JP4117377B2 - 高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体及びその製造方法 - Google Patents

高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体に関するものであり、更に詳しくは、非酸化物セラミックス上に、高温耐腐食層をコーティングした、高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体及びその製造方法に関するものである。本発明は、強度等の機械的性質に優れ、高温下での耐酸化性、耐食性が要求される、特に高温ガスタービン用部材又は自動車エンジン用部材あるいは超高速航空機用耐熱部材等の技術分野において、1000〜1500℃の高温下で、10〜30%の水蒸気分圧下及び3%以下のアルカリ成分の存在下においても、高温における水蒸気腐食あるいはアルカリの存在に起因する腐食の促進を抑制することが可能な、高温耐腐食層を有する、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の非酸化物セラミックス構造体を提供するものであり、特に、本発明は、化石燃料を燃焼することにより20%ほどの高い水蒸気分圧、数%以下のアルカリ成分が存在するとされる燃焼場に晒される、ガスタービンの部材に非酸化物セラミックスを応用する際に、高温腐食を抑制することができる非酸化物セラミックスを提供するものとして有用である。
窒化ケイ素(SiN)、サイアロン(Si−Al−O−N)、炭化ケイ素(SiC)等の非酸化物セラミックスは、高温における耐熱性、耐熱衝撃性及び耐クリープ特性に優れ、このような優れた機械特性から、ガスタービン用部品などの構造部材への適用がなされている。しかし、これらの非酸化物セラミックスは、1500℃前後もしくはそれ以上の温度になると、酸化の進行による劣化が問題となるため、高温での利用には支障が生じる。これに対し、酸化物セラミックスは、耐熱性、耐酸化性には優れているが、高温における強度、靭性等の機械的特性が低い。従って、非酸化物セラミックスも酸化物セラミックスも、単独では耐熱性及び耐酸化性と高温下での使用に耐える機械特性との双方を満足させることができなかった。非酸化物セラミックス、例えば、窒化ケイ素や炭化ケイ素セラミックスが、高温域で劣化する機構は、1600℃までの高温で酸化して表面にシリカを生成し、更に高温になると、蒸気相のSiOを生成し、SiOが昇華するため減肉しながら損耗する。高温で水蒸気が存在する環境下では、酸化に加えて水蒸気による腐食が生じ、損耗が加速され、更にガスタービン燃焼場のような高速気流中ではエロージョン効果も加わり減肉が加速される。従って、非酸化物セラミックスをガスタービン部材として応用する際には高温における酸化、水蒸気腐食を防止する耐腐食層を形成させる必要がある。
上記非酸化物セラミックスが酸化して形成するシリカ層は、非酸化物セラミックスとの密着性は良いものの、シリカ層と非酸化物セラミックスとの熱膨張係数が大きく異なるため、シリカ層及び非酸化物セラミックスの表層に大きなクラックが生じ、セラミックス構造体の強度が低下することが知られている。従って、高温における非酸化物セラミックスの酸化、水蒸気腐食を防止することができる耐腐食層としては、酸素分子或いは水蒸気分子を通さない緻密な被膜であることが必要であり、高温に長時間晒されても構造変化を起こさず、高温耐水蒸気腐食性に優れる相を選択する必要がある。
高温耐水蒸気腐食性に優れるシリケート化合物としては、希土類シリケート及びムライトが広く知られている。しかし、PVD法等により成膜されるムライト層は、成膜時には緻密な層を形成するものの、長時間ガスタービン実機相当の環境下に晒されると、ムライト層の下層にある非酸化物セラミックスが酸化し、大きなクラックが生じると報告されている。
また、希土類酸化物−シリカ系被膜を成膜した非酸化物セラミックス構造体に関しては、文献(特許文献1、2、3参照)に記載されているように、希土類がY、Yb、Er及びDyに限り、その希土類シリケート被覆した窒化ケイ素セラミックス構造体が知られている。希土類がLuである、ルテチウムシリケートを、窒化ケイ素セラミックスへ成膜して、静的な環境下における水蒸気腐食を有効に抑制し得ることも知られている。また、ムライト相とイッテリビウムシリケート(YbSi)相の間には共晶が存在すること自体は知られている。
酸化物セラミックス、特にシリケート系化合物の水蒸気腐食では、結晶粒界相として存在するシリカが最初に腐食されることが知られている。粒界相が腐食されると、結晶粒同士の結合が弱くなり高速気流中では結晶粒そのものが吹き飛ばされることは容易に予測されることである。更に、粒界相の腐食により、耐腐食層に酸素や水蒸気分子が容易に通過し、基材の非酸化物セラミックスまで達するオープンポアが形成されることは容易に予測される。
従って、シリケート系化合物を耐高温腐食層として採用する場合には、(1)皮膜が緻密であること、(2)結晶性界層を可能な限りなくした層であること、が必要である。しかしながら、気相法、溶液法、反応焼結法等により形成されるシリケート系化合物の耐腐食層は、多量の結晶粒界層を含むのが現状であり、耐高温腐食層としての十分な性能を有するものは見当たらない。また、水蒸気が存在する条件下で高温・高速気流中における材料の減肉機構は、アレニウスの式に従い、圧力、水蒸気分圧、気流の速度の関数として表される。従って、耐環境性被膜の候補材料に要求される物性としては、(1)高融点であること、(2)水蒸気との高温化学反応が抑制されること、(3)高温化学反応が生じた場合、生成する化学種の蒸気圧が小さいこと、など数多くのパラメータを考慮する必要があり、静的な水蒸気腐食試験の試験結果のみでは優れた耐環境性被膜材料の物性が正しく評価できないのが現状である。
特開平11−139883号公報 特開平11−12050号公報 特開平10−87386号公報
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術における諸問題を、抜本的に解決することを可能とする新しい高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックスの開発を目標として鋭意研究を積み重ねた結果、希土類シリケート/ムライト共晶は、非酸化物セラミックスの熱膨張係数に近く、緻密であり、結晶粒界層の体積分率を可能な限り排除することができ、腐食による重量減少を抑制することができること、更に、希土類シリケート(LnSi:LnはYb及び/又はLu)とムライトの共晶を含む皮膜を作製することによって、高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックスを作製できること、を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)1000℃を超える高温で水蒸気が存在する環境下においても水蒸気腐食による重量減少、すなわち、材料の損耗を抑制する、(2)共晶組織を利用することにより緻密な層を形成することができる、(3)結晶粒界のシリカ層を排除することが可能となるために粒界腐食により生じることが懸念される被膜中のオープンポア生成を抑制することができる、(4)初晶をムライトとすることで炭化ケイ素と熱膨張係数を合わせた得る皮膜の形成が可能となる、(5)初晶を希土類シリケートとすることで窒化ケイ素と熱膨張係数を合わせ得る被膜の形成が可能となる、(6)長時間使用においても基材と耐腐食被膜の反応による新たな相の生成を抑制する、(7)長時間安定に組織を維持することができる、等の特性を有する高温耐腐食被膜を有する非酸化物セラミックス構造体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術手段から構成される。
(1)非酸化物セラミックスの上に、一般式:LnSi(但し、式中のLnは、希土類元素を示す。)で表される希土類シリケートと、式:AlSi13で表されるムライトとの共晶を含む高温耐腐食層を形成し、更にその上にムライト或いは希土類シリケートもしくはその混合層を成膜した非酸化物セラミックス構造体であって、
1)希土類シリケートとムライトとの共晶を含む高温耐腐食層が、希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含み、ムライトの比率がモル比で20から50%となる組成の範囲内にあること、
2)高温耐腐食層が、結晶粒界層を実質的に含まないこと、
3)上記非酸化物セラミックスが、炭化ケイ素であり、高温耐腐食層が、初晶として析出したムライト、及び希土類シリケートとムライトとの共晶を含む被膜からなること、或いは、上記非酸化物セラミックスが、窒化ケイ素であり、高温耐腐食層が、初晶として析出した希土類シリケート、及び希土類シリケートとムライトとの共晶を含む被膜からなること、
を特徴とする非酸化物セラミックス構造体。
(2)1から200ミクロンの厚みを有する希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む高温耐腐食層と、その上に0ら100ミクロンの厚みを有する希土類シリケート、ムライト、或いは希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む層を有する、上記(1)に記載の非酸化物セラミックス構造体。
(3)希土類が、Yb及び/又はLuである、上記(1)に記載の非酸化物セラミックス構造体。
)非酸化物セラミックスが、窒化ケイ素又は炭化ケイ素である、上記(1)に記載の非酸化物セラミックス構造体。
)非酸化物セラミックス上に、希土類シリケートとムライトとの共晶を形成することができる組成のスラリーからなる被膜を形成し、一旦1500から1700℃までの温度範囲内で、共晶の融点以上の温度に加熱して完全に溶融させた後、共晶の融点よりも低い温度で加熱処理を行なうことにより、完全に結晶化した、緻密な希土類シリケートとムライトとの共晶を成膜し、更にその上にムライト或いは希土類シリケートもしくはその混合層を成膜することからなる、高温における水蒸気又はアルカリによる腐食を抑制することができる高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体の製造方法であって、
上記非酸化物セラミックスが炭化ケイ素であり、スラリーが、ムライトを初晶として析出し、希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む被膜を形成することができる組成からなること、或いは、上記非酸化物セラミックスが、窒化ケイ素であり、スラリーが、希土類シリケートを初晶として析出し、希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む被膜を形成することができる組成からなること、
を特徴とする非酸化物セラミックス構造体の製造方法。
)非酸化物セラミックス上に、高温耐腐食層を形成するにあたり、ディッピング法を採用する、上記()に記載の非酸化物セラミックス構造体の製造方法。
)上記(1)から()のいずれか1項に記載の高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体を構成要素として含むことを特徴とする耐酸化・耐食性構造部材。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の、非酸化物セラミックス構造体の高温耐腐食層は、希土類シリケート(LnSi:Lnは、Yb及び/又はLu)/ムライトからなる真の共晶組成を含み、ムライトの比率がモル比で20から50%となる組成の範囲内にある緻密な被膜からなり、また、簡便、且つ低コストのディッピング法により成膜した厚さが約1から200ミクロンの耐腐食被膜からなる。
窒化ケイ素、炭化ケイ素等の非酸化物セラミックスは、高温で酸化されシリカ層を形成するが、このシリカ層は1100℃以上の高温で水蒸気及びアルカリ成分の存在雰囲気下で激しく腐食されるため、結果として窒化ケイ素セラミックスは高温水蒸気雰囲気下で損耗する。また、生成するシリカ層と非酸化物セラミックスの熱膨張係数が大きく異なるためにセラミックス表面に多くのクラックが生じ、非酸化物セラミックス構造体の強度が低下する。従って、高温耐腐食層は緻密であることが必要である。また、シリケート化合物の焼結体には結晶粒界層として多量のシリカが含まれ、粒界層のシリカは高温水蒸気の存在下で容易に腐食され、被膜を貫通するオープンポアが形成されることにより耐腐食性能が低下する。本発明は、単体としては耐水蒸気腐食性が優れるとされる希土類シリケート相及びムライト相を複合化させ、共晶組織を形成させることにより、結晶粒界に存在するシリカ相を排除することを特徴とするものである。本発明の耐水蒸気腐食層を施した非酸化物セラミックス構造体は、1000℃以上の温度で、水蒸気分圧が30%までの過酷な条件下でも、水蒸気腐食による重量減少を、従来、優れた耐水蒸気腐食性を示すとされる、ルテチウムシリケートやムライト単体の焼結体を成膜した非酸化物セラミックス構造体のレベル以下に抑制することを可能にしたものである。
希土類シリケートの熱膨張係数は、窒化ケイ素セラミックスの熱膨張係数とほぼ同じであり、ムライトの熱膨張係数は炭化ケイ素の熱膨張係数とほぼ同じである。従って、非酸化物セラミックスとして窒化ケイ素セラミックスを採用する場合には、あえて希土類シリケートが初晶として晶出する組成を選択し、非酸化物セラミックスとして炭化ケイ素を採用する場合には、あえてムライトを初晶として晶出する組成を選択することで、基材と被膜との熱膨張係数差を小さくすることが可能となる。従って、本発明における被膜全体の組成は、希土類シリケートとムライトとの共晶組成である33.4モル%ムライトの組成を含み、ムライトの比率がモル比で20から50%となる組成であり、それらは、基材の材質に応じて、また、基材と被膜との熱膨張率の差を考慮して選択される。
耐腐食被膜は、酸素分子や水蒸気分子を透過させないことが必須であるため、ナノオーダーでの緻密な被膜を作製する手法としてスパッタリング法やPVD法或いはCVD法など気相法により成膜されるのが現在の主流である。しかし、これらの成膜法は、目的とする100ミクロンほどの被膜を作製するには長時間を要し、コスト的にも高くなる。そこで、本発明の被膜製造法は、ディッピング法を採用し、製造プロセスを簡略にするとともに、短時間で、且つ低コストで被膜を作製することを可能とするものである。
希土類シリケート(LnSi、Lnは希土類元素)には、YbとLuを除き、1500℃までに体積変化を伴う構造相転移が存在することが知られている。そして、本発明の耐環境皮膜を有する非酸化物セラミックスは、1500℃までの温度において実用化を目指すものであるので、本発明では、1500℃までに、皮膜破損を誘起するような構造相転移を示さない希土類である、Yb及び/又はLuを含む希土類シリケートが採用される。
基材に、目的とする組成のスラリーを塗布し、一旦、加熱、溶融させた後、融点直下で加熱処理することにより、粒界に粒界相がほとんどない共晶組織を形成させることができる。イッテリビウムシリケート(YbSi)とムライトの状態図は、既知であり、1500℃が共晶温度、ムライトが33.4%となる組成が共晶組織である。ルテチウムシリケート/ムライト共晶に関しては知られていないが、本発明者らが、調べた結果、共晶組成は、イッテリビウムの系と同じであり、共晶温度は1520℃付近であることが確認された。
本発明では、基材と被膜の熱膨張係数差を小さくすることを目的として、非酸化物セラミックスとして窒化ケイ素セラミックスを採用する場合には、あえて希土類シリケートが初晶として晶出する組成を選択し、非酸化物セラミックスとして炭化ケイ素を採用する場合には、あえてムライトを初晶として晶出する組成を選択する必要がある。これらの組成に対応して、これらを完全に溶融させる温度を変更する必要があるが、上記組成に対応した完全に溶融する温度は1500から1700℃の温度範囲にあることから、基材に塗布したスラリー粉末を完全に溶融させる製造条件の温度範囲としては、1500から1700℃が好ましい。更に、共晶温度直下となる1500℃以下の温度で組織形成させることで安定な共晶組織を得ることができる。
被膜層の厚みは、材料が実際に使用される部位に要求される時間及び雰囲気などの条件によって設計されるものであるが、ガスタービン部材として用いる場合の耐水蒸気層は、本発明のような完全緻密体である場合は、約200ミクロン程度で充分であると考えられる。また、ディッピング法での成膜では、約200ミクロン以上の厚膜は得にくいため、本発明の希土類シリケート/ムライト共晶含有高温耐水蒸気腐食層の厚みは、好適には、約1から約200ミクロンである。
本発明では、非酸化物セラミックスの直上に希土類シリケート/ムライト共晶含有高温耐水蒸気腐食層を成膜するので、更にその上にムライト或いは希土類シリケートもしくはその混合層の成膜が容易になる。仮に、実際に使用する部位の条件が厳しく、200ミクロン以上の被膜を必要とする場合には、希土類シリケート/ムライト共晶含有高温耐水蒸気腐食層の上にムライト或いは希土類シリケートもしくはその混合層を成膜することができる。本発明の希土類シリケート/ムライト共晶含有高温耐水蒸気腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体の概念図を図1に示す。非酸化物基材として窒化ケイ素を採用する場合には、希土類シリケート相を初晶として晶出する組成を上記腐食層として選択し、基材として炭化ケイ素を採用する場合には、ムライトを初晶として晶出する組成を上記腐食層として選択するのが好ましい。希土類シリケート/ムライト共晶含有高温耐水蒸気腐食層は、完全に緻密体であり、共晶温度の直下で共晶組織を成長させるため、結晶粒界から結晶粒界相が排除された組織を呈する。本発明では、簡便、且つ低コストとなるディッピング方を採用するため、膜厚は約200ミクロンが限界である。この膜厚は、部材が使用される温度・時間・信頼性などのパラメータにより適宜設計されるものであるが、必要に応じて、更にその上にムライト或いは希土類シリケートもしくはその混合層を成膜することで、更に性能を向上させることができる。
本発明により、(1)1000℃を超える高温で水蒸気が存在する環境下においても水蒸気腐食による重量減少、すなわち、材料の損耗を抑制する、(2)共晶組織を利用することにより緻密な層を形成することができる、(3)結晶粒界のシリカ層を排除することが可能となるため粒界腐食により生じることが懸念される被膜中のオープンポア生成を抑制することができる、(4)初晶をムライトとすることで炭化ケイ素と熱膨張係数を合わせ得る皮膜の形成が可能となる、(5)初晶を希土類シリケートとすることで窒化ケイ素と熱膨張係数を合わせ得る被膜の形成が可能となる、(6)長時間使用においても基材と耐腐食被膜の反応による新たな相の生成を抑制する、(7)長時間安定に組織を維持することができる、等の特性を有する高温耐腐食被膜を有する非酸化物セラミックス構造体及びとその製造方法を提供することができる、という効果が奏される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明の基材は、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の非酸化物セラミックスからなるものであるが、以下に一例として、窒化ケイ素を基材とし、その表面に、ルテチウムシリケート/ムライト共晶を実際に成膜した手順と結果を図1ないし図4に基づいて説明する。
(1)材料の調整
出発物質として純度が99.9%以上のLu、SiO、Alを選択し、ルテチウムシリケート/ムライトの共晶組成となるように、モル比でLu:SiO2:Al=27.3:54.6:18.1、全量で10gとなるように秤量し、ポリ容器の中に入れ、攪拌用のモノボール10g、純粋100ml、ポリビニルアルコールバインダーを1wt%添加した後、ボールミルにより12時間攪拌して、混合物のスラリーを得た。
(2)基材への被覆
基材の窒化ケイ素セラミックスとして市販のLu、SiO系である窒化ケイ素SN282(京セラ製)を使用した。1cm角の窒化ケイ素基材を、上記スラリー中に含浸し、半日自然乾燥させた後、100℃のオーブンで更に半日乾燥させた。
(3)熱処理
ルテチウムシリケート/ムライト共晶の共晶温度は、未知であるので、本発明者らは、独自に、共晶組成となるスラリーを乾燥させ、白金るつぼに入れ、大気中、1500から1550℃の種々温度で加熱処理を行なう実験を行い、共晶温度について検討した。その結果、ルテチウムシリケート/ムライト共晶は、1520℃で溶融することが判明した。
得られた溶融体を取り出し、研磨した後、組織観察を行なったところ、図2に示すような共晶組織を含んでいた。白い相がルテチウムシリケート相であり、黒い相がムライト相である。ミクロンオーダーのラメラ的な組織がこの方法により得られた。ルテチウムシリケート/ムライト共晶の共晶温度が1520℃と判明したので、純度99.99%の高純度アルミナ焼結体を台座として、大気炉により一旦1560℃まで昇温速度150℃/時間で加熱し、2時間の間1560℃で保持した後、1510℃まで降温速度10℃/hとゆっくり温度を下げ、1510℃で12時間保持し、共晶組織を成長させた。その後、1000℃までは、100℃/hの速度で温度を下げ、1000℃から室温までは炉冷することにより、共晶組織を含有する被膜を形成した。
(4)試験結果
得られた被膜の表面を図3に示す。図2と同様に、ミクロンオーダーの共晶組織が得られ、全くポアがない緻密な被膜であることが確認された。更に、この被膜表面を拡大すると、ムライト相と希土類シリケート相との境界、即ち、結晶界面が明瞭に観察でき、結晶粒界にアモルファス相はほとんど存在しないことが確認された。図4は被膜の断面写真である。窒化ケイ素セラミックスと被膜は一体化しており、非常に密着性の良い膜であることが確認された。また、完全に緻密な層となっていることが確認できた。希土類シリケート/ムライト共晶バルクについて、1300℃、30%水蒸気が存在する環境下において、水蒸気腐食性を調べたところ、腐食速度は0であり、全く腐食されないことが証明された。
多結晶のシリケートバルク又はそのコーティング層を、同一条件で試験すると、ムライト及び希土類シリケートの腐食速度が、10−6g/cm・hのオーダーとなることが知られている。本実施例で腐食速度が0となることにより、多結晶体の場合は、結晶層そのものの腐食速度ではなく、結晶粒界に存在する粒界シリカ層の腐食に対応するものであることが判り、この粒界シリカを除去すると、高温水蒸気の存在下でも、腐食されないことが証明できた。よって、この共晶材をコーティング材として用いると、基材の耐酸化、耐環境性を大幅に向上させ得ることが判った。上記の手法により、緻密で密着性が非常に良好で、結晶粒界層を排除したルテチウムシリケート/ムライト共晶被膜を、ディッピング法という簡便でコストを低減できるプロセスにより作製することができた。また、炭化ケイ素を基材として、同様の手順により、同様の結果が得られた。
以上詳述したように、本発明は、希土類シリケート/ムライト共晶の高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体及びその製造方法に係るものであり、本発明により、1000〜1500℃の高温下で、10〜30%の水蒸気分圧下及び3%以下のアルカリ成分の存在下でも、高温における水蒸気腐食あるいはアルカリの存在に起因する腐食の促進を、抑制することが可能な、新規な高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックスを提供することができる。本発明は、強度等の機械的性質に優れ、高温下での耐酸化性、耐食性も備えた構造用材料、特に高温ガスタービン用部材又は自動車エンジン用部材あるいは超高速航空機用耐熱部材等を製造するための材料として好適な積層セラミックス及びその製造方法を提供するものであり、さまざまな産業に利用することができる有用な材料を提供するものとして有用である。
希土類シリケート/ムライト共晶高温耐水蒸気腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体の概念図を示す。 ルテチウムシリケート/ムライト共晶組織を示す。 ルテチウムシリケート/ムライト共晶被膜の表面を示す。 ルテチウムシリケート/ムライト共晶被膜の断面を示す。

Claims (7)

  1. 非酸化物セラミックスの上に、一般式:LnSi(但し、式中のLnは、希土類元素を示す。)で表される希土類シリケートと、式:AlSi13で表されるムライトとの共晶を含む高温耐腐食層を形成し、更にその上にムライト或いは希土類シリケートもしくはその混合層を成膜した非酸化物セラミックス構造体であって、
    1)希土類シリケートとムライトとの共晶を含む高温耐腐食層が、希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含み、ムライトの比率がモル比で20から50%となる組成の範囲内にあること、
    2)高温耐腐食層が、結晶粒界層を実質的に含まないこと、
    3)上記非酸化物セラミックスが、炭化ケイ素であり、高温耐腐食層が、初晶として析出したムライト、及び希土類シリケートとムライトとの共晶を含む被膜からなること、或いは、上記非酸化物セラミックスが、窒化ケイ素であり、高温耐腐食層が、初晶として析出した希土類シリケート、及び希土類シリケートとムライトとの共晶を含む被膜からなること、
    を特徴とする非酸化物セラミックス構造体。
  2. から200ミクロンの厚みを有する希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む高温耐腐食層と、その上に0ら100ミクロンの厚みを有する希土類シリケート、ムライト、或いは希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む層を有する、請求項1に記載の非酸化物セラミックス構造体。
  3. 希土類が、Yb及び/又はLuである、請求項1に記載の非酸化物セラミックス構造体。
  4. 非酸化物セラミックスが、窒化ケイ素又は炭化ケイ素である、請求項1に記載の非酸化物セラミックス構造体。
  5. 非酸化物セラミックス上に、希土類シリケートとムライトとの共晶を形成することができる組成のスラリーからなる被膜を形成し、一旦1500から1700℃までの温度範囲内で、共晶の融点以上の温度に加熱して完全に溶融させた後、共晶の融点よりも低い温度で加熱処理を行なうことにより、完全に結晶化した、緻密な希土類シリケートとムライトとの共晶を成膜し、更にその上にムライト或いは希土類シリケートもしくはその混合層を成膜することからなる、高温における水蒸気又はアルカリによる腐食を抑制することができる高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体の製造方法であって、
    上記非酸化物セラミックスが炭化ケイ素であり、スラリーが、ムライトを初晶として析出し、希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む被膜を形成することができる組成からなること、或いは、上記非酸化物セラミックスが、窒化ケイ素であり、スラリーが、希土類シリケートを初晶として析出し、希土類シリケートとムライトとの共晶組織を含む被膜を形成することができる組成からなること、
    を特徴とする非酸化物セラミックス構造体の製造方法。
  6. 非酸化物セラミックス上に、高温耐腐食層を形成するにあたり、ディッピング法を採用する、請求項に記載の非酸化物セラミックス構造体の製造方法。
  7. 請求項1からのいずれか1項に記載の高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体を構成要素として含むことを特徴とする耐酸化・耐食性構造部材。
JP2003329377A 2003-09-22 2003-09-22 高温耐腐食層を有する非酸化物セラミックス構造体及びその製造方法 Expired - Lifetime JP4117377B2 (ja)

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