JP4123355B2 - 透明シート及びその製造方法、並びに液晶表示装置 - Google Patents
透明シート及びその製造方法、並びに液晶表示装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置の液晶表示パネルと液晶表示パネルを保護する透明保護板との間に設けられる透明シートに関し、特に、液晶表示パネルからの表示の視認性を向上させると共に、液晶表示パネルと透明保護板の衝撃吸収性を向上させることができる透明シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話、携帯ゲーム機、カーナビゲーションシステム、パソコン用ディスプレー、液晶テレビ等、様々な電子機器の表示部として液晶表示装置が用いられているが、これらの液晶表示装置、特に携帯型の小型機器の液晶表示装置には、その表示部である液晶表示パネルを衝突、押圧などの外部からの衝撃から保護するために、樹脂やガラスの透明保護板で覆っている場合が多い。
【0003】
この場合、通常、透明保護板が受けた衝撃が、液晶表示パネルに直接伝達されることを避けるために、透明保護板は、液晶表示パネルからある程度の間隔を開けて設置される。しかし、この間隙は空気層となるため、液晶表示パネルと空気層、及び空気層と透明保護板の界面における光の反射損が大きくなり、また空気層と透明保護板の屈折率にも差があることから、表示された像が暗くなったり、歪みが生じたりして、表示の視認性を低下させてしまうという問題があり、特に、最近、液晶表示パネルのカラー化や高解像度化に伴い、この問題の解決が重要になっている。
【0004】
このような問題を防止するために、従来、液晶表示パネルと透明保護板との間隙に、透明シートを配設することが試みられている(下記特許文献1〜6参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−337411公報
【特許文献2】
特開平6−75210号公報
【特許文献3】
特開平9−133912号公報
【特許文献4】
特開平9−197387号公報
【特許文献5】
特開平9−6256号公報
【特許文献6】
特開平9−318932号公報
【0006】
例えば、特開平6−337411号公報(特許文献1)には、光錯乱防止素材により形成されたシリコーンゲルの緩衝層を液晶表示パネルと透明保護板との間に密着接合させた液晶表示装置が開示されている。この場合、上記緩衝層は、液状の光錯乱防止素材の原料を、液晶表示パネルと透明保護板との間の注入し、硬化させることにより形成されており、個々の装置に対して液体原料を減圧下で注入し、硬化させる工程が必要となるため生産性が悪いという問題がある。
【0007】
一方、同公報には、予め硬化させたシリコーンゲルの緩衝層を貼合わせる方法も開示されているが、緩衝層の粘着性が強すぎるため、接着層をロール状に巻いてこれを巻きほぐしながら貼付したり、減圧下で貼合わせたりする必要があり、操作が煩雑である上、気泡残りが発生する可能性が高く、この場合、貼り直すことや残った気泡を押し出すことはゲルの高い粘着性のために実質的に不可能である。
【0008】
また、特開平6−75210号公報(特許文献2)には、液晶表示パネルと透明保護板との間に、透明な粘着性樹脂からなる緩衝性を有する接着シートを介在させる液晶表示装置の製造方法が提案されているが、この場合、接着シートをその接着界面に揮発性の溶剤を介在させて密着下に接着処理することにより、空気が巻き込まれないようにしている。
【0009】
特開平9−133912号公報(特許文献3)には、緩衝性と密着性を有する透明な非ゲル樹脂シートを用いた車載搭載用液晶表示装置が開示され、この場合、液晶パネルと透明保護板に樹脂シートを、ロールラミネータ等を用いた圧着方式で密着させることにより装置が製造されるが、密着界面に気泡が混入した場合は、減圧による脱気処理を施す必要があり、また気泡の混入を防止するためには、水などの溶剤を液晶表示セルと透明保護板の間に介在させる。
【0010】
特開平9−197387号公報(特許文献4)には、可塑剤含有のポリマーからなる透明樹脂シートを、このシートを膨潤・溶解させない揮発性液体を配備した状態で、液晶表示パネルと透明保護板とを密着させる液晶表示装置の製造方法が開示されているが、この方法もロールラミネータや揮発性液体を用いて圧着するものである。
【0011】
これらの装置や方法は、いずれも粘着性を有するシートを用いたものであり、圧着等により表示パネル上に設置でき、透明保護板ともその粘着性を利用して密着させることができるものの、シートの圧着には機械的な強い力が必要であり、また、シートと液晶パネルまたは透明保護板との界面の間に空気が封入されることを避けるために、揮発性液体等を塗布したり、減圧による脱気操作が必要である上、シートの貼直しがきかないという問題があり、生産性や歩留まりの点で問題がある。
【0012】
一方、特開平9−6256号公報(特許文献5)には、液晶表示パネルに、ガラス転移温度が−30℃以下のポリマーからなる緩衝性を有する透明粘着シートを介してタブレット板を密着配置した液晶表示装置が、特開平9−318932号公報(特許文献6)には、透明な接着剤層と緩衝層を重畳した透明な積層シートを介して液晶表示パネルと透明保護板を密着配置した液晶表示装置が各々開示されており、これらは、揮発性液体や脱気処理を必要とせず、軽押圧力にて液晶表示パネルや透明保護板と密着させることができるものである。しかしながら、この粘着シートには、その粘着性又は接着性ゆえに、粘着面又は接着面が汚れやすいという問題がある。
【0013】
粘着面等が汚れると、密着性が低下するだけでなく、粘着面に付いた埃等が原因となって、そこから空気が入り込み、その部分で光の反射損が大きくなって視認性の低下をもたらすことになる。粘着面等に埃等が付着してしまった場合、粘着面等から埃等を除去するのは極めて困難であるため、そのシートは廃棄するしかなく、また、一度貼付したシートも粘着面又は接着面に汚れが付着したり、表面が荒れてしまったりして貼直すことはできないため、歩留まりが悪くなる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、液晶表示パネルと該液晶表示パネルを保護する透明保護板と密着させる際の密着面への空気の封入を防止し、封入された場合においても特別な操作を必要とせずに脱気可能であると共に、高い視認性、衝撃吸収性及び生産性を与えることができる透明シート及びこれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、シリコーンゲル層を非粘着性のシリコーンゴム層で被覆した透明シートが、シリコーンゲルの高い衝撃吸収性を保持しつつ、高い密着性を与えると共に、液晶表示装置組立時の空気の封入を防止でき、万一空気が封入されても押圧又は貼り直しにより容易に脱気が容易であること、これにより屈折率差を小さくすることができ、高い視認性が得られること、更には、シート状のシリコーンゲルの表面にシリコーンゴム組成物を積層して硬化させてシリコーンゴム層を形成すること、又はシート状のシリコーンゲルの表層に硬化剤を塗布し、該シリコーンゲルの表層を更に硬化させることによりシリコーンゴム層を形成することにより、シリコーンゲル層とシリコーンゴム層とが一体化された透明シートが得られ、各層の接着が不用であると共に、層間の界面での光の反射損が少なく、高い視認性を有する透明シートが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0016】
即ち、本発明は、液晶表示パネルと該液晶表示パネルを保護する透明保護板との間に密着させて用いる透明シートであって、シリコーンゲル層と、該シリコーンゲル層の液晶表示パネル及び透明保護板と対向する面にそれぞれ上記シリコーンゲル層を被覆する非粘着性のシリコーンゴム層とを備えることを特徴とする透明シート及びその製造方法、並びにこの透明シートが液晶表示パネルと該液晶表示パネルを保護する透明保護板との間に密着して設けられた液晶表示装置を提供する。
【0017】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の透明シートは、液晶表示装置において、液晶表示パネルと該液晶表示パネルを保護する透明保護板との間に密着させて用いる透明シートであり、透明なシリコーンゲル層とこのシリコーンゲル層を被覆する透明なシリコーンゴム層を備えるものである。このような透明シートとしては、例えば、図1に示されるように、シート状のシリコーンゲル層11の両面、即ち液晶表示パネル及び透明保護板と対向する面にそれぞれシリコーンゴム層12,13を形成したものが挙げられる。
【0018】
ここで、シリコーンゲル層を構成するシリコーンゲルは、硬化性シリコーンゲル組成物を硬化させることにより得ることができる。このようなシリコーンゲル組成物としては、硬化反応により透明なシリコーンゲルを形成するものであれば特に制限されず、例えば、シラノール基や、ビニル基に代表されるアルケニル基等の官能基を有するベースポリマーとしてのオルガノポリシロキサンと架橋剤及び/又は触媒とを含むものが挙げられる。
【0019】
上記ベースポリマーとしては、例えば、下記平均単位式
RaSiO(4-a)/2
(式中、Rは非置換又は置換一価炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜10、特に1〜8のものである。aは1.95〜2.05の正数である。)
で示されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。ここで、Rとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、これらの炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基、或いはシアノ基で置換された2−シアノエチル基等のシアノ基置換炭化水素基などが挙げられ、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
この場合、オルガノポリシロキサンは、硬化方式に応じ、アルケニル基や水酸基(シラノール基)等の官能基を1分子中に2個以上有するものが用いられる。例えば、末端にシラノール基や、ビニル基等のアルケニル基を有するジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のジオルガノポリシロキサンが挙げられ、特に、液状のものが好ましく用いられる。
【0021】
また、架橋剤としては、硬化方式に応じ、3官能以上のシランモノマー、3官能以上のメチルハイドロジェン(ポリ)シロキサン等のオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサン、アルキルオルソシリケート等の金属アルコラートなどが挙げられ、触媒としては、白金化合物、ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウリレート等の有機金属化合物、又はオクテン酸錫のような金属脂肪酸塩などが挙げられる。前記架橋剤や触媒の種類や量は、架橋度、可使時間や硬化速度を考慮して適宜決定すればよいが、架橋剤の量は、少なすぎると、得られたシリコーンゲルが充分に硬化せずに形状が保てず、シリコーンゴム層の形成が困難になる場合があり、多すぎると、硬くなり過ぎて、十分な衝撃吸収性が得られなくなるおそれがあるから、上記硬度(針入度)を達成する硬化有効量である。
【0022】
上記シリコーンゲル組成物としては、好ましくはアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンをベースポリマーとして、架橋剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサン、触媒として白金系触媒を用いた付加硬化型のものである。
【0023】
なお、上記シリコーンゲル組成物には、ジメチルシリコーンオイル等の可塑剤を添加することができ、可塑剤の添加量を調整することにより、得られるシリコーンゲルの硬度を調整することが可能である。
【0024】
このようなシリコーンゲル組成物としては、市販品を用いることができ、CY52−276(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)等のシリコーンコンパウンドや、必要に応じて更にこれらに架橋剤、触媒、可塑剤などを添加したものなどが挙げられる。
【0025】
シリコーンゲル組成物の硬化条件は特に制限されないが、例えば、付加硬化型の場合、90℃以上、好ましくは130℃以上、210℃以下、好ましくは200℃以下で硬化させることが望ましい。また、硬化時間は、得られるシリコーンゲルの厚さと硬化温度を基準に設定することができ、例えば硬化温度150℃、厚さ1mm当たり10秒とすることができる。
【0026】
なお、シリコーンゲルとしては、硬度がJIS K 6253で規定されるJIS−A硬度で10未満、特に0以下のものが好ましく、また、JIS K 2220で規定される針入度が120〜0、特に100〜50であるものが好ましい。
【0027】
一方、シリコーンゴム層を構成するシリコーンゴムとしては、硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させることにより得ることができる。このようなシリコーンゴム組成物としては、硬化反応により透明なシリコーンゴムを形成するものであれば特に制限されず、例えば、シラノール基や、ビニル基に代表されるアルケニル基等の官能基を有するベースポリマーとしてのオルガノポリシロキサンと架橋剤及び/又は触媒とを含むものが挙げられる。
【0028】
上記ベースポリマーとしては、例えば、下記平均単位式
R’bSiO(4-b)/2
(式中、R’は非置換又は置換一価炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜10、特に1〜8のものである。aは1.95〜2.05の正数である。)
で示されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。上記R’としては、前述のRと同様のものが挙げられ、R’は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
この場合、オルガノポリシロキサンは、硬化方式に応じ、アルケニル基や水酸基(シラノール基)等の官能基を1分子中に2個以上有するものが用いられる。例えば、末端にシラノール基や、ビニル基等のアルケニル基を有するジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のジオルガノポリシロキサンが挙げられ、特に、液状のものが好ましく用いられる。
【0030】
また、架橋剤としては、硬化方式に応じ、3官能以上のシランモノマー、3官能以上のメチルハイドロジェン(ポリ)シロキサン等のオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサン、アルキルオルソシリケート等の金属アルコラートなどが挙げられ、触媒としては、白金化合物、ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウリレート等の有機金属化合物、又はオクテン酸錫のような金属脂肪酸塩などが挙げられる。前記架橋剤や触媒の種類や量は、架橋度、可使時間や硬化速度を考慮して適宜決定すればよいが、架橋剤の量は、少なすぎると、得られたシリコーンゴムが充分に硬化せずにゲル状になってしまうおそれがあり、多すぎると、硬くなり過ぎて、十分な密着性が得られなくなるおそれがあるから、上記硬度を達成する硬化有効量である。
【0031】
上記シリコーンゴム組成物としては、好ましくはアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンをベースポリマーとして、架橋剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサン、触媒として白金系触媒を用いた付加硬化型のものである。
【0032】
更に、上記シリコーンゴム組成物には、ジメチルシリコーンオイル等の可塑剤を添加することができ、可塑剤の添加量を調整することにより、得られるシリコーンゲルの硬度を調整することが可能である。
【0033】
このようなシリコーンゴム組成物としては、市販品を用いることができ、KE1935,KE1300T(いずれも信越化学工業株式会社製)、SE1821,SH780U,JCR6122(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)等のシリコーンコンパウンドや、必要に応じて更にこれらに架橋剤、触媒、可塑剤などを添加したものなどが挙げられる。
【0034】
これらシリコーンゴム組成物の硬化条件も特に制限されず、例えば、付加硬化型の場合、上述のシリコーンゲルの硬化条件として例示した条件を適用することが可能である。
【0035】
なお、シリコーンゴムとしては、硬度がJIS K 6253で規定されるJIS−A硬度で10以上、特に10〜70、とりわけ10〜50のものが好ましい。
【0036】
シリコーンゴム層の厚さは、シリコーンゲル層に対して1/100〜1/10の厚さとすることが好ましい。この範囲より薄くすると、曲げ伸ばしによってシリコーンゴム層が破壊されてシリコーンゲル層が露出してしまうおそれがあり、この範囲より厚くすると、硬度が高いシリコーンゴム層の割合が大きくなり、十分な衝撃吸収性が得られなくなるおそれがある。
【0037】
本発明において、シリコーンゲル層とシリコーンゴム層の積層は、特に限定されず、例えば、シリコーンゴム層とシリコーンゴム層をそれぞれ成形して積重し、押圧して、これらをシリコーンゲルの粘着力を利用して一体化することも可能であるが、シート状のシリコーンゲルの表面にシリコーンゴム組成物を積層して硬化させてシリコーンゴム層を形成することが好ましい。この方法によって透明シートを製造すれば、得られた透明シートは、シリコーンゲル層とシリコーンゴム層とが一体化されているため層間の接着が不用であると共に、各層間の界面での光の反射損が少なく、高い視認性を与えることができる。
【0038】
また、シート状のシリコーンゲルの表層に硬化剤を塗布し、該シリコーンゲルの表層を更に硬化させることによりシリコーンゴム層を形成することも好ましい。この方法によって透明シートを製造すれば、得られた透明シートは、上記方法同様、シリコーンゲル層とシリコーンゴム層とが一体化されているため層間の接着が不用であり、各層間の界面での光の反射損が少なく、高い視認性を与えることができる。特に、この方法は、比較的薄いシリコーンゴム層を形成する場合に好ましい。
【0039】
この場合、硬化剤としては、上述のシリコーンゲル組成物において例示した架橋剤及び/又は触媒を必要に応じて溶剤に溶解させたものなどを用いることができる。例えば、付加硬化型のシリコーンゲル組成物であれば、液状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び必要に応じ、白金系触媒を塗布すればよい。また、硬化剤の塗布には、コーターにより塗布する方法や、スプレーにより噴霧する方法が挙げられる。
【0040】
本発明の透明シートは、上記のようにシリコーンゲル層をシリコーンゴム層で被覆したものである、シリコーンゴムとしては非粘着性のシリコーンゴムが好ましい。ここで、非粘着性とは、粘着性を測定するために一般的に用いられる試験であるループタック試験(JIS Z 0237)、ポリケン(Polyken)プローブタック試験(JIS Z 0237)、180度剥離試験(JIS C 2107)で測定される粘着力又は接着力が、ほとんど0で、測定不可能のレベルであることをいい、特に、JIS Z 0237に準拠したボールタック試験において測定されるボールナンバーが2以下であることが好ましい。
【0041】
本発明の透明シートは、液晶表示パネル及び液晶保護板との密着面に埃等が付着しにくく、たとえ付着しても、例えば粘着テープ等を貼り付けて剥がすことにより付着した埃等を除去することができることからシートの再生が可能である。また、粘着テープ等による付着物の除去操作を一律に行えば、液晶表示装置の不良を低減し、歩留まりを向上させることも可能であり、製品のバラツキも抑えることができる。
【0042】
また、本発明の透明シートは、上述のとおり、粘着剤や接着剤を用いることなく、液晶表示パネル及び透明保護板と密着させることができるが、透明シートの液晶表示パネル及び透明保護板と対向する面の表面粗さ(Ra)、即ちJIS B 0601に規定されている表面粗さRa(算術平均粗さ)が、12.5μm以下、特に5μm以下であることが好ましい。特に、後述する透明シートの硬度(JIS−A)が10未満の軟らかいシートの場合には、表面粗さRaが12.5μm程度以下であれば、押圧により界面に封入された空気を押出すことが可能である。また、硬度(JIS−A)が10以上の場合には、十分な密着性を確保するためには、表面粗さRaを5μm以下とすることが好ましい。表面粗さRaが12.5μmを超える場合、例えば、ツールマークが残っているような状態では、液晶表示パネル又は透明保護板との界面に空気が封入されやすく、また、軟らかいシートであっても押圧により封入された空気を追い出すことが困難となるおそれがあり、密着性が低くなるおそれがある。
【0043】
この表面粗さは、液晶表示パネル及び透明保護板と対向する面を、平面研削、正面フライス研削、精密ヤスリ仕上げ、バフ仕上げ、ラップ仕上げ、電解研磨等により、JISで規定する仕上げ記号「▽▽▽」、特に「▽▽▽▽」で仕上げた金型を用いて成形する方法、所定の表面粗さを有する平滑な樹脂フィルムを基材として、この基材フィルム上にシート材料となるシリコーンゴム組成物を流延又はコーティングして、硬化させた後、基材フィルムを剥がす方法等により達成することができる。
【0044】
また、本発明の透明シートの硬度、特に、透明保護板と対向する面からスプリング硬度計を用いて測定された硬度が、JIS−Aで70以下、特に50以下であることが好ましい。硬度が70を超えると、硬くなりすぎて、組立作業の際に適宜折り曲げたりしにくい反面、変形からの戻りが悪くて作業性が悪くなるおそれがあり、取り扱い時に傷が付いてしまうおそれがある。
【0045】
更に、本発明の透明シートが、液晶表示装置の組立作業において、より取り扱いやすく、隙間なく液晶表示パネル及び透明保護板に密着するものであるためには、ヤング率が10N/cm2(即ち、1×106dyn/cm2)以上、特に50N/cm2(即ち、5×106dyn/cm2)以上であることが好ましく、上限は800N/cm2(即ち、8×107dyn/cm2)以下、特に600N/cm2(即ち、6×107dyn/cm2)以下であることが好ましい。ヤング率が10N/cm2未満では、伸び歪みがあるため、変形時の戻りが遅く、組立作業性が低下するおそれがあり、一方、ヤング率が800N/cm2を超えると、折り曲げ等の作業が困難な反面、変形に対する戻りが遅いため、やはり組立作業性が低下するおそれがある。
【0046】
また更に、本発明の透明シートのシリコーンゲル層とシリコーンゴム層との屈折率の差が、0.3以下、特に0.15以下であることが好ましい。屈折率の差を上記範囲とすることにより、透明シートを、液晶表示パネルからの像の歪みがより小さく、より高い視認性を与えるものとすることができる。
【0047】
以上のように、本発明の透明シートは、その優れた密着性ゆえに、液晶表示パネル又は透明保護板の表面に載置するだけで、その界面に巻き込まれていた空気(気泡)が自然と追い出され、また、載置する際に界面に巻き込まれた空気があっても、手で押圧したり、端部を剥がして再度載置し直したりするだけで、残された気泡を外部へ追い出すことができる。更に、表面に埃等が付着しても、粘着テープ等を用いて容易に除去して、表面を清浄化することが可能であり、不良の発生を低減することができる。
【0048】
なお、本発明の透明シートの形状は、特に限定されず、液晶表示パネルと透明保護板との間に密着させて用いるという目的から、液晶表示パネルと透明保護板との間隙に合わせた形状及びサイズが選択される。特に、その厚さは、液晶表示パネルと透明保護板との間隙の厚さと等しくすることが好ましい。また、密着面のサイズを間隙よりも若干小さくすると共に、厚さを若干厚くすることも好ましい。これにより、液晶表示装置組立時の押圧により、液晶表示パネル及び透明保護板と透明シートとを密着させることができ、弾性によって透明シートが液晶表示パネルと透明保護板との間隙全体に広がって狭持されるので、密着が安定し、組立後に界面に空気が侵入することを防止することができる。
【0049】
本発明において、液晶表示装置は、図2に示されるように、上述の透明シート1を、液晶表示パネル2及び透明保護板3との間に密着させて配設したものである。なお、図中4は装置本体を示す。
【0050】
この場合、液晶表示パネル2及び透明保護板3としては、液晶表示装置の分野で従来用いられている液晶表示パネル、透明保護板を用いることができる。
【0051】
透明保護板としては、アクリル板やポリカーボネート板等の透明性の高い樹脂板の他、タッチパネルやタブレット板のように2枚の透明樹脂板の間に透明電極を保持したタッチセンサー付きのものも用いることができる。
【0052】
また、透明保護板の透明シートと対向する面とは反対の面に反射防止層を積層したものも用いることができる。反射防止層としては、例えば、フッ化マグネシウムを真空蒸着した透明膜で可視光線を1/4に制御したものや、酸化チタン層を酸化ケイ素層を交互に積層した高屈折率物質層と低屈折率物質層の積層体や、シリコーン樹脂やフッ素樹脂のような低屈折率物質をコーティングしたものなどが挙げられる。このような反射防止膜は、透明シートの一面に直接蒸着又はコーティング等することにより形成してもよいし、反射防止層が形成された透明フィルムを透明保護板に貼付することによって設けてもよい。
【0053】
【実施例】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
シリコーンゲル組成物として付加硬化型のシリコーンゲル組成物CY52−276(A)/(B)(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を用い、これを70℃、30分で硬化させてシート状のシリコーンゲル層(厚さ3mm、針入度75(mm/10)(JIS K 2220))を得、更に、シリコーンゴム組成物としてJCR6122(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を用いて上記シリコーンゲル層に積層し、これを150℃、60分で硬化させてシリコーンゴム層(厚さ0.1mm、硬度35(JIS−A))を形成して透明シートを製造し、下記方法に従って、硬度、粘着性(ボールタック試験)、ヤング率及び異物除去(透過率)の各試験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(1)硬度
JISのスプリング試験機A型を用いてJIS−A硬度(度)を測定した。
【0056】
(2)粘着性(ボールタック試験)
JIS Z 0237の傾斜ボールタック試験に準拠して測定した。即ち、30度の傾斜板に試験片を貼り付け、この試験片表面にボールを転がし、測定部内で停止するボールのうち最大のボールナンバーを見出す。ボールナンバーが大きいほど粘着性を有している。
【0057】
(3)ヤング率(N/cm2)
引っ張ったときの伸びと引っ張り力とを測定して求めた。
【0058】
(4)異物除去(透過率)
透明シートの初期透過率(打粉前)を測定し、次いで、シート表面に松村産業株式会社製の局方タルクPP0.1gを、篩を用いて表面全体に均一に打粉し、付着しなかったタルクを表面に触れずに軽く払い落とした後、透過率(打粉後)を測定した。次に、ニチバン株式会社製のセロファン粘着テープ(商品名:セロテープ)の粘着面を透明シートの打粉した面に貼り付け、剥がすことにより表面の粉を取り除いた。テープに粉が付着しなくなるまでテープの貼付、剥離を繰り返し、粉除去後の透過率(除去後)を測定した。なお、透過率は、日本分光株式会社製のMODEL U−550のUV/VIS SPECTROPHOTOMETER(紫外光・可視光分光光度計)を用いて測定した。
【0059】
【表1】
【0060】
本発明の透明シートは、打粉した後でも、粉を完全に除去して清浄面に戻すことができ、透過率も打粉前と同等にまで回復させることができる。
【0061】
[実験例]
JIS規格比較表表面粗さ標準片の正面フライス削り、平面研削、形削を準備し、この上にシリコーンコンパウンドKE1300T(信越化学工業株式会社製)及び可塑剤(シリコーンオイル)の配合比率を変えたシリコーンゴム組成物を流延し、硬化させて、比較表表面粗さ標準片から剥がし、標準片の表面粗さが反映された面を有する表2,3に示す硬度を有するシリコーンゴムシートを得た。なお、これらのシリコーンゴムシートの粘着性(ボールタック試験におけるボールナンバー)は2以下であった。
【0062】
これらのシリコーンゴムシートを、標準片と接触していた方の面がガラス板と接触するようにガラス板上に載せ、ガラス板とシリコーンゴムシートとの間に気泡が存在するか否かを目視で確認した。気泡が認められなかったものを「○」、気泡が認められたものを「×」とした。結果を表2,3に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【発明の効果】
本発明の透明シートは、液晶表示パネルと該液晶表示パネルを保護する透明保護板との間に密着させる際の密着面への空気の封入がなく、封入された場合においても特別な操作を必要とせずに脱気可能であると共に、高い視認性、衝撃吸収性及び生産性を与えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る透明シートの断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る液晶表示装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
1 透明シート
2 液晶表示パネル
3 透明保護板
4 装置本体
11 シリコーンゲル層
12,13 シリコーンゴム層
Claims (10)
- 液晶表示パネルと該液晶表示パネルを保護する透明保護板との間に密着させて用いる透明シートであって、シリコーンゲル層と、該シリコーンゲル層の液晶表示パネル及び透明保護板と対向する面にそれぞれ上記シリコーンゲル層を被覆する非粘着性のシリコーンゴム層とを備えることを特徴とする透明シート。
- シリコーンゲル層の硬度が、JIS−A硬度で10未満であることを特徴とする請求項1記載の透明シート。
- シリコーンゴム層の硬度が、JIS−A硬度で10以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明シート。
- ヤング率が10N/cm 2 以上800N/cm 2 以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の透明シート。
- 上記シリコーンゴム層のJIS Z 0237のボールタック試験において測定されるボールナンバーが2以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の透明シート。
- 液晶表示パネル及び透明保護板と対向する面のJIS B 0601に規定されている表面粗さRa(算術平均粗さ)が5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の透明シート。
- シリコーンゲル層とシリコーンゴム層との屈折率の差が、0.3以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の透明シート。
- 請求項1乃至7のいずれか1項記載の透明シートを製造する方法であって、シート状のシリコーンゲルの表面にシリコーンゴム組成物を積層して硬化させることにより上記シート状シリコーンゲル上にシリコーンゴム層を形成することを特徴とする透明シートの製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれか1項記載の透明シートを製造する方法であって、シート状のシリコーンゲルの表層に硬化剤を塗布し、該シリコーンゲルの表層を更に硬化させることにより上記シート状シリコーンゲル上にシリコーンゴム層を形成することを特徴とする透明シートの製造方法。
- 請求項1乃至7記載の透明シートが液晶表示パネルと該液晶表示パネルを保護する透明保護板との間に密着して設けられた液晶表示装置。
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