JP4122428B2 - 新規なキシログルカン分解酵素、それをコードする遺伝子、ならびに該酵素の製造方法 - Google Patents

新規なキシログルカン分解酵素、それをコードする遺伝子、ならびに該酵素の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なキシログルカン分解酵素、キシログルカン分解活性を有する特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド、その遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターにより形質転換された形質転換体、および該形質転換体を培養して上記ポリペプチドを製造する方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
キシログルカンは、グルコース、キシロース、ガラクトース、フコース、アラビノースなどを構成単糖とするヘテロ多糖であるが、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合で多数結合した主鎖に対して、キシロースがα-1,6キシロシド結合で高頻度に分岐結合した構造を基本とすることから、キシログルカンと呼称されている。このキシログルカンは、植物の一次細胞壁の構成成分として、またタマリンド豆に代表される熱帯産マメ科植物の種子貯蔵多糖として重要な役割を担っており、その構造や機能が注目されている。特に、植物の一次細胞壁中におけるキシログルカンは、セルロースと密接に関わって存在していると考えられており、セルロースとの相対的な存在形態が、植物細胞の伸長や形態分化に重要な役割を担っているものと考えられている。このようなキシログルカンの役割を解明するために種々の手法が用いられているが、中でもキシログルカンを分解することのできる各種グリコシダーゼは、重要で強力な分析手段を提供する。
【0003】
上述のようにキシログルカンはグルコース、キシロース、ガラクトース、フコース、アラビノースなどを構成単糖とし、かつ主鎖の構造がセルロースと同様なものであることから、これを分解できるグリコシダーゼとして、エンド-1,4-β-D-グルカナーゼ、β-ガラクトシダーゼ、イソプリメベロース生成オリゴキシログルカン分解酵素、α-キシロシダーゼ、β-グルコシダーゼおよびα-フコシダーゼが知られており、キシログルカンの構造や機能の解明に、各種起源のこれら酵素が用いられてきた。
【0004】
高分子量のキシログルカンを直接分解できるキシログルカン分解酵素は、酵素の分類からはエンド-1,4-β-D-グルカナーゼの一種と見なされており、キシログルカンのみを特異的に分解する酵素と、セルロースや大麦β-グルカンなどキシログルカン以外のβ-グルカンも分解できる酵素が知られている(たとえば特許文献1〜4)
【0005】
【特許文献1】
特許第2099167号 明細書
【特許文献2】
国際公開第94/14953号 パンフレット
【特許文献3】
国際公開第99/02663号 パンフレット
【特許文献4】
国際公開第02/077242号 パンフレット
【0006】
これら従来知られているキシログルカン分解酵素は、キシログルカンの主鎖を構成するβ-グルコシド結合を加水分解するにあたって、側鎖キシロースを認識しないか、または分解される結合からみて非還元末端側のグルコース残基に結合するキシロース側鎖を認識してキシログルカンを分解する酵素に限られていた(たとえば特許文献1あるいは非特許文献1)。
【0007】
【非特許文献1】
Jean-Paul Vincken, Gerrit Beldman and Alphons G. J. Voragen 、
Substrate specificity of endoglucanases: what determines xyloglucanase activity?、
「カーボハイドレート リサーチ(Carbohydrate Research)」、(オランダ)、 (1997)、298巻、4号、p.243-346
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
キシログルカンの構造を解明するために、キシログルカン分解酵素は重要な役割を果たしてきた。しかしながら、キシログルカンの複雑な構造をさらに解明するための新しい分析手段として、既知酵素とは異なる作用様式をもつ、新しいキシログルカン分解酵素の開発が嘱望されていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、タマリンド豆より調製したキシログルカンから、側鎖キシロースの数の異なる一連のキシログルカンオリゴ糖を調製することに成功し、キシログルカン分解酵素の作用様式を詳細に検討することを可能にした。そこで、自然界よりキシログルカンを炭素源として生育できる微生物のスクリーニングを行い、さらに分離微生物の生産するキシログルカン分解酵素を、側鎖キシロースの数の異なるキシログルカンオリゴ糖を分解基質として精査することにより、これまで知られていない分解様式でキシログルカンを分解する酵素の存在の可能性について鋭意検討した。その結果、酵母菌の一種であり、高純度キシログルカンオリゴ9糖の大量調製に有効な菌株として知られているゲオトリカム属の一菌株(ゲオトリカム(Geotrichum)属菌M128株)が 既知酵素とは異なる作用様式でキシログルカンを分解する酵素を生産することを見出し、該酵素のアミノ酸配列およびその遺伝子の塩基配列を解明し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に示されるとおりのものである。
(1)配列番号14に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドにおける1個若しくは複数個の核酸が欠失、付加、挿入若しくは置換された塩基配列を含むものであって、キシログルカン分解活性を有するポリペプチドを発現するポリヌクレオチド。
(2)開始コドンが付加された上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(3)シグナルペプチド配列に対応する塩基配列が付加された上記(2)に記載のポリヌクレオチド。
(4)配列番号12に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドにおける1個若しくは複数個の核酸が欠失、付加、挿入若しくは置換された塩基配列を含むものであって、キシログルカン分解活性を有するポリペプチドの前駆体を発現するポリヌクレオチド。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする組換えベクター。
(6)上記(5)に記載の組換えベクターを含むことを特徴とする形質転換体。
(7)上記(6)に記載の形質転換体を培養し、培養物から、組み換えられたポリヌクレオチドに対応するポリペプチドを採取することを特徴とする、ポリペプチドの製造方法。
(8)ポリペプチドが、キシログルカン分解活性を有するものである上記(7)に記載のポリペプチドの製造方法。
(9)キシログルカン分解活性が、エンド型であって、かつ、主鎖中にキシロース側鎖を有しないグルコース残基を有するとともに、該グルコース残基の還元末端側に該グルコース残基を含めずに数えて2番目のグルコース残基がキシロース側鎖を有する構造を持つキシログルカンにおいて、該キシロース残基を有しないグルコース残基の還元末端側β−1,4−グルコシド結合を切断することによりキシログルカンを分解するものである上記(8)に記載のポリペプチドの製造方法。
【0011】
なお、本発明においては、「アミノ酸配列を有するポリペプチド」あるいは「塩基配列を有するポリヌクレオチド」というとき、該記載において指摘するアミノ酸配列または塩基配列のみではなく、これら配列をその部分として含有するポリペプチド、ポリヌクレオチドも包含する。
【0012】
本発明におけるキシログルカン分解酵素は、ゲオトリカム(Geotrichum)属に属する微生物由来のエンド型酵素あって、主鎖中にキシロース側鎖を有しないグルコース残基を有するともに、その還元末端側に該グルコース残基を含めずに数えて2番目のグルコース残基がキシロース側鎖を有する構造を有するキシログルカンにおいて、該キシロース残基を有しないグルコース残基の還元末端側のβ−1,4−グルコシド結合を切断する作用を有する。
この酵素は、より具体的には、ゲオトリカム(Geotrichum)属菌M128株により生産され、ゲオトリカム(Geotrichum)属菌M128株は、ゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株、FERM P-16454として産業技術総合研究所、特許微生物寄託センターに寄託されている。
【0013】
上記ゲオトリカム(Geotrichum )属に属する微生物より、本発明の酵素を生産するためには、通常、タマリンド種子キシログルカンを炭素源とし、これに窒素源として、硝酸塩、アンモニウム塩或いはペプトン、酵母エキスのような無機または有機の窒素源と少量の金属塩を含む液体または固体培地を用い、20〜30℃で、4〜10日程度、好気的に培養される。本発明の酵素は、菌体外に生産される酵素であるため、液体培地の場合は培養後、濾過或いは遠心分離した上澄液を、そして固体培養の場合は培養後、水または適当な無機塩類で抽出した液を、粗酵素液とすることができる。粗酵素液中には、本発明の酵素以外にキシログルカンを分解する種々の酵素活性が含まれるため、これを除去する必要があるが、公知のクロマトグラフィーにより、本発明の酵素以外の共存するグリコシダーゼ活性を除去することができる。
【0014】
上記のようにして得られた本発明の酵素(精製物)は、以下のような性質を有している。
【0015】
(1)分子量および等電点;精製された本発明の酵素は、分子量が約81,000で、等電点pHは約4.8である。
【0016】
(2)作用;本発明の酵素は、各種起源のキシログルカンにエンド型の作用様式で作用し、主鎖を構成するβ-グルコシド結合を分解する。このとき、主鎖のキシロース側鎖をもたないグルコース残基の還元末端側β-1,4ーグルコシド結合が分解されるが、該グルコース残基から還元末端側に該グルコース残基を含めずに数えて2番目のグルコース残基にキシロース測鎖を有することが必要である。
すなわち、禾本科植物の細胞壁に含まれるキシログルカンのように、キシロース側鎖の出現頻度が低いキシログルカンに作用させると、上記分解作用により、主鎖の非還元末端にグルコース残基がひとつ残ったオリゴ糖を生成する。
【0017】
また、キシログルカン以外のキシロース側鎖をもたないβ-グルカン類については、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、大麦β-グルカン、ラミナラン、パキマン、カードラン、グルコマンナンのいずれも分解しない。
【0018】
同様に、重合度2から6の直鎖セロオリゴ糖にも作用しない。したがって本発明の酵素は、キシログルカンのみを特異的に分解し、セルロースには作用しないキシログルカン分解酵素である。
【0019】
(3)作用pHおよび最適作用pH;キシログルカンを分解基質としたとき、本発明の酵素の作用pH範囲は、45℃で10分間作用させた場合、pH4〜6であり、最適作用pHは約5.5付近に認められた。
【0020】
(4)安定pH範囲;本発明の酵素をクエン酸-リン酸塩緩衝液中で、45℃,30分放置してその残存活性からみた安定pH範囲は約pH5.5〜6.5であった。
【0021】
(5)作用温度範囲および最適作用温度;キシログルカンを分解基質としたとき、本発明の酵素の作用温度範囲は、pH5.5で10分間作用させた場合、約55℃まで作用が認められたが、最適作用温度は50℃であった。
【0022】
(6)熱安定性;本発明の酵素を50mM酢酸緩衝液(pH5.5)のもとで、各温度で15分間加熱処理した残存活性は50℃までは殆ど失活せず、55℃で約10%、60℃で約85%が活性を失った。
【0023】
(7)阻害剤;各種金属イオンのうちで、1mM以上の水銀イオンにより、本発明の酵素は強く阻害された。
【0024】
(8)精製法;本発明の酵素は、培養上清を限外濾過により濃縮・脱塩した後、陰イオン交換体ポロス50HQのカラムを用いたイオン交換クロマトグラフィーを繰り返し行い、活性を保持している画分を濃縮して、さらにトヨパールHW55Fカラムによるゲル濾過を行うことで、SDS電気泳動的に均一なまで分離精製することができた。
【0025】
(9)活性測定法;本発明の酵素は、キシログルカンを特異的に分解することから、タマリンドガムより調製したキシログルカンの0.5%水溶液0.5ミリリットル(pH5.5)に対して、適量の酵素を添加して全量を1ミリリットルとし、45℃で10分間反応させ、生成する還元糖をネルソン-ソモギー法により測定し、活性を求めた。この条件で、1分間に1マイクロモルのグルコースに相当する還元力を生成する酵素量を1単位とした。
【0026】
本発明の新規なキシログルカン分解酵素は、分泌蛋白であり、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有し、該配列中、残基1−20はシグナル配列である。本酵素の成熟体蛋白は、この残基1−20の配列が除かれたものであり、このアミノ酸配列を配列番号15に示す。
【0027】
したがって、本発明のポリペプチドとして好適なものは、少なくともこの配列番号15のアミノ酸配列を有するものであるが、また、このポリペプチドと1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入若しくは置換によりアミノ酸配列が異なるものであっても、キシログルカン分解活性を有する限り本発明に含まれる。
【0028】
また、本発明のポリペプチドとしては、配列番号13で示されるような、上記シグナル配列を有する前駆体ポリペプチド、あるいは、該ポリペプチドと1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入若しくは置換によりアミノ酸配列が異なるものであっても、スプライシングによりキシログルカン分解活性を有するポリペプチドを産生可能なものも挙げることができる。
【0029】
さらに、本発明のポリペプチドは、遺伝子組換え手段を用いて製造することができる。この場合、例えば、上記配列番号15に示されるアミノ酸配列のN末端に開始コドン由来のメチオニンが付加したものであってもよく、例えば、配列番号19に示されるポリペプチドについて、キシログルカン分解活性を有することが確認されている。
【0030】
本発明のキシログルカン分解活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子としては、該酵素を産生する微生物から該遺伝子のクローニングによって取得することができる遺伝子や該遺伝子に相同性を有する遺伝子があげられる。相同性としては、少なくとも60%以上の相同性を有する遺伝子、好ましくは80%以上の相同性を有する遺伝子、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する遺伝子が挙げられる。
本発明のキシログルカン分解活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子としては、例えば以下のようなポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)が好ましい。
【0031】
(1)配列番号14に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド、あるいは該ポリペプチドの1個又は複数個の核酸が欠失、付加、挿入または置換された塩基配列を有するポリヌクレオチドであって、キシログルカン分解活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(2)上記(1)のポリヌクレオチドに開始コドンが付加されているポリヌクレオチド。
(3)上記(1)に示されるポリヌクレオチドにシグナル配列に対応する塩基配列が付加されたポリヌクレオチド、あるいは該ポリヌクレオチドにおける1個又は複数個の核酸が欠失、付加、挿入または置換された塩基配列を有し、かつスプライシングにより成熟体を発現可能なポリヌクレオチドであって、具体的には配列番号12に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド。
【0032】
さらに、このほか上記(1)〜(3)のポリヌクレオチドに対しストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子、該ポリヌクレオチドに相同性を有するポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドに縮重するポリヌクレオチドもそれらがコードするポリペプチドがキシログルカン分解活性を有する限り本発明に含まれる。
なお、ここでいう「ストリンジェントな条件下」とは、例えば以下の条件をいう。すなわち0.5%SDS、5×デンハルツ〔Denhartz's、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA )、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400 〕および100μg/mlサケ精子DNAを含む6×SSC (1×SSCは、0.15 mol/l NaCl 、0.015mol/lクエン酸ナトリウム、pH7.0 )中で、50℃−65℃で4時間〜一晩保温する条件をいう。
【0033】
本発明のキシログルカン分解活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、上述したキシログルカン分解酵素を産生する微生物から、例えば以下に記載するような方法で該遺伝子のクローニングを行うことによって取得することができる。まず、新規なキシログルカン分解酵素を産生する微生物から上述の方法によって本発明の新規なキシログルカン分解酵素を単離、精製し、その部分アミノ酸配列に関する情報を得る。
【0034】
部分アミノ酸配列決定方法としては、例えば、精製された本酵素蛋白質を直接エドマン分解法〔ジャーナル オブ バイオロジカルケミストリー、第256巻、第7990〜7997頁(1981)〕によりアミノ酸配列分析〔Model 494 cLC Procise、アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製等〕に供してもよいし、あるいはタンパク質加水分解酵素を作用させて限定加水分解を行い、得られたペプチド断片を分離精製し、得られた精製ペプチド断片についてアミノ酸配列分析を行うのが効果的である。
【0035】
こうして得られる部分アミノ酸配列の情報を基に、新規なキシログルカン分解酵素遺伝子をクローニングする。一般的に、 PCRを用いる方法あるいはハイブリダイゼーション法を利用してクローニングを行うことができる。
【0036】
ハイブリダイゼーション法を利用する場合、例えば、Sambrook and Russell,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Third edition, Cold Spring Habor Laboratory Press(2001)に記載の方法を用いることができる。
【0037】
また、 PCR法を利用する場合、以下のような方法を用いることができる。まず、新規なキシログルカン分解酵素を産生する微生物のゲノムDNAあるいはcDNAを鋳型とし、部分アミノ酸配列の情報を基にデザインした合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR反応を行い、目的の遺伝子断片を得る。
【0038】
PCR法は、PCRテクノロジー〔PCR Technology、エルリッヒ(Erlich)HA編集、ストックトンプレス社(Stocktonpress)、1989年発行〕に記載の方法に準じて行う。更に、この増幅DNA断片について通常用いられる方法、例えば、ジデオキシチェーンターミネーター法で塩基配列を決定すると、決定された配列中に合成オリゴヌクレオチドプライマーの配列以外に新規なキシログルカン分解酵素の部分アミノ酸配列に対応する配列が見出され、目的の酵素遺伝子の一部を取得することができる。さらに、得られた遺伝子断片をプローブとして用いるハイブリダイゼーション法や、5′−RACE(Rapid Amplification of cDNA ends)および 3′−RACE法等を行うことによって、新規なキシログルカン分解酵素全長をコードする遺伝子をクローニングすることができる。
【0039】
本発明においては、ゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株を用い、PCR法を利用して、キシログルカン分解酵素をコードする遺伝子の全塩基配列を決定した。この塩基配列は配列番号12に示される。
これによってコードされるアミノ酸配列を配列番号13に記載した。 このアミノ酸配列のうち、N末端1〜20のアミノ酸残基はシグナル配列を示し、成熟体のポリペプチドは、21番目のバリンから始まるアミノ酸配列を有し(配列番号15)、該成熟体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列は配列番号14に示すとおりである。
なお、配列番号13あるいは15に記載したアミノ酸配列に対応する塩基配列は配列番号12あるいは14に記載したもの以外に無数に存在するが、これらはすべて本発明の範囲に含まれる。
【0040】
また、配列番号13あるいは15に記載のアミノ酸配列や配列番号12あるいは14に記載の塩基配列の情報を元にして、化学合成によって目的とする遺伝子ポリヌクレオチドを得ることもできる(参考文献:Gene,60(1), 115-127 (1987))。
【0041】
さらに、ゲオトリカム・エスピーM128株を用いて全塩基配列が明らかにされた新規なキシログルカン分解酵素遺伝子の全体あるいは一部分をハイブリダイゼーション用のプローブとして用いて、他のキシログルカン分解酵素を産生する微生物のゲノムDNAライブラリーあるいはcDNAライブラリーから、配列表12の新規なキシログルカン分解酵素遺伝子と相同性の高いDNAを選別することができる。
【0042】
ハイブリダイゼーションは、上記に示したストリンジェントな条件下で行うことができる。例えば、新規なキシログルカン分解酵素を産生する微生物から得たゲノムDNAライブラリーあるいはcDNAライブラリーを固定化したナイロン膜を作成し、6×SSC 、 0.5%SDS 、5×デンハルツ、100 μg/mlサケ精子DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液中、65℃でナイロン膜をブロッキングする。その後、32Pでラベルした各プローブを加えて、65℃で一晩保温する。このナイロン膜を6×SSC中、室温で10分間、0.1% SDSを含む2×SSC中、室温で10分間、0.1% SDSを含む0.2×SSC中、45℃で30分間洗浄した後、オートラジオグラフィーをとり、プローブと特異的にハイブリダイズするDNAを検出することができる。また、洗いなどの条件を変えることによって様々な相同性を示す遺伝子を得ることができる。
【0043】
一方、本発明の遺伝子の塩基配列からPCR反応用のプライマーをデザインすることができる。このプライマーを用いてPCR反応を行うことによって、本発明の遺伝子と相同性の高い遺伝子断片を検出したり、更にはその遺伝子全体を得ることもできる。
【0044】
得られた遺伝子が目的のキシログルカン分解酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であるかどうかを確認するには、決定された塩基配列を本発明の新規なキシログルカン分解酵素の塩基配列又はアミノ酸配列と比較し、その遺伝子構造および相同性から推定することもできる。また、得られた遺伝子のポリペプチドを製造し、キシログルカン分解酵素活性を測定することにより、目的の酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であるかどうか確認することができる。
【0045】
本発明のキシログルカン分解酵素遺伝子を用いて、キシログルカン分解酵素活性を有するポリペプチドを生産するには以下の方法が便宜である。まず、目的の酵素遺伝子により発現ベクターを組み換え、該遺伝子を含む組換えベクターを用いて宿主の形質転換を行い、次いで該形質転換体の培養を通常用いられる条件で行うことによって、新規なキシログルカン分解酵素活性を有するポリペプチドを生産させる。この際、キシログルカン分解活性を有する成熟体ポリペプチドを得るには、該ポリペプチドのN末端にメチオニン残基が付いていないため、該成熟体ポリペプチドに対応する塩基配列において開始コドン(atg)を付加し、さらに、必要に応じ終止コドンを付加する(taa/tag/tga)。
【0046】
また、宿主としては微生物、動物細胞、植物細胞等を用いることができる。微生物としては、大腸菌、Bacillus属、Streptomyces属、Lactococcus属等の細菌、Saccharomyces属、Pichia属、Kluyveromyces属等の酵母、Aspergillus属、Penicillium属、Trichoderma属等の糸状菌が挙げられる.動物細胞としては、バキュロウイルスの系統が挙げられる。
このうち、真核細胞を用いる場合においては、例えば、遺伝子として、配列番号12に示すような、シグナル配列に対応する塩基配列を有する前駆体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いても、スプライシングにより成熟体ポリペプチドが生産される。
【0047】
発現の確認や発現産物の確認は、新規なキシログルカン分解酵素に対する抗体を用いて行うことが簡便であるが、酵素活性を測定することにより発現の確認を行うこともできる。
【0048】
形質転換体の培養物から新規なキシログルカン分解活性を有するポリペプチドを精製するには上述のように、遠心分離、UF濃縮、塩析、イオン交換樹脂等の各種クロマトグラフィーを適宜組み合わせて行うことができる。
【0049】
一方、本発明によりキシログルカン分解酵素の一次構造および遺伝子構造が明らかとなったことにより、本発明の遺伝子を用いて、ランダム変異あるいは部位特異的変異を導入し、天然のキシログルカン分解酵素のアミノ酸配列中に、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換の少なくとも1つがなされている遺伝子を得ることが可能である。これにより、キシログルカン分解酵素活性を有するが、至適温度、安定温度、至適pH、安定pH、基質特異性等の性質が少しづつ異なったキシログルカン分解酵素をコードする遺伝子を得ることが可能であり、遺伝子工学的にこれら酵素活性を有するポリペプチドを製造することが可能となる。
【0050】
ランダム変異を導入する方法としては、例えば、 DNAを化学的に処理する方法として、亜硫酸水素ナトリウムを作用させシトシン塩基をウラシル塩基に変換するトランジション変異を起こさせる方法〔プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミーオブ サイエンシーズ オブ ザUSA、第79巻、第1408−1412頁(1982)〕、生化学的方法として、〔α-S〕dNTP存在下、二本鎖を合成する過程で塩基置換を生じさせる方法〔ジーン(Gene)、第64巻、第313 −319頁(1988)〕、 PCRを用いる方法として、反応系にマンガンを加えてPCRを行い、ヌクレオチドの取込みの正確さを低くする方法〔アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry )、第224巻、第347−353頁(1995)〕等を用いることができる。
【0051】
部位特異的変異を導入する方法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法〔ギャップド デュプレックス(gapped duplex )法、ヌクレイックアシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、第12巻、第24号、第9441〜9456頁(1984)〕、制限酵素の認識部位を利用する方法〔アナリティカル バイオケミストリー、第200巻、第81−88頁(1992)、ジーン、第102巻、第67−70頁(1991)〕、dut (dUTPase )とung (ウラシルDNAグリコシラーゼ)変異を利用する方法〔クンケル(Kunkel)法、プロシーディングズ オブ ザ ナショナル オブ サイエンシーズ オブ ザUSA、第82巻、第488−492頁(1985)〕、 DNAポリメラーゼおよびDNAリガーゼを用いたアンバー変異を利用する方法〔オリゴヌクレオチド−ダイレクティッド デュアル アンバー(Oligonucleotide-directed Dual Amber :ODA)法、ジーン、第152巻、第271 −275頁(1995)、特開平7-289262号公報〕、 DNAの修復系を誘導させた宿主を利用する方法(特開平8-70874号公報)、 DNA鎖交換反応を触媒するタンパク質を利用する方法(特開平8-140685号公報)、制限酵素の認識部位を付加した2種類の変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法(USP5,512,463)、不活化薬剤耐性遺伝子を有する二本鎖DNAベクターと2種類のプライマーを用いたPCRによる方法〔ジーン、第103巻、第73−77頁(1991)〕、アンバー変異を利用したPCRによる方法〔国際公開WO98/02535号公報〕等を用いることができる。
【0052】
また、市販されているキットを使用することにより、部位特異的変異を容易に導入することができる。市販のキットとしては、例えば、ギャップドデュプレックス法を用いたMutan(登録商標)-G(宝酒造社製)、クンケル法を用いたMutan(登録商標)-K(宝酒造社製)、ODA法を用いたMutan (登録商標)-Express Km(宝酒造社製)、変異導入用プライマーとピロコッカス フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来DNAポリメラーゼを用いたQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit〔ストラタジーン(STRATAGENE)社製〕等を用いることができ、また、 PCR法を利用するキットとして、TaKaRa LA PCR in vitro Mutagenesis Kit(宝酒造社製)、Mutan (登録商標)-Super Express Km (宝酒造社製)等を用いることができる。
【0053】
このように、本発明により、キシログルカン分解酵素の一次構造および遺伝子構造が提供されたことにより、キシログルカン分解酵素活性を有するポリペプチドの安価で高純度な遺伝子工学的な製造が可能となる。なお、本明細書では種々の文献等を引用したが、これらはすべて参考として本明細書に組み込まれるものである。以下、本発明を実施例を用いて詳述するが本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に明記しない限り、本明細書において%はW/V%で示した。
【0054】
【実施例】
【実施例1】
タマリンド種子キシログルカン1%とペプトン0.8%と硫酸マグネシウム0.05%とリン酸一カリウム0.2%と酵母エキス0.05%とを含む培地(pH6.0)20mlを200ml容の三角フラスコに入れ、常法により殺菌した後、ゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株(FERM P−16454)を接種し、30℃で6日間通気培養した。その後、遠心分離により除菌し、得られた上澄液について前記活性測定法により活性を測定した結果、培養液1ml当り0.18単位であった。
【0055】
【実施例2】
前記実施例1と同様な組成の培養液4000mlを調製し、ゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株を接種して同様に培養し、培養上清を得た。培養液中の全酵素活性は695単位であった。培養上清を限外濾過により濃縮・脱塩した後、陰イオン交換体ポロス50HQのカラムを用いたイオン交換クロマトグラフィーを行い、さらにトヨパールHW55Fカラムによるゲル濾過により精製した。精製酵素はSDS−電気泳動的に均一であり、活性の収率は培養濾液に対して11.2%であった。また、精製酵素タンパク質1mg当たりの活性は、68単位であった。
【0056】
【実施例3】
前記実施例2で得られた本精製酵素0.1単位を、表1に示す各種起源のキシログルカン、セルロース類、各種多糖類をそれぞれ0.5%含む反応液1ミリリットルに加え、pH5.5,45℃で18時間作用させた後、分解作用により生じた直接還元糖をネルソンーソモギー法で、また全糖をフェノールー硫酸法で測定して分解率を求めた。その結果、本酵素は、キシログルカンのみを特異的に分解し、セルロースやそのほかの多糖類には全く作用しないことが示された。
【0057】
【表1】
Figure 0004122428
【0058】
【実施例4】
前記実施例2で得られた本精製酵素0.01単位を、表2に示す各種のセロオリゴ糖およびキシログルカンオリゴ糖を0.5%含む溶液0.1ミリリットルに添加し、pH5.5、45℃、18時間作用させた後、高速液体クロマトグラフィーにより生成オリゴ糖を分析した。加えた基質のピークが完全に消失したものを分解率100%として分解率を測定した結果、表2に示すように直鎖セロオリゴ糖には全く作用せず、また分解される主鎖の結合からみて、非還元末端側のグルコース残基に存在するキシロース側鎖は酵素の分解作用に影響しないことが、非還元末端側のイソプリメベロース単位を逐次削除したキシログルカンオリゴ14,12,10糖が分解されることで明らかになった。一方、還元末端側ののイソプリメベロース単位を逐次削除した、キシログルカンオリゴ13,11糖は本酵素により速やかに分解されるが、さらにイソプリメベロース単位を削除したキシログルカンオリゴ9糖はごくわずかしか分解されず、またオリゴ9糖の分解産物の分析結果から、分解される結合が通常の位置より非還元末端側にひとつずれること明らかになった。このことは、本酵素がキシログルカンの主鎖を構成するβ-グルコシド結合を加水分解するにあたって、主鎖中のキシロース側鎖をもたないグルコース残基の還元末端側にグルコース残基一つおいて結合する、グルコース残基におけるキシロース測鎖を認識して分解する新規キシログルカン分解酵素であることを示している。
【0059】
【表2】
Figure 0004122428
【0060】
【実施例5】
〈ゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株由来の新規なキシログルカン分解酵素をコードする遺伝子の単離〉
【0061】
本明細書においては、遺伝子操作手法は特に記載しない限り成書(例えばSambrook and Russell,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Third edition, Cold Spring Habor Laboratory Press, 2001)に従って行った。
【0062】
〔部分アミノ酸配列の決定〕
実施例2で得られたキシログルカン分解酵素の精製標品を、アミノ酸配列分析機〔アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕に供し、配列番号1に示す6残基のN末端アミノ酸配列を決定した。次に、実施例2で得られたキシログルカン分解酵素の精製標品をリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬工業社製)による分解を行った。得られた分解物を逆相液体クロマトグラフィーに供し、分離されたペプチド画分のうち二つをプロテイン・シークエンサーに供し、配列番号2および3に示す12残基の内部アミノ酸配列を決定した。
【0063】
Figure 0004122428
【0064】
全RNAの調製 実施例1と同様に培養を行い、常法によりRNA単離キット(FastRNA Kit-RED、BIO 101社製)を用いて、添付の説明書に従って全RNAを調整し、mRNA調製キット〔QuickPrep mRNA Purification Kit、アマシャムファルマシア バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)社製〕を用いてmRNAを精製した。得られたmRNAから、cDNA合成キット〔TimeSaver cDNA Synthesis kit、アマシャム ファルマシア バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)社製〕を用いて、オリゴdTプライマーと逆転写酵素によるcDNA合成を行った。
【0065】
PCRによる増幅 配列番号2および3の内部アミノ酸配列をもとに、配列番号4および5に示すセンス・プライマーと配列番号6および7に示すアンチセンス・プライマーの4種の混合オリゴヌクレオチドをDNA合成機〔アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕により合成し、PCRプライマーとした。
【0066】
Figure 0004122428
【0067】
配列番号4に示すセンス・プライマーと配列番号6に示すアンチセンス・プライマーを用いて、ゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株のcDNAを鋳型として、以下の条件下、GeneAmp PCR system 9700〔アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕を用いてPCR反応を行なった。
【0068】
<PCR反応液> 10×PCR反応緩衝液 (宝酒造社製)10μl 、dNTP混合液 (それぞれ2.5mmol/l、宝酒造社製) 8 μ、 100μmol/lセンス・プライマー5μl 、100μmol/lアンチセンス・プライマー5μl 、蒸留水71μl、cDNA溶液(100μg/ml)0.5μl 、EX−TaqDNAポリメラーゼ (宝酒造社製)0.5μl
【0069】
<PCR反応条件> ステージ1: 変性(94℃、5分) 1サイクル
ステージ2: 変性(94℃、30秒)アニール(45℃、30秒)伸長(72℃、2分)30サイクル
ステージ3: 伸長(72℃、10分)1サイクル
【0070】
PCR反応後の反応溶液を鋳型として、配列番号5に示すセンス・プライマーと配列番号7に示すアンチセンス・プライマーを用いて、以下の条件下、GeneAmp PCR system 9700〔アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕を用いてPCR反応を行なった。
【0071】
<PCR反応液> 10×PCR反応緩衝液 (宝酒造社製)10μl 、dNTP混合液 (それぞれ2.5mmol/l、宝酒造社製) 8 μ、 100μmol/lセンス・プライマー5μl 、100μmol/lアンチセンス・プライマー5μl 、蒸留水71μl、PCR反応後の反応溶液0.5μl 、EX−Taq DNAポリメラーゼ (宝酒造社製)0.5μl
【0072】
<PCR反応条件> ステージ1: 変性(94℃、5分) 1サイクル
ステージ2: 変性(94℃、30秒)アニール(45℃、30秒)伸長(72℃、2分)30サイクル
ステージ3: 伸長(72℃、10分)1サイクル
【0073】
得られた約600bpのDNA断片をpGEM-T Easy〔プロメガ(Promega)社製〕にクローニング後、塩基配列を確認したところ、センス・プライマーの直後とアンチセンス・プライマーの直前に、上記の部分アミノ酸配列をコードする塩基配列が見出された。
【0074】
〔5′末端および3′末端の決定〕
前記DNAの塩基配列をもとにして、5′−RACE(Rapid Amplification of cDNA ends)用のアンチセンス・プライマーとして配列番号8および配列番号9で示される2種のプライマーを作製し、cDNAを鋳型として、5′−RACE法により5′末端のDNA断片を得て、その塩基配列を決定した。また、同様に、3′−RACE用のセンス・プライマーとして配列番号10および配列番号11で示される2種のプライマーを作製し、3′−RACE法により3′末端のDNA断片を得て、その塩基配列を決定した。
【0075】
Figure 0004122428
【0076】
決定されたキシログルカン分解酵素をコードするcDNAの塩基配列を配列番号12に示す。得られたcDNAは全長2755塩基対からなり、202〜204番目の開始コドン(atg)から2530〜2532番目の終止コドン(tag)で終了する、配列番号13に示す776アミノ酸からなる蛋白質をコードすると予想されるオープンリーディングフレームを有する。このアミノ酸配列中には、N末端領域アミノ酸配列(配列番号1)および内部アミノ酸配列(配列番号2および3)が見出された。
翻訳開始部位から、成熟体のN末端領域アミノ酸(配列番号1)の直前までの配列(残基1〜20)は、シグナル配列であり、本発明の酵素が分泌蛋白であることを示唆している。
成熟体蛋白質のアミノ酸配列を配列番号15に、該成熟体蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号14に示す。
【0077】
Figure 0004122428
Figure 0004122428
Figure 0004122428
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【0078】
Figure 0004122428
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Figure 0004122428
Figure 0004122428
【0079】
本発明はキシログルカン分解活性を有する前記の配列のポリペプチドやそれをコードするヌクレオチドに特に限定されるものではなく、キシログルカン分解活性を有するポリペプチドからなる更に長いポリペプチドやそれをコードするヌクレオチドを含むものである。
【0080】
実施例6
〈新規なキシログルカン分解酵素の大腸菌での発現プラスミドの構築〉
成熟体のN末端領域アミノ酸配列およびC末端領域アミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列をもとに、配列番号16に示すセンス・プライマーと配列番号17に示すアンチセンス・プライマーを作製した。この際、N末端領域側のセンス・プライマーの5’側には、制限酵素Nde I認識配列(catatg)を、C末端領域側のアンチセンス・プライマーの5’側には制限酵素Bgl II認識配列(agatct)を付加した。制限酵素認識配列のさらに5’側に付加されている複数の塩基は、制限酵素の切断効率を増加させるためのものである。
【0081】
Figure 0004122428
【0082】
これらのプライマーとゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株のcDNAを鋳型として、以下の条件下、GeneAmp PCR system 9700〔アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕を用いてPCR反応を行なった。
【0083】
<PCR反応液>10×PCR反応緩衝液 (宝酒造社製)10μl 、dNTP混合液 (それぞれ2.5mmol/l、宝酒造社製) 8 μ、10μmol/lセンス・プライマー5μl 、10μmol/lアンチセンス・プライマー5μl 、蒸留水71μl、cDNA溶液(100μg/ml)0.5μl 、EX−Taq DNAポリメラーゼ (宝酒造社製)0.5μl
【0084】
<PCR反応条件> ステージ1: 変性(96℃、1分) 1サイクル
ステージ2: 変性(96℃、10秒)アニールおよび伸長(68℃、4分)30サイクル
【0085】
得られた約2.3kbpのDNA断片を制限酵素Nde IおよびBgl IIで切断し、制限酵素Nde IおよびBgl IIで切断したpET29a(+)〔ノバジェン(Novagen)社製〕にクローニングした。塩基配列が正しいことを確認した後、大腸菌BL21-CodonPlus (DE3)-RP〔ストラタジーン(STRATAGENE)社製〕に導入した。得られた形質転換体を30μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で37℃で振盪培養した。培地にイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを最終濃度が1mmol/lになるように添加して生産誘導後、30℃で振盪培養すると、目的の遺伝子産物は菌体内に蓄積した。
【0086】
上述のようにして培養した菌体を集菌後、蛋白質抽出キット〔バグバスター(BugBuster)、ノバジェン(Novagen)社製〕を用いて菌体の破砕を行い菌体内に蓄積した遺伝子産物を抽出し、陰イオン交換体ポロス50HQのカラムを用いたイオン交換クロマトグラフィーとトヨパールHW55Fカラムによるゲル濾過による精製を行った。
【0087】
得られたポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号19に示し、また、該アミノ酸配列を対応する塩基配列を配列番号18に示す。該ポリペプチドのキシログルカン分解活性について、表1および2に示した各種多糖を基質として検討した結果、ゲオトリカム・エスピー(Geotrichum sp.)M128株から得られた酵素とまったく同様な結果を得た。すなわち、この組み換え酵素は、キシログルカンのみを特異的に分解しする酵素活性を有していた。
【0088】
Figure 0004122428
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【0089】
これらの結果より、本発明で得られた新規なキシログルカン分解酵素遺伝子を用いて、組換え酵素を大腸菌を用いて製造出来ることが確認された。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、キシログルカンの主鎖を構成するβ-グルコシド結合を加水分解するにあたって、主鎖中のキシロース側鎖を有しないグルコース残基から還元末端側に該グルコース残基を含めずに数えて2番目のグルコース残基におけるキシロース側鎖を認識して、キシログルカンを分解する作用を有する新規なエンド型キシログルカン分解酵素を提供するとともに、さらにそのアミノ酸配列、その遺伝子の構造を明らかにしたものであり、本発明によれば、植物細胞の伸長や形態分化に重要な役割を担っているものと考えられているキシログルカンの構造や機能を解明するための新しい分析手段が提供でき、これにより。この種の研究のさらなる発展が期待できる。
【0091】
【配列表】
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Claims (9)

  1. 配列番号14に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドにおける1個若しくは複数個の核酸が欠失、付加、挿入若しくは置換された塩基配列を含むものであって、キシログルカン分解活性を有するポリペプチドを発現するポリヌクレオチド。
  2. 開始コドンが付加された請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  3. シグナルペプチド配列に対応する塩基配列が付加された請求項2に記載のポリヌクレオチド。
  4. 配列番号12に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドにおける1個若しくは複数個の核酸が欠失、付加、挿入若しくは置換された塩基配列を含むものであって、キシログルカン分解活性を有するポリペプチドの前駆体を発現するポリヌクレオチド。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする組換えベクター。
  6. 請求項5に記載の組換えベクターを含むことを特徴とする形質転換体。
  7. 請求項6に記載の形質転換体を培養し、培養物から、組み換えられたポリヌクレオチドに対応するポリペプチドを採取することを特徴とする、ポリペプチドの製造方法。
  8. ポリペプチドが、キシログルカン分解活性を有するものである請求項7に記載のポリペプチドの製造方法。
  9. キシログルカン分解活性が、エンド型であって、かつ、主鎖中にキシロース側鎖を有しないグルコース残基を有するとともに、該グルコース残基の還元末端側に該グルコース残基を含めずに数えて2番目のグルコース残基がキシロース側鎖を有する構造を持つキシログルカンにおいて、該キシロース残基を有しないグルコース残基の還元末端側β−1,4−グルコシド結合を切断することによりキシログルカンを分解するものである請求項8に記載のポリペプチドの製造方法。
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