JP2004512842A - インスリン遺伝子の5’隣接領域におけるアリル変異および体脂肪に基づく、インスリン非依存型糖尿病のリスク評価方法 - Google Patents

インスリン遺伝子の5’隣接領域におけるアリル変異および体脂肪に基づく、インスリン非依存型糖尿病のリスク評価方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、患者のインスリンHphI座および体脂肪値の両方を調べることによって、被験者においてインスリン非依存型糖尿病(NIDDMまたはII型糖尿病)の発症リスクを決定する方法を特徴とする。関連する局面では、本発明はNIDDMの亜型を診断する方法、ならびにNIDDM患者の合理的な治療および管理を容易にするのための方法を特徴とする。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は真性糖尿病の診断および予後診断、ならびに臨床試験の包含基準の確立方法に関する。
【0002】
発明の背景
真性糖尿病は世界中で1億人以上もの患者がいる深刻な疾病である。米国では、1200万人を超える患者があり、毎年60万人超える患者が新しく診断される。
【0003】
真性糖尿病はブドウ糖のホメオスタシスの異常によって血糖値が上昇するという特徴を持つ一群の障害の診断用語である。糖尿病には多くの種類があるが、最も一般的なのはI型(インスリン依存型糖尿病またはIDDMとも呼ばれる)およびII型(インスリン非依存型糖尿病またはNIDDMとも呼ばれる)である。
【0004】
異なる種類の糖尿病の原因は同じではない。しかし、すべての糖尿病患者には2つの共通点がある:肝臓におけるブドウ糖の過剰生産、およびブドウ糖が血中から体の主要な燃料になる細胞へ、ブドウ糖を移動させる能力が、ほとんどまたは全く欠如していること。
【0005】
糖尿病でない人では、膵臓で生産されるホルモンであるインスリンが、血中から何十億という体の細胞へブドウ糖を運搬する。しかし、糖尿病患者の場合は、インスリンを生産できないか、または生産したインスリンを効率的に使用できないので、ブドウ糖を細胞へ運搬できない。血中にブドウ糖が蓄積すると、高血糖と呼ばれる状態になり、時間が経つ深刻な健康上の問題を生じうる。
【0006】
糖尿病は代謝、血管、および神経障害的な要素が相互に関連した症候群である。一般に高血糖という特徴を持つ代謝症候群は、欠如または著しく低下したインスリン分泌、および/または非効率的インスリン作用によって引き起こされる、炭化水素、脂肪、および蛋白質代謝の変化を含む。血管症候群は、心血管、網膜、および腎臓の合併症を引き起こす血管の異常からなる。末梢および自律神経系の異常も糖尿病症候群の一部である。
【0007】
IDDMの患者は、糖尿病患者の約5−10%を占めるが、インスリンを生産しないため、血糖値を正常に保つためにインスリンの注射が必要となる。IDDMは膵臓のインスリン生産β細胞が破壊されているために内因性のインスリン生産レベルが低いまたは検出できないという特徴を持ち、これはIDDMをNIDDMから最も容易に区別できる特徴である。以前は若年発症型糖尿病とも呼ばれたIDDMは、若年と高齢の成人に同様に発症する。
【0008】
糖尿病患者の90−95%はII型(またはNIDDM)である。NIDDM患者はインスリンを生産するが、体の細胞がインスリン抵抗性である。このホルモンに対して細胞が正しく応答しないため、ブドウ糖が血中に蓄積する。NIDDMは、内因性のインスリン生産とインスリン必要量が相対的に不釣り合いなために、血糖値レベルが上昇するという特徴を持つ。IDDMと異なり、NIDDMでは、常にいくらかの内因性のインスリン生産がある。多くのNIDDM患者は血中インスリンレベルは正常または高いが、NIDDM患者の中にはインスリン生産が不十分な患者もいる(Rotwein, P.ら、N Engl J Med. 308、65−71 (1983))。NIDDMと診断される患者の大部分は30歳またはそれ以上で、新症例の半分は55歳またはそれ以上である。白人およびアジア人と比較すると、NIDDMはアメリカ先住民、アフリカ系アメリカ人、ラテン系アメリカ人、ヒスパニックにより共通して見られる。さらに、発症は潜伏性、または臨床的に不顕性であるので、診断は困難な場合がある。
【0009】
NIDDMの原発性の病原性病変は、とらえにくい。多くの研究者は末梢組織の原発性インスリン抵抗性が、最初の現象であると示唆している。遺伝的な疫学研究は、この見解を支持している。同様に、NIDDMではインスリン分泌の異常が、原発性の欠陥であるとも主張されてきた。NIDDMの発症においてはこの両方の現象が重要である可能性が高く、この両方を生じやすい遺伝的欠陥は、疾病の過程に重要な寄与をする可能性が高い(Rimoin, D.L.ら、EmeryおよびRimoinの遺伝医学の原理と実際(Emery and Rimoin’s Principles and Practice of Medical Genetics) 第3版、1:1401−1402 (1996))。
【0010】
家族的集団および双生児の研究結果では、糖尿病の病因における遺伝的要素の重要性は明らかであるが、関与する遺伝的要素の性質については、意見の一致があまりない。この混乱は主に、糖尿病に存在することが既知である遺伝的不均一性のためである。
【0011】
インスリン遺伝子、インスリン受容体遺伝子、およびインスリン感受性グルコーストランスポーター(GLUT 4)遺伝子を含む、いくつかの候補遺伝子の、NIDDMの病因における可能性のある役割が検討されてきたが、だいたいは相反する結果が得られている。初期の研究では、ヒトの11番染色体の短腕上のインスリン遺伝子の5’隣接領域に、制限酵素断片長多型(RFLP)が同定された。この領域は、インスリンのmRNA転写開始部位の約500塩基対上流から始まっており、インスリン遺伝子の発現を調節すると考えられる。この多型は、様々な縦列反復数の(VNTR)配列によって生成する。白人では、VNTRはクラスI(0−600 bpのサイズ)およびクラスIII(1600−2400 bpのサイズ)のアリルに分けられうる(Bell G.I.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1981; 78:5759−63)。これらのアリルは、RFLP分析を用いて容易に同定できる。HphI座の「+」アリル(T)(「+」はその部位が制限酵素で切断されることを示す)は、隣接するインスリンVNTRのクラスIアリルと完全な連鎖不平衡にあり、「−」アリルはクラスIIIアリルと完全な連鎖不平衡にある。クラスIアリルおよびクラスIIIアリルは、オウワーバッハ(Owerbach D.)、ポールセン(Poulsen, S.)ら、Lancet 1:880−883 (1982)により、それぞれ「L」アリルおよび「U」アリルとも呼ばれる。さらに染色体11p15.5に19個の多型が同定されているが(Lucassen, A.M.ら、Nature Genet. 4、305−310 (1993))、この開示はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。このゲノム領域には、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、インスリン様成長因子II (IGG2)およびインスリン遺伝子が含まれる。
【0012】
オウワーバッハ(Owerbach D.)ら(Lancet 1:880−883 (1982)は、6人の糖尿病患者を含む53人の大家族において、インスリン遺伝子の5’隣接領域の制限酵素断片長多型(RFLP)分析を行なった。大きい方の(クラスIII)アリルと、加齢に伴う空腹時グルコースレベルの上昇およびインスリン応答の低下との間に、関連が見つかった。したがって、オウワーバッハらは、大きい方のアリルはNIDDM感受性の遺伝子マーカーであると見出した。同様に、ロットウェイン(Rotwein, P.)ら(N Engl J Med. 308:65−71 (1983))は、非糖尿病患者よりも、NIDDM患者において長い挿入がより頻繁にあることを見いだし、インスリン遺伝子の5’隣接領域における多型(長さの差)がNIDDMの遺伝子マーカーを提供する可能性があると結論づけた。しかし、パーマット(Permutt, A.)ら(Diabetes. 34:311−314 (1985))は、同様な実験を行ない、インスリン遺伝子多型状態に対して、非糖尿病患者とNIDDM患者では、空腹時インスリン、ブドウ糖濃度、またはインスリン分泌応答に差がないことを見出した。したがって、インスリン遺伝子の5’隣接領域におけるアリル変異を、NIDDMに結びつけようという研究結果は、相反するものであり、決定的ではない。
【0013】
NIDDM患者の多くは、座業的なライフスタイルを持ち、肥満である。身長および体格を考慮した推奨体重を少なくとも20%超過している。さらに、肥満は高インスリン血症およびインスリン抵抗性という特徴を持つが、これはNIDDM,高血圧、およびアテローム性動脈硬化とも共通する特徴である。上半身肥満(中心性)および高インスリン血症の分子遺伝学を探るために、ウィーバー(Weaver, J.U.)ら(Eur J Clin Invest. 22:265−270 (1992))は、56人の重度肥満、非糖尿病女性において、インスリン遺伝子RFLPと人体計測的測定およびインスリン分泌と抵抗性の指標との関連を調べた。ウィーバーらは、クラスIIIアリルが、中心性肥満、空腹時高インスリン血症、インスリン分泌の刺激、およびインスリン抵抗性と関連することを発見した。したがって、彼らはインスリン遺伝子の5’隣接領域の多型が、遺伝子発現に影響を与え、それによって重度肥満の女性患者におけるインスリン生産を変化させることができると結論づけた。しかし、低出生体重およびNIDDMを持つ218人の男性におけるインスリンVNTRを分析した研究、オング(Ong, K.K.L)ら、(Nature Genet. 21:262−263 (1999))では、インスリンVNTRおよび出生体重は、NIDDMのリスクに独立した影響を持つことを見いだした。肥満とNIDDMとの関係を明らかにしようという試みは、また相反する結果を生じ、糖尿病の遺伝的要素を探るための新しい手段が必要であった。
【0014】
NIDDMの遺伝学の研究の最も問題となる局面は、おそらくこの疾病の根底にある、病因の高度な不均一性である。遺伝的欠陥は、ブドウ糖の調節に関与する多くの段階のいずれにも影響を与える可能性がある。これらの欠陥はそれぞれ、単独または他の欠陥と組み合わさって、NIDDMを引き起こす可能性がある。そのような病因の複雑さによって、遺伝的研究が不可能になるわけではないが、病因の高度な不均一性は、特定の病原機構を理解するためには、ブドウ糖不耐性という総体的表現型よりも具体的なレベルで生理的「欠陥」を測定できなけらばならないことを意味する(Raffelら、「エメリーとリモインの遺伝医学の原理と実際(Emery and Rimoin’s Principles and Practice of Medical Genetics)」 第3版、1421 (1996))。測定可能な生理的欠陥または前兆についてのこのような例の1つは、本明細書で考察される肥満である。
【0015】
肥満と糖尿病は、工業化社会で最も広く見られる健康問題である。工業化諸国では、人口の3分の1が少なくとも20%過体重である。米国では、肥満人口は70年代末の25%から90年代初期の33%までに増加した。肥満はNIDDMの最も重要な危険因子の1つである。肥満の定義には色々あるが、一般に、身長と体格を考慮した推奨体重よりも少なくとも20%超過すると肥満と考えられる。30%体重超過するとNIDDMの発症リスクは3倍になり、NIDDM患者の4分の3は過体重である。
【0016】
摂取カロリーとエネルギー消費の間の不均衡の結果である肥満は、実験動物およびヒトにおいて、インスリン抵抗性および糖尿病と高い相関がある。しかし、肥満・糖尿病症候群に関与する分子機構は明らかではない。肥満の初期段階では、インスリン分泌の上昇がインスリン抵抗性とつり合い、患者の高血糖を予防する(Le Stunffら、Diabetes. 43、696−702 (1994))。しかし、数十年すると、β細胞の機能が低下し、肥満人口の約20%でインスリン非依存型糖尿病が発症する(Pedersen, P.、Diab. Metab. Rev. 5、505−509 (1989))および(Brancati, F.L.ら、Arch Intern Med. 159、957−963 (1999))。現代社会に肥満が多いことを考慮すると、肥満はNIDDMの最大のリスクになっている(Hill, J.O.ら、Science. 280、1371−1374 (1998))。しかし、患者の一部が、脂肪の蓄積に応答してインスリン分泌の変化を生じることの素因になる要素は不明である。
【0017】
肥満は心血管疾患の発症リスクも上昇させる。冠不全、アテローム疾患、および心不全は、肥満によって誘導される心血管合併症の中心である。全人口が理想体重を保っていたら、冠不全のリスクは25%低下し、心不全と脳血管発作のリスクは35%低下すると見られている。30%過体重の50歳未満の被験者では、冠動脈疾患の発症率は、倍になる。糖尿病患者の寿命は30%低下している。45歳以降では、糖尿病患者は非糖尿病患者よりも、重大な心疾患を持つ可能性が約3倍、脳卒中の可能性が5倍までになる可能性がある。これらの所見は、NIDDMと冠動脈性心疾患の危険因子の間の相関、および肥満予防に基づいてこのような状態を予防する統合的な手法の潜在的価値を強調するものである(Perry, I.J.ら、BMJ. 310、560−564 (1995))。
【0018】
糖尿病は腎疾患、眼疾患、および神経系の異常の発生にも関与している。腎症とも呼ばれる腎疾患では、腎臓の「濾過機構」が損なわれ、過剰量の蛋白質が尿中に漏れ出て起こり、最終的に腎臓が機能不全に陥る。糖尿病はまた、目の後ろ側の網膜の障害の最大の原因となり、白内障および緑内障のリスクを上昇させる。最後に、糖尿病は特に脚および足における神経障害に関連しており、これにより痛みを感じる能力が損なわれ、重篤な感染が起きる。これらを合わせると、糖尿病の合併症は、米国における死亡原因の第1位になる。
【0019】
現在、糖尿病は治癒できないが、疾病の管理はできる。NIDDMの既存の治療法は長年の間、実質的に変わってはいないが、これらにはすべて限界がある。身体の運動および摂取カロリーの減少によって糖尿病の状態は劇的に改善するが、座業的なライフスタイルや食物の過剰摂取、特に高脂肪食物が定着しているため、この治療法のコンプライアンスは非常に悪い。膵臓β細胞のインスリン分泌を刺激するスルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリピジド)の投与により、またはスルホニル尿素へ応答しなくなった後にはインスリン注射により、インスリンの血漿濃度を上昇させると、インスリン抵抗性組織を刺激するために十分なインスリン濃度が得られる。しかし、これらの2つの治療法により、血漿ブドウ糖値レベルが危険なほど低くなる可能性があり、またより高い血漿インスリンレベルのおかげでインスリン抵抗性が理論的には高まる可能性もある。ビグアニドはインスリン感受性を高め、高血糖がある程度矯正される。しかし、フェンホルミンとメトホルミンの2つのビグアニドは、それぞれ乳酸性アシドーシスおよび悪心/下痢を誘導し得る。
【0020】
発明の概要
本発明は患者のインスリンHphI座および体脂肪値の両方を調べることによって、患者のインスリン非依存型真性糖尿病(NIDDMまたはII型糖尿病)の発症リスクを決定する方法を特徴とする。関連する局面では、本発明はNIDDMの亜型を診断する方法、およびNIDDM患者の合理的な治療法および維持を容易にする方法を特徴とする。
【0021】
本発明は、インスリン遺伝子のHphI座の同型接合体および体脂肪測定を合わせると、NIDDMの感受性の良好な指標になるという発見の結果である。発明者は、肥満の少年少女における肥満とインスリンレベルの間の関係に対するHphI遺伝型の影響を調べ、HphI [+/+]同型接合体(インスリンVNTR I/I)が、同等の肥満症のHphI [+/−]または[−/−]遺伝型(それぞれインスリンVNTR I/IIIおよびインスリンVNTR III/III)である少年少女よりも、インスリンとBMIとの間に強い相関を示すことを発見した。したがって、HphI [+/−]または[−/−]遺伝型を持つ肥満個体は、HphI [+/+]遺伝型を持つ肥満個体よりも、NIDDMを有意に発症しやすい。
【0022】
第1の態様では、本発明はa) 個体のインスリンHphI座との連鎖不平衡における少なくとも1つのマーカーの多型の塩基のアイデンティティを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) 該マーカーアイデンティティ、該体脂肪値、ならびに 該アイデンティティ、該体脂肪値、および 該NIDDM発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、リスク値を割り当てる段階を含む、個体におけるNIDDMの発症リスクの決定方法を特徴とする。別の局面では、本発明はa) 個体のインスリン遺伝子のVNTRクラスを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) 該VNTRクラス、該体脂肪値、ならびに 該VNTRクラス、該体脂肪値、および 該NIDDM発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、リスク値を割り当てる段階を含む、個体におけるNIDDMの発症リスクの決定方法を特徴とする。さらに別の局面では、本発明はa) 個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、該マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にある該マーカーの遺伝子型同定をする段階;b) 個体のゲノムに存在する第2のマーカーの両方のコピーについて、該第2の 遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、該第2の マーカーの遺伝子型同定をする段階;c) 個体の体脂肪値を決定する段階;およびd) 段階a)およびb)の 該アイデンティティ、段階c)の 該体脂肪値、ならびに 該アイデンティティ、該体脂肪値、および 該NIDDM発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、リスク値を割り当てる段階を含む、個体におけるNIDDMの発症リスクの決定方法を特徴とする。さらに、個体におけるNIDDMの発症リスクの決定方法は、本開示または以下に単独または任意の組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、マーカーにおける多型塩基のアイデンティティは、個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて決定される。選択的に、インスリン遺伝子のVNTRクラスは、該個体のゲノムに存在するVNTRの両方のコピーについて決定される。選択的に、第2の該マーカーはインスリンHphI座と連鎖不平衡にある。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡の該マーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0023】
第2の態様では、本発明はa) 個体のインスリンHphI座との連鎖不平衡における少なくとも1つのマーカーの多型の塩基のアイデンティティを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) 該マーカーアイデンティティ、該体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびNIDDMの特定の亜型を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づいて、亜型を割り当てる段階を含む、個体のNIDDMの亜型を診断する方法を特徴とする。別の局面では、本発明はa) 個体のインスリン遺伝子のVNTRクラスを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) 該VNTRクラス、該体脂肪値、および該VNTRクラス、該体脂肪値、ならびにNIDDMの特定の亜型を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づいて、亜型を割り当てる段階を含む、個体のNIDDMの亜型を診断する方法を特徴とする。さらに別の局面では、本発明はa) 個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、該マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にある該マーカーの遺伝子型同定をする段階;b) 個体のゲノムに存在する第2のマーカーの両方のコピーについて、第2の遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、該第2のマーカーの遺伝子型同定をする段階;c) 該個体の体脂肪値を決定する段階;およびd) 段階a)およびb)の該アイデンティティ、段階c)の該体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびNIDDMの特定の亜型を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づいて、亜型を割り当てる段階を含む、個体のNIDDMの亜型を診断する方法を特徴とする。さらに、個体のNIDDMの亜型を診断する方法は、本開示または以下に単独または任意の組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、該マーカーにおける多型塩基の該アイデンティティは、該個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて決定される。選択的に、インスリン遺伝子の該VNTRクラスは、該個体のゲノムに存在する該VNTRの両方のコピーについて決定される。選択的に、該第2のマーカーはインスリンHphI座と連鎖不平衡にある。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡の該マーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0024】
第3の態様では、本発明は、本発明の予後診断法、ならびに食事制限、カロリー消費の増加、胃腸管手術、薬物療法、および食物脂質の吸収低下からなる群より選択される減量療法の実施を含む、個体のNIDDMの治療または予防方法を特徴とする。また、個体のNIDDMの治療または予防方法は、本開示または以下に単独または任意の組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。
【0025】
第4の態様では、本発明はa) 個体のインスリンHphI座との連鎖不平衡における少なくとも1つのマーカーの多型の塩基のアイデンティティを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) 該マーカーアイデンティティ、該体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびインスリン関連疾患を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づいて、個体を含める段階を含む、インスリン関連疾患の臨床または相関解析における選択方法を特徴とする。別の局面では、本発明はa) 個体のインスリン遺伝子のVNTRクラスを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) 該VNTRクラス、該体脂肪値、および該VNTRクラス、該体脂肪値、ならびにインスリン関連疾患を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づく試験において、個体を含める段階を含む、インスリン関連疾患の臨床または相関解析における選択方法を特徴とする。さらに別の局面では、本発明はa) 各個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、該マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーの遺伝子型同定をする段階;b) 個体のゲノムに存在する該第2のマーカーの両方のコピーについて、該第2の遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、該第2のマーカーの遺伝子型同定をする段階;c) 該個体の体脂肪値を決定する段階;およびd) 段階a)およびb)の該アイデンティティ、段階c)の該体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびインスリン関連疾患を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づく試験において、個体を含める段階を含む、インスリン関連疾患の臨床または相関解析のための個体を同定する方法を特徴とする。さらに、この態様の方法は、本開示または以下に単独または任意の組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、該マーカーにおける多型塩基の該アイデンティティは、該個体のゲノムに存在する該マーカーの両方のコピーについて決定される。選択的に、インスリン遺伝子の該VNTRクラスは、該個体のゲノムに存在する該VNTRの両方のコピーについて決定される。選択的に、該第2のマーカーはインスリンHphI座と連鎖不平衡にある。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡の該マーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡の該マーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0026】
第5の態様では、本発明はa) 該患者群の各個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、該マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にある該マーカーの遺伝子型同定をする段階;b) 該患者群の各個体のゲノムに存在する第2のマーカーの両方のコピーについて、該第2の遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドを同定することにより、該第2のマーカーの遺伝子型同定をする段階;およびc)段階a)およびb)で決定されたヌクレオチドのアイデンティティにハプロタイプ決定法を適用し、該頻度の推定を行なう段階を含む、若年性肥満患者群における遺伝子マーカーセットに関するハプロタイプの頻度の推定方法を含む。さらに、本発明のハプロタイプ頻度の推定方法は、本開示または以下に単独または任意の組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、該ハプロタイプ決定法は、非対称PCR増幅、特定のアリルの二重PCR増幅、クラーク法、または期待値最大化アルゴリズムからなる群より選択される。選択的に、第2のマーカーはインスリンHphI座と連鎖不平衡にある。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡の該マーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0027】
第6の態様では、本発明は、a) 本発明のハプロタイプの頻度の推定方法にしたがって、インスリン関連疾患の患者群における少なくとも1つのハプロタイプの頻度を推定する段階;b) 本発明のハプロタイプの頻度の推定方法にしたがって、対照群における該ハプロタイプの頻度を推定する段階;ならびにc) 該ハプロタイプと該インスリン関連疾患の間に統計的に有意な関連があるかどうかを決定する段階を含む、該ハプロタイプと該インスリン関連疾患との間の関連を検出する方法を含む。さらに、本発明のハプロタイプと形質の間の関連の検出方法は、本開示または以下に単独または任意の組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、該インスリン関連疾患は高インスリン血症または高インスリン血症の素因である。選択的に、該ハプロタイプは、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーからなり、これは表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、該ハプロタイプはインスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーからなり、これはさらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明を説明する前に、本発明は記述された特定の方法に制限されず、当然変わり得ることを理解する必要がある。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的のためのみであり、添付する請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を制限する意図はないことも理解する必要がある。
【0029】
本明細書および添付の請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示す場合以外は、指示対象の複数形も含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「個体」は1人または複数の個体を含み、「その方法」は当業者に周知の同等な段階および方法を含む。
【0030】
他に記載がないかぎり、本明細書中のすべての専門的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されているものと同じ意味を持つ。本発明の実施または試験には、本明細書に記載したものと類似または同等の任意の方法および材料が使用できるが、本明細書中には好ましい方法および材料が記載されている。本明細書中に引用される全ての出版物は、その出版物が引用された特定の方法および/または材料を開示および説明するために、参照として本明細書に組み入れられる。
【0031】
本明細書で開示される出版物は、本出願の出願日以前のその開示のためのみに提供される。本明細書において、本発明が先行発明があるためにかかる出版物に先行する資格がないと認めるものであると、解釈することはできない。さらに、提供される出版物の日付は、実際の出版日とは異なる可能性があり、これは独立して確認する必要がある。
【0032】
定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明を説明するために使用する用語の意味および範囲を説明および定義するために、以下の定義を定める。
【0033】
本明細書で使用される「インスリン遺伝子」という用語は、ゲノムDNAの非翻訳調節領域を含め、ポリペプチドホルモンインスリンをコードするゲノム、mRNA、およびcDNA配列を含む。
【0034】
「単離された」という用語は、その物質が元の環境(例えば、天然に存在するもの場合には、天然の環境)から除去されていることを必要とする。例えば、生きている動物中に存在する天然のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチドまたはDNAまたはポリペプチドが天然系において共存する物質の一部または全てから分離されている場合には、単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部、および/またはそのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であっても、ベクターまたは組成物がその天然環境の一部ではないという点で、やはり単離されているといえる。
【0035】
「単離された」という用語は、さらにその物質が元の環境(例えば、天然に存在するもの場合には、天然の環境)から除去されていることを必要とする。例えば、生きている動物中に存在する天然のポリヌクレオチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチドが天然系において共存する物質の一部または全てから分離されている場合には、単離されている。インビトロ核酸調製物またはトランスフェクト/形質転換された宿主細胞調製物として存在する、天然に存在する染色体(染色体スプレッド(spread)など)、人工染色体ライブラリー、ゲノムライブラリー、およびcDNAライブラリーで、宿主細胞がインビトロの不均一調製物であるか、単一コロニーの不均一集団として播種されたものは、「単離された」という定義から特に除外される。また、本発明の特定のポリヌクレオチドが、ベクター分子中の核酸挿入断片の数の5%未満である上述ライブラリーも特に除外される。さらに全細胞ゲノムDNAまたは全細胞RNA調製物(機械的剪断または酵素消化した全細胞調製物を含む)も、除外される。さらに、インビトロ調製物または電気泳動(そのブロットトランスファーを含む)によって分離された不均一混合物としての上述の全細胞調製物で、本発明のポリヌクレオチドが電気泳動媒体中の不均一ポリヌクレオチドからさらに分離(例えば、アガロースゲルまたはナイロンブロット中の不均一バンド群から単一のバンドを切り出すことによるさらなる分離)されていないものも、除外される。
【0036】
「精製された」という用語は、絶対的純度を必要とはせず、むしろ、相対的な定義である。開始物質または天然物質の、少なくとも1桁、好ましくは2−3桁、およびさらに好ましくは4桁または5桁の精製が、予期されている。例えば、濃度0.1%から濃度10%への精製は、2桁の精製である。本明細書では「精製ポリヌクレオチド」という用語は、他の核酸、炭化水素、脂質、および蛋白質(ポリヌクレオチドの合成に使用された酵素など)を含むがこれらに限定されない他の化合物から分離された、本発明のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドベクター、または線状ポリヌクレオチドからの共有結合で閉じたポリヌクレオチドの分離を指す。試料の少なくとも50%、好ましくは60−75%が単一のポリヌクレオチド配列および構造(線状か共有結合で閉じているか)を示す場合に、ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。実質的に純粋なポリヌクレオチドは、典型的には核酸試料の約50%w/w、好ましくは60−90%w/w、より普通には約95%、および好ましくは約99%以上、純粋である。ポリヌクレオチドの純度および均一性は、試料のアガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動後にゲル染色で単一ポリヌクレオチドバンドを可視化することなど、当技術分野で周知のいくつもの手段により、示される。特定の目的のためには、HPLCまたは当技術分野で周知の他の手段を用いて、より高い解像度が提供できる。
【0037】
「ポリペプチド」という用語は、ポリマーの長さには関わらず、アミノ酸のポリマーを指す。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、および蛋白質がポリペプチドの定義には含まれる。この用語は、ポリペプチドの発現後修飾を指定または排除しない。例えば、グリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基等の共有結合を含むポリペプチドは、ポリペプチドという用語に明らかに含まれる。また、アミノ酸類似体(例えば、非天然アミノ酸、無関係の生物系にのみ存在するアミノ酸、哺乳類系由来の修飾アミノ酸等を含む)、結合が置換されたポリペプチド、ならびに天然および非天然の当技術分野で周知の他の修飾を1つまたは複数含むポリペプチドも、この定義に含まれる。
【0038】
本明細書で使用される「組換えポリペプチド」という用語は、もとの天然環境では隣接するポリペプチド配列としては見られない、少なくとも2つのポリペプチド配列を含む、人工的に設計されたポリペプチドを指すか、組換えポリヌクレオチドから発現されたポリペプチドを指す。
【0039】
本明細書で使用される「精製ポリペプチド」という用語は、核酸、脂質、炭化水素、および他の蛋白質を含むがこれらに限定されない他の成分から分離された本発明のポリペプチドを指す。ポリペプチドは、試料の少なくとも約50%、好ましくは60−75%が単一のポリペプチド配列を示す場合に、実質的に純粋である。実質的に純粋なポリペプチドは、典型的には蛋白質試料の約50%w/w、好ましくは60−90%w/w、より普通には約95%、および好ましくは約99%を超える割合で、純粋である。ポリペプチドの純度および均一性は、試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動後にゲル染色で単一ポリペプチドバンドを可視化することなど、当技術分野で周知のいくつもの手段により、示される。特定の目的のためには、HPLCまたは当技術分野で周知の他の手段を用いて、より高い解像度が提供できる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「非ヒト動物」という用語は、任意の非ヒト脊椎動物、鳥類およびより普通には哺乳類、好ましくは霊長類、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、およびウマのような家畜、ウサギ、または齧歯類、より好ましくはラットまたはマウスを指す。本明細書では「動物」という用語は、任意の脊椎動物、好ましくは哺乳類を指す。「動物」および「哺乳類」という用語のいずれも、前に「非ヒト」という言葉がついていなければ、明らかにヒトも含む。
【0041】
本明細書全体を通して「ヌクレオチド配列」という表現は、ポリヌクレオチドまたは核酸を指すために区別なく使用される。より正確には、「ヌクレオチド配列」という表現は、核酸物質自身を含み、特定のDNAまたはRNA分子を生化学的に特徴づける配列情報(4つの塩基文字から選択された文字の並び)に限定されない。
【0042】
本明細書では互換的に使用される「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、および「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖の形の、1ヌクレオチドを超えるRNA、DNA、またはRNA/DNAハイブリッド配列を含む。本明細書で使用される「ヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖の形の任意の長さのRNA、DNA、またはRNA/DNAハイブリッド配列を含む分子を記述する形容詞である。本明細書では「ヌクレオチド」という用語は、個々のヌクレオチドまたはヌクレオチド変種を指す名詞としても使用され、プリンまたはピリミジン、リボースまたはデオキシリボース糖部分、およびリン酸基、またはオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド内のヌクレオチドの場合にはリン酸ジエステル結合を含む、より大きな核酸分子中の個々のユニット、または1つの分子を意味する。しかしながら「ヌクレオチド」という用語は本明細書では、少なくとも1つの修飾、(a) 別の結合基、(b) プリンの類似型、(c) ピリミジンの類似型、または (d) 糖類似体を含む「修飾ヌクレオチド」を含む。結合基、プリン、ピリミジン、および糖の類似体の例は、国際公開公報第95/04064号参照。本発明のポリヌクレオチド配列は、合成、組換え、エクスビボ生成、またはその組み合せを含む任意の既知の方法、ならびに当技術分野で周知の任意の精製方法を用いて調製できる。
【0043】
「プロモーター」は遺伝子の特異的転写を開始するために必要な、細胞の合成機構によって認識されるDNA配列を指す。
【0044】
プローモーターのような調節配列に「機能的に連結した」配列は、調節配列がRNAポリメラーゼ開始および対象核酸の発現を制御するために、核酸に対して正しい位置および方向にあることを意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「機能的に連結した」という用語は、機能的な関係にあるポリヌクレオチド要素の連結を指す。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を与える場合に、そのコード配列に機能的に連結している。より正確には、2つのDNA分子(プロモーター領域を含むポリヌクレオチドおよび所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)は、2つのポリヌクレオチドの連結の性質が、(1) フレームシフト変異を導入しない、または (2) プロモーターを含むポリヌクレオチドの、コードしているポリヌクレオチドの転写を指示する能力に干渉しない場合に、「機能的に連結している」と言われる。
【0046】
「プライマー」という用語は、標的ヌクレオチド配列に相補的で、標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズするために使用される、特異的なオリゴヌクレオチド配列を指す。プライマーは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、または逆転写酵素によって触媒されるヌクレオチド重合の開始点となる。
【0047】
「プローブ」という用語は、試料中に存在する特異的なポリヌクレオチド配列を同定するために使用できる定義された核酸セグメント(またはヌクレオチド類似体セグメント、例えば、本明細書で定義されるポリヌクレオチド)で、同定され特異的なポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を持つ核酸セグメントを指す。
【0048】
「形質」および「表現型」という用語は本明細書では互換的に使用され、例えば疾病の症状または感受性のような、生物体の任意の可視的、検出可能、または測定可能な性質を指す。本明細書では「形質」または「表現型」という用語は、疾病の症状またはその感受性、治療に対する有益な応答またはその副作用を指す。好ましくは、形質は、肥満関連の疾病および/または真性糖尿病であるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書では「アリル」という用語は、ヌクレオチド配列の変種を指す。2アリル性の多型には、2つの形がある。二倍体生物は、アリルの形について、同型接合または異型接合であり得る。
【0050】
本明細書では「異型接合率」という用語は、集団中で、特定のアリルが異型接合である個体の出現率を指す。2アリル系では、異型接合率は平均で2P(1−P)に等しく、ここでPは少ない方の共通のアリルの頻度である。遺伝子マーカーは、遺伝学研究に有用であるために、適当な確率を可能にするために無作為に選択された個体が異型接合であるような、適切な異型接合率を持つ必要がある。
【0051】
本明細書で使用される「遺伝型」という用語は、個体または試料中に存在するアリルのアイデンティティを指す。本発明の状況では、遺伝型は好ましくは個体または試料中に存在する遺伝子マーカーアリルの記述を指す。遺伝子マーカーに関する試料または個体の「遺伝子型同定」には、遺伝子マーカーにおいて、個体が持っている特定のアリルまたは特定のヌクレオチドを決定することが含まれる。
【0052】
本明細書で使用される「変異」という用語は、異なるゲノムまたは個体の間における、DNA配列の差で、頻度が1%未満のものを指す。
【0053】
「ハプロタイプ」という用語は、個体または試料中に存在するアリルの組み合せを指す。本発明の状況では、ハプロタイプは好ましくは特定の個体中に見られる遺伝子マーカーの組み合せで、表現型と関連する可能性のあるものを指す。
【0054】
本明細書で使用される「多型」という用語は、異なるゲノムまたは個体の間で、2つまたはそれ以上の別のゲノム配列またはアリルが存在することを指す。「多型」とは、1つの集団に見出される特定のゲノム配列の2つまたはそれ以上の変種が見られる状態を指す。「多型部位」とは、変種が起こる座位である。一塩基多型は、多型部位において、1つのヌクレオチドを別のヌクレオチドによって置換することである。一塩基の欠失または一塩基の挿入も、一塩基多型を生じる。本発明の状況では、「一塩基多型」は好ましくは一塩基の置換を指す。通常は、異なる個体の間で、多型部位は2つの異なるヌクレオチドが占める可能性がある。
【0055】
「2アリル多型」および「遺伝子マーカー」は本明細書では互換的に使用され、集団中でかなりの高頻度で2つのアリルを持つ一塩基多型を指す。「遺伝子マーカーアリル」とは、遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチド変種を指す。通常は、本発明の遺伝子マーカーの頻度の低い方のアリルの頻度は、1%を超え、好ましくは10%を超え、より好ましくは少なくとも20%(少なくとも0.32の異型接合率)、さらに好ましくは少なくとも30%(少なくとも0.42の異型接合率)であると確認されている。頻度の低いほうのアリルの頻度が30%またはそれ以上の遺伝子マーカーは、「高品質遺伝子マーカー」と呼ばれる。
【0056】
本発明は、インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーにも関する。「インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカー」という用語は、表Cに提供される遺伝子マーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIに関する。「インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカー」という用語は、当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0057】
ポリヌクレオチドの中央に関するポリヌクレオチドのヌクレオチド位置は、本明細書では以下の様に記載される。ポリヌクレオチドが奇数のヌクレオチドを持つ場合には、ポリヌクレオチドの3’末端および5’末端から等距離にあるヌクレオチドが、ポリヌクレオチドの「中央に」あると考えられ、中央にあるヌクレオチドに直接隣接する任意のヌクレオチド、または中央にあるヌクレオチド自身が「中央から1ヌクレオチド以内」である等と考えられる。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドが奇数であれば、ポリヌクレオチドの中央にある任意の5つのヌクレオチド位置は、中央から2ヌクレオチド以内である等と考えられる。ポリヌクレオチドが偶数のヌクレオチドを持つ場合には、ポリヌクレオチドの中央にはヌクレオチドではなく結合がある。したがって、2つの中央のヌクレオチドのいずれもが、「中央から1ヌクレオチド以内」と考えられ、ポリヌクレオチドの中央の4つのヌクレオチドのいずれかが「中央から2ヌクレオチド以内」である等と考えられる。1つまたは複数のヌクレオチドの置換、挿入、または欠失を含む多型の場合は、多型の置換、挿入、または欠失したポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの3’末端までの距離、および多型の置換、挿入、または欠失したポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの5’末端までの距離の差がゼロまたは1ヌクレオチドの場合に、多型、アリル、または遺伝子マーカーはポリヌクレオチドの「中央に」ある。この差が0−3の場合には、多型は「中央から1ヌクレオチド以内」にあると考えられる。この差が0−5の場合には、多型は「中央から2ヌクレオチド以内」にあると考えられる。この差が0−7の場合には、多型は「中央から3ヌクレオチド以内」にある等と考えられる。
【0058】
本明細書では「上流」という用語は、特定の参照点から、ポリヌクレオチドの5’末端方向の場所を指す。
【0059】
本明細書では「塩基対」および「ワトソン・クリック塩基対」は互換的に使用され、チミン残基またはウラシル残基が2つの水素結合でアデニン残基に結合し、シトシン残基が3つの水素結合でグアニン残基に結合している二重らせんDNA中と同様に、配列のアイデンティティのために互いに水素結合し得るヌクレオチドを指す(Stryer, L.、Biochemistry、第4版、1995参照)。
【0060】
本明細書では「相補的」または「その相補鎖」という用語は、相補的な領域全体を通して、別の特定のポリヌクレオチドとワトソン・クリック塩基対を形成する能力のある、ポリヌクレオチド配列を指す。本発明では、第1のポリヌクレオチド中の各塩基が、その相補的な塩基と対を作れば、第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドに相補的であると考えられる。一般的に、相補的な塩基は、AとT(またはAとU)、またはCとGである。本明細書で使用される「相補鎖」は、「相補的ポリヌクレオチド」、「相補的核酸」および「相補的ヌクレオチド配列」と同義である。これらの用語は、2つのポリヌクレオチドが実際に結合するような特定の条件ではなく、その配列のみに基づいてポリヌクレオチドの対に対して使用される。
【0061】
「インスリン関連疾患」という用語は、個体においてインスリンの生産、分泌、または機能(インスリン抵抗性)が変化している、当技術分野で周知の任意の疾病を指す。「インスリン関連疾患」という用語は、特にインスリン依存型真性糖尿病(IDDMまたはI型糖尿病)、またはインスリン非依存型糖尿病(NIDDMまたはII型糖尿病)、妊娠性糖尿病、自己免疫性糖尿病、高インスリン血症、高血糖、低血糖、β細胞障害、インスリン抵抗性、異常脂質血症、アテローマ、およびインスリノーマを指す。「インスリン関連疾患」という用語は、さらに肥満関連NIDDM,肥満関連アテローム性動脈硬化、心疾患、肥満関連インスリン抵抗性、肥満関連高血圧、肥満関連NIDDMに起因する微小血管障害病変、肥満関連NIDDMの肥満患者における微小血管障害に起因する眼病変、および肥満関連NIDDMの肥満患者における微小血管障害に起因する腎病変のような、肥満関連疾患および肥満も指す。
【0062】
「インスリン関連疾患に作用する薬剤」という用語は、インスリン生産、インスリン分泌、インスリン機能の活性を調節する、肥満個体の体重を減少させる、またはIDDM、NIDDM、妊娠性糖尿病、自己免疫性糖尿病、高インスリン血症、高血糖、低血糖、β細胞障害、インスリン抵抗性、異常脂質血症、アテローマ、インスリノーマ、肥満、および本明細書で定義される肥満関連疾患からなる群より選択される、インスリン関連の疾病を治療する、薬剤または化合物を指す。
【0063】
「インスリン関連疾患に作用する薬剤への応答」という用語は、個体における、化合物を代謝する能力、プロドラッグを活性のある薬剤に変換する能力、および薬剤の薬物動態(吸収、分布、排出)および薬力学(受容体関連)を含むがこれらに限定されない、薬効を指す。
【0064】
「インスリン関連疾患に作用する薬剤の副作用」という用語は、薬剤の主な薬理学的作用の延長に起因する治療の有害効果、または特有の宿主要素と薬剤の間の相互作用に起因する特異体質性有害反応を指す。
【0065】
本明細書で使用される「NIDDM」という用語は、インスリン非依存型糖尿病またはII型糖尿病(本明細書全体で、この2つの用語は互換的に使用される)を指す。NIDDMは内因性インスリン生産と、インスリン必要量との間に相対的な差があるために、血糖値が上昇する状態を指す。
【0066】
本明細書で使用される「減量療法」は、体重を減少させることを目的とした、当技術分野で周知の任意の治療法を指す。減量療法には、食事制限、カロリー消費の増加、胃腸管手術、薬物療法、および食物脂質の吸収低下が含まれる。
【0067】
本明細書で使用される「患者」という用語は、動物、好ましくはマウス、ラット、イヌ、ウシ、ヒツジ、または霊長類を含む哺乳類を、最も好ましくは治療を必要とするヒトを指す。本明細書では「そのような治療を必要とする」という用語は、ヒトの場合には、この患者が治療を必要とするという、医師による判断を指す。この判断は、医師の専門知識の範囲内の種々の要素に基づいて行われるが、それには、本発明の化合物によって治療可能な状態の結果として患者が病気であるまたは病気になると思われるという知識が含まれる。
【0068】
本明細書で使用される「個体」という用語も、動物、好ましくはマウス、ラット、イヌ、ウシ、ヒツジ、または霊長類を含む哺乳類を、最も好ましくは減量の必要性を認識している(または誰かがその人には減量の必要性があると認識する)ヒトを指す。「必要性を認識する」というのは、典型的には臨床的肥満の基準未満の体重の変化(増加)を指すが、臨床的肥満も含んでも良い。「体重の変化」は上記に定義されている。
【0069】
NIDDMと肥満
摂取カロリーとエネルギー消費の間の不均衡の結果である肥満は、実験動物およびヒトにおいて、インスリン抵抗性および糖尿病と高い相関がある。しかし、肥満・糖尿病症候群に関与する分子機構は明らかではない。肥満の初期段階では、インスリン分泌の上昇がインスリン抵抗性とつり合い、患者の高血糖を予防する(Le Stunffら、Diabetes. 43、696−702 (1994))。しかし、数十年すると、β細胞の機能が低下し、肥満人口の約20%でNIDDMの肥満関連亜型(妊娠性糖尿病)が発症する(Pedersen, P. Diab. Metab. Rev. 5、505−509 (1989))および(Brancati, F.L.、Wang, N.Y、Mead, L.A、Liang, K.Y、Klag, M.J. Arch Intern Med. 159、957−963 (1999))および(Arner, P.ら、Diabetologia. 34、483−487 (1991))。現代社会に肥満が多いことを考慮すると、肥満はNIDDMの最大のリスクになっている(Hill, J.O.ら、Science. 280、1371−1374 (1998))。
【0070】
脂肪蓄積に応答して、患者の一部でインスリン分泌を変化させる素因となる要素は、不明である。この問題に取り組むために、発明者は若年型肥満の動的段階において、インスリンレベルを検討した。成人患者におけるインスリン分泌の研究には、偏向がある可能性がある:年齢関連の差、人種、不明の肥満歴、時間に依存するβ細胞不全、食事および薬剤による変化、および変化する血糖状態。しかし、肥満の小児は、最初は正常な空腹時インスリンおよびインスリン感受性を持ち(Le Stunffら、Diabetes. 43、696−702 (1994))、肥満が数年続いた後にのみ、高インスリン血症を発症するため、肥満関連のシグナルに対する初期のβ細胞応答について、より信頼性の高い研究ができる。
【0071】
肥満患者は、インスリン遺伝子の翻訳開始コドンに隣接する多型である(Lucassen, A.M.ら、Nature Genet. 4、305−310 (1993))、−23 HphI座(多型はインスリン遺伝子の開始コドンATG (+1)の最初の塩基に対する位置で示されている)で遺伝子型同定された。このRFLPは、隣接するインスリンVNTRと強い連鎖不平衡にある。HphI座の「+」アリル(T)は、隣接するインスリンVNTRのクラスIアリルと完全な連鎖不平衡にあり、「−」アリル(A)はクラスIIIアリルと完全な連鎖不平衡にある。したがって、本研究では、代理マーカーとして−23 HphI多型を通して、インスリンVNTRを調べる。VNTRの多型は、インスリン遺伝子の転写を調節すると考えられる(Kennedy, C.G.ら、Nature Genet. 9、293−298 (1995))。
【0072】
若年の肥満患者ではHphIアリルおよび遺伝型の頻度は、痩せた白人患者と同等である。しかし、HphI遺伝型は空腹時インスリンレベルの差と関連していた。HphI [+/+]遺伝型の患者は、若くても同等の肥満症のHphI [+/−]または [−/−]の遺伝型の患者よりもインスリンレベルが高いことを示した。この差は、空腹時インスリンレベルがHphI [+/+]個体で約60−70%高い、過度の肥満の小児でさらに大きかった。肥満コホート全体では、血漿インスリンおよびBMI値は相関していた(r=0.54、p<0.0001)。共分散分析では、HphI遺伝型がインスリンとBMI値との関係に主要な影響を与えることが示された(p<0.0001)。HphI [+/+]同型接合体(インスリンVNTR I/I)は、他の2つの遺伝型よりも、インスリンとBMIの間に強い相関を示した。BMIに対するインスリンレベルの高度な有意の関連は、すべてHphIアリルと強い連鎖不平衡にある近隣マーカー(−4217 PstI、−2221 MspI、+1428 FokI、+11000 AluI)でも観察された(Lucassen, A.Mら、Nature Genet. 4、305−310 (1993))。
【0073】
また、発明者は異型接合体HphI [+/−]またはHphI [−/−]、すなわちVNTR I/IIIおよびIII/IIIの女性は、妊娠中の肥満に応答して低いインスリン応答を示し、I/IIIおよびIII/IIIの胎児の大きさに潜在的影響のある高血糖になるといいう仮説を立てた。しかし、この仮説は、受胎産物の出生体重に対する親アリルの影響を除外するものではない。
【0074】
発明者は、HphI座からわずか360 bpにあり、そのアリルとほぼ完全な連鎖不平衡にある(Bennett, S.T.ら、Annu Rev Genet. 30、343−370 (1996))インスリンVNTRの関与する、インスリン遺伝型およびインスリンレベルの間の関連を発見した。さらに、インスリン遺伝子の転写に対するその影響は(Lucassen, A.M.ら、Hum Mol Genet. 4、501−506 (1995))、インスリンVNTRがこの実験結果を説明するものである可能性があることを示唆する。発明者による観察に基づくと、HphI多型および近隣VNTRは、ヒトにおける遺伝性が0.20と0.52の間だと見積もられている(Snieder, H.ら、Genet Epidemiol. 16、426−446 (1999))形質である、空腹時インスリンレベルの遺伝的調節に関与する最初の座位を表す。
【0075】
本明細書に記述されるデータによると、インスリンVNTRおよびHphI多型は、若年の肥満患者において、β細胞がインスリン抵抗性に対応できないことおよびNIDDM感受性の遺伝子マーカーである。したがって、本発明は、個体のインスリンHphI座との連鎖不平衡にある少なくとも1つのマーカーの遺伝子型同定を行なう段階;個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに遺伝子型同定、体脂肪値、ならびに遺伝子型同定、体脂肪値、およびNIDDMの発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、リスク値を割り当てる段階を含む、個体におけるNIDDMの発症リスクを決定する方法を特徴とする。
【0076】
別の局面では、本発明は上述の個体において、NIDDMの発症リスクを決定する方法を特徴とする。しかし、インスリン遺伝子のVNTRクラスが決定されリスクの決定に使用される。例えば、NIDDMの発症リスクは、下記のように、VNTRクラス、体脂肪値、ならびにVNTRクラス、体脂肪値、およびNIDDMの発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づく。
【0077】
表IA: NIDDMの発症リスクの値
Figure 2004512842
*** NIDDM発症のリスクが高いことを示す
** NIDDM発症のリスクが中程度であることを示す
* NIDDM発症のリスクが低いことを示す
【0078】
表IB: NIDDMの発症リスクの値
Figure 2004512842
*** NIDDM発症のリスクが高いことを示す
** NIDDM発症のリスクが中程度であることを示す
* NIDDM発症のリスクが低いことを示す
【0079】
NIDDM の亜型
おそらくNIDDMの遺伝学の研究の最も問題となる局面は、この疾病の根底にある、原因の広範な不均一性である可能性が高い。遺伝的欠陥はブドウ糖調節に関与する多くの段階のいずれにも影響を与える。これらの欠陥の各々が、単独または他の欠陥と共に、NIDDMを引き起こす可能性がある。そのような病因の複雑さによって、遺伝的研究が不可能になるわけではないが、病因の広範な不均一性は、特定の病原機構を理解するためには、ブドウ糖不耐性という総体的表現型よりも具体的なレベルで生理的「欠陥」を測定できる必要があることを意味する(Raffelら、「エメリーとライモインの遺伝医学の原理と実際(Emery and Rimoin’s Principles and Practice of Medical Genetics)」 第3版、1421 (1996))。
【0080】
本発明では、発明者は若年型肥満の動的段階において、インスリンレベルを検討した。脂肪組織量が増加すると、インスリンの作用に対する体全体の感受性および耐糖能に悪影響があることが知られている。脂質分解の速度が上昇する(脂肪分解)と、遊離脂肪酸(FFA)の放出が起きる。これは肝臓によるインスリンの取り込みに有害な作用を持ち、それにより糖生成(アミノ酸の分解およびブドウ糖への変換)の増加、肝臓によるブドウ糖の生産、および全身の異常脂質血症が起きる。これらの要素は、全身の高インスリン血症(循環インスリン濃度の上昇)およびブドウ糖の取り込みの低下を伴う骨格のインスリン感受性の低下に貢献する。最初は、膵臓のβ細胞がインスリンの生産量を増加させることによって、これらの過程を埋め合わせる。しかし、時間が経つと、β細胞障害が起き、循環する血糖濃度が上昇し(高血糖)、それによりNIDDMが発症する(Kopelman P.G. Nature. 404;639 (2000))。肥満でないNIDDM個体はしばしば分泌障害(β細胞障害)を示すのみだが、肥満のNIDDM患者は、インスリン分泌欠損に合わせて末梢インスリン抵抗性に苦しんでいる。したがって、肥満のNIDDM個体と肥満でないNIDDM個体は、高血糖の原因の異なる2つの形を示す可能性がある:肥満関連NIDDMおよび非肥満関連糖尿病。
【0081】
本発明は、個体のNIDDMの亜型の診断方法を特徴とする。すなわち、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーのアイデンティティおよび体脂肪値に基づいて、個体を糖尿病の亜型に分別する。そのような方法には、個体のインスリンHphI座と連鎖不平衡の少なくとも1つのマーカーを遺伝子型同定する段階;個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに遺伝型、体脂肪値、ならびに遺伝型、体脂肪値、および特定のNIDDM亜型を持つ可能性を相関させる、事前に決められた値に基づいて、亜型を割り当てる段階が含まれる。
【0082】
別の局面では、本発明は上記のようにして個体のNIDDMの亜型を診断する方法を特徴とする。しかし、インスリン遺伝子のVNTRクラスが決定され、亜型の決定に使用される。例えば、亜型は、下記のように、VNTRクラス、体脂肪値、ならびにVNTRクラス、体脂肪値、および特定のNIDDM亜型を持つ可能性を相関させる、事前に決められた値に基づく。
【0083】
表IIA: NIDDMの亜型の診断
Figure 2004512842
ORは肥満関連NIDDMを示す
NORは非肥満関連NIDDMを示す
【0084】
表IIB: NIDDMの亜型の診断
Figure 2004512842
ORは肥満関連NIDDMを示す
NORは非肥満関連NIDDMを示す
【0085】
肥満関連 NIDDM の治療
肥満関連NIDDMは治癒できないが、減量およびブドウ糖のホメオスタシスの維持のための努力をすることにより、疾病の管理はできる。
【0086】
減量のために提案されている治療法には5つの種類がある。(1) 食事制限は最も頻繁に使用される。肥満個体は食事習慣を変えて摂取カロリーを低下させる、すなわち、超低カロリー(VLC)ダイエット(400および800 kcal/日)にするように助言される。この種の治療法は短期的には有効であるが、再発率は非常に高い。(2) 身体の運動による消費カロリーの増加も提案されている。この治療法は単独では有効ではないが、低カロリーダイエットの患者の減量を促進する。合わせると、食事制限および消費カロリーの増加は、単一の行動修正療法と考えられることがある。(3) 摂取カロリーの吸収を低下させる胃腸管手術は有効であるが、その副作用のためにほとんど廃止されている。(4) 消化管の内腔に食物脂質を隔離することによって、その吸収を低下させる手法も用いられる。しかしこれは、脂溶性ビタミンの吸収不良、鼓脹、および脂肪便を含む忍容しがたい生理的不均衡を誘導する。どのような治療法を考えて、肥満の治療には非常に高い再発率という特徴がある。(5) かなりの減量を可能にする薬物戦略が5つある:
a) 食欲不振誘発性のシグナルまたは因子(食物摂取を抑制するもの)の阻害効果を増幅する、または食欲促進シグナルまたは因子(食物摂取を刺激するもの)を阻止することにより、食物摂取を減少させる、すなわちシブトラミン;
b) 消化管における栄養の吸収(特に脂質)を阻害する、すなわちオルリスタット;
c) ATPの生成から燃料代謝を脱共役させることにより、熱発生を増加させ、それにより食物エネルギーを熱として消費する、すなわちエフェドリンおよびカフェイン;
d) 脂肪合成/脂肪分解または脂肪分化/アポトーシスを調節することにより、脂肪または蛋白質の代謝または貯蔵を変化させる;および
e) コントローラーが調べる内部標準値を変化させるか、コントローラーが分析する脂肪貯蔵に関する1次求心性シグナルを調節することにより、体重を調節する中枢コントローラーを変化させる(Bray G.A.ら、Nature. 404:672−674 (2000)およびHealtheon/WebMD (1999))。
【0087】
身体の運動および摂取カロリーの減少によって糖尿病の症状は劇的に改善するが、座業的なライフスタイルや食物の過剰摂取、特に高脂肪食物が定着しているため、この治療法のコンプライアンスは非常に悪い。膵臓β細胞のインスリン分泌を上昇させるスルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリピジド)の投与により、またはスルホニル尿素へ応答できなくなった後にはインスリン注射により、インスリンの血漿濃度を上昇させると、インスリン抵抗性組織を刺激するために十分高いインスリン濃度が得られる。しかし、これらの2つの治療法によると、血漿ブドウ糖レベルが危険なほど低くなる可能性があり、またより高い血漿インスリン濃度のおかげでインスリン抵抗性が高まる可能性も理論的にはある。ビグアニドはインスリン感受性を高めるために、高血糖がある程度矯正される。しかし、フェンホルミンとメトホルミンの2つのビグアニドは、それぞれ乳酸性アシドーシスおよび悪心/下痢を誘導し得る。
【0088】
体脂肪値の決定方法
肥満は健康を維持するために必要な量以上の過剰な脂肪として大まかに定義されるが、正式には、寿命を最大にすると定義される理想体重を大きく上回ることとして定義される(Friedman, J.M. Nature. 404:633 (2000))。脂肪過多の簡便な臨床および疫学的尺度は、肥満指数(BMI)であり、これは体重を身長の二乗で割って計算される(kg/m2)。BMIは本明細書で説明されるような、より複雑な体脂肪の尺度と高い相関を示すが、極端な身長分布の場合には正確さは低下する(Healtheon/WebMD 1999)。
【0089】
肥満指数
臨床の場では、体脂肪は体重と身長を組み合せた公式を用いて、最も一般的かつ簡便に見積もられる。その根底にある前提は、身長が同一の人間の体重の変動の大部分は、体脂肪によるというもので、研究に最も頻繁に使用される公式は、肥満指数(BMI)である。BMI値を用いた肥満度の分類は、体脂肪の増加に関して、貴重な情報を与える。集団内部および集団間で体重に関して意味のある比較をしたり、疾病や死亡のリスクのある個体や集団を同定したりできる。また、個体または地域社会レベルで介入の優先順位を決定したり、そのような介入の有効性の評価ができる。しかし、BMIは異なる集団間では、肥満の度合いに同じように相関しない場合がある。また異なる個体および集団間での肥満の性質の大きな違いも説明できない(Kopelman P.G. Nature. 404:635 (2000))。
【0090】
世界保健機構は以下のようなBMIを用いた過体重の分類を提供している。
表A
Figure 2004512842
【0091】
体脂肪値を測定する他の方法
BMIの他にも、胴囲、胴囲対腰回りの比、皮下脂肪厚、およびバイオインピーダンスを含めた、いくつかの脂肪測定方法がある(Heymsfield S.B.ら、Am J Clin Nutr. 64:478−84 (1996))および(Calle E.C.ら、New Engl J Med. 341:1097−1104 (1999))および(Gallagher D.ら、Am J Epidemiol. 143:228−39 (1996))。本明細書の表Bにこれらの方法を示す。
【0092】
表B
Figure 2004512842
(Kopelman P.G. Nature. 404:635 (2000))
【0093】
遺伝子マーカーに関する個体の遺伝子型同定法
本発明の1つまたは複数の遺伝子マーカーについて、全てインビトロで行なえる生物試料の遺伝子型同定の方法が提供される。そのような遺伝子型同定法には、当技術分野で周知の任意の方法により、インスリン関連遺伝子マーカー部位のヌクレオチドを同定することが含まれる。インスリン関連遺伝子マーカーは、インスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意のマーカーである。これには、インスリン遺伝子のVNTRの代理である、当技術分野で周知の任意のマーカーが含まれる。インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーのリストは、本明細書の表Cに提供される。
【0094】
これらの方法は、相関解析における患者−対照群の遺伝子型同定、および特定の形質と相関することが既知の遺伝子マーカーのアリルの個体における検出に使用できる。後者では、個体のゲノムに存在する遺伝子マーカーの両方のコピーを決定し、特定のアリルに関して個体を同型接合体または異型接合体に分類する。
【0095】
これらの遺伝子型同定法は、単一の個体またはプールされたDNA試料から得られた核酸試料で行なえる。
【0096】
遺伝子型同定は、遺伝子マーカーの同定に関して上記に説明した方法と同様な方法、または以下にさらに説明される他の遺伝子型同定法を用いて行なえる。好ましい態様では、異なる個体から得た増幅されたゲノム断片の配列を比較して、新しい遺伝子マーカーを同定するが、診断および相関解析では既知の遺伝子マーカーの遺伝子型同定のために微量配列決定が用いられる。
【0097】
遺伝子型同定のためのDNA供給源
所望の特異的核酸を含んでいるまたは含んでいると考えられる場合には、精製または非精製の任意供給源の核酸が、開始核酸として使用できる。DNAまたはRNAは、上述のような細胞、組織、体液等から抽出できる。本発明の遺伝子型同定で使用される核酸は、任意の哺乳類供給源から得られるが、核酸試料を抽出する試験対象または個体は、通常はヒトだと理解される。
【0098】
遺伝子マーカーを含むDNA断片の増幅
本発明の遺伝子マーカーを1つまたは複数含む核酸セグメントを増幅する方法およびポリヌクレオチドが提供される。遺伝子マーカーを含むDNA断片の増幅は、種々の方法で種々の目的のために使用され、遺伝子型同定に限定されるものではない。しかし、全てではないが多くの遺伝子型同定法が、対象遺伝子マーカーを持つDNA領域をあらかじめ増幅することを必要とする。そのような方法は、遺伝子マーカーを含むか、その遠位または近位側にある部位および配列を含む配列の濃度または総数を増加させる。診断アッセイ法も、本発明の遺伝子マーカーを持つDNAセグメントの増幅に依存する可能性がある。DNAの増幅は、当技術分野で周知の方法で実施できる。増幅技術は、上記のインスリン遺伝子の増幅という項で説明されている。
【0099】
これらの増幅方法の中には、一塩基多型の検出に特に適しており、下記のように、標的配列の増幅と多型ヌクレオチドの同定を同時に行なえるものがある。
【0100】
上述のようにして遺伝子マーカーを同定すると、適当なオリゴヌクレオチドの設計が可能になり、これを本発明の遺伝子マーカーを含むDNA断片の増幅のためのプライマーとして使用できる。増幅は、まず本明細書に記述される新しい遺伝子マーカーの発見に使用されたプライマー、または本発明の遺伝子マーカーを含むDNA断片の増幅を可能にする任意のプライマーセットを用いて実施できる。
【0101】
一部の態様では、本発明は本発明の遺伝子マーカーを1つまたは複数含むDNA断片の増幅のためのプライマーを提供する。好ましい増幅プライマーは、表Cおよび表・増幅プライマーに列挙されている。列挙されたプライマーは、単なる例であり、任意の他のプライマーセットが本発明の遺伝子マーカーを1つまたは複数含む増幅産物を生成することがわかる。
【0102】
プライマーの間隔が、増幅するセグメントの長さを決定する。本発明の状況では、遺伝子マーカーを持つ増幅されたセグメントのサイズは、少なくとも約25 bpから35 kbpの範囲であり得る。25−3000 bpの増幅断片が典型的であり、50−1000 bpの断片が好ましく、100−600 bpが非常に好ましい。遺伝子マーカーのための増幅プライマーは、マーカーを含む任意のDNA断片の特異的増幅を可能にする任意の配列で良いことがわかる。
【0103】
表C
Figure 2004512842
Figure 2004512842
(Lucassen, A.Mら、Nature Genet. 4、305−310(1993))
【0104】
遺伝子マーカーに関するDNA試料の遺伝子型同定法
遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチドの同定には、当技術分野で周知の任意の方法が使用できる。検出する遺伝子マーカーアリルは本発明で同定および指定されているので、当業者はいくつかの手法の任意のものを使用して容易に検出を行なえると考えられる。多くの遺伝子型同定方法は、対象遺伝子マーカーを持つDNA領域をあらかじめ増幅することを必要とする。標的またはシグナルの増幅が現在ではしばしば好まれるが、増幅または配列決定を必要としない超高感度検出法も本発明の遺伝子型同定法の範囲内である。遺伝子多型を検出するために使用できる当業者に周知の方法には、通常のドットブロット分析、オリタ(Orita)ら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2776−2779に記述された一本鎖立体配座多型(SSCP)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、ヘテロ二本鎖分析、ミスマッチ開裂検出、およびシェフィールド(Sheffield, V.C.)ら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 49:699−706、ホワイト(White, M.B..)ら(1992) Genomics. 12:301−306、グロンプ(Grompe, M. )(1993) Nature Genetics. 5:111−117に記述されたような他の通常の手法が含まれる。特定の多型部位に存在するヌクレオチドのもう1つの同定方法は、米国特許第4,656,127号に記述されるように、特殊なエクソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド誘導体を用いる。
【0105】
好ましい方法は、配列決定アッセイ法、アリル特異的増幅アッセイ法、またはハイブリダイゼーションアッセイ法により、遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチドを直接同定することを含む。以下にいくつかの好ましい方法を説明する。非常に好ましい方法は、微量配列決定手法である。本明細書で使用される「配列決定」という用語は、二本鎖プライマー/鋳型複合体のポリメラーゼ伸長反応に関するもので、従来型の配列決定および微量配列決定の両方を含む。
【0106】
1) 配列決定アッセイ法
多型部位に存在するヌクレオチドは、配列決定法により決定できる。好ましい態様では、上述のように、配列決定の前にDNA試料をPCR増幅する。
【0107】
好ましくは、増幅されたDNAはダイプライマーサイクル配列決定プロトコールを用いて、自動化ジデオキシターミネーター配列決定反応にかける。配列分析により、遺伝子マーカー部位に存在する塩基が同定できる。
【0108】
2) 微量配列決定アッセイ法
微量配列決定法では、標的DNAの多型部位のヌクレオチドは、一塩基プライマー伸長反応によって検出される。この方法では、標的核酸中の関心のある多型塩基のすぐ上流にハイブリダイズする、適当な微量配列決定プライマーを使用する。多型部位のヌクレオチドに相補的な1つの単一ddNTP(チェーンターミネーター)を用いて、プライマーの3’末端を特異的に伸長するために、ポリメラーゼが使用される。次に、取り込まれたヌクレオチドが、任意の適当な方法で決定される。
【0109】
通常、微量配列決定反応は蛍光ddNTPを用いて行い、欧州特許第412 883号に記述されるように、伸長した微量配列決定プライマーはABI377配列決定装置上の電気泳動によって分析し、取り込まれたヌクレオチドを同定する。または、キャピラリー電気泳動法を用いて、同時により多数のアッセイ法を処理することもできる。本発明の状況で使用できる典型的な微量配列決定手順の例は、実施例2に提供されている。
【0110】
ddNTPの標識および検出には、様々な手法が使用できる。蛍光共鳴エネルギー移動に基づく均一相検出法は、チェン(Chen)およびクォック(Kwok) (1997) Nucleic Acids Research. 25:347−353およびチェンら(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94(29):10756−10761に記述されており、この開示はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。この方法では、多型部位を含む増幅したゲノムDNA断片を、アリル性色素標識ジデオキシリボヌクレオシド3リン酸および修飾Taqポリメラーゼの存在下で、5’フルオレセイン標識プライマーとインキュベートする。色素標識プライマーは、鋳型に存在するアリルに特異的な色素ターミネーターによって、1塩基伸長される。遺伝子型同定反応の最後に、反応混合液の2つの色素の蛍光強度を、分離または精製なしに直接分析した。これらの段階は全て、同じチューブの中で行い、蛍光の変化はリアルタイムでモニターできる。または、伸長したプライマーはMALDI−TOF質量分析法によって分析しても良い。多型部位における塩基は、微量配列決定プライマーに付加された質量によって同定できる(Haff L.A.およびSmirnov I.P (1997) Genome Research、7:378−388参照)、この開示はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0111】
微量配列決定は、確立された微量配列決定法またはそれを発展または派生させた方法によって行なえる。別の方法には、いくつかの固相微量配列決定手法が含まれる。基本的な微量配列決定プロトコールは、上述のものと同じであるが、プライマーまたは標的分子が固相支持体上に固定または捕獲されている、不均一相アッセイ法として行われるという違いがある。プライマーの分離および末端のヌクレオチド付加分析を簡略化するために、オリゴヌクレオチドは固相支持体に結合されるか、ポリメラーゼ伸長と共に親和性による分離も可能なように修飾されている。合成オリゴヌクレオチドの5’末端および内部のヌクレオチドは、例えばビオチン化のような親和性による異なる分離法を可能にするように、いくつかの異なる方法によって修飾できる。オリゴヌクレオチド上に単一の親和性基が使用される場合には、オリゴヌクレオチドは組み込まれたターミネーター試薬から分離できる。これにより、物理的またはサイズによる分離が不要になる。複数の親和性基が使用されれば、ターミネーター試薬からは複数のオリゴヌクレオチドが分離でき、同時に分析できる。これにより、1回の伸長反応あたり、いくつかの核酸種またはより多くの核酸配列情報が分析できる。親和性基はプライミングするオリゴヌクレオチド上である必要はないが、その代わり鋳型上にあることができる。例えば、固定化は、ビオチン化DNAおよびストレプトアビジンコートのマイクロタイトレーションウェルまたはアビジンコートのポリスチレン粒子の間の相互作用によって行なえる。同様に、オリゴヌクレオチドまたは鋳型は、高密度フォーマットで固相支持体に結合できる。そのような固相微量配列決定反応では、取り込まれたddNTPは放射標識(Syvanen、Clinica Chimica Acta 226:225−236、1994)、またはフルオレセインへの結合(LivakおよびHainer、Human Mutation 3:379−385、1994)されていても良い。放射標識されたddNTPの検出は、シンチレーションに基づく手法によって行なえる。フルオレセイン結合ddNTPの検出は、アルカリ性フォスファターゼ結合抗フルオレセイン抗体の結合に基づき、発色性基質(p−ニトロフェニルフォスフェートなど)とインキュベーションすることによって行なえる。他に可能なレポーター検出の組み合せには、ジニトロフェニル(DNP)に結合したddNTPおよび抗DNPアルカリ性フォスファターゼ結合体(Harjuら、Clin. Chem. 39/11 2282−2287 (1993))、またはビオチン化ddNTPならびに西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンおよび基質としてのo−フェニレンジアミン(国際公開公報第92/15712号)が含まれる。さらに別の固相微量配列決定手法として、Nyrenら(Analytical Biochemistry 208:171−175 (1993))は、酵素発光測定無機ピロリン酸検出アッセイ法(ELIDA)によるDNAポリメラーゼ活性の検出に依存する方法を記述した。
【0112】
パステシン(Pastinen)ら(Genome Research 7:606−614、1997)は、固相ミニ配列決定原理がオリゴヌクレオチドアレイの形に応用された、一塩基多型の多重検出法を記述している。固相支持体(DNAチップ)に結合したDNAプローブの高密度アレイを、下記にさらに説明する。
【0113】
3) アリル特異的増幅アッセイ法
本発明の1つの局面では、アリル特異的増幅アッセイ法により、生体試料中で本発明の1つまたは複数の遺伝子マーカーのアリルを決定するポリヌクレオチドおよび方法が提供される。本発明の遺伝子マーカーを含むDNA断片を増幅する方法、プライマー、および種々のパラメーターは、上記「遺伝子マーカーを含むDNA断片の増幅」にさらに記述されている。
【0114】
アリル特異的増幅プライマー
遺伝子マーカーの2つのアリルの区別は、選択的な戦略であるアリル特異的増幅によっても実施でき、これによって片方のアリルを増幅せずに、もう一方のアリルのみを増幅する。これは1つの増幅プライマーの3’末端に多型塩基を配置することによって行なう。プライマーの3’末端から伸長が行われるので、この位置またはその近くにミスマッチがあると、増幅が阻害的影響が与えられる。したがって、適当な増幅条件下では、これらのプライマーは相補的アリルでの増幅のみを指示する。ミスマッチの正確な位置および対応するアッセイ条件の決定は、当技術分野に周知である。
【0115】
連結 増幅に基づく方法
「オリゴヌクレオチド連結アッセイ法」(OLA)は、標的分子の単一の鎖の隣接する配列にハイブリダイズする能力を持つように設計された、2つのオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドの1つはビオチン化され、他方は検出可能なように標識されている。標的分子中に、完全に相補的な配列が見つかれば、オリゴヌクレオチドは、その末端が隣接するようにハイブリダイズし、捕獲および検出できるような連結基質を形成する。OLAは一塩基多型を検出可能で、ニッカーソン(Nickerson D.A.)ら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8923−8927に記述されるように、都合よくPCRと組み合せることができる。この方法では、PCRを使用して、標的DNAの指数的増幅を行い、これをOLAを用いて検出する。
【0116】
一塩基多型の検出に特に適している他の増幅方法には、上記「インスリン遺伝子の増幅」に説明されているLCR(リガーゼ連鎖反応)、ギャップLCR (GLCR)が含まれる。LCRは特定の標的を指数関数的に増幅するために、2対のプローブを使用する。各オリゴヌクレオチド対の配列は、対が標的の同一の鎖の隣接配列にハイブリダイズするように選択される。そのようなハイブリダイゼーションにより、鋳型に依存したリガーゼの基質が形成される。本発明により、遺伝子マーカー部位の同一の鎖の近位および遠位配列を持つオリゴヌクレオチドを用いてLCRを実施できる。1つの態様では、いずれのオリゴヌクレオチドも遺伝子マーカー部位を含むように設計される。そのような態様では、オリゴヌクレオチド上の遺伝子マーカーに相補的な特異的なヌクレオチドを、標的分子が含むか含まないかのどちらかの場合にのみ、オリゴヌクレオチドが共に連結できるような反応条件が選択される。別の態様では、オリゴヌクレオチドは遺伝子マーカーを含まず、国際公開公報第90/01069号に記述されるように、これらが標的分子にハイブリダイズすると「ギャップ」が形成される。このギャップは、その後、相補的dNTP(DNAポリメラーゼを介するように)を用いて、または別のオリゴヌクレオチド対により「充填」される。このようにして、各サイクルの終わりには、各一本鎖は、次のサイクルで標的となり得る相補鎖を持ち、所望の配列のアリル特異的な指数関数的増幅が行われる。
【0117】
リガーゼ/ポリメラーゼを介した遺伝子ビット解析(Genetic Bit Analysis)(商標)は、核酸分子中のあらかじめ選択された部位におけるヌクレオチドを同定するためのもう1つの方法である(国際公開公報第95/21271号)。この方法では、あらかじめ選択された部位に存在するヌクレオチドに相補的なヌクレオシド3リン酸を、プライマー分子の末端に組み込み、その後、これは第2のオリゴヌクレオチドに連結することを含む。この反応は反応の固相に結合された特異的標識の検出、または溶液中での検出によってモニターされる。
【0118】
4) ハイブリダイゼーションアッセイ法
遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチドの同定のための1つの好ましい方法は、核酸ハイブリダイゼーションを使用する。そのような反応で都合良く使用できるハイブリダイゼーションプローブは、好ましくは本明細書に定義されるプローブを含む。サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロットハイブリダイゼーションおよび固相ハイブリダイゼーションを含む、任意のハイブリダイゼーションアッセイ法が使用できる(Sambrook, J.、Fritsch, E.F.およびT. Maniatis (1989) 「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第2版、Cold Spring Harbor Laborator、Cold Spring Harbor、NY参照)。
【0119】
ハイブリダイゼーションは、相補的な塩基対のために2本の一本鎖核酸が二本鎖構造を形成することである。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖、またはミスマッチ領域をわずかに含む核酸鎖の間で起こり得る。遺伝子マーカーの1つの形にはハイブリダイズするが、別の形にはハイブリダイズせず、したがって異なるアリルの形を区別できるような、特異的なプローブが設計できる。アリル特異的プローブは、しばしば対で使用され、その片方が元のアリルを含む標的配列に完全な一致をし、もう一方が別のアリルを含む標的配列に完全な一致をする。ハイブリダイゼーション条件は、アリル間でハイブリダイゼーション強度にかなりの差があり、好ましくは本質的には2つの反応で、これによりプローブがアリルの片方のみにハイブリダイズするために十分なストリンジェントな条件で必要がある。プローブが厳密に相補的な標的配列のみにハイブリダイズするような、ストリンジェントな配列特異的ハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で周知である(Sambrookら、1989)。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる状況では異なる条件になる。一般に、決められたイオン強度およびpHにおいて、その特定の配列の融点(Tm)よりも約5℃低い温度のストリンジェントな条件が選択される。そのようなハイブリダイゼーションは溶液中でも可能だが、固相ハイブリダイゼーションアッセイ法を使用するのが好ましい。本発明の遺伝子マーカーを含む標的DNAは、ハイブリダイゼーション反応の前に増幅できる。試料中の特異的アリルの存在は、プローブと標的DNAとの間に形成される安定なハイブリッド二本鎖の存在または欠如を検出することで、決定される。ハイブリッド二本鎖の検出は、いくつかの方法で行われる。ハイブリッド二本鎖の検出を可能にするために、標的またはプローブのいずれかに結合した検出可能な標識を使用した、種々の検出アッセイ法が周知である。通常は、ハイブリダイゼーション二本鎖を、ハイブリダイズしなかった核酸から分離し、その後、二本鎖に結合した標識を検出する。当業者は、過剰の標的DNAまたはプローブ、ならびに結合しなかった結合体を洗い流すために、洗浄段階も行なうことができることを認識すると思われる。さらに、プライマーおよびプローブに存在する標識を用いたハイブリッドの検出のためには、標準的な不均一アッセイ形式が適当である。
【0120】
最近開発された2つのアッセイ法では、分離または洗浄なしにハイブリダイゼーションに基づくアリルの区別が可能である(Landegren U.ら、Genome Research、8:769−776、1998参照)。タックマン(TaqMan)アッセイ法は、Taq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を使用して、蓄積する増幅産物に特異的にアニーリングするDNAプローブを消化する。タックマンプローブは蛍光エネルギー移動を介して相互作用をするドナー−アクセプター色素対によって標識される。増幅の際に進んでくるポリメラーゼによってタックマンプローブが切断されると、消光するアクセプター色素から、ドナー色素が解離し、ドナーの蛍光が大きく上昇する。2つのアリル変種を検出するために必要な全ての試薬は、反応の最初に集め、結果はリアルタイムでモニターできる(Livakら、Nature Genetics、9:341−342、1995参照)。別の均一ハイブリダイゼーションに基づく手法では、分子ビーコンを用いてアリルの区別をする。分子ビーコンは、均質溶液中で、特異的核酸の存在を報告するヘアピン型のオリゴヌクレオチドプローブである。標的に結合すると、立体配座が再編成して、内部で消光された蛍光体の蛍光が回復する(Tyagiら、Nature Biotechnology、16:49−53、1998)。
【0121】
本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、生物試料中の遺伝子マーカーアリルの検出のためのハイブリダイゼーションアッセイ法に使用できる。これらのプローブは、好ましくは8−50ヌクレオチドを含み、本発明の遺伝子マーカーを含む配列にハイブリダイズするために十分な相補性を持ち、好ましくは1ヌクレオチドのみの差の標的配列を区別できるほど十分に特異的であるという特徴を持つ。本発明のプローブのGC含有量は、通常10−75%の間で、好ましくは35−60%、およびさらに好ましくは40−55%の間である。これらのプローブの長さは、10ヌクレオチド、15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、または30ヌクレオチドから少なくとも100ヌクレオチド、好ましくは10ヌクレオチドから50ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチドから35ヌクレオチドである。特に好ましいプローブの長さは25ヌクレオチドである。好ましくは、遺伝子マーカーは、ポリヌクレオチドプローブの中央から4ヌクレオチドの範囲にある。特に好ましいプローブでは、遺伝子マーカーはポリヌクレオチドの中央にある。より短いプローブは標的核酸に対する特異性を欠如する可能性があり、一般に鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためには、より低い温度を必要とする。より長いプローブは、生産するのが高価であり、自己ハイブリダイズしてヘアピン構造を形成する場合がある。オリゴヌクレオチドプローブの合成方法は、上記にあり、本発明のプローブに適用できる。
【0122】
アリル特異的プローブへのハイブリダイゼーションを分析することにより、所定の試料中で遺伝子マーカーアリルの存在または欠如を検出できる。アレイ形式の、ハイスループットのパラレルハイブリダイゼーションは、「ハイブリダイゼーションアッセイ法」に明確に含まれ、以下に説明されている。
【0123】
5) オリゴヌクレオチドのアドレス指定可能なアレイへのハイブリダイゼーション
オリゴヌクレオチドアレイに基づくハイブリダイゼーションアッセイ法は、完全にマッチした標的配列と、ミスマッチした標的配列への、短いオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの安定性の差に依存する。選択された位置で固相支持体(例えば、チップ)に結合したオリゴヌクレオチドプローブの高密度アレイを含む基本的構造から、多型情報が効率良く得られる。各DNAチップは、格子型のパターンに配列され、10セント硬貨の大きさに縮小した、個々の合成DNAプローブを数千から数百万含み得る。
【0124】
チップ技術は、すでに数多くの場合に応用されている。例えば、出芽酵母(S. cerevisiae)変異株におけるBRCA1遺伝子、およびHIV−1ウイルスのプロテアーゼ遺伝子の変異のスクリーニングが行われている(Haciaら、Nature Genetics、14(4):441−447、1996; Shoemakerら、Nature Genetics、14(4):450−456、1996、Kozalら、Nature Medicine、2:753−759、1996)。遺伝子多型を検出するために使用する種々の形式のチップは、アフィメトリックス(Affymetrix) (ジーンチップ(GeneChip)(商標))、ハイシーク(Hyseq) (HyChipおよびHyGnostics)、およびプロトジーンラボラトリース(Protogene Laboratories)により、特注生産できる。
【0125】
一般に、これらの方法は、個体の標的核酸配列セグメントに相補的なオリゴヌクレオチドプローブのアレイを使用し、標的配列には多型マーカーが含まれている。欧州特許第785280号は、一塩基多型の検出のためのタイリング(tiling)戦略を記述している。簡単に述べると、アレイは、通常、多数の特定の多型に関してタイリングが可能である。「タイリング」というのは、関心のある標的配列およびその配列のあらかじめ選択された変種、例えば、1つまたは複数の所定の位置における1つまたは複数のモノマーの基本セット、すなわち、ヌクレオチドによる置換の、相補的な配列から構成される規定のオリゴヌクレオチドプローブセットの合成を意味する。タイリング戦略は、国際公開公報第95/11995号にさらに説明されている。特定の局面では、いくつかの特異的な同定された遺伝子マーカー配列に関して、アレイはタイリングされる。特に、アレイは、それぞれ特定の遺伝子マーカーまたは遺伝子マーカーセットに特異的な検出ブロックをいくつか含むようにタイリングされる。例えば、ある検出ブロックは、ある特定の多型を含む配列セグメントを含む、いくつかのプローブを含むようにタイリングされ得る。プローブが各アリルに確実に相補的であるように、プローブは遺伝子マーカーのところが異なる対として合成される。多型塩基においてプローブに加えて、通常は1置換プローブも検出ブロック内にタイリングされる。これらの1置換プローブは、多型部分からいずれの方向にも、ある数までの塩基が残りのヌクレオチド(A、T、G、CおよびUから選択する)で置換された塩基を持つ。典型的には、タイリングされた検出ブロック中のプローブは、遺伝子マーカーから5塩基までの配列位置の置換を含む。1置換プローブは、実際のハイブリダイゼーションを人工的な交差ハイブリダイゼーションから区別するための、タイリングされたアリルについての内部対照となる。標的配列とのハイブリダイゼーションおよびアレイの洗浄後、アレイをスキャンして、標的配列がハイブリダイズしたアレイの位置を決定する。そしてスキャンされたアレイのハイブリダイゼーションデータを分析し、試料中に遺伝子マーカーのどのアリルが存在するかを同定する。ハイブリダイゼーションおよびスキャンは、国際公開公報第92/10092号および国際公開公報第95/11995号ならびに米国特許第5,424,186号に記述されるようにして実施できる。
【0126】
したがって、いくつかの態様では、チップは長さ約15ヌクレオチドの断片の核酸配列のアレイを含む。別の態様では、チップは、9−27、99−14387、9−12、9−13、99−14405、および9−16からなる群より選択される配列、ならびにその相補配列またはその断片を少なくとも1つ含むアレイを含むが、断片は少なくとも約8つの連続するヌクレオチド、好ましくは10個、15個、20個、より好ましくは25個、30個、40個、47個、または50個の連続するヌクレオチドを含み、かつ多型塩基を含む。好ましい態様では、多型塩基はポリヌクレオチドの中央から5ヌクレオチド、4ヌクレオチド、3ヌクレオチド、2ヌクレオチド、1ヌクレオチドの範囲であり、より好ましくはポリヌクレオチドの中央にある。いくつかの態様では、チップは本発明のこれらのポリヌクレオチドのうち少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはそれ以上のアレイを含む。
【0127】
6) 一体型システム
多型の分析に使用できる別の手法は、複数の成分の一体化システムであり、PCRおよびキャピラリー電気泳動反応のようなプロセスを微小化し、単一の機能的装置中で区画化するものである。そのような手法の例は、PCR増幅とキャピラリー電気泳動のチップ上での一体化を記述する米国特許第5,589,136号に開示されている。
【0128】
一体化システムは、主にマイクロ流体システムが使用される場合に考えられる。これらのシステムは、ガラス、シリコン、石英、またはプラスチックウェーハ上に設計されたマイクロチャネルのパターンがマイクロチップに含まれるシステムである。試料の移動は、マイクロチップの種々の部分に適用された電子的、電気浸透的、または静水力学的な力によって制御され、動く部分のない機能的な微小バルブおよびポンプが形成される。電圧を変化させると、微細加工されたチャネルの交差点での流体の流れが制御され、マイクロチップの異なる部分に対する流体輸送の流速が変化する。
【0129】
マイクロ流体システムは、遺伝子マーカーの遺伝子型同定のために、核酸増幅、微量配列決定、キャピラリー電気泳動、およびレーザー誘発蛍光検出のような検出方法を一体化したものである。
【0130】
最初の段階では、好ましくはPCRによりDNA試料が増幅される。その後、増幅産物をddNTP(各ddNTPに特異的な蛍光)および標的多型塩基のすぐ上流にハイブリダイズする適切なオリゴヌクレオチド微量配列決定プライマーを用いた自動微量配列決定反応にかける。3’末端の伸長が完了したら、キャピラリー電気泳動によって取り込まれなかった蛍光ddNTPからプライマーを分離する。キャピラリー電気泳動に使用される分離媒体は、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、またはデキストランで良い。一塩基プライマー伸長産物に取り込まれたddNTPは、蛍光検出により同定される。このマイクロチップは少なくとも96検体から384検体を平行して処理するために使用される。ddNTPに通常使用される4色のレーザー誘発蛍光検出が使用できる。
【0131】
本発明の遺伝子マーカーを使用した遺伝子分析方法
複雑な形質の遺伝子分析のために、種々の方法が使用できる(LanderおよびSchork、Science、265、2037−2048、1994参照)。疾病感受性遺伝子の探索には、主に2つの方法が使用される:家系調査を用いたある遺伝子座と推定形質の遺伝子座の間の共分離の証拠を探す連鎖手法、およびアリルと形質または形質の原因となるアリルとの間の統計的に有意な相関の証拠を探る相関解析(Khoury J.ら、「遺伝疫学の基礎(Fundamentals of Genetic Epidemiology)」、Oxford University Press、NY、1993)。一般に、本発明の遺伝子マーカーは遺伝型および表現型の間に統計的に有意な相関を示す当技術分野で周知の任意の方法に使用できる。遺伝子マーカーは、パラメトリックおよびノンパラメトリックの連鎖分析法に使用できる。好ましくは、本発明の遺伝子マーカーは、相関解析を用いて検出可能な形質に関連した遺伝子の同定に使用されるが、この手法では罹患家系を使用する必要がなく、複雑および散発性の形質に関連した遺伝子の同定も可能である。
【0132】
本発明の遺伝子マーカーを使用した遺伝子分析は、任意のスケールで実施できる。本発明の遺伝子マーカーセット全体、または候補遺伝子に対応する本発明の遺伝子マーカーの任意のサブセットが使用できる。さらに、本発明の遺伝子マーカーを含む、任意の遺伝子マーカーセットが使用できる。本発明の遺伝子マーカーと組み合せて遺伝子マーカーとして使用できる遺伝子多型セットは、国際公開公報第98/20165号に記述されている。上述のように、本発明の遺伝子マーカーはヒトゲノムの任意の完全なまたは部分的な遺伝子マップに含まれることができる。これらの異なる使用法は、本発明および請求の範囲で特に考慮されている。
【0133】
本発明は、a) 本発明の遺伝子型同定法により、形質陽性群においてインスリンHphI座と連鎖不平衡にある少なくとも1つのマーカーの遺伝子型同定を行なう段階;b)本発明の遺伝子型同定法により、対照群群においてインスリンHphI座と連鎖不平衡にある該マーカーの遺伝子型同定を行なう段階;およびc) 遺伝型および形質型の間に統計的に有意な関連が存在するかどうかを決定する段階を含む、遺伝型および表現型の間の関連を検出する方法も含む。さらに、本発明の遺伝型および表現型の間の関連を検出する方法は、本開示または以下に単独または組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。選択的に、対照群は形質陰性または無作為群で良い。選択的に、遺伝子型同定段階a)およびb)のいずれも、各々の集団から得られたプールされた生体試料で行なってよい。選択的に、遺伝子型同定段階a)およびb)は、集団の各個体または集団の副試料から得られた生体試料を用いて別々に行なっても良い。
【0134】
本発明はa) 本発明の遺伝子型同定法にしたがって、集団またはその副試料の各個体について、インスリンHphI座と連鎖不平衡にある少なくとも2つのマーカーの遺伝子型同定をする段階;およびb) 段階a)で決定されたヌクレオチドのアイデンティティにハプロタイプ決定法を適用し、頻度の推定を行なう段階を含む、集団中の遺伝子マーカーセットについてのハプロタイプの頻度の推定方法を含む。さらに、本発明のハプロタイプ頻度の推定方法は、本開示または以下に単独または組み合せで記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。選択的に、ハプロタイプ決定法は、非対称PCR増幅、特定のアリルの二重PCR増幅、クラークアルゴリズム、または期待値最大化アルゴリズムにより実施される。
【0135】
本発明の別の態様は、a) 本発明のハプロタイプの頻度の推定方法にしたがって、形質陽性群において少なくとも1つのハプロタイプの頻度を推定する段階;b) 本発明のハプロタイプの頻度の推定方法にしたがって、対照群においてハプロタイプの頻度を推定する段階;ならびにc) ハプロタイプと表現型の間に統計的に有意な関連があるかどうかを決定する段階を含む、ハプロタイプと表現型との間の関連を検出する方法を含む。さらに、本発明のハプロタイプと表現型の間の関連の検出方法は、本開示または以下に記述される任意のさらなる限定を持つ方法を含む。選択的に、遺伝子マーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIから選択できる。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。選択的に、対照群は形質陰性または無作為群で良い。選択的に、表現型はインスリン関連疾患である。選択的に、本方法は段階c)の前に形質陽性群および対照群において表現型を決定する段階をさらに含む。選択的に、インスリン関連疾患は、高インスリン血症である。
【0136】
連鎖分析
連鎖分析は、家系の中の世代を通した、遺伝子マーカーの伝達と特定の形質の伝達の間の相関の確率に基づく。したがって、連鎖分析の目的は、家系の中で、関心のある形質と共分離するマーカー遺伝子座を検出することである。
【0137】
パラメトリック法
継続的な世代のデータがある場合は、遺伝子座の対の間の連鎖の程度を調べる機会がある。組換え割合を見積もると、遺伝子座を遺伝子地図上に並べて置くことが可能になる。遺伝子マーカーである遺伝子座があると、遺伝子地図を確立し、マーカーと形質の間の連鎖強度を計算し、それを用いてマーカーおよびそれに影響を与える遺伝子の間の相対的位置を示すことができる(Weir, B.S.、「遺伝子データ解析II:離散的集団遺伝学データの方法(Genetic data Analyais II: Methods for Discrete population genetic Data)」 Sinauer Assoc., Inc.、Sunderland、MA、USA、1996)。連鎖分析の古典的方法は、オッズ対数(lod)スコア法である(Morton N.E.、Am. J. Hum. Genet.、7:277−318、1995; Ott J.、「ヒト遺伝子連鎖の分析(Analysis of Human Genetic Linkage)」 John Hopkins University Press、Baltimore、1991)。lod値の計算には、疾病の遺伝様式を指定する必要がある(パラメトリック法)。一般に、連鎖分析を用いて同定する候補領域の長さは、2−20 Mbである。候補領域が上述のように同定されれば、別のマーカーを用いた組換え個体の分析により、候補領域のさらなる解析ができる。連鎖分析研究は、一般に最高5,000のマイクロサテライトマーカーを使用してきたため、最大の理論的に実現可能な連鎖分析の解像度は、平均約600 kbに限定される。
【0138】
連鎖分析は、明らかなメンデルの遺伝パターンを持ち、高い浸透度(すなわち、集団中でアリルaのキャリアの総数に対する、形質陽性のaのキャリアの数の比)の、簡単な遺伝形質のマッピングに適用されてきた。しかし、パラメトリック連鎖分析法には、種々の短所がある。まず、研究する形質に適した遺伝モデルの選択に依存するために限定される。さらに、既に述べたように、連鎖分析を用いて実現できる解像度には限界があり、連鎖分析でまず同定した通常2 Mb−20 Mbの領域の分析をさらに正確にするために、補完的研究が必要である。さらに、パラメトリック連鎖分析法は、複数の遺伝子および/または環境要因の作用の組み合せに起因するような、複雑な遺伝形質に適用するのは困難なことが分かっている。lod値分析においてこれらの要素を適切にモデル化するのは、非常に困難である。最近リッシュ(Risch, N.)およびメリカンガス(Merikangas K.) (Science、273:1516−1517、1996)によって記述されたように、そのような場合に、連鎖分析を行なうために必要な適切な数の罹患家系を採用するためには、労力と費用がかかりすぎる。
【0139】
ノンパラメトリック法
連鎖分析のためのいわゆるノンパラメトリック法の利点は、疾病の遺伝様式を指定する必要がないことで、複雑な形質の分析により有用である場合が多い。ノンパラメトリック法では、罹患した親族が、確率によって期待される以上の頻度で、その領域の同一のコピーを受け継ぐことを示すことにより、染色体領域の遺伝パターンは、無作為なメンデル分離とは一致しないことを証明する。罹患した親族は、不完全な浸透および多遺伝子の遺伝の存在下でも、過剰な「アリル共有」を示すはずである。ノンパラメトリック連鎖分析では、2人の個体のマーカー遺伝子座における一致の度合いは、同質(IBS)アリルの数、または同祖(IBD)アリルの数によって、測定できる。罹患同胞対分析は、周知の特別な場合であり、これらの方法の中で最も単純な形である。
【0140】
本発明の遺伝子マーカーは、パラメトリックおよびノンパラメトリック連鎖分析の両方に使用できる。好ましくは、遺伝子マーカーは複雑な形質に関与している遺伝子のマッピングの可能なノンパラメトリック法で使用できる。本発明の遺伝子マーカーは、複雑な形質に関与している遺伝子のマッピングのために、IBDおよびIBSの両方の方法に使用できる。そのような研究では、遺伝子マーカーの密度が高いことを使用して、いくつかの隣接する遺伝子マーカー座をプールして、複数アリルマーカーによって得られる効率を実現することができる(Zhaoら、Am. J. Hum. Genet.、63:225−240 (1998))。
【0141】
集団相関解析
本発明は、本発明の遺伝子マーカーを用いて、インスリン遺伝子またはその特定のアリル変異体が、検出可能な形質と関連しているかどうかを決定する方法を含む。1つの態様では、本発明は遺伝子マーカーアリルまたは遺伝子マーカーハプロタイプと、形質との関連を検出する方法を含む。さらに、本発明は本発明の任意の遺伝子マーカーアリルと連鎖不均衡にある形質の原因となるアリルを同定する方法を含む。
【0142】
上述のように、相関解析を行なうためには、種々の手法が使用できる:ゲノム全体の相関解析、候補領域の相関解析、および候補遺伝子の相関解析。好ましい態様では、本発明の遺伝子マーカーは、候補遺伝子の相関解析に使用される。候補遺伝子の解析は、形質の生物学に関していくらかの情報を利用できる場合に、明らかに、特定の形質に関連する遺伝子または遺伝子多型の同定への近道を提供する。さらに、本発明の遺伝子マーカーは、ゲノム全体の相関解析を行なうために、ヒトゲノムの遺伝子マーカーの任意の地図に組み入れることができる。高密度の遺伝子マーカー地図を作製する方法は、国際公開公報第00/28080号に記述されている。本発明の遺伝子マーカーは、さらにゲノムの特定の候補領域(例えば、特定の染色体または特定の染色体セグメント)の任意のマップに組み入れることができる。
【0143】
上述のように、相関解析は一般の母集団の中で行なうことができ、罹患家系の血縁個体について行われるの解析に限定されない。相関解析は、散発的または多因子的形質の解析も可能なので、非常に価値がある。さらに、相関解析は、連鎖解析よりも、形質の原因となるアリルのはるかに細かいマッピングを可能にする、微細マッピングの強力な方法である。家系に基づく解析は、しばしば形質の原因となるアリルの場所を狭く絞り込むのみである。本発明の遺伝子マーカーを用いた相関解析は、連鎖解析法によって同定された候補領域中の、形質の原因となるアリルの位置を、詳細に決めるために使用され得る。さらに、関心のある染色体セグメントが同定されたら、関心のある領域中の、本発明の候補遺伝子のような候補遺伝子の存在は、形質の原因となるアリルの同定への近道を提供し得る。本発明の遺伝子マーカーは、候補遺伝子が形質と相関していることを示すために使用できる。そのような使用法は、本発明で特に考慮されている。
【0144】
集団中の遺伝子マーカーアリルまたは遺伝子マーカーハプロタイプの頻度の決定 相関解析は、遺伝子座の間で、アリルのセットの頻度の関係を探る。
【0145】
集団中のアリル頻度の決定
集団中の遺伝子マーカーのアリル頻度は、上記「遺伝子マーカーに関する個体の遺伝子型同定法」の項、またはこの意図された目的に適した任意の遺伝子型同定手順の方法を用いて、決定できる。プールされた試料または個体の試料の遺伝子型同定は、集団中の遺伝子マーカーアリルの頻度を決定できる。必要な遺伝子型同定の数を減らす1つの方法は、プールされた試料を使用することである。プールされた試料を使うための1つの大きな障害は、プールの作製時に正確なDNA濃度を決定するための精度および再現性の点である。個体試料の遺伝子型同定は、感度、再現性、精度がより高く、本発明での好ましい方法である。好ましくは、各個体は別々に遺伝子型同定し、遺伝子マーカーのアリル頻度または特定の集団における遺伝型の頻度の決定には、単純な遺伝子計数が用いられる。
【0146】
集団中のハプロタイプの頻度の決定
ハプロタイプの配偶子相は、二倍体個体が複数の遺伝子座で異型接合の場合には、不明である。家族の家系情報を用いて、配偶子相が推測される場合がある(Perlinら、Am. J. Hum. Genet.、55:777−787、1994)。家系情報が利用できない場合、異なる戦略が使用され得る。1つの可能性は、複数部位の異型接合二倍体を分析から除去し、同型接合および1つの部位の異型接合個体のみを保持するものであるが、この手法は試料組成に潜在的な偏向ができ、低頻度のハプロタイプを過小評価する可能性がある。もう1つの可能性は、例えば、非対称PCR増幅(Newtonら、Nucleic Acids Res.、17:2503−2516、1989; Wuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2757、1989参照)、または限界希釈後のPCR増幅(Ruanoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6296−6300、1990参照)によって1つの染色体を単離することにより、単一の染色体を独立して解析することである。さらに、特定のアリルの二重PCR増幅によって、十分に近い遺伝子マーカーに関して、試料のハプロタイピングを行なうことができる(Sarkar, G.およびSommer S.S.、Biotechniques、1991)。これらの手法は、技術的に複雑で、費用がかかり、大規模に一般化できず、偏りを導入する可能性があるため、完全に満足できるものではない。これらの困難を克服するために、クラーク(Clark A.G.) (Mol. Biol. Evol.、7:111−122、1990)によって導入されたPCR増幅DNA遺伝型の相を推定するためのアルゴリズムが使用できる。簡単に述べると、原理は、明白な個体、すなわち、完全な同型接合および単一部位の異型接合体を調べることによって、試料中に存在するハプロタイプの予備リストを作成し始める。その後、同一試料中の他の個体について、以前に認識されたハプロタイプのある出現についてを持つ可能性をスクリーニングする。陽性が同定されるごとに、すべての個体に関する相の情報が分析または未分析として同定されるまで、認識されたハプロタイプのリストに、相補的なハプロタイプが追加される。この方法は、各複数部位での異型接合個体に対して、単一のハプロタイプを割り付けるが、複数の異型接合部位が存在すると、いくつかのハプロタイプが可能である。または、各個体にハプロタイプを割り付けることなく、集団中のハプロタイプ頻度を見積もる方法を使用できる。好ましくは、期待値最大化(EM)アルゴリズム(Dempsterら、J.R. Stat. Soc.、39B: 1−38、1977)に基づく方法が使用され、ハーディ‐ワインベルク平衡(無作為接合)の仮定を用いて、ハプロタイプ頻度の最大尤度の見積もりが得られる(Excoffier L.およびSlatkin M.、Mol. Biol. Evol.、12(5):921−927、1995参照)。EMアルゴリズムは、データが不明瞭および/または不完全の場合に有用な、一般化された反復性の最大尤度アプローチである。EMアルゴリズムは、異型接合体をハプロタイプに分離するために使用される。ハプロタイプの見積もりは、「統計的方法」という項にさらに詳述されている。集団中のハプロタイプ頻度を決定または見積もるための、当技術分野で周知の任意の他の方法も、使用できる。
【0147】
連鎖不均衡分析
連鎖不均衡は、2つまたはそれ以上の遺伝子座のアリルの非無作為的な関連で、疾病形質に関与する遺伝子のマッピングの強力な道具となる(Ajioka R.S.ら、Am. J. Hum. Genet.、60:1439−1447、1997)。遺伝子マーカーはヒトゲノム中で密な間隔にあり、他の種類の遺伝子マーカー(RFLPまたはVNTRマーカーなど)よりも多数遺伝子型同定できるので、連鎖不均衡に基づく遺伝子解析に特に有用である。
【0148】
疾病の変異が最初に集団に導入された場合(新しい変異または変異の保有者の移入による)には、変異は必ず単一の染色体上にあり、したがって、連鎖したマーカーの単一の「バックグラウンド」または「先祖の」ハプロタイプ上にある。したがって、これらのマーカーと疾病変異の間には、完全な不均衡が存在する。疾病変異は、マーカーアリルの特定のセットの存在下にのみ見つかる。後代の世代で疾病変異およびこれらの多型マーカーの間の組み換えが起こり、不均衡は次第に消失する。この消失の速度は、組換え頻度の関数であるので、疾病遺伝子に最も近いマーカーは、遠いマーカーよりも高いレベルの不均衡を示す。組み換えで破られなければ、「先祖の」ハプロタイプおよび異なる遺伝子座にあるマーカーアリル間の連鎖不均衡は、家系のみならず、集団を通して追跡できる。通常、連鎖不均衡は1つの遺伝子座の1つの特定のアリルと、第2の遺伝子座の別の特定のアリルの間の関連として観察される。
【0149】
疾病とマーカー遺伝子座の間の不均衡のパターンまたは曲線は、これらの遺伝子座で起こる最大値を示すと期待される。したがって、疾病アリルと密接に連鎖した遺伝子マーカーの間の連鎖不均衡は、疾病遺伝子の位置に関して貴重な情報を与える。疾病遺伝子座の詳細なマッピングには、対象領域にあるマーカー間に存在する連鎖不均衡のパターンに関する知識があると役立つ。上述のように、連鎖不均衡分析によるマッピングの解像度は、連鎖解析よりもはるかに高い。連鎖不均衡分析と組み合せた高密度の遺伝子マーカーは、詳細なマッピングの強力な道具となる。連鎖不均衡を計算するための種々の方法は下記の「統計的方法」という項で説明されている。
【0150】
形質−マーカー関連の集団を用いた患者−対照研究
上述のように、同一の染色体上の異なる遺伝子座において特定のアリルの対が発生する頻度は無作為ではなく、無作為との差は連鎖不均衡と呼ばれる。相関解析は集団頻度に注目し、連鎖不均衡の現象に依存する。所定の遺伝子の特定のアリルが特定の形質の原因に直接関与していれば、その頻度は、形質陰性集団または無作為の対照集団における頻度と比較して、罹患(形質陽性)集団で、統計的に上昇していると思われる。連鎖不均衡の存在の結果、形質の原因となるアリルを持つハプロタイプにおける他の全てのアリルの頻度も、形質陰性個体または無作為対照と比較して、形質陽性個体では上昇していると思われる。したがって、形質の原因となるアリルとの連鎖不均衡における、形質および任意のアリル(特に遺伝子マーカーアリル)の間に相関は、特定の領域において形質関連遺伝子が存在することを示唆するのに十分であると思われる。形質の原因となるアリルの位置を狭く絞り込む相関を同定するために、遺伝子マーカーに関して患者−対照集団の遺伝子型同定が行なえる。形質と関連する1つの所定のマーカーと連鎖不均衡にある任意のマーカーは、形質と関連していると思われる。連鎖不均衡があると、形質の原因となるアリルを見つけるために、限定された数の遺伝子多型(特に遺伝子マーカー)の患者−対照集団における相対的頻度を分析して、全ての可能な機能的多型のスクリーニングをするための代わりとする事ができる。相関解析は、無関係の患者−対照集団におけるマーカーアリルの頻度を比較するもので、複雑な形質の解析に強力な道具となる。
【0151】
患者 対照集団(含有基準)
集団を用いる相関解析は、家族性の遺伝を検討しないが、患者−対照集団において、特定の遺伝子マーカーまたはそのセットの頻度を比較する。これは無関係の患者(罹患または形質陽性)個体と、無関係の対照(非罹患、形質陰性、または無作為)個体の比較に基づく、患者−対照研究である。好ましくは、対照群は非罹患または形質陰性個体からなる。さらに、対照群は患者群と民族的に一致している。さらに、対照群は好ましくは研究する形質に関して、主たる既知の混乱要素に関して、患者群と一致している(例えば、年齢依存的な形質に関して年齢が一致)。理想的には、2つの試料の個体は、その疾病状態のみが異なるように対を形成する。「形質陽性集団」「患者集団」および「罹患集団」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0152】
相関解析を用いて複雑な形質を解析するための重要な段階は、患者−対照集団の選択である(LanderおよびSchork、Science、265、2037−2048、1994参照)。患者−対照集団の選択における大きな段階は、与えられた形質または表現型の臨床的な定義である。形質陽性および形質陰性表現型群に含まれる個体を注意深く選択することによって、本明細書で提案される相関方法によって、任意の遺伝形質が解析できる。4つの基準がしばしば重要である:臨床的表現型、発病年齢、家族歴、および重症度。連続的または定量的形質(例えば血圧など)の選択手順は、非重複表現型を持つこれらの形質陽性および形質陰性集団に含めるように、解析する形質の表現型の分布の両端にある個体を選択することを含む。好ましくは、患者−対照集団は、表現型の均一な集団である。形質陽性および形質陰性集団は、各々研究する集団全体の、および好ましくは非重複表現型を示す個体から選択された集団全体の1−98%、好ましくは1−80%、より好ましくは1−50%、およびより好ましくは1−30%、最も好ましくは1−20%の間を代表する、表現型が均一な個体集団からなる。2つの形質の表現型の差が明確であればあるほど、遺伝子マーカーの相関を検出する可能性が高くなる。研究する集団の試料サイズが十分に大きければ、大きな差があるが比較的均一な表現型を選択すると、相関解析において効率良く比較ができ、遺伝子レベルでの著しい差の可能性のある検出が可能である。
【0153】
好ましい態様では、50−300個、好ましくは約100個の形質陽性個体群を、表現型にしたがって採用する。そのような研究には、同様な数の形質陰性個体も含まれる。
【0154】
本発明では、含有基準の典型的な例には、肥満、糖尿病、人種、単調な体重増加、年齢、性別、および思春期が含まれる。
【0155】
本発明の遺伝子マーカーを含めた遺伝子マーカーを用いた相関解析の適切な例は、以下の集団を用いた研究である:
若年性肥満の患者集団および痩せた対照集団、または
若年性肥満およびインスリン関連疾患の患者集団および若年性肥満であるがインスリン関連疾患ではない患者集団、または
肥満関連NIDDMの患者集団および非糖尿病の対照集団。
【0156】
1つの態様では、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーを用いてインスリン関連疾患にかかりやすい個体を同定できる。これには、脂肪の蓄積に応答したインスリン分泌の変化の素因となる要素を持つ個体を同定するための診断および予後診断アッセイ法、ならびにこれらのアッセイ法を用いた臨床試験および治療方法が含まれる。薬物治療は、肥満の治療またはインスリン関連疾患の対照に使用されると当技術分野で考えられるまたは周知の任意の薬剤を含む。
【0157】
相関解析
候補遺伝子を持つ領域に由来する遺伝子マーカーを用いた相関解析を行なう一般的な戦略は、両方の群で本発明の遺伝子マーカーのアリル頻度を測定し統計的に比較するために、2つの個体群(患者−対照集団)をスキャンすることである。
【0158】
分析された遺伝子マーカーのうち1つまたは複数で形質と統計的に有意な相関を持つものが同定されれば、相関のあるアリルが形質の直接の原因となっている(すなわち、相関のあるアリルが形質の原因となるアリル)か、より可能性が高い相関のあるアリルが形質の原因となるアリルと連鎖不平衡にあると考えられる。候補遺伝子機能に関しての相関のあるアリルの特異的な性質は、通常、相関のあるアリルと形質の間の関係について、さらに情報を与える(因果関係、または連鎖不平衡)。候補遺伝子の中の相関のあるアリルが、おそらく形質の原因となるアリルではなく、真の形質の原因となるアリルと連鎖不平衡にあることを証拠が示していれば、相関のあるマーカーの近隣の配列を決定し、繰り返し明らかになる多型との相関解析をさらに行なうことによって、形質の原因となるアリルが見つかる。
【0159】
相関解析は、通常、2つの連続的な段階で行われる。最初の段階では、形質陽性および形質陰性集団において、候補遺伝子からの減少した数の遺伝子マーカーの頻度を決定する。解析の第2段階では、関連する領域から得られるさらに高密度のマーカーを用いて、所定の形質を担う遺伝子座の位置をさらに正確に知る。
【0160】
本発明の実施例3に基づき、インスリンHphI座と連鎖不平衡にある少なくとも1つのマーカーのアイデンティティ、またはインスリン遺伝子のVNTRクラス、および患者の体脂肪値に基づいて、臨床試験または相関解析の亜群が同定できる。具体的には、HphI [+/+]同型接合体(インスリンVNTR I/I)は、肥満度が同等のHphI [+/−]またはHphI [−/−]遺伝型(各々インスリンVNTR I/IIIとインスリンVNTRIII/III)よりも、インスリンとBMIの相関が強いことが示される。したがって、HphI [+/−]または[−/−]遺伝型の肥満個体は、HphI [+/+]の遺伝型の肥満個体よりも、NIDDMを発症する可能性が有意に高いため、臨床試験または相関解析において選択できる可能性がある。
【0161】
本発明は、a) 個体のインスリンHphI座との連鎖不平衡における少なくとも1つのマーカーの多型の塩基のアイデンティティを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) 多型塩基のアイデンティティ、体脂肪値、ならびにアイデンティティ、体脂肪値、およびインスリン関連疾患の発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて個体を試験に含める段階を含む、インスリン関連疾患に関する臨床試験または相関解析に含めることについての個体の選択方法を特徴とする。別の局面では、本発明はa) 個体のインスリン遺伝子のVNTRクラスを決定する段階;b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびにc) VNTRクラス、体脂肪値、ならびにVNTRクラス、体脂肪値、およびインスリン関連疾患の発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、個体を試験に含める段階を含む、インスリン関連疾患に関する臨床試験または相関解析に含めることについての個体の選択方法を特徴とする。インスリンHphI座と連鎖不平衡にある少なくとも1つのマーカーの多型塩基のアイデンティティ、体脂肪値、およびインスリン関連疾患の発症リスクを相関させる事前に決められた値については、表IAを参照。VNTRクラス、体脂肪値、およびインスリン関連疾患の発症リスクを相関させる事前に決められた値については、表IB参照。
【0162】
ハプロタイプ解析
上述のように、疾病アリルを持つ染色体が変異または移入の結果、初めてある集団に現れる場合には、変異アリルは必ず連鎖マーカーセットを持つ染色体上に存在する:先祖ハプロタイプ 。このハプロタイプは、集団を通して追跡し、特定の形質との統計的相関を解析することができる。ハプロタイプ解析とも呼ばれる多点相関解析によって一点(アリル)相関解析を補うと、相関解析の統計力が増加する。したがって、ハプロタイプ相関解析によって、先祖のキャリアハプロタイプの頻度および種類を決定できる。ハプロタイプ解析は、個々のマーカーに関する分析の統計力を増加させるという点で、重要である。
【0163】
ハプロタイプ頻度解析の最初の段階では、本発明の同定された遺伝子マーカーの種々の組み合せに基づいて、可能性のあるハプロタイプの頻度を決定する。その後、形質陽性および対照個体の別個の集団について、ハプロタイプ頻度を比較する。統計的に有意な結果を得るためにこの解析を行うべき形質陽性個体の数は、通常30−300個の範囲で、好ましい個体数は50−150個の範囲である。この解析で使用する非罹患個体(または無作為対照)の数も、同じである。この最初の解析結果は、患者−対照集団におけるハプロタイプ頻度を提供し、評価されたハプロタイプ頻度ごとに、p−値およびオッズ比が計算される。統計的に有意な相関が見つかれば、研究している形質に影響されている所定のハプロタイプを持つ個体の相対リスクを見積もることができる。
【0164】
相互作用解析
本発明の遺伝子マーカーは、多遺伝子性相互作用の結果である検出可能な形質と関連する遺伝子マーカーのパターンを同定するためにも使用できる。連鎖していない遺伝子座におけるアリル間の遺伝子相互作用の解析には、本発明に記述される技術を用いた個々の遺伝子型同定が必要である。適切なレベルの統計的有意性を持つ選択された遺伝子マーカーセットの間のアリル相互作用の解析は、ハプロタイプ解析であると考えられうる。相互作用解析は、第1の遺伝子座の所定のハプロタイプに関しての患者−対照集団の層別化、および各亜集団で第2の遺伝子座のハプロタイプ解析の実施である。
【0165】
相関の存在における連鎖の検定
本発明の遺伝子マーカーは、さらにTDT(伝達/不平衡試験)に使用できる場合がある。TDTは、連鎖および相関の両方を検定するもので、集団の層別化には影響を受けない。TDTには罹患個体およびその両親のデータ、または両親の代わりに非罹患同胞のデータが必要である(Spielmann S.ら、1993; Schaid D.J.ら、1996、Spielmann S.およびEwens W.J.、1998参照)。そのような組み合せた試験は、一般に別々の分析によって生じる偽陽性エラーを減少させる。
【0166】
統計的方法
一般に、ある形質と遺伝型が統計的に有意な相関を示すかどうかを検定するための、当技術分野で周知の任意の方法が使用できる。
【0167】
1) 連鎖解析における方法
連鎖解析に有用な統計的方法およびコンピュータプログラムは、当技術分野で周知である(Terwilliger J.D.およびOtt J.、「ヒトの遺伝子連鎖ハンドブック(Handbook of Human Genetic Linkage)」John Hopkins University Press、London、1994; Ott J.、「ヒトの遺伝子連鎖の解析(Analysis of Human Genetic Linkage)」、John Hopkins University Press、Baltimore、1991参照)。
【0168】
2) 集団におけるハプロタイプ頻度の推定方法
上述のように、遺伝型を評価する場合には、しばしば、異型接合体を区別することが不可能なので、ハプロタイプ頻度は簡単に推測できない。配偶子相が未知の場合には、ハプロタイプ頻度は多遺伝子座の遺伝型データから見積もることができる。ハプロタイプ頻度の推定には、当業者に周知の任意の方法が使用できる(Lange K.「遺伝解析のための数学的および統計的方法(Mathematical and Statistical Methods for Genetic Analysis)」Springer、New York、1997; Weir, B.S.「遺伝データ解析II:不連続集団遺伝データの方法(Genetic data Analysis II: Methods for Discrete population genetic Data)」Sinauer Assoc., Inc.、Sunderland、MA、USA、1996参照)。好ましくは、ハプロタイプ頻度の最大尤度は期待値最大化(EM)アルゴリズムを用いて計算される(Dempsterら、J.R. Stat. Soc.、39B:1−38、1977; Excoffier L.およびSlatkin M.、Mol. Biol. Evol.、12(5):921−927、1995参照)。この手順は、配偶子相が未知の場合に、多遺伝子座の遺伝型データから、ハプロタイプ頻度の最尤推定値を得るための、反復過程である。ハプロタイプの推定は、通常、たとえばイーエム−ハプロ(EM−HAPLO)プログラム(Hawley M.E.ら、Am. J. Phys. Anthropol.、18:104、1994)またはアーレクイン(Arlequin)プログラム(Schneiderら、「アーレクイン:集団の遺伝子データ解析用のソフトウェア(Arlequin: a software for population genetics data analysis)」、University of Geneva、1997)を用いてEMアルゴリズムを適用することによって行われる。EMアルゴリズムは、推定のための、一般化された反復の最大尤度手法であるが、以下に簡単に説明する。
【0169】
以下では、表現型は未知のハプロタイプ相を持つ多遺伝子座の遺伝型を指す。遺伝型は、既知のハプロタイプ相を持つ多遺伝子座の遺伝型を指す。
【0170】
K個のマーカーに関して同定したN人の無関係な個体試料があるとする。観察されるデータは、F個の異なる表現型に分類され得る、未知相K遺伝子座の表現型である。さらに、H個の可能なハプロタイプがあるとする(K個の遺伝子マーカーの場合には、最大数H=2の可能なハプロタイプが考えられる)。
【0171】
個の可能な遺伝子型が考えられる表現型jについては:
Figure 2004512842
ここで、Pはj番目の表現型の確率、P(h, h)は、ハプロタイプhおよびhからなるi番目の遺伝型の確率(すなわちハーディ・ワインバーグ平衡)で、P(h, h)は次のように示される:
Figure 2004512842
【0172】
EMアルゴリズムは、以下の段階からなる。まず、ハプロタイプ頻度の最初の値のセットから、遺伝型頻度が推定される。これらのハプロタイプ頻度は、P (0)、P (0)、P (0)、...P (0)と表される。ハプロタイプ頻度の最初の値は、乱数発生または当技術分野で周知のある他の方法で得られる。この段階は、期待段階と呼ばれる。この方法の次の段階は最大化段階と呼ばれ、遺伝型頻度の推定値を用いて、ハプロタイプ頻度を再計算する。最初の繰り返しのハプロタイプ頻度の推定値は、P (1)、P (1)、P (1)、...、P (1) と表される。一般に、s番目の繰り返しにおける期待段階は、前回の繰り返し
Figure 2004512842
のハプロタイプ頻度に基づいて各表現型を、異なる可能な遺伝型とおく確率を計算することからなり、nはj番目の表現型を持つ個体数、P(h, h(s)は表現型jにおける遺伝型h, hの確率である。遺伝子計数法(Smith、Ann. Hum. Genet.、21:254−276、1957)と同等な最大化段階では、ハプロタイプ頻度は遺伝型頻度
Figure 2004512842
に基づいて、再推定される。ここでは、δitはハプロタイプtがi番目の遺伝型に存在する発生数を数える指標変数であり、0、1、および2の値をとる。
【0173】
E−M繰り返しは、以下の基準が満たされると終了する。最尤推定法(MLE)理論を用いて、表現型jは多項分布していると仮定する。各繰り返しsにおいて、尤度関数Lが計算できる。2つの連続する繰り返しの間のログ尤度の差が、ある小さな数、好ましくは10−7未満になった場合、収束は達成される。
【0174】
3) マーカー間の連鎖不平衡を計算する方法
任意の2つの遺伝子位置の間の連鎖不平衡を計算するために、いくつかの方法が使用できる。現実には、連鎖不平衡は集団から得られたハプロタイプデータに統計的相関検定を適用して、測定される。
【0175】
マーカーMでアリル(a/b)、マーカーMでアリル(a/b)を持つ、本発明の遺伝子マーカーを少なくとも1つ含む任意の遺伝子マーカー対(M, M)の間の連鎖不平衡は、全てのアリルの組み合せ(a, a; a, b; b, aおよびb, b)について、ピアザの公式
Figure 2004512842
にしたがって、計算できる。ここで、
θ4=− −=Mにアリルaを持たず、Mにアリルaを持たない遺伝型の頻度
θ3=−+=Mにアリルaを持たず、Mにアリルaを持つ遺伝型の頻度
θ2=+−=Mにアリルaを持ち、Mにアリルaを持たない遺伝型の頻度である。
【0176】
遺伝子マーカー対(M, M)間の連鎖不平衡(LD)は、全てのアリルの組み合せ(a, a; a, b; b, aおよびb, b)について、ワイア(Weir) (Weir B.S.、1996)に記述されるように、デルタ(複合遺伝型不平衡係数)についても、最尤推定法(MLE)にしたがって計算できる。複合連鎖不平衡のMLEは:
aiaj=(2n + n + n + n/2)/N − 2(pr(a). pr(a))であり、ここで
Figure 2004512842
、およびNは試料中の個体数である。
【0177】
この公式により、遺伝型のデータのみがありハプロタイプのデータはない場合に、アリル間の連鎖不平衡が計算できる。
【0178】
マーカー間の連鎖不平衡を計算する別の方法は、次の通りである。2つの遺伝子マーカーM(a / b)およびM(a / b)について、ハーディ−ワインバーグ平衡を当てはめて、上述の手法によって所定の1つの集団において可能性のある4つのハロタイプ頻度を推定できる。aとaの配偶子不平衡の推定は、単に:
aiaj = pr(ハプロタイプ(a, a)) − pr(a).pr(a)である。
ここで、pr(a)はアリルaの確率、pr(a)はアリルaの確率で、pr(ハプロタイプ(a, a))は上記等式 での推定値である。
【0179】
2つの遺伝子マーカーについて、MとMの相関を記述するためには、1つの不平衡の測定のみが必要である。
すると、上記の正規化された値は、次のように計算される
D’aiaj = Daiaj / max (−pr(a). pr(a), −pr(b). pr(b))、Daiaj <0
D’aiaj = Daiaj / max (pr(b). pr(a), pr(a). pr(b))、Daiaj >0
当業者は、他のLDの計算方法も使用できることを容易に理解すると思われる。
【0180】
適切な異型接合率を持つ遺伝子マーカーのセットでの連鎖不平衡は、50−1000人、好ましくは75−200人、より好ましくは約100人の無関係の個体を遺伝子型同定して決定できる。
【0181】
4) 相関の検定
表現型と遺伝型、この場合は遺伝子マーカーにおけるアリルまたはそのようなアリルからなるハプロタイプの間の相関の統計的有意性を決定する方法は、当技術分野で周知の任意の統計的検定、および必要な統計的有意性の受け入れられている閾値を用いて、決定できる。特定の方法の適用と有意性の閾値は、当技術分野の範囲内で周知である。
【0182】
相関の検定は、患者および対照集団における遺伝子マーカーアリルの頻度を決定し、これらの頻度を統計的検定と比較して、研究している遺伝子マーカーアリルと形質との間の相関を示すような頻度の統計的に有意な差があるかどうかを決定することによって行われる。同様に、ハプロタイプ解析は、患者および対照集団において、所定の遺伝子マーカーセットの全ての可能なハプロタイプの頻度を推定し、これらの頻度を統計的検定と比較して、研究している表現型(形質)とハプロタイプとの間の統計的に有意な相関があるかどうかを決定することによって行われる。遺伝型と形質の間の統計的に有意な相関を検定するために有用な任意の統計的なツールが使用できる。好ましくは、使用される統計的検定は、1度の自由度を持ったカイ二乗検定である。P値が計算される(P値は、観察されたものと同じまたはこれより大きい統計値が偶然発生する確率である)。
【0183】
統計的有意性
好ましい態様では、さらなる診断検査を行なうための正バイアスまたは初期の予防的治療を開始するための予備的開始点としての診断のための有意性である、遺伝子マーカーの相関に関するP値は、単一の遺伝子マーカー解析で、好ましくは約1 x 10−2またはそれ未満、より好ましくは約1 x 10−4またはそれ未満、2つまたはそれ以上のマーカーを含むハプロタイプ解析で、約1 x 10−3またはそれ未満、さらに好ましくは1 x 10−6またはそれ未満、および最も好ましくは約1 x 10−8またはそれ未満である。これらの値は、単一または複数のマーカーの組み合せに関する任意の相関解析に適用できると考えられる。
【0184】
当業者は、上述の値の範囲を、本発明の遺伝子マーカーを用いた相関解析を行なうための、開始点として使用できる。それにより、本発明の遺伝子マーカーと、肥満または肥満関連の疾患の間の有意な相関が明らかになり、診断および薬剤のスクリーニングに使用できる。
【0185】
表現型の置換
上述の第1段階のハプロタイプ解析の統計的有意性を確認するために、患者−対照個体の遺伝子型同定データをプールし、形質の表現型に関して無作為化し、さらなる解析を実行することが適切な可能性がある。各個体の遺伝子型同定データは、無作為に2つの群に割り付け、2つの群が、第1段階で得られたデータを収集するために使用した患者−対照集団と同じ数の個体数を持つようにする。第2段階のハプロタイプ解析は、好ましくはこれらの人工的な群で、好ましくは最大の相対リスク係数を示した、第1段階の解析のハプロタイプに含まれるマーカーについて、行われる。この実験は、好ましくは少なくとも100−10000回繰り返される。繰り返しによって、有意性のP値が約1 x 10−3未満で、得られたハプロタイプの割合を決定できる。
【0186】
統計的相関の評価
偽陽性の問題に対処するために、無作為なゲノム領域において、同じ患者−対照集団を用いて、同様な分析を行なうことができる。無作為な領域および候補領域における結果は、国際公開公報第00/28080号に記述されるようにして比較する。
【0187】
5) リスク因子の評価
リスク因子(遺伝疫学では、リスク因子はマーカー遺伝子座における特定のアリルまたはハプロタイプの存在または欠如である)と疾患の相関は、オッズ比(OR)および相対リスク(RR)によって測定される。P(R)がRを持つ個体の疾患の発症確率で、P(R)がリスク因子を持たない個体の確率だとすると、相対リスクは、2つの確率の比、すなわち
RR = P(R)/(PR) である。
【0188】
患者−対照研究では、試料抽出法の設計のために、相対リスクは直接測定できない。しかし、オッズ比によって発病率の低い疾患に関しては相対リスクの良い近似ができ、これは
OR = (F/(1−F))/(F/1−F))で計算できる。
は患者におけるリスク因子への曝露の頻度、Fは対照におけるリスク因子への曝露の頻度である。FおよびFは、研究におけるアリル頻度またはハプロタイプ頻度を用いて計算でき、基礎となる遺伝モデル(優性、劣性、相加的)に依存する。
【0189】
さらに、集団において所定のリスク因子のためにある形質を示す集団個体の割合を表す寄与危険度(AR)を推定することができる。この尺度は、疾病の原因における特定の因子の役割を定量する上で、およびリスク因子の公衆衛生への影響という点で、重要である。対照の曝露がなかった場合に、集団中で予防できる症例の割合を見積もるという点で、この尺度は公衆衛生に関連している。ARは
AR = P(RR−1) / (P (RR−1)+1)として計算される。
ARは遺伝子マーカーアリルまたは遺伝子マーカーハプロタイプが寄与するリスクである。Pは集団全体で、アリルまたはハプロタイプに曝露した頻度、およびRRは一般の集団において研究している形質の発生率が比較的低い場合に、オッズ比を用いて近似される相対リスクである。
【0190】
本発明の遺伝子マーカーと連鎖不均衡にある遺伝子マーカーの同定
関心のあるゲノム領域で最初の遺伝子マーカーが同定されたら、当業者は本発明の教示を用いて、この最初のマーカーと連鎖不均衡にある別の遺伝子マーカーを容易に同定できる。上述のように、形質と関連する第1のマーカーと連鎖不均衡にある任意のマーカーは、形質と関連する。したがって、所定の遺伝子マーカーおよび形質の間に関連が示されれば、この形質と関連する別の遺伝子マーカーの発見は、この特定の領域において遺伝子マーカーの密度を上昇させるために非常に興味深い。原因となる遺伝子または変異は、形質と最も高い相関を示すマーカーまたはマーカーのセットの近隣に見つかると思われる。
【0191】
所定のマーカーと連鎖不均衡にある別のマーカーの同定には、(a) 複数の個体から第1の遺伝子マーカーを含むゲノム断片を増幅する段階;(b) 第1の遺伝子マーカーを持つゲノム領域中で第2の遺伝子マーカーを同定する段階;(c) 第1の遺伝子マーカーと第2の遺伝子マーカーの間の連鎖不均衡解析を行なう段階;および(d) 第1のマーカーと連鎖不均衡にあるとして第2の遺伝子マーカーを選択する段階が含まれる。段階(b)と(c)を含む組み合せも、考慮される。
【0192】
遺伝子マーカーの同定方法および連鎖不均衡解析の方法は、本明細書に記述され、当業者は過度の実験なしに実施できる。本発明は、インスリンHphI座と連鎖不均衡にある遺伝子マーカーにも関し、これは所定の形質とのそれぞれの関連という点で、類似した特性を示すと期待される。HphI座は近隣のインスリンVNTRと強い連鎖不均衡を示す。HphI座の「+」アリル(T)は、近隣のインスリンVNTRのクラスIアリルと、「−」アリル(A)はクラスIIIアリルと、完全な連鎖不均衡にある。したがって、連鎖不均衡解析は、−23 HphI多型を代理マーカーとして、インスリンVNTRも試験する。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不均衡にあるマーカーは、表Cに記載されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIからなる群より選択される。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0193】
マッピング試験:機能的変異の同定
本発明の遺伝子マーカーを用いて正の関係が確認されたら、関連する候補領域(インスリン遺伝子の連鎖不平衡の中)の配列について、いくつかの形質陽性および形質陰性個体の配列を比較することによって、変異のスキャンができる。好ましい態様では、インスリン遺伝子のエクソンおよびスプライス部位のような機能的領域、プロモーター、ならびに他の調節領域で、変異のスキャンをする。好ましくは、形質陽性個体は、その形質と関連することが示されたハプロタイプを持ち、形質陰性個体は、その形質と関連するハプロタイプまたはアリルを持たない。変異検出手順は、2アリル部位の同定に用いられるものと本質的に同じである。
【0194】
そのような変異の検出に使用する方法は、一般的に以下ので段階を含む:(a) 形質陽性患者および形質陰性対照のDNA試料から、形質と関連する遺伝子マーカーまたは遺伝子マーカー群を含む候補遺伝子の領域を増幅する段階;(b) 増幅された領域の配列を決定する段階;(c) 形質陽性患者と形質陰性対照のDNA配列を比較する段階;および(d) 形質陽性患者に特異的な変異を決定する段階。段階(b)と(c)を含む組み合せも、特に考慮される。
【0195】
好ましくは、その後、本明細書に開示されるような任意の遺伝子型同定手順、好ましくは個々の試験形式で微量配列決定手順を用いて、患者と対照のより大きな集団をスクリーニングすることによって、候補多型を確認する。多型は、期待される関連の結果と一致する頻度で患者および対照に存在すれば、候補変異と見なされる。
【0196】
遺伝子診断法における本発明の遺伝子マーカー
本発明の遺伝子マーカーは、特定の遺伝型の結果として検出可能な形質を発現する個体、または後にその遺伝型のために検出可能な形質を発生するリスクを持つ個体を、同定することのできる診断検査を開発するためにも使用できる。
【0197】
本発明が、誰が肥満を含む特定の疾患及び肥満関連疾患を発症するリスクを持つかという個体の絶対的な同定をするのではなく、疾患を発症するある程度または可能性を示すものであることは、肥満および肥満関連疾患の治療または診断を実施する当業者には当然理解されると思われる。しかし、この情報は、予防的治療を開始したり、重要なハプロタイプを持つ個体が小さな症状のような前兆となる徴候を予知することができるので、特定の状況では非常に貴重である。非常に強く攻撃し適時に治療しないと致死的になる場合があるような疾病では、絶対的なものではなくても潜在的な素因に関する知識は、有効な治療に非常に重要な貢献をする可能性がある。
【0198】
本発明の診断技術は、家系研究、単一精子のDNA解析、または体細胞ハイブリッドのような、個々の染色体のハプロタイプの解析を可能にする方法を含め、種々の方法を使用して、被験者が検出可能な形質の発症リスクの上昇と関連した遺伝子マーカーパターンを持つかどうか、または個体が特定の変異の結果として検出可能な形質に侵されているかどうかを決定できる可能性がある。本発明の診断法で解析される形質は、肥満および肥満関連疾患を含む、任意の検出可能な形質であることができる。
【0199】
本発明の別の局面は、個体が形質を発症するリスクを持つかどうか、または個体が形質の原因となる特定のアリルを持つ結果として形質を発現するかどうかを決定する方法に関する。本発明は、個体が複数の形質を発症するリスクを持つかどうか、または個体が形質の原因となる特定のアリルを持つ結果として、複数の形質を発現するかどうかを決定する方法にも関する。これらの方法には、個体から核酸試料を得て、核酸試料に形質の発症リスクを示す、または形質の原因となる特定のアリルを持つ結果として個体が形質を発現することを示す、1つまたは複数の遺伝子マーカーの1つまたは複数のアリルを含むかどうかを決定することが含まれる。これらの方法は、個体から核酸試料を得て、核酸試料が形質の発現のリスクを示す、または個体が特定のインスリン多型または変異(形質の原因となるアリル)を持つ結果として形質を発現することを示す、少なくとも1つのアリルまたは少なくとも1つの遺伝子マーカーハプロタイプを含むかどうかを決定することも含む。
【0200】
好ましくは、そのような診断方法では、個体から核酸試料を得て、この試料を上記の「遺伝子マーカーに関するDNA試料の遺伝子型同定法」に記述される方法を用いて、遺伝子型同定する。診断法は、単一の遺伝子マーカー、または遺伝子マーカー群に基づくもので良い。これらの各々の方法では、被験者から核酸試料を得て、インスリンHphI座と連鎖不均衡にある1つまたは複数のマーカーの遺伝子マーカーパターンを決定する。または、1つまたは複数の遺伝子マーカーは、表Cに提供されるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIからなる群より選択される。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。
【0201】
1つの態様では、核酸試料のPCR増幅を行ない、検出可能な表現型と関連する多型が同定された領域を増幅する。増幅産物の配列を決定し、個体が検出可能な表現型に関連したインスリン多型を1つまたは複数持つかどうかを決定する。増幅産物の作製に使用されるプライマーは、表Cおよび表・増幅プライマーに列挙されるプライマーを含む可能性がある。または、核酸試料に上述のような微量配列決定反応を行ない、個体がインスリン遺伝子の変異または多型の結果として検出可能な表現型と関連するインスリン多型を1つまたは複数持つかどうかを決定する。
【0202】
別の態様では、検出可能な表現型と関連する1つまたは複数のインスリンアリルに特異的にハイブリダイズする1つまたは複数のアリル特異的オリゴヌクレオチドプローブを核酸試料に接触させる。別の態様では、増幅反応でアリル特異的オリゴヌクレオチドとともに使用すると増幅産物を生産する能力のある第2のインスリンオリゴヌクレオチドを核酸試料に接触させる。増幅反応中に増幅産物が存在すると、個体が検出可能な表現型と関連する1つまたは複数のインスリン関連アリルを持つことを示す。
【0203】
上述のように、診断方法は単一の遺伝子マーカーまたは遺伝子マーカー群に基づく可能性がある。好ましくは、遺伝子マーカーまたは遺伝子マーカーの組み合せは、表Cに記述されるインスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカー、好ましくはマーカー−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaI、またはより好ましくは−23 HphIからなる群より選択される。選択的に、インスリンHphI座と連鎖不平衡のマーカーは、さらに当技術分野で周知のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある任意の他のマーカー、および本明細書に記述される方法によってインスリンHphI座と連鎖不平衡にあることが決定される任意のマーカーを含み得る。診断キットは、本発明の任意のポリヌクレオチドを含み得る。
【0204】
これらの診断方法は、予防的治療を開始したり、重要な遺伝型またはハプロタイプを持つ個体が小さな症状のような前兆となる徴候を予知することができるので、特定の状況では非常に貴重である。例えば、実施例3に記述される研究では、被験者はすべてまだNIDDMを発症していない肥満の少年少女である。しかし、インスリン関連疾患、特に肥満関連NIDDMのリスクを持つ肥満少年少女を同定することによって、後に重症な疾患の発症を予防するために、現在、より強力な治療の対象とすることができる。
【0205】
薬剤への応答または薬剤の副作用を分析および予測する診断法は、個体を特定の薬剤で治療するべきかどうかを決定するために使用できる。例えば、診断法により、個体が特定の薬剤による治療にプラスの応答をする可能性が示されれば、その個体にその薬剤を投与できる。逆に、診断法により、個体が特定の薬剤による治療にマイナスの応答をする可能性が高ければ、別の治療方法を処方できる。マイナスの応答とは、有効な応答がないこと、または有毒な副作用があることとして定義される。例えば、実施例3に説明される研究では、インスリンHphI座と連鎖不平衡にある同定されたマーカーは、肥満者の集団の遺伝子型同定に有用で、インスリン関連疾患の管理のために設計された薬剤に、どの患者が感受性かを決定する。インスリンHphI座およびインスリン関連疾患に関連する他の形質と連鎖不平衡にあるマーカーの間の他の関連も、過度な実験なしに本発明の方法を用いて決定でき、これらの形質を標的とする薬剤に感受性(または非感受性)の可能性の高い人々の亜集団を同定するために有用な他のマーカーが示される。さらに、薬剤の転帰(治療/副作用)に注目して特異的な関連付けを行い、リスク/治療の成功を予測する他の有用なマーカーが同定できる。
【0206】
臨床薬剤試験は、本発明のマーカーのもう1つの応用法である。上述の方法を用いて、インスリン関連疾患に作用する薬剤への応答、またはインスリン関連疾患に作用する薬剤への副作用を示す1つまたは複数のマーカーが同定され得る。その後、そのような薬剤の臨床試験の参加候補者をスクリーニングして、薬剤に好都合な反応をする可能性の高い個体を同定したり、および/または副作用を経験しそうな個体を除外したりできる。そのようにして、プラスの反応をする可能性の低い個体を試験に含める結果として測定値が低下することもなく、および/または望ましくない安全性の問題のリスクなしに、薬剤にプラスの反応をする可能性のある個体において、薬剤の有効性を評価できる。
【0207】
実施例
実施例
遺伝子マーカーの新規の同定
本願における遺伝子マーカーは、ヒトゲノム配列から単離された。遺伝子マーカーの同定のために、ゲノム断片を増幅し、配列決定し、複数の個体で比較した。
【0208】
配列決定
表・増幅プライマーに列挙されるプライマーを用いて、PCR産物が得られた。ゲンバンクから入手した配列、および以前に配列決定されていないDNA領域を、隣接する既知の配列におけるプライマーを用いて増幅することにより、12.5 kbの範囲の染色体の連続区間の配列決定ができた。プライマーは、特有の制限部位を形成するヌクレオチドの5’非鋳型区間を含むか、配列でそのような部位に隣接するように、設計された。IGF2エクソンIおよびAluリピートの間の5.3 kbの領域の配列を得るために、以前に記述されたようにして、gp−32を用いて、この領域をカバーするクローン(λINS−2)の増幅が行われた。患者のゲノムDNAのより小さな断片の増幅のためのPCRプライマーを設計するために、この断片を消化し、M13にサブクローニングし、配列決定をした。PCR産物は適当な酵素で消化し、ゲル精製し、M13 mp18およびM13 mp19にクローニングした。これらをジデオキシ法(Sequenase、USB)を用いて配列決定した。配列は、4個体のそれぞれから得られた8つのクローンで比較した。8クローン中、1クローンのみにおける塩基対の変化は、Taqポリメラーゼエラーによるものと考えられた。2つまたはそれ以上のクローンで違いが見られたら、多型の可能性があるとして、さらに検討した。
【0209】
表・増幅プライマー
Figure 2004512842
【0210】
実施例
遺伝子マーカーの遺伝子型同定
新しい多型について、配列中の制限酵素部位を変化させるかどうかを決定した。その後、表・遺伝子型同定プライマーに列挙されるプライマーを用いて、無作為な糖尿病患者および対照においてこれらの部位を増幅し、多型のサブセットを家族において増幅した。典型的なPCR条件は、96ウェルマイクロタイタープレート(Perkin)、200 ng DNA、1.5 mM MgCl2、5μl 10X反応緩衝液(Perkin Elmer)、10% DMSO (Pst1)、0.2 mMずつのdNTP、1μMずつのプライマー、および1.25 U Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)を含む50μlの反応液だった。9700 Perkin Elmerサーモサイクラーを用いて、30−35サイクルが行われた。PCR産物10μlを1−2.5 Uの適当な酵素で切断し、ゲル電気泳動によって遺伝型を決定した。制限部位が変化しない部分では、アリル特異的増幅が行われた。5’ VNTR遺伝子型同定は、プローブpINS310を用いたサザンブロッティングおよびハイブリダイゼーション、−4217/PstI遺伝子型同定はプローブpJ2.4を用いたサザンブロッティングおよびハイブリダイゼーション、またはPCRによって行なった。
【0211】
表・遺伝子型同定プライマー
Figure 2004512842
【0212】
[+]アリルは制限酵素が配列を切断すること、[−]アリルは切断しないことを示す。各部位で得られたバンドの長さは以下の通りである。
表・アリル頻度
Figure 2004512842
【0213】
実施例
肥満少年少女におけるインスリン遺伝子 VNTR および空腹時インスリンレベルの間の相関解析
被験者および方法
父系祖先の名前の分析および家族歴に基づいて、2つの白人肥満患者のコホートが採用された。1つ(n=201)は地中海系の家族(イタリア、スペイン、ポルトガル、アルジェリア)で、1つ(n=257)は祖先が中欧系(フランス、ベルギー、ドイツ、ポーランド)である。これらの2つのコホートは、同等な多点インスリン遺伝子領域ハプロタイプを持っており(ハプロタイプ推定による隣接する6つのSNPの研究およびハプロタイププロファイルの間の同等性の尤度比検定によって決定、データは示さず)、遺伝的起源が近いことを反映していた。2つのコホートで、インスリン対体脂肪値(BMI)の関係が類似しているので、ジェコブ(Genob)コホートIとしてプールして1つの分析にした。これらの458人の白人少年は、6歳までに体重が>85パーセンタイルで、単調な体重増加を示し、減量の試みをしたことはなかった。ブドウ糖およびインスリンは空腹時に測定した。患者は、本明細書の実施例2のようにして、−23 HphIで遺伝子型同定した。白人では、HphI座の「+」アリル(T)は隣接するインスリンVNTRのクラスIアリルと、「−」アリルはクラスIIIと、完全な連鎖不均衡にある。インスリン領域ハプロタイプのわずか0.23%のみが、HphI「+」とVNTRクラスIアリルの間の不一致がある。したがって、この試験は−23 HphI多型を代理マーカーとして、インスリンVNTRを検定する。
【0214】
結果
若い肥満患者では、HphIアリルおよび遺伝型頻度は、568人の痩せた白人被験者と同等だった(表・遺伝型頻度)。したがって、この多型および隣接するVNTRは、若年性肥満の一般的な形とは関連していないことが示唆される。しかし、他の要素を考慮した場合や、他の集団では、この可能性は排除されない。
【0215】
表・遺伝型頻度
Figure 2004512842
【0216】
HphI遺伝型は、空腹時インスリンレベル(表1)の差と関連していた。HphI [+/+]遺伝型の患者は、若いにも関わらず、同等な肥満度のHphI [+/−]または[−/−]遺伝型の患者よりもインスリンレベルが高かいことが示された(表1)。この差は、空腹時インスリンレベルがHphI [+/+]個体で60−70%高い、過度の肥満の小児でさらに大きかった(表1)。肥満コホート全体では、予想通り、血漿インスリンおよびBMI値は相関していた(r=0.54、p<0.0001)。共分散分析では、HphI遺伝型がインスリンとBMI値との関係に主要な影響を与えることが示された(p<0.0001)。HphI [+/+]同型接合体(インスリンVNTR I/I)は、他の2つの遺伝型よりも、インスリンとBMIの間に強い相関を示した(図2A)。
【0217】
表1:2つのコホートの肥満小児の主な特徴
Figure 2004512842
【0218】
遺伝型群の差は、BMIに対するインスリンの回帰に対する、年齢、性別、および思春期のような別の要素の影響を測定するために、一般線形モデルとして状況の再計算をすることによって、検定した(表2)。このモデルにおけるBMI−インスリンの関係に対するHphI遺伝型の影響の有意性は、空腹時インスリンの予測に寄与するBMIHphIの相互作用の点において反映される(p<0.0001)。BMIに対するインスリンレベルの非常に有意な(p<0.001)相関が、すべてHphIアリルと強いLDにある隣接マーカー(−4217 PstI、−2221 MspI、+1428 FokI、+11000 AluI)でも観察された。わずかに弱い相関(p=0.03)が、−23 HphIとより弱いLDを示す+32000 ApaI多型との間に観察された。
【0219】
表2:2つのコホートの過度の肥満の小児(BMI≧96パーセンタイル)の主な特徴
Figure 2004512842
【0220】
インスリン遺伝型に加えて、インスリンとBMIの間の関係に、性別が強い影響を持っていた。肥満少年(n=192、r=0.65、p<0.0001)は少女(n=266、r=0.47、p<0.0001)よりも強い相関を示し、回帰勾配(図2B)が急であることが示された。この差は、表1Bのモデルにおいて、BMI性別相互作用の点について、有意だった(p<0.0002)。BMI−インスリンの関係に対する遺伝型と性別の組み合わさった影響の可能性も、回帰分析モデルで検討した。4つの性別および遺伝型の亜群には、相関の強さに差が見られるが、2つの主要な要素の相互作用ではなく別々の差を反映している(表3)。すなわち、BMI−インスリンの関係に対する遺伝型の相対的影響は、少年と少女の間では違わない。
【0221】
相関解析において再現コホートは重要なので、フランスの多施設プログラムから、さらに157人の若い肥満患者(GenObコホートII)のグループが採用された。これらの患者は、ヨーロッパ(n=127)またはアルジェリア(n=30)家系の混合した起源の白人であった。患者は、コホートIと同様な含有基準および方法で調べられた。コホートIIの患者の主な特徴は、表1および2に示されている。遺伝型普及の分布は同等で、最初のコホートの結果を確認するような結果が観察された。具体的には、空腹時インスリンとBMIの関係に対するHphI遺伝型の影響は有意で(表3)、コホートIで報告された回帰パラメータと同等なパラメータに適合した(値の比較は「図の説明」参照)。BMIは、[+/−]または[−/−]遺伝型の患者(コホートIIの8%)のわずか2%に対して、HphI [+/+]の肥満小児(コホートIの48%)の血漿インスリンの変動の約53%を説明した。
【0222】
表3:空腹時インスリンレベルに対するBMIおよび検定因子の回帰の一般線形モデル
Figure 2004512842
【0223】
図の説明
図2Aは、HphI遺伝型に関するGenObコホートIの458人の肥満小児における空腹時血漿インスリンと肥満度の関係を示す2つのグラフよりなる。報告されたように、患者はHphI座において遺伝子型同定された。HphI [+/−]または[−/−]の群は非常に類似した回帰および相関係数を示したので、HphI [+/−]または[−/−]の小児は1つのグループとしてプールされた。HphI [+/+]患者(VNTR I/I同型接合体に対応)におけるインスリンとBMIの回帰は、線形方程式Y = 1.3 X − 20 (r=0.66、p<0.0001)で記述できた。地中海および中欧起源の最初の2つのコホートにおける対応する方程式は、それぞれY = 1.3 X − 21 (r=0.65)およびY = 1.3 X − 22 (r=0.70)であった。HphI [+/−]または[−/−]の肥満小児(それぞれVNTR I/IIIまたはIII/IIIの遺伝型に対応)における方程式はY = 0.4 X + 3 (r=0.29、p<0.0001)で、相関の度合いはより低く、勾配は緩かった。最初の2つのコホートでは、対応する回帰方程式は非常に類似していた:Y = 0.25 X + 7.5 (r=0.2)およびY = 0.5 X − 1.6 (r=0.3)。特定の肥満度では、HphI [+/−]または[−/−]の遺伝型の小児は、インスリンの値がより低かった。これらの遺伝型の影響の有意性を確認するために、1000の無作為化が用いられた(p<0.0001)。
【0224】
再現コホートIIの患者では、HphI [+/+]患者におけるインスリンとBMIの回帰方程式はY = 1.55 X − 28 (r=0.73、p<0.0001)で、HphI [+/−]または[−/−]の肥満小児ではY = 0.16 X + 10.5 (r=0.14、p<0.23)である(データは示さず)。
【0225】
図2Bは、2つのHphI(インスリンVNTR)遺伝型同型接合の亜群の肥満少年における空腹時血漿インスリンと肥満指数の関係を示す2つのグラフよりなる。HphI [+/+]少年(VNTR I/I同型接合体に対応)におけるインスリンとBMIの回帰は、線形方程式Y = 1.5 X − 28 (r=0.74、p<0.0001)に適合する。この遺伝型亜群では、空腹時インスリンレベルの変動の55%はBMIによって説明された。HphI [+/−]または[−/−]の肥満少年(それぞれVNTR I/IIIまたはIII/IIIの遺伝型に対応)における方程式はY = 0.5 X + 0 (r=0.31、p<0.005)で、インスリンの変動の10%未満がBMIで説明される。所定の肥満度では、後者の遺伝型の少年は、より調節されていない低いインスリン値を示した。
【0226】
コホートIIでは、HphI [+/+]肥満少年におけるインスリンとBMIの回帰方程式はY = 1.7 X − 32 (r=0.75、p<0.0001)で、HphI [+/−]または[−/−]の肥満少年ではY = 0.35 X + 3.3 (r=0.09、p<0.08)である(データは示さず)。
【0227】
図3は肥満小児の2つの遺伝型群における、年齢に対する平均化縦方向の体重(年齢および身長に対する正常体重値に正規化)の曲線である。曲線は、健康個人報告(Health Personal Bulletins)から出生時から試験時までの毎年の体重が収集できた332人の患者のサブセットの試験により作製された。反復測定ANOVAおよび無作為化置換検定を用いた統計分析は、遺伝型群の間で高度に有意な差を示し(p<0.001)、HphI [+/+]の肥満患者では、後期小児期にさらなる体重増加が見られた。
【0228】
実施例
リスクのある遺伝型を持つ肥満少年における II 型糖尿病リスクの評価
インスリンクランプ法、最小モデルの静脈内糖負荷試験、およびHOMAインスリン感受性指数を用いて検出すると、肥満の若年患者の70−80%を超える人がすでにインスリン抵抗性(IR)を持っている。この割合は、患者の加齢および肥満状態の進行に伴い、上昇すると予測される。
【0229】
若年肥満者の約50%がインスリンHphI [+/−]または[−/−]遺伝型(VNTR I/IIIまたはIII/III)を持っている。これらの遺伝型の患者の約80%は、本明細書に記述されるデータによると、肥満の進行の初期からインスリン分泌が不足している。したがって、長期的にはIRにはうまくつり合わず、その一部がII型糖尿病を発症すると予想される。これとは対照的に、インスリンHphI [+/+]遺伝型(VNTR I/I)の若い肥満者の>80%は、IRとつり合うと予測され、十分なインスリン分泌のために長期的に正常血糖を維持できると予想される。
【0230】
したがって、II型糖尿病の絶対的発症リスクは、インスリンHphI [+/−]または[−/−]遺伝型(VNTR I/IIIまたはIII/III)の若年肥満者では約80%で、他の遺伝型では約20%である。これは、遺伝型の差によるリスクの4倍の上昇に対応する。
【0231】
若年肥満者に関して本明細書に記載されたデータは、初期の個体のインスリン分泌能力は、BMI、インスリン遺伝型、および相互に作用するBMI遺伝型に依存することを示す。これから、若年肥満者の一生において、インスリン分泌不全およびその結果としてのII型糖尿病の発症リスクも、同じ要素に依存すると考えられうる。
【0232】
HphI [−]アリル(同型または異型接合状態)を持つ若年肥満者におけるII型糖尿病の約80%というリスクの推定値は、肥満患者および非肥満患者が同じ割合である、一般のII型糖尿病集団におけるこれらの遺伝型の観察される普及と一致している(J. Todd、Ann Rev Genet (1996)参照)。この一致は、HphI [−]アリル(VNTRクラスIIIアリル)が本明細書に提供される観察から示唆されるように、肥満患者においてのみ(または大部分は肥満患者において)糖尿病誘発性であるという仮定に依存している。
【0233】
長期の肥満または若年発症の患者において、HphI [−]アリル(VNTR IIIアリル)がII型糖尿病の前兆となるという仮説を証明するための研究が進行中である。25歳より前に撮影された写真で証明される、長期の若年発症の成人肥満患者の2つの亜群において、VNTR遺伝型が研究されている。亜群1はII型糖尿病の肥満成人、亜群2は全ての点(性別分布、年齢、肥満年数など)で同等だが、正常に近い血糖値を維持し続けてきた肥満成人を含む。HphI [−]アリル(VNTRクラスIIIアリル)の濃縮が、II型糖尿病の亜群Iに観察されると期待される。以下の表は、期待される結果をまとめている。
Figure 2004512842
*文献(Nokdadら、Diabetes Care 23:1278−1283 (2000)参照)から推定、全ての遺伝型を混合
** [−]アリルを持つ患者での相対リスクが3−4.5倍に上昇と推定(我々の結果より推定)
【図面の簡単な説明】
【図1】染色体11p15.5のTH−INS−IGF2領域の模式図で、ゲノムDNA中の多型の位置を表す。白抜きの四角はイントロン、黒い四角はエクソン、斜線部は非翻訳領域を示す。三角はINS VNTR座を示す。多型はINSの開始コドンATG (+1)の最初の塩基に対する位置で示されている。
【図2】図2Aは、HphI遺伝型に関sするGenObコホートIの458人の肥満小児における空腹時血漿インスリンおよび肥満度の間の関係を示す2つのグラフである。図2Bは、2つのHphI(インスリンVNTR)遺伝型同型接合亜群の肥満少年の空腹時血漿インスリンと肥満指数との関係を示す2つのグラフである。
【図3】肥満小児の2つの遺伝型群における暦年に対する平均体重曲線(年齢および身長に対する正常体重に正規化してある)を示すグラフである。曲線は出生時から試験時まで健康個人報告から毎年収集できた332人の患者のサブセットの試験から作製された。

Claims (20)

  1. 以下の段階を含む、個体においてインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)を発症するリスクを決定する方法:
    a) 個体のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある少なくとも1つのマーカーの多型塩基のアイデンティティを決定する段階;
    b) 該個体の体脂肪値を決定する段階;および
    c) 段階a)のアイデンティティ、段階b)の体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびNIDDM発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、リスク値を割り当てる段階。
  2. 以下の段階を含む、個体においてインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)を発症するリスクを決定する方法:
    a) 個体のインスリン遺伝子のVNTRクラスを決定する段階;
    b) 該個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のVNTRクラス、段階b)の体脂肪値、ならびに該VNTRクラス、該体脂肪値、およびNIDDM発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、リスク値を割り当てる段階。
  3. 以下の段階を含む、個体のインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の亜型を診断する方法:
    a) 個体のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある少なくとも1つのマーカーの多型塩基のアイデンティティを決定する段階;
    b) 該個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のアイデンティティ、段階b)の体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびNIDDMの特定の亜型を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づいて、亜型を割り当てる段階。
  4. 以下の段階を含む、個体のインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の亜型を診断する方法:
    a) 個体のインスリン遺伝子のVNTRクラスを決定する段階;
    b) 該個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のVNTRクラス、段階b)の体脂肪値、および該VNTRクラス、該体脂肪値、ならびにNIDDMの特定の亜型を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づいて、亜型を割り当てる段階。
  5. 以下を含む、個体のインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の治療または予防方法:
    a) 請求項1または2に記載のNIDDMの発症リスクの決定法;および
    b) 食事制限、カロリー消費の増加、胃腸管手術、薬物療法、および食物脂質の吸収低下からなる群より選択される減量療法の実施。
  6. 以下の段階を含む、インスリン関連疾患に関する臨床試験または相関解析に含まれるものについて個体を選択する方法:
    a) 個体のインスリンHphI座と連鎖不平衡にある少なくとも1つのマーカーの多型の塩基のアイデンティティを決定する段階;
    b) 該個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のアイデンティティ、段階b)の体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびインスリン関連疾患発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、該個体を試験において選択する段階。
  7. 以下の段階を含む、インスリン関連疾患に関する臨床試験または相関解析に個体を選択する方法:
    a) 個体のインスリン遺伝子のVNTRクラスを決定する段階;
    b) 該個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のVNTRクラス、段階b)の体脂肪値、ならびに該VNTRクラス、該体脂肪値、およびインスリン関連疾患発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、該個体を試験において選択する段階。
  8. マーカーの多型塩基のアイデンティティが、個体のゲノム中に存在するマーカーの両方のコピーについて決定される、請求項1、請求項3、または請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  9. インスリン遺伝子のVNTRクラスが、個体のゲノム中に存在するVNTRの両方のコピーについて決定される、請求項2、請求項4、または請求項7のいずれか一項に記載の方法。
  10. 以下の段階を含む、若年性肥満患者群における遺伝子マーカーセットに関するハプロタイプの頻度の推定方法:
    a) 患者群の各個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、該マーカーにおけるヌクレオチドのアイデンティティを決定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーの遺伝子型同定をする段階;
    b) 該患者群の各個体のゲノムに存在する第2のマーカーの両方のコピーについて、該第2の遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドのアイデンティティを決定することにより、該第2のマーカーの遺伝子型同定をする段階;
    c) 段階a)およびb)で決定されたヌクレオチドのアイデンティティにハプロタイプ決定法を適用し、頻度の推定を行なう段階。
  11. ハプロタイプ決定方法が、非対称PCR増幅、特定のアリルの二重PCR増幅、クラーク法、または期待値最大化アルゴリズムからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
  12. 以下の段階を含む、個体においてインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)を発症するリスクを決定する方法:
    a) 個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、マーカーにおけるヌクレオチドのアイデンティティを決定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーの遺伝子型同定を行なう段階;
    b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のアイデンティティ、段階c)の体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびNIDDM発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、リスク値を割り当てる段階。
  13. 以下の段階を含む、個体のインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の亜型を診断する方法:
    a) 個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、マーカーにおけるヌクレオチドのアイデンティティを決定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーの遺伝子型同定を行なう段階;
    b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のアイデンティティ、段階b)の体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびNIDDMの特定の亜型を持つ可能性を相関させる事前に決められた値に基づいて、亜型を割り当てる段階。
  14. 以下の段階を含む、インスリン関連疾患に関する臨床試験または相関解析に含まれるものについて個体を選択する方法:
    a) 個体のゲノムに存在するマーカーの両方のコピーについて、マーカーにおけるヌクレオチドのアイデンティティを決定することにより、インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーの遺伝子型同定を行なう段階;
    b) 個体の体脂肪値を決定する段階;ならびに
    c) 段階a)のアイデンティティ、段階b)の体脂肪値、ならびに該アイデンティティ、該体脂肪値、およびインスリン関連疾患発症リスクを相関させる事前に決められた値に基づいて、該個体を該試験において選択する段階。
  15. 第2のマーカーがインスリンHphI座と連鎖不平衡にある、請求項10、請求項12、請求項13、または請求項14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 以下の段階を含む、ハプロタイプとインスリン関連疾患との間の関連を検出する方法:
    a) 請求項10の方法にしたがって、インスリン関連疾患の患者集団における少なくとも1つのハプロタイプの頻度を推定する段階;
    b) 請求項10の方法にしたがって、対照群におけるハプロタイプの頻度を推定する段階;ならびに
    c) 該ハプロタイプとインスリン関連疾患の間に統計的に有意な関連があるかどうかを決定する段階。
  17. インスリン関連疾患が、高インスリン血症または高インスリン血症の素因である、請求項6、請求項7、または請求項16のいずれか一項に記載の方法。
  18. インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーが、表Cに記載のマーカーからなる群より選択される、請求項1、請求項3、請求項6、請求項10、請求項12、請求項13、または請求項14のいずれか一項に記載の方法。
  19. インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーが、−4217 PstI、−2221 MspI、−23 HphI、+1428 FokI、+11000 AluI、および+32000 ApaIからなる群より選択される、請求項1、請求項3、請求項6、請求項10、請求項12、請求項13、または請求項14のいずれかに一項に記載の方法。
  20. インスリンHphI座と連鎖不平衡にあるマーカーが、−23 HphIである、請求項1、請求項3、請求項6、請求項10、請求項12、請求項13、または請求項14のいずれか一項に記載の方法。
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