JP4117358B2 - アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子とそれを利用する原発性高蓚酸尿症i型の診断方法 - Google Patents

アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子とそれを利用する原発性高蓚酸尿症i型の診断方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子診断の技術分野に属し、特に、原発性高蓚酸尿症I型の病因遺伝子となるアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする異常遺伝子とそれを利用する原発性高蓚酸尿症I型の診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
原発性高蓚酸尿症I型(以下、PH1と略記することがある)は、比較的稀な常染色体劣性遺伝のグリオキシル酸代謝異常であり、蓚酸やグリコール酸の産生と尿中排泄の増加により、不溶性の蓚酸カルシウムが、腎臓をはじめとする全身に蓄積する疾患である。その臨床症状は多彩であるが、多くの罹患者は腎不全その他により予後不良となる。原因はグリコール酸の代謝産物であるグリオキシル酸がペルオキシゾーム酵素のアラニン:グリオキシル酸トランスフェラーゼ(AGT)異常によりグリシンに代謝されず、グリオキシル酸の酸化物の蓚酸とグリコール酸が過剰に産生、排出されることによる。AGT遺伝子の異常に関しては、既に幾つかの病因変異が知られている。例えば、AGT遺伝子のcDNAの第33位と第34位の間にシトシンが挿入され、premature stopコドンが出現するナンセンス変異(Q12fs×167)が見出されている。PH1は発症前に肝移植して治療できる病気であるので、発症前の早期診断が重要であり、このためにはPH1の発症の可能性の有無を確実に知ることができるようにAGTに関する遺伝子レベルでの更なる検討が望まれている。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このたび、PH1の病因となる新たなAGT遺伝子の変異を見出した。すなわち、後にも詳述するように、PH1と確定診断された患者とその両親の遺伝子を用い、AGT遺伝子のcDNAの異常を検索したところ、患者の遺伝子では第751位がチミンではなくアデニンに、また、第752位がグアニンではなくアデニンに変異していることを見つけ、これが母親由来であり、比較検索した健常者200名の遺伝子にはこの変異は見られないことから、これらの変異が病因であることを確認した。
【0004】
本発明は、このような知見を基礎に導かれたものであり、この出願は、前述の課題を解決するものとして、以下の(1)〜(15)の発明を提供する。
(1) アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子のポリヌクレオチドであって、配列番号1のDNA配列において第751位のt(チミン)がa(アデニン)に且つ第752位のg(グアニン)がa(アデニン)に塩基置換しているポリヌクレオチドまたはその相補配列。
(2) 前記発明(1)のポリヌクレオチドの一部であって、配列番号1の第751位置換塩基aおよび第752位置換塩基aを含む20〜100の連続したDNA配列から成るオリゴヌクレオチドまたはその相補配列。
(3) 前記発明(1)のポリヌクレオチドもしくは前記発明(2)のオリゴヌクレオチド、またはそれらの相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヒト染色体DNA由来のポリヌクレオチド。
(4) 前記発明(3)のポリヌクレオチドとその相補配列からなる二本鎖ポリヌクレオチド、または前記発明(3)のポリヌクレオチドから転写されるmRNAをPCR増幅するためのプライマーセットであって、一方のプライマーが配列番号1の第751位置換塩基aおよび第752位置換塩基aを含む15〜30の連続したDNA配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマーセット。
(5) 前記発明(1)または(3)のポリヌクレオチドにコードされるか、または該ポリヌクレオチドの発現によって得られるポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列において、第251位のTrp(トリプトファン)がLys(リジン)にアミノ酸置換されているポリペプチド。
(6) 前記発明(5)のポリペプチドの一部であって、配列番号2の第251位置換アミノ酸Lysを含む5〜30の連続したアミノ酸配列からなるオリゴペプチド。
(7) 前記発明(6)のオリゴペプチドを抗原として作製された抗体。
(8) 原発性高蓚酸尿症I型の診断方法であって、被験者から単離した染色体DNA中に前記発明(3)のポリヌクレオチドが存在するか否かを検出することを特徴とする方法。
(9) 被験者から単離した染色体DNAまたはそのmRNAと、前記発明(1)のポリヌクレオチドもしくは前記発明(2)のオリゴヌクレオチド、またはそれらの相補配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか否かを検出する前記発明(8)の方法。
(10) 被験者から単離した染色体DNAまたはmRNAを鋳型とし、前記発明(4)のプライマーセットを用いてPCRを行った場合のPCR産物の有無を検出する前記発明(8)の方法。
(11) 原発性高蓚酸尿症I型の診断方法であって、被験者から単離した生体試料中に前記発明(5)のポリペプチドが存在するか否かを検出することを特徴とする方法。
(12) 被験者から単離した生体試料中に、前記発明(7)の抗体と反応するポリペプチドが存在するか否かを検出する前記発明(11)の方法。
(13) 前記発明(2)のオリゴヌクレオチドを標識化したことを特徴とするDNAプローブ。
(14) 前記発明(2)のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とするDNAチップ。
(15) 前記発明(7)の抗体を標識化したことを特徴とする標識化抗体。
【0005】
以下、これらの各発明の実施形態について詳しく説明する。なお、本明細書においては、101個以上のヌクレオチドの連続配列をポリヌクレオチド、2〜100個の連続ヌクレオチド配列をオリゴヌクレオチドと定義する。また、31個以上のアミノ酸連続配列をポリペプチド、2〜30個の連続アミノ酸配列をオリゴペプチドと定義する。
【0006】
【発明の実施の形態】
この出願の発明(1)は、AGT遺伝子のcDNA(配列番号1)の変異DNA配列であり、配列番号1のDNA配列において第751位のt(チミン)がa(アデニン)に且つ第752位のg(グアニン)がa(アデニン)に塩基置換しているポリヌクレオチドまたはその相補配列である。
なお、配列番号1で示されるAGT遺伝子のDNA配列は、GenBankにAccessin No. NM 000030として登録されている。既述したように、本発明に係る異常遺伝子は、この正常(野生型)AGT遺伝子のcDNAの751位および第752位の2つの塩基が変異したミスセンス変異(missense mutation)に因るものである。
【0007】
発明(1)のポリヌクレオチドは、例えば、後記の発明(2)のオリゴヌクレオチドをプローブとして、PH1患者の全mRNAから調製したcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができ得る。また後記の発明(4)のプライマーセットを用い、PH1患者のmRNAを鋳型とするRT−PCRによって単離することもできる。あるいは、野生型(正常)AGT遺伝子のcDNAに、市販のミューテーションキット等を用いて前記の塩基置換を導入することによって取得することもできる。
【0008】
この出願の発明(2)は、前記発明(1)のポリヌクレオチドの一部であって、上記の置換塩基を含む20〜100の連続したDNA配列からなるオリゴヌクレオチドまたはその相補配列である。
発明(2)のオリゴヌクレオチドは、公知の方法によって化学的に合成して作製することができる。また、発明(1)のポリヌクレオチドを適当な制限酵素で切断するなどの方法によって作製することもできる。
発明(2)のポリヌクレオチドは、後記の発明(8)のPH1の診断方法等に使用することができる。
【0009】
この出願の発明(3)は、前記発明(1)のポリヌクレオチドもしくは前記発明(2)のオリゴヌクレオチド、またはそれらの相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヒト染色体DNA由来のポリヌクレオチド(ゲノムDNA)である。ここで、ストリンジェント(stringent)な条件とは、それらのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと、染色体由来のゲノムDNAとの選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。よく知られているように、ストリンジェント条件は、塩濃度、温度、およびその他の条件によって決まり、例えば、塩濃度が低いほど、温度が高いほど、ストリンジェンシー(stringency)は高くなり、ハイブリダイズしにくくなる。塩濃度は、一般に、SSC溶液(NaCl+クエン酸三ナトリウム)の濃度を調節することによって調節され、ストリンジェントな塩濃度は、例えば、NaCl約250mM以下およびクエン酸三ナトリウム約25mM以下である。ストリンジェントな温度は、一般に、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より15〜25℃低い温度であり、例えば、約30℃以上である。溶液に有機溶媒(例えばホルムアミド)を加えることにより、温度を下げることができる。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、およびキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。1つの好ましい例として、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、200μg/mlの変性サケ精子DNAの条件で、42℃の温度によりハイブリダイゼーションを行う。また、ハイブリダイゼーション後の洗浄の条件もストリンジェンシーに影響する。この洗浄条件もまた、塩濃度と温度によって定義され、塩濃度の減少と温度の上昇によって洗浄のストリンジェンシーは増加する。1つの好ましい例として、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウムおよび0.1%SDSの条件で、68℃の温度により洗浄を行う。ストリンジェントな条件については、例えば、J. Sambrookらによる「Molecular Cloning, A Laboratory Mannual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、特に11.45節“Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes”」に詳述されており、それらの記載を参照することによって容易に適切な条件を使用することができる。
発明(3)のポリヌクレオチドは、例えば、発明(2)のオリゴヌクレオチドをプローブとして、上述したようなストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄処理により、PH1患者の染色体DNAから調製したゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。
これらの発明(3)のポリヌクレオチドは、後記の発明(8)のPH1の診断方法において検出対象等となるものである。
【0010】
この出願の発明(4)は、前記発明(3)のポリヌクレオチドとその相補配列からなる二本鎖ポリヌクレオチド(ゲノムDNA)、または前記発明(3)のポリヌクレオチドから転写されるmRNAをPCR増幅するためのプライマーセットである。そしてこれらのプライマーセットは、一方のオリゴヌクレオチドプライマーが、配列番号1の置換塩基を含む15〜30の連続したDNA配列またはその相補配列からなっている。他方のプライマーは、配列番号1の置換塩基の5’側または3’側の任意の連続DNA配列またはその相補配列とすることができる。
これらのプライマーセットは、それぞれの置換塩基を含む配列番号1に基づいて公知のDNA合成法により作製することができる。また、プライマーの端部にはリンカー配列等を付加することもできる。
発明(4)のプライマーセットは、後記の発明(8)のPH1の診断方法等に使用することができる。
【0011】
この出願の発明(5)は、発明(1)または(3)のポリヌクレオチドにコードされるか、または該ポリヌクレオチドの発現によって得られるポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列において、第251位のTrp(トリプトファン)がLys(リジン)にアミノ酸置換されているポリペプチドである。
すなわち、既述したように、発明(1)のポリヌクレオチドにおける塩基置換は、ミスセンス変異であり、2個の塩基置換によって正常(野生型)ポリペプチドのアミノ酸が上記のように変異している。
これらのポリペプチドは、PH1患者の生体試料から公知の方法に従って単離する方法、それぞれの置換アミノ酸残基を含む配列番号2のアミノ酸配列に基づき化学合成によってペプチドを調製する方法、あるいは発明(1)のポリヌクレオチド(変異cDNA)を用いて組換えDNA技術で生産する方法などにより取得することができる。これらの発明(5)ポリペプチドは、例えば、後記の発明(11)のPH1の診断方法の検査対象とすることができる。
【0012】
この出願の発明(6)は、前記の発明(5)のポリペプチドの一部であって、置換アミノ酸を含む5〜30の連続したアミノ酸配列を有するオリゴペプチドである。これらのオリゴペプチドは、所定のアミノ酸配列に基づいて化学的に合成する方法、あるいは発明(5)のポリペプチドを適当なプロテアーゼによって消化する方法等によって作製することができる。これらのオリゴペプチドは、例えば、後記の発明(7)の抗体作製のための抗原として使用することができる。
【0013】
発明(7)の抗体は、前記の発明(6)のオリゴポリペプチドを抗原として作製されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。これらの抗体は公知の抗体作製法により作製することができる。また、この抗体は、発明(5)のポリペプチドを特異的に認識することができ、後記の発明(11)のPH1の診断方法等に使用することができる。
【0014】
この出願の発明(8)は、被験者がPH1を発症する可能性があるか否かを診断する方法である。すなわち、被験者の生体試料から染色体DNAを単離し、このDNA中に、発明(3)のポリヌクレオチドが存在する場合に、この被験者をPH1に関してハイリスクと判定する。ポリヌクレオチドの検出は公知の様々な方法によって行うことができるが、発明(9)または(10)の方法が好ましい。
【0015】
発明(9)の方法では、被験者から単離した染色体DNAまたはそのmRNAと、前記発明(1)のポリヌクレオチドまたは発明(2)のオリゴヌクレオチドがストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか否かを検出する。被験者がPH1に関連した遺伝子変異を有している場合には、染色体DNAまたはそのmRNAとポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下でもハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションは公知の方法によって検出することができ、例えば、発明(13)のDNAプローブや、発明(14)のDNAチップを用いて、例えば、ASO(allele specific oligomer)法によるハイブリダイゼーションを行うことにより、簡便かつ高精度で行うことができる。
【0016】
また発明(10)の方法では、被験者から単離した染色体DNAまたはmRNAを鋳型とし、前記の発明(4)のプライマーセットを用いて、公知の方法に従いPCR(RT−PCRを含む)を行った場合のPCR産物の有無を検出する。被験者がPH1に関連した遺伝子変異を有している場合には、プライマーセットによって規定されるポリヌクレオチドのPCR産物が得られる。PCR産物の分析も公知の方法に従って実施することができる。例えば、正常(野生型)AGT遺伝子のcDNA(配列番号1)の第743位から第753位には制限酵素Van91Iによって認識、切断される「CCANNNNNTGG」に相当する配列があるが、既述のように変異したAGT遺伝子の対応する部位にはこの配列はないので、このような酵素を用いるRFLP(restriction fragment length polymorphism)法により、PCR産物の分析を行うことができる。
【0017】
この出願の発明(11)も、被験者がPH1を発症する可能性があるか否かを診断する方法であり、被験者から単離した生体試料中に、発明(5)のポリペプチドが存在する場合に、その被験者をPH1に関してハイリスクと判定する。ポリペプチドの存在は様々な公知方法によって行うことができるが、発明(12)の方法が好ましい。発明(12)の方法は、発明(7)抗体を用いる方法であって、特に発明(15)の標識化抗体を用いることによって、簡便かつ高精度の検出が可能となる。標識は、酵素、アイソトープ、蛍光色素等の公知の各種のものを使用することができる。
なお、発明(8)や発明(11)に従ってPH1を診断するに当たっては、従来からの既知のAGT遺伝子変異、例えば、既述したようなAGTのcDNAの第33位と第34位の間にシトシンが挿入されpremature stopコドンが出現する変異に基づく同様の方法を併用することにより、PH1の信頼性の高い診断が確保できる。
【0018】
以下に、本発明の基礎となった遺伝子変異を確認した研究内容について説明する。研究は、臨床像が異なるPH1の日本人姉妹例でのAGTの分子生物学的および酵素学的検討を行うことを目的として実施した。
方法
発端者の妹、その姉、その家族および健常対照者末梢血より調製したDNAを遺伝子解析の材料とした。患者、その両親より腹腔鏡にて肝臓の一部を生検し、AGT酵素活性の測定に使用した。患者および両親のAGT遺伝子の全エクソンと隣接イントロンをGenBankの情報に基づき、PCRで増幅し、直接シークエンスを行った。変異と思われる塩基置換は健常対照者100名のアレルでの検索を行った。解析はインフォームドコンセントを得て行われ、倫理委員会で承認された。
【0019】
症例
発端者は妹で診断時5才であり、妊娠分娩歴に異常がなく、非血縁の無症状の両親の間に生まれた。新生児期よりおむつに「砂のようなもの」が排泄されることに気付いていたが、放置していた。5才時外陰部痛を機に外尿道孔での結石嵌頓とサンゴ状の腎結石が発見された。7才の姉は、腎結石を含め全く症状は認められなかった。GC/MS分析法により姉妹の尿中で蓚酸とグリコール酸が同程度著増しており、PH1と化学診断した。
【0020】
成績
まず、生検肝臓中AGTのアラニンおよびグリオキシル酸に対するミカエリス定数(Km)を測定した。病理解剖から得られた正常肝臓を対照とした。アラニンに対するKmは対照および両親のAGTでは7.5mMであったが娘達のそれは25mMであった。グリオキシル酸に対するKmは対照および両親では0.3mMであったが、姉妹のそれは50mM以上であった。続いて、ビタミンBに対するホロ酵素活性を検討したところ、正常肝は5%がホロ酵素であったのに対し、両親はほぼ50%、姉妹は90%以上がホロ酵素であった。すなわち、患者、両親のAGT活性低下はビタミンB欠乏によるものではないことを示した。AGT遺伝子の解析の結果、姉妹ともエクソン1での1塩基挿入c.33−34insC(第33位と第34位の間にシトシンが挿入)とエクソン7での2塩基置換c.751T>A;c.752G>A(第751位がt→a、第752位がg→aに置換)の複合へテロ接合体であることがわかった。前者はpremature stopをもたらすナンセンス変異Q12fs×167(グルタミンQから始まる12個の異常アミノ酸が出現して停止する、全体で167個のアミノ酸)であり、後者は251位アミノ酸Trpのコドンの1,2番目に位置しTrpからLysへのアミノ酸置換をもたらすミスセンス変異(c.751T>A;c.752G>A;c.752G>A:W251K)であった。家族のゲノム解析を行ったところ、父親はQ12fs×167を、母親と母方祖母はW251Kをヘテロ接合体として有していた。生ずる制限酵素Van91I切断を用いて、c.751T>A;c.752G>A:W251K変異の検索を100名の健常対照者のDNAで行ったが、本変異は見出されなかった。
【0021】
結論
本姉妹のAGTはアラニンに対する親和性が対照に比べ3倍も低く、グリオキシル酸に対する親和性に至っては170倍以上も低いことが分かった。すなわち、インビボでは姉妹の酵素は殆ど活性を発揮していないと考えられた。姉妹はともにAGT遺伝子に父親由来のQ12fs×167と、母親由来のW251Kを複合ヘテロ接合体として有していた。既述したように、c.33−34insC:Q12fs×167はPH1ですでに報告があるが、c.751T>A;c.752G>A;c.752G>A:W251K変異の報告はない。しかしながら、251位のアミノ酸Trpは数種の哺乳動物のAGTに保存されている領域に位置していること、さらに健常対照の200アレルに見出されなかったことから、c.751T>A;c.752G>A;c.752G>A:W251Kを、PH1をもたらす新規のAGT病因遺伝子異常と判断した。本姉妹は、AGTに同じ遺伝子異常、同様な酵素学的異常を有し、しかもその結果としての尿中の蓚酸とグリコール酸の排泄が同程度にもかかわらず、臨床的に明らかに異なっており、PH1の表現型の多様性が分子生物学的、酵素学的に実証された。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、原発性高蓚酸尿症I型(PH1)の病因遺伝子となる新規なアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子と、それを利用するPH1の診断方法を提供するものであり、遺伝子レベルでのPH1の早期診断と治療の発展に資することができる。
【0023】
【配列表】
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Claims (6)

  1. アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子のポリヌクレオチドであって、配列番号1のDNA配列において第751位のt(チミン)がa(アデニン)に且つ第752位のg(グアニン)がa(アデニン)に塩基置換しているポリヌクレオチドまたはその相補配列からなるポリヌクレオチド
  2. 請求項1のポリヌクレオチドの一部であって、配列番号1の第751位置換塩基aおよび第752位置換塩基aを含む20〜100の連続したDNA配列から成るオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド
  3. 請求項のポリヌクレオチドとその相補配列からなる二本鎖ポリヌクレオチド、または請求項のポリヌクレオチドから転写されるmRNAをPCR増幅するためのプライマーセットであって、一方のプライマーが配列番号1の第751位置換塩基aおよび第752位置換塩基aを含む15〜30の連続したDNA配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマーセット。
  4. 請求項1のポリヌクレオチドにコードされるか、または該ポリヌクレオチドの発現によって得られるポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列において、第251位のTrp(トリプトファン)がLys(リジン)にアミノ酸置換されているポリペプチド。
  5. 請求項2のオリゴヌクレオチドを標識化したことを特徴とするDNAプローブ。
  6. 請求項2のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする原発性高蓚酸尿症I型に関してハイリスクであることを判定するためのDNAチップ。
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