以下、本願発明の一実施例となる組み込み式誘導加熱調理器を、各図面に基づいて説明する。なお、本願発明の対象となる電磁調理器は、以下に説明する組み込み式誘導加熱調理器の他、誘導加熱(IH)方式の加熱コイルが一つだけの簡易な卓上型の誘導加熱調理器にも適用可能である。
図1及び図2において、組み込み式誘導加熱調理器の本体1の上面周囲に設けられた天板枠2には、セラミック製のトッププレート(天板)3が取り付けられており、天板枠2後部には本体1内への吸気口と排気口とを設けた通気部4が設けられている。この通気部4には、多数のパンチング孔を穿設した通気カバー4aが着脱自在に取付けられている。なお、ここで、天板枠2の前部とは、後述するシンク18に本体1が組み込まれ、使用者が使用するとき、使用者側の天板枠2の一側部であり、また後部とは前部の反対側、すなわち使用者から一番離れた側部である。
天板枠2の前部側には天板操作部5が設けられ、トッププレート3の前部側中央には表示部6が設けられている。本体1の前面左側には、内側に調理庫を有するロースタ部7が配置され、このロースタ部7は扉8を有している。一方、本体1の前面右側には、操作部9が配置されており、この操作部9には、誘導加熱部の出力設定部10、タイマー運転を行うためのタイマー設定部11、電源スイッチ12が設けられている。
前記表示部6は、トッププレート3下方に配置され、表示部6と対向するトッププレート部分は透明に形成され、使用者はトッププレート3を介して表示部6を見ることができるよう構成されている。
また、前記天板操作部5は、前面側の操作部9と同様な操作指示設定が可能となるよう構成されている。従って、天板操作部5は、従来、本体前面の操作部9しか存在しなかったため、操作を行う際、目線を移動させてかがみながら操作しなければならないという課題を解決し、本体上面のトッププレート3付近に集約することで、使用者は立ったままの姿勢で、調理鍋内の攪拌や火加減の調整などが行えるようになり、使い勝手を向上できるものである。
トッププレート3上の前部左右には、後述する2つの誘導加熱コイル部の位置が印刷により描かれた誘導加熱部13,14が形成され、後部中央には誘導加熱できないアルミ製鍋等のためのラジエントヒータの位置が印刷により描かれたヒータ加熱部15が形成されている。各誘導加熱部13,14の下には、トッププレート3上に載置された調理鍋を誘導加熱する誘導加熱コイル部が対応して配置され、またヒータ加熱部15の下には、トッププレート3上に載置した調理鍋をヒータ加熱するラジエントヒータが対応して配置されている。各誘導加熱部13,14の前側には、それらの出力を表示するLEDなどで形成された出力表示部16,17が設けられている。
上記本体1は、図3に示すように、一般家庭の台所に設置されているシンク18に設けられた凹所に、トッププレート3がシンク18の天板部18aに露出するように、またロースタ部7及び操作部9がシンク18の前面部18bから臨むように組み込まれる。それゆえに組み込み式と呼ばれているのである。なお、このシンク18の凹所には、ガスコンロなども置き換えて組み込めるように、大きさが統一されている。
図1のA−A断面を示す図4において、トッププレート3の誘導加熱部13の直下には誘導加熱コイル部19が配置されている。また、その下方には、食品を出し入れするための前面開口を有するロースタ部7の調理庫20が設けられており、この調理庫20の底部20aには、扉8に着脱自在に連結された受け皿21が収納される。この調理庫20の上面20b外壁には、調理庫20内に収納された食品を加熱する平面ヒータから成る上ヒータ22が配置され、調理庫20の下部で受け皿21の上方には、調理庫20の後面20cから調理庫20内に突設させたシーズヒータから成る下ヒータ23が配置されている。また、受け皿21内には、下ヒータ23の上方に食品を載置するための平面部24aを有する食品載置台となる焼網24が載置され、この焼網24上に食品載置ネットとなるネット補助具25が着脱自在に載置される。
また、調理庫20には、その後面20cに開口20dが形成され、この開口20dと前記通気部4とが排気筒20eで連結されている。この排気筒20e内には、調理庫20側の開口20d近傍に配置された触媒用ヒータ20fと、この触媒用ヒータ20fの下流側に配置され、触媒用ヒータ20fによって加熱することで調理庫20内の食品から発生する煙や臭気を分解する脱煙触媒20gと、この脱煙触媒20gの下流側に配置され、調理庫20内の煙や臭気を前記触媒用ヒータ20f及び脱煙触媒20gを介して吸引し、通気部4から排気させる排気ファン20hが備えられている。
前記脱煙触媒20gは、プラチナ触媒(貴金属触媒)から構成され、触媒用ヒータ20fで加熱することで活性化し、有機成分を低温燃焼,すなわち酸化分解させることにより、通気部4から排気される煙や臭いを大幅に減少できるものである。このため、家庭のキッチンにおいて、組み込み式誘導加熱調理器専用の換気扇を使用していない場合、一般換気扇の吸引力が少ないために煙を十分に吸い込めず、キッチン全体に通気部4から排気される煙や臭気が拡散して壁面などが汚れるという課題を解決できるものである。特に、最近のキッチンは、オープンタイプが多く、キッチンに拡散した煙がリビングに流出することを抑制できるものである。
また、前記表示部6は、図2に示すように、天板枠2の近傍に1つの液晶表示素子で形成された第1表示部6aと、この第1表示部6aの後方に配置した第2表示部6bとを有している。図6の拡大図に示すように、第1表示部6aには、誘導加熱部13及び14での誘導加熱の様子を表示するものである。詳細には、中央に現在の加熱モード、すなわち加熱,湯沸し,保温,揚げ物調理,少量油での揚げ物調理を表示するモード表示部61と、モード表示部61の左右に各モード位置に対応させて三角印からなるモード指示部62,63とを有している。各モード指示部62,63は、現在の対応する誘導加熱部13,14の動作モードを三角印の点灯(他の三角印は消灯)により表示している。
また、第1表示部6aには、モード指示部62の左側上段にあって誘導加熱部13の現在の出力設定値、または揚げ物調理モードなら設定温度を表示する設定表示部64と、この設定表示部64の下段にあって誘導加熱部13のタイマー設定時の残り時間表示を行うタイマー時間表示部65と、モード指示部63の右側上段にあって誘導加熱部14の現在の出力設定値、または揚げ物調理モードなら設定温度を表示する設定表示部66と、この設定表示部66の下段にあって誘導加熱部14のタイマー設定時の残り時間表示を行うタイマー時間表示部67とを有している。
一方、第2表示部6bには、第1表示部6aに近傍する側にラジエントヒータ及びロースタ部7の各ヒータの駆動状態と設定出力を表示するヒータ設定表示部68とロースタ部7の自動調理メニュー表示部69とが配置されている。自動調理メニュー表示部69は、現在実行されているメニューを下方からLEDなどの点灯で、指示表示するよう構成されている。
図6は本実施例の組み込み式誘導加熱調理器の制御ブロック図であり、誘導加熱制御部30は前述した誘導加熱コイル部19を有し、トッププレート3上に印刷した誘導加熱部13上に載置した調理鍋を誘導加熱し、誘導加熱制御部31は同じく図示しない誘導加熱コイル部を使用してトッププレート3上に印刷した誘導加熱部14上に載置した調理鍋を誘導加熱する。負荷検出部32は、各誘導加熱部13,14に載置された調理鍋が、誘導加熱できない例えばアルミ製鍋や土鍋などの場合や、フォークやナイフなど誤って載置したが加熱されたくない小物などを、各誘導加熱制御部30,31内を流れる電流によって検出し、加熱が不適切と判断したとき、後述する制御部を介して誘導加熱制御部30,31を駆動停止させる。
ラジエントヒータ33はヒータ加熱部15の下方に配置され、ロースタヒータ34はロースタ部7の上ヒータ22及び下ヒータ23を総称したものである。冷却ファン35は本体1内に配置され、通気部4から吸気して後述する制御部や誘導加熱コイル部などを冷却し、再び通気部4から排気させるものである。IHサーミスタ群36は前述のトッププレート3の下方で各誘導加熱コイル部上に配置され、ロースタサーミスタ37は調理庫20の側面外壁に取り付けられて調理庫20内の温度を検知し、基板サーミスタ群38は後述する制御部を載置したプリント基板上の温度や、誘導加熱制御部30,31に使用されるパワースイッチング素子やダイオードブリッジなどの温度を検知する。制御部39は、マイクロコンピュータ等から構成されて、天板操作部5や前面の操作部9からの指示、IHサーミスタ群36、ロースタサーミスタ37、基板サーミスタ群38からの情報を元に、誘導加熱制御部30,31やラジエントヒータ33、ロースタヒータ34、冷却ファン35等に駆動指示を出力して駆動制御する。制御電源部40は商用電源から制御電源を形成して制御部39に供給する。また、報音部29は、後述する適温報知やエラー発生等をブザー音などの音により報知するものである。
電源スイッチ12は、制御電源部40と商用電源との間に配置され、また触媒用ヒータ20f、排気ファン20h、誘導加熱制御部30,31、ラジエントヒータ33、ロースタヒータ34及び冷却ファン35は、電源スイッチ12と制御電源部40との間の電源ラインから分岐して、各部品に電源が供給されている。したがって、電源スイッチ12がオフされると、全ての電源がオフされる構成となっている。
前記誘導加熱制御部30の誘導加熱コイル部19及び誘導加熱制御部31の誘導加熱コイル部には、その中心部と誘導加熱コイル部の磁界の強くなる部分とに、IHサーミスタ群36を構成するサーミスタから成る後述の第1温度検出部と第2温度検出部が配置され、トッププレート3上に載置された調理鍋の温度をトッププレート3を介して検知して、間接的に調理鍋内の調理物の温度を検知するようにしている。図7に基づいて詳細に説明すると、図7(a)には誘導加熱コイル部の上面図を示し、図7(b)には図7(a)の誘導加熱コイル部位置に対応した磁界の強さを表している。前述の誘導加熱制御部30の誘導加熱コイル部19及び誘導加熱制御部31の誘導加熱コイル部を総称した誘導加熱コイル部41は、円形のコイル台42上に、リッツ線を撚った撚り線を用いて渦巻き状に巻いて形成した加熱コイル43を配置して構成され、加熱コイル43の中心部にサーミスタから成る第1温度検出部44が配置されると共に、加熱コイル43の半径の略1/2の位置で、加熱コイル43上の磁界が強い位置にサーミスタから成る第2温度検出部45を配置している。なお、サーミスタから成る前記第1,第2温度検出部44,45は前記図6に示したIHサーミスタ群36を構成している。
加熱コイル43から発生する磁界は、加熱コイル43の巻線上が強いため、加熱コイル43の巻線形状と同様にドーナツ形状に磁界が強くなり、巻線の存在しない加熱コイル中心部と外周部は磁界が弱く、それに伴って加熱は弱くなるので、第2温度検出部45を加熱コイル43の中心部から半径の略1/2の位置に配置することで、調理鍋の温度上昇をより精度良く検出することができると共に、調理鍋が多少ずれても調理鍋の温度上昇を捕らえることができる。
本実施例のものでは、上述したような第1,第2温度検出部44,45を用いて図8のフローチャートで示す如く制御することにより、鍋の材質や天板温度や使用状態などに左右されず、どのような状態でも不具合なく加熱可能な状態とすることができ、高温スタート時に揚げ物の仕上がりが悪くなるのを防止することができるようにしている。
以下、使用者が天板操作部5の操作により、揚げ物調理を選択したときの制御部39の動作を図8に示すフローチャートを参照して説明する。
先ずステップS1では、天板操作部5で揚げ物調理を選択するとともに、天板操作部5で使用者が設定温度を選択する。なお、揚げ物調理の選択時は、初期設定温度として例えば180℃が設定されるよう予めプログラムされている。
次のステップS2では、加熱開始時の加熱コイル43の中心部に配置された第1温度検出部44の検出温度Tが100℃を超えているか否か、すなわち高温スタートか否かを判断する。この第1温度検出部44の検出温度は、例えば、前回の加熱調理からあまり時間間隔がなく、連続して新しい調理鍋で新たな加熱調理を行った状態では天板温度であり、また前回の加熱調理中、少しの時間調理鍋付近から使用者が離れるために一旦加熱を停止させ、使用者が戻ってきたので再び加熱を開始する状態では天板温度及び調理鍋の温度となる。ここで、100℃を超えていなければ、高温スタートではないと判断してステップS3に移行し、加熱コイル43への通電を開始して揚げ物調理の最大出力である1600Wで揚げ物調理を開始する。
この1600W加熱中に、ステップS4では、第1温度検出部44を用いて次式に示す温度勾配ΔT0を測定する。
ΔT0=T(100℃到達から1分後の温度)−100℃
また、次のステップS5では、同じく第1温度検出部44を用いて次式に示す温度勾配ΔT1を測定する。
ΔT1=T(140℃停止から30秒後の温度)−140℃
そして、ステップS6で、上記ステップS4,S5で測定したΔT0,ΔT1より鍋種を判定して目標温度を設定する。
上記鍋種判定は、例えば図9に示すように鍋種や油の量毎に実験によって上記ΔT0,ΔT1を求めたデータを制御部39を構成するマイクロコンピュータのメモリにテーブルとして格納しておき、図10のフローチャートで示す処理をサブルーチンとして呼び出すことにより判定することができる。なお、一般に油量は、500g以下を少量油と呼んでおり、図9のグラフでは、少量油の代表として500gの油量での実験データ、少量油でない場合の代表として900gの油量での実験データを記載している。
すなわち、図10のフローチャートにおいて、先ずΔT0が25℃以上であれば鉄(油少量),すなわち図9から鉄500gが該当するので鉄鍋で500g以下の少量油と判定できる(ステップS61のYes→ステップS62)。また、ΔT0が25℃に満たなくてΔT1が12℃以上であれば三層(油少量),すなわち図9から三層500gが該当するので三層鍋で500g以下の少量油と判定できる(ステップS61のNo→ステップS63のYes→ステップS64)。さらに、ΔT1が12℃に満たなくてΔT0が16℃以上であれば三層又は鉄,すなわち図9から三層900g又は鉄900gが該当するので、三層鍋又は鉄鍋で少量油ではないと判定できる(ステップS63のNo→ステップS65のYes→ステップS66)。また、ΔT0が16℃に満たなくてΔT0が12℃以上であればホーロー,すなわち図9からホーロー500g又は900gが該当するのでホーロー鍋で少量油かそれ以上の量の油量と判定できる(ステップS65のNo→ステップS67のYes→ステップS68)。そして、ΔT0が12℃にも満たなければ鋳物,すなわち図9から鋳物500g又は900gが該当するので鋳物鍋で少量油かそれ以上の量の油量と判定できる(ステップS67のNo→ステップS69)。このような鍋種判定により判定された鍋種に基づき、設定温度から初期加熱における目標温度が設定される。例えば、鉄鍋の場合は初期加熱による鍋温度の立ち上がりを良くするため例えば設定温度が180℃のとき目標温度は195℃ぐらいに設定し、鋳物鍋の場合は熱容量が大きいことが起因していると思われるが加熱を停止しても鍋温度はゆっくりと上昇を継続する特性を有しているので、加熱停止温度を設定温度近傍にすると、大きなオーバーシュートを発生してしまい、揚げ物を焦がして揚げ物調理を失敗してしまう恐れがあるため、目標温度を165℃ぐらいに低く設定する。
さて、上述したような鍋種判定及び目標温度設定が済むと図8のステップS7に進んで、第1温度検出部44の検出温度Tが上記で設定された目標温度を超えたか否かを判断する。ここで、第1温度検出部44の検出温度Tが目標温度を越えるまで待って(ステップS7のNoループ)、目標温度を超えれば、図6に示した報音部29を用いてブザー音等により適温報知をする(ステップS7のYes→ステップS8)。これを確認して、使用者は揚げ物の材料を鍋内に投入する。
揚げ物の材料が鍋内に投入されると、油温は低下するが、次のステップS9で、今度は第1温度検出部44の検出温度Tが、ステップS1で使用者により設定された設定温度(例えば180℃)を超えているか否かを判断する。越えていなければ、1600Wでの加熱を行い(ステップS9のNo→ステップS11→ステップS9のループ)、設定温度を超えれば加熱を停止する(ステップS9のYes→ステップS10→ステップS9のループ)。このような制御を繰り返すことにより、鍋内の油温は常に設定温度(180℃)を維持するように制御され、仕上がりの良い揚げ物調理を行うことができる。
一方、前述した加熱スタート時の天板温度判定(ステップS2)で、第1温度検出部44の検出温度T,すなわち天板温度が100℃が超えていれば、高温スタートと判断してステップS12に移行し、加熱コイル43への通電を開始して低出力の例えば600Wで揚げ物調理を開始する。
この600W加熱中に、次にステップS13で、今度は加熱コイル43の中心部から半径の略1/2の位置に配置された第2温度検出部45を用いて次式に示す温度勾配ΔT2を測定する。
ΔT2=T(120℃到達から1分後の温度)−120℃
次のステップS14では、目標温度を前記ステップS1で設定された設定温度(例えば180℃)とする。
そして、次のステップS15で、上記ステップS13で測定した温度勾配ΔT2が7℃以上か否かを判定する。この判定では、高温スタート時、第1温度検出部44では天板のみが熱い場合と天板及び調理鍋とも熱い場合との区別がつかず、調理鍋温度を正確に検出できない恐れがあるので、第1温度検出部44での温度検出に代えて第2温度検出部45で調理鍋の温度上昇を検出している。第2温度検出部45では、第1温度検出部44に比べて加熱コイル43周囲に流れる冷却風が届きやすく、この部分の天板温度が早く下がりやすい。また、加熱コイル43の磁界の強くなっている部分であるため、調理鍋温度の上昇に対して早く敏感に温度が変化するため、調理鍋温度を正確に検出しやすいため、第1温度検出部44に代えて第2温度検出部45で温度検出を行うのである。
上記ΔT2が7℃に満たない場合は、鍋温度上昇に対し第2温度検出部45まで熱が伝わりにくい状態,例えば油温が低い状態であるので、目標温度(設定温度)を低く抑えずに低出力(600W加熱)で、時間をかけて目標温度まで制御する(ステップS15のNo→ステップS7)。すなわち、第1温度検出部44の検出温度Tが目標温度を越えるまで待って(ステップS7のNoループ)、目標温度を超えれば、図6に示した報音部29を用いてブザー音等により適温報知をする(ステップS7のYes→ステップS8)。これを確認して、使用者は揚げ物の材料を鍋内に投入する。
揚げ物の材料が鍋内に投入されると、油温は低下するが、次のステップS9で、第1温度検出部44の検出温度Tが設定温度(例えば180℃)を超えているか否かを判断する。越えていなければ、高温スタート時であるので600Wでの加熱を行い(ステップS9のNo→ステップS11→ステップS9のループ)、設定温度を超えれば加熱を停止する(ステップS9のYes→ステップS10→ステップS9のループ)。このような制御を繰り返すことにより、鍋内の油温は常に設定温度(180℃)を維持するように制御され、仕上がりの良い揚げ物調理を行うことができる。
一方、上記ΔT2が7℃以上の場合は、鍋温度上昇に対し第2温度検出部45まで熱が伝わりやすい状態,例えば油温が高い状態であるので、目標温度(設定温度)を低く抑えて低出力(600W加熱)で、時間をかけて「目標温度−20℃」,すなわち目標温度(設定温度)を180℃とするとそれより20℃低い160℃まで制御する(ステップS15のYes→ステップS16)。これにより、目標温度(設定温度)到達時の鍋内容物の温度のオーバーシュートを抑えることができる。第1温度検出部44の検出温度Tが「目標温度−20」を越えるまで待って(ステップS16のNoループ)、「目標温度−20℃」を超えれば、図6に示した報音部29を用いてブザー音等により適温報知をする(ステップS16のYes→ステップS8)。これを確認して、使用者は揚げ物の材料を鍋内に投入する。
揚げ物の材料が鍋内に投入されると、油温は低下するが、次のステップS9で、第1温度検出部44の検出温度Tが設定温度(例えば180℃)を超えているか否かを判断する。越えていなければ、高温スタート時であるので600Wでの加熱を行い(ステップS9のNo→ステップS11→ステップS9のループ)、設定温度を超えれば加熱を停止する(ステップS9のYes→ステップS10→ステップS9のループ)。このような制御を繰り返すことにより、鍋内の油温は常に設定温度(180℃)を維持するように制御され、前述したように目標温度(設定温度)到達時の鍋内容物の温度のオーバーシュートも抑えられているので、揚げ物を焦がしたりすることもなく仕上がりの良い揚げ物調理を行うことができる。
なお、第1温度検出部44は加熱コイル43の中心部に配置しているため、調理鍋が、トッププレート上でどの方向に少々ずれて載置されても、調理鍋下部に第1温度検出部44が配置されるので、温度検出可能である。しかし、第1温度検出部44と第2温度検出部45とを結んだ方向のうち、第1温度検出部44方向にずらして調理鍋がトッププレート上に載置された場合、第2温度検出部45上には調理鍋が存在せず、調理鍋温度が精度良く検出できなくなるため、通常は第1温度検出部44で温度検出を行い、高温スタート時のみ、第2温度検出部45を用いて判断するのである。
ところで、前述したステップS6における鍋種判定により、鍋の種類(鋳物、ホーロー、三層、鉄)と油量は、ΔT0,ΔT1によりある程度は判別できる。しかし、これらを測定する第1温度検出部(サーミスタ)44は、筐体内の風路や環境温度によって約2〜3℃のばらつきが生じるので、図9の鋳物とホーローのように特性が類似している場合は、判別を間違えて油温が高温になる危険がある。
そこで、第1温度検出部44の検出温度に次式に示すように所定の適切な補正値αを加える。この補正値αは、天板操作部5と表示部6により変更可能であり、制御部39を構成するマイクロコンピュータのメモリに記憶させておく。
ΔT0=T(100℃到達から1分後の温度)+α−100℃
ΔT1=T(140℃停止から30秒後の温度)+α−140℃
以上のように、揚げ物機能付きの電磁調理器で、ΔT0,ΔT1を測定する第1温度検出部(サーミスタ)44の検出温度に適切な補正値αを加えることにより、最適な適温制御が行われる。特に、業務用電磁調理器では、使用される鍋が決められるケースが多いので、その鍋に適したΔT0,ΔT1になるように補正値αを加えることにより、最適な適温制御が行われる。
また、上述したような鍋種判別手段の他に、図11に示す電磁調理器の電気回路から、鍋の特性(インピーダンス)によって変化する値,すなわち入力電流(Iin)、VCO電圧、Vce電圧を求めて、実験データをグラフ化した図12、図13のデータをテーブルとして記憶させたメモリを参照して、鍋種を判別することができる。図12、図13は代表的な鍋(鋳物、三層鍋、ホーロー)のみを記載しており、VCOが140以上の場合は図12のデータを用い、140より低い場合は図12では鋳物とホーローが判別困難となるので、この場合は図13のデータを用いることにより容易に判別できようになる。
なお、図11の電気回路は、電磁調理器の一般的な電気回路構成を示しており、前述してきたものと同一又は相当部分には同一符号を用いている。簡単に説明すると、外部の交流電源に接続される電源コード(プラグ)71と、外部の交流電源から電磁調理器に過電流が流されることを防ぐヒューズ72と、ノイズの入出を防ぐためのバリスタ73,コンデンサ74,ノイズフィルター75と、電源コード71から入力される交流を直流に変換する整流器76と、チョークコイル77と、平滑コンデンサ78と、整流器76に接続され調理鍋79を加熱する加熱コイル43と、共振コンデンサ80と、逆流用のダイオード81を備えたスイッチング素子(IGBT;絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)82と、このスイッチング素子82のオン/オフを駆動制御するトランジスタ駆動回路83と、制御部(マイクロコンピュータ)39に接続されて前記スイッチング素子82のスイッチング周波数の矩形波信号を生成して前記トランジスタ駆動回路83に出力するVCO(電圧制御発振)回路84と、整流器76の入力電流を検知コイル85を介して検出する入力電流Iin回路86と、スイッチング素子82のコレクタとエミッタ間の電圧を検知するVce検知回路87等を有している。制御部(マイクロコンピュータ)39には、上記VCO回路84と入力電流Iin回路86とVce検知回路87、及び調理鍋79の温度を図示しない天板を介して検出する前述の第1,第2温度検出部(サーミスタ)44,45が接続されており、制御部39で検出温度の他に、VCO電圧と入力電流IinとVce電圧を求めて、前述したようにして図12,図13のデータから鍋種を判定できるようになっている。
以上のように、揚げ物機能付きの電磁調理器で、上述したような鍋の特性による判別を加えることにより最適な適温制御が可能になる。特に、メーカー指定専用鍋の特性が上記代表鍋と類似していて、前述したΔT0,ΔT1による第1の鍋種判別手段では判定が困難な場合に、この第2の鍋種判別手段が有効になってくる。
以上、本願発明の実施例について説明したが、本願発明は、上記の実施例の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、第2温度検出部45を加熱コイル43の中心部から半径の略1/2の位置に配置したが、加熱コイル43の中心部から半径内に所定距離隔てて位置するように配置すれば一定の効果が得られる。
また、上記実施例では、ΔT0,ΔT1を第1温度検出部44で、ΔT2を第2温度検出部45で測定することにより、調理鍋の中心部と加熱コイル43の中心部とが一致した天板位置(正規の鍋載置位置)からずらして鍋が置かれても加熱コイル中心部の第1温度検出部44を用いて温度制御を行うことができると共に、低出力時の温度上昇(温度勾配ΔT2)をより精度良く検出することができるようにしたが、いずれか一方で測定するようにしても一定の効果が得られる。