JP4117152B2 - インクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、いわゆる多階調印刷等のため、インクジェットヘッドの同一のノズルから一印刷周期内に複数のインク滴を吐出し、これら複数のインク滴によって一つのインクドットを形成するインクジェット式記録装置が知られている。
【0003】
一般に、この種のインクジェット式記録装置に搭載されるインクジェットヘッドは、インクを収容する圧力室と当該圧力室に連通するノズルとが形成されたヘッド本体と、上記ノズルからインク滴を吐出させるように圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータと、アクチュエータに駆動信号を供給する駆動信号供給部とを備えている。ヘッドの小型化等のため、アクチュエータとしては、圧電素子を有するものがよく用いられている。
【0004】
記録動作の際には、まず、上記駆動信号供給部が一印刷周期中に1または2以上のパルスを含む駆動信号を供給する。そして、当該駆動信号を受けたアクチュエータは、圧力室内のインクをノズルから押し出すことによって、パルス数と同数のインク滴を吐出させる。吐出されたインク滴は、吐出順に記録紙上に着弾し、一つのインクドットを形成する。このようなインクドットが記録紙上に多数集合することにより、当該記録紙に所定の画像等が形成される。ここで、一印刷周期中に吐出するインク滴の個数を調整することにより、ドットの濃淡や大きさが調整される。その結果、いわゆる多階調印刷が行われることになる。
【0005】
しかし、高速印刷を行う場合には、インクジェットヘッドのキャリッジ速度が大きいため、同一のノズルから吐出された複数のインク滴は、キャリッジ方向にずれた位置に着弾しやすくなる。その結果、インクドットがキャリッジ方向に細長い長円形状になってしまい、画像の品質が低下しやすかった。
【0006】
そこで、特開2001−146011号公報に開示されているように、吐出した複数のインク滴を飛翔中に合体させ、一つのインク滴にしてから記録紙に着弾させる技術が提案されている。このようにインク滴同士を合体させることにより、インクドットの形状がいびつな形状になることを防止することができる。
【0007】
さらに、上記公報には、駆動信号をインク滴の吐出数に応じて別々に生成するのではなく、一種類の駆動信号を生成しておき、吐出数に応じて上記駆動信号の一部を選択的に供給する技術が開示されている。このことにより、駆動信号の生成を容易化することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、インク滴の大きさに応じて駆動信号の一部を選択的に供給するインクジェットヘッドでは、インク滴の大きさによって吐出速度が変わるため、インク滴の着弾位置を揃えることが難しかった。
【0009】
例えば、図20に示すように、小滴の吐出速度をv1、大滴の吐出速度をv2(ただし、v1<v2)とした場合、キャリッジ速度vCはインク滴の大きさに拘わらず一定であるので、小滴の着弾位置L1と大滴の着弾位置L2とには、ΔLだけの位置ずれが生じることになる。しかし、インクジェット式記録の更なる高性能化を図るためには、上記位置ずれを是正し、着弾位置を高精度に揃えることが望まれる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インク滴の大きさに応じて駆動信号の一部を選択的に供給するインクジェットヘッドにおいて、インク滴の着弾位置を揃えることにより、記録の高品質化を図ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインクジェットヘッドは、少なくとも大滴のインクと小滴のインクとを選択的に吐出自在なインクジェットヘッドであって、ノズルと当該ノズルに連通し且つインクが充填された圧力室とが形成されたヘッド本体と、圧電素子と当該圧電素子に電圧を印加する電極とを有し、前記圧電素子の圧電効果によって前記圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータと、それぞれ圧力室をいったん減圧してから加圧するようにアクチュエータを駆動する複数のパルス信号からなる大滴吐出用信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、大滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号のすべてのパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する一方、小滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号の後側の一部のパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する信号選択部とを備え、前記駆動信号のパルス信号は、パルス間隔がヘッドのヘルムホルツ周期以下に設定されているとともに、後のパルス信号によるインクメニスカス振動が先のパルス信号によるインクメニスカス振動と共振するように且つこれらパルス信号により吐出された複数のインク滴が飛翔中に合体するように設定され、小滴を吐出するときに選択されるパルス信号のうち先頭のパルス信号は、所定の基準電位を前側のパルスベースとし且つ所定の基準パルス高さをパルス高さとするパルス信号であり、大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されないパルス信号に、基準電位よりも低い電位を前側のパルスベースとし且つパルス高さが前記基準パルス高さよりも低いパルス信号が含まれているものである。
【0012】
このことにより、大滴吐出時には大滴吐出用信号のすべてのパルス信号が選択される一方、小滴吐出時には大滴吐出用信号の後側の一部のパルス信号が選択されるので、大滴を吐出する場合には、小滴を吐出する場合に比べて、吐出動作が早めに開始されることになる。
【0013】
ところで、何らの工夫も施さなければ、大滴は小滴よりも吐出速度が大きくなる。そのため、大滴と小滴の着弾位置はずれるおそれがある。しかし、上記インクジェットヘッドでは、大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されないパルス信号に、基準電位よりも低い電位を前側パルスベースとし且つパルス高さが基準パルス高さよりも低いパルス信号(以下、低パルス信号という)が含まれている。そのため、大滴の吐出速度は、小滴の吐出速度よりも小さくなる。したがって、大滴の吐出タイミングが小滴の吐出タイミングよりも早いにも拘わらず、大滴と小滴との着弾位置のずれは少なくなる。その結果、高品質の記録を得ることができる。
【0014】
また、小滴を吐出するときに選択されるパルス信号のうち先頭のパルス信号は、所定の基準電位を前側パルスベースとし且つ所定の基準パルス高さをパルス高さとするパルス信号である。そのため、小滴を吐出する際に信号選択のタイミングに若干の遅れが生じたとしても、アクチュエータに供給される信号の波形がいびつになることはない。そのため、所定の波形の信号が安定して供給されるため、吐出性能を安定化させることができる。
【0015】
前記インクジェットヘッドにおいて、駆動信号は、大滴吐出用信号の前又は後に、1又は2以上のパルス信号からなり第3のインク滴を吐出する第3インク滴吐出用信号を含んでいてもよい。
【0016】
このことにより、大滴及び小滴に加え、第3のインク滴が吐出されるため、多階調記録の階調数を増加させることができる。なお、ここでいう「第3の」とは、大滴及び小滴と異なるインク滴であることを意味しており、一印刷周期中に吐出されるインク滴の順番を意味するものではない。
【0017】
前記インクジェットヘッドにおいて、大滴吐出用信号のうち小滴を吐出するときに選択されるパルス信号に、基準電位よりも低い電位を前側のパルスベースとし且つパルス高さが前記基準パルス高さよりも低いパルス信号(以下、低パルス信号という)が含まれていてもよい。
【0018】
このことにより、小滴を吐出するときに選択されるパルス信号に含まれる低パルス信号の個数又はパルス高さを調整することにより、大滴及び小滴の着弾位置が第3のインク滴の着弾位置と揃うように大滴及び小滴の吐出速度を調整することができる。したがって、第3のインク滴を基準として、各インク滴の着弾位置を合わせることが可能となる。
【0019】
前記インクジェットヘッドにおいて、大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されるパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間がヘッドのヘルムホルツ周期の半周期以下である第1のパルス信号が含まれ、大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されないパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期以下で且つ前記第1のパルス信号の前記電位変化時間よりも長い第2のパルス信号が含まれていてもよい。
【0020】
このことにより、第2のパルス信号により吐出されるインク滴の吐出速度は第1のパルス信号により吐出されるインク滴の吐出速度よりも小さくなる。小滴吐出時に選択されるパルス信号には第1のパルス信号が含まれ、大滴吐出時に選択されるパルス信号には第2のパルス信号が含まれているので、大滴の吐出速度は、小滴の吐出速度よりも小さくなる。したがって、大滴と小滴との着弾位置のずれは少なくなる。
【0021】
前記インクジェットヘッドにおいて、大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されるパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間がヘッドのヘルムホルツ周期の半周期以下である第1のパルス信号と、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期以下で且つ前記第1のパルス信号の前記電位変化時間よりも長い第2のパルス信号とが含まれていてもよい。
【0022】
このことにより、小滴を吐出するときに選択されるパルス信号に含まれる第2のパルス信号の個数又は電位変化時間を調整することにより、大滴及び小滴の吐出速度を、大滴及び小滴の着弾位置が第3のインク滴の着弾位置と揃うように調整することができる。したがって、第3のインク滴を基準として、各インク滴の着弾位置を合わせることが可能となる。
【0023】
本発明に係るインクジェットヘッドは、少なくとも大滴のインクと小滴のインクとを選択的に吐出自在なインクジェットヘッドであって、ノズルと当該ノズルに連通し且つインクが充填された圧力室とが形成されたヘッド本体と、圧電素子と当該圧電素子に電圧を印加する電極とを有し、前記圧電素子の圧電効果によって前記圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータと、それぞれ圧力室をいったん減圧してから加圧するようにアクチュエータを駆動する複数のパルス信号からなる大滴吐出用信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、大滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号のすべてのパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する一方、小滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号の後側の一部のパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する信号選択部とを備え、前記駆動信号のパルス信号は、パルス間隔がヘッドのヘルムホルツ周期以下に設定されているとともに、後のパルス信号によるインクメニスカス振動が先のパルス信号によるインクメニスカス振動と共振するように且つこれらパルス信号により吐出された複数のインク滴が飛翔中に合体するように設定され、大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されるパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期の半周期以下である第1のパルス信号が含まれ、大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されないパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期以下で且つ前記第1のパルス信号の前記電位変化時間よりも長い第2のパルス信号が含まれているものである。
【0024】
このことにより、第2のパルス信号により吐出されるインク滴の吐出速度は第1のパルス信号により吐出されるインク滴の吐出速度よりも小さくなる。小滴吐出時に選択されるパルス信号には第1のパルス信号が含まれ、大滴吐出時に選択されるパルス信号には第2のパルス信号が含まれているので、大滴の吐出速度は、小滴の吐出速度よりも小さくなる。したがって、大滴の吐出タイミングは小滴の吐出タイミングよりも早いにも拘わらず、大滴と小滴との着弾位置のずれは少なくなる。その結果、高品質の記録を得ることができる。
【0025】
前記インクジェットヘッドにおいて、駆動信号は、大滴吐出用信号の前又は後に、1又は2以上のパルス信号からなり第3のインク滴を吐出する第3インク滴吐出用信号を含んでいてもよい。
【0026】
このことにより、大滴及び小滴に加え、第3のインク滴が吐出されるため、多階調記録の階調数を増加することができる。
【0027】
前記インクジェットヘッドにおいて、小滴を吐出するときに選択されるパルス信号に、前記第2のパルス信号が含まれていてもよい。
【0028】
このことより、小滴を吐出するときに選択されるパルス信号に含まれる第2パルス信号の個数又は電位変化時間を調整することにより、大滴及び小滴の吐出速度を、大滴及び小滴の着弾位置が第3のインク滴の着弾位置と揃うように調整することができる。したがって、第3のインク滴を基準として、各インク滴の着弾位置を合わせることが可能となる。
【0029】
前記インクジェットヘッドにおいて、大滴吐出用信号に含まれる最後のパルス信号は、インクを吐出しない程度にアクチュエータを駆動する補助パルス信号であることが好ましい。
【0030】
このことにより、補助パルス信号の印加により、インク吐出後のメニスカス振動は減少する。残留振動が抑制されることにより、吐出性能が向上する。
【0031】
なお、本発明に係るインクジェット式記録装置は、前記インクジェットヘッドを備えるものである。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、大滴と小滴の着弾位置を高精度に揃えることができる。また、大滴及び小滴に加えて第3のインク滴を吐出する場合に、大滴及び小滴の着弾位置を第3インク滴の着弾位置に合わせて揃えることができる。したがって、多階調記録の高品質化を促進することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
<駆動信号と吐出性能との関係>
本発明の実施形態の説明に先立ち、駆動信号と吐出性能との関係について説明する。
【0035】
図1は、駆動信号の波形とアクチュエータの変位とインクメニスカスの状態との関係を示した図である。駆動信号は、基準電位V0とピーク電位V1とを有するパルス信号Pである。ピーク電位V1は、圧力室を減圧するようにアクチュエータを駆動する電位であり、言い換えると、圧力室の容積を増大させるようにアクチュエータを駆動する電位である。本駆動信号は、圧力室をいったん減圧してから加圧する信号であり、インクメニスカスをいったんノズル内に引き込んだ後に押し出す信号(いわゆる引き押し波形の信号)である。なお、図1及び後述する図2〜4の駆動信号では、共振を利用するために、パルス信号Pの電位降下波形S1の開始時から電位上昇波形S3の開始時までの時間は、ヘルムホルツ周期の半周期に設定されている。図2〜図4の駆動信号との比較のため、以下では図1の上記駆動信号を基本信号と称することとする。
【0036】
ここで、吐出されるインクの液滴量は、アクチュエータの変位量とメニスカスの引き込み量とに影響され、上記変位量と上記引き込み量との差と液滴量との間には、相関関係が見られる。また、液滴の吐出速度は、アクチュエータの変位速度(つまり、図1におけるアクチュエータ変位曲線の傾き)と相関関係がある。
【0037】
図2に示すように、パルス信号Pの電位降下波形S1の傾きを緩やかにすると、アクチュエータの変位量は減少するが、メニスカスの引き込み量も減少する。そのため、吐出されるインクの液滴量m2は、基本信号により吐出されるインクの液滴量m1とほぼ同等か、あるいはm1よりも若干小さな値となる。一方、アクチュエータの変位量が減ったため、変位曲線の傾きは緩やかになる。そのため、吐出速度v2は、基本信号により吐出されるインクの吐出速度v1よりも小さくなる。つまり、m2≦m1、v2<v1となる。
【0038】
図3に示すように、吐出速度がv2とほぼ等しくなるようにパルス信号Pの電位上昇波形S3の傾きを緩やかにすると、メニスカスの引き込み量は基本信号の場合と変わらないが、アクチュエータの変位量は若干減少する。そのため、液滴量m3は、m2よりも少なくなる。また、アクチュエータの変位量が減ったため、変位曲線の傾きが緩やかになり、吐出速度v3はv1よりも小さくなる。つまり、m3<m2≦m1、v3≒v2<v1となる。
【0039】
図4に示すように、吐出速度がv2とほぼ等しくなるようにパルス信号Pのパルス高さを若干下げると、アクチュエータの変位量は減るが、メニスカスの引き込み量も基本信号の場合よりも若干減少する。そのため、液滴量m4はm1より小さくなるが、m3よりは大きくなる。また、アクチュエータの変位量が減ったため、変位曲線の傾きが緩やかになり、吐出速度v4はv1よりも小さくなる。つまり、m3<m4<m1、v4≒v3≒v2<v1となる。
【0040】
以上のように、液滴量に関しては、m3<m2≦m1、m3<m4<m1という関係が見られ、吐出速度に関しては、v4≒v3≒v2<v1という関係が見られる。
【0041】
実際に図1〜図4の駆動信号を用い、吐出速度と液滴量とを測定する実験を行った。図5に、測定条件と測定結果とを示す。本実験から、上記関係が正しいことが確認された。
【0042】
<実施形態1>
図6は、インクジェット式記録装置としてのプリンタ20の概略構成を示している。プリンタ20は、キャリッジ16に固定されたインクジェットヘッド1を備えている。キャリッジ16には、図6では図示を省略するキャリッジモータ28(図11参照)が設けられている。キャリッジ16は、キャリッジモータ28によって主走査方向(図6及び図7に示すX方向)に延びるキャリッジ軸17にガイドされ、その方向に往復移動するように構成されている。インクジェットヘッド1はキャリッジ16に搭載されているので、インクジェットヘッド1もキャリッジ16の往復移動に伴って主走査方向Xに往復移動する。なお、このキャリッジ16、キャリッジ軸17及びキャリッジモータ28により、インクジェットヘッド1と記録紙41とを相対移動させる移動手段が構成されている。
【0043】
記録紙41は、図6では図示を省略する搬送モータ26(図11参照)によって回転駆動される2つの搬送ローラ42に挟まれており、この搬送モータ26及び各搬送ローラ42により、主走査方向Xと直交する副走査方向(図6及び図7に示すY方向)に搬送される。
【0044】
図7〜図10に示すように、インクジェットヘッド1は、インクを収容する複数の圧力室4と各圧力室4にそれぞれ連通する複数のノズル2とが形成されたヘッド本体40と、各圧力室4内のインクに圧力を付与するアクチュエータ10とを有している。アクチュエータ10は、圧電素子13を有するピエゾ式のアクチュエータであって、圧電素子13に固着した振動板11がたわみ変形を行ういわゆるたわみ振動型のアクチュエータである。このアクチュエータ10は、圧力室4の縮小及び拡大に伴う圧力室4内の圧力変化によって、ノズル2からインク滴を吐出し且つ圧力室4にインクを充填する。
【0045】
図7に示すように、圧力室4は、インクジェットヘッド1の内部に主走査方向Xに延びるように長溝状に形成され、副走査方向Yに互いに所定間隔をあけて配設されている。圧力室4の一端部(図7の右側の端部)には、ノズル2が設けられている。ノズル2,2,…は、インクジェットヘッド1の下面において、副走査方向Yに互いに所定間隔をあけて開口するように設けられている。圧力室4の他端部(図7の左側の端部)は、インク供給路5の一端部に連続している。各インク供給路5の他端部は、副走査方向Yに延びるインク供給室3に連続している。
【0046】
図8に示すように、インクジェットヘッド1は、ノズル2が形成されたノズルプレート6と、圧力室4及びインク供給路5を区画形成する区画壁7と、アクチュエータ10とが順に積層されて構成されている。このノズルプレート6は厚さ20μmのポリイミド板からなり、区画壁7は厚さ480μmのステンレス製ラミネート板またはステンレスと感光性ガラスとのラミネート板からなっている。
【0047】
図9及び図10に誇張して示すように、アクチュエータ10は、圧力室4を覆う振動板11と、振動板11を振動させる薄膜の圧電素子13と、個別電極14とが順に積層されて構成されている。振動板11は、厚さ2μmのクロム板からなっていて、個別電極14と共に圧電素子13に電圧を印加するための共通電極としての機能をも有している。圧電素子13は、圧力室4に対応して設けられており、厚さ0.5μm〜5μmのPZT(ジルコル酸チタン酸鉛)等を好適に用いることができる。本実施形態では、圧電素子13の厚みは3μmに設定されている。個別電極14は厚さ0.1μmの白金板からなっており、アクチュエータ10の全体の厚さは約5μmとなっている。なお、互いに隣接する圧電素子13及び個別電極14の間には、ポリイミドからなる絶縁層15が設けられている。
【0048】
次に、図11のブロック図を参照しながら、プリンタ20の制御回路35を説明する。制御回路35は、CPUからなる主制御部21と、各種データ処理のためのルーチン等を記憶したROM22と、各種データの記憶等を行うRAM23と、搬送モータ26及びキャリッジモータ28とをそれぞれ駆動制御するためのドライバ回路25,27及びモータ制御回路24と、印刷データを受信するデータ受信回路29と、駆動信号発生回路30と、選択回路31とを備えている。選択回路31には、アクチュエータ10が接続されている。駆動信号発生回路30は、一印刷周期内に複数のパルス信号を有する駆動信号を発生させる。なお、駆動信号の詳細については後述する。選択回路31は、インクジェットヘッド1がキャリッジ16と共に主走査方向Xに移動しているときに、上記駆動信号に含まれる1または2以上の駆動パルスをアクチュエータ10に選択的に入力させる。これら駆動信号発生回路30及び選択回路31により、アクチュエータ10に所定の駆動信号を供給する信号供給手段32が構成されている。
【0049】
次に、プリンタ20の動作について説明する。まず、プリンタ本体(図示せず)から画像データが送信され、データ受信回路29がこの画像データを受信すると、主制御部21がROM22に記憶された処理ルーチンに基づいて、モータ制御回路24及びドライバ回路25,27を介して搬送モータ26及びキャリッジモータ28をそれぞれ制御すると共に、駆動信号発生回路30に駆動信号を発生させる。さらに、主制御部21は、上記画像データに基づいて、選択回路31に対し選択すべきパルス信号の情報を出力する。そして、選択回路31は、上記情報に基づいて、複数の駆動パルスのうちから所定の1または2以上の駆動パルスを選択してアクチュエータ10に供給する。
【0050】
一印刷周期内に印加される複数のパルス信号は、パルス間隔がヘッドのヘルムホルツ周期、すなわちノズル2及び圧力室4のヘルムホルツ周期以下に設定されている。なお、ここでいうヘルムホルツ周期とは、インクだけでなくアクチュエータ10の影響をも含めた振動系全体の固有周期(共振周期)をいう。また、上記複数のパルス信号は、これらパルス信号の印加により吐出された複数のインク滴が飛翔中に合体するように設定されている。また、上記複数のパルス信号は、後のパルス信号によるインクメニスカス振動が先のパルス信号によるインクメニスカス振動と共振するように設定されている。
【0051】
次に、図12を参照しながら、駆動信号の詳細について説明する。本駆動信号は、大滴又は小滴を選択的に吐出する信号である。本駆動信号は、パルスP11、P12、P21、P22、及びP4からなる大滴吐出用信号P1によって構成されている。この大滴吐出用信号P1は、一印刷周期Tごとに生成されるものである。
【0052】
すなわち、大滴吐出用信号P1は、それぞれインクを吐出するようにアクチュエータ10を駆動する第1パルスP11、第2パルスP12、第3パルスP21及び第4パルスP22を有している。また、大滴吐出用信号P1は、第4パルスP22の後に、インクを吐出しない程度にアクチュエータ10を駆動する補助パルスP4を有している。
【0053】
第3パルスP21、第4パルスP22及び補助パルスP4は、小滴を吐出するときに選択回路31によって選択されるパルスである。一方、大滴を吐出するときには、大滴吐出用信号P1のすべてのパルスP11,P12,P21,P22,P4が選択されることになる。
【0054】
各パルスは、圧力室4をいったん減圧してから加圧するようにアクチュエータ10を駆動するパルス信号であり、言い換えると、アクチュエータ10に引き押し動作(いわゆるプルプッシュ動作)を行わせることによってインク滴を吐出させる信号である。
【0055】
第1パルスP11、第3パルスP21及び第4パルスP22は、前側のパルスベースの電位が所定の基準電位VH1と等しいパルスである。一方、第2パルスP12は、前側のパルスベースの電位VH2が上記基準電位VH1よりも小さなパルスである。第2パルスP12のパルス高さは、第3パルスP21及び第4パルスP22のパルス高さよりも低くなっている。
【0056】
なお、第1パルスP11や第2パルスP12のように、パルスによっては、パルスの前後においてパルスベースの電位の値が異なっている場合がある。そこで本明細書においては、パルス高さは、前側パルスベースの電位とピーク電位との差をいうものとする。
【0057】
インク吐出用のパルスP11,P12,P21,P22のピーク電位は、いずれも接地電位(GND)Vに設定されている。その理由は、図13(a)に示すように、ピーク電位が接地電位でない場合、ピーク電位後に電位を上昇させる際に誤差が生じやすく、基準電位の値V=VL1+ΔVが不安定になりやすいからである。これに対し、図13(b)に示すように、ピーク電位Vを接地電位とすれば、基準電位の値VH2=ΔVは安定しやすく、ピーク高さを正確に調整しやすくなる。
【0058】
補助パルスP4は、パルス高さがパルスP11,P12,P21,P22のいずれのパルスよりも低いものである。この補助パルスP4は、インク吐出後のインクメニスカス振動を低減するように設定されている。
【0059】
次に、インクの吐出動作について説明する。大滴を吐出する際には、大滴吐出用信号P1のすべてのパルスが選択され、アクチュエータ10に供給される。これにより、第1パルスP11によって第1のインク滴が吐出され、第2パルスP12によって第2のインク滴が吐出され、第3パルスP21によって第3のインク滴が吐出され、第4パルスP22によって第4のインク滴が吐出される。そして、それら第1〜第4のインク滴は飛翔中に合体し、大径のインク滴となって記録紙に着弾する。
【0060】
なお、ここでいうインク滴の合体とは、完全に分離しているインク滴同士が空中で一体となる場合だけでなく、各々の一部がつながっているものの各インク滴の存在が分かる程度に分かれているインク滴同士が、各インク滴の存在が分からない程度に一定化する場合も含まれる。
【0061】
一方、小滴を吐出する際には、第3パルスP21、第4パルスP22及び補助パルスP4からなる小滴吐出用パルスP2が選択される。その結果、第3パルスP21によって第3のインク滴が吐出され、第4パルスP22によって第4のインク滴が吐出される。そして、それら第3及び第4インク滴は飛翔中に合体し、小径のインク滴となって記録紙に着弾する。
【0062】
ところで、大滴を吐出する際に、第2パルスP12は、第3パルスP21及び第4パルスP22に比べてパルス高さが低いため、第1インク滴及び第2インク滴は、第3インク滴及び第4インク滴よりも吐出速度が小さくなる。そのため、第1〜第4インク滴が合体してなる大滴は、第3及び第4インク滴が合体してなる小滴に比べると、吐出速度が小さくなる。したがって、大滴と小滴の着弾位置のずれは少なくなり、高品質の記録を実現することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、第2パルスP12のパルス高さを微調整することが可能である。そして、第2パルスP12のパルス高さを微調整することにより、大滴と小滴の着弾位置を高精度に一致させることができる。したがって、本実施形態によれば、多階調記録の品質を飛躍的に向上させることができる。
【0064】
インク吐出用パルスの後側に補助パルスP4を設けているので、インク吐出後のメニスカスの残留振動を抑制することができる。特に、大滴吐出用信号P1に含まれる後側のパルスP2を選択的に供給することによって小滴を吐出しているので、小滴吐出時にも補助パルス信号P4が供給される。したがって、小滴吐出時にも、メニスカスの残留振動を抑制することができる。このようにメニスカスの残留振動が比較的短時間の間に無くなるので、印刷周期Tを短くすることが可能となる。したがって、ヘッドの応答性を高くすることができる。
【0065】
大滴吐出用信号に含まれる後側のパルスを選択的に供給することによって小滴を吐出しているので、大滴吐出用信号の後に別個新たな小滴吐出用信号を設ける必要はない。したがって、この点においても応答性の向上が図られている。
【0066】
小滴吐出時に選択されるパルスのうち先頭のパルスP21では、前側パルスベースは基準電位VH1と一致している。そのため、信号選択の際に時間遅れが生じたとしても、波形がいびつになることはない。すなわち、図14(a)に示すように、前側パルスベースが基準電位VH1と一致していない場合には、選択に際して時間遅れΔtが生じると、アクチュエータに供給される信号の波形はいびつな形になる。これに対し、図14(b)に示すように、前側パルスベースが基準電位VH1と一致する場合には、時間遅れΔtが生じたとしても、アクチュエータに供給される信号の波形はいびつな形にはならない。したがって、本実施形態によれば、小滴吐出時の吐出性能を安定化することができる。また、選択のタイミングに際し必要とされる精度を緩和することができ、制御回路のコスト低減を図ることができる。
【0067】
<実施形態2>
実施形態2は、実施形態1において、駆動信号に変更を加えたものである。本実施形態は、実施形態1の大滴及び小滴に加え、第3のインク滴を吐出自在に構成されているものである。具体的には、実施形態1の小滴よりも更に小さなインク滴を吐出自在とし、大滴、中滴及び小滴の3種類のインク滴を選択的に吐出するものである。
【0068】
図15に示すように、本実施形態に係る駆動信号は、大滴吐出用信号P1の前側に、第3インク滴吐出用信号として、小滴吐出用信号P3を有している。なお、本実施形態では、小滴吐出用信号P3によって吐出されるインク滴が最も小さなインク滴となるため、実施形態1における小滴は本実施形態では中滴となる。
【0069】
本実施形態では、小滴の着弾位置を基準として、中滴及び大滴の着弾位置が設定されている。そのため、大滴吐出用信号P1における後側のパルスにも、前側パルスベースが基準電位よりも小さなパルスP22が含まれている。
【0070】
小滴吐出用信号P3は、パルスベースが基準電位VH1であり、パルス高さが基準高さ(=VH1−V)のパルス信号である。大滴吐出用信号P1の第1パルスP11では、前側パルスベースが基準電位VH1であり、後側パルスベースが基準電位VH1よりも小さな電位VH3である。第2パルスP12は、前側パルスベースが基準電位VH1よりも小さな電位VH3であり、パルス高さ(=VH3−V。以下、第1パルス高さという)が基準高さよりも低いパルス信号である。第3パルスP21は、前側パルスベースが基準電位VH1であり、後側パルスベースが基準電位VH1よりも小さく且つ上記電位VH3よりも大きな電位VH2であり、パルス高さが基準高さのパルス信号である。第4パルスP22は、前側パルスベースが上記電位VH2であり、パルス高さ(=VH2−V。以下、第2パルス高さという)が基準高さよりも低いパルス信号である。
【0071】
第2パルス高さ及び第3パルス高さのそれぞれは、小滴、中滴及び大滴の着弾位置が一致するように設定されている。
【0072】
選択回路31は、小滴を吐出するときには小滴吐出用信号P3のみを選択し、中滴を吐出するときには大滴吐出用信号P1における後側のパルスP21,P22,P4のみを選択し、大滴を吐出するときには大滴吐出用信号P1のみを選択する。
【0073】
小滴吐出時には、小滴吐出用パルスP3により単一のインク滴が吐出され、小滴として記録紙に着弾する。中滴吐出時には、大滴吐出用信号P1の第3パルスP21及び第4パルスP22によって2つのインク滴が吐出され、それらは合体して中滴となり、記録紙に着弾する。大滴吐出時には、大滴吐出用信号P1の第1〜第4パルスP11,P12,P21,P22によって4つのインク滴が吐出され、それらは合体して大滴となり、記録紙に着弾する。
【0074】
本実施形態では、図16に示すように、インク滴の吐出タイミングは小滴D1、大滴D2、中滴D3の順に遅くなる。しかし、小滴D1の吐出速度v1、大滴D2の吐出速度v2、及び中滴D3の吐出速度v3はv1<v2<v3であり、小滴、中滴及び大滴の着弾位置は、小滴の着弾位置を基準として互いに一致する。なお、図16における符号vCは、ヘッド1のキャリッジ速度である。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、3階調の記録を行う記録装置において、記録品質の向上を図ることができる。
【0076】
<実施形態3>
実施形態1及び2は、パルス信号のパルス高さを変更することによって吐出速度を調整するものであったが、実施形態3は、パルス信号の立ち下がり波形の傾きを変更することによって吐出速度を調整するものである。
【0077】
図17に示すように、本実施形態に係る駆動信号も実施形態2と同様に、一印刷周期T内に小滴吐出用信号P3と大滴吐出用信号P1とを有している。大滴吐出用信号P1には、中滴吐出時には選択されない第1パルスP11及び第2パルスP12と、中滴吐出時にも選択される第3パルスP21及び第4パルスP22と、補助パルスP4とが含まれる。
【0078】
本実施形態では、インク吐出用のパルス、すなわちパルスP3,P11,P12,P21,P22は、基準電位VH1をパルスベースとし且つ接地電位Vをピーク電位とするパルスである。小滴吐出用信号P3、第2パルスP12、及び第4パルスP22は、基準電位VH1からピーク電位Vまでの電位変化時間がヘッドのヘルムホルツ周期の半周期以下に設定されている。これらのパルスは、本発明でいうところの「第1のパルス信号」となる。一方、第1パルスP11及び第3パルスP21の基準電位VH1からピーク電位Vまでの電位変化時間t11,t21は、ヘルムホルツ周期以下であり且つ小滴吐出用信号P3等の上記電位変化時間よりも長い。これらのパルスは、本発明でいうところの「第2のパルス信号」となる。なお、第1パルスP11の電位変化時間t11は、第3パルスP21の電位変化時間t21よりも長くなっている。
【0079】
本実施形態においても、小滴、大滴、中滴の吐出速度v1、v2、v3は、v1<v2<v3となり、小滴の着弾位置を基準として各インク滴の着弾位置が一致する。したがって、本実施形態においても、実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0080】
<実施形態4>
実施形態4は、パルス信号のパルス高さと立ち下がり波形の傾きとを変更することにより、吐出速度を調整するものである。
【0081】
図18に示すように、本実施形態に係る駆動信号も、一印刷周期T内に小滴吐出用信号P3と大滴吐出用信号P1とを有している。本実施形態の駆動信号では、小滴吐出用信号P3はパルスP31及びパルスP32からなり、大滴吐出用信号P1における中滴吐出時に選択されないパルスは、第1パルスP11及び第2パルスP12からなり、大滴吐出用信号P1における中滴吐出時に選択されるパルスは、第3パルスP21と第4パルスP22と第5パルスP23と補助パルスP4とからなっている。
【0082】
小滴吐出用信号P3のパルスP31及びパルスP32は、基準電位VH1をパルスベースとし、パルス高さが基準パルス高さ(=VH1−V)のパルス信号である。パルスP31及びパルスP32の立ち下がり波形の時間は、ヘッドのヘルムホルツ周期の半周期以下に設定されている。
【0083】
大滴吐出用信号P1の第1パルスP11は、前側パルスベースが基準電位VH1であり、後側パルスベースが第3基準電位VH3(<VH1)のパルス信号である。第2パルスP12は、前側パルスベースが第3基準電位VH3であり、後側パルスベースが基準電位VH1のパルス信号である。第3パルスP21は、前側パルスベースが基準電位VH1であり、後側パルスベースが第2基準電位VH2のパルス信号である。なお、第2基準電位VH2は、基準電位VH1よりも小さく且つ第3基準電位VH3よりも大きい。第4パルスP22は、前側パルスベースが第2基準電位VH2であり、後側パルスベースが基準電位VH1のパルス信号である。第5パルスP23は、前側パルスベースが基準電位VH1であり、後側パルスベースが基準電位VH1よりも大きな電位VH0のパルスである。補助パルスP4は、前側パルスベースが電位VH0であり、後側パルスベースが基準電位VH1のパルスである。
【0084】
本実施形態においても、各パルスの立ち下がり波形の時間及びパルス高さは、小滴、中滴及び大滴の着弾位置が小滴の着弾位置を基準として一致するように設定されている。
【0085】
本実施形態においても、小滴、大滴、中滴の吐出速度v1、v2、v3は、v1<v2<v3となり、小滴の着弾位置を基準として各インク滴の着弾位置が一致する。したがって、本実施形態においても、実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0086】
なお、中滴又は大滴の着弾位置を基準として、他のインク滴の着弾位置を設定することも可能である。図18に示すように、各滴の吐出開始時刻を各波形の最初のパルスにおけるピーク電位波形の終了時刻と定義すると、小滴の吐出開始時刻はS1,中滴の吐出開始時刻はS3、大滴の吐出開始時刻はS2となる。ここで、ノズルから記録紙までの距離を1mmとした場合、小滴、中滴、大滴の吐出から着弾までの時間をそれぞれα[μs]、β[μs]、γ[μs]とすると、S2−S1=a[μs]、S3−S1=b[μs]に対し、β=α−b、γ=α−aとすることにより、各インク滴の着弾位置を一致させることができる。すなわち、小滴、中滴及び大滴のいずれか一つの着弾位置を基準として、すべてのインク滴の着弾位置を揃えることが可能となる。
【0087】
<実施例>
実施例として、図19に示す駆動信号を用いて小滴、中滴、大滴を吐出させ、それらの着弾位置を計測した。各パラメータの値は、下記表1の通りである。なお、ノズルと記録紙との間の間隔は1mm、ヘッドのヘルムホルツ周期は8μsであった。時間間隔tC2は、ヘルムホルツ周期の0.5〜1.5倍に設定され、電位差Vは基準電位Vと接地電位Vとの間の電位差の0.1〜0.3倍に設定されている。本実施例では波形の選択タイミングの精度が±0.5μsであり、選択した波形がいびつな形にならないように、時間間隔tC1は1μs以上に設定されている。
【0088】
【表1】
Figure 0004117152
【0089】
その結果、小滴、中滴、大滴の吐出速度は、それぞれv1=7.6m/s、v3=9.3m/s、v2=7.9m/sとなり、10kHzの周期で3種類のインク滴を選択的に吐出することができ、それらの着弾位置を一致させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 駆動信号の波形とアクチュエータ変位とメニスカス状態との関係を示す図である。
【図2】 駆動信号の波形とアクチュエータ変位とメニスカス状態との関係を示す図である。
【図3】 駆動信号の波形とアクチュエータ変位とメニスカス状態との関係を示す図である。
【図4】 駆動信号の波形とアクチュエータ変位とメニスカス状態との関係を示す図である。
【図5】 駆動信号と吐出性能との関係を調べる確認実験の結果を示す図であり、(a)はパラメータの定義を示す波形図であり、(b)は測定条件及び測定結果を示す表である。
【図6】 実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図7】 インクジェットヘッドの部分平面図である。
【図8】 図7のA−A線断面図である。
【図9】 アクチュエータ近傍の部分断面図である。
【図10】 図7のB−B線断面図である。
【図11】 制御回路のブロック図である。
【図12】 実施形態1に係る駆動信号の波形図である。
【図13】 (a)及び(b)は駆動信号の波形図である。
【図14】 (a)及び(b)は駆動信号の波形図である。
【図15】 実施形態2に係る駆動信号の波形図である。
【図16】 (a)〜(c)は、インク滴の着弾位置を説明する図である。
【図17】 実施形態3に係る駆動信号の波形図である。
【図18】 実施形態4に係る駆動信号の波形図である。
【図19】 実施例に係る駆動信号の波形図である。
【図20】 (a)及び(b)は、インク滴の着弾位置を説明する図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 ノズル
3 インク供給室
4 圧力室
10 アクチュエータ
11 振動板
13 圧電素子
14 個別電極
20 プリンタ(インクジェット式記録装置)
30 駆動信号発生回路(信号生成部)
31 選択回路(信号選択部)
32 信号供給手段
35 制御回路
40 ヘッド本体
41 記録紙(記録媒体)

Claims (10)

  1. 少なくとも大滴のインクと小滴のインクとを選択的に吐出自在なインクジェットヘッドであって、
    ノズルと当該ノズルに連通し且つインクが充填された圧力室とが形成されたヘッド本体と、
    圧電素子と当該圧電素子に電圧を印加する電極とを有し、前記圧電素子の圧電効果によって前記圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータと、
    それぞれ圧力室をいったん減圧してから加圧するようにアクチュエータを駆動する複数のパルス信号からなる大滴吐出用信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、
    大滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号のすべてのパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する一方、小滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号の後側の一部のパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する信号選択部とを備え、
    前記駆動信号のパルス信号は、パルス間隔がヘッドのヘルムホルツ周期以下に設定されているとともに、後のパルス信号によるインクメニスカス振動が先のパルス信号によるインクメニスカス振動と共振するように且つこれらパルス信号により吐出された複数のインク滴が飛翔中に合体するように設定され、
    小滴を吐出するときに選択されるパルス信号のうち先頭のパルス信号は、所定の基準電位を前側のパルスベースとし且つ所定の基準パルス高さをパルス高さとするパルス信号であり、
    大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されないパルス信号に、基準電位よりも低い電位を前側のパルスベースとし且つパルス高さが前記基準パルス高さよりも低いパルス信号が含まれているインクジェットヘッド。
  2. 請求項1に記載のインクジェットヘッドであって、
    駆動信号は、大滴吐出用信号の前又は後に、1又は2以上のパルス信号からなり第3のインク滴を吐出する第3インク滴吐出用信号を含んでいるインクジェットヘッド。
  3. 請求項2に記載のインクジェットヘッドであって、
    大滴吐出用信号のうち小滴を吐出するときに選択されるパルス信号に、基準電位よりも低い電位を前側のパルスベースとし且つパルス高さが前記基準パルス高さよりも低いパルス信号が含まれているインクジェットヘッド。
  4. 請求項1〜3のいずれか一つに記載のインクジェットヘッドであって、
    大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されるパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間がヘッドのヘルムホルツ周期の半周期以下である第1のパルス信号が含まれ、
    大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されないパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期以下で且つ前記第1のパルス信号の前記電位変化時間よりも長い第2のパルス信号が含まれているインクジェットヘッド。
  5. 請求項2に記載のインクジェットヘッドであって、
    大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されるパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間がヘッドのヘルムホルツ周期の半周期以下である第1のパルス信号と、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期以下で且つ前記第1のパルス信号の前記電位変化時間よりも長い第2のパルス信号とが含まれているインクジェットヘッド。
  6. 少なくとも大滴のインクと小滴のインクとを選択的に吐出自在なインクジェットヘッドであって、
    ノズルと当該ノズルに連通し且つインクが充填された圧力室とが形成されたヘッド本体と、
    圧電素子と当該圧電素子に電圧を印加する電極とを有し、前記圧電素子の圧電効果によって前記圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータと、
    それぞれ圧力室をいったん減圧してから加圧するようにアクチュエータを駆動する複数のパルス信号からなる大滴吐出用信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、
    大滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号のすべてのパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する一方、小滴を吐出するときには前記大滴吐出用信号の後側の一部のパルス信号を選択して前記アクチュエータに供給する信号選択部とを備え、
    前記駆動信号のパルス信号は、パルス間隔がヘッドのヘルムホルツ周期以下に設定されているとともに、後のパルス信号によるインクメニスカス振動が先のパルス信号によるインクメニスカス振動と共振するように且つこれらパルス信号により吐出された複数のインク滴が飛翔中に合体するように設定され、
    大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されるパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期の半周期以下である第1のパルス信号が含まれ、
    大滴吐出用信号のうち小滴吐出時に選択されないパルス信号には、基準電位からピーク電位までの電位変化時間が前記ヘルムホルツ周期以下で且つ前記第1のパルス信号の前記電位変化時間よりも長い第2のパルス信号が含まれているインクジェットヘッド。
  7. 請求項6に記載のインクジェットヘッドであって、
    駆動信号は、大滴吐出用信号の前又は後に、1又は2以上のパルス信号からなり第3のインク滴を吐出する第3インク滴吐出用信号を含んでいるインクジェットヘッド。
  8. 請求項7に記載のインクジェットヘッドであって、
    小滴を吐出するときに選択されるパルス信号に、前記第2のパルス信号が含まれているインクジェットヘッド。
  9. 請求項1〜8のいずれか一つに記載のインクジェットヘッドであって、
    大滴吐出用信号に含まれる最後のパルス信号は、インクを吐出しない程度にアクチュエータを駆動する補助パルス信号であるインクジェットヘッド。
  10. 請求項1〜9のいずれか一つに記載のインクジェットヘッドを備えるインクジェット式記録装置。
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