JP3998934B2 - 電子伝達フラビン蛋白脱水素酵素遺伝子とそれを利用するグルタル酸尿症ii型の診断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子診断の技術分野に属し、特に、グルタル酸尿症II型の病因遺伝子となる電子伝達フラビン蛋白脱水素酵素をコードする異常遺伝子とそれを利用するグルタミン酸尿症II型の診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
グルタル酸尿症II型(以下、GAIIと記すことがある)はマルチプルアシルCo−A脱水素酵素欠損症とも呼ばれ、臨床症状は生後すぐに重篤な低血糖症に陥るもの、乳児期に乳児突然死症候群や症候群様を呈するもの、成人近くまで全く無症状のものとその重症度は様々である。GAIIの原因はミトコンドリアの電子伝達フラビン蛋白(electron transfer flavoprotein : ETF)または電子伝達フラビン蛋白脱水素酵素(ETF−QO:EC 1. 5. 5. 1)の異常による。ETFはα(α−ETF)とβサブユニット(β−ETF)とで構成される2量体である。α、β−ETFとETF−QOはそれぞれ独立した遺伝子にコードされている。すでに一つのETF−QOの変異が報告されている。しかし、ETF−QOのゲノム構造とGAIIとの関係は明らかとなっていなかった。GAIIはまれな疾患であるが、臨床症状の多様性から早期診断は難しく、遺伝子レベルでの早期診断法の開発が望まれている。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このたび、GAIIをもたらす新たなETF−QO遺伝子の変異を見出した。すなわち、後にも詳述するように、GAIIと診断された患者とその家族のETF−QO遺伝子を調べたところ、ETF−QO遺伝子のcDNAの1519位がチミンではなくグアニンに変異しており、ホモ接合体であること、これが両親由来であること、さらに、健常対象者のETF−QO遺伝子cDNAにはこの変異が見られないことから、上記の変異がGAIIの病因の一つであることを確認した。
【0004】
本発明は、このような知見を基礎に導かれたものであり、この出願は、前述の課題を解決するものとして、以下の(1)〜(15)の発明を提供する。
(1) 電子伝達フラビン蛋白脱水素酵素をコードする遺伝子のポリヌクレオチドであって、配列番号1のDNA配列において第1519位のt(チミン)がg(グアニン)に塩基置換しているポリヌクレオチドまたはその相補配列。
(2) 前記発明(1)のポリヌクレオチドの一部であって、配列番号1の第1519位置換塩基gを含む20〜100の連続したDNA配列から成るオリゴヌクレオチドまたはその相補配列。
(3) 前記発明(1)のポリヌクレオチドもしくは前記発明(2)のオリゴヌクレオチド、またはそれらの相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヒト染色体DNA由来のポリヌクレオチド。
(4) 前記発明(3)のポリヌクレオチドとその相補配列からなる二本鎖ポリヌクレオチド、または前記発明(3)のポリヌクレオチドから転写されるmRNAをPCR増幅するためのプライマーセットであって、一方のプライマーが配列番号1の第1519位置換塩基gを含む15〜30の連続したDNA配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマーセット。
(5) 前記発明(1)または(3)のポリヌクレオチドにコードされるか、または該ポリヌクレオチドの発現によって得られるポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列において、第507位のTyr(チロシン)がAsp(アスパラギン酸)にアミノ酸置換されているポリペプチド。
(6) 前記発明(5)のポリペプチドの一部であって、配列番号2の第507位置換アミノ酸Aspを含む5〜30の連続したアミノ酸配列からなるオリゴペプチド。
(7) 前記発明(6)のオリゴペプチドを抗原として作製された抗体。
(8) グルタル酸尿症II型の診断方法であって、被験者から単離した染色体DNA中に前記発明(3)のポリヌクレオチドが存在するか否かを検出することを特徴とする方法。
(9) 被験者から単離した染色体DNAまたはそのmRNAと、前記発明(1)のポリヌクレオチドもしくは前記発明(2)のオリゴヌクレオチド、またはそれらの相補配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか否かを検出する前記発明(8)の方法。
(10) 被験者から単離した染色体DNAまたはmRNAを鋳型とし、前記発明(4)のプライマーセットを用いてPCRを行った場合のPCR産物の有無を検出する前記発明(8)の方法。
(11) グルタル酸尿症II型の診断方法であって、被験者から単離した生体試料中に前記発明(5)のポリペプチドが存在するか否かを検出することを特徴とする方法。
(12) 被験者から単離した生体試料中に、前記発明(7)の抗体と反応するポリペプチドが存在するか否かを検出する前記発明(11)の方法。
(13) 前記発明(2)のオリゴヌクレオチドを標識化したことを特徴とするDNAプローブ。
(14) 前記発明(2)のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とするDNAチップ。
(15) 前記発明(7)の抗体を標識化したことを特徴とする標識化抗体。
【0005】
以下、これらの各発明の実施形態について詳しく説明する。なお、本明細書においては、101個以上のヌクレオチドの連続配列をポリヌクレオチド、2〜100個の連続ヌクレオチド配列をオリゴヌクレオチドと定義する。また、31個以上のアミノ酸連続配列をポリペプチド、2〜30個の連続アミノ酸配列をオリゴペプチドと定義する。
【0006】
【発明の実施の形態】
この出願の発明(1)は、ETF−QO遺伝子のcDNA(配列番号1)の変異DNA配列であり、配列番号1のDNA配列において第1519位のt(チミン)がg(グアニン)に塩基置換しているポリヌクレオチドまたはその相補配列である。
なお、配列番号1で示されるETF−QO遺伝子のDNA配列は、GenBankにAccessin No. S 69232として登録されている。既述したように、本発明に係る異常遺伝子は、この正常(野生型)ETF−QO遺伝子のcDNAの1519位が点変異したミスセンス変異(missense mutation)に因るものである。
【0007】
発明(1)のポリヌクレオチドは、例えば、後記の発明(2)のオリゴヌクレオチドをプローブとして、GAII患者の全mRNAから調製したcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができ得る。また後記の発明(4)のプライマーセットを用い、GAII患者のmRNAを鋳型とするRT−PCRによって単離することもできる。あるいは、野生型(正常)ETF−QOのcDNAに、市販のミューテーションキット等を用いて前記の塩基置換を導入することによって取得することもできる。
【0008】
この出願の発明(2)は、前記発明(1)のポリヌクレオチドの一部であって、各々の置換塩基を含む20〜100の連続したDNA配列からなるオリゴヌクレオチドまたはその相補配列である。
発明(2)のオリゴヌクレオチドは、公知の方法によって化学的に合成して作製することができる。また、発明(1)のポリヌクレオチドを適当な制限酵素で切断するなどの方法によって作製することもできる。
発明(2)のポリヌクレオチド、後記の発明(8)のGAIIの診断方法等に使用することができる。
【0009】
この出願の発明(3)は、前記発明(1)のポリヌクレオチドもしくは前記発明(2)のオリゴヌクレオチド、またはそれらの相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヒト染色体DNA由来のポリヌクレオチド(ゲノムDNA)である。ここで、ストリンジェント(stringent)な条件とは、それらのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと、染色体由来のゲノムDNAとの選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。よく知られているように、ストリンジェント条件は、塩濃度、温度、およびその他の条件によって決まり、例えば、塩濃度が低いほど、温度が高いほど、ストリンジェンシー(stringency)は高くなり、ハイブリダイズしにくくなる。塩濃度は、一般に、SSC溶液(NaCl+クエン酸三ナトリウム)の濃度を調節することによって調節され、ストリンジェントな塩濃度は、例えば、NaCl約250mM以下およびクエン酸三ナトリウム約25mM以下である。ストリンジェントな温度は、一般に、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より15〜25℃低い温度であり、例えば、約30℃以上である。溶液に有機溶媒(例えばホルムアミド)を加えることにより、温度を下げることができる。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、およびキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。1つの好ましい例として、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、200μg/mlの変性サケ精子DNAの条件で、42℃の温度によりハイブリダイゼーションを行う。また、ハイブリダイゼーション後の洗浄の条件もストリンジェンシーに影響する。この洗浄条件もまた、塩濃度と温度によって定義され、塩濃度の減少と温度の上昇によって洗浄のストリンジェンシーは増加する。1つの好ましい例として、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウムおよび0.1%SDSの条件で、68℃の温度により洗浄を行う。ストリンジェントな条件については、例えば、J. Sambrookらによる「Molecular Cloning, A Laboratory Mannual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、特に11.45節“Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes”」に詳述されており、それらの記載を参照することによって容易に適切な条件を使用することができる。
発明(3)のポリヌクレオチドは、例えば、発明(2)のオリゴヌクレオチドをプローブとして、上述したようなストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄処理により、GAII患者の染色体DNAから調製したゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。
これらの発明(3)のポリヌクレオチドは、後記の発明(8)の診断方法において検出対象等となるものである。
【0010】
この出願の発明(4)は、前記発明(3)のポリヌクレオチドとその相補配列からなる二本鎖ポリヌクレオチド(ゲノムDNA)、または前記発明(3)のポリヌクレオチドから転写されるmRNAをPCR増幅するためのプライマーセットである。そしてこれらのプライマーセットは、一方のオリゴヌクレオチドプライマーが、配列番号1の置換塩基を含む15〜30の連続したDNA配列またはその相補配列からなっている。他方のプライマーは、配列番号1の置換塩基の5’側または3’側の任意の連続DNA配列またはその相補配列とすることができる。
これらのプライマーセットは、それぞれの置換塩基を含む配列番号1に基づいて公知のDNA合成法により作製することができる。また、プライマーの端部にはリンカー配列等を付加することもできる。
発明(4)のプライマーセットは、後記の発明(8)のGAIIの診断方法等に使用することができる。
【0011】
この出願の発明(5)は、発明(1)または(3)のポリヌクレオチドにコードされるか、または該ポリヌクレオチドの発現によって得られるポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列において、第507位のTyr(チロシン)がAsp(アスパラギン酸)にアミノ酸置換されているポリペプチドである。
すなわち、既述したように、発明(1)のポリヌクレオチドにおける塩基置換は、ミスセンス変異であり、1塩基置換によって正常(野生型)ポリペプチドのアミノ酸が上記のように変異している。
これらのポリペプチドは、GAII患者の生体試料から公知の方法に従って単離する方法、それぞれの置換アミノ酸残基を含む配列番号2のアミノ酸配列に基づき化学合成によってペプチドを調製する方法、あるいは発明(1)のポリヌクレオチド(変異cDNA)を用いて組換えDNA技術で生産する方法などにより取得することができる。これらの発明(5)ポリペプチドは、例えば、後記の発明(11)のGAIIの診断方法の検査対象とすることができる。
【0012】
この出願の発明(6)は、前記の発明(5)のポリペプチドの一部であって、置換アミノ酸を含む5〜30の連続したアミノ酸配列を有するオリゴペプチドである。これらのオリゴペプチドは、所定のアミノ酸配列に基づいて化学的に合成する方法、あるいは発明(5)のポリペプチドを適当なプロテアーゼによって消化する方法等によって作製することができる。これらのオリゴペプチドは、例えば、後記の発明(7)の抗体作製のための抗原として使用することができる。
【0013】
発明(7)の抗体は、前記の発明(6)のオリゴポリペプチドを抗原として作製されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。これらの抗体は公知の抗体作製法により作製することができる。また、この抗体は、発明(5)のポリペプチドを特異的に認識することができ、後記の発明(11)の診断方法等に使用することができる。
【0014】
この出願の発明(8)は、被験者がGAIIを発症する可能性があるか否かを診断する方法である。すなわち、被験者の生体試料から染色体DNAを単離し、このDNA中に、発明(3)のポリヌクレオチドが存在する場合に、この被験者をGAIIに関してハイリスクと判定する。ポリヌクレオチドの検出は公知の様々な方法によって行うことができるが、発明(9)または(10)の方法が好ましい。
【0015】
発明(9)の方法では、被験者から単離した染色体DNAまたはそのmRNAと、前記発明(1)のポリヌクレオチドまたは発明(2)のオリゴヌクレオチドがストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか否かを検出する。被験者がGAIIに関連した遺伝子変異を有している場合には、染色体DNAまたはそのmRNAとポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下でもハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションは公知の方法によって検出することができ、例えば、発明(13)のDNAプローブや、発明(14)のDNAチップを用いて、例えば、ASO(allele specific oligomer)法によるハイブリダイゼーションを行うことにより、簡便かつ高精度で行うことができる。
【0016】
また発明(10)の方法では、被験者から単離した染色体DNAまたはmRNAを鋳型とし、前記の発明(4)のプライマーセットを用いて、公知の方法に従いPCR(RT−PCRを含む)を行った場合のPCR産物の有無を検出する。被験者がGAIIに関連した遺伝子変異を有している場合には、プライマーセットによって規定されるポリヌクレオチドのPCR産物が得られる。PCR産物の分析も公知の方法に従って実施することができる。例えば、本発明者によって見出されたGAIIの病因遺伝子となるETF−QOの異常遺伝子は、配列番号1における1519位がtからgに塩基配列している結果、1519〜1522位に「gatc」の配列が生じているので、制限酵素DpnIによって切断され、また、1518〜1523位に「ggatcc」の配列が生じているので制限酵素BamHIによって切断され得るので、これらの制限酵素を用いるPFLP(restriction fragment length polymorphism)法により、当該遺伝子変異を有するポリヌクレオチドの存否を検出することができる。
【0017】
この出願の発明(11)も、被験者がGAIIを発症する可能性があるか否かを診断する方法であり、被験者から単離した生体試料中に、発明(5)のポリペプチドが存在する場合に、その被験者をGAIIに関してハイリスクと判定する。ポリペプチドの存在は様々な公知方法によって行うことができるが、発明(12)の方法が好ましい。発明(12)の方法は、発明(7)抗体を用いる方法であって、特に発明(15)の標識化抗体を用いることによって、簡便かつ高精度の検出が可能となる。標識は、酵素、アイソトープ、蛍光色素等の公知の各種のものを使用することができる。
【0018】
以下に、本発明の基礎となった遺伝子変異を確認した研究内容について説明する。研究は、日本人のGAIIの分子生物学的異常を同定するとともに、ETF−QO遺伝子のゲノム構造を明らかにする目的で行った。
方法
患者Bリンパ球より樹立したリンパ芽球と患者皮膚繊維芽細胞を材料とした。[<SUP>3</SUP>H]−標識ミリスチン酸、パルミチン酸とオレイン酸を用いて細胞の脂肪酸β酸化能を対照細胞のそれと比較した。細胞ライゼート中のαおよびβ−ETFをウエスタンブロット法にて患者、対照細胞で比較した。αおよびβ−ETFの遺伝子の全エクソンと隣接イントロンをGenBankの情報に基づき、PCRで増幅し、直接シークエンスを行った。ETF−QOに関しては全翻訳領域を挟むRT−PCRを行った後、直接シークエンスを行った。同時にPAC human genomic libraryよりETF−QOの全翻訳領域を含むクローンを単離したETF−QO遺伝子のゲノム構造を明らかにした後、患者、家族および健常対照者のゲノムを用いたETF−QO遺伝子解析を行った。解析はインフォームドコンセントを得て行われ、倫理委員会で承認された。
【0019】
症例
症例は診断時2生月の男児で妊娠分娩歴に異常がなく、いとこ婚の両親の間に生まれた。同胞7名中2名の兄が精神運動発達遅滞を呈し幼児期に死亡している。本児は哺乳力低下、筋力低下で発症し、注入栄養で著しい脂肪肝をきたし、集中治療を要した。その後も精神運動発達遅滞が認められたが、3歳時突然死した。患者の尿中2−水酸化グルタル酸、エチルマロン酸やグルタル酸は著増しており、また発症時期等よりGAIIと化学診断した(Hirose S. 他、Acta Paediatr 89 : 887-887, 2000)。
【0020】
成績
患者リンパ芽球の脂肪酸β酸化能は正常に比べ低下しており、GAIIの化学診断を支持した。ウエスタンブロット法では患者細胞中のαおよびβ−ETFに質的、量的な異常を見出さなかった。同様にαおよびβ−ETFの遺伝子に異常はなかった。RT−PCRによって得られたETF−QOのmRNAのサイズや発現に差は認められなかったが、患者のcDNAの1519位におけるチミン→グアニンの変異を見出した。本変異は507番目のアミノ酸Tyrのコドンの1番目に位置しAspへのアミノ酸変異をもたらすミスセンス変異で患者はホモ接合体として有していると思われた。家族および患者のゲノム解析を行ったところ、両親と同胞のうち3人が本変異をヘテロ接合体として有しており、患者はホモ接合体であることを確認した。解析した範囲内のETF−Qに他の変異はなかった。本変異により生じる制限酵素BamHI切断を利用した健常対照者100人由来のゲノム解析では本変異は見出されなかった。
【0021】
結論
患児はαおよびβ−ETFに異常がなく、ETF−QO遺伝子における1519位のt→g塩基変異(507位のTyr→Aspアミノ酸変異)をホモ接合体として有していた。さらに、507位のTyrは種を越え、ETF−QOファミリーに保存されていること、健常対照者由来の200アレルに同変異がなかったことにより、1519位のt→g塩基変異(507位のTyr→Aspアミノ酸変異)を遅発型GAIIをもたらす新規のETF−QO遺伝子異常と判断した。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、GAIIの病因遺伝子となる新規なETF−QO変異遺伝子と、それを利用するGAIIの診断方法を提供するものであり、遺伝子レベルでのGAIIの早期診断の発展に資することができる。
【0023】
【配列表】
Claims (7)
- 電子伝達フラビン蛋白脱水素酵素をコードする遺伝子のポリヌクレオチドであって、配列番号1のDNA配列において第1519位のt(チミン)がg(グアニン)に塩基置換しているポリヌクレオチドまたはその相補配列からなるポリヌクレオチド。
- 請求項1のポリヌクレオチドの一部であって、配列番号1の第1519位置換塩基gを含む20〜100の連続したDNA配列から成るオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであって、前記塩基置換部位を検出することができるオリゴヌクレオチド。
- 請求項1のポリヌクレオチドとその相補配列からなる二本鎖ポリヌクレオチド、または請求項1のポリヌクレオチドから転写されるmRNAをPCR増幅するためのプライマーセットであって、一方のプライマーが配列番号1の第1519位置換塩基gを含む15〜30の連続したDNA配列またはその相補配列からなり、前記塩基置換部位を検出することができるオリゴヌクレオチドであるプライマーセット。
- 請求項1のポリヌクレオチドにコードされるか、または該ポリヌクレオチドの発現によって得られるポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列において、第507位のTyr(チロシン)がAsp(アスパラギン酸)にアミノ酸置換されているポリペプチド。
- 請求項4のポリペプチドの一部であって、配列番号2の第507位置換アミノ酸Aspを含む5〜30の連続したアミノ酸配列からなるオリゴペプチド。
- 請求項2のオリゴヌクレオチドを標識化したことを特徴とするDNAプローブ。
- 請求項2のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とするDNAチップ。
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