JP4117083B2 - ポリ乳酸系収縮シート状物、及びこれを用いた包装材又は収縮ラベル材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ポリ乳酸系重合体を主成分とした収縮性を有するシート状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
収縮包装や収縮結束包装、収縮ラベル等に利用される熱収縮性シート又はフィルムとして、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のシートやフィルムが知られており、また、産業界で広く利用され、消費されている。しかし、これらのシートやフィルムは自然環境下に棄却されると、その安定性のため分解されることなく残留し、景観を損ない、魚、野鳥等の生活環境を汚染する等の問題を引き起こす。
【0003】
そこで、これらの問題を生じない分解性重合体からなる材料が要求されており、実際多くの研究、開発が行われている。その一例として、ポリ乳酸があげられる。ポリ乳酸は、土壌中において自然に加水分解が進行し、土中に原形が残らず、ついで微生物により無害な分解物となることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリ乳酸は、素材が本来有する脆性のため、これをシート状やフィルム状にしても、十分な強度が得られず、実用に供し難い。
【0005】
これに対し、特開平5−212790号公報には、ポリ乳酸からなるラベル用熱収縮フィルムが開示されているが、この熱収縮フィルムは、収縮温度が140〜150℃と高く、ガラス瓶等のラベルとして用い得ることができる高温収縮性フィルムである。これに対し、一般的な収縮包装や収縮結束包装では、被包装体が生鮮食品や紙箱、あるいは食品や薬品の入った各種容器類であり、熱による被包装体の変性や変形を防ぐため、70〜120℃程度の低温で収縮加工が行われる。上記公報においては、ラベル用熱収縮フィルムが、上記低温域で十分に収縮性を有することは示されていない。さらに、高温収縮性のラベルとしても、収縮仕上がりが悪く、被収縮物に接触せずに浮いた部分などができ、十分な性能を発揮し得ない場合がある。
【0006】
また、特開平7−256753号公報には、所定の要件を満たすポリ乳酸系重合体からなる熱収縮フィルムが開示されている。この熱収縮フィルムは、低温収縮性を有するが、短時間に収縮しないと熱固定されて十分に収縮しなくなる。さらにまた、収縮仕上がりが悪く、被収縮物に接触せずに浮いた部分などができる場合がある。
【0007】
さらに、上記熱収縮フィルムを、被包装体が生鮮食料品や紙箱、あるいは食品や薬品の入った各種容器類の収縮包装や収縮結束包装として使用する場合、通常収縮率が10%以上であることが望まれるが、上記熱収縮フィルムでは充分な収縮率を得ることができない。
【0008】
さらにまた、上記熱収縮フィルムを飲料用ボトル等のラベルに使用する場合は、ボトルにラベルを巻き付けた後に飲料を充填して、生産ラインで加熱殺菌を行う。このとき、隣接するボトルのラベル同士が熱により融着することがある。
【0009】
そこで、この発明は、充分な収縮率を有し、生分解可能なポリ乳酸系収縮シート状物を提供すること、更には、飲料用ボトル等のラベルに使用した場合、加熱殺菌時にラベル同士が融着しない、生分解可能なポリ乳酸系収縮シート状物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする生分解性重合体から成形されるシート状物において、上記ポリ乳酸系重合体の結晶融解熱量(△Hm)を5〜45J/gとし、上記シート状物を昇温したとき、このシート状物を形成する生分解性重合体の構成成分であるポリ乳酸系重合体の結晶化により生じる結晶化熱量(ΔHc)と上記ΔHmとの差、すなわち、△Hm−△Hcを5〜32J/gとすることにより、上記の課題を解決したのである。
【0011】
所定のΔHm及びΔHcを有するポリ乳酸系収縮シート状物を用いることにより、充分な収縮率を有し、生分解可能なポリ乳酸系収縮シート状物を提供することができる。また、飲料用ボトル等のラベルに使用した場合、加熱殺菌時にラベル同士が融着しない、生分解可能なポリ乳酸系収縮シート状物を提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
【0013】
この発明にかかるポリ乳酸系収縮シート状物は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする生分解性重合体から成形されるシート状物である。
【0014】
上記生分解性重合体は、生分解性、すなわち、微生物によって分解される性質を有する重合体をいう。この生分解性重合体の主成分であるポリ乳酸系重合体とは、乳酸、具体的には、D−乳酸又はL−乳酸の単独重合体又はそれらの共重合体をいう。
【0015】
上記ポリ乳酸系重合体は、縮重合法、開環重合法等、公知の方法で製造することができる。例えば、縮重合法では、D−乳酸、L−乳酸又はこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持つポリ乳酸系重合体が得られる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調製剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合して任意の組成を持つポリ乳酸系重合体が得られる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがある。
【0016】
上記生分解性重合体は、上記の主成分であるポリ乳酸系重合体のみから構成されてもよく、また、上記ポリ乳酸系重合体に、ポリ乳酸系重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステルを混合したものでもよい。このポリ乳酸系重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステルは、ガラス転移点Tgが0℃以下であることが好ましい。このガラス転移点Tgが0℃以下のポリ乳酸系重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステルを加えることにより、得られるポリ乳酸系収縮シート状物を延伸する際、破断が生じるのを防止し、かつ、収縮仕上がり性を改良することができる。
【0017】
このポリ乳酸系重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステルの添加量は、上記ポリ乳酸系重合体100重量部に対して10〜100重量部が好ましい。10重量部未満だと破断する場合があり、さらに、しわやアバタが入ること等による収縮仕上がりの悪化が起こりやすい。また、100重量部を越えると延伸時に均一な倍率で延伸せずに厚みムラを生じやすい。このようなフィルムを収縮すると、収縮仕上がりが悪くなりやすい。
【0018】
ポリ乳酸系重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステルとは、具体的には、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸の単独重合体又は共重合体、乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との共重合体、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、これらの各重合体の混合体等をいう。
【0019】
上記の乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシ吉草酸等があげられる。これらの単独重合体又は共重合体、若しくは、これらと乳酸との共重合体は、上記のポリ乳酸系重合体の重合法を用いることにより製造することができる。また、菌体内で生産させることもできる。この場合、アルカリゲネスユートロファスをはじめとする菌体内でアセチルコエンザイムA(アセチルCoA)により生合成される。そのようにして得られる例としては、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸があげられる。このポリ−β−ヒドロキシ酪酸そのものでは強度的に不十分なため、ポリ−β−ヒドロキシ吉草酸との共重合体として使用される。
【0020】
さらに、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が例としてあげられ、また、上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。これらの任意の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとをエステル化することにより、上記脂肪族ポリエステルが製造される。
【0021】
さらにまた、環状ラクトン類としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等があげられ、これを開環重合することにより、上記脂肪族ポリエステルが製造される。
【0022】
上記の各重合工程において、得られる重合体の分子量の増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することができる。
【0023】
上記シート状物とは、シート又はフィルムをいう。JISにおける定義上、シートとは、薄く、一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K 6900)。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえる。しかし、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくので、本願においては、上記のとおり、シートとフィルムの両方を含んだ概念として「シート状物」の用語を使用する。
【0024】
上記の生分解性重合体は、押出法、カレンダー法、プレス法等の一般的な溶融成形法により、平面状又は円筒状の未延伸のシート状物又はシート状物の溶融体にし、次いで、これをロール法、テンター法、チューブラ法、インフレーション法等により一軸又は二軸に延伸することによってシート状物を得ることができる。
【0025】
上記生分解性重合体の構成成分であるポリ乳酸系重合体の結晶融解熱量(「△Hm」と略する。)は5〜45J/gがよく、20〜40J/gが好ましい。また、上記シート状物を昇温したとき、このシート状物を形成する生分解性重合体の構成成分であるポリ乳酸系重合体の結晶化により生じる結晶化熱量(「ΔHc」と略する。)と上記ΔHmとの差、すなわち、△Hm−△Hcは5〜32J/gがよく、10〜30J/gが好ましい。上記ΔHmが5J/g未満のときは、得られるシート状物が融着しやすい。45J/gを越えるときは、得られるシート状物が収縮しにくい場合がある。また、△Hm−△Hcが5J/g未満のときは、得られるシート状物が融着しやすい。32J/gを越えるときは、得られるシート状物が収縮しにくい場合がある。
【0026】
上記のΔHmは、上記生分解性重合体の構成成分であるポリ乳酸系重合体の融点より30℃低い温度で熱処理をし、JIS K 7122に記載の方法にしたがって、昇温速度10℃/分で上記シート状物を昇温したときの、上記ポリ乳酸系重合体中に生じている結晶を融解させるのに必要な熱量である。これは、上記シート状物の示差走査熱量測定(以下、「DSC」と略する。)において、上記ポリ乳酸系重合体の結晶融点付近に現れる結晶融解による吸熱ピークの面積から求められる。上記ポリ乳酸系重合体の融点より30℃低い温度で熱処理を行うのは、この熱処理によって、上記ポリ乳酸系重合体を結晶化させることができる。この結晶化した状態で所定の昇温速度で昇温させて△Hmを測定するので、同じ組成を持つ生分解性重合体、例えば、同じ組成を有するD、L−ポリ乳酸であっても、ロット差によって生じることのある△Hmの差を解消することができる。
【0027】
また、ΔHcは、上記シート状物の結晶化熱量であり、JIS K 7122に記載の方法にしたがって一次昇温したときの昇温過程で生じる結晶化の際に発生する熱量であり、上記シート状物のDSCにおいて、発熱ピークの面積から求められる。
【0028】
上記ΔHmは主にポリ乳酸重合体そのものの結晶性に依存し、結晶性が大きいポリ乳酸系重合体では大きな値をとる。ちなみに最も結晶性が大きいと考えられるホモのポリ−L−乳酸では、約50J/gとなる。また、ΔHcはそのときのシート状物の結晶化度に関係する指標であり、ΔHcが大きいときは、昇温過程でシート状物の結晶化が進行する、すなわち、昇温前のシート状物の結晶化度が相対的に低かったことを表す。逆に、ΔHcが小さいときは、昇温前のシート状物の結晶化度が相対的に高かったことを表す。
【0029】
したがって、△Hm−△Hcは、シート状物を形成する生分解性重合体の構成成分であるポリ乳酸系重合体の有する結晶性を基準としたときの、上記シート状物の結晶化度を示す。したがって、△Hm−△Hcが小さいほど、上記シート状物の結晶化度が低いことを示す。
【0030】
よって、△Hm−△Hcを低下させるための方法としては、結晶性が小さいポリ乳酸系重合体を用いることや、結晶化度の比較的低いシート状物を作ることがあげられる。特に、結晶性が小さいポリ乳酸系重合体を原料に、結晶化度の比較的低いシート状物を作製すれば、△Hm−△Hcをより低下させることができる。シート状物の結晶化度は、生分解性重合体の組成に少なからず依存するが、フィルムの成形加工条件によっても大きく影響される。
【0031】
また、成形加工工程、特にテンター法2軸延伸においてフィルムの結晶化度を下げるためには、適当な延伸温度、延伸倍率を選び配向結晶化を抑えたり、延伸後速やかに結晶化温度以下に冷却して結晶化を抑える等の方法によっても、△Hm−△Hcを低下させることができる。
【0032】
上記のΔHm及びΔHm−ΔHcの条件を満たす好ましい生分解性重合体の例としては、生分解性重合体の主成分であるポリ乳酸系重合体が、L−乳酸とD−乳酸の共重合体であり、この構成成分であるL−乳酸とD−乳酸との組成比が98:2〜94:6、又は、6:94〜2:98となるものがあげられる。この組成比のものとすることにより、△Hmが5〜45J/gかつ△Hm−△Hcが5〜32J/gであるポリ乳酸系収縮シート状物を得ることがきる。これにより、生分解性重合体の結晶性が適当なものとなり、シート状物としたときに、十分な収縮性を得ることができ、また、各シート状物を重ねても融着するのを防ぐことができる。ところで、L−乳酸とD−乳酸の組成比を上記の範囲外としても、△Hmが5〜45J/gかつ△Hm−△Hcが5〜32J/gであるポリ乳酸系収縮シート状物を得ることは可能であるが、特に△Hm−△Hcを5J/g以上にするには、延伸温度、延伸倍率の選択に留意する必要がある。
【0033】
なお、上記生分解性脂肪族ポリエステルを含有するポリ乳酸系収縮シートを用いるとき、上記生分解性脂肪族ポリエステルも結晶性を有する場合がある。この場合、このポリ乳酸系収縮シートを用いて△Hm及び△Hcを測定すると、生分解性脂肪族ポリエステルの結晶の影響がその測定値に及ぶ。この場合、△Hmは、このポリ乳酸系収縮シートを形成する生分解性重合体の構成成分であるポリ乳酸系重合体そのものを用いて測定することにより得られる。また、ΔHcは、当該ポリ乳酸系収縮シートを用いて測定するが、その値から換算してポリ乳酸系重合体相当分導き出すことにより得られる。
【0034】
得られるポリ乳酸系収縮シート状物の収縮率は、80℃、10秒間の条件下で、10%以上であることがよく、20〜100%が好ましい。収縮率が低すぎると、収縮包装や収縮結束包装に使用するためには、不十分となりやすいからである。一般的に、収縮包装や収縮結束包装には、上記ポリ乳酸系収縮シート状物の収縮率は、10%程度でよく、ペットボトル等のラベル等の場合には、30%以上の収縮率がよい。
【0035】
なお、この収縮率を30%以上とするには、△Hm−△Hcを、上記の範囲より狭い5〜20J/gとするのが好ましい。このようにすることにより、ポリ乳酸系収縮シート状物の収縮度をより大きくすることができるからである。
【0036】
この発明によって得られるポリ乳酸系収縮シート状物は、包装材や収縮ラベル材として使用することができる。この包装材や収縮ラベル材が使用される被包装物としては、容器、生鮮食品等の食品等があげられる。上記容器としては、ガラス瓶、ガラス容器、硬質プラスチック容器等の硬度の高い容器、又は、紙や、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の硬度の低いプラスチック等から成形される容器等があげられる。これらの容器は、食品用、飲料用、薬品用等任意の用途に使用されるものである。
【0037】
上記被包装物は、上記包装材によって収縮包装又は収縮結束包装される。このとき、上記包装材がポリ乳酸系収縮シート状物が充分な収縮率を有し、延伸時の厚みムラがないので、収縮包装したとき収縮仕上がりがよく、包装された状態において見栄えがよい。さらに、包装後に、加熱処理を行っても、包装材が互いに融着しないので、取扱いが容易となる。また、上記ポリ乳酸系収縮シート状物は、印刷性能がよく、綺麗に印刷することができるので、収縮ラベル材として使用する場合、まず、上記ポリ乳酸系収縮シート状物に印刷したのち、被包装材に収縮させて密着させることにより、ラベルとして効果よく使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、表1及び表2において、「L/D比」は、ポリ乳酸系重合体を構成するL−乳酸とD−乳酸の組成比を示す。また、「Mw」は、ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量を示す。また、実施例中に示す測定、評価は、次に示すような条件で行った。
【0039】
(1)結晶融解熱量(ΔHm)の測定
シート状物を形成する生分解性重合体の構成成分である所定のL/D比を有するポリ乳酸系重合体自体を用いて測定した。
【0040】
まず、このポリ乳酸系重合体の融点から30℃低い温度で、当該ポリ乳酸系重合体を2時間、熱処理を行い、当該ポリ乳酸系重合体を結晶化させた。次いで、パーキンエルマー製DSC−7を用い、上記の結晶化させた当該ポリ乳酸系重合体10mgをJIS−K7122に基づいて、昇温速度10℃/分で昇温したときの吸熱ピークの面積からΔHmを求めた。
【0041】
(2)結晶化熱量(ΔHc)の測定
パーキンエルマー製DSC−7を用い、シート状物のサンプル10mgをJIS−K7122に基づいて、昇温速度10℃/分で昇温したときの発熱ピークの面積からΔHcを求めた。
【0042】
(3)熱収縮率
シート状物のサンプルを、試験方向を長手方向(以下。「MD」と略する。)として140mm×10mmに切り出し、MDに100mm間の評線を入れ、80℃の温水バスに10秒間浸漬した後、その評線間の寸法を計り、次式にしたがって熱収縮率を算出した。
【0043】
熱収縮率(%)={(収縮前の寸法)−(収縮後の寸法)}/(収縮前の寸法)×100
なお、表1及び表2において、TDは、サンプルの幅方向を示す。
【0044】
(4)融着試験
シート状物を縦60mm、横30mmの大きさに切り取って重ね合わせ、ヒートシール機で圧力1.5kgf/cm2 、80℃で10秒間加熱した場合のフィルムの融着具合をみた。なお、手で容易に剥がれる場合は○、やや融着気味なものは△、融着して剥がれにくいものは×で表示した。
【0045】
(5)Tgの測定
パーキンエルマー製DSC−7を用い、シート状物のサンプル10mgをJIS−K7122に基づいて、昇温速度10℃/分で昇温したときのサーモグラムからガラス転移点(Tg)を求めた。
【0046】
(6)総合評価
得られたポリ乳酸系収縮シート状物について、各物性及び融着試験から総合評価を行った。表1及び表2における符号は、下記の内容を意味する。
◎:全体として良好な性能を有する
○:全体としてやや良好な性能を有する
×:全体として十分な性能を有さない。
【0047】
(実施例1)
L−乳酸:D−乳酸=90:10の構造単位を持ち、重量平均分子量が18万であるポリ乳酸系重合体を30mmφ単軸エクストルーダーにて、210℃でTダイより押し出し、キャスティングルーダーにて急冷し、厚み220μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを幅方向に77℃で4.4倍に延伸して、ポリ乳酸系収縮シート状物を得た。
得られたポリ乳酸系収縮シート状物のΔHm、ΔHc及び熱収縮率を測定し、また、融着試験を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2〜5、比較例1〜4)
表1又は表2に示すL−乳酸とD−乳酸の割合の構成単位を有するポリ乳酸系重合体を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系収縮フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系収縮シート状物のΔHm、ΔHc及び熱収縮率を測定し、また、融着試験を行った。その結果を表1又は表2に示す。
【0049】
(実施例6)
L−乳酸:D−乳酸=90:10の構造単位を持ち、重量平均分子量が18万であるポリ乳酸系重合体100重量部に、生分解性脂肪族ポリエステルとして、(株)昭和高分子社製ビオノーレ#3003(商品名)(Tg=−45℃)25重量部を混合し、該混合物を30mmφ単軸エクストルーダーにて、200℃でTダイより押し出し、キャスティングルーダーにて急冷し、厚み220μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを幅方向に77℃で4.4倍に延伸して、ポリ乳酸系収縮フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系収縮シート状物のΔHm、ΔHc及び熱収縮率を測定し、また、融着試験を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【発明の効果】
本発明により、充分な収縮率を有し、生分解可能なポリ乳酸系収縮シート状物を提供することができる。
【0053】
また、飲料用ボトル等のラベルに使用した場合、加熱殺菌時にラベル同士が融着しない、生分解可能なポリ乳酸系収縮シート状物を提供することができる。
Claims (5)
- ポリ乳酸系重合体を主成分とし、これに、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから得られる脂肪族ポリエステル、及び環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルから選ばれるガラス転移点Tgが0℃以下の生分解性脂肪族ポリエステルを混合した生分解性重合体から成形されるシート状物であり、
この生分解性脂肪族ポリエステルの添加量が、上記ポリ乳酸系重合体100重量部に対して、10〜100重量部であり、
上記ポリ乳酸系重合体の結晶融解熱量(△Hm)が5〜45J/gであり、
上記シート状物を昇温したとき、このシート状物を形成する生分解性重合体の構成成分であるポリ乳酸系重合体の結晶化により生じる結晶化熱量(ΔHc)と上記ΔHmとの差、すなわち、△Hm−△Hcが5〜32J/gであり、
80℃、10秒間における収縮率が30%以上であることを特徴とするポリ乳酸系収縮シート状物。 - 上記△Hm−△Hcが5〜20J/gであり、上記ポリ乳酸系重合体の構成成分であるL−乳酸とD−乳酸との組成比が98:2〜94:6又は6:94〜2:98であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系収縮シート状物。
- △Hmが20〜40J/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸系収縮シート状物。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のポリ乳酸系収縮シート状物を用いてなる包装材。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のポリ乳酸系収縮シート状物を用いてなる収縮ラベル材。
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1999
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