解して溶液Aを得た。また、精製水50gに水酸化ナトリウム1gを溶解した後に、レゾール(旭有機材工業(株)製:AVライトレジン AKP012)を15g(樹脂分12g)添加し、透明な赤色溶液Bを得た。両者を混合した溶液のpHは12.9であった。得られた混合溶液を攪拌しながら1mol/lの硝酸カルシウム・4水和物水溶液35.1ml(カルシウムとして0.035mol)を添加し、濁った複合体分散液Cを得た。この複合体分散液CのpHは12.5であった。得られた複合体分散液Cを60℃で7日間静置熟成した後、精製水で2倍に希釈し、インターナショナルイクイップメントカンパニー製MP4型遠心分離機を用いて遠心分離し、更に、精製水を添加して洗浄する洗浄操作を4回繰り返した後、60℃、1kPa程度の条件で12時間以上減圧乾燥して、本発明のレゾール複合体を得た。得られた複合体は、TG−DTA測定の結果から、複合体100重量部中の珪酸カルシウム水和物/レゾールの比率が、70/30重量部であることを確認した。
(2)プレス成形体の作成
得られた複合体11gを粉末状に粉砕し、金型温度180度、プレス圧力1.3×107Paの成形条件で、50×50×2mmの形状にプレス成形して成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表1に示した。
【0022】
【比較例1】
(1)複合体の合成
精製水50gにメタ珪酸ナトリウム・9水和物7.7g(珪素として0.027mol)を溶解し、更に水酸化ナトリウムを3.5g加えて完全に溶解し、溶液Aを得た。また、精製水124gにポリアクリル酸(ポリサイエンス社製試薬、重量平均分子量=9万)の25wt%水溶液20.2gを溶解して、透明な溶液Bを得た。両者を混合した溶液のpHは13.1であった。攪拌しながら、1mol/lの硝酸カルシウム・4水和物水溶液35.1ml(カルシウムとして0.035mol)を添加し、濁った複合体分散液Cを得た。この複合体分散液CのpHは13.0であった。得られた複合体分散液Cを60℃で7日間静置した後、精製水で2倍に希釈し、インターナショナルイクイップメントカンパニー製MP4型遠心分離機を用いて遠心分離し、更に、精製水を添加して洗浄する洗浄操作を4回繰り返した後、60℃、1kPa程度の条件で12時間以上減圧乾燥して、複合体を得た。得られた複合体は、TG−DTA測定の結果から、複合体100重量部の珪酸カルシウム水和物/ポリアクリル酸の比率が、70/30重量部であることを確認した。
(2)プレス成形体の作成
得られた複合体11gを粉末状に粉砕し、金型温度180度、プレス圧力1.3×107Paの成形条件で、50×50×2mmの形状にプレス成形を試みたが、硬化は見られず成形体は得られず、粉状のままであった。
【0023】
【実施例2】
(1)複合体の合成
精製水150gにメタ珪酸ナトリウム・9水和物7.7g(珪素として0.027mol)を溶解し、更に水酸化ナトリウム8gを加えて完全に溶解して溶液Aを得た。また、精製水50gに水酸化ナトリウム1gを溶解した後に、レゾール(旭有機材工業(株)製:AVライトレジン AKP012)を5g(樹脂分4g)添加し、透明な赤色溶液Bを得た。両者を混合した溶液のpHは13.3であった。得られた混合溶液を攪拌しながら1mol/lの硝酸カルシウム・4水和物水溶液35.1ml(カルシウムとして0.035mol)を添加し、濁った複合体分散液Cを得た。得られた複合体分散液CのpHは13.2であった。この複合体分散液Cを60℃で7日間静置した後、精製水で2倍に希釈し、インターナショナルイクイップメントカンパニー製MP4型遠心分離機を用いて遠心分離し、更に、精製水を添加して洗浄する洗浄操作を4回繰り返した後、60℃、1kPa程度の条件で12時間以上減圧乾燥して、複合体を得た。得られたレゾール複合体は、TG−DTA測定の結果から、複合体100重量部の珪酸カルシウム水和物/レゾールの比率が、92/8重量部であることを確認した。
(2)プレス成形体の作成
レゾール(旭有機材工業(株)製:AVライトレジン AKP012)178重量部(樹脂分142重量部)と精製水54重量部を卓上用電動ミキサーで3分間混練した後、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛(和光純薬製 化学用)10重量部を加えて更に10分混合、増粘剤として水酸化カルシウム(和光純薬製 特級)3重量部、レゾール複合体粉末720重量部を加えて更に5分間混練して、成形用組成物を得た。得られた組成物ペーストを80℃で4時間熟成処理した後、金型温度180度、プレス圧力1.3×107Paの成形条件で、50×50×2mm、100×100×2mmの形状にプレス成形して成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表1に示した。
【0024】
【比較例2】
(1)低結晶性珪酸カルシウム水和物の合成
精製水213gにメタ珪酸ナトリウム7.7g(珪素として0.027mol)を溶解し、水酸化ナトリウム4gを加えて完全に溶解してpHが13.2の溶液Aを得た。溶液Aを攪拌しながら、1mol/lの硝酸カルシウム・4水和物水溶液35.1ml(カルシウムとして0.035mol)を添加し、濁った珪酸カルシウム水和物分散液Bを得た。この珪酸カルシウム水和物分散液のpHは13.0であった。この分散液Bを60℃で7日間静置した後、精製水で2倍に希釈し、インターナショナルイクイップメントカンパニー製MP4型遠心分離機を用いて遠心分離し、更に、精製水を添加して洗浄する洗浄操作を4回繰り返した後、60℃、1kPa程度の条件で12時間以上減圧乾燥して、低結晶性珪酸カルシウム水和物(以下、C-S-Hと略記する)を得た。
(2)プレス成形体の作成
実施例2のレゾール添加量を250重量部に、精製水を40重量部に、また、複合体粉末720重量部をC-S-H662重量部に変更する以外は、実施例2と同様にしてプレス成形体を得た。得られた成形体の評価結果を、表1に示した。
【0025】
【比較例3】
レゾール(旭有機材工業(株)製:AVライトレジン AKP012)250重量部(樹脂分200重量部)と精製水40重量部を卓上用電動ミキサーで3分間混練した後、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛(和光純薬製 化学用)10重量部を加えて更に10分混合、増粘剤として水酸化カルシウム(和光純薬製 特級)3重量部、カオリンクレー331重量部、水酸化アルミニウム(ハイジライトH32)331重量部を加えて更に5分間混練して、成形用組成物を得た。得られた組成物ペーストを80℃で4時間熟成処理した後、金型温度180度、プレス圧力1.3×107Paの成形条件で、50×50×2mm、100×100×2mmの形状にプレス成形して成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
比較例1で示される水溶性高分子の複合体では、成形体が得られないのに対し、実施例1で示される熱硬化性樹脂前駆体(レゾール)の複合体では成形体が得られ、複合体自身が架橋可能な官能基を有することが確認された。実施例2で示される本発明の複合体を添加した成形材料は、比較例2及び3に示される無機物を直接添加した成形材料と比較して、強度が高く、同レベルの防火性を示すことが分かった。
【0028】
【発明の効果】
本発明の無機・有機複合体は、均一構造で成形性に優れた高強度の複合材料を得るのに理想的な、無機材料のナノメーターレベルの分散を実現し、かつ樹脂との化学結合可能な官能基を有することにより、熱硬化性樹脂に混合してプレス成形した複合材料において、十分な強度と防火性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたレゾール複合体および比較例3で得られたC-S-Hの粉末X線回折の広角側(2θ=3〜60゜)のチャート図である。
【図2】実施例1で得られたレゾール複合体および比較例3で得られたC-S-Hの粉末X線回折の低角側拡大(2θ=1〜11゜)チャート図である。
Claims (9)
- 低結晶性二価金属珪酸塩水和物と、水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体とからなり、該低結晶性二価金属珪酸塩水和物の層間に、該水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体が取り込まれていることを特徴とする複合体。
- 低結晶性二価金属珪酸塩水和物の二価金属が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウ
ム及びバリウムの群より選ばれる、少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の複合体。 - 二価金属が、カルシウムであることを特徴とする請求項2記載の複合体。
- 該水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体の数平均分子量が100〜1000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合体。
- 水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂前駆体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。
- 水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体がレゾールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合体。
- 低結晶性二価金属珪酸塩水和物を50〜99重量部と、水と相溶性のある熱硬化性樹脂前
駆体1〜50重量部を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合体。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の複合体35〜90重量部と、熱硬化性樹脂65〜10重
量部を含有するプレス成形用材料。 - 水と相溶性のある熱硬化性樹脂前駆体と珪酸アニオンを含有する混合水溶液に、二価金属
塩を添加することによって得られる請求項1〜7のいずれかに記載の複合体。
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