JP4116467B2 - アングル打撃工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アングルインパクトドライバ等、モータを収容したハウジングから出力軸を横向きに突出させ、打撃機構によって出力軸に打撃を与えながらネジ締め等を可能とするアングル打撃工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばアングルインパクトドライバでは、ハウジング内にモータを収容し、その前方で出力軸をモータと直交状に軸支して、モータ軸側と出力軸とに夫々設けたベベルギヤ同士を噛み合わせることで、モータ軸の回転を出力軸へ伝達可能としている。また、出力軸には、例えば、第1出力軸となるスピンドルに軸方向へ移動可能且つ一体回転可能に連結され、第2出力軸となるアンビルに対して係合可能なハンマと、そのハンマをアンビル側へ付勢するコイルバネとからなる打撃機構が設けられる。すなわち、ネジ締め初期にはアンビルがハンマを介してスピンドルと一体回転し、アンビルへの負荷が高まると、ハンマがアンビルから一旦外れて後退し、コイルバネの付勢によって再びアンビルに係合することで、アンビルに回転打撃を与えて増し締めを行うものである(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、この回転打撃によってスピンドルに軸方向への振動が発生し、スピンドルに設けた第2ベベルギヤと、モータ側の第1ベベルギヤとの噛み合いが悪くなる。この結果、モータの回転の伝達効率が低下するのに加えて、歯の摩耗が進んで耐久性が低下し、ギヤ音による騒音も発生してしまう。そこで、特許文献1では、スピンドルにはベベルギヤに代えて、軸方向へ振動しても噛み合い状態が変わらず、振動による影響を受けないギヤ(平歯車)を設けると共に、モータ側では、そのギヤに噛み合う中間軸をスピンドルと平行に設けて、中間軸とモータ軸との間を第1、第2ベベルギヤで噛合させる構造を採用している。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−11140号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スピンドルとモータ軸との間に中間軸を介在させるために、ハウジングが長くなり、コンパクト化を阻害してアングル打撃工具本来の使い勝手を損なうおそれがある。
【0006】
そこで、請求項1に記載の発明は、より簡単な構成で、振動の発生にかかわらずモータの回転を効率良く出力軸へ伝達可能として、コンパクト化や使い勝手を維持できるアングル打撃工具を提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第2ベベルギヤを、出力軸に対して一体回転且つ軸方向へ移動可能に連結すると共に、第2ベベルギヤを第1ベベルギヤとの噛合位置に位置決めする位置決め手段を設け、その位置決め手段を、出力軸に弾性保持されて第2ベベルギヤの軸方向の一方側への移動を規制する第1ワッシャと、ハウジング側に固定されて第2ベベルギヤの軸方向の他方側への移動を規制する第2ワッシャとしたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、第2ワッシャの組付けを合理的に行うために、出力軸を、第2ベベルギヤが連結されるスピンドルと、そのスピンドルに設けられる打撃機構を介してスピンドルと同軸で連結されるアンビルとから形成する一方、ハウジングを、スピンドルが組み付けられるフロントハウジングと、アンビルを軸支してフロントハウジングの開口に螺合されるハンマケースとに分割して、第2ワッシャを、フロントハウジングの内面に設けた段部と、フロントハウジング内にねじ込まれたハンマケースの端部との間で挟持固定することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、アングル打撃工具の一例であるアングルインパクトドライバの一部縦断面図である。アングルインパクトドライバ1は、筒状で縦長のモータハウジング2内に、モータ3を略同軸で収容し、モータハウジング2の前方(図1の右側)に連結されるギヤハウジング5内に、第1ベベルギヤ6をモータ軸4と平行に軸支して、第1ベベルギヤ6の後端に設けたギヤ7をモータ軸4と噛合させている。また、ギヤハウジング5の前端には、下方を開口させたフロントハウジング8が連結され、そのフロントハウジング8内に、出力軸が第1ベベルギヤ6と直交状に配置されている。但し、ここでの出力軸は、第2ベベルギヤ10が連結されるスピンドル9と、そのスピンドル9に設けられる打撃機構11を介してスピンドル9と同軸で連結されるアンビル12とからなり、アンビル12が、フロントハウジング8の下方へ螺合されたハンマケース13に軸支されて下方へ突出している。
【0009】
スピンドル9は、フロントハウジング8に保持されるボールベアリング14に上端が軸支される一方、下端はアンビル12の上端に遊挿されることで、回転可能に軸支されている。また、第2ベベルギヤ10は、スピンドル9に形成した大径部15にスプライン結合されて、一体回転と軸方向への移動とが可能となっている。一方、スピンドル9における大径部15の上方位置には、上からOリング16、第1ワッシャ17が夫々外装されて、第1ワッシャ17が第2ベベルギヤ10の上端に弾性的に当接している。また、第2ベベルギヤ10の下方でフロントハウジング8には、第2ベベルギヤ10の下面に形成したリング状の凹溝18内に収容される複数のスチールボール19,19・・を受ける第2ワッシャ20が固着されている。よって、第2ベベルギヤ10は、位置決め手段となる第1ワッシャ17と第2ワッシャ20との間で軸方向への移動を規制される格好となる。
【0010】
なお、ここでの第2ワッシャ20は、フロントハウジング8の内面に設けた段部21と、フロントハウジング8に螺合されたハンマケース13の上端との間で挟持固定されている。すなわち、第2ベベルギヤ10を連結したスピンドル9をフロントハウジング8に組み付けた状態で、第2ワッシャ20をフロントハウジング8の段部21に当接させて、アンビル12を軸支したハンマケース13をフロントハウジング8にねじ込むことで、自動的に第2ワッシャ20が段部21に押し付けられてハンマケース13との間で固定される合理的な構造となっている。
【0011】
一方、打撃機構11は、スピンドル9に連結されるハンマ22と、そのハンマ22を下方へ付勢するコイルバネ23とから形成される。まずハンマ22は、スピンドル9の外周面に所定のリード角で凹設された一対の傾斜溝24,24と、ハンマ22の内周面で下端から軸方向に凹設された一対の連結溝25,25とに跨って嵌入されるスチールボール26,26によって、スピンドル9に対して軸方向へ移動可能且つ一体回転可能に連結される。また、ハンマ22は、スピンドル9における大径部15の下方で外装したバネ受け27との間に配したコイルバネ23によって、常態ではスチールボール26が傾斜溝24の下端及び連結溝25の上端に位置する図2の下限位置へ付勢される。この下限位置で、ハンマ22の下面に設けた係止爪28,28が、アンビル12の上端に延設したフランジ29に係合可能となっている。
【0012】
また、ギヤハウジング5の下面でハンマケース13の後方には、ライトユニット30が設けられている。このライトユニット30内には、LED31が斜め前向きに収容されて、モータハウジング2に設けたスイッチレバー32の押込みによってモータ3を駆動させると、同時にLED31が点灯し、アンビル12の下端に装着されたビット33の先端を照射可能となっている。
【0013】
以上の如く構成されたアングルインパクトドライバ1において、ネジ締め作業を行う場合、アンビル12に装着したビット33をネジ頭部にあてがった状態で、スイッチレバー32を押込み操作してモータ3を駆動させ、第1ベベルギヤ6を回転させると、第1ベベルギヤ6と噛合する第2ベベルギヤ9と共にスピンドル9も一体回転する。スピンドル9の回転により、ハンマ22を介して連結されるアンビル12も一体に回転するため、ビット33によるネジ締めが行われる。
【0014】
ネジ締めが進んでビット33への負荷が高まり、スピンドル9の回転に対してアンビル12が遅れるようになると、ハンマ22がコイルバネ23の付勢に抗してアンビル12のフランジ29から離反しようとし、傾斜溝24,24に沿ったスチールボール26,26の転動に連れて上方へ移動する。そして、ハンマ22がフランジ29から完全に離反すると、コイルバネ23の付勢によってハンマ22が傾斜溝24,24に沿って回転しながら下降し、フランジ29を打撃する格好で再び係合する。この回転打撃が間歇的に発生することで、ネジの増し締めが可能となる。
そして、この回転打撃により、アンビル12及びスピンドル9には主に軸方向への振動が発生するが、第2ベベルギヤ10はスピンドル9に対して軸方向へは一体でないから、軸方向に位置決めされる第2ベベルギヤ10はそのままでスピンドル9のみが振動する。よって、第1ベベルギヤ6と第2ベベルギヤ10との噛み合い状態に影響がなく、モータ3の回転はスピンドル9へ効率良く伝達される。
【0015】
このように上記形態のアングルインパクトドライバ1によれば、第2ベベルギヤ10を、スピンドル9に対して一体回転且つ軸方向へ移動可能に連結すると共に、第2ベベルギヤ10を第1ベベルギヤ6との噛合位置に位置決めする位置決め手段を設けたことで、振動が発生するスピンドル9に第2ベベルギヤ10を設けても、モータ3の回転はスピンドル9及びアンビル12へ効率良く伝達される。よって、中間軸を省略して、モータ軸4に直接第1ベベルギヤを形成或いは固着して第2ベベルギヤ10と噛合させることが可能となって、コンパクト化と使い勝手とを維持できる。勿論、歯の摩耗は抑えられるから第1、第2ベベルギヤ6,10の耐久性は維持され、ギヤ音による騒音も発生しない。
【0016】
特に、第2ベベルギヤ10の位置決め手段を、スピンドル9に弾性保持されて第2ベベルギヤ10の軸方向の一方側への移動を規制する第1ワッシャ17と、フロントハウジング8側に固定されて第2ベベルギヤ10の軸方向の他方側への移動を規制する第2ワッシャ20としたことで、スピンドル9に第1ワッシャ17を外装してもスピンドル9の振動を吸収して第2ベベルギヤ10を適正に位置決めできる。よって、位置決め手段を簡単且つ好適に形成可能となる。
【0017】
なお、上記形態では、第1ベベルギヤ6をモータ軸4と別体にして第2ベベルギヤ10に噛合させているが、上述のようにモータ軸に直接第1ベベルギヤを形成或いは固着して第2ベベルギヤと噛合させれば、部品点数が少なくなって組付けの手間やコストの低減にも繋がる。
また、第2ベベルギヤと出力軸との連結は、上記形態ではスプライン結合を採用しているが、出力軸と一体回転しつつ軸方向への移動が許容される構造であれば、キー結合等の他の結合手段も採用可能である。
【0018】
一方、打撃機構も、ハンマやアンビルの形状、係合構造や付勢手段は上記形態に限定せず、適宜設計変更可能である。よって、打撃機構の構造によっては、出力軸は必ずしもスピンドルとアンビルとに分ける必要はなく、出力軸となるスピンドルをそのままハウジングから突出させてビットを装着しても良い。
その他、位置決め手段を形成する第1ワッシャと第2ワッシャとの位置は、上記形態と上下逆でも良いし、第2ベベルギヤは第1ベベルギヤの下側でなく上側に設けて第1ベベルギヤと噛合させても本発明は適用可能である。
さらに、第1ワッシャの弾性保持は、Oリングに限らず、例えばコイルバネや皿バネ、板バネ等の他の弾性手段も利用でき、第2ベベルギヤの軸支は、スチールボール以外に、第2ベベルギヤの外周を受けるボールベアリング等の他の軸受を用いて行っても良い。
【0019】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、第2ベベルギヤを、出力軸に対して一体回転且つ軸方向へ移動可能に連結すると共に、第2ベベルギヤを第1ベベルギヤとの噛合位置に位置決めする位置決め手段を設けたことで、振動が発生する出力軸に第2ベベルギヤを設けても、モータの回転は出力軸へ効率良く伝達される。よって、中間軸を省略して、モータ軸に直接第1ベベルギヤを形成或いは固着して第2ベベルギヤと噛合させることが可能となって、コンパクト化と使い勝手とを維持できる。勿論、歯の摩耗は抑えられるから第1、第2ベベルギヤの耐久性は維持され、ギヤ音による騒音も発生しない。
特に、位置決め手段を第1ワッシャと第2ワッシャとしたことで、出力軸に第1ワッシャを設けても出力軸の振動を吸収して第2ベベルギヤを適正に位置決めできる。よって、位置決め手段を簡単且つ好適に形成可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、第2ベベルギヤを連結したスピンドルをフロントハウジングに組み付けた状態で、第2ワッシャをフロントハウジングの段部に当接させて、アンビルを軸支したハンマケースをフロントハウジングにねじ込むことで、自動的に第2ワッシャが段部に押し付けられてハンマケースとの間で固定される合理的な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アングルインパクトドライバの一部縦断面図である。
【図2】アングルインパクトドライバの前方部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・アングルインパクトドライバ、3・・モータ、6・・第1ベベルギヤ、8・・フロントハウジング、9・・スピンドル、10・・第2ベベルギヤ、11・・打撃機構、12・・アンビル、16・・Oリング、17・・第1ワッシャ、20・・第2ワッシャ、22・・ハンマ、23・・コイルバネ、33・・ビット。

Claims (2)

  1. モータを収容したハウジングの端部に、出力軸を前記モータと直交状に軸支し、前記モータ側に設けた第1ベベルギヤと、前記出力軸に設けた第2ベベルギヤとの噛合によって、前記モータの回転を前記出力軸に伝達可能とする一方、前記出力軸に打撃を付与可能な打撃機構を設けたアングル打撃工具であって、
    前記第2ベベルギヤを、前記出力軸に対して一体回転且つ軸方向へ移動可能に連結すると共に、前記第2ベベルギヤを前記第1ベベルギヤとの噛合位置に位置決めする位置決め手段を設け、その位置決め手段を、前記出力軸に弾性保持されて前記第2ベベルギヤの軸方向の一方側への移動を規制する第1ワッシャと、前記ハウジング側に固定されて前記第2ベベルギヤの軸方向の他方側への移動を規制する第2ワッシャとしたことを特徴とするアングル打撃工具。
  2. 前記出力軸を、前記第2ベベルギヤが連結されるスピンドルと、そのスピンドルに設けられる打撃機構を介して前記スピンドルと同軸で連結されるアンビルとから形成する一方、前記ハウジングを、前記スピンドルが組み付けられるフロントハウジングと、前記アンビルを軸支して前記フロントハウジングの開口に螺合されるハンマケースとに分割して、前記第2ワッシャを、前記フロントハウジングの内面に設けた段部と、前記フロントハウジング内にねじ込まれた前記ハンマケースの端部との間で挟持固定することを特徴とする請求項1に記載のアングル打撃工具。
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