JP4119336B2 - 多孔バーナー・ランス及び冷鉄源の溶解・精錬方法 - Google Patents

多孔バーナー・ランス及び冷鉄源の溶解・精錬方法 Download PDF

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Description

本発明は、多孔バーナー・ランス及び冷鉄源の溶解・精錬方法に関し、詳しくは、冷鉄源の溶解・精練工程で冷鉄源を溶解する際の高温燃焼火炎の投入や、冷鉄源が溶け落ちた後の溶鋼への酸素の吹き込みに使用する多孔バーナー・ランスに関し、さらに、この多孔バーナー・ランスを使用した冷鉄源の溶解・精錬方法に関する。
電気炉製鋼に代表される冷鉄源の溶解・精練では、燃料を酸素で燃焼させる酸素バーナや、溶鋼に酸素を吹込むランスが用いられている。従来のバーナは、電気炉の炉壁あるいは作業口に設置され、鉄スクラップに代表される冷鉄源を加熱・溶断しながら溶解を促進することにより、電気炉の省電力化を可能にしてきた。一方、従来のランスは、電気炉の作業口から非水冷の消耗型ランスパイプあるいは水冷ランスから高速で溶鋼中に酸素を吹き込み、溶鋼の脱炭等の精練を行っていた。
近年、冷鉄源の溶解・精練に使用するバーナーの機能をより強化したバーナとして、中心に一次酸素を噴出する中細ノズルを、その周囲に燃料を噴出する流路を、さらにその外周に二次酸素を噴出する流路を設けたバーナが提案されている。これらのバーナは、中心から一次酸素を高速で噴出し、さらにその周囲に火炎を形成することにより、固体冷鉄源を加熱しながら高速で溶断できるようにしている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
また、中心に一次酸素を高速で噴出する中細ノズルを、その外周に燃料を噴出する複数の燃料噴出孔を、さらにその外周に二次酸素を噴出する複数の二次酸素噴出孔を設けたバーナ・ランスが提案されている。このバーナ・ランスは、中心から高速で噴出する一次酸素噴流の周囲を包み込むように火炎を形成することにより、中心の一次酸素噴流の速度減衰を抑制し、溶鋼から離れた位置から溶鋼中に酸素を吹込むことができるようにしている(例えば、特許文献3参照。)。
一方、ノズル先端中央部に設けた複数の一次酸素噴出口から一次酸素をそれぞれ噴出させるとともに、その外周に設けた燃料噴出孔及び二次酸素噴出孔から燃料及び二次酸素をそれぞれ噴出させ、前記複数の一次酸素噴流の外周に火炎エンベローブを形成することにより、1本のバーナ・ランスで、より広いエリアへ火炎や酸素噴流を形成できるようにしたものも提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
特開平8−75364号公報 特開平10−9524号公報 特開平10−259413号公報 特開2000−313913号公報
炉内の広いエリアへ火炎や酸素噴流を供給するためには、前記特許文献1〜3に記載されたようなバーナー・ランスでは、バーナ・ランスの設置本数を増加させる必要があり、その設置のためにユーテリティー配管等の設備増設が必要となる。したがって、設置コストが高くなり、さらに本数が増えるためにメンテナンスも面倒なものとなる。また、前記特許文献4に記載されたようなバーナー・ランスでは、1本のバーナー・ランスで広いエリアに火炎や酸素噴流を供給することはできるが、この場合は、一次酸素噴流の性能が損なわれ、冷鉄源の高速溶断や溶鋼への酸素吹込み等の機能が不十分となっていた。
そこで本発明は、1本のバーナー・ランスから広いエリアへ火炎や酸素噴流を供給することができ、酸素噴流の速度減衰も抑制することができる多孔バーナー・ランスを提供するとともに、この多孔バーナー・ランスを使用して効率よく冷鉄源を溶解、精錬することができる冷鉄源の溶解・精錬方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の多孔バーナー・ランスは、酸素供給路と燃料供給路とを備えた本体部の先端に酸素及び燃料を噴出する火炎噴出口を複数個設けた多孔バーナー・ランスであって、各火炎噴出口は、中心に配置した酸素噴出用の中細ノズルと、該中細ノズルの出口近傍から中細ノズル内に燃料を噴出して火炎を形成する燃料噴出孔とを備えている
そして、さらに、前記本体部先端における前記火炎噴出口の中心間の距離が、各火炎噴出口の出口径に対して2.8倍以上に設定されていることを特徴としている。
加えて、前記火炎噴出口は、前記中細ノズルの出口部から本体部先端に至る直胴部を有し、該直胴部には周溝が設けられていることを特徴としている。さらに、前記酸素が前記火炎噴出口から超音速で噴出することを特徴とし、前記本体部の先端に粉体を噴出する粉体噴出孔を有していることを特徴としている。
また、本発明の冷鉄源の溶解・精錬方法は、第1の方法として、前記構成の多孔バーナー・ランスを使用した冷鉄源の溶解・精錬方法であって、前記酸素の流量を実質的に一定に保った状態で燃料の流量を変化させ、主に冷鉄源を溶解する溶解期では酸素比を1以上とし、冷鉄源が溶け落ちた後の精錬期では酸素比を3以上とすることを特徴としている。
さらに、本発明の冷鉄源の溶解・精錬方法は、第2の方法として、前記構成の多孔バーナー・ランスを使用した冷鉄源の溶解・精錬方法であって、前記酸素の流量を実質的に一定に保った状態で燃料の流量を変化させ、主に冷鉄源を溶解する溶解期では酸素比を1以上とし、冷鉄源が溶け落ちた後の精錬期では燃料の供給を停止することを特徴としている。
本発明によれば、1本のバーナー・ランスから複数の高速の酸素と火炎とを独立に形成することができるので、酸素噴流の速度・濃度減衰を大幅に抑制することができる。実際の電気炉において、広い範囲を高速に加熱・溶断することが可能となり、溶解時間を短縮できる。さらに、溶鋼への酸素吹込み機能も有しているので、精練も効率的に行うことができ、電気炉の高効率化及び生産性の向上に寄与することができる。
図1及び図2は、本発明の多孔バーナー・ランスの一形態例を示すもので、図1は要部の断面図、図2は正面図である。この多孔バーナー・ランス11は、本体部12の中心に酸素Oを供給する酸素供給路13を設け、その外周に燃料Fを供給する燃料供給路14を設けるとともに、最外周に冷却水Wの往路15a及び復路15bを有する水冷ジャケット15を設けた多重管構造を有している。本体部12の先端に連設したノズル部16は、先端に2個の火炎噴出口17を備えている。この火炎噴出口17は、前記酸素供給路13を二股に分岐させた状態の中細ノズル18と、該中細ノズル18の出口近傍から中細ノズル内に向けて燃料を噴出する燃料噴出孔19とを有しており、中細ノズル18の出口端18aとノズル先端との間には、周溝21を有する略円筒状の直胴部22が設けられている。
燃料供給路14は、ノズル部16の内部に設けられた燃料供給筒23に燃料通路24を介して連通しており、前記燃料噴出孔19は、燃料供給路14の先端及び燃料供給筒23の先端にそれぞれ連通した状態で、中細ノズル18の出口近傍周面に開口している。また、水冷ジャケット15は、ノズル部16の先端にも冷却流路15cを有しており、火炎噴出口17の周囲も冷却できるようにしている。
火炎噴出口17の出口径Dと、各火炎噴出口17の中心間の距離PCDとは、PCDがDに対して2.8倍以上となるように設定されている。各火炎噴出口17の中心間距離PCDが小さくなると、各火炎噴出口17から噴出する酸素噴流の周囲に形成される火炎同士が干渉して火炎長が短くなり、酸素噴流の減衰抑制効果を十分に得られなくなる。また、冷却流路15cが小さくなってしまい、ノズル部先端の冷却が十分に行えなくなるおそれがある。
中細ノズル18は、その中間部に内径の小さなスロート部25を有しており、その前後は次第に拡開する円錐面26となっている。一般的に、噴流を超音速に加速する場合、理想的なノズル構造としてラバールノズルがある。このラバールノズルは、スロート部25の断面積AL1を以下の式(1)により算出し設計する。
Figure 0004119336
さらに、スロート部25の断面積AL1とラバールノズルの出口断面積AL2との関係を以下の式(2)から算出して出口径を設定する。
Figure 0004119336
本発明で使用する中細ノズル18では、前記式(2)で算出される断面積比よりも、大きな比の値となるように出口断面積AL2を大きめに設定することが好ましい。これにより、超音速で噴出する酸素を過膨張状態にして中細ノズル18の出口付近を負圧とし、酸素が燃料噴出孔19へ逆流することを防ぎ、逆火を未然に防止することができる。さらに、出口側円錐面の拡開角度θは、軸線に対して3〜10度の開き角にすることが好ましく、この範囲外においては、酸素の噴流の膨張状態が悪化し、衝撃波を生じて噴出流速が低下する。
前記燃料噴出孔19からの燃料の噴出角度θは、中細ノズル18の軸線に対して、燃料が気体燃料の場合には5〜60度、好ましくは5〜40度の範囲、液体燃料の場合は、5〜90度の範囲が好ましい。この噴出角度θを小さくし過ぎると、燃料と酸素との混合が不十分となって失火することがあり、噴出角度θを大きくし過ぎると、燃料と酸素との混合が促進されて火炎長が短くなり、酸素の流速減衰抑制効果が小さくなってしまう。また、燃料噴出孔19からの燃料の噴出速度は、5〜80m/s、好ましくは、5〜40m/sの範囲に設定することにより、より安定した長火炎を形成することができる。
直胴部22は、中細ノズル18の出口と略同じ口径を有しており、その長さLは、通常は、6〜30mm、好ましくは10〜20mmである。また、周溝21における深さLは、以下の式(3)を満たすように設定することが好ましい。
Figure 0004119336
このような周溝21を有する直胴部22を設けることにより、燃料が噴出後に広がることを抑制することとができるとともに、周溝21によって火炎を安定化させることができる。直胴部22の長さLが小さ過ぎる場合は、燃料が外側へ広がってしまい、火炎長が短くなって酸素噴流の速度減衰抑制効果が小さくなり、長さLが大き過ぎると、ノズル内での燃焼が急速に促進され、火炎長が短くなって酸素噴流の流速減衰抑制効果が小さくなる。また、周溝21の深さLが前記式(3)を満たさない場合は、安定した火炎を得ることができなくなり、失火してしまうことがある。さらに、この周溝21の幅Lを3mm以上とすることにより、火炎をより安定化させることができる。
また、図3及び図4に示すように、前記形態例の構成に加えて、本体部12の先端に粉体を噴出する粉体噴出孔27を設けておくことにより、製鋼プロセスでは、溶鋼に酸素と共に廃プラスチックやコークス等の粉体固体燃料を導入して燃焼エネルギーを溶鋼に着熱させることができ、精錬プロセスでは、粉状のフラックスを吹き込んで冶金反応を促進させたり、反応効率を向上させたりすることができる。
次に、このように形成した多孔バーナー・ランス11を用いた冷鉄源の溶解・精錬方法を、図5乃至図9を参照して説明する。代表的な冷鉄源の溶解・精練炉として製鋼用電気炉が知られている。図5は、製鋼用電気炉51における多孔バーナー・ランス11の設置例を示す断面平面図であって、多孔バーナー・ランス11は、電極51aの配置状況によって炉内に発生するコールドスポット部52を加熱する位置にそれぞれ設置され、また、必要に応じて作業口53にも設置される。
図6及び図7は、溶解期(図6)と精練期(図7)とにおける多孔バーナー・ランス11の使用方法を説明するための縦断面図である。図6に示すように、主に固体原料(冷鉄源)54を溶解する溶解期においては、多孔バーナー・ランス11の酸素比を1以上、好ましくは酸素比を1〜3の範囲にして燃焼させる。これにより、多孔バーナー・ランス11から発生した高温火炎55による冷鉄源54の加熱と高速酸素噴流56とにより、高速加熱・高速溶断が可能となる。このとき、バーナ酸素比を1未満にすると、酸素不足の火炎となって不完全燃焼による着熱効率の低下が生じる。酸素比1以上の酸素過剰状態で燃焼させることにより、炉内から発生するCO等の未燃ガスを炉内で燃焼させ、その熱を有効に利用することができる。
図7に示すように、冷鉄源が溶け落ちた後、主に溶鋼57を加熱・精練する精練期においては、多孔バーナー・ランス11の酸素比を3以上にして燃焼させる。この精練期においては、溶解期とは異なり、多孔バーナー・ランス11の火炎が溶鋼を表面から加熱する状態となるので、溶鋼57の加熱効率が低下する。このため、高速酸素噴流56の速度減衰を抑制するだけの燃料を燃焼させ、高速酸素噴流56による脱炭機能を強化する。このとき、溶解期及び精練期における酸素比の制御は、燃料流量の調整のみで行うようにすることにより、簡単な制御で、溶解期の加熱・溶断機能と、精練期の溶鋼への酸素吹込み機能との両機能を無駄なく効果的に利用することができる。
図8及び図9は、製鋼用電気炉の作業口53における多孔バーナー・ランス11の使用例を示している。作業口53で多孔バーナー・ランス11を使用する際には、従来と同様に、スラグドアに固定したり、駆動機能を持った支持装置に固定したりすればよい。このように作業口53で多孔バーナー・ランス11を使用する場合も、前記同様にして溶解期及び精練期に適した酸素比にそれぞれ設定して運転することができる。さらに、作業口53の場合は、多孔バーナー・ランス11を移動させることができるので、精錬期においてスラグ中に先端を浸漬させることが可能であるから、図9に示すように、多孔バーナー・ランス11への燃料の供給を停止し、高速の酸素のみを噴出させる運転を行うことが好ましい。すなわち、火炎によって酸素噴流56の速度減衰を抑制する必要がないため、酸素のみの噴出で十分に溶鋼内に酸素を吹き込むことができる。
従来は、作業口53からバーナで溶鋼を加熱するとともに、別途のランスから溶鋼中に酸素を吹き込むようにしていたが、前述のように、多孔バーナー・ランス11を作業口53に設置することにより、バーナ及びランスの両方の機能を持たせることができる。さらに、炉壁設置及び作業口設置の両方とも、多孔バーナー・ランス11から二つ以上の火炎と酸素噴流とが形成されるため、従来の一つの火炎・酸素噴流に比べ、この多孔バーナー・ランス11の影響範囲が拡大し、溶解及び脱炭等の精練反応を促進できる。
実施例1
図10及び図11に示すように、多孔バーナー・ランス11として、軸線の開き角度を5度に設定した火炎噴出口17を円周上に等間隔で3箇所に設け、酸素ノズルの出口径Dを13.7mmに、中心間距離PCDを30mm,40mm,58mmにそれぞれ設定して製作した。この多孔バーナー・ランス11の仕様を表1に示す。なお、燃料にはLPガスを使用した。
Figure 0004119336
各多孔バーナー・ランスをそれぞれ使用し、表1に示す条件で酸素及びLPガスを供給して燃焼させ、ノズル先端からの中心軸方向距離と酸素流速(酸素マッハ数)との関係を測定した。酸素流速は、ピトー管を使用し、噴流動圧を計測することによって算出した。また、中心間距離PCDが30mmのものでは、燃料噴出孔から燃料を噴出させて燃焼させた場合と、燃料を噴出させなかった場合(非燃焼)とについてそれぞれ測定した。測定結果を図12に示す。
この結果から、燃料を燃焼させなかった場合に比べて、燃料を燃焼させた場合の方が、ノズル先端から遠方まで酸素噴流の速度減衰がより抑制されていることがわかる。さらに、中心間距離PCDが大きくなると、速度減衰の抑制効果も大きくなることがわかる。
実施例2
実施例1と同様の多孔バーナー・ランス11において、酸素ノズルの出口径Dを21.6mmとし、中心間距離PCDを47.5mm,58mm,65mmとしたものをそれぞれ製作した。その仕様を表1に示す。
各多孔バーナー・ランスを使用し、表1に示す条件で酸素及びLPガスを供給し、実施例1と同様にしてノズル先端からの中心軸方向距離と酸素流速(酸素マッハ数)との関係を測定した。測定結果を図13に示す。
この結果から、中心間距離PCDが47.5mmのもので燃焼時と非燃焼時とを比較すると、実施例1と同様に、燃焼時に酸素噴流の速度減衰が抑制されていることがわかる。さらに、中心間距離PCDを大きくすると、速度減衰の抑制効果が更に大きくなることもわかる。
実施例3
実施例1で製作した多孔バーナー・ランス(D=13.7mm)に中心間距離PCDを47.5mm,90mmとしたものを追加するとともに、実施例2で製作した多孔バーナー・ランス(D=21.6mm)に中心間距離PCDを100mmとしたものを追加した。これらの多孔バーナー・ランスを表1の条件で使用し、燃焼時と非燃焼時とにおける酸素流速をそれぞれ測定した。なお、測定に際しては、規模の影響を排除するため、ノズル中心軸方向距離LxをDで無次元化した「Lx/D=50」の位置でそれぞれ測定した。測定結果を図14に示す。
この結果から、酸素流速は、非燃焼時には、PCD/Dに関係なく略一定の速度であるのに対し、燃焼時には、PCD/Dが2.8以上になると酸素流速が大幅に高速化することがわかった。PCD/Dが2.8未満になると、酸素噴流の周囲に形成される火炎同士が相互に干渉して火炎が短くなり、酸素流速の減衰抑制効果が小さくなる。したがって、中心間距離PCDは、出口径Dに対して2.8倍以上に設定することが望ましいことがわかる。
実施例4及び比較例
比較例として、図15及び図16に示すように、円周上に等間隔で設けた3箇所のラバールノズルからなる酸素噴出口61の周囲に多数の燃料噴出孔62と二次酸素噴出孔63とをマルチホールでそれぞれ設けた従来の多孔バーナーを製造した。
この比較例バーナーと、前記実施例2で製作した出口径D=21.6mm、中心間距離PCD=58mmの多孔バーナー・ランス(実施例バーナー)とを使用し、表1の条件で燃焼させて噴流特性を比較した。その結果を図17及び図18に示す。実施例バーナーでは、比較例バーナーに比べて酸素噴流速度・濃度ともに大幅に減衰抑制効果があり、特に速度減衰抑制効果に大きな差があり、高速で高濃度の酸素噴流をより遠くまで維持できることがわかる。
さらに、ノズル先端から800mmの位置での半径方向距離に対する酸素のマッハ数分布を図19に示す。比較例バーナーでは、3箇所の酸素噴出口61から噴出した酸素噴流が互いに干渉しあい、一つの噴流になるとともに速度も大幅に減衰し、半径方向になだらかな分布となっている。一方、実施例バーナーでは、各火炎噴出口17から噴出する酸素噴流を包囲するように燃料を噴出させて火炎を形成しているため、酸素速度の減衰を大幅に抑制でき、半径方向にシャープな分布となる。これにより、極めて貫通力の強い酸素噴流を1本のバーナー・ランスから複数個形成でき、冷鉄源の溶断及び溶鋼への酸素吹込みに大きな効果を発揮することができる。
実施例5
従来の一般的な重油酸素バーナーを炉壁に4本、作業口に1本の計5本設置するとともに、作業口に消耗型酸素ランスを設置した1バッチあたり80ton規模の電気炉を使用し、図20(A)に示す工程パターンで冷鉄源を溶解・精錬した。次に、全ての重油酸素バーナーを、図1及び図2に示した構造の多孔バーナー・ランス11に交換し、図20(B)に示す工程パターンで冷鉄源を溶解・精錬した。
バーナー交換を実施する前(従来法)では、冷鉄源の溶解期にはバーナを使用し、冷鉄源が溶け落ちた後は、ランスにより溶鋼中へ直接酸素を吹込んだ。多孔バーナー・ランスへの交換を実施した後は、冷鉄源が溶け落ちた後は、燃料流量を低下させた状態で酸素を吹き込み、作業口の消耗型酸素ランスは使用しなかった。交換実施前と実施後における電気炉の各操業結果を表2に示す。
Figure 0004119336
交換実施前後を比較すると、溶解期において、冷鉄源の固体鉄スクラップの加熱・溶断が広い範囲で高速にできたことにより、溶解期の時間が短縮でき、早期に電力パワーを高めることができた。さらに、作業口からの酸素吹込みも早期に行うことが可能となる。この結果、酸素原単位、電力原単位の低減と生産性の向上とを図れる。
電気炉等を用いた溶解・精練工程において、冷鉄源を加熱・溶断したり、溶鋼中に酸素を吹き込んだりする用途に使用できる。
本発明の多孔バーナー・ランスの一形態例を示す要部の断面図である。 同じく正面図である。 本発明の多孔バーナー・ランスの他の形態例を示す図4のIII−III線断面図である。 同じく正面図である。 製鋼用電気炉における多孔バーナー・ランスの設置例を示す断面平面図である。 溶解期における多孔バーナー・ランスの使用方法を説明するための縦断面図である。 精練期における多孔バーナー・ランスの使用方法を説明するための縦断面図である。 製鋼用電気炉の作業口における多孔バーナー・ランスの使用例を示す縦断面図である。 製鋼用電気炉の作業口における多孔バーナー・ランスの他の使用例を示す縦断面図である。 実施例1で使用した多孔バーナー・ランスを示す図11のX−X線断面図である。 同じく正面図である。 実施例1で測定したノズル中心軸方向距離と酸素マッハ数との関係を示す図である。 実施例2で測定したノズル中心軸方向距離と酸素マッハ数との関係を示す図である。 実施例3で測定したPCD/Dと酸素マッハ数との関係を示す図である。 実施例4で比較例として用いた従来の多孔バーナーを示す図16のXV−XV線断面図である。 同じく正面図である。 実施例4で測定した多孔バーナー・ランスと従来の多孔バーナーとにおけるノズル中心軸方向距離と酸素マッハ数との関係を対比して示す図である。 実施例4で測定した多孔バーナー・ランスと従来の多孔バーナーとにおけるノズル中心軸方向距離と酸素濃度との関係を対比して示す図である。 実施例4で測定した多孔バーナー・ランスと従来の多孔バーナーとにおける酸素のマッハ数分布を対比して示す図である。 実施例5における工程パターンを示す図である。
符号の説明
11…多孔バーナー・ランス、12…本体部、13…酸素供給路、14…燃料供給路、15…水冷ジャケット、16…ノズル部、17…火炎噴出口、18…中細ノズル、19…燃料噴出孔、21…周溝、22…直胴部、23…燃料供給筒、24…燃料通路、25…スロート部、26…円錐面、27…粉体噴出孔、51…製鋼用電気炉、52…コールドスポット部、53…作業口、54…固体原料(冷鉄源)、55…高温火炎、56…高速酸素噴流、57…溶鋼

Claims (6)

  1. 酸素供給路と燃料供給路とを備えた本体部の先端に酸素及び燃料を噴出する火炎噴出口を複数個設けた多孔バーナー・ランスであって、各火炎噴出口は、中心に配置した酸素噴出用の中細ノズルと、該中細ノズルの出口近傍から中細ノズル内に燃料を噴出して火炎を形成する燃料噴出孔とを備え、前記本体部先端における前記火炎噴出口の中心間の距離は、各火炎噴出口の出口径に対して2.8倍以上に設定されていることを特徴とする多孔バーナー・ランス。
  2. 前記火炎噴出口は、前記中細ノズルの出口部から本体部先端に至る直胴部を有し、該直胴部には周溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の多孔バーナー・ランス。
  3. 前記酸素が前記火炎噴出口から超音速で噴出することを特徴とする請求項1記載の多孔バーナー・ランス。
  4. 前記本体部の先端に粉体を噴出する粉体噴出孔を有していることを特徴とする請求項1記載の多孔バーナー・ランス。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項記載の多孔バーナー・ランスを使用した冷鉄源の溶解・精錬方法であって、前記酸素の流量を実質的に一定に保った状態で燃料の流量を変化させ、主に冷鉄源を溶解する溶解期では酸素比を1以上とし、冷鉄源が溶け落ちた後の精錬期では酸素比を3以上とすることを特徴とする冷鉄源の溶解・精錬方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項記載の多孔バーナー・ランスを使用した冷鉄源の溶解・精錬方法であって、前記酸素の流量を実質的に一定に保った状態で燃料の流量を変化させ、主に冷鉄源を溶解する溶解期では酸素比を1以上とし、冷鉄源が溶け落ちた後の精錬期では燃料の供給を停止することを特徴とする冷鉄源の溶解・精錬方法。
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