JP2007517511A - ヒトチオプリンs−メチルトランスフェラーゼ欠損に関連するハプロタイプおよび多型 - Google Patents

ヒトチオプリンs−メチルトランスフェラーゼ欠損に関連するハプロタイプおよび多型 Download PDF

Info

Publication number
JP2007517511A
JP2007517511A JP2006548216A JP2006548216A JP2007517511A JP 2007517511 A JP2007517511 A JP 2007517511A JP 2006548216 A JP2006548216 A JP 2006548216A JP 2006548216 A JP2006548216 A JP 2006548216A JP 2007517511 A JP2007517511 A JP 2007517511A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tpmt
gene
thiopurine
snp
methyltransferase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006548216A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007517511A5 (ja
Inventor
ウド シュトロップ,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Bayer Healthcare LLC
Original Assignee
Bayer Healthcare LLC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Bayer Healthcare LLC filed Critical Bayer Healthcare LLC
Publication of JP2007517511A publication Critical patent/JP2007517511A/ja
Publication of JP2007517511A5 publication Critical patent/JP2007517511A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/10Transferases (2.)
    • C12N9/1003Transferases (2.) transferring one-carbon groups (2.1)
    • C12N9/1007Methyltransferases (general) (2.1.1.)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6876Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
    • C12Q1/6883Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
    • C12Q1/6886Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material for cancer
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/106Pharmacogenomics, i.e. genetic variability in individual responses to drugs and drug metabolism
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/16Primer sets for multiplex assays
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/172Haplotypes

Abstract

チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)欠損に関連し、患者がチオプリン類(例えば、メルカプトプリン、アザチオプリン、またはチオグアニン)を用いて処置される場合に潜在的に致死性の毒性を引き起こし得る、TPMTのハプロタイプおよび多型が記載される。個々の患者のTPMT遺伝子型をアッセイするための、変異対立遺伝子、ならびに、PCRフラグメント、キットおよび方法が、開示される。さらに、1セットの単一ヌクレオチド多型の遺伝子型を、TPMT表現型についての異なる情報を与えるハプロタイプと組み合わせるアルゴリズムが、開示される。

Description

(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、癌および免疫抑制の、治療、診断、ならびに薬物代謝の分野のものである。特に、本発明は、チオプリンメチルトランスフェラーゼ欠損についての遺伝学的基礎の特徴付けに関する。多くの単一ヌクレオチド多型は、癌、クローン病、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチまたはエリテマトーデス(lupus eruthematodes))、多発性硬化症、あるいは、6−メルカプトプリン、6−チオグアニンまたはアザチオプリン(チオプリン類一般もしくはTPMT酵素の基質である他の薬物)の標準的な投薬量を用いて処置される臓器移植レシピエント患者における、重篤な造血毒性(hematopoietic toxicity)を、少なくとも部分的に担っている。
(関連分野)
チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT,E.C.2.1.2.67)は、芳香族スルフヒドリル化合物および複素環式スルフヒドリル化合物のS−メチル化を優先的に触媒する細胞質酵素であって、TPMTとしては、抗癌剤である6−メルカプトプリン(6MP)および6−チオグアニン、ならびに免疫抑制薬であるアザチオプリンが挙げられ、これらは、まとめてチオプリンとして称される。TPMT活性は遺伝的多型を示し、コーカサス人種およびアフリカ系アメリカ人のおよそ90%は高TPMT活性を有し、10%は中程度の活性を有し(ヘテロ接合の為)、そして0.3%は常染色体の劣性形質としてTPMT欠損を遺伝する(非特許文献1、非特許文献2)。ヒトの肝臓、腎臓、リンパ球、および白血病リンパ芽球におけるTPMT活性のレベルは赤血球におけるTPMT活性のレベルと相関関係があるので、TPMT活性は赤血球において測定され得る(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。
メルカプトプリン、チオグアニン、およびアザチオプリンは、固有の活性を有さないプロドラッグであって、それらの抗増殖効果の一つの機構として、チオグアニンヌクレオチド(TGN)への細胞内変換と、その後のDNAへの取り込みを必要とする(非特許文献6)。あるいは、これらの薬物は、TPMTによって6−メチル−メルカプトプリン(MeMP)もしくは6−メチル−チオグアニン(MeTG)へ代謝されるか、またはキサンチンオキシダーゼによって6−チオ尿酸(6TU)へ代謝される;MeMP、MeTG、および6TUは不活性代謝産物である。従って、TPMTによる6MP、アザチオプリン、またはチオグアニンの代謝は、TGN活性化経路から薬物を遠ざける。6MPおよびアザチオプリンを用いる臨床研究は、赤血球のTPMT活性と赤血球のTGN蓄積との間に逆の相関関係を確立しており、このことは、これらのチオプリンをより非効率にメチル化する患者がチオグアニンヌクレオチドへのより大規模な変換を有することを示す(非特許文献7、非特許文献8)。さらに、TPMT欠損を有する患者は、6MPまたはアザチオプリンの標準的な投薬量を用いて処置される場合、有意により多くの赤血球TGNを蓄積し、チオプリンの投薬量が実質的に(例えば、8〜15倍の低下)下げられない限り、重篤な造血毒性に至るか(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)、あるいは、変換酵素であるヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)が、プロモーター中のSNP、HGPRTの活性を低下させるスプライシングもしくはコード領域に起因する機能的欠損を有し、それによって体内のチオプリンの量を低下させない限り、重篤な造血毒性に至る。赤血球のTPMT活性の予測測定が幾人かによって提唱されている(非特許文献12)にもかかわらず、そのような患者の大多数が、重篤な毒性を経験した後でしか同定されない。
不運にも、TPMTアッセイは広く使用可能ではなく、新たに診断された白血病を有する患者または臓器移植レシピエントは、しばしば赤血球輸血を与えられ、このことがチオプリン治療が開始される前の彼らの構成的TPMT活性の測定を妨げる。あるいは、TPMT欠損に関与する数個の変異対立遺伝子が記載されており、TPMTの遺伝子型と表現型との間の関係は、臨床的に関連のあるTPMT対立遺伝子2、3A、および3C(本出願において、それぞれSNP44、SNP47、およびSNP50との参照として表される)について、患者および健康な被験体において、非常に明確に定義されている(非特許文献13、Evansら、特許文献1)。このことに基づき、SNPのヘテロ接合性の形態は、欠損したTPMTの活性(低下した活性)と相関関係があり、3個のSNPの変異形態は、より欠損したTPMTの活性(非常に低下した、または非常に低い活性、時には活性無し)と相関関係がある。数個の変異対立遺伝子が中程度の活性または低い活性と関係していることが公知であるにも関わらず、遺伝子型決定による分子診断は、TPMT表現型を85%〜95%までしか予測できない(非特許文献14、非特許文献15)。
遺伝子型と表現型との間のさらなる関係は、TPMT遺伝子の5’非翻訳領域中の可変性縦列重複配列数(variable number of tandem repeats)(VNTR)の差において見出された(非特許文献16)。VNTRは3種類の重複エレメントA、重複エレメントB、および重複エレメントCから構成され、これらの重複エレメントは単位コアの長さ(17bpまたは18bp)およびヌクレオチド配列が異なる。重複Aおよび重複Bは、通常、VNTR中に1〜6回重複され得、重複Cは、通常、VNTR中に1個のみ存在する。重複の数に依存して、TPMTタンパク質の発現の比率が異なる。VNTR中の重複の数の合計とTPMT活性のレベルとの間には逆の相関関係が存在すると考えられるが、この相関関係はたいして強いものではなく、よく研究されていない。
米国特許第5,856,095号明細書 Weinshilboum,R.M.およびSladek,S.L.,Am.J.Hum.Genet.,1980年、第32巻、p.651−662 McLeod,H.L.ら、Clin.Pharmacol.Ther.,1994年、第55巻、p15−20 Van Loon,J.A.およびWeinshilboum,R.M.,Biochem.Genet.,1982年、第20巻、p.637−658 Szumlanski,C.L.ら、Pharmacogenetics,1992年、第2巻、p.148−159 McLeod,H.L.ら、Blood,1995年、第85巻、p.1897−1902 Lennard,L.,Eur.J.Clin.Pharmacol.,1992年、第43巻、p.329−339 Lennard,L.ら、Lancet,1990年、第336巻、p.225−229 Lennard,L.ら、Clin.Pharmacol.Ther.,1989年、第46巻、p.149−154 Evans,W.E.ら、J.Pediatr.,1991年、第19巻、p.985−989 McLeod,H.L.ら、Lancet,1993年、第341巻、p.1151 Lennard,L.ら、Arch.Dis.Child.,1993年、第69巻、p.577−579 Lennard,L.ら、Clin.Pharmacol.Ther.,1987年、第41巻、p.18−25 Evansら、J.Clin.Oncol.,2001年、第19巻、p.2293−2301 McLeod,Leukemia,2000年、第14巻、p.567−572 Yates,Ann.Intern.Med.,1997年、第126巻、p.608−614 Alves,S.ら、Clinical Pharmacology and Therapeutics,2001年、第70巻、p.165−174
従って、疾患、薬物応答、およびTPMTの機能不全または調節不全(dysregulation)に基づく障害を診断するためならびに処置するための手段および方法は、まだ信頼して使用し得ず、必要とされる診断試験の感度および特異性を欠く。従って、本発明の基礎をなす技術的問題は、上記に特定される要求に応じることである。
本明細書において記載される、TPMT遺伝子座での単一ヌクレオチド多型の同定は、患者における数個の単一ヌクレオチド多型のそれぞれの遺伝子型をTPMT表現型についての一つの識別可能な情報と組み合わせるための本明細書において開示されるアルゴリズムと共に、処置をする医師が、潜在的に毒性の投薬量のチオプリン(例えば、メルカプトプリン、アザチオプリン、またはチオグアニン)を用いる処置に先立ち、TPMT欠損患者を彼らの遺伝子型に基づいて予測的に同定することを可能にする。
(発明の要旨)
本発明は、TPMT遺伝子における単一ヌクレオチド多型の発見、およびそれと組み合わせるTPMT酵素欠損を予測し得るアルゴリズムに関する。これらの変異対立遺伝子の存在は、患者がメルカプトプリン、アザチオプリン、またはチオグアニンの標準的な投薬量を用いて処置される場合、潜在的に致死性の造血毒性と、直接的に相関関係がある。
これらの単一ヌクレオチド多型の発見およびそれと組み合わせるアルゴリズムに基づき、TPMT欠損の診断を行うため、または、低下したTPMT活性もしくは完全に欠損したTPMT活性を有するヘテロ接合性の個体(すなわち、1個の変異遺伝子および1個の正常遺伝子を有する人々)を同定するために、個々の患者(被験体)から単離されたゲノムDNA中のこれらの非活性変異を検出するための方法が開発されている。本発明は、従って、低下したTPMT活性を有する患者を彼らの遺伝子型に基づいて同定するための診断試験を提供する。患者のTPMT遺伝子型を決定するためのそのような診断試験は、非常に有益である。なぜならば、患者のTPMT酵素活性の測定は多くの制限を有するからである。この情報に基づき、本発明者らは、本明細書において、その組合せが新規である一セットの単一ヌクレオチド多型を同定した。新たに開発されたアルゴリズムと組み合わせて、これらのSNPは、TPMT活性を予測し得る。これらの試験は、目的の単一ヌクレオチド多型が見出されるTPMT遺伝子の領域のPCRに基づく増幅の工程を包含する。増幅に続いて、増幅されたフラグメントは目的の特定の単一ヌクレオチド多型の存在または非存在についてアッセイされる。これらのアッセイの多くが「手作業で」(例えば、単一ヌクレオチド多型の存在または非存在についてアッセイするための、サーマルサイクラー(thermocycler)およびプロトコルを用いて、オリゴヌクレオチドPCRプライマーを配列決定することによって)行われ得るにも関わらず、自動化された手順およびキットが設計される。この自動化された手順およびキットは、代表的な病院、診療所、または商業的な委託研究所において見られる実験室のような、一般的な臨床の実験室における使用のための手順を容易にするために、遺伝子型決定試験のための全ての試薬、プライマー、溶液、その他を含む。
本発明の好ましい実施形態は、ヒトゲノム中の相同性の高い偽遺伝子の存在に関する。プライマーがTPMT遺伝子の対立遺伝子に特異的であるように設計される場合は常に、本発明者らは、TPMT遺伝子に固有である配列を同定するために、両方の配列(TPMT遺伝子および偽遺伝子)を、MegAlignTM(DNA Star製)または他のプログラムのようなバイオインフォマティクスのプログラムを用いて比較した。TPMT遺伝子に固有である配列は、例えば、TPMT遺伝子の対立遺伝子に特異的なプライマーが配置され得るTPMT遺伝子のイントロンである。TPMT遺伝子のエクソンと偽遺伝子との間の幾つかの相違の為に、プライマーは、このプライマーの3’部分が、二つの遺伝子の間の相違が存在するTPMT遺伝子上の場所でちょうど終わるような様式で、配置される。
特に、本発明は、チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)の一つ以上の変異対立遺伝子またはそのフラグメントを含む、単離されたポリヌクレオチド分子に関し、このポリヌクレオチド分子は、少なくとも10個の連続した塩基長であって、1個以上の単一ヌクレオチド多型を含む。この単一ヌクレオチド多型は、表1において総括される。
本発明の一局面は、上記のポリヌクレオチド分子のいずれか一つに対して相補的なポリヌクレオチド分子に関する。
本発明の異なる局面は、個体のチオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子型を決定するための診断アッセイに関し、この診断アッセイは、この個体から核酸を単離する工程、この核酸からチオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)のPCRフラグメントを増幅する工程を包含する。この核酸は、表1のSNP1〜SNP41の少なくとも1個、好ましくは2個または3個、そして他の局面においては3個より多くを含み、それによって増幅フラグメントが得られる。この増幅されるフラグメントの大きさは、このフラグメントが検出可能であり、本出願において記載される遺伝子型決定方法のために有用であるために十分な程度に大きければよい。この増幅されるフラグメントの大きさの好ましい範囲は、14ヌクレオチド〜数百ヌクレオチドであり、より好ましくは75ヌクレオチド〜400ヌクレオチドであり、もっとも好ましくは80ヌクレオチド〜260ヌクレオチドである。
本発明のさらなる局面は、1個以上のフラグメントに1個、または2個以上のSNPを有する、単離されたポリヌクレオチド分子に関する。さらに、本発明は、表1のSNP1〜SNP41の配列を有するポリヌクレオチド分子に対して相補的な、単離されたポリヌクレオチド分子に関する。
本発明の他の好ましい局面は、本出願において記載される方法を用いる、増幅されたフラグメントの遺伝子型決定に関するが、これらの例に限定されない。
本発明の他の好ましい局面は、TPMT活性と相関関係があるA重複、B重複、およびC重複の数を同定するために、VNTR領域を塩基配列決定することである。
本発明のさらに別の局面は、TPMT遺伝子型についての情報とHGPRT遺伝子型についての情報とを組み合わせる。HGPRT遺伝子のSNPを不活性化することが、より少ないHGPRT酵素を産生するか、HGPRT酵素を産生しないか、または欠損したHGPRT酵素を産生するので、患者がチオプリン治療下にある場合に毒性がより低い中間体が産生され、処置する医師は、治療計画におけるチオプリン類の投薬量をより正確に調節し得る。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)欠損の常染色体劣性形質は、患者がメルカプトプリン、アザチオプリン、またはチオグアニン(チオプリン類一般またはTPMT酵素の基質である他の薬物)の標準的な投薬量を用いて処置される場合、潜在的に致死性の造血毒性と関連する。本発明者らが、単独または好ましくは組合せ(表1のSNP1〜SNP41)のいずれかでTPMT欠損に関連していることを見出した、TPMT遺伝子中の多数の異なる単一ヌクレオチド多型が本明細書において記載される。
本明細書において提供される変異対立遺伝子の配列に基づき、単一ヌクレオチド多型を含むこの変異対立遺伝子の領域に対して相補的であるPCRプライマーが構築される。プライマーは、変異対立遺伝子において変異される位置を含むこの対立遺伝子中の領域に対して相補的なポリヌクレオチドの連続した配列から構成されるが、偽遺伝子を増幅しない。変異PCRプライマーに対応する、野生型対立遺伝子中の領域に対して相補的なPCRプライマーもまた作成され、本発明の診断方法におけるコントロールとして役立つ。これらのPCRプライマーの大きさは、5塩基〜数百塩基のいずれかの範囲にわたる。しかし、プライマーの好ましい大きさは、10塩基〜40塩基の範囲にあり、最も好ましくは14塩基〜32塩基の範囲にある。
変異対立遺伝子のキャリアであり得る個々の患者のゲノムDNAのこの領域を増幅するために、標的位置(すなわち、表1のSNP)の片側または両側に対するプライマーが作成され、当該分野において公知の方法(例えば、Massachusetts General Hospital & Harvard Medical School,Current Protocols In Molecular Biology,第15章(Green Publishing Associates and Wiley−Interscience 1991))、ならびに表2のプライマーおよびプローブを用いるPCR増幅反応において使用される。例えば、SNP1に対して、プライマーSP900295FおよびプライマーSP900295Rが用いられる。好ましいプロトコルおよび方法については、材料および方法の節ならびに実施例を参照されたい。
本発明の方法によると、(偽遺伝子を増幅することなく)増幅された特定のTPMTフラグメントが得られると、このフラグメントは、この患者が一つ以上の本明細書において記載されるTPMT遺伝子の変異対立遺伝子を有するか否かを決定するための幾つかの方法において解析され得る。例えば、この増幅されたフラグメントは、単純に配列決定され得、その配列はTPMTの野生型cDNA配列と比較され得る。増幅されたフラグメントが一つ以上の本発明において記載される単一ヌクレオチド多型を含み、そして/またはVNTRがより多数の重複Aおよび/もしくは重複B(例えば、3個以上のB重複)を含む場合、患者はTPMT欠損を有する可能性があるか、またはヘテロ接合性(すなわち、活性が低下している)である可能性があり、従って、メルカプトプリン、アザチオプリン、またはチオグアニンの標準的な量を用いて処置される場合に造血毒性を発症する可能性がある。あるいは、PCRフラグメントの増幅とTaqManまたは他の遺伝子型決定解析との組合せが、個体のTPMT遺伝子型を決定するために用いられる。
本発明の好ましい実施形態において、患者のゲノムDNAのフラグメントは、表2のそれぞれのSNPのプライマーおよびプローブを用いるTaqMan(Leeら、Nucleic Acids Research,1993年、21:3761−3766)解析によって増幅される。
個体がTPMTについてホモ接合性であるかヘテロ接合性であるかを決定するために、ゲノムDNAの変異部位が、野生型のプライマーおよび変異体のプライマーを用いることによって個別に増幅される。野生型のフラグメントのみまたは変異型のフラグメントのみが増幅される場合、この個体は、野生型TPMTまたは特定の変異型TPMTについてホモ接合性である。しかし、1個より多い型のフラグメントの存在は、この個体がTPMT対立遺伝子についてヘテロ接合性であることを示す。
個体のTPMT遺伝子型を決定するために本発明に従って行われる診断アッセイの一例は、以下の通りである。この例は、説明を目的として提供され、限定することを意図されない。
被験体由来のDNAを含む組織(例えば、赤血球ではない組織)が得られる。そのような組織の例として、白血球、口腔の内層の粘膜擦過標本、上皮細胞などが挙げられる。個々の被験体のゲノムDNAは、当該分野において公知の方法(例えば、フェノール/クロロホルム抽出または市販のキット(例えば、Qiagen(Hilden,ドイツ)製のQiaAmpTMDNAキット)によってこの組織から単離される。この被験体のゲノムDNAの一部は、TPMT遺伝子のPCR増幅のために用いられ得る。SNP1〜SNP50を含むPCRプライマーは、表2に列挙され、ID名中にFまたはR(順方向プライマーおよび逆方向プライマー)で印付けされる。特定のSNPの各々に対して、プライマー一対が選択され得る(例えば、SNP1は、SP900295FおよびSP900295Rを用いて増幅され得る)。これらの列挙されるプライマーは増幅のための例であり、当業者によって他のプライマーが設計され得る。次に、増幅単位は上記の種々の方法によって解析される。これらの方法として、Taqman解析、塩基配列決定、変異特異的増幅、PyrosequencingTM、または当業者に公知である遺伝子型を決定するための他の方法が挙げられる。
従って、患者のTPMT遺伝子型に関する情報を取得する効率的かつ平易な方法が、ここで利用可能とされ、この方法は、医師が患者のための治療様式を選択することを助ける。
(定義)
便宜上、本明細書、実施例、および添付される特許請求の範囲において使用される特定の用語および句の意味は、以下に提供される。さらに、その定義自体は、本発明のさらなる背景を説明することを意図される。
本出願における用語「アルゴリズム」とは、多数のSNPのそれらのそれぞれの遺伝子型の連続的な分析を指し、各々のSNPのどの遺伝子型がTPMT欠損において予測的な意味を有するかを定義する。明瞭にするために、4個のSNPについての例を提供する。
Figure 2007517511
結果:
アルゴリズム1(4個のSNPの組合せ)は、言い換えれば、SNP−AがGGであり、SNP−BがG/AまたはAAであり、SNP−CがCCであり、SNP−DがCCである場合に、低下した酵素活性を予測する。
アルゴリズム2(3個のSNPの組合せ)は、言い換えれば、SNP−AがGGであり、SNP−CがCCであり、SNP−DがACである場合に、完全に欠損した活性を予測する。
同定されたアルゴリズムは、本出願においてハプロタイプと称される(ハプロタイプ1、ハプロタイプ2、など)。
本明細書において「対立遺伝子改変体」と交換可能に用いられる用語「対立遺伝子」とは、遺伝子の代替的な形態またはその一部を指す。対立遺伝子は相同染色体上の同じ遺伝子座または位置を占める。被験体が一つの遺伝子の二つの同一の対立遺伝子を有する場合、この被験体はこの遺伝子または対立遺伝子についてホモ接合性であると称される。被験体が一つの遺伝子の二つの異なる対立遺伝子を有する場合、この被験体はこの遺伝子についてヘテロ接合性であると称される。特定の遺伝子の対立遺伝子は、単一ヌクレオチドまたは数個のヌクレオチドにおいて互いに異なり得、ヌクレオチドの置換、欠失、および挿入を含み得る。遺伝子の対立遺伝子はまた、変異を含む遺伝子の形態でもあり得る。
用語「遺伝子の多型領域の対立遺伝子改変体」とは、他の個体の遺伝子の同じ領域において見出される数個のヌクレオチド配列の一つを有する、遺伝子の領域を指す。
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、二つのペプチドの間、または二つの核酸分子の間の配列の類似性を指す。相同性は、各々の配列中の位置を比較することによって決定され得、各々の配列は比較の目的でアラインメントされ得る。この比較される配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占められる場合、この分子はこの位置で相同である。配列間の相同性の程度は、これらの配列によって共有される、一致する位置または相同な位置の数の関数である。
用語「偽遺伝子」とは、同定される遺伝子に対して高い相同性を有する配列を指し、非機能性のプロモーター、開始コドンの欠失、または他の欠損に起因して、一般的には転写も翻訳もされない。ほとんどの偽遺伝子は、イントロンを有さず、主に親遺伝子のコード配列を表す。いくつかの場合において、異なる生物体または異なる組織において、機能的な活性化が起こり得ることが示されている。
用語「イントロンの配列」または「イントロンのヌクレオチド配列」とは、イントロンまたはその一部のヌクレオチド配列を指す。
用語「遺伝子座」とは、染色体中の特定の位置を指す。例えば、遺伝子の遺伝子座とは、その遺伝子の染色体での位置を指す。
用語、遺伝子またはその一部の「分子構造」とは、ヌクレオチドの内容(一つ以上のヌクレオチドの欠失、置換、付加を含む)、ヌクレオチド配列、メチル化の状態、および/または遺伝子もしくはその一部の任意の他の変更によって定義されるような構造を指す。
用語「変異遺伝子」とは、変異遺伝子を有する被験体の表現型を、変異遺伝子を有さない被験体と比較して変更し得る、遺伝子の対立遺伝子的形態を指す。被験体が変更された表現型を有するためにこの変異についてホモ接合性でなければならない場合、この変異は劣性であると称される。1コピーの変異遺伝子が被験体の遺伝子型を変更するのに十分である場合、この変異は優性であると称される。被験体が1コピーの変異遺伝子を有し、(その遺伝子について)ホモ接合性の被験体の表現型とヘテロ接合性の被験体の表現型との中間の表現型を有する場合、この変異は共優性であると称される。
本明細書において用いられる場合、用語「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)、および、適切である場合は、リボ核酸(RNA)のような、ポリヌクレオチドを指す。この用語は、同等物として、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノオリゴヌクレオチド(morpholino oligonucleotide)(J.SummertonおよびD.Weller,Antisense and Nucleic Acid Drug Development 7:187(1997))、ならびに記載されている実施形態に適用可能であるような、一本鎖(センスまたはアンチセンス)ポリヌクレオチドおよび二本鎖ポリヌクレオチドを含む、ヌクレオチドのアナログから生成されるRNAまたはDNAのいずれかの誘導体、改変体、およびアナログを含むこともまた理解されるべきである。デオキシリボヌクレオチドとして、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、およびデオキシチミジンが挙げられる。明瞭にする目的で、本明細書において核酸(DNAまたはRNAであり得る)のヌクレオチドに言及する場合、用語「アデノシン」、「シチジン」、「グアノシン」、および「チミジン」が用いられる。核酸がRNAである場合、ウラシル基を有するヌクレオチドはウリジンであることが理解される。
用語「多型」とは、一つより多い遺伝子の形態またはその一部の共在を指す。少なくとも二つの異なる形態(すなわち二つの異なるヌクレオチド配列)が存在する遺伝子の一部は、「遺伝子の多型領域」として言及される。多型領域は、単一ヌクレオチドであり得、その同一性は、異なる対立遺伝子において異なる。多型領域はまた、数個のヌクレオチドの長さであり得る。
「多型遺伝子」とは、少なくとも一つの多型領域を有する遺伝子を指す。
ヌクレオチド配列中の「多型部位」を説明するために、一部位におけるヌクレオチドの可能な改変を表す「多義性コード(ambiguity code)」がしばしば用いられることがある。多義性コードの一覧は、以下の表において総括される:
Figure 2007517511
例えば、ヌクレオチド配列中の「R」は、「a」または「g」ヌクレオチドのいずれかがこの位置にあり得ることを意味する。
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、遺伝子産物に言及する場合、本明細書において交換可能に用いられる。
本明細書において「調節配列」とも称される「調節エレメント」は、基本的プロモーターからの転写を調節し得るエレメントを含むことを意図され、そしてエンハンサーおよびサイレンサーのようなエレメントを含むことを意図される。本明細書において「エンハンサーエレメント」としても言及される用語「エンハンサー」は、基本的プロモーターからの転写を増加、刺激、または増強し得る調節エレメントを含むことを意図される。本明細書において「サイレンサーエレメント」としても言及される用語「サイレンサー」は、基本的プロモーターからの転写を減少、阻害、または抑制し得る調節エレメントを含むことを意図される。調節エレメントは、代表的には遺伝子の5’隣接領域中に存在する。しかし、調節エレメントは、遺伝子の他の領域中、特にイントロン中に存在することもまた示されている。従って、遺伝子が、イントロン、エクソン、コード領域、および3’隣接配列中に配置された調節エレメントを有することはあり得る。そのような調節エレメントもまた、本発明によって包含されることが意図され、遺伝子の5’隣接領域中の調節エレメントを同定するために用いられ得る任意のアッセイによって同定され得る。
本明細書において用いられる場合、用語「特異的にハイブリダイズする」または「特異的に検出する」とは、本発明の核酸分子が、遺伝子のいずれかの鎖の、少なくともおよそ6個、12個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、または140個の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする能力を指す。
用語「野生型対立遺伝子」とは、被験体において2コピーで存在する場合に野生型表現型をもたらす遺伝子の対立遺伝子を指す。遺伝子中の特定のヌクレオチドの変化は、2コピーのそのヌクレオチドが変化した遺伝子を有する被験体の表現型に影響を及ぼし得ないことから、特定の遺伝子の数個の異なる野生型対立遺伝子が存在し得る。
本明細書において用いられる場合「有害薬物反応(adverse drug reaction」(ADR)とは、医薬製品の使用に関係する介入に起因する、感知されるほどに有害または不愉快な反応を指し、将来的な投与からの危険要素を予測し、予防もしくは特定の治療、または投与レジメンの変更、またはその製品の回収の根拠となる。ADRの最も深刻な形態においては、ADRは、個体の死をもたらし得る。
用語「薬物応答」は、患者が薬物の投与後に示す任意の応答を意味することを意図される。具体的には、薬物応答として、有益な(すなわち、望ましい)薬物効果、ADR、または全く検出不可能な反応が挙げられる。さらに具体的には、用語、薬物応答とは、定量的意味もまた有し得、すなわち、薬物応答は、それぞれあまり有益でない効果または非常に有益である効果、およびそれぞれ弱いADRまたは重篤なADRを含む。個々の薬物応答はまた、好ましいまたは好ましくない薬物の代謝も含み、このことは、「代謝が好ましくない個体(bad metabolizer)」が体内に薬物を蓄積し、このことによって累積的な過剰投与に起因するこの薬物の副作用を示し得ることを意味する。
本明細書において用いられる場合、用語「ハプロタイプ」とは、機能的におよび/または位置的に連鎖する二つ以上のSNPの群を指す。本出願のハプロタイプは、一つのアルゴリズムによって記述される。ハプロタイプは、単一のSNPより良い予測的/診断的情報を提供することが期待される。
本明細書において用いられる場合、用語「ハプロタイプブロック」とは、減数分裂中に母性染色体と父性染色体との間の相同組換えが起こる位置である、組換えホットスポットの間の、SNPの観察され得る連鎖を指す。染色体上のホットスポットは、およそ5000〜100,000塩基対の間の距離を有する。ホットスポット間のSNPは、ブロックの外のSNPより強く連鎖する。ハプロタイプブロックは、染色体上の多数の隣接するSNPを遺伝子型決定し、どのSNPが連鎖する(比較可能な遺伝子型のパターンを有する)かを解析することを通して実験的に同定され得る。
用語、個体における「欠損したTPMT活性」は、TPMT活性が無いか、もしくは非常に低いTPMT活性を意味し得るか、または、「欠損したTPMT活性」は、非常に低いTPMT活性と正常なTPMT活性の下限との間の中間の活性を意味し得る。
(診断アッセイおよび予後アッセイ)
本発明は、TPMT欠損と関連する遺伝子の少なくとも一つの多型領域、特定の対立遺伝子改変体、および前記の多型領域のハプロタイプの分子構造を決定するための方法を提供する。一実施形態において、遺伝子の多型領域の分子構造の決定は、対立遺伝子改変体の同一性を決定する工程を包含する。特定の対立遺伝子がTPMT欠損と関連する遺伝子の多型領域は、エクソン中に、イントロン中に、イントロン/エクソンの境界に、またはその遺伝子のコード配列のプロモーターあるいは他の5’隣接領域または3’隣接領域中に、位置し得る。
TPMT遺伝子多型を解析する場合、上で論議されるようなTPMT偽遺伝子由来の配列の介入を除外するために、TPMT遺伝子特異的な増幅が推奨される。
本発明は、被験体がチオプリンまたはTPMTによって代謝される構造アナログの代謝において機能的欠損を有するか否かを決定するための方法を提供する。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、被験体由来の細胞のサンプルにおいて、遺伝子の一つ以上の多型領域の特定の対立遺伝子改変体の存在または非存在を検出する工程を包含するものとして、特徴付けられ得る。この対立遺伝子の相違は:(i)少なくとも1個以上のヌクレオチドの同一性における相違、または、(ii)ヌクレオチド数の相違(その相違は単一ヌクレオチドまたは数個のヌクレオチドであり得る)であり得る。
TPMT遺伝子のエクソンに対して高相同性であるヒトゲノム中のTPMT偽遺伝子の存在に起因して、ほとんどの検出方法は、対立遺伝子改変体を同定することに先立ち、第一に遺伝子の少なくとも一部を増幅することを必要とする。一例は以下に提供される:遺伝子特異的な増幅のためのプライマーは、偽遺伝子に対して相同性を示さない目的の遺伝子上の配列(例えば、目的の遺伝子のイントロン配列、または目的の遺伝子に固有である他の配列)に位置される必要がある。当業者は、バイオインフォマティクスのツール(例えば、MegAlignTM(DNA Star)またはWisconsin Genetics Computer Group製のClustalWTMまたは他のプログラム)の補助により目的の遺伝子の相同配列のペアワイズアラインメントを通して、これらの固有の配列を見出す。遺伝子フラグメントの増幅は、例えば、PCRおよび/またはリガーゼ連鎖反応(LCR)によって、当該分野において公知の方法に従って、行われ得る。一実施形態において、細胞のゲノムDNAは、二つのPCRプライマー、および必要とされる量の増幅DNAを産生するのに十分に多回のサイクルにわたる増幅に曝される。好ましい実施形態において、これらのプライマーは、40塩基対〜350塩基対離れて位置される。本出願の遺伝子の遺伝子フラグメントを増幅するための好ましいプライマーは、実施例中の表2に列挙される。
好ましい検出方法は、多型部位と重なり、約5個、約10個、約20個、約25個、または約30個のヌクレオチドを多型領域の周囲に有するプローブを用いる、対立遺伝子特異的なハイブリダイゼーションである。この多型領域の特異的な対立遺伝子改変体を検出するためのプローブの例は、表1のSNP1〜SNP41のいずれかにおいて示されるヌクレオチド配列を含むプローブである。本発明の好ましい実施形態において、この対立遺伝子改変体に特異的にハイブリダイズし得る数個のプローブは、固相支持体(例えば、「チップ」)に結合される。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む種々のプロセスによって固体支持体に結合され得る。例えば、1個のチップは250,000個までのオリゴヌクレオチドを保持し得る(GeneChip、Affymetrix)。「DNAプローブアレイ」とも称される、オリゴヌクレオチドを含むこれらのチップを用いる変異検出解析は、例えば、Croninら、(1996)Human Mutation 7:244およびKozalら、(1996)Nature Medicine 2:753において記載される。一実施形態において、1個のチップは、遺伝子の少なくとも一つの多型領域のすべての対立遺伝子改変体を含む。固相支持体は、次いで試験核酸と接触させられ、特異的なプローブへのハイブリダイゼーションが検出される。従って、一つ以上の遺伝子の多数の対立遺伝子改変体の同一性は、簡易なハイブリダイゼーション実験において同定され得る。例えば、表1のSNP1の位置16でのヌクレオチドGまたはAのヌクレオチド多型の対立遺伝子改変体の同一性、および他の可能な多型領域の対立遺伝子改変体の同一性は、一回のハイブリダイゼーション実験において決定され得る。TPMT遺伝子解析の場合、ハイブリダイゼーション実験に先立ち、ハイブリダイゼーション実験において介入する偽遺伝子の配列を取り除くために、遺伝子特異的な増幅が必要とされる。
代替的な増幅方法として、以下のものが挙げられる:自己持続性配列複製(self sustained sequence replication)(Guatelli,J.C.ら、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1874−1878)、転写増幅系(transcriptional amplification system)(Kwoh,D.Y.ら、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:1173−1177)、Q−Beta Replicase(Lizardi,P.M.ら、1988年、Bio/Technology 6:1197)、または任意の他の核酸増幅方法に続いて、当業者に周知の技術を用いる増幅分子の検出。これらの検出スキームは、検出する核酸分子が非常に低い数で存在する場合、そのような核酸分子の検出のために特に有用である。
一実施形態において、遺伝子の少なくとも一部を直接的に塩基配列決定し、対立遺伝子改変体を検出する(例えば、変異を、サンプル配列の配列を対応する野生型(コントロール)配列と比較することによって、検出する)ために、当該分野において公知の種々の塩基配列決定反応のいずれかが用いられ得る。例示的な塩基配列決定反応として、MaxamおよびGilbert(Proc.Natl Acad Sci USA(1977)74:560)またはSanger(Sangerら(1977)Proc.Nat.Acad.Sci 74:5463)によって開発された技術に基づく塩基配列決定反応が挙げられる。主題のアッセイを行う場合に、任意の種々の自動化された塩基配列決定の手順が利用され得ることもまた、考えられる(Biothechniques(1995)19:448)。自動化された塩基配列決定の手順として、質量分析法による塩基配列決定(例えば、H.Kosterによる、米国特許第5,547,835号および国際特許出願公開番号WO 94/16101、発明の名称「DNA Sequencing by Mass Spectrometry」;H.Kosterによる、米国特許第5,547,835号および国際特許出願公開番号WO 94/21822、発明の名称「DNA Sequencing by Mass Spectrometry Via Exonuclease Degradation」、およびH.Kosterによる、米国特許第5,605,798号および国際特許出願番号PCT/US96/03651、発明の名称「DNA Diagnostics Based on Mass Spectrometry」;Cohenら(1996)Adv Chromatogr 36:127−162;およびGriffinら(1993)Appl Biochem Biotechnol 38:147−159を参照されたい)が挙げられる。特定の実施形態について、この塩基配列決定反応において、1個、2個、または3個のみの核酸塩基の出現が測定されることを必要とすることは、当業者にとって明らかである。例えば、A−trackなど(例えば、1個のヌクレオチドのみが検出される)が行われ得る。
例えば、米国特許第5,580,732号、発明の名称「Method of DNA sequencing employing a mixed DNA−polymer chain probe」および米国特許第5,571,676号、発明の名称「Method for mismatch−directed in vitro DNA sequencing」において、さらに他の塩基配列決定方法が開示される。
いくつかの場合において、被験者由来のDNA中の遺伝子の特定の対立遺伝子の存在は、制限酵素解析によって示され得る。例えば、特定のヌクレオチド多型は、別の対立遺伝子改変体のヌクレオチド配列には存在しない制限部位を含むヌクレオチド配列を生成し得る。
他の実施形態において、電気泳動移動度における変化が、遺伝子の対立遺伝子改変体の型を同定するために用いられる。例えば、一本鎖高次構造多型(single strand conformation polymorphism)(SSCP)が、変異体の核酸と野生型の核酸との間の電気泳動移動度の相違を検出するために用いられ得る(Oritaら(1989)Proc Natl.Acad.Sci USA 86:2766、Cotton(1993)Mutat Res 285:125−144;およびHayashi(1992)Genet Anal Tech Appl 9:73−79もまた参照されたい)。サンプルの核酸およびコントロールの核酸の一本鎖DNAフラグメントが変性され、次いで、復元(renature)させられる。一本鎖の核酸の二次構造は、配列によって変化し、その結果の電気泳動移動度の変化は、1個の塩基の変化ですら検出を可能にする。このDNAフラグメントは、標識され得るかまたは標識プローブによって検出され得る。このアッセイの感度は、(DNAよりもむしろ)二次構造が配列の変化に対してより感受性であるRNAを用いることによって増強され得る。別の好ましい実施形態において、主題の方法は、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖のヘテロ二本鎖分子を分離するために、ヘテロ二本鎖解析を利用する(Keenら(1991)Trends Genet 7:5)。
さらに別の実施形態において、多型領域の対立遺伝子改変体の同一性は、変性剤の勾配を有するポリアクリルアミドゲル中での多型領域を含む核酸の動きを解析することによって得られ、変性勾配ゲル電気泳動(denaturing gradient gel electrophoresis)(DGGE)(Myersら(1985)Nature 313:495)を用いてアッセイされる。DGGEが解析の方法として用いられる場合、例えば、PCRを用い、およそ40bpの高温融解性のGCリッチなDNAであるGCクランプ(clamp)を加えることによって、DNAが完全には変性しないことを確実にするように、DNAは改変される。さらなる実施形態において、コントロールおよびサンプルのDNAの移動度の相違を同定するために、温度勾配が変性剤勾配の代わりに用いられる(RosenbaumおよびReissner(1987)Biophys Chem 265:1275)。
二つの核酸の間の少なくとも1個のヌクレオチドの相違を検出するための技術の例として、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、公知の多型ヌクレオチドが中心に配置されるオリゴヌクレオチドプローブ(対立遺伝子特異的プローブ)が調製され得、次いで、完全な一致が見出される場合にのみハイブリダイゼーションを許容する条件下において、標的DNAにハイブリダイズされる(Saikiら(1986)Nature 324:163;Saikiら(1989)Proc.Natl Acad.Sci USA 86:6230;およびWallaceら(1979)Nucl.Acids Res.6:3543)。そのような対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術は、遺伝子の異なる多型領域における数個のヌクレオチドの変化の同時検出のために用いられ得る。例えば、特定の対立遺伝子改変体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ用のメンブレン(hybridizing membrane)に結合され、このメンブレンは次いで、標識されたサンプルの核酸とハイブリダイズされる。次いで、ハイブリダイゼーション信号の解析が、このサンプルの核酸のヌクレオチドの同一性を明らかにする。
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的な増幅技術が用いられ得る。特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、目的の対立遺伝子改変体を、その分子の中心に持ち得る(その結果、増幅は差次的なハイブリダイゼーションに依存する)(Gibbsら(1989)Nucleic Acids Res.17:2437−2448)か、または、片方のプライマーの3’の最末端に持ち得、適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼの伸長を妨害または減少し得る(Prossner(1993)Tibtech 11:238;Newtonら(1989)Nucl.Acids Res.17:2503)。この技術は、Probe Oligo Base Extensionを表して「PROBE」とも称される。加えて、切断(cleavage)に基づく検出をもたらすために、変異の領域に新規の制限部位を導入することが所望され得る(Gaspariniら(1992)Mol.Cell Probes 6:1)。
別の実施形態において、対立遺伝子改変体の同定は、例えば、米国特許第4,998,617号およびLandegren,U.ら(Science 241:1077−1080(1988))において記載されるように、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を用いて行われる。このOLAのプロトコルは、標的の一本の鎖の隣接配列にハイブリダイズし得るように設計される2個のオリゴヌクレオチドを用いる。オリゴヌクレオチドのうちの1個は、分離マーカー(例えば、ビオチン化されている)に結合し、別の1個は検出可能なように標識される。正確な相補的配列が標的分子において見出される場合、このオリゴヌクレオチドは、それらの末端が隣接し、ライゲーションの基質をもたらすように、ハイブリダイズする。次いで、ライゲーションは、標識されたオリゴヌクレオチドが、アビジン、または別のビオチンのリガンドを用いて回復されることを可能にする。Nickerson,D.A.らは、PCRおよびOLAの特質を組み合わせる核酸検出アッセイを記載している(Nickerson,D.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)87:8923−8927(1990))。この方法において、PCRは、標的DNAの指数的増幅を達成するために用いられ、標的DNAは次いでOLAを用いて検出される。
このOLA法に基づくいくつかの技術が開発されており、遺伝子の多型領域の特定の対立遺伝子改変体を検出するために用いられ得る。例えば、米国特許第5,593,826号は、ホスホルアミデート結合を有する結合体を形成するために3’−アミノ基を有するオリゴヌクレオチドおよび5’−リン酸化オリゴヌクレオチドを用いるOLAを開示する。Tobeら((1996)Nucleic Acids Res 24:3728)において記載されるOLAの別の変形において、PCRと組み合わされたOLAは、単一のマイクロタイターウェル中での二つの対立遺伝子の判別を可能にする。対立遺伝子特異的プライマーの各々を固有のハプテン(すなわち、ジゴキシゲニンおよびフルオレセイン)で印付けすることにより、各々のLA反応は、異なる酵素レポーターであるアルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されるハプテン特異的抗体を用いることによって、検出され得る。この系は、二つの異なる色の産生をもたらすハイスループットフォーマットを用いて、二つの対立遺伝子の検出を可能にする。
本発明はさらに、遺伝子における単一ヌクレオチド多型を検出するための方法を提供する。単一ヌクレオチド多型が、非改変配列の領域によって挟まれる改変部位を構成するので、単一ヌクレオチド多型の解析は、改変部位に存在する単一ヌクレオチドの同一性の決定しか必要とせず、各々の患者について完全な遺伝子配列を決定することは必要でない。そのような単一ヌクレオチド多型の解析を容易にするために、いくつかの方法が開発されている。
一実施形態において、単一塩基多型は、例えば、Mundy,C.R.(米国特許第4,656,127号)において開示されるような、特殊化したエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを用いることによって検出され得る。この方法によると、多型部位のすぐ3’側の対立遺伝子配列に対して相補的なプライマーが、特定の動物またはヒトから得られた標的分子にハイブリダイズさせられる。この標的分子の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に対して相補的であるヌクレオチドを含む場合、この誘導体は、ハイブリダイズされたプライマーの末端に組み込まれる。そのような組込みは、このプライマーをエキソヌクレアーゼに対して耐性にし、それによって、プライマーの検出を可能にする。このサンプルのエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性は公知であるので、このプライマーがエキソヌクレアーゼに対して耐性となったという知見は、標的分子の多型部位中に存在するヌクレオチドがこの反応において用いられたヌクレオチド誘導体のヌクレオチドに対して相補的であったことを明らかにする。この方法は、大量の無関係な配列データの決定を必要としないという利点を有する。
本発明の別の実施形態において、多型部位のヌクレオチドの同一性を決定するために、溶液に基づく方法が用いられる。Cohen,D.ら(フランス特許第2,650,840号;PCT出願番号WO91/02087)。米国特許第4,656,127号のMundy法において使用されるように、多型部位のすぐ3’側の対立遺伝子配列に対して相補的であるプライマーが使用される。この方法は、この部位のヌクレオチドの同一性を、標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を用いて決定する。ジデオキシヌクレオチド誘導体は、多型部位のヌクレオチドに対して相補的である場合、このプライマーの末端に組み込まれるようになる。
Genetic Bit AnalysisまたはGBATMとして公知の代替的な方法は、Goelet,P.ら(PCT出願番号92/15712)によって記載される。Goelet,P.らの方法は、標識されたターミネーターと多型部位の3’側の配列に対して相補的であるプライマーとの混合物を用いる。この組み込まれる標識されたターミネーターは、従って、評価されている標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドによって決定され、このヌクレオチドに対して相補的である。Cohenら(フランス特許第2,650,840号;PCT出願番号WO91/02087)の方法と対照的に、Goelet,P.らの方法は、好ましくは、プライマーまたは標的分子が固相に固定される異質相(heterogeneous phase)アッセイである。
最近、DNA中の多型部位をアッセイするためのいくつかのプライマー誘導性のヌクレオチド組み込みの手順が記載されている(Komher,J.S.ら、Nucl.Acids.Res.17:7779−7784(1989);Sokolov,B.P.,Nucl.Acids Res.18:3671(1990);Syvanen,A.−C.ら、Genomics 8:684−692(1990)、Kuppuswamy,M.N.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:1143−1147(1991);Prezant,T.R.ら、Hum.Mutat.1:159−164(1992);Ugozzoli,L.ら、GATA 9:107−112(1992);Nyren,P.ら、Anal.Biochem.208:171−175(1993))。これらの方法は、これら全てが、多型部位で塩基間を区別するために、標識されたデオキシヌクレオチドの組み込みに依存するということにおいて、GBATMと異なる。そのようなフォーマットにおいて、信号は組み込まれるデオキシヌクレオチドの数に比例するので、同じヌクレオチドの電気泳動において出現する多型は、その電気泳動の長さに比例する信号をもたらし得る(Syvanen,A.−C.ら、Amer.J.Hum.Genet.52:46−59(1993))。
遺伝子のコード領域中に位置される多型領域の対立遺伝子改変体の同一性を決定するために、上記の方法以外のさらに他の方法が用いられ得る。例えば、変異タンパク質を特異的に認識する抗体を、例えば、免疫組織化学法または免疫沈降法において用いて、変異遺伝子のタンパク質をコードする対立遺伝子改変体の同定を行い得る。野生型遺伝子のタンパク質に対する抗体は、例えば、Actonら(1999)Science 271:518(ヒト遺伝子と交差反応性である抗マウス遺伝子抗体)において記載される。野生型遺伝子のタンパク質または変異形態の遺伝子のタンパク質に対する他の抗体は、当該分野において公知の方法に従って調製され得る。あるいは、遺伝子のタンパク質の活性(例えば、脂質またはリポタンパク質への結合)もまた計測し得る。結合アッセイは、当該分野において公知であり、変異形態のレセプターへの結合が野生型のレセプターへの結合と異なるか否かを決定するために、例えば、被験体から細胞を得る工程、および標識された脂質との結合実験を行う行程を包含する。
多型領域がこの遺伝子のコード領域または非コード領域のいずれかにおいてエクソン中に位置される場合、対立遺伝子改変体の同一性は、mRNA、mRNA前駆体、またはcDNAの分子構造を決定することによって決定され得る。この分子構造は、ゲノムDNAの分子構造を決定するための上記の方法(例えば、塩基配列決定およびSSCP)のいずれかを用いて決定され得る。
本明細書において記載される方法は、例えば、上に記載されたもののような、あらかじめパッケージに組まれた診断キットを利用することによって、行われ得る。この診断キットは、少なくとも一つの本明細書にいおいて記載されるプローブまたはプライマー核酸を含み、例えば、被験体がチオプリンまたはアナログを用いて処置される場合に、重篤な副作用を引き起こし得るTPMT欠損を有する危険性があるか否かを決定するために、便利に用いられ得る。
上記の診断方法および予後の方法において用いるためのサンプル核酸は、被験体の任意の細胞型または組織から入手され得る。例えば、被験体の体液(例えば、血液もしくは唾液)は、公知の技術(例えば、それぞれ静脈穿刺もしくはスワブ)によって入手され得るか、または心臓のようなヒト組織(生検、移植される臓器)から入手され得る。あるいは、乾燥サンプル(例えば、毛または皮膚)での核酸試験が行われ得る。
診断の手順はまた、核酸精製が必要でないように、生検または切除術から得られる患者の組織の組織切片(固定および/または凍結)上で直接的にインサイチュでも行われ得る。核酸試薬は、そのようなインサイチュの手順のためのプローブおよび/またはプライマーとして用いられ得る(例えば、Nuovo,G.J.,1992年、PCR in situ hybridization:protocols and applications,Raven Press,New Yorkを参照されたい)。
一つの核酸配列の検出に主に焦点を合わせる方法に加えて、プロファイリングもまた、そのような検出スキームにおいて評価され得る。フィンガープリントプロファイリングは、例えば、ディファレンシャルディスプレイ(differential display)手順、ノーザン解析、および/またはRT−PCRを利用することによって、作製され得る。
本発明の実施において、チオプリン応答について特定のマーカーを示す多数の個体における多型パターンの分布は、上記の方法のいずれかによって決定され、年齢、人種起源、および/または任意の他の統計学的にもしくは医学的に関連のあるパラメータについて一致しており、量的にまたは質的に異なる状態のマーカーを示す患者の多型パターンの分布と比較される。相関関係は、当該分野において公知の任意の方法を用いて得られる。この方法として、名義ロジスティック回帰(nominal logistic regression)、χ二乗検定、または標準最小二乗回帰分析が挙げられる。このように、特定の多型パターンと特定のチオプリン応答状態との間の統計学的に有意な相関関係(p値として提供される)を確立することが可能である。さらに、特定の多型パターンと、(例えば、特定の治療レジメンからもたらされるような)薬物応答の変化との間の統計学的に有意な相関関係を確立することが可能である。このように、多型パターンを特定の処置に対する応答性と関連付けることが可能である。
本発明の別の実施形態において、二つ以上の多型領域が、いわゆる「ハプロタイプ」を定義するために組み合わせられる。ハプロタイプは、機能的におよび/または空間的に連鎖する二つ以上のSNPの群である。本発明において開示されるSNPを、ハプロタイプを形成するために、互いにまたはさらなる多型領域のいずれかと組み合わせることが可能である。ハプロタイプは、単一のSNPよりよい予測的/診断的情報を与えることが期待される。
本発明の好ましい実施形態において、薬物応答を予測するSNP/ハプロタイプのパネルが定義される。この予測的なパネルは、次いで、患者の遺伝子型決定のために、複数のSNPを同時に遺伝子型決定し得る(多重化(Multiplexing))プラットフォーム上で用いられる。好ましいプラットフォームは、例えば、遺伝子チップ(Affymetrix)またはLuminex LabMAPTMリーダーである。しかし、多重遺伝子型決定のために用いられ得る二次元導波管またはナノ粒子のような、より新たな開発もまた進行中である。Zeptosen(Witterswil,Switzerland)によって用いられるような薄膜二次元導波管(PWG)は、例えば、高屈折率を有する材料(例えば、TaまたはTiO)の150nm〜300nmの薄膜からなり、この薄膜は、より低い屈折率を有する透明な支持体(例えば、ガラスまたはポリマー)上に堆積させられる。この基質にエッチングまたはエンボス加工される回析格子(diffractive grating)によって、平行レーザー光束がこの導波管の膜に連結される。光は、この膜の中を伝搬し、隣接する媒体への伝搬の方向に対して垂直の強力な即時消退性の場(evanescent field)を作り出す。この場の強さは、導波管表面からの距離が離れると共に指数的に減衰し、この場の浸透長(penetration depth)は、約400nmに限定される。この効果は、導波管の表面または導波管の表面付近に位置する発色団のみを選択的に励起するために利用され得る。
診断への適用のために、特異的なキャプチャー(capture)が導波管表面に固定される。PWGチップに適用されるサンプル中の分析物の存在は、分析物またはこのアッセイにおける分析物の結合パートナーの一つに結合される蛍光レポーター分子を用いて検出される。即時消退性の場による蛍光励起によって、発色団の励起および検出は、感知面(sensing surface)に制限されるが、バルク溶液中の非結合分子からの信号は検出されない。この技術を用いて、TPMT遺伝子中の多型を検出することは可能であるが、偽遺伝子に関して、キャプチャープローブの設計の際に注意する必要がある(遺伝子と偽遺伝子との間の非相同性配列の同定についての上記の議論を参照されたい)。
あるいは、異なる蛍光色を発するナノ粒子が用いられ得、その結果、例えば、Expert Rev Mol Diagn.(2003年;3(2):153−61)において論議されるような、一回の反応における数種のSNPアッセイのために、多重化が設定され得る。
患者のハプロタイプのその後の同定および評価は、次いで、特異的かつ個別化された治療を導くことを助け得る。
例えば、本発明は、有害薬物反応についての危険性の増加を示唆する遺伝的多型またはハプロタイプを示す患者を同定し得る。この場合において、この薬物の用量は、ADRについての危険性が低下するように減量されるべきである。
患者の個々の薬物応答を予測する能力が薬物の処方に影響するべきである(すなわち、薬物の処方は、異なる患者の分類(低/高応答性の患者、低い/好ましい代謝を有する患者、およびADR傾向のある患者)にこの薬物の処方が適するように調整されるべきである)ことは、自明である。これらの異なる薬物の処方物は、この薬物の異なる用量を含み得る。すなわち、この医薬製品は少量または多量の活性基質を含む。本発明の別の実施形態において、この薬物の処方物は、有益な効果を促進するおよび/またはADRについての危険性を低下させる、さらなる基質を含み得る(Folkersら、1991年、米国特許第5,316,765号)。
(単離された多型核酸、およびプローブ)
本発明は、ヒト遺伝子について本明細書において記載される多型位置を含む単離された核酸を提供する。本発明はまた、これらの多型を検出するために有用であるプローブを提供する。
本発明の実施における、分子生物学における多くの従来技術。そのような技術は周知であり、例えば、Sambrookら、2000年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;DNA Cloning:A Practical Approach,第I巻および第II巻、1985年(D.N.Glover編);Oligonucleotide Synthesis,1984年(M.L.Gait編);Nucleic Acid Hybridization,1985年(HamesおよびHiggins);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,1997年(John Wiley and Sons);およびMethods in Enzymology,第154巻、および第155巻(それぞれ、WuおよびGrossman編、ならびにWu編)において完全に説明される。
本発明の核酸は、遺伝的多型の検出のためのプローブとして、および、正常ペプチドまたは改変体ペプチドまたは実施例において列挙される遺伝子によってコードされるポリペプチドの組換え産生のための鋳型として、有用性を見出す。
本発明に従うプローブは、長さが約10〜100bp、好ましくは14〜75bp、および最も好ましくは15〜25bpの、本明細書において開示される一つ以上の多型配列または多型位置のすぐ隣に隣接する配列に高ストリンジェンシーでハイブリダイズする、単離された核酸を含むが、それらに限定されない。さらに、いくつかの実施形態において、全長の遺伝子配列がプローブとして用いられる。一連の実施形態において、これらのプローブは、本明細書において開示される遺伝子中の多型位置の全長にわたる。別の一連の実施形態において、これらのプローブは多型位置のすぐ隣に隣接する配列に対応する。
(キット)
本明細書において示されるように、本発明は、診断方法を提供し、この診断方法は、例えば、多型領域の特定の対立遺伝子改変体がTPMT欠損と関連する、本明細書において開示される遺伝子の遺伝子座に存在する多型領域の対立遺伝子改変体の同一性を決定するための診断方法である。好ましい実施形態において、この診断キットは、被験体がチオプリンを用いて処置される場合に重篤な副作用を蒙る危険性があるか否かを決定するために用いられ得る。この情報は、次いで、例えば、そのような個体の処置を最適化するために用いられ得る。
好ましい実施形態において、このキットは、プローブおよびプライマーを含み、これらのプローブおよびプライマーは、遺伝子にハイブリダイズし得、それによってその遺伝子が、TPMT欠損と関連する多型領域の対立遺伝子改変体を含むか否かを同定し得る。このキットはさらに、SNPの組み合わせからTPMT欠損のグレードを同定するアルゴリズムを含む。このキットは、好ましくは、TPMT欠損を有する被験体の診断における使用のための指示書をさらに含む。このキットのプローブまたはプライマーは、本出願において記載されるプローブまたはプライマーのいずれかであり得る。
目的の多型領域を含む遺伝子の領域を増幅するための好ましいキットは、1個または2個以上のプライマーを含む。
(材料および方法)
(ABI 7700/7900TM装置(TaqMan解析のための)を用いる遺伝子型決定)
TaqMan(Applied Biosystems/Perkin Elmer)を用いる患者のDNAの遺伝子型決定を、製造者の指示書に従って行った。このTaqManアッセイは、Leeら(Nucleic Acids Research 1993年、21:3761−3766)によって論議される。
(ヒト被験体)
全血は、中央診断検査室から廃棄物として得られ、槽の個体標識は不可逆的に除去され、新たな番号によって置き換えられた。DNAは、Qiagen(Hilden,Germany)製の市販のキット(QIAamp DNA Blood Mini Kit)を用いて単離した。
(実施例)
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態をさらに説明することを意図しており、その性質において限定することは全く意図しない。
(遺伝子型決定アッセイ)
およそ1300の匿名化(anonymyze)された血液サンプルのDNAを、表1に列挙される50個のSNPについて遺伝子型決定した。各々のSNPの配列を、各々のSNPが配列の中央にあるものとしてこの表に示す。SNPが配列上に見出され得る位置もまた、数字で示す。基準(reference)として、TPMT遺伝子配列をNCBIから取得し(登録番号AL589723)、TPMT酵素についてのコード配列が5’〜3’方向では与えられないので、この配列を逆方向にし、相補化(complement)した。50個のSNPの全てについて、表2に列挙するような、各々の対立遺伝子についての、異なる色素を有するPCRプライマーおよびTaqManプローブを用いて、TaqManアッセイを設計した。TaqManを用いるための一般的なプロトコルは、上記に記述される。プライマーおよびプローブの濃度、DNA、ならびにサイクルの温度および時間のような他のパラメータを記載するために、プロトコルの一例を表3に示す。
表1:SNP1〜50のSNP配列(登録番号AL589723(逆方向に相補化)中の周囲の配列および各々の位置を含む)。ベンチマーキング(benchmarking)のために、9個の基準SNPを含めた。SNP44、SNP47、およびSNP50は、表現型に対する遺伝子型の相関関係が証明されている(上記を参照)。SNP42、SNP43、SNP45、SNP46、SNP48、およびSNP49は、最近の特許出願WO03/066892 A1からのものである。
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
表2:SNP1〜50のプライマー配列およびプローブ配列。第一列はSNP1〜50についてのSNP−IDを記載し、第二列は各々のSNPのプライマーおよびプローブのIDを記載する。プライマーおよびプローブの命名法は以下の通りである:SP900xxxはそれぞれのSNPを表し(例えば、SP900295はSNP1である)、その後に一つ以上のアルファベット文字が続く:FおよびR(順方向プライマーおよび逆方向プライマーを説明する)、または、4つの塩基記号であるA、C、G、Tのうちの一つ(この後に「+」もしくは「−」が続き、この「+」もしくは「−」は、プローブを説明する);プローブの5’色素型を、FAM、VIC、Tetの記号で表す。「+」プローブはMGB/DarkQuencherを3’末端に有し、「−」プローブは消光剤(Quencher)としてTAMRAを用いる。プライマー名の最後の「Out」は、ネステッドPCRにおける第一のプライマーすなわち外側のプライマーを表す。「AoD」はApplied Biosystem製のAssays−on−DemandTM(市販のアッセイ)を表す。
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
表3:TaqMan PCRプロトコルの例
Figure 2007517511
(TPMTアッセイ)
Kroeplin,T.ら(Eur.J Clin.Pharmacol(1998)54:265−271)において記載される、6−チオグアニンを基質として用いるHPLC法によって、赤血球溶解物をTPMT活性について分析した。
(VNTRの塩基配列決定)
TPMT遺伝子のVNTRの塩基配列決定を、製造者によって記載される通りにプロトコルを使用して、以下のプライマーを用い、ABI PrismTM3700(Applied Biosystems)を用いて行った:
VNTR−Seq1 gctccgccctgcccattt(順方向)および
VNTR−Seq2 gtcattggtggcggaggc(逆方向)
概して、分子技術は、Sambrookら(Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第3版、2000年、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従って行った。
プライマーVNTR−Seq1およびプライマーVNTR−Seq2を用いて増幅したVNTR領域は、1〜6回のA(gtcattggtggcggaggc)の重複、1〜3回のB(gaggcggggcgcgggcg)の重複、および1回のC(gaggcggggcgcggaga)の重複によって、長さが233〜377bpの範囲にわたった。
(結果)
およそ1300個のDNAサンプルから、本発明者らは、TPMT遺伝子に135個の固有のハプロタイプを同定した。表4aは、全ての多型SNPの対立遺伝子頻度を示す:本発明者らの1300個のDNAサンプル中で、20個のSNPが単形であることを見出した(表4bに列挙する)。驚いたことに、9個の基準SNPのうち5個が試験群において単形であった。基準SNPとして6個のSNPのうち5個を一つの特許出願から取得し、これらを、ベンチマーク(benchmark)SNPとして用いることを意図したにも関わらず、である。
表4a:およそ1300個のサンプル中の、30個の多型SNPの全ての対立遺伝子頻度。基準SNPを、第二列において「R」で印付けし、連鎖するSNPを網掛けし、特に本文中に言及される他のSNPを、カンマ(,)またはダッシュ(−)のいずれかで印付けする。
Figure 2007517511
表4b:20個の単形SNPを、試験した1300個のDNAサンプル中に見出した。
Figure 2007517511
表5は、30個の多型SNPの全ての異なるハプロタイプを、TPMT遺伝子上の5’〜3’方向(表の左から右へ)で示す。SPNの位置を、登録番号AL589723(逆方向に相補化)を参照して記述する。よりよい全体像を得るために、野生型の遺伝子型を表5においてカンマ(,)により記号で表し、ヘテロ接合体(heterocygote)を(o)で印付けし、変異体ホモ接合体(homocygote)を(X)で印付けする。真の遺伝子型は、この表の下部から読まれ得る。この表から、SNP47とSNP27との間で、一つのハプロタイプブロックの別のハプロタイプブロックへの移行が始まることが示され、このことは、おそらく減数分裂における母性染色体および父性染色体の交差点を表し得る。表5においてSNP27で始まるTPMT遺伝子の下流部分は、TPMTタンパク質の最後の4個のエクソンをコードする。このハプロタイプブロックは、ほぼ全ての計測された患者において類似した対立遺伝子頻度を有するSNPを含み、野生型遺伝子型、ヘテロ接合体(heterocygote)遺伝子型、および変異体遺伝子型の、非常に類似した出現を伴う。
表5:TPMT遺伝子上の5’〜3’方向(表の左から右へ)での、30個の多型SNPの全ての異なるハプロタイプ。基準SNPを「R」で印付けし、連鎖するSNPを網掛けし、本文中に言及される他のSNPをダッシュ(−)で印付けする。
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
このハプロタイプブロックの例外の一つは、独立したパターンを示すSNP50である。この遺伝子の上流部分は、患者ごとに、より独立した対立遺伝子頻度のパターンを示すSNPを含む(おそらく、組換えのホットスポットである)。一つの遺伝子内のこれらの二つの隣接するハプロタイプブロックに起因して、連鎖するSNPを、単に、それらが一つの遺伝子上の隣り合ったものであるという事実から結論付けることは、演繹的に不可能である。しかし、驚いたことに、本発明者らは、SNP10、SNP17、SNP47、およびSNP50が互いに連鎖していることを見出した;より正確には、SNP10がSNP50に強く連鎖し、SNP17がSNP47に強く連鎖することを見出した。なおさらに驚いたことに、本発明者らは、SNP26およびSNP29が、基準SNP47および基準SNP50ならびにSNP10およびSNP17に、以下の様式で連鎖する一個のハプロタイプを表すことを見出した:
SNP26がHTでありSNP29がWTであるとき、TPMT酵素は欠損している。
SNP26がMTでありSNP29がWTであるとき、TPMT酵素はさらに欠損している。
SNP26がMTでありSNP29がHTであるとき、TPMT酵素は欠損している。
同様の様式で、欠損したTPMT酵素活性に連鎖する他のハプロタイプを表5から同定することが出来る。
SNP7がMTでありSNP20がHTであるとき、TPMT酵素は欠損している。
SNP7がWTでありSNP8がHTでありSNP20がWTであるとき、TPMT酵素は欠損している。
表5において、TPMT欠損個体について説明するために、他のハプロタイプが同定され得る。例えば、表5の第1行〜第57行のハプロタイプのいずれも、以下のSNPの2個から全てまでを用いて、TPMT酵素欠損である個体について説明するために用いられ得る:SNP1、SNP2、SNP3、SNP4、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10、SNP12、SNP16、SNP17、SNP18、SNP20、SNP22、SNP23、SNP25、SNP26、SNP27、SNP28、SNP29、SNP31、SNP32、SNP33、SNP34、SNP36、SNP41。10個体の例を表5のそれぞれのハプロタイプと共に、表6に示す:
表6:TPMT欠損個体のハプロタイプの例
Figure 2007517511
一つの列中の各々のSNPは、同じ列の別のSNPと組み合わされなければならないが、組合せは2個、3個、4個、または全てまでのSNPの組合せまであり得る。ほとんどの場合において、SNP27、SPN28、SPN29、SPN31、SPN33、SNP34、SNP36、SNP41のうちの1個または2個を取得すれば十分である。なぜならば、これらのSNPは互いに非常に強く連鎖するからである(完全な表5を参照されたい)。
さらなる例は、健康な志願者において測定されたTPMT酵素活性と10個のSNPの個々のハプロタイプの相関関係を、10個のSNPの個々のハプロタイプと共に示す表7に示される。6−チオグアニンを基質として用いるHPLC法によって、赤血球溶解物をTPMT活性について分析した。この方法は、Kroeplin,T.ら(Eur.J Clin.Pharmacol(1998)54:265−271)において記載される。この酵素活性を、nmol/gHb/hで測定した。このTPMT活性は、0nmol/gHb/h〜106nmol/gHb/hの範囲を示し、46.6nmol/gHb/hの中央値、および47.6nmol/gHb/hの平均値を有した。34.5nmol/gHb/hまでのカットオフ(cutoff)を設定する場合、TPMT値がこのカットオフより低い本明細書において示される患者のハプロタイプは、それぞれ93%の感受性および特異性を有する。この例と共に、対応するハプロタイプは、ヒトにおいて異なるTPMT表現型を構成するハプロタイプのさらなる例であって、それぞれの患者がチオプリンもしくは誘導体を用いて処置されなければならない場合に、治療の決定の補助として用いられ得る。
表7:TPMT酵素活性に対するSNPおよびハプロタイプの相関関係
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
Figure 2007517511
表8は、TPMT酵素活性と相関関係があるハプロタイプの詳細な総括を示す。特に興味深いものは、TPMT酵素活性が無いハプロタイプ、または、低いあるいは中程度のTPMT酵素活性を認めるハプロタイプである。
表8:TPMT酵素活性と相関関係があるハプロタイプの詳細な総括
Figure 2007517511
表8、続き:WT、HT、またはMTである各々のSNPの、対応する遺伝子型は、以下の表から読み得る:
Figure 2007517511
表8の凡例:SNP遺伝子型:WT=野生型;HT=ヘテロ接合体、MT=変異体。TPMT酵素活性:0=無い、または低い;1=中程度;2=正常、または高い。
TPMT活性が、無い、低い、または中程度であることと相関関係がある、最も優れたハプロタイプの記載の総括を以下に示す:
ハプロタイプ群1:
SNP26がMUTANTでありSNP29がWILDTYPEである場合、TPMT酵素活性は無いか、または低い。
SNP26がHETEROZYGOTEでありSNP29がWILDTYPEである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
SNP26がMUTANTであり、SNP29がHETEROZYGOTEである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
ハプロタイプ群2:
SNP20がMUTANTであり、SNP7がMUTANTであり、SNP8がWILDTYPEであり、SNP26がWILDTYPEであり、SNP29がWILDTYPEである場合、TPMT酵素活性は無いか、または低い。
SNP20がHETEROZYGOTEであり、SNP7がMUTANTであり、SNP8がWILDTYPEである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
SNP20がWILDTYPEであり、SNP7がWILDTYPEであり、SNP8がHETEROZYGOTEまたはMUTANTである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
ハプロタイプ群3:
SNP10がMUTANTでありSNP17がMUTANTである場合、TPMT酵素活性は無いか、または低い。
SNP10がHETEROZYGOTEまたはMUTANTであり、SNP17がWILDTYPEである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
SNP10がMUTANTでありSNP17がHETEROZYGOTEである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
SNP10がHETEROZYGOTEまたはWILDTYPEであり、SNP17がHETEROZYGOTEである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
SNP10がWILDTYPEでありSNP17がMUTANTである場合、TPMT酵素活性は中程度である。
本発明のさらなる実施形態として、それぞれの患者において、本明細書において記載される遺伝子型およびハプロタイプのTPMT発現に対する相関関係の予測的効力を、多くのVNTRと組み合せ得る。ところが、より多数の重複は、TPMT活性に対して逆に対応する。

Claims (8)

  1. チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子の変異対立遺伝子またはそのフラグメントを含む、単離されたポリヌクレオチド分子であって、表1に示されるような単一ヌクレオチド多型(SNP1〜41)を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
  2. チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子の変異対立遺伝子またはそのフラグメントを含む、単離されたポリヌクレオチド分子であって、少なくとも2個以上の表1に示されるような単一ヌクレオチド多型(SNP1〜41)を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
  3. チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子の変異対立遺伝子またはそのフラグメントを含む、単離されたポリヌクレオチド分子であって、以下:
    a)SNP26がMT(GG)であり、SNP29がWT(GG)である
    b)SNP26がHT(AG)であり、SNP29がWT(GG)である
    c)SNP26がMT(GG)であり、SNP29がHT(AG)である
    d)SNP10がMT(TT)であり、SNP17がMT(GG)である
    e)SNP10がHT(AT)またはMT(TT)であり、SNP17がWT(TT)である
    f)SNP10がMT(TT)であり、SNP17がHT(GT)である
    g)SNP10がHT(AT)またはWT(AA)であり、SNP17がHT(GT)である
    h)SNP10がWT(AA)であり、SNP17がMT(GG)である
    ハプロタイプ(組合せ)で、単一ヌクレオチド多型である、SNP10、および/またはSNP17、および/または、SNP26およびSNP29を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
  4. チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子の変異対立遺伝子またはそのフラグメントを含む、単離されたポリヌクレオチド分子であって、以下:
    a)SNP7がMT(AA)であって、SNP8がWT(TT)であって、SNP20がMT(AA)であって、SNP26がWT(AA)であって、SNP29がWT(AA)である
    b)SNP7がMT(AA)であって、SNP8がWT(TT)であって、SNP20がHT(AT)である
    c)SNP7がWT(TT)であって、SNP8がHT(AT)またはMT(AA)であって、SNP20がWT(TT)である
    ハプロタイプ(組合せ)で、単一ヌクレオチド多型である、SNP7、SNP8、SNP20、および/または、SNP26およびSNP27を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
  5. 請求項1〜4に記載のポリヌクレオチド分子のいずれか一つに対して完全に相補的である単離されたポリヌクレオチド分子。
  6. 被験体のチオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子型を決定するための診断アッセイまたはキットであって、
    a)該被験体から核酸を単離する工程;
    b)チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)PCRフラグメントを、請求項1〜4に記載のSNPの少なくとも1個を含む該核酸由来の表2のプライマーを用いて特異的に増幅し、それによって増幅されるフラグメントを得る工程;および
    c)工程b)において得られる増幅されたフラグメントを遺伝子型決定し、それによって該被験体のチオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)の遺伝子型またはハプロタイプを決定する工程、
    d)配列決定プライマー、および配列決定試薬を含むキットであって、該プライマーは、請求項1〜4に記載のヒトTPMT遺伝子中の多型位置にハイブリダイズするプライマー;および請求項1〜4に記載のヒトTPMT遺伝子中の多型位置にすぐ隣接してハイブリダイズするプライマーを含む群から選択される、キット
    を含む、診断アッセイまたはキット。
  7. 請求項6において定義されるキットであって、請求項1〜4において定義される配列の群から選択される2個以上〜全ての多型部位の組合せを検出する、キット。
  8. チオプリン治療に対する患者の個々の応答を決定するための方法であって、該応答として、薬物効能および有害薬物反応が挙げられ、請求項1〜4に記載のヌクレオチドの改変体の同一性を決定する工程を包含する、方法。
JP2006548216A 2004-01-10 2005-01-07 ヒトチオプリンs−メチルトランスフェラーゼ欠損に関連するハプロタイプおよび多型 Pending JP2007517511A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP04000398 2004-01-10
PCT/EP2005/000064 WO2005066362A2 (en) 2004-01-10 2005-01-07 Haplotypes and polymorphisms linked to human thiopurine s-methyltransferase deficiencies

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007517511A true JP2007517511A (ja) 2007-07-05
JP2007517511A5 JP2007517511A5 (ja) 2008-02-14

Family

ID=34745844

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006548216A Pending JP2007517511A (ja) 2004-01-10 2005-01-07 ヒトチオプリンs−メチルトランスフェラーゼ欠損に関連するハプロタイプおよび多型

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20090197246A1 (ja)
EP (1) EP1706487A2 (ja)
JP (1) JP2007517511A (ja)
CA (1) CA2552815A1 (ja)
WO (1) WO2005066362A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010535501A (ja) * 2007-08-09 2010-11-25 ユニバーシティ オブ オタゴ チオプリン薬抵抗性およびチオプリン薬不耐性のリスクがある個体を同定する方法

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
SG11201508345TA (en) * 2013-04-11 2015-11-27 Agency Science Tech & Res Nanoprobe-based genetic testing
CN105506096A (zh) * 2015-12-30 2016-04-20 广州金域检测科技股份有限公司 一种检测tpmt基因多态性的引物与方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003066892A1 (en) * 2002-02-04 2003-08-14 Epidauros Biotechnologie Ag Polymorphisms in the human gene for tpmt and their use in diagnostic and therapeutic applications

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB8311018D0 (en) * 1983-04-22 1983-05-25 Amersham Int Plc Detecting mutations in dna
US4998617A (en) * 1986-09-15 1991-03-12 Laura Lupton Inc Facial cosmetic liquid make up kit
US5316765A (en) * 1989-09-07 1994-05-31 Karl Folkers Foundation For Biomedical And Clinical Research Use of coenzyme Q10 in combination with HMG-CoA reductase inhibitor therapies
ATE173767T1 (de) * 1992-04-03 1998-12-15 Perkin Elmer Corp Proben zusammensetzung und verfahren
US5605798A (en) * 1993-01-07 1997-02-25 Sequenom, Inc. DNA diagnostic based on mass spectrometry
US5547835A (en) * 1993-01-07 1996-08-20 Sequenom, Inc. DNA sequencing by mass spectrometry
US5593826A (en) * 1993-03-22 1997-01-14 Perkin-Elmer Corporation, Applied Biosystems, Inc. Enzymatic ligation of 3'amino-substituted oligonucleotides
US5571676A (en) * 1995-06-07 1996-11-05 Ig Laboratories, Inc. Method for mismatch-directed in vitro DNA sequencing
US5856095A (en) * 1995-08-14 1999-01-05 St. Jude Children's Research Hospital Identification of two novel mutant alleles of human thiopurine S-methyltransferase, and diagnostic uses thereof

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003066892A1 (en) * 2002-02-04 2003-08-14 Epidauros Biotechnologie Ag Polymorphisms in the human gene for tpmt and their use in diagnostic and therapeutic applications

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010535501A (ja) * 2007-08-09 2010-11-25 ユニバーシティ オブ オタゴ チオプリン薬抵抗性およびチオプリン薬不耐性のリスクがある個体を同定する方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2005066362A2 (en) 2005-07-21
EP1706487A2 (en) 2006-10-04
US20090197246A1 (en) 2009-08-06
WO2005066362A3 (en) 2006-06-22
CA2552815A1 (en) 2005-07-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101727882B1 (ko) 미백 피부 타입 유전자 다형성 마커 및 이의 용도
US8076065B2 (en) Methods and compositions for assessment of pulmonary function and disorders
US20070065865A1 (en) Polymorphisms Associated with Coronary Artery Disease
EP2880179B1 (en) Genetic markers for predicting responsiveness to fgf-18 compound
JP6272860B2 (ja) 軟骨障害の予後バイオマーカー
JP2010535501A (ja) チオプリン薬抵抗性およびチオプリン薬不耐性のリスクがある個体を同定する方法
JP2007517511A (ja) ヒトチオプリンs−メチルトランスフェラーゼ欠損に関連するハプロタイプおよび多型
KR20170051747A (ko) 피부 주름 발생 민감도 진단용 단일염기다형성 마커 및 이의 용도
KR20170049768A (ko) 피부 색상 및 흑화 민감도 진단용 단일염기다형성 마커 및 이의 용도
KR102650359B1 (ko) 약물 과민반응 진단용 snp 및 이를 이용한 진단 방법
KR20100136724A (ko) 비소세포 폐암 환자의 생존기간 연관된 brca1 유전자 하플로타입 마커 및 그의 용도
WO2009101619A2 (en) Methods for predicting a patient's response to lithium treatment
US20160230231A1 (en) Genotyping tests and methods for evaluating plasma creatine kinase levels
WO2009053513A1 (es) Procedimiento y kit para la determinación de predisposición, determinación de riesgo a desarrollar o el diagnóstico de psoriasis
US20130078637A1 (en) Antipsychotic-induced parkinsonism genotypes and methods of using same
WO2016123543A1 (en) Method for treating schizophrenia comprising administering lurasidone
JP2004512842A (ja) インスリン遺伝子の5’隣接領域におけるアリル変異および体脂肪に基づく、インスリン非依存型糖尿病のリスク評価方法
US20110143344A1 (en) Genetic polymorphisms and substance dependence
JP2007512231A5 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071217

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100902

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20101008

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20101202

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20101209

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20110315